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特許7162103偏光板保護膜、偏光板、及び液晶表示装置
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  • 特許-偏光板保護膜、偏光板、及び液晶表示装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-19
(45)【発行日】2022-10-27
(54)【発明の名称】偏光板保護膜、偏光板、及び液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20221020BHJP
   G02B 5/22 20060101ALI20221020BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
G02B5/30
G02B5/22
G02F1/1335 510
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021111749
(22)【出願日】2021-07-05
(62)【分割の表示】P 2019545179の分割
【原出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2021170125
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2021-07-05
(31)【優先権主張番号】P 2017192085
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017247933
(32)【優先日】2017-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018035024
(32)【優先日】2018-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018104900
(32)【優先日】2018-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018122094
(32)【優先日】2018-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】弁理士法人イイダアンドパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100118809
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 育男
(74)【代理人】
【識別番号】100198328
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 幸恵
(72)【発明者】
【氏名】深川 伸隆
(72)【発明者】
【氏名】内藤 遊
(72)【発明者】
【氏名】桑原 浩樹
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 大輔
(72)【発明者】
【氏名】古山 英知
(72)【発明者】
【氏名】筑紫 翔
【審査官】池田 博一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/048077(WO,A1)
【文献】特開2012-058433(JP,A)
【文献】特開2016-188304(JP,A)
【文献】国際公開第2008/090757(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/035555(WO,A1)
【文献】特開2014-157284(JP,A)
【文献】国際公開第2013/054864(WO,A1)
【文献】特開2003-029376(JP,A)
【文献】特開2016-075738(JP,A)
【文献】特開2017-111226(JP,A)
【文献】国際公開第2015/098906(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0238771(US,A1)
【文献】国際公開第2018/066677(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
G02B 5/22
G02F 1/1335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂と、該樹脂100質量部に対し、吸収極大波長が560~620nm又は460~520nmの範囲にある色素0.1質量部以上とを含み、膜厚が1~18μm、含水率が0.5質量%以下である保護膜であって、
前記色素が下記一般式()で表されるスクアリン系色素であり、
前記保護膜が電子供与型消光剤を含有し、前記色素のHOMOのエネルギー準位と前記電子供与型消光剤のHOMOのエネルギー準位とが以下の関係式[A-1]を満たし、
関係式[A-1]:E Hq -E Hd ≦0.40eV
ここでE Hd とE Hq はそれぞれ以下の値を示す。
Hd :色素のHOMOのエネルギー準位
Hq :電子供与型消光剤のHOMOのエネルギー準位
前記電子供与型消光剤が下記一般式(L)で表される電子供与型消光剤である、保護膜。
【化1】
一般式(3)において、R 及びR は、各々独立に、水素原子又は置換基を示す。B ~B は、各々独立に、炭素原子又は窒素原子を示す。R 及びR は、各々独立に、水素原子又は置換基を示す。
【化2】
一般式(L)中、MはFe、Ti、V、Cr、Co、Ni、Ru、Os又はPdを示す。V 1 、V 2 、V 3 、V 4 、V 5 、V 6 、V 7 、V 8 、V 9 及びV 10 は各々水素原子又は1価の置換基を示す。
【請求項2】
前記樹脂がポリスチレン樹脂もしくは環状ポリオレフィン樹脂のいずれかを含む、請求項1に記載の保護膜。
【請求項3】
前記電子供与型消光剤が、前記一般式(3)で表されるスクアリン系色素の部分構造として組み込まれている、請求項1又は2に記載の保護膜。
【請求項4】
前記保護膜が偏光板保護膜である、請求項1~のいずれか1項に記載の保護膜。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載の保護膜を含む偏光板。
【請求項6】
請求項記載の偏光板を含む液晶表示装置。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載の保護膜が、液晶セルと偏光子との間に配される、請求項に記載の液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板保護膜、この偏光板保護膜を用いた偏光板、及びこの偏光板を用いた液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、省スペースで消費電力の小さな画像表示装置としてその用途が広がっている。テレビ等の高品位の画像が要求される液晶表示装置には、高解像度に加え、高い色再現性、優れたコントラスト等を実現することが求められる。
液晶表示装置は、画像を表示する液晶パネル自体は発光をしない非発光型素子である。そのため、液晶表示装置にはバックライトユニットが組み込まれる。このバックライトユニットは液晶パネルの背面に配置され、液晶パネルに光を供給する。
【0003】
近年、バックライトユニット用の光源として白色LEDが用いられるようになってきた。白色LED発光装置としては、青色LEDから放射される青色光と、黄色蛍光体、又は緑色蛍光体及び赤色蛍光体から放射される光を混色させて白色光を作り出す方式が知られている。しかし、上記方式は次世代ディスプレイとして脚光を浴びている有機発光ダイオード(OLED)等と比較して色再現域が狭いという課題があり、これを克服するための新しい技術が求められている。
これに対して、特許文献1にはバックライトユニット中の拡散フィルム上に色素を含むコーティング層を設けて、白色LEDから発せられる不要な波長の光を遮断する方法が開示されている。
また、特許文献2には特定構造のスクアリン色素を含有する光学フィルターに関する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-90998号公報
【文献】国際公開第2008/090757号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らが検討を重ねたところ、液晶表示装置に用いる偏光板の保護膜(偏光子を保護する膜)中に、特定の吸収波長を有する色素を含ませることにより、液晶表示装置の色再現性が高められることがわかってきた。その一方、偏光板保護膜中への上記色素の配合は、色素が発する蛍光に起因する偏光解消により、偏光板の偏光性能を低下させ、高いコントラストの実現においては不利に働くこと、また、色素が光照射により経時的に劣化しやすいことも明らかとなってきた。
そこで本発明は、色再現性が高く、コントラストにも優れ、また耐光性にも優れた液晶表示装置、並びに、これに用いる偏光板ないし偏光板保護膜を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らが上記課題に鑑み鋭意検討を重ねた結果、疎水性の高い樹脂をベースとして用いて含水率を制御し、その中に特定の吸収極大波長を呈する色素を含有させた上で、特定の厚さ範囲内の薄膜状に形成したフィルムを偏光板の保護膜として用いた場合に、色再現性に優れ、コントラストにも優れ、また耐光性にも優れた液晶表示装置を実現できることを見い出した。
本発明はこれらの知見に基づきさらに検討を重ね、完成されるに至ったものである。
【0007】
本発明の上記課題は下記の手段により解決された。
〔1〕
樹脂と、この樹脂100質量部に対し、吸収極大波長が560~620nm又は460~520nmの範囲にある色素0.1質量部以上とを含み、膜厚が1~18μm、含水率が0.5質量%以下である偏光板保護膜。
〔2〕
上記色素が、下記一般式(1)で表されるスクアリン系色素である、〔1〕記載の偏光板保護膜。
【化1】
一般式(1)中、A及びBは、各々独立して、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい複素環基又は-CH=Gを示す。Gは置換基を有していてもよい複素環基を示す。
〔3〕
上記偏光板保護膜が電子供与型消光剤を含有し、上記色素のHOMOのエネルギー準位と上記電子供与型消光剤のHOMOのエネルギー準位とが以下の関係式[A-1]を満たす、〔1〕又は〔2〕に記載の偏光板保護膜。
関係式[A-1]:EHq-EHd≦0.40eV
ここでEHdとEHqはそれぞれ以下の値を示す。
Hd:色素のHOMOのエネルギー準位
Hq:電子供与型消光剤のHOMOのエネルギー準位
〔4〕
上記偏光板保護膜が電子受容型消光剤を含有し、上記色素のLUMOのエネルギー準位と上記電子受容型消光剤のLUMOのエネルギー準位とが以下の関係式[B-1]を満たす、〔1〕又は〔2〕に記載の偏光板保護膜。
関係式[B-1]:ELd-ELq≦0eV
ここでELdとELqはそれぞれ以下の値を示す。
Ld:色素のLUMOのエネルギー準位
Lq:電子受容型消光剤のLUMOのエネルギー準位
〔5〕
上記樹脂が以下の関係式[C]を満たす〔1〕~〔4〕のいずれか1つに記載の偏光板保護膜。
関係式[C]:0.80≦fd≦0.95
ここで、上記fd値は下記関係式Iで規定される。
関係式I: fd=δd/(δd+δp+δh)
上記関係式Iにおいて、δd、δp及びδhは、それぞれ、Hoy法により算出される溶解度パラメータδtに対する、London分散力に対応する項、双極子間力に対応する項、及び、水素結合力に対応する項を示す。
〔6〕
上記樹脂がポリスチレン樹脂を含む、〔1〕~〔5〕のいずれか1つに記載の偏光板保護膜。
〔7〕
上記樹脂が環状ポリオレフィン樹脂を含む、〔1〕~〔5〕のいずれか1つに記載の偏光板保護膜。
〔8〕
〔1〕~〔7〕のいずれか1つに記載の偏光板保護膜を含む偏光板。
〔9〕
〔8〕記載の偏光板を含む液晶表示装置。
〔10〕
〔1〕~〔7〕のいずれか1つに記載の偏光板保護膜が、液晶セルと偏光子との間に配される、〔9〕記載の液晶表示装置。
【0008】
本明細書において「~」で表される数値範囲は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味である。
本明細書において、特定の符号で表示された置換基、連結基、繰り返し構造等(以下、置換基等という。)が複数あるとき、又は複数の置換基等を同時に規定するときには、特段の断りがない限り、それぞれの置換基等は互いに同一でも異なっていてもよい。このことは、置換基等の数の規定についても同様である。また、複数の置換基等が近接するとき(特に、隣接するとき)には、特段の断りがない限り、それらが互いに連結して環を形成してもよい。また、環、例えば脂肪族環、芳香族環、ヘテロ環はさらに縮環して縮合環を形成していてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の液晶表示装置は、色再現性が高く、コントラストにも優れ、また耐光性にも優れる。本発明の偏光板ないしその保護膜は、液晶表示装置に適用することにより、色再現性が高く、コントラストにも優れ、また耐光性にも優れた液晶表示装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の偏光板を備えた液晶表示装置の一実施形態について、その概略を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の好ましい実施形態について以下に説明する。
【0012】
[偏光板保護膜]
本発明の偏光板保護膜は、偏光子の少なくとも片面に直接又は間接に設けられる膜である。本発明の偏光板保護膜は、吸収極大波長が560~620nm又は460~520nmの範囲にある色素を特定量と、特定量の樹脂とを組合せて含む。本発明の偏光板保護膜の厚さは1~18μmであり、含水率は0.5質量%以下である。
【0013】
<色素>
本発明の偏光板保護膜が含有する色素は、波長460~520nmに主吸収波長帯域を有する色素(以下、染料Aという。)、又は、波長560~620nmに主吸収波長帯域を有する色素(以下、染料Bという。)である。なお、本発明において用語「又は」は「及び」を含む意味に用いる。
詳細は後述するが、本発明の偏光板は上記染料A及び染料B以外の染料を含有することもできる。
【0014】
染料Aは、波長460~520nmに主吸収波長帯域を有するものであれば特に制限されず、各種染料を用いることができる。この染料Aは、蛍光を示すものが多い。
本発明において、波長XX~YYnmに主吸収波長帯域を有するとは、可視光吸収スペクトル(波長領域380~750nm)において、極大吸収波長を示す波長が波長領域XX~YYnmに存在することを意味する。したがって、この波長が上記波長領域内にあれば、この波長を含む吸収帯域全体が上記波長領域内にあってもよく、上記波長領域外まで広がっていてもよい。また、極大吸収波長が複数存在する場合、最高ではない吸光度を示す極大吸収波長が波長領域XX~YYnm外に存在していてもよい。なお、極大吸収波長を示す波長が複数ある場合、そのうちの1つが上記波長領域に存在していればよい。
【0015】
染料Aの具体例としては、例えば、ピロールメチン(pyrrole methine、PM)系、ローダミン(rhodamine、RH)系、ボロンジピロメテン(boron dipyrromethene、BODIPY)系、スクアリン(squarine、SQ)系等の各染料が挙げられる。
例えば、FDB-007(商品名、メロシアニン系染料、山田化学工業社製)等の市販品も染料Aとして好ましく用いることができる。
【0016】
染料Bは、波長560~620nmに主吸収波長帯域を有するものであれば特に制限されず、各種染料を用いることができる。この染料Bは、染料Aよりも蛍光が弱い、又は蛍光を示さないものが多い。
染料Bの具体例としては、例えば、テトラアザポルフィリン(tetraaza porphyrin、TAP)系、スクアリン系、シアニン(cyanine、CY)系の各染料が挙げられる。また、PD-311S(商品名、テトラアザポルフィリン系染料、山本化成社製)、FDG-006(商品名、テトラアザポルフィリン系染料、山田化学工業社製)等の市販品も染料Bとして好ましく用いることができる。
【0017】
これらの中でも、染料A及び染料Bとしては、スクアリン系色素が好ましく、下記一般式(1)で表されるスクアリン系色素がより好ましい。
本発明において、下記各一般式で表される色素において、カチオンは非局在化して存在しており、複数の互変異性体構造が存在する。そのため、本発明において、ある色素の少なくとも1つの互変異性体構造が各一般式に当てはまる場合、ある色素は各一般式で表される色素とする。したがって、特定の一般式で表される色素とは、その少なくとも1つの互変異性体構造を特定の一般式で表すことができる色素ということもできる。本発明において、一般式で表される色素は、その互変異性体構造の少なくとも1つがこの一般式に当てはまる限り、どのような互変異性体構造をとるものでもよい。
【0018】
【化2】
【0019】
一般式(1)中、A及びBは、各々独立して、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい複素環基、又は-CH=Gを示す。Gは置換基を有していてもよい複素環基を示す。
A又はBとして採りうるアリール基としては、特に制限されず、単環からなる基でも縮合環からなる基でもよい。アリール基の炭素数は、6~30が好ましく、6~20がより好ましく、6~12がさらに好ましい。アリール基としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環からなる各基が挙げられ、より好ましくはベンゼン環からなる基である。
【0020】
A又はBとして採りうる複素環基としては、特に制限はなく、脂肪族複素環若しくは芳香族複素環からなる基を含み、芳香族複素環からなる基が好ましい。芳香族複素環基であるヘテロアリール基としては、例えば、後述する置換基Xとして採りうるヘテロアリール基が挙げられる。A又はBとして採りうる芳香族複素環基は、5員環又は6員環の基が好ましく、含窒素5員環の基がより好ましい。具体的には、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、トリアゾール環、インドール環、インドレニン環、インドリン環、ピリジン環、ピリミジン環、キノリン環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ピラゾロトリアゾール環が好適に挙げられる。中でも、ピロール環、ピラゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環又はピラゾロトリアゾール環が好ましい。ピラゾロトリアゾール環とは、ピラゾール環とトリアゾール環との縮合環からなり、これらの環が少なくとも1つずつ縮合してなる縮合環であればよく、例えば、後述する一般式(4)及び(5)中の縮合環が挙げられる。
【0021】
A又はBとして採りうる-CH=G中のGは、置換基を有していてもよい複素環基を示し、例えば、A、Bに示されている例が好適に挙げられる。中でも、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、インドリン環からなる基等が好ましい。
【0022】
A、B及びGは、それぞれ、置換基Xを有していてもよく、置換基Xを有する場合には、隣接する置換基が互いに結合してさらに環構造を形成してもよい。また、置換基Xは複数個存在してもよい。
置換基Xとしては、例えば、後述する一般式(2)のRとして採りうる置換基が挙げられ、具体的には、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、-OR10OR11、-COOR12、-OCOR13、-NR1415、-NHCOR16、-CONR1718、-NHCONR1920、-NHCOOR21、-SR22、-SO23、-SO24、-NHSO25、-SONR2627又は-OR28が挙げられる。
【0023】
一般式(1)において、R10~R28は、各々独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基又はヘテロ環基を示す。R10~R28として採りうる脂肪族基及び芳香族基は、特に制限されず、後述する一般式(2)のRとして採りうる置換基から適宜に選択できる。R10~R28として採りうるヘテロ環基は、脂肪族でも芳香族でもよく、例えば、後述する一般式(2)のRとして採りうるヘテロアリール基又はヘテロ環基から適宜に選択できる。
なお、-COOR12のR12が水素原子である場合(すなわち、カルボキシ基)は、水素原子が解離してもよく(すなわち、カルボネート基)、塩の状態であってもよい。また、-SO24のR24が水素原子である場合(すなわち、スルホ基)は、水素原子が解離してもよく(すなわち、スルホネート基)、塩の状態であってもよい。
【0024】
置換基Xとして採りうるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。
置換基Xとして採りうるアルキル基の炭素数は、1~20が好ましく、1~15がより好ましく、1~8がさらに好ましい。アルケニル基の炭素数は、2~20が好ましく、2~12がより好ましく、2~8がさらに好ましい。アルキニル基の炭素数は、2~40が好ましく、2~30がより好ましく、2~25が特に好ましい。アルキル基、アルケニル基及びアルキニル基は、それぞれ、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、直鎖又は分岐が好ましい。
置換基Xとして採りうるアリール基は、単環又は縮合環の基を含む。アリール基の炭素数は、6~30が好ましく、6~20がより好ましく、6~12がさらに好ましい。
置換基Xとして採りうるアラルキル基のアルキル部分は、上記アルキル基と同様である。アラルキル基のアリール部分は、上記アリール基と同様である。アラルキル基の炭素数は、7~40が好ましく、7~30がより好ましく、7~25がさらに好ましい。
置換基Xとして採りうるヘテロアリール基は、単環又は縮合環からなる基を含み、単環、又は環数が2~8個の縮合環からなる基が好ましく、単環又は環数が2~4個の縮合環からなる基がより好ましい。ヘテロアリール基の環を構成するヘテロ原子の数は1~3が好ましい。ヘテロアリール基の環を構成するヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子等が挙げられる。ヘテロアリール基は、5員環又は6員環からなる基が好ましい。ヘテロアリール基の環を構成する炭素原子の数は3~30が好ましく、3~18がより好ましく、3~12がより好ましい。ヘテロアリール基としては、例えば、ピリジン環、ピペリジン環、フラン環、フルフラン環、チオフェン環、ピロール環、キノリン環、モルホリン環、インドール環、イミダゾール環、ピラゾール環、カルバゾール環、フェノチアジン環、フェノキサジン環、インドリン環、チアゾール環、ピラジン環、チアジアジン環、ベンゾキノリン環又はチアジアゾール環からなる各基が挙げられる。
【0025】
置換基Xの例で挙げた、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基及びヘテロアリール基は、それぞれ、さらに置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。さらに有していてもよい置換基としては、特に制限はないが、アルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、芳香族ヘテロ環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、芳香族ヘテロ環チオ基、スルホニル基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、及びカルボキシ基から選ばれる置換基が好ましく、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、芳香族ヘテロ環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、芳香族ヘテロ環チオ基、スルホニル基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、及びカルボキシ基から選ばれる置換基がより好ましい。これらの基は、後述する一般式(2)のRとして採りうる置換基から適宜に選択することができる。
【0026】
上記一般式(1)で表される色素の好ましい1実施形態として、下記一般式(2)で表される色素が挙げられる。
【0027】
【化3】
【0028】
一般式(2)中、Aは、一般式(1)中のAと同様である。中でも、含窒素5員環である複素環基が好ましい。
【0029】
一般式(2)において、R及びRは、各々独立に、水素原子又は置換基を示す。RとRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、また互いに結合して環を形成してもよい。
及びRとして採りうる置換基としては、特に制限はないが、例えば、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリフルオロメチル基等)、シクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(エチニル基、プロパルギル基等)、アリール基(フェニル基、ナフチル基等)、ヘテロアリール基(フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、キナゾリル基、フタラジル基等)、ヘテロ環基(複素環基とも呼び、例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基等)、シクロアルコキシ基(シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、ヘテロアリールオキシ基(芳香族ヘテロ環オキシ基)、アルキルチオ基(メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、ヘテロアリールチオ基(芳香族ヘテロ環チオ基)、アルコキシカルボニル基(メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、ホスホリル基(ジメトキシホスホニル、ジフェニルホスホリル)、スルファモイル基(アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、2-ピリジルアミノスルホニル基等)、アシル基(アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2-エチルヘキシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アミド基(メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2-エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等)、スルホニルアミド基(メチルスルホニルアミノ基、オクチルスルホニルアミノ基、2-エチルヘキシルスルホニルアミノ基、トリフルオロメチルスルホニルアミノ基等)、カルバモイル基(アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2-エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2-ピリジルアミノカルボニル基等)、ウレイド基(メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基、ナフチルウレイド基、2-ピリジルアミノウレイド基等)、アルキルスルホニル基(メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2-エチルヘキシルスルホニル基等)、アリールスルホニル基(フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2-ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、ジブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2-エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2-ピリジルアミノ基等)、アルキルスルホニルオキシ基(メタンスルホニルオキシ)、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、ヒドロキシ基等が挙げられる。
中でも、アルキル基、アルケニル基、アリール基又はヘテロアリール基が好ましく、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基がより好ましく、アルキル基がさらに好ましい。
【0030】
及びRとして採りうる置換基はさらに置換基を有していてもよい。さらに有していてもよい置換基としては、R及びRとして採りうる上記置換基が挙げられる。また、RとRとは、互いに、又は、B又はBが有する置換基と、結合して環を形成してもよい。このとき形成される環としてはヘテロ環又はヘテロアリール環が好ましく、形成される環の大きさは特に制限されないが、5員環又は6員環であることが好ましい。
【0031】
一般式(2)において、B、B、B及びBは、各々独立に、炭素原子又は窒素原子を示す。B、B、B及びBを含む環は芳香環である。B~Bのうち、少なくとも2つ以上は炭素原子であることが好ましく、B~Bの全てが炭素原子であることがより好ましい。
~Bとして採りうる炭素原子は、水素原子又は置換基を有する。B~Bとして採りうる炭素原子のうち、置換基を有する炭素原子の数は、特に制限されないが、0、1又は2であることが好ましく、1であることがより好ましい。特に、B及びBが炭素原子であって、少なくとも一方が置換基を有することが好ましい。
~Bとして採りうる炭素原子が有する置換基としては、特に制限されず、R及びRとして採りうる上記置換基が挙げられる。中でも、好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アリール基、アシル基、アミド基、スルホニルアミド基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子又はヒドロキシ基であり、より好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アリール基、アシル基、アミド基、スルホニルアミド基、カルバモイル基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子又はヒドロキシ基である。
【0032】
及びBとして採りうる炭素原子が有する置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アミド基、スルホニルアミド基又はカルバモイル基がさらに好ましく、特に好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アミド基又はスルホニルアミド基が挙げられ、最も好ましくは、ヒドロキシ基、アミド基又はスルホニルアミド基である。
及びBとして採りうる炭素原子が有する置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基又はハロゲン原子がさらに好ましく、いずれか一方の置換基が電子吸引性基(例えば、アルコキシカルボニル基、アシル基、シアノ基、ニトロ基又はハロゲン原子)であることが特に好ましい。
【0033】
上記一般式(2)で表される色素は、下記一般式(3)、一般式(4)及び一般式(5)のいずれかで表される色素であることが好ましい。
【0034】
【化4】
【0035】
一般式(3)において、R及びRは、各々独立に、水素原子又は置換基を示し、上記一般式(2)におけるR及びRと同義であり、好ましい範囲も同じである。
一般式(3)において、B~Bは、各々独立に、炭素原子又は窒素原子を示し、上記一般式(2)におけるB~Bと同義であり、好ましい範囲も同じである。
【0036】
一般式(3)において、R及びRは、各々独立に、水素原子又は置換基を示す。R及びRとして採りうる置換基としては、特に制限されず、上記R及びRとして採りうる置換基と同じものを挙げることができる。
ただし、Rとして採りうる置換基は、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、アミド基、スルホニルアミド基、シアノ基、ニトロ基、アリール基、ヘテロアリール基、ヘテロ環基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基又はハロゲン原子が好ましく、アルキル基、アリール基又はアミノ基がより好ましく、アルキル基がさらに好ましい。
として採りうる置換基としては、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、カルバモイル基、アミノ基又はシアノ基が好ましく、アルキル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、カルバモイル基又はアリール基がより好ましく、アルキル基がさらに好ましい。
【0037】
及びRとして採りうるアルキル基は、直鎖状、分岐状及び環状のいずれであってもよいが、直鎖状又は分岐状が好ましい。アルキル基の炭素数は、1~12が好ましく、1~8がより好ましい。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、t-ブチル基、2-エチルヘキシル基、シクロヘキシル基が好ましく、メチル基、t-ブチル基がより好ましい。
【0038】
【化5】
【0039】
一般式(4)において、R及びRは、各々独立に、水素原子又は置換基を示し、上記一般式(2)におけるR及びRと同義であり、好ましい範囲も同じである。
一般式(4)において、B~Bは、各々独立に、炭素原子又は窒素原子を示し、上記一般式(2)におけるB~Bと同義であり、好ましい範囲も同じである。
【0040】
一般式(4)において、R及びRは、各々独立に、水素原子又は置換基を示す。R及びRとして採りうる置換基としては、特に制限されず、上記R及びRとして採りうる置換基と同じものを挙げることができる。
ただし、Rとして採りうる置換基は、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、シアノ基、アリール基、ヘテロアリール基、ヘテロ環基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、スルホニルアミド基、ウレイド基又はカルバモイル基が好ましく、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、アミド基又はアミノ基がより好ましく、アルキル基がさらに好ましい。
として採りうるアルキル基は、一般式(3)におけるRとして採りうるアルキル基と同義であり、好ましい範囲も同じである。
【0041】
一般式(4)において、Rとして採りうる置換基は、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、スルホニルアミド基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、カルバモイル基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基又はハロゲン原子が好ましく、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基又はヘテロ環基がより好ましく、アルキル基又はアリール基がさらに好ましい。
として採りうるアルキル基は、一般式(3)におけるRとして採りうるアルキル基と同義であり、好ましい範囲も同じである。
として採りうるアリール基は、炭素数6~12のアリール基が好ましく、フェニル基がより好ましい。このアリール基は置換基を有していてもよく、このような置換としては、以下の置換基群Aから選択される基が挙げられ、特に、炭素数1~10のアルキル基、スルホニル基、アミノ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基等が好ましい。これらの置換基は、さらに置換基を有していてもよい。具体的に、置換基はアルキルスルホニルアミノ基が好ましい。
【0042】
- 置換基群A -
ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アミノオキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、スルホニルアミノ基(アルキル若しくはアリールスルホニルアミノ基を含む)、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル若しくはアリールスルフィニル基、スルホニル基(アルキル若しくはアリールスルホニル基を含む)、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール又はヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基等。
【0043】
【化6】
【0044】
一般式(5)において、R及びRは、各々独立に、水素原子又は置換基を示し、上記一般式(2)におけるR及びRと同義であり、好ましい範囲も同じである。
一般式(5)において、B~Bは、各々独立に、炭素原子又は窒素原子を示し、上記一般式(2)におけるB~Bと同義であり、好ましい範囲も同じである。
【0045】
一般式(5)において、R及びRは、各々独立に、水素原子又は置換基を示す。R及びRとして採りうる置換基としては、特に制限されず、上記R及びRとして採りうる置換基と同じものを挙げることができる。
ただし、Rとして採りうる置換基の、好ましい範囲、より好ましい範囲及びさらに好ましい基は、一般式(4)におけるRとして採りうる置換基と同じである。Rとして採りうるアルキル基は、上記Rとして採りうるアルキル基と同義であり、好ましい範囲も同じである。
【0046】
一般式(5)において、Rとして採りうる置換基の、好ましい範囲、より好ましい範囲及びさらに好ましい範囲は、一般式(4)におけるRとして採りうる置換基と同じである。Rとして採りうるアルキル基及びアリール基の好ましい範囲は、上記一般式(4)におけるRとして採りうるアルキル基及びアリール基と同義であり、好ましい範囲も同じである。
【0047】
本発明においては、染料Aとしてスクアリン系染料を用いる場合、スクアリン系染料としては、一般式(1)~(5)のいずれかで表されるスクアリン色素であれば、特に制限なく使用することができる。その例として、例えば、特開2006-160618号公報、国際公開第2004/005981号、国際公開第2004/007447号、Dyes and Pigment,2001,49,p.161-179、国際公開第2008/090757号、国際公開第2005/121098号、特開2008-275726号公報に記載の化合物を挙げられる。
【0048】
以下に、一般式(1)~一般式(5)のいずれかで表される色素の具体例を示す。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
下記具体例において、Meはメチル、Etはエチル、Phはフェニルをそれぞれ示す。
【0049】
【化7】
【0050】
上記具体例の他に、一般式(3)~(5)のいずれかで表される色素の具体例を以下に挙げる。下記表中の置換基Bは下記構造を示す。下記構造及び下記表において、Meはメチル、Etはエチル、i-Prはi-プロピル、Buはn-ブチル、t-Buはt-ブチル、Phはフェニルをそれぞれ示す。下記構造において*は各一般式中の炭素四員環との結合部を示す。
【0051】
【化8】
【0052】
【化9】
【0053】
【化10】
【0054】
【化11】
【0055】
【化12】
【0056】
【化13】
【0057】
上記一般式(1)で表される色素の好ましい1実施形態として、下記一般式(6)で表される色素が挙げられる。
【0058】
【化14】
【0059】
一般式(6)中、R及びRは、各々独立に、水素原子又は置換基を示し、上記一般式(3)におけるR及びRと同義であり、好ましいものも同じである。
一般式(6)中、Aは、一般式(1)中のAと同様である。中でも、含窒素5員環である複素環基が好ましい。
【0060】
上記一般式(6)で表される色素は、下記一般式(7)、一般式(8)及び一般式(9)のいずれかで表される色素であることが好ましい。
【0061】
【化15】
【0062】
一般式(7)において、R及びRは、各々独立に、水素原子又は置換基を示し、上記一般式(3)におけるR及びRと同義であり、好ましい範囲も同じである。2つのR及び2つRは、それぞれ、同一でも異なっていてもよい。
【0063】
【化16】
【0064】
一般式(8)において、R及びRは、各々独立に、水素原子又は置換基を示し、上記一般式(3)におけるRと同義であり、好ましい範囲も同じである。
一般式(8)において、R及びRは、各々独立に、水素原子又は置換基を示し、上記一般式(4)におけるR及びRと同義であり、好ましい範囲も同じである。
【0065】
【化17】
【0066】
一般式(9)において、R及びRは、各々独立に、水素原子又は置換基を示し、上記一般式(3)におけるRと同義であり、好ましい範囲も同じである。
一般式(9)において、R及びRは、各々独立に、水素原子又は置換基を示し、上記一般式(5)におけるR及びRと同義であり、好ましい範囲も同じである。
【0067】
本発明においては、染料Bとしてスクアリン系染料を用いる場合、スクアリン系染料としては、一般式(6)~(9)のいずれかで表されるスクアリン系染料であれば、特に制限なく使用することができる。その例として、例えば特開2002-97383号公報及び特開2015-68945号公報に記載の化合物を挙げることができる。
【0068】
以下に、一般式(6)~一般式(9)のいずれかで表される色素の具体例を示す。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
下記具体例において、Meはメチル、Etはエチル、i-Prはi-プロピル、t-Buはt-ブチル、Phはフェニルをそれぞれ示す。下記構造において*は各一般式中の炭素四員環との結合部を示す。
【0069】
【化18】
【0070】
【化19】
【0071】
【化20】
【0072】
本発明の偏光板保護膜中の、吸収極大波長が560~620nm又は460~520nmの範囲にある色素の含有量は、合計で、偏光板保護膜を構成する樹脂100質量部に対し、0.1質量部以上であり、0.15質量部以上がより好ましく、0.2質量部以上がさらに好ましく、0.25質量部以上が特に好ましく、とりわけ0.3質量部以上が好ましい。偏光板保護膜中に色素を、上記のように一定以上に高含有させ、さらに保護膜を本発明で規定する薄膜にすることにより、色素が発する蛍光に起因する偏光解消を緩和することができ、所望の優れた偏光度を実現することができる。
また、偏光板保護膜中の、吸収極大波長が560~620nm又は460~520nmの範囲にある色素の含有量は、合計で、偏光板保護膜を構成する樹脂100質量部に対し、通常は1質量部以下であり、0.6質量部以下が好ましく、0.45質量部以下がより好ましい。
【0073】
本発明に用いる染料としては、上記染料A及びB以外にも、主吸収波長帯域がRGB以外の波長帯域にあり、かつ、主発光波長帯域がRGBの波長帯域に該当する波長帯域にある蛍光染料の1種、又は2種以上の組み合わせ(第二態様の染料)が挙げられる。
【0074】
本発明において、RGB以外の波長帯域としては、例えば、430nm以下(例えば、380nm~430nm)、480nm~510nm又は560nm~610nmの各波長帯域を含む。また、RGBの波長帯域としては、例えば、430nm~480nm、510nm~580nm又は610nm以上(例えば、600nm~650nm)の各波長帯域を含む。
本発明において、主吸収波長帯域がRGB以外の波長帯域にあるとは、可視光吸収スペクトル(波長領域380~750nm)において、極大吸収波長のうち最も高い吸光度を示す波長がRGB以外の波長帯域のいずれかに存在することを意味する。また、主発光波長帯域がRGBの波長帯域に該当する波長帯域にあるとは、可視光吸収スペクトル(波長領域380~750nm)において、極大発光波長のうち最も高い発光度を示す波長がRGBの波長帯域のいずれかに存在することを意味する。
【0075】
上記の蛍光染料としては、上記特性を有する限り特に制限されないが、例えば、アントラセン(anthracene)系、アントラキノン(anthraquinone)系、アリールメチン(arylmethine)系、アゾ(azo)系、アゾメチン(azomethine)系、ビマン(bimane)系、クマリン(coumarin)系、1,5-ジアザビシクロ[3.3.0]オクタジエン(1,5-diazabicyclo[3.3.0]octadiene)系、ジケトピロール(diketo-pyrrole)系、ナフタレノールイミン(naphthalenol-imine)系、ナフタルイミド(naphthalimide)系、ペリレン(perylene)系、フェノールフタレイン(phenolphthalein)系、ピロールメチン(pyrrole methine)系、パイラン(pyran)系、パイレン(pyrene)系、ポルフィセン(porphycene)系、ポルフィリン(porphyrin)系、キナクリドン(quinacridone)系、ローダミン(rhodamine)系、ルブリン(rubrene)系、又はスチルベン(stilbene)系の各蛍光染料が挙げられる。
【0076】
好ましくは、ペリレン系、アゾ系、ピロールメチン系、パイラン系及びクマリン系の各蛍光染料からなる群より選ばれた2種以上の蛍光染料の組み合わせが挙げられ、より好ましくは、ペリレン系、ピロールメチン系、パイラン系及びクマリン系の各蛍光染料からなる群より選ばれた2種以上の蛍光染料の組み合わせが挙げられる。
【0077】
<樹脂>
本発明の偏光板保護膜に含まれる樹脂(以下、「本発明に用いる樹脂」、「マトリックス樹脂」とも称す。)は、一定の疎水性を示すものが好ましい。すなわち、本発明に用いる樹脂は、偏光板保護膜に用いることにより、この保護膜の含水率を0.5%以下にできるものである。このような疎水性の高い樹脂と、上記の色素を組合せて用いることにより、偏光板保護膜の耐光性をより向上させることができる。
【0078】
本発明の偏光板保護膜に含まれる樹脂は、先鋭な吸収波形、及び高い偏光性能を与える観点から、下記関係式Iにより算出されるfd値が下記関係式[C]を満たすことが好ましい。

関係式I:fd=δd/(δd+δp+δh)
関係式[C]:0.80≦fd≦0.95

関係式Iにおいて、δd、δp及びδhは、それぞれ、Hoy法により算出される溶解度パラメータδtに対する、London分散力に対応する項、双極子間力に対応する項、及び、水素結合力に対応する項を示す。すなわち、fdはδdとδpとδhの和に対するδdの比率を示す。
fd値を0.95以下とすることにより、色素を溶解できる溶媒に対するマトリックス樹脂の溶解性をより高めることができる。またfd値を0.80以上とすることにより、より先鋭な吸収波形が得られやすくなり、また色素が発する蛍光の量子収率もより低減させることができ、偏光度の向上に寄与する。
また、偏光板保護膜がマトリックス樹脂を2種以上含む場合、fd値は、下記のようにして算出する。
fd=Σ(wi・fdi)
ここで、wiはi番目のマトリックス樹脂の質量分率、fdiはi番目のマトリックス樹脂のfd値を示す。
【0079】
- London分散力に対応する項δd -
London分散力に対応する項δdは、文献“Properties of Polymers 3rd,ELSEVIER,(1990)”の214~220頁の「2)Method of Hoy (1985,1989)」欄に記載のAmorphous Polymersについて求められるδdをいうものとし、上記文献の上記の欄の記載に従って算出される。
【0080】
- 双極子間力に対応する項δp -
双極子間力に対応する項δpは、文献“Properties of Polymers 3rd,ELSEVIER,(1990)”の214~220頁の「2)Method of Hoy(1985,1989)」欄に記載のAmorphous Polymersについて求められるδpをいうものとし、上記文献の上記の欄の記載に従って算出される。
【0081】
- 水素結合力に対応する項δh -
水素結合力に対応する項δhは、文献“Properties of Polymers 3rd,ELSEVIER,(1990)”の214~220頁の「2)Method of Hoy(1985,1989)」欄に記載のAmorphous Polymersについて求められるδhをいうものとし、上記文献の上記の欄の記載に従って算出される。
【0082】
本発明に用いる樹脂の好ましい例としては、例えば、ポリスチレン樹脂、及び環状ポリオレフィン樹脂が挙げられる。また、例えば、これらの樹脂に加えて後述する、偏光板保護膜に機能性を付与する樹脂を用いることも好ましい。
【0083】
(ポリスチレン樹脂)
ポリスチレン樹脂としては、スチレン成分を含む樹脂を意味する。ポリスチレン樹脂はスチレン成分を50質量%以上含むことが好ましい。本発明には、ポリスチレン樹脂を1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。ここで、スチレン成分とは、その構造中にスチレン骨格を有する単量体由来の構成単位である。
ポリスチレン樹脂は、偏光板保護膜を好ましい光弾性係数に制御し、且つ好ましい吸湿性に制御する目的で、スチレン成分を70質量%以上含むことがより好ましく、85質量%以上含むことがさらに好ましい。また、ポリスチレン樹脂はスチレン成分のみから構成されていることも好ましい。
【0084】
ポリスチレン樹脂は、スチレン化合物の単独重合体、2種以上のスチレン化合物の共重合体が挙げられる。ここで、スチレン化合物とは、その構造中にスチレン骨格を有する化合物であり、スチレンの他、スチレンのエチレン性不飽和結合以外の部分に置換基を導入した化合物を含む意味である。スチレン化合物として、例えば、スチレン;α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、1,3-ジメチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、o-エチルスチレン、p-エチルスチレン、tert-ブチルスチレンのようなアルキルスチレン;ヒドロキシスチレン、tert-ブトキシスチレン、ビニル安息香酸、o-クロロスチレン、p-クロロスチレンのようなスチレンのベンゼン核に水酸基、アルコキシ基、カルボキシ基、ハロゲンなどが導入された置換スチレンなどが挙げられる。中でも、入手しやすさ、材料価格などの観点から、本発明に用いるポリスチレンは、スチレンの単独重合体(すなわちポリスチレン)が好ましい。
【0085】
また、上記ポリスチレン樹脂に含まれ得るスチレン成分以外の構成成分としては、特に限定されない。すなわち、ポリスチレン樹脂は、スチレン-ジエン共重合体、又はスチレン-重合性不飽和カルボン酸エステル共重合体等であってもよい。また、ポリスチレンと合成ゴム(例えば、ポリブタジエンやポリイソプレン等)の混合物を用いることもできる。また、合成ゴムにスチレンをグラフト重合させた耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)も好ましい。また、スチレン成分を含む重合体(例えば、スチレン成分と(メタ)アクリル酸エステル成分との共重合体)の連続相中にゴム状弾性体を分散させ、上記ゴム状弾性体に上記共重合体をグラフト重合させたポリスチレン(グラフトタイプ耐衝撃性ポリスチレン「グラフトHIPS」という)も好ましい。さらに、いわゆるスチレン系エラストマーも好適に用いることができる。
また、上記ポリスチレン樹脂は水素添加されていてもよい(水添ポリスチレン樹脂であってもよい)。上記水添ポリスチレン樹脂としては、特に限定されないが、SBSやSISに水素を添加した樹脂である水添スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、水添スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)等の水素添加されたスチレン-ジエン系共重合体が好ましい。上記水添ポリスチレン樹脂は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
【0086】
ポリスチレン樹脂として、組成、分子量等が異なる複数種類のものを併用することができる。
ポリスチレン系樹脂は、公知のアニオン、塊状、懸濁、乳化又は溶液重合方法により得ることができる。また、ポリスチレン樹脂においては、共役ジエンやスチレン単量体のベンゼン環の不飽和二重結合が水素添加されていてもよい。水素添加率は核磁気共鳴装置(NMR)によって測定できる。
【0087】
ポリスチレン樹脂としては、市販品を用いても良く、例えば、電気化学工業(株)製「クリアレン 530L」、「クリアレン 730L」、旭化成(株)製「タフプレン 126S」、「アサプレン T411」、クレイトンポリマージャパン(株)製「クレイトン D1102A」、「クレイトン D1116A」、スタイロルーション社製「スタイロルクス S」、「スタイロルクス T」、旭化成ケミカルズ(株)製、「アサフレックス 840」、「アサフレックス 860」(以上、SBS)、PSジャパン(株)製「679」、「HF77」、「SGP-10」、DIC(株)製「ディックスチレン XC-515」、「ディックスチレン XC-535」(以上、GPPS)、PSジャパン(株)製「475D」、「H0103」、「HT478」、DIC(株)製「ディックスチレン GH-8300-5」(以上、HIPS)などが挙げられる。水添ポリスチレン系樹脂としては、例えば、旭化成ケミカルズ(株)製「タフテックHシリーズ」、シェルジャパン(株)製「クレイトンGシリーズ」(以上、SEBS)、JSR(株)製「ダイナロン」(水添スチレン-ブタジエンランダム共重合体)、(株)クラレ製「セプトン」(SEPS)などが挙げられる。また、変性ポリスチレン系樹脂としては、例えば、旭化成ケミカルズ(株)製「タフテックMシリーズ」、(株)ダイセル製「エポフレンド」、JSR(株)製「極性基変性ダイナロン」、東亞合成(株)製「レゼダ」などが挙げられる。
【0088】
ポリスチレン樹脂として、接着改良作用を示すポリスチレン樹脂(接着改良性樹脂とも称す。)を含有することも好ましい。接着改良性樹脂は、上述のポリスチレン樹脂に接着性を付与する官能基及び/又は熱架橋性基を付与したもの、であることがより好ましい。
接着性を付与する官能基としては、ポリビニルアルコールと水素結合する基であり、オキザソリン基、カルボンアミド基、スルフォンアミド基、水酸基等が挙げられる。
また、接着改良性樹脂は熱架橋性基を有することも好ましい。熱架橋性基とは、加熱により架橋反応を起こして架橋する基であり、その具体例としてはカルボキシ基、オキサゾリン基、ヒドロキシ基、イソシアネート基、マレイミド基、アセトアセトキシ基、エポキシ基、アミノ基、フリル基、酸無水物基等が挙げられる。接着改良性樹脂及び後述する共重合体(a)がいずれも熱架橋性基を有している場合には、これらの熱架橋性基を反応させることで、共重合体(a)を偏光板保護膜の表面に固定化することができ、より高い接着性を発現させることが可能となる。熱架橋性基間の反応は、加熱により行うことができる。この場合、加熱により熱架橋性基を反応させることで共重合体(a)を偏光板保護膜機能性膜の表面に固定化することができるため、分子内に反応性基を有する化合物(モノマー)を含有させ、かつこのモノマーを紫外線等の電離放射線照射によって硬化させることにより共重合体(a)を機能性膜の表面に固定化するプロセスが不要となるので好ましい。
【0089】
以下に、接着改良性樹脂の例として、熱架橋性基を有するスチレン系樹脂の具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されない。
【0090】
【化21】
【0091】
【化22】
【0092】
また、上述した水添ポリスチレン樹脂及びそれに接着性を付与する官能基及び/又は熱架橋性基を付与したものも接着性改良樹脂として好ましく用いることができる。具体的には、旭化成ケミカルズ(株)製「タフテックHシリーズ」、シェルジャパン(株)製「クレイトンGシリーズ」(以上、SEBS)、JSR(株)製「ダイナロン」(水添スチレン-ブタジエンランダム共重合体)、(株)クラレ製「セプトン」(SEPS)、旭化成ケミカルズ(株)製「タフテックMシリーズ」、(株)ダイセル製「エポフレンド」、JSR(株)製「極性基変性ダイナロン」、東亞合成(株)製「レゼダ」などが挙げられる。
【0093】
接着改良性樹脂は1種単独で用いてもよいし、接着改良性樹脂として、繰り返し単位の組成、分子量等が異なる複数種類のものを併用することもできる。
接着改良性樹脂は、公知のアニオン、塊状、懸濁、乳化又は溶液重合方法により得ることができる。また、接着改良性樹脂においては、共役ジエンやスチレン系単量体のベンゼン環の不飽和二重結合が水素添加されていてもよい。水素添加率は核磁気共鳴装置(NMR)によって測定できる。
接着改良性樹脂の含有量は上記マトリックス樹脂の含有量の範囲内であればよい。
【0094】
本発明の偏光板保護膜は上記ポリスチレン樹脂に加えてポリフェニレンエーテル樹脂を含有することも好ましい。ポリスチレン樹脂にポリフェニレンエーテル樹脂を混合することにより偏光板保護膜の靭性が向上し、高温高湿等の過酷な環境下においてもクラック等の欠陥が発生せず好ましい。本発明の偏光板保護膜に用いられるポリフェニレンエーテル樹脂としては、旭化成(株)製ザイロンS201A、同202A、同S203A等を好ましく用いることができる。また、あらかじめポリスチレン樹脂とポリフェニレンエーテル樹脂を混合した樹脂も本発明の偏光板保護膜の樹脂として好ましい。例えば、旭化成(株)製ザイロン1002H、同1000H、同600H、同500H、同400H、同300H、同200H等を好ましく用いることができる。
本発明の偏光板保護フィルムにおいて、ポリスチレン樹脂とポリフェニレンエーテル樹脂の質量比(ポリスチレン樹脂/ポリフェニレンエーテル樹脂)は99/1~50/50が好ましく、98/2~60/40がさらに好ましく、95/5~70/30が最も好ましい。ポリフェニレンエーテル樹脂の比率が上記範囲内であれば、偏光板保護膜の靱性の不足が生じにくく、また溶液成膜をした場合でも溶剤を適度に揮散させることができる。
【0095】
(環状ポリオレフィン樹脂)
環状ポリオレフィン樹脂を形成する環状オレフィン化合物としては、炭素-炭素二重結合を含む環構造を持つ化合物であれば特に制限されず、例えば、ノルボルネン化合物、ノルボルネン化合物以外の、単環の環状オレフィン化合物、環状共役ジエン化合物又はビニル脂環式炭化水素化合物等が挙げられる。
環状ポリオレフィン樹脂としては、例えば、(1)ノルボルネン化合物に由来する構造単位を含む重合体、(2)ノルボルネン化合物以外の、単環の環状オレフィン化合物に由来する構造単位を含む重合体、(3)環状共役ジエン化合物に由来する構造単位を含む重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素化合物に由来する構造単位を含む重合体、及び、(1)~(4)の各化合物に由来する構造単位を含む重合体の水素化物等が挙げられる。本発明において、ノルボルネン化合物に由来する構造単位を含む重合体、及び、単環の環状オレフィン化合物に由来する構造単位を含む重合体には、各化合物の開環重合体を含む。
【0096】
環状ポリオレフィン樹脂としては、特に制限されないが、下記一般式(A-II)又は(A-III)で表される、ノルボルネン化合物に由来する構造単位を有する重合体が好ましい。下記一般式(A-II)で表される構造単位を有する重合体はノルボルネン化合物の付加重合体であり、下記一般式(A-III)で表される構造単位を有する重合体はノルボルネン化合物の開環重合体である。
【0097】
【化23】
【0098】
一般式(A-II)又は(A-III)中、mは0~4の整数であり、0又は1が好ましい。
一般式(A-II)又は(A-III)中、R~Rは、各々独立に、水素原子又は炭素数1~10の炭化水素基を示す。
本発明において、炭化水素基は、炭素原子と水素原子からなる基であれば特に制限されず、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基(芳香族炭化水素基)等が挙げられる。中でも、アルキル基又はアリール基が好ましい。
一般式(A-II)又は(A-III)中、X及びX、Y及びYは、各々独立に、水素原子、炭素数1~10の炭化水素基、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換された炭素数1~10の炭化水素基、-(CH)nCOOR11、-(CH)nOCOR12、-(CH)nNCO、-(CH)nNO、-(CH)nCN、-(CH)nCONR1314、-(CH)nNR1314、-(CH)nOZ、-(CH)nW、又は、XとY若しくはXとYが互いに結合して形成する、(-CO)O若しくは(-CO)NR15を示す。
ここで、R11~R15は、各々独立に、水素原子又は炭素数1~20の炭化水素基を示し、Zは炭化水素基又はハロゲンで置換された炭化水素基を示し、WはSi(R16(3-p)(R16は炭素数1~10の炭化水素基を示し、Dはハロゲン原子、-OCOR17又は-OR17(R17は炭素数1~10の炭化水素基)を示す。pは0~3の整数である)を示す。nは、0~10の整数であり、0~8が好ましく、0~6がより好ましい。
【0099】
一般式(A-II)又は(A-III)において、R~Rは、それぞれ、水素原子又は-CHが好ましく、透湿度の点で、水素原子であることがさらに好ましい。
及びXは、それぞれ、水素原子、-CH、-Cが好ましく、透湿度の点で、水素原子がさらに好ましい。
及びYは、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子(特に塩素原子)又は-(CH)nCOOR11(特に-COOCH)が好ましく、透湿度の点で、水素原子がさらに好ましい。
その他の基は、適宜に選択される。
【0100】
一般式(A-II)又は(A-III)で表される構造単位を有する重合体は、さらに下記一般式(A-I)で表される構造単位を少なくとも1種以上含んでもよい。
【0101】
【化24】
【0102】
一般式(A-I)中、R及びRは、各々独立に、水素原子又は炭素数1~10の炭化水素基を示し、X及びYは、各々独立に、水素原子、炭素数1~10の炭化水素基、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換された炭素数1~10の炭化水素基、-(CH)nCOOR11、-(CH)nOCOR12、-(CH)nNCO、-(CH)nNO、-(CH)nCN、-(CH)nCONR1314、-(CH)nNR1314、-(CH)nOZ、-(CH)nW、又は、XとYが互いに結合して形成する、(-CO)O若しくは(-CO)NR15を示す。
ここで、R11~R15は、各々独立に、水素原子又は炭素数1~20の炭化水素基を示し、Zは炭化水素基又はハロゲンで置換された炭化水素基を示し、WはSi(R16(3-p)(R16は炭素数1~10の炭化水素基を示し、Dはハロゲン原子、-OCOR17又は-OR17(R17は炭素数1~10の炭化水素基)を示す。pは0~3の整数である)を示す。nは0~10の整数である。
【0103】
偏光子に対する密着性の観点から、一般式(A-II)又は(A-III)で表される構造単位を有する環状ポリオレフィンは、上述のノルボルネン化合物に由来する構造単位を、環状ポリオレフィンの全質量に対して90質量%以下含有することが好ましく、30~85質量%含有することがより好ましく、50~79質量%含有することがさらに好ましく、60~75質量%含有することが最も好ましい。ここで、ノルボルネン化合物に由来する構造単位の割合は環状ポリオレフィン中の平均値を表す。
【0104】
ノルボルネン化合物の付加(共)重合体は、特開平10-7732号公報、特表2002-504184号公報、米国公開特許公開第2004/229157A1、又は、国際公開第2004/070463号等に記載されている。
ノルボルネン化合物の重合体としては、ノルボルネン化合物(例えば、ノルボルネンの多環状不飽和化合物)同士を付加重合することによって得られる。
【0105】
また、ノルボルネン化合物の重合体として、必要に応じ、ノルボルネン化合物と、エチレン、プロピレン、ブテン等のオレフィン、ブタジエン、イソプレンのような共役ジエン、エチリデンノルボルネンのような非共役ジエン、アクリロニトリル、アクリル酸、メタアクリル酸、無水マレイン酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、マレイミド、酢酸ビニル又は塩化ビニル等のエチレン性不飽和化合物とを付加共重合して得られる共重合体が挙げられる。中でも、エチレンとの共重合体が好ましい。
このようなノルボルネン化合物の付加(共)重合体としては、三井化学社よりアペルの商品名で発売されており、ガラス転移温度(Tg)が互いに異なる、例えば、APL8008T(Tg70℃)、APL6011T(Tg105℃)、APL6013T(Tg125℃)、又は、APL6015T(Tg145℃)等が挙げられる。また、ポリプラスチック社より、TOPAS8007、同6013、同6015等のペレットが市販されている。さらに、Ferrania社よりAppear3000が市販されている。
【0106】
上述の、ノルボルネン化合物の重合体は、市販品を使用することができる。例えば、JSR社からアートン(Arton)G又はアートンFという商品名で市販されており、また日本ゼオン社からゼオノア(Zeonor)ZF14、ZF16、ゼオネックス(Zeonex)250又はゼオネックス280という商品名で市販されている。
【0107】
ノルボルネン化合物の重合体の水素化物は、ノルボルネン化合物等を付加重合又はメタセシス開環重合した後、水素添加することにより、合成できる。合成方法は、例えば、特開平1-240517号、特開平7-196736号、特開昭60-26024号、特開昭62-19801号、特開2003-159767号又は特開2004-309979号等の各公報に記載されている。
【0108】
本発明で使用される環状ポリオレフィン樹脂の分子量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、シクロヘキサン溶液(重合体ポリマーが溶解しない場合はトルエン溶液)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフ法で測定したポリイソプレン又はポリスチレン換算の質量平均分子量で、通常、5000~500000、好ましくは8000~200000、より好ましくは10000~100000の範囲であることが好ましい。上記範囲の分子量を有するポリマーは、成形体の機械的強度、及び成形加工性を高い水準でバランスよく両立できる。
【0109】
本発明の偏光板保護膜は、マトリックス樹脂を5質量%以上含むことが好ましく、20質量%以上含むことがより好ましく、50質量%以上含むことがさらに好ましく、70質量%以上含むことがさらに好ましく、80質量%以上含むことがさらに好ましく、90質量%以上含むことも好ましい。
本発明の偏光板保護膜中のマトリックス樹脂の含有量は、通常は99.90質量%以下であり、99.85質量%以下が好ましい。
偏光板保護膜が含有する環状ポリオレフィン樹脂は2種以上であってもよく、組成比及び/又は分子量が異なるポリマー同士を併用してもよい。この場合、各ポリマーの合計含有量が上記範囲内となる。
【0110】
(伸長性樹脂成分)
本発明の偏光板保護膜は、樹脂成分として伸長性を示す成分(伸長性樹脂成分)を適宜選んで含むことができる。具体的には、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS樹脂)、スチレン-ブタジエン樹脂(SB樹脂)、イソプレン樹脂、ブタジエン樹脂や、イソブチエン-イソブテン樹脂、ポリエーテル-ウレタン樹脂、シリコーン樹脂等を挙げることができる。また、これらの樹脂をさらに、適宜水素添加してもよい。
伸長性樹脂成分としては、ABS樹脂又はSB樹脂を用いることが好ましく、SB樹脂を用いることがさらに好ましい。
【0111】
SB樹脂は、例えば、市販されているものが使用でき、このような市販品として、TR2000、TR2003、TR2250(以上、商品名、JSR(株)製)、クリアレン210M、220M、730V(以上、商品名、デンカ(株)製)、アサフレックス800S、805、810、825、830、840(以上、商品名、旭化成(株)製)、エポレックスSB2400、SB2610、SB2710(以上、商品名、住友化学(株))等を挙げることができる。
【0112】
伸長性樹脂成分の含有量は上記マトリックス樹脂の含有量の範囲内であればよい。本発明の偏光板保護膜は、伸長性樹脂成分を、固形分中15~95質量%含むことが好ましい。20~50質量%含むことがより好ましく、25~45質量%含むことがさらに好ましい。
【0113】
伸長性樹脂成分としては、それ自身で厚さ30μm、幅10mmの試料形態とし、25℃での破断伸度を計測した際に、破断伸度が10%以上を示すものが好ましく、20%以上を示すものがより好ましい。
【0114】
(剥離性制御樹脂成分)
本発明の偏光板保護膜は、基材からの偏光板保護膜の剥離を行う工程において剥離性を制御する成分(剥離性制御樹脂成分)を含むことができる。基材からの偏光板保護膜の剥離性を制御することで、剥離後の偏光板保護膜に剥ぎ段跡が付くことを防ぐことができ、また、剥離工程における種々の加工速度への対応が可能になり、偏光板の品質や、生産性向上に好ましい効果を得ることができる。
【0115】
剥離性制御樹脂成分に特に制限はなく、基材の種類に応じて適宜に選ぶことができる。後述するように基材としてポリエステル系ポリマーフィルムを用いる場合、剥離性制御樹脂成分として、例えばポリエステル樹脂(ポリエステル系添加剤とも称す。)が好適である。
【0116】
ポリエステル系添加剤は、多価塩基酸と多価アルコールとの脱水縮合反応、又は、多価アルコールへの無水二塩基酸の付加及び脱水縮合反応などの公知の方法で得ることができ、好ましくは二塩基酸とジオールとから形成される重縮合エステルである。
【0117】
ポリエステル系添加剤の質量平均分子量(Mw)は500~50,000であることが好ましく、750~40,000であることがより好ましく、2,000~30,000であることがさらに好ましい。
ポリエステル系添加剤の質量平均分子量が500以上であると、脆性、湿熱耐久性の観点で好ましく、50,000以下であると、樹脂との相溶性の観点で好ましい。
ポリエステル系添加剤の質量平均分子量は、以下の条件で標準ポリスチレン換算の質量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を測定した。なお、Mnは標準ポリスチレン換算の数平均分子量である。
GPC:ゲル浸透クロマトグラフ装置(東ソー(株)製HLC-8220GPC、カラム;東ソー(株)製ガードカラムHXL-H、TSK gel G7000HXL、TSK gel GMHXL2本、TSK gel G2000HXLを順次連結、溶離液;テトラヒドロフラン、流速;1mL/min、サンプル濃度;0.7~0.8質量%、サンプル注入量;70μL、測定温度;40℃、検出器;示差屈折(RI)計(40℃)、標準物質;東ソー(株)製TSKスタンダードポリスチレン)
【0118】
ポリエステル系添加剤を構成する二塩基酸成分としては、ジカルボン酸を好ましく挙げることができる。
このジカルボン酸としては、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸等が挙げられ、芳香族ジカルボン酸、又は芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジカルボン酸の混合物を好ましく用いることができる。
【0119】
芳香族ジカルボン酸の中でも、炭素数8~20の芳香族カルボン酸が好ましく、炭素数8~14の芳香族ジカルボン酸がより好ましく、具体的には、フタル酸、イソフタル酸、及びテレフタル酸から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0120】
脂肪族ジカルボン酸の中でも、炭素数3~8の脂肪族ジカルボン酸が好ましく、炭素数4~6の脂肪族ジカルボン酸がより好ましく、具体的には、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、及びグルタル酸から選ばれる少なくとも1種が好ましく、コハク酸及びアジピン酸から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
【0121】
また、ポリエステル系添加剤を構成するジオール成分としては、脂肪族ジオール、芳香族ジオール等が挙げられ、特に脂肪族ジオールが好ましい。
脂肪族ジオールの中でも、炭素数2~4の脂肪族ジオールが好ましく、炭素数2~3の脂肪族ジオールがより好ましい。
脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコールなどが挙げることができ、これらを単独又は二種類以上を併用して用いることができる。
【0122】
ポリエステル系添加剤は、特に、フタル酸、イソフタル酸、及びテレフタル酸から選ばれる少なくとも1種と脂肪族ジオールとを縮合して得られる化合物であることが好ましい。
【0123】
ポリエステル系添加剤の末端はモノカルボン酸と反応させて封止してもよい。封止に用いるモノカルボン酸としては脂肪族モノカルボン酸が好ましく、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、安息香酸及びその誘導体が好ましく、酢酸又はプロピオン酸がより好ましく、酢酸が最も好ましい。
【0124】
市販のポリエステル系添加剤としては、日本合成化学工業株式会社製エステル系樹脂ポリエスター(例えば、LP050、TP290、LP035、LP033、TP217、TP220)、東洋紡株式会社製エステル系樹脂バイロン(例えば、バイロン245、バイロンGK890、バイロン103、バイロン200、バイロン550.GK880)等が挙げられる。
【0125】
剥離性制御成分の含有量は上記マトリックス樹脂の含有量の範囲内であればよい。本発明の偏光板保護膜は、剥離性制御樹脂成分の含有量が、偏光板保護膜の全質量に対して(偏光板保護膜の全質量100質量%中)、0.05質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましい。また、剥離性制御樹脂成分を含む量は、偏光板保護膜の全質量に対して、25質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることがさらに好ましい。適度な密着性を得る観点から上記範囲が好ましい。
【0126】
(接着性良化樹脂成分)
マトリックス樹脂に、偏光板保護膜に接する層などとの接着性を高める成分(接着性良化樹脂成分)を含有させることにより、偏光板保護膜と他の層、膜、フィルム、又は他の物品との、より高い接着性を発現させることも好ましい。特に、偏光板保護膜と偏光子との接着性を良化させる成分を含有させることが好ましい。
以下の説明では、偏光板保護膜を接着させる対象(接着対象)が接着層又は偏光子である場合を例として説明するが、接着対象はこれらに限定されない。
【0127】
-ボロン酸基又はボロン酸エステル基含有共重合体-
本発明の偏光板保護膜は、他の層などとの接着性を高める成分として、ボロン酸基又はボロン酸エステル基含有共重合体、例えば下記一般式(ID)で表される繰り返し単位と、下記一般式(IID)で表される繰り返し単位とを含む共重合体(以下、「共重合体(a)」とも呼ぶ。)、及び/又は共重合体(a)に由来する架橋反応物を含有してもよい。
なお、本発明の偏光板保護膜は、共重合体(a)及び共重合体(a)に由来する架橋反応物の少なくとも1種を含有することが好ましく、どちらか1種のみを含有していてもよいし、両方を含有していてもよい。
【0128】
【化25】
【0129】
一般式(ID)中、Rは水素原子又は炭素数1~20のアルキル基を示す。Rは少なくとも1つのフッ素原子を置換基として有する炭素数1~20のアルキル基、又は-Si(Ra3)(Ra4)O-を含む基を示す。Ra3及びRa4はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルキル基、又はアリール基を示す。Lは-O-、-(C=O)O-、-O(C=O)-、2価の脂肪族鎖状基、及び2価の脂肪族環状基からなる群より選択される少なくとも1つから構成される2価の連結基を示す。
【0130】
【化26】
【0131】
一般式(IID)中、R10は水素原子又は炭素数1~20のアルキル基を示す。R11及びR12はそれぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基、置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換のヘテロアリール基を示し、R11とR12とは連結していてもよい。Xは、2価の連結基を示す。
【0132】
--共重合体(a)、又は共重合体(a)に由来する架橋反応物--
以下、偏光板保護膜に含有される共重合体(a)、又は共重合体(a)に由来する架橋反応物について説明する。
【0133】
一般式(ID)中のRは水素原子又は炭素数1~20のアルキル基を示し、水素原子又は炭素数1~10のアルキル基が好ましく、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基がより好ましく、水素原子又はメチル基がさらに好ましい。
【0134】
一般式(ID)中のRは少なくとも1つのフッ素原子を置換基として有する炭素数1~20のアルキル基(フルオロアルキル基)が好ましく、炭素数1~18のフルオロアルキル基であることがより好ましく、炭素数2~15のフルオロアルキル基であることがさらに好ましい。また、フルオロアルキル基中のフッ素原子数は、1~25であることが好ましく、3~21であることがより好ましく、5~21であることが最も好ましい。
【0135】
一般式(ID)中のLは-O-、-(C=O)O-、-O(C=O)-、2価の脂肪族鎖状基、及び2価の脂肪族環状基からなる群より選択される少なくとも1つから構成される2価の連結基を示す。なお、-(C=O)O-は、R側の炭素原子とC=Oが結合し、RとOが結合することを表し、-O(C=O)-は、R側の炭素原子とOが結合し、RとC=Oが結合することを表す。
Lが採り得る2価の脂肪族鎖状基としては、炭素数1~20のアルキレン基が好ましく、炭素数1~10のアルキレン基がより好ましい。
Lが採り得る2価の脂肪族環状基としては、炭素数3~20のシクロアルキレン基が好ましく、炭素数3~15のシクロアルキレン基がより好ましい。
Lとしては、-(C=O)O-又は-O(C=O)-が好ましく、-(C=O)O-がより好ましい。
【0136】
接着性に有利な表面偏在性(共重合体(a)を偏光板保護膜の表面に偏在させる機能)の観点及びラジカル重合性の観点から、一般式(ID)で表される繰り返し単位は、下記一般式(IIID)で表される繰り返し単位であることが特に好ましい。
【0137】
【化27】
【0138】
一般式(IIID)中、Rは水素原子又は炭素数1~20のアルキル基を示す。ma及びnaは各々独立に1~18の整数であり、ma+na≦19を満たす。Xは水素原子又はフッ素原子を示す。
【0139】
一般式(IIID)中のRは一般式(ID)中のRと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0140】
一般式(IIID)中のma及びnaは各々独立に1~18の整数である。
接着性に有利な表面偏在の観点並びに原料入手及び製造の容易さの観点から、一般式(IIID)中のmaは1~8の整数であることが好ましく、1~5の整数であることがより好ましい。また、naは1~15の整数であることが好ましく、1~12の整数であることがより好ましく、2~10の整数であることがさらに好ましく、5~7の整数が最も好ましい。
【0141】
一般式(IIID)中のXは水素原子又はフッ素原子を示し、フッ素原子が好ましい。
一般式(ID)又は一般式(IIID)で表される繰り返し単位は、置換可能な場合にはさらに置換基を有していてもよい。置換基としては、後述する置換基群Yから選択されるものが好ましく、ヒドロキシ基が好ましい。
【0142】
一般式(ID)又は(IIID)で表される繰り返し単位は、単量体の重合により導入することができる。好ましい単量体としては、例えば2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロデシル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロ-3-メチルブチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロ-5-メチルヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロ-7-メチルオクチル)エチル(メタ)アクリレート、1H,1H,3H-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、1H,1H,7H-ドデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、1H,1H,9H-ヘキサデカフルオロノニル(メタ)アクリレート、1H-1-(トリフオロメチル)トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,3H-ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、3-パーフルオロブチル-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-パーフルオロヘキシル-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-パーフルオロオクチル-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロ-3-メチルブチル)-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロ-5-メチルヘキシル)-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロ-7-メチルオクチル)-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0143】
一般式(ID)中のRは、-Si(Ra3)(Ra4)O-(シロキサン結合)を含む基であってもよく、-Si(Ra3)(Ra4)O-で表されるシロキサン結合を繰り返し単位として含むポリシロキサン構造を有することも別の態様として好ましい。この場合、共重合体(a)としては、ポリシロキサン構造が側鎖に導入されたグラフト共重合体であることが好ましい。このグラフト共重合体を得るためのシロキサン結合を有する化合物は、下記一般式(IVD)で表される化合物であることがより好ましい。
【0144】
【化28】
【0145】
a3及びRa4は、それぞれ独立に炭素数1~12のアルキル基(ハロアルキル基を含む)、又はアリール基を示す。アルキル基としては、炭素数1~10のアルキル基が好ましい。例えば、メチル基、エチル基、ヘキシル基を挙げることができる。アルキル基はハロゲン原子で置換されたハロアルキル基でもよく、ハロアルキル基としては、炭素数1~10のフッ素化アルキル基が好ましい。例えば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基を挙げることができる。アリール基としては、炭素数6~20のアリール基が好ましい。例えばフェニル基、ナフチル基を挙げることができる。なかでも、Ra3及びRa4は、メチル基、トリフルオロメチル基、又はフェニル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
a1は水素原子又は炭素数1~20のアルキル基を示す。
a5は、炭素数1~12のアルキル基を示し、炭素数1~4のアルキル基が好ましい。
nnは、10~1000の整数が好ましく、20~500の整数がより好ましく、30~200の整数がさらに好ましい。
一般式(IVD)中のnn個のRa3は同じでも異なっていてもよく、nn個のRa4は同じでも異なっていてもよい。
【0146】
グラフト共重合用のシロキサン結合を有する化合物としては、片末端(メタ)アクリロイル基含有ポリシロキサンマクロマー(例えば、サイラプレーン0721、同0725(以上、商品名、JNC(株)製)、AK-5、AK-30、AK-32(以上、商品名、東亜合成(株)社製)、KF-100T、X-22-169AS、KF-102、X-22-3701IE、X-22-164B、X-22-164C、X-22―5002、X-22-173B、X-22-174D、X-22-167B、X-22-161AS(以上、商品名、信越化学工業(株)製)等を挙げることができる。
【0147】
次に、下記一般式(IID)について説明する。
共重合体(a)は、上記一般式(ID)で表される繰り返し単位に加え、一般式(IID)で表される繰り返し単位を含む。共重合体(a)は、一般式(IID)で表される繰り返し単位が、水酸基に対して強い相互作用を持つ。即ち、基材上に偏光板保護膜形成用の組成物の塗布液を塗布した後に、上記塗布液表面に、水酸基を有する接着層を設けると、一般式(IID)で表される繰り返し単位の一部又は全部が水酸基と相互作用することにより、共重合体(a)は水酸基を有する接着層界面及び接着層の内部に拡散して吸着される。
したがって、偏光板保護膜と接着層が接した後では、上記塗布液中に添加された一般式(IID)で表される繰り返し単位を有する共重合体(a)は、偏光板保護膜、接着層、及び、両者の界面で、一般式(IID)そのままの化学構造を有する共重合体、若しくは、一般式(IID)で表される繰り返し単位が接着層の水酸基と反応した構造を有する誘導体(架橋反応物)として存在する。
このように、一般式(IID)で表される繰り返し単位を有する共重合体(a)が接着層と相互作用するため、接着層及び/又は偏光板保護膜中に存在する共重合体(a)の比率に拘らず、共重合体(a)を含む偏光板保護膜と接着層との接着性を高めることができ、その結果、偏光子との接着性を高めることができる。
また、偏光板保護膜を接着層以外のものに張り付ける場合であっても、対象物が表面に水酸基を有する場合には、接着層の場合と同様に、接着性を高めることができる。
【0148】
【化29】
【0149】
一般式(IID)中、R10は水素原子又は炭素数1~10のアルキル基が好ましく、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基がより好ましく、水素原子又はメチル基が最も好ましい。
【0150】
一般式(IID)中、R11及びR12として採り得る、置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基としては、例えば、置換若しくは無置換の、アルキル基、アルケニル基及びアルキニル基が挙げられる。
上記アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1-メチルブチル基、イソヘキシル基、2-メチルヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1-アダマンチル基、2-ノルボルニル基等の直鎖状、分枝状、又は環状のアルキル基が挙げられる。
上記アルケニル基の具体例としては、ビニル基、1-プロペニル基、1-ブテニル基、1-メチル-1-プロペニル基、1-シクロペンテニル基、1-シクロヘキセニル基等の直鎖状、分枝状、又は環状のアルケニル基が挙げられる。
上記アルキニル基の具体例としては、エチニル基、1-プロピニル基、1-ブチニル基、1-オクチニル基等が挙げられる。
【0151】
11及びR12が採りうる置換若しくは無置換のアリール基の具体例としては、フェニル基が挙げられる。また、2個から4個のベンゼン環が縮合環を形成したものから水素原子を1個除して得られる基、ベンゼン環と不飽和五員環とが縮合環を形成したものから水素原子を1個除して得られる基を挙げることができ、具体例としてはナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、インデニル基、アセナブテニル基、フルオレニル基、ピレニル基等が挙げられる。
また、R11及びR12がそれぞれ採りうる置換若しくは無置換のヘテロアリール基の例としては、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群から選ばれるヘテロ原子を1個以上含む複素芳香環上の水素原子を1個除し、ヘテロアリール基としたものが含まれる。窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群から選ばれるヘテロ原子を1個以上含む複素芳香環の具体例としては、ピロール、フラン、チオフェン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、オキサジアゾール、チアゾール、チアジアゾール、インドール、カルバゾール、ベンゾフラン、ジベンゾフラン、チアナフテン、ジベンゾチオフェン、インダゾールベンズイミダゾール、アントラニル、ベンズイソオキサゾール、ベンズオキサゾール、ベンゾチアゾール、プリン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、キノリン、アクリジン、イソキノリン、フタラジン、キナゾリン、キノキザリン、ナフチリジン、フェナントロリン、プテリジン等が挙げられる。
【0152】
11とR12とは連結していてもよく、この場合には、R11及びR12がそれぞれ独立に、アルキル基又はアリール基であって、これらが互いに連結していることが好ましく、R11及びR12がアルキル基であって、これらが互いに連結していることがより好ましい。
【0153】
一般式(IID)中、Xで表される2価の連結基としては、-(C=O)O-、-O(C=O)-、-(C=O)NH-、-O-、-CO-、-NH-、-O(C=O)-NH-、-O(C=O)-O-、及び-CH-から選択される結合を少なくとも1つ含み、かつ炭素数が7以上である連結基が好ましい。Xで表される2価の連結基は、アリーレン基であることも好ましい。
【0154】
一般式(IID)中の、R11、R12及びXは、可能な場合は1個以上の置換基によって置換されていてもよい。置換基としては水素原子を除く1価の非金属原子団を挙げることができ、例えば、以下の置換基群Yから選ばれる。
置換基群Y:
ハロゲン原子(-F、-Br、-Cl、-I)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N-アルキルアミノ基、N,N-ジアルキルアミノ基、N-アリールアミノ基、N,N-ジアリールアミノ基、N-アルキル-N-アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、N-アルキルカルバモイルオキシ基、N-アリールカルバモイルオキシ基、N,N-ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N-ジアリールカルバモイルオキシ基、N-アルキル-N-アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N-アルキルアシルアミノ基、N-アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N'-アルキルウレイド基、N',N'-ジアルキルウレイド基、N'-アリールウレイド基、N',N'-ジアリールウレイド基、N'-アルキル-N'-アリールウレイド基、N-アルキルウレイド基、N-アリールウレイド基、N'-アルキル-N-アルキルウレイド基、N'-アルキル-N-アリールウレイド基、N',N'-ジアルキル-N-アルキルウレイド基、N',N'-ジアルキル-N-アリールウレイド基、N'-アリール-N-アルキルウレイド基、N'-アリール-N-アリールウレイド基、N',N'-ジアリール-N-アルキルウレイド基、N',N'-ジアリール-N-アリールウレイド基、N'-アルキル-N'-アリール-N-アルキルウレイド基、N'-アルキル-N'-アリール-N-アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N-アルキル-N-アルコキシカルボニルアミノ基、N-アルキル-N-アリーロキシカルボニルアミノ基、N-アリール-N-アルコキシカルボニルアミノ基、N-アリール-N-アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシ基及びその共役塩基基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N-アルキルカルバモイル基、N,N-ジアルキルカルバモイル基、N-アリールカルバモイル基、N,N-ジアリールカルバモイル基、N-アルキル-N-アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(-SOH)及びその共役塩基基、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N-アルキルスルフィナモイル基、N,N-ジアルキルスルフィナモイル基、N-アリールスルフィナモイル基、N,N-ジアリールスルフィナモイル基、N-アルキル-N-アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N-アルキルスルファモイル基、N,N-ジアルキルスルファモイル基、N-アリールスルファモイル基、N,N-ジアリールスルファモイル基、N-アルキル-N-アリールスルファモイル基、N-アシルスルファモイル基及びその共役塩基基、N-アルキルスルホニルスルファモイル基(-SONHSO(alkyl))及びその共役塩基基、N-アリールスルホニルスルファモイル基(-SONHSO(aryl))及びその共役塩基基、N-アルキルスルホニルカルバモイル基(-CONHSO(alkyl))及びその共役塩基基、N-アリールスルホニルカルバモイル基(-CONHSO(aryl))及びその共役塩基基、アルコキシシリル基(-Si(Oalkyl))、アリーロキシシリル基(-Si(Oaryl))、ヒドロキシシリル基(-Si(OH))及びその共役塩基基、ホスホノ基(-PO)及びその共役塩基基、ジアルキルホスホノ基(-PO(alkyl))、ジアリールホスホノ基(-PO(aryl))、アルキルアリールホスホノ基(-PO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノ基(-POH(alkyl))及びその共役塩基基、モノアリールホスホノ基(-POH(aryl))及びその共役塩基基、ホスホノオキシ基(-OPO)及びその共役塩基基、ジアルキルホスホノオキシ基(-OPO(alkyl))、ジアリールホスホノオキシ基(-OPO(aryl))、アルキルアリールホスホノオキシ基(-OPO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノオキシ基(-OPOH(alkyl))及びその共役塩基基、モノアリールホスホノオキシ基(-OPOH(aryl))及びその共役塩基基、シアノ基、ニトロ基、アリール基、アルケニル基及びアルキニル基。
また、これらの置換基は、可能であるならば置換基同士、又は置換している炭化水素基と結合して環を形成してもよい。
【0155】
一般式(IID)中のR11及びR12はそれぞれ独立に水素原子若しくはアルキル基であるか、又は共にアルキル基であり互いに結合して環を形成していることが好ましく、R11及びR12は共に水素原子であるか、又は共にアルキル基であり互いに結合して環を形成していることが好ましい。
【0156】
接着性の観点から、一般式(IID)で表される繰り返し単位は、下記一般式(VD)で表される繰り返し単位であることが好ましい。一般式(VD)で表される繰り返し単位による接着性の向上は、水酸基を有する接着層と極性を近づける効果によると推定する。
【0157】
【化30】
【0158】
一般式(VD)中、R10、R11及びR12はそれぞれ一般式(IID)中のR10、R11及びR12と同義である。X11は-(C=O)O-、-O(C=O)-、-(C=O)NH-、-O-、-CO-、-CH-からなる群より選択される2価の連結基を示す。X12は-(C=O)O-、-O(C=O)-、-(C=O)NH-、-O-、-CO-、-NH-、-O(C=O)-NH-、-O(C=O)-O-、-CH-から選択される結合を少なくとも1つ含み、かつ置換若しくは無置換の芳香環を少なくとも1つ含む2価の連結基を示す。ただし、上記X11と上記X12の合計炭素数は7以上である。
【0159】
一般式(VD)中のX11としては、-(C=O)O-、-O(C=O)-、-(C=O)NH-が好ましく、-(C=O)O-が最も好ましい。
12は、芳香環を1~5個含むことが好ましく、芳香環を2~4個含むことがさらに好ましく、芳香環を2~3個含むことが最も好ましい。X12が有する芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環等が挙げられる。
一般式(VD)中のR10、R11及びR12の好ましい範囲はそれぞれ、一般式(IID)中のR10、R11及びR12と同様である。
【0160】
一般式(IID)又は(VD)で表される繰り返し単位は、下記一般式(VID)で表される繰り返し単位であることがより好ましい。
【0161】
【化31】
【0162】
一般式(VID)中、X21は-(C=O)O-、又は-(C=O)NH-を示す。X22は-(C=O)O-、-O(C=O)-、-(C=O)NH-、-O-、-CO-、-NH-、-O(C=O)-NH-、-O(C=O)-O-、-CH-から選択される結合を少なくとも1つ含む2価の連結基である。X22は置換若しくは無置換の芳香環を含んでいてもよい。
【0163】
一般式(VID)中のR10、R11及びR12の好ましい範囲はそれぞれ、一般式(IID)中のR10、R11及びR12と同様である。X22が有する芳香環は、X12が有する芳香環と同様である。
【0164】
一般式(IID)、(VD)又は(VID)で表される繰り返し単位は、単量体の重合により得ることができる。一般式(IID)、(VD)又は(VID)で表される繰り返し単位を与える好ましい単量体の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0165】
【化32】
【0166】
【化33】
【0167】
【化34】
【0168】
【化35】
【0169】
また、本発明における共重合体(a)は、必要に応じて、一般式(ID)で表される繰り返し単位及び一般式(IID)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位(その他の繰り返し単位)を有していてもよい。
【0170】
その他の繰り返し単位を与える他の種類の単量体としては、PolymerHandbook 2nd ed.,J.Brandrup,Wiley lnterscience(1975) Chapter2 Page1~483に記載のものを用いることが出来る。例えばアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、イタコン酸ジアルキル類、フマール酸のジアルキルエステル類又はモノアルキルエステル類等から選ばれる付加重合性不飽和結合を1個有する化合物等を挙げることができる。
【0171】
その他の繰り返し単位を与える単量体として具体的には、以下の単量体を挙げることができる。
アクリル酸エステル類:
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、クロルエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、トリメチロールプロパンモノアクリレート、ベンジルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2-アクリロイルオキシエチルサクシネート、アクリル酸2-カルボキシエチル等、
メタクリル酸エステル類:
メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、クロルエチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、トリメチロールプロパンモノメタクリレート、ベンジルメタクリレート、メトキシベンジルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、エチレングリコールモノアセトアセタートモノメタクリレート、2-メタクリロイロキシエチルフタル酸、2-メタクリロイルオキシエチルサクシネート、2-メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、メタクリル酸2-カルボキシエチル等、
【0172】
アクリルアミド類:
アクリルアミド、N-アルキルアクリルアミド(アルキル基としては炭素数1~3のもの、例えばメチル基、エチル基、プロピル基)、N,N-ジアルキルアクリルアミド(アルキル基としては炭素数1~6のもの)、N-ヒドロキシエチル-N-メチルアクリルアミド、N-2-アセトアミドエチル-N-アセチルアクリルアミドなど。
メタクリルアミド類:
メタクリルアミド、N-アルキルメタクリルアミド(アルキル基としては炭素数1~3のもの、例えばメチル基、エチル基、プロピル基)、N,N-ジアルキルメタクリルアミド(アルキル基としては炭素数1~6のもの)、N-ヒドロキシエチル-N-メチルメタクリルアミド、N-2-アセトアミドエチル-N-アセチルメタクリルアミドなど。
アリル化合物:
アリルエステル類(例えば酢酸アリル、カプロン酸アリル、カプリル酸アリル、ラウリン酸アリル、パルミチン酸アリル、ステアリン酸アリル、安息香酸アリル、アセト酢酸アリル、乳酸アリルなど)、アリルオキシエタノールなど
【0173】
ビニルエーテル類:
アルキルビニルエーテル(例えばヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、デシルビニルエーテル、エチルヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、1-メチル-2,2-ジメチルプロピルビニルエーテル、2-エチルブチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールビニルエーテル、ジメチルアミノエチルビニルエーテル、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、ブチルアミノエチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテルなど
ビニルエステル類:
ビニルアセテート、ビニルブチレート、ビニルイソブチレート、ビニルトリメチルアセテート、ビニルジエチルアセテート、ビニルバレート、ビニルカプロエート、ビニルクロルアセテート、ビニルジクロルアセテート、ビニルメトキシアセテート、ビニルブトキシアセテート、ビニルラクテート、ビニル-β―フェニルブチレート、ビニルシクロヘキシルカルボキシレートなど。
【0174】
イタコン酸ジアルキル類:
イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチルなど。
フマール酸のジアルキルエステル類又はモノアルキルエステル類:ジブチルフマレートなど。
【0175】
その他の繰り返し単位を与える単量体としては、クロトン酸、イタコン酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、マレイロニトリル、スチレン、4-ビニル安息香酸、スチレンマクロマー(東亜合成社製AS-6S)、メチルメタクリレートマクロマー(東亜合成社製AA-6)なども挙げられる。
【0176】
また、重合後のポリマーを高分子反応にて構造を変換し、一般式(ID)又は一般式(IID)で表される繰り返し単位以外の構造を導入することも可能である。
【0177】
また、共重合体(a)は、熱架橋性基を有していることが好ましい。共重合体(a)が有する熱架橋性基としては、ポリスチレン樹脂において説明したものと同様のものを用いることができる。共重合体(a)は、熱架橋性基を有する繰り返し単位を含むことが好ましい。熱架橋性基を有する繰り返し単位を与える単量体としては、上述のその他の繰り返し単位を与える単量体であって熱架橋性基を有するもの、若しくはその他の繰り返し単位を与える単量体に熱架橋性基が置換したものが挙げられる。
【0178】
共重合体(a)は、偏光板保護膜中に含まれる他の化合物と熱架橋することが特に好ましい。熱架橋することにより、共重合体(a)を偏光板保護膜の表面に固定化することができ、偏光板保護膜と他の層、膜、フィルム、又は他の物品との、より高い接着性を発現することが可能となる。なかでも、共重合体(a)及び後述するスチレン系樹脂がそれぞれ互いに反応性を示す熱架橋性基を有することが好ましい。
【0179】
共重合体(a)中の、一般式(ID)で表される繰り返し単位の含有量は、共重合体(a)全質量に対して、5~95質量%が好ましく、8~90質量%がより好ましく、10~85質量%がさらに好ましい。
【0180】
共重合体(a)中の、一般式(IID)で表される繰り返し単位の含有量は、共重合体(a)全質量に対して、0.5~80質量%が好ましく、1~70質量%がより好ましく、2~60質量%がさらに好ましい。
【0181】
共重合体(a)中の、熱架橋性基を有する繰り返し単位の含有量は、共重合体(a)全質量に対して、0.5~60質量%が好ましく、1~50質量%がより好ましく、2~40質量%がさらに好ましい。
【0182】
共重合体(a)の質量平均分子量(Mw)は、1000~200000が好ましく、1800~150000がより好ましく、2000~150000がさらに好ましく、2500~140000が特に好ましく、20000~120000が極めて好ましい。
共重合体(a)の数平均分子量(Mn)は、500~160000が好ましく、600~120000がより好ましく、600~100000がさらに好ましく、1000~80000が特に好ましく、2000~60000が極めて好ましい。
共重合体(a)の分散度(Mw/Mn)は、1.00~18.00が好ましく、1.00~16.00がより好ましく、1.00~14.00がさらに好ましく、1.00~12.00が特に好ましく、1.00~10.00が極めて好ましい。
なお、質量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により下記の条件で測定された値である。
[溶離液] N-メチル-2-ピロリドン(NMP)
[装置名] EcoSEC HLC-8320GPC(東ソー株式会社製)
[カラム] TSKgel SuperAWM-H(東ソー株式会社製)
[カラム温度] 40℃
[流速] 0.50ml/min
【0183】
共重合体(a)は、公知の方法で合成することができる。
【0184】
共重合体(a)の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0185】
【化36】
【0186】
【化37】
【0187】
【化38】
【0188】
【化39】
【0189】
共重合体(a)の含有量は上記マトリックス樹脂の含有量の範囲内であればよい。上記共重合体(a)は、偏光板保護膜の機能を損なわず、接着剤等との接着を強化する観点から、本発明の偏光板保護膜の全固形分(溶剤を除いた全成分)を100質量%とした場合に、0.0001~40質量%含有されることが好ましく、0.001~20質量%含有されることがより好ましく、0.005~10質量%含有されることがさらに好ましい。
【0190】
マトリックス樹脂は、上記の接着性改良性樹脂とは別に、上述の接着性を付与する官能基及び/又は熱架橋性基を付与した樹脂を含有していてもよい。
【0191】
<その他の成分>
本発明の偏光板保護膜は、上述した色素とマトリックス樹脂に加え、偏光度向上剤、褪色防止剤、マット剤、レベリング剤等を含んでもよい。
【0192】
(偏光度向上剤)
本発明の偏光板保護膜は偏光度向上剤を含有することが好ましい。偏光度向上剤により色素が発する蛍光を消光することにより、偏光板の偏光度を向上させることができる。
【0193】
本発明に用いる偏光度向上剤は、電子供与型消光剤、又は電子受容型消光剤であることが好ましい。以下に、本発明に用いる電子供与型消光剤及び電子受容型消光剤について説明する。
【0194】
-電子供与型消光剤-
本発明に用いる電子供与型消光剤は、励起状態の色素の二つのSOMOのうちの低エネルギー準位のSOMOに電子を供与したのち、色素の高エネルギー準位のSOMOから電子を受け取ることにより、励起状態の色素を基底状態に失活させるものである。
本発明に用いる電子供与型消光剤のHOMOのエネルギー準位は、上記色素のHOMOのエネルギー準位に対して以下の関係式[A-1]を満たすことが好ましい。

関係式[A-1] EHq-EHd≦0.40eV

ここでEHdとEHqはそれぞれ以下の値を示す。
Hd:色素のHOMOのエネルギー準位
Hq:電子供与型消光剤のHOMOのエネルギー準位

エネルギー準位が上記関係を満たすことにより、色素が発する蛍光を効果的に抑制することが可能となる。
本発明に用いる電子供与型消光剤のHOMOのエネルギー準位は、関係式[A-2]を満たすことがより好ましく、関係式[A-3]を満たすことが最も好ましい。
関係式[A-2] EHq-EHd≦0.20eV
関係式[A-3] EHq-EHd≦0.10eV
【0195】
--エネルギー準位の算出方法--
本発明に用いる色素及び偏光度向上剤のエネルギー準位は、HOMOについては酸化電位、LUMOについては還元電位から求めた値を用いる。以下に各々の電位の測定、算出方法を説明する。
【0196】
--色素の酸化電位、偏光度向上剤の酸化電位、及び偏光度向上剤の還元電位の測定--
本発明に用いる色素の酸化電位、並びに偏光度向上剤の酸化電位及び還元電位は、電気化学アナライザー(ALS社製660A)により、作用電極は金電極、対極は白金黒電極、参照電極はAg線、支持電解質はヘキサフルオロリン酸テトラブチルアンモニウム、をそれぞれ用いて測定し、同条件で測定したフェロセン/フェリシニウムイオン系(Fc/Fc)を標準電位とした値で示すものとする。なお、後述する偏光度向上剤内蔵型色素については、二つの酸化電位が検出されるが、貴の電位を色素部の酸化電位、卑の電位を偏光度向上剤部の酸化電位に帰属させる。
【0197】
--色素の還元電位の算出--
まず、色素の吸収スペクトルを分光光度計(HP社製8430)、同じく蛍光スペクトルを蛍光光度計(HORIBA社製Fluorog3)、を用いて測定する。なお、測定溶媒は上記電位測定と同じ溶媒を用いる。
次に、上記で得られた吸収スペクトル及び蛍光スペクトルを、吸収極大波長における吸光度及び発光極大波長における発光度で各々規格化し、両者の交点となる波長を求め、この波長の値をエネルギー単位(eV)に変換し、HOMO-LUMOバンドギャップとする。
上記で測定した色素の酸化電位の値(eV)に上記HOMO-LUMOバンドギャップの値を加えることにより、色素の還元電位を算出する。
【0198】
以下に本発明において電子供与型消光剤として好ましく用いられる化合物について説明する。
下記一般式(I)又は(I’)で表される構造は本発明に用いる電子供与型消光剤として好ましく用いることができる。
【0199】
【化40】
【0200】
一般式(I)中、Rは水素原子、アルキル基、アシル基、スルホニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基又はトリアルキルシリル基を示し、Aは5員若しくは6員環を完成するに必要な非金属原子を示す。R、R及びRはそれぞれ水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アラルキル基、アラルコキシ基、アルケニル基、アルケノキシ基、アシルアミノ基、ハロゲン原子、アルキルチオ基、ジアシルアミノ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基又はスルホンアミド基を示し、これらは互いに同じでも異っていてもよい。さらに一般式(I)で表される化合物には環Aがスピロ原子を含む構造である、ビススピロ化合物が包含される。
【0201】
一般式(I)におけるRで示される好ましいアルキル基としては、例えばメチル、エチル、プロピル等;アシル基としては、例えばアセチル、ベンゾイル等;スルホニル基としては、例えばメタンスルホニル、ブタンスルホニル、ベンゼンスルホニル、トルエンスルホニル等;カルバモイル基としては、例えばN-メチルカルバモイル、N,N-ジエチルカルバモイル、N-フェニルカルバモイル等;スルファモイル基としては、例えばN-メチルスルファモイル、N,N-ジメチルスルファモイル、N-フェニルスルファモイル等;アルコキシカルボニル基としては、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル等;アリールオキシカルボニル基としては、例えばフェノキシカルボニル等;トリアルキルシリル基としては、例えばトリメチルシリル、ジメチルブチルシリル等が挙げられる。
【0202】
一般式(I)におけるAは5員若しくは6員環を完成するに必要な非金属原子を示し、この環は置換基を有してもよい。この置換基の好ましい例としてアルキル基(例えば、メチル等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ等)、アリール基(例えばフェニル等)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ等)、アラルキル基(例えばベンジル等)、アラルコキシ基(例えばベンジルオキシ等)、アルケニル基(例えばアリル等)、N-置換アミノ基(例えばアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、N-アルキル-N-アリールアミノ基、ピペラジノ等)、ヘテロ環基(例えばベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾイル等)などが挙げられる。また、縮合環を形成する残基を有してもよい。上記Aが有してもよい置換基としてのアルキル基及びアリール基はさらに置換基を有していてもよく、この置換基の好ましい例としてハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、スルホ基、スルホニルオキシ基、アミド基(例えばアセトアミド、エタンスルホンアミド、ベンゾアミド等)、アルコキシ基、アリールオキシ基などが挙げられる。
【0203】
一般式(I)におけるR、R及びRで示される好ましいアルキル基としては、例えばメチル、エチル、プロピル等;シクロアルキル基としては、例えばシクロヘキシル等;アルコキシ基としては、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ等;アリール基としては、例えばフェニル等;アリールオキシ基としては、例えばフェノキシ等;アラルキル基としては、例えばベンジル等;アラルコキシ基としては、例えばベンジルオキシ等;アルケニル基としては、例えばアリル等;アルケノキシ基としては、例えばアリルオキシ等;アシルアミノ基としては例えばアセチルアミノ、ベンズアミド等;ハロゲン原子としては、例えばクロル原子、ブロム原子等;アルキルチオ基としては、例えばエチルチオ等;ジアシルアミノ基としては、例えばコハク酸イミド、ヒダントイニル等;アリールチオ基としては、例えばフェニルチオ等;アルコキシカルボニル基としては例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル等;アシルオキシ基としては、例えばアセチルオキシ、ベンゾイルオキシ等;アシル基としては、例えばメチルカルボニル等;スルホンアミド基としては、例えばジメチルスルホンアミド、ジエチルスルホンアミド等が挙げられる。
【0204】
一般式(I)で表される化合物の好ましい形態であるビススピロ化合物としては次の一般式(I’)で表されるものが挙げられる。
【0205】
【化41】
【0206】
一般式(I’)におけるR、R、R、Rは一般式(I)におけるR、R、R及びRと同義である。また、一般式(I’)におけるR’、R’、R’及びR’は一般式(I)におけるR、R、R及びRと同義である。
【0207】
上記一般式(I)におけるR、R、R及び環Aに含まれる炭素原子の合計は、好ましくは20以下、特に好ましくは12以下である。また通常の目的には、一般式(I)で表される化合物は、好ましくは分子中に含まれる炭素原子の総数が30程度までのものであり、上記一般式(I)においてR及びRの一方が水素原子である5-ヒドロキシクマラン化合物及び6-ヒドロキシクロマン化合物、並びに一般式(I’)に包含される6,6’-ジヒドロキシビス-2,2’-スピロクロマン化合物が特に有用である。さらに好ましくは一般式(I)、並びに一般式(I’)のR、R、R、R’、R’及びR4’は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基又はアルキルチオ基である。
一般式(I)ないし(I’)で表される化合物の具体例を以下に示す。
【0208】
【化42】
【0209】
【化43】
【0210】
【化44】
【0211】
【化45】
【0212】
【化46】
【0213】
下記一般式(L)で表されるメタロセンも本発明に用いる電子供与型消光剤として好ましい。
【0214】
【化47】
【0215】
一般式(L)中、MはFe、Ti、V、Cr、Co、Ni、Ru、Os又はPdを示す。V1、V2、V3、V4、V5、V6、V7、V8、V9及びV10は各々水素原子又は1価の置換基を示す。さらに好ましくはMがFeの場合であり、このような化合物はフェロセン類と呼ばれている。
【0216】
以下に一般式(L)について詳細に説明する。
一般式(L)における、V1、V2、V3、V4、V5、V6、V7、V8、V9及びV10は水素原子又は1価の置換基を示す。置換基としては、いかなるものでも良いが、好ましくは次のものが挙げられる。
【0217】
例えば無置換アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、オクタデシル基、シクロペンチル基、シクロプロピル基、シクロヘキシル基)、置換アルキル基{置換基をVとすると、Vで示される置換基(置換基V)として特に制限はないが、例えばカルボキシ基、スルホ基、シアノ基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子)、ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基)、アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基)、
【0218】
炭素数18以下のアリールオキシ基(例えばフェノキシ基、4-メチルフェノキシ基、α-ナフトキシ基)、アシルオキシ基(例えばアセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基)、アシル基(例えばアセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基、メシル基)、カルバモイル基(例えばカルバモイル基、N,N-ジメチルカルバモイル基、モルホリノカルボニル基、ピペリジノカルボニル基)、スルファモイル基(例えば、スルファモイル基、N,N-ジメチルスルファモイル基、モルホリノスルホニル基、ピペリジノスルホニル基)、アリール基(例えばフェニル基、4-クロロフェニル基、4-メチルフェニル基、α-ナフチル基)、
【0219】
複素環基(例えば、2-ピリジル基、テトラヒドロフルフリル基、モルホリノ基、2-チオフェノ基)、アミノ基(例えば、アミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、ジフェニルアミノ基)、アルキルチオ基(例えばメチルチオ基、エチルチオ基)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、プロピルスルホニル基)、アルキルスルフィニル基(例えばメチルスルフィニル基)、ニトロ基、リン酸基、アシルアミノ基(例えばアセチルアミノ基)、アンモニウム基(例えばトリメチルアンモニウム基、トリブチルアンモニウム基)、メルカプト基、ヒドラジノ基(例えばトリメチルヒドラジノ基)、ウレイド基(例えばウレイド基、N,N-ジメチルウレイド基)、イミド基、不飽和炭化水素基(例えば、ビニル基、エチニル基、1-シクロヘキセニル基、ベンジリジン基、ベンジリデン基)、ホルミル基、ホウ酸基が挙げられる。置換基Vは、後述する一般式(L)で表される化合物の典型例が有する置換基であってもよい。置換基Vの炭素原子数は18以下が好ましい。またこれらの置換基上にさらにVが置換していてもよい。}
【0220】
無置換アリール基(例えば、フェニル基、1-ナフチル基)、置換アリール基(置換基としては前述のVが挙げられる。)、無置換複素環基(例えば、2-ピリジル基、2-チアゾリル基、モルホリノ基、2-チオフェノ基)、置換複素環基(置換基としては前述のVが挙げられる。)、又は前述の置換基Vが好ましく用いられる。
【0221】
より具体的にはアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、カルボキシメチル基、2-カルボキシエチル基、3-カルボキシプロピル基、4-カルボキシブチル基、スルホメチル基、2-スルホエチル基、3-スルホプロピル基、4-スルホブチル基、3-スルホブチル基、2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル基、2-シアノエチル基、2-クロロエチル基、2-ブロモエチル基、2-ヒドロキシエチル基、3-ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、4-ヒドロキシブチル基、2,4-ジヒドロキシブチル基、2-メトキシエチル基、2-エトキシエチル基、メトキシメチル基、2-エトキシカルボニルエチル基、メトキシカルボニルメチル基、2-メトキシエチル基、2-エトキシエチル基、2-フェノキシエチル基、2-アセチルオキシエチル基、2-プロピオニルオキシエチル基、2-アセチルエチル基、
【0222】
3-ベンゾイルプロピル基、2-カルバモイルエチル基、2-モルホリノカルボニルエチル基、スルファモイルメチル基、2-(N,N-ジメチルスルファモイル)エチル基、ベンジル基、2-ナフチルエチル基、2-(2-ピリジル)エチル基、アリル基、3-アミノプロピル基、ジメチルアミノメチル基、3-ジチルアミノプロピル基、メチルチオメチル基、2-メチルスルホニルエチル基、メチルスルフィニルメチル基、2-アセチルアミノエチル基、アセチルアミノメチル基、トリメチルアンモニウムメチル基、2-メルカプトエチル基、2-トリメチルヒドラジノエチル基、メチルスルホニルカルバモイルメチル基、(2-メトキシ)エトキシメチル基、などが挙げられる}、アリール基(例えばフェニル基、1-ナフチル基、p-クロロフェニル基)、複素環基(例えば2-ピリジル基、2-チアゾリル基、4-フェニル-2-チアゾリル基)、
【0223】
置換基V(例えば、カルボキシ基、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基、3-カルボキシプロパノイル基、3-ヒドロキシプロパノイル基、塩素原子、N-フェニルカルバモイル基、N-ブチルカルバモイル基、ホウ酸基、スルホ基、シアノ基、ヒドロキシ基、メトキシ基、メトキシカルボニル基、アセチルオキシ基、ジメチルアミノ基)が好ましい。
また、V1 ~V10のうち、2つが互いに結合して環を形成してもよい。これらの環は、脂肪族及び芳香族いずれでも良い。また、これらの環は、例えば前述の置換基Vによって置換されていてもよい。
1~V10のうち、2つが互いに結合して連結基を形成してもよい。
一般式(L)で表されるメタロセンは、複数が互いに結合して多量体を形成してもよい。
【0224】
以下に一般式(L)で表される化合物の典型的な例を挙げるが、これに限定されるものではない。
【0225】
【化48】
【0226】
【化49】
【0227】
【化50】
【0228】
【化51】
【0229】
【化52】
【0230】
【化53】
【0231】
【化54】
【0232】
本発明に用いるメタロセンは、ディー・イー・バブリッツ(D.E.Bublitz)等著、オーガニック・リアクションズ(Organic Reactions)、第17巻、第1~154頁(1969年)に記載の方法などを参考に合成することができる。なお、メタロセン、フェロセンの表記法としては、本発明で示した以外にも、次のようなものが知られているが、いずれも同じ化合物を意味する。
【0233】
【化55】
【0234】
下記一般式(IA)で表される化合物も本発明における電子供与型消光剤として好ましい。
【0235】
【化56】
【0236】
一般式(IA)中、R、R、及びRは、各々アルキル基、アリール基又は複素環基を示す。ただし、R及びRは、各々窒素原子に直接結合している炭素原子にオキソ基、チオキソ基又はイミノ基が置換していることはない。Rは、水素原子、アルキル基、アリール基又は複素環基である。
また、一般式(IA)で表される化合物が、下記一般式(IIA)で表される化合物であるとき、好ましい。
【0237】
【化57】
【0238】
一般式(IIA)中、R及びRは各々一般式(IA)のR及びRと同義である。R及びRは各々水素原子、アルキル基、アリール基又は複素環基を示す。V、V、V及びVは各々水素原子又は1価の置換基を示す。L、L及びLは各々メチン基を示す。nは0又は1を示す。
【0239】
以下に一般式(IA)について詳細に説明する。
一般式(IA)中、R、R、及びRとしては、例えば無置換アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、オクタデシル基、シクロペンチル基、シクロプロピル基、シクロヘキシル基)、置換アルキル基{置換基をVaとすると、Vaで示される置換基として特に制限はないが、例えばカルボキシ基、スルホ基、シアノ基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子)、ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基)、アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基)、炭素数18以下のアリールオキシ基(例えばフェノキシ基、4-メチルフェノキシ基、α-ナフトキシ基)、アシルオキシ基(例えばアセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基)、アシル基(例えばアセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基、メシル基)、カルバモイル基(例えばカルバモイル基、N,N-ジメチルカルバモイル基、モルホリノカルボニル基、ピペリジノカルボニル基)、
【0240】
スルファモイル基(例えば、スルファモイル基、N,N-ジメチルスルファモイル基、モルホリノスルホニル基、ピペリジノスルホニル基)、アリール基(例えばフェニル基、4-クロロフェニル基、4-メチルフェニル基、α-ナフチル基)、複素環基(例えば、2-ピリジル基、テトラヒドロフルフリル基、モルホリノ基、2-チオフェノ基)、アミノ基(例えば、アミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、ジフェニルアミノ基)、アルキルチオ基(例えばメチルチオ基、エチルチオ基)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、プロピルスルホニル基)、アルキルスルフィニル基(例えばメチルスルフィニル基)、ニトロ基、リン酸基、アシルアミノ基(例えばアセチルアミノ基)、アンモニウム基(例えばトリメチルアンモニウム基、トリブチルアンモニウム基)、メルカプト基、ヒドラシノ基(例えばトリメチルヒドラジノ基)、ウレイド基(例えばウレイド基、N,N-ジメチルウレイド基)、イミド基、不飽和炭化水素基(例えば、ビニル基、エチニル基、1-シクロヘキセニル基、ベンジリジン基、ベンジリデン基)が挙げられる。置換基Vaの炭素原子数は18以下が好ましい。またこれらの置換基上にさらにVaが置換していてもよい。
【0241】
より具体的にはアルキル基(例えば、カルボキシメチル基、2-カルボキシエチル基、3-カルボキシプロピル基、4-カルボキシブチル基、2-スルホエチル基、3-スルホプロピル基、4-スルホブチル基、3-スルホブチル基、2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル基、2-シアノエチル基、2-クロロエチル基、2-ブロモエチル基、2-ヒドロキシエチル基、3-ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、2-メトキシエチル基、2-エトキシエチル基、2-エトキシカルボニルエチル基、メトキシカルボニルメチル基、2-メトキシエチル基、2-エトキシエチル基、2-フェノキシエチル基、2-アセチルオキシエチル基、2-プロピオニルオキシエチル基、2-アセチルエチル基、3-ベンゾイルプロピル基、2-カルバモイルエチル基、2-モルホリノカルボニルエチル基、スルファモイルメチル基、2-(N,N-ジメチルスルファモイル)エチル基、ベンジル基、2-ナフチルエチル基、2-(2-ピリジル)エチル基、アリル基、3-アミノプロピル基、3-ジチルアミノプロピル基、メチルチオメチル基、2-メチルスルホニルエチル基、メチルスルフィニルメチル基、2-アセチルアミノエチル基、3-トリメチルアンモニウムエチル基、2-メルカプトエチル基、2-トリメチルヒドラジノエチル基、メチルスルホニルカルバモイルメチル基、(2-メトキシ)エトキシメチル基、などが挙げられる}、アリール基(例えばフェニル基、α-ナフチル基、β-ナフチル基、例えば、前述の無置換アルキル基又は前述の置換基Vaで置換されたフェニル基、ナフチル基)、複素環基(例えば2-ピリジル基、2-チアゾリル基、前述の置換基Vaで置換された2-ピリジル基)が好ましい。
【0242】
また、一般式(IA)中、RとR及びRとRが互いに結合して環を形成してもよい。これらの環は、例えば、前述の置換基Vaにより置換されていてもよい。ただし、R及びRの窒素原子に直接結合している炭素原子にオキソ基、チオキソ基、イミノ基が置換していることはない。例えばR及びRはアセチル基、カルボキシ基、ベンゾイル基、ホルミル基、チオアセチル基、チオアルデヒド基、チオカルボキシ基、チオベンゾイル基、イミノ基、N-メチルイミノ基、N-フェニルイミノ基であることはなく、2つ(R及びR)が環を形成する場合、マロニル基、スクシニル基、グルタリル基、アジポイル基であることはない。
【0243】
一般式(IA)中、R及びRとしてさらに好ましくは、一般式(IA)について前述した無置換アルキル基、置換アルキル基である。特に好ましくは無置換アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基)、置換アルキル基{例えばスルホアルキル基(例えば2-スルホエチル基、3-スルホプロピル基、4-スルホブチル基、3-スルホブチル基)、カルボキシアルキル基(例えばカルボキシメチル基、2-カルボキシエチル基)、ヒドロキシアルキル基(例えば2-ヒドロキシエチル基)}である。
【0244】
一般式(IA)中、Rとしてさらに好ましくは、下記一般式(IIIA)で表される置換基の場合である。
【0245】
【化58】
【0246】
一般式(IIIA)中、L及びLは各々メチン基を示す。Arはアリール基を示す。nは0以上の整数である。Arとして好ましくはフェニル基、置換フェニル基(置換基としては前述のVaが挙げられる。)である。L及びLとして好ましくは無置換メチン基である。nとして好ましくは0又は1である。
【0247】
一般式(IA)中、Rとしては、水素原子又は前述の一般式(IA)におけるR、R及びRと同様な置換基が用いられる。Rとして好ましくは水素原子である。
【0248】
なお、一般式(IA)で表されるヒドラゾン化合物は、合成上、及び保存上有利な場合、塩として単離しても何ら差しつかえない。このような場合、ヒドラゾン類と塩を形成しうる化合物なら、どのような化合物でも良いが好ましい塩としては次のものが挙げられる。例えば、アリールスルホン酸塩(例えばp-トルエンスルホン酸塩、p-クロルベンゼンスルホン酸塩)、アリールジスルホン酸塩(例えば1,3-ベンゼンジスルホン酸塩、1,5-ナフタレンジスルホン酸塩、2,6-ナフタレンジスルホン酸塩)、チオシアン酸塩、ピクリン酸塩、カルボン酸塩(例えばシュウ酸塩、酢酸塩、安息香酸塩、シュウ酸水素塩)、ハロゲン酸塩(例えば塩化水素酸塩、フッ化水素酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩)、硫酸塩、過塩素酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、亜硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、炭酸塩、重炭酸塩である。好ましくは、シュウ酸水素塩、シュウ酸塩、塩化水素酸塩である。
【0249】
以下に一般式(IIA)について詳細に説明する。
一般式(IIA)中、R及びRは、前述の一般式(IA)におけるR及びRと同義であり同様のものが好ましい。
一般式(IIA)中、R及びRは水素原子又は前述の一般式(IA)におけるR及びRで挙げた例と同様のものが好ましい。さらに好ましくは、無置換アルキル基、置換アルキル基であり、特に好ましくは無置換アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基)、置換アルキル基{例えばスルホアルキル基(例えば2-スルホエチル基、3-スルホプロピル基、4-スルホブチル基、3-スルホブチル基)、カルボキシアルキル基(例えばカルボキシメチル基、2-カルボキシエチル基)、ヒドロキシアルキル基(例えば2-ヒドロキシエチル基)}である。
一般式(IIA)中、V、V、V及びVは水素原子又は1価の置換基を示し、置換基として特に制限はないが、前述の一般式(IA)におけるR、R、R及びVaで示したものが挙げられる。特に好ましくは無置換アルキル基(例えばメチル基、エチル基)、置換アルキル基(例えば2-スルホブチル基、2-カルボキシエチル基)、アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基)が挙げられる。
一般式(IIA)中、L、L及びLは無置換メチン基又は置換メチン基(置換基として、例えば前述の一般式(IA)におけるR、R、R及びVaで示したものが挙げられる。)を示す。好ましくは無置換メチン基である。nとして好ましくは0である。
【0250】
以下に一般式(IA)及び(IIA)で表される化合物の典型的な例を挙げるが、これに限定されるものではない。
一般式(IA)で表される化合物(一般式(IA)で表される化合物は、一般式(IIA)で表される化合物を含む。ただし、ここでは一般式(IA)で表される化合物として一般式(IIA)で表される化合物を除いた例を挙げる。)
【0251】
【化59】
【0252】
【化60】
【0253】
【化61】
【0254】
一般式(IIA)で表される化合物
【0255】
【化62】
【0256】
【化63】
【0257】
【化64】
【0258】
【化65】
【0259】
【化66】
【0260】
一般式(IA)(一般式(IIA)を含む)で表される化合物は公知の方法により容易に製造することができる。すなわち、ヒドラジン類とアルデヒド類又はケトン類を必要に応じて縮合剤として少量の酸(例えば酢酸、塩酸)を添加して、縮合させることにより得ることができる。具体的方法は、特公昭60-34099、60-34100などに記載されている。
【0261】
また、下記一般式(A)又は後述の一般式(B)で表されるレダクトン類も本発明に用いる電子供与型消光剤として好ましい。
【0262】
【化67】
【0263】
一般式(A)中、RA1及びRA2は各々独立に、ヒドロキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、メルカプト基又はアルキルチオ基を示す。Xは炭素原子と酸素原子及び/又は窒素原子とから構成され、-C(=O)-C(RA1)=C(RA2)-と共に5~6員環を構成する非金属原子群を示す。
【0264】
A1及びRA2はヒドロキシ基、アミノ基、アルキルスルホニルアミノ基又はアリールスルホニルアミノ基が好ましく、ヒドロキシ基又はアミノ基がより好ましく、ヒドロキシ基がさらに好ましい。
【0265】
一般式(A)中、Xは、少なくとも1つの-O-結合を有し、-C(RA3)(RA4)-、-C(RA5)=、-C(=O)-、-N(Ra)-及びN=の1種又は2種以上を組み合わせて構成されることが好ましい。ここで、RA3~RA5及びRaは各々独立に、水素原子、炭素数1~10の置換基を有してよいアルキル基、置換基を有してよい炭素数6~15のアリール基、ヒドロキシ基又はカルボキシ基が好ましい。
【0266】
一般式(A)中、Xを介して形成される上記の5~6員環は、例えば、シクロペンテノン環(2-シクロペンテン-1-オン環;形成された化合物はレダクチン酸となる)、フラノン環〔2(5H)-フラノン環〕、ジヒドロピラノン環〔3,4-ジヒドロ-2H-ピラン-4-オン環(2,3-ジヒドロ-4H-ピロン環)、3,6-ジヒドロ-2H-ピラン-2-オン環、3,6-ジヒドロ-2H-ピラン-6-オン環(5,6-ジヒドロ-2-ピロン環)〕、3,4-ジヒドロ-2H-ピロン環が挙げられ、シクロペンテノン環、フラノン環、ジヒドロピロン環が好ましく、フラノン環、ジヒドロピロン環がさらに好ましく、フラノン環が特に好ましい。
これらの環は縮環していてもよく、この縮環する環としては、飽和環、不飽和環のいずれでもよい。
【0267】
上記一般式(A)で表されるレダクトン類のうち、下記一般式(A1)で表される化合物が好ましく、中でも下記一般式(A2)で表される化合物が好ましい。
【0268】
【化68】
【0269】
一般式(A1)中、Ra1は水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロ環基を示し、それらは置換基を有していてもよい。
a1は置換基を有してもよいアルキル基が好ましく、-CH(ORa3)CHORa2がより好ましく、この場合、上記一般式(A2)で表される化合物となる。
【0270】
一般式(A2)中、Ra2及びRa3は各々独立に、水素原子、アルキル基、アシル基又はアルコキシカルボニル基を示し、Ra2とRa3が互いに結合して環を形成してもよく、形成する環としては1,3-ジオキソラン環であることが好ましく、この環はさらに置換基を有していてもよい。ジオキソラン環を有する化合物は、アスコルビン酸とケトン類やアルデヒド類との反応による、アセタール若しくはケタール化で合成でき、原料のケトン類やアルデヒド類は特に制約なく用いることができる。
【0271】
一般式(A2)において、特に好ましい置換基の組合せの一つは、Ra2がアシル基でRa3が水素原子である化合物であり、アシル基としては脂肪族アシル基と芳香族アシル基のどちらでもよく、脂肪族アシル基の場合には、炭素数が2~30が好ましく、4~24がより好ましく、8~18がさらに好ましい。芳香族アシル基の場合には、炭素数は7~24が好ましく、炭素数7~22がより好ましく、炭素数7~18がさらに好ましい。好ましいアシル基としては、ブタノイル、ヘキサノイル、2-エチルヘキサノイル、デカノイル、ラウロイル、ミリストイル、パルミトイル、ステアロイル、パルミトレイル、ミリストレイル、オレオイル、ベンゾイル、4-メチルベンゾイル及び2-メチルベンゾイルを挙げることができる。
【0272】
一般式(A)で表される化合物と同様に、下記一般式(B)で表される化合物も好ましい。
【0273】
【化69】
【0274】
一般式(B)中、RB1及びRB2は各々独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アシル基、カルボキシ基、アミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基又は複素環基を示し、RB3及びRB4は各々独立に、ヒドロキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基又はメルカプト基を示す。
【0275】
B1及びRB2におけるアルキル基は、炭素数1~10が好ましい。このアルキル基は、メチル、エチル、t-ブチルが好ましい。
B1及びRB2におけるアルケニル基は、炭素数2~10が好ましい。このアルケニル基はビニル、アリルが好ましく、ビニルがより好ましい。
B1及びRB2におけるシクロアルキル基は、炭素数3~10が好ましい。このシクロアルキル基はシクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルが好ましい。
これらのアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基は置換基を有してもよく、この置換基はヒドロキシ基、カルボキシ基及びスルホ基から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
なお、アルケニル基がビニルの場合、カルボキシ基が置換したビニル基も好ましい。
【0276】
B1及びRB2におけるアリール基は、炭素数6~12が好ましい。アリール基は置換基を有してもよく、この置換基はアルキル基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基、ハロゲン原子、ニトロ基及びシアノ基から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
B1及びRB2におけるアシル基は、ホルミル、アセチル、イソブチリル又はベンゾイルが好ましい。
B1及びRB2におけるアミノ基は、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基を含み、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、フェニルアミノ、N-メチル-N-フェニルアミノが好ましい。
【0277】
B1及びRB2におけるアルコキシ基は、炭素数1~10が好ましい。このアルコキシ基はメトキシ又はエトキシが好ましい。
B1及びRB2におけるアルコキシカルボニル基はメトキシカルボニルが好ましい。
B1及びRB2における複素環基は、環構成ヘテロ原子が酸素原子、硫黄原子又は窒素原子が好ましく、環構造が5員環又は6員環であることが好ましい。この複素環基は、芳香族複素環基であっても飽和複素環基であっても、また縮環していても構わない。
複素環基における複素環は、ピリジン環、ピリミジン環、ピロール環、フラン環基、チオフェン環、ピラゾール環、ピペリジン環、ピペラジン環又はモルホリン環が好ましい。
【0278】
B1及びRB2は、より好ましくは炭素数1~6のアルキル基又は炭素数6~12のアリール基である。
【0279】
B3及びRB4におけるアミノ基は、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基を含み、アミノ基やメチルアミノ、エチルアミノ、n-ブチルアミノ、ヒドロキシエチルアミノのようなアルキルアミノ基が好ましい。
B3及びRB4におけるアシルアミノ基は、アセチルアミノ又はベンゾイルアミノが好ましい。
B3及びRB4におけるアルキルスルホニルアミノ基は、メチルスルホニルアミノが好ましい。
B3及びRB4におけるアリールスルホニルアミノ基は、ベンゼンスルホニルアミノ又はp-トルエンスルホニルアミノが好ましい。
B3及びRB4におけるアルコキシカルボニルアミノ基は、メトキシカルボニルアミノが好ましい。
【0280】
B3及びRB4はヒドロキシ基、アミノ基、アルキルスルホニルアミノ基又はアリールスルホニルアミノ基がより好ましい。
【0281】
本発明に用いる電子供与型消光剤は、レダクトン類がより好ましく、具体例としては、特開6-27599号公報の段落番号0014~0034に例示の化合物、特開平6-110163号公報の段落番号0012~0020に例示の化合物、特開平8-114899号公報の段落番号0022~0031に例示の化合物を挙げることができる。
中でも、L-アスコルビン酸のミリスチン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステルが特に好ましい。
【0282】
ハイドロキノン類、アミノフェノール類、アミノナフトール類、3-ピラゾリジノン類、サッカリン及びそれらのプレカーサー、ピコリニウム類も本発明に用いる電子供与型消光剤として好ましい。
以下に電子供与型消光剤の例を示す。
【0283】
【化70】
【0284】
【化71】
【0285】
【化72】
【0286】
【化73】
【0287】
【化74】
【0288】
-電子受容型消光剤-
つぎに、本発明に用いる電子受容型消光剤について説明する。
本発明に用いる電子受容型消光剤は、励起状態の色素の二つのSOMOのうちの高エネルギー準位のSOMOから電子を受けとったのち、色素の低エネルギー準位のSOMOに電子を供与することにより、励起状態の色素を基底状態に失活させるものである。
本発明に用いる電子受容型消光剤のLUMOのエネルギー準位は、本発明に用いる色素のLUMOのエネルギー準位に対して以下の関係式[B-1]を満たす。

関係式[B-1] ELd-ELq≦0eV

ここでELdとELqはそれぞれ以下の値を示す。
Ld:色素のLUMOのエネルギー準位
Lq:電子受容型消光剤のLUMOのエネルギー準位

上記関係式[B-1]を満たすことにより、励起状態の色素から電子受容型消光剤への電子移動が起こりやすくなり、効率よく消光することができる。
本発明における電子受容型消光剤のLUMOのエネルギー準位は、本発明に用いる色素のLUMOのエネルギー準位に対して以下の関係式[B-2]を満たすことがより好ましく、以下の関係式[B-3]を満たすことがさらに好ましい。

関係式[B-2] ELd-ELq≦-0.2eV
関係式[B-3] ELd-ELq≦-0.4eV
【0289】
色素及び消光剤のエネルギー準位は、上述の電子供与型消光剤の説明において説明したのと同様の方法で算出することができる。
【0290】
下記一般式(E)で表されるフタルイミド系化合物は本発明に用いる電子受容性消光剤として好ましく用いることができる。
【0291】
【化75】
【0292】
一般式(E)において、Rは、アルキル基、芳香族炭化水素基、及びハロゲン原子、ニトロ基、及び/又はアルキル基で置換された芳香族炭化水素基からなる群から選ばれる、炭素数が1~14の単価の有機基を示す。
以下に一般式(E)で表される化合物の具体例を示す。
【0293】
【化76】
【0294】
下記構造のナフタルイミド類も本発明に用いる電子受容型消光剤として好ましく用いることができる。
【0295】
【化77】
【0296】
上記一般式(IB)中、R及びRは炭素数20以下のアルキル基、置換アルキル基、置換基を有しているか又は有していないアリール基を示し、同一であっても異なっていてもよい。置換アルキル基としてはヒドロキシエチル基、ベンジル基などが挙げられる。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基などが挙げられ、その置換基としてはハロゲン、低級アルキル基、ニトロ基、アミノ基などが挙げられる。
【0297】
下記構造のフタルイミド類も本発明に用いる電子受容型消光剤として好ましく用いることができる。
【0298】
【化78】
【0299】
上記一般式(IIB)中、R及びRは炭素数20以下のアルキル基(シクロアルキル基を含む)、置換アルキル基、置換基を有しているか又は有していないアリール基を示し、同一であっても異なっていてもよい。置換アルキル基としてはヒドロキシエチル基、ベンジル基などが挙げられる。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基などが挙げられ、その置換基としてはハロゲン、(低級)アルキル基、ニトロ基、アミノ基などが挙げられる。
【0300】
以下に具体例を示す。
【0301】
【化79】
【0302】
【化80】
【0303】
【化81】
【0304】
以下の一般式(IIC)で表されるキノン類も本発明に用いる電子受容性消光剤として好ましく用いることができる。
【0305】
【化82】
【0306】
一般式(IIC)中、R21、R22、R23及びR24は各々水素原子、1~10個の炭素原子を有する置換若しくは無置換アルキル基、1~10個の炭素原子を有する置換若しくは無置換アルコキシ基、1~10個の炭素原子を有する置換若しくは無置換アルキルチオ基、置換若しくは無置換アリール基、置換若しくは無置換アリールチオ基、置換若しくは無置換アリールオキシ基、ハロゲン原子又はシアノ基を示す。また、R21とR22又はR23とR24は互いに連結して環を形成してもよい。
以下に具体例を示す。
【0307】
【化83】
【0308】
【化84】
【0309】
【化85】
【0310】
【化86】
【0311】
本発明の偏光板保護膜中の偏光度向上剤の含有量は、好ましくは0~6質量%であり、0.1~5質量%がより好ましく、0.3~4.5質量%がさらに好ましい。偏光度向上剤の添加量を上記上限値以下に制御することにより、偏光板保護膜の変色等の副作用を起こすことなく、偏光度を向上させることができる。
【0312】
(偏光度向上剤内蔵型色素)
本発明に用いる偏光度向上剤は、必要により連結基を介して、共有結合により色素と連結して、偏光度向上剤内蔵型色素を形成していることも好ましい。このような形態の色素も、本発明で規定する一般式(1)のスクアリン系色素に含まれる。
本発明の偏光度向上剤内蔵型色素の、色素部及び偏光度向上剤部のエネルギー準位は、前述の色素及び偏光度向上剤のエネルギー準位の算出方法と同様の方法で算出することができる。なお、電位の測定において、本発明に用いる偏光度向上剤内蔵型色素からは二つの酸化電位が検出されるが、偏光度向上剤を内蔵しない色素における酸化電位に近い値を色素部の酸化電位、遠い値を偏光度向上剤部の酸化電位とする。
以下に本発明に用いる偏光度向上剤内蔵型色素の例を示す。
【0313】
【化87】
【0314】
【化88】
【0315】
【化89】
【0316】
【化90】
【0317】
【化91】
【0318】
【化92】
【0319】
【化93】
【0320】
【化94】
【0321】
【化95】
【0322】
【化96】
【0323】
【化97】
【0324】
【化98】
【0325】
【化99】
【0326】
偏光度向上剤内蔵型色素を用いる場合、偏光板保護膜中の偏光度向上剤内蔵型色素の含有量を、偏光板保護膜中の、吸収極大波長が560~620nm又は460~520nmの範囲にある色素の含有量とする。この偏光度向上剤内蔵型色素の含有量が、偏光板保護膜を構成する樹脂100質量部に対し、0.1質量部以上であればよい。
【0327】
(褪色防止剤)
本発明の偏光板保護膜は褪色防止剤を含有することが好ましい。本発明に用いる褪色防止剤としては、国際公開第2015/005398号の段落[0143]~[0165]に記載の酸化防止剤、同[0166]~[0199]に記載のラジカル捕捉剤、及び同[0205]~[0206]に記載の劣化防止剤を用いることができる。
【0328】
下記一般式(IV)で表される化合物は、本発明の偏光板保護膜に用いる褪色防止剤として好ましく用いることができる。
【0329】
【化100】
【0330】
式(IV)中、R10はアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロ環基又はR18CO-、R19SO-若しくはR20NHCO-で表される基を示す。ここでR18、R19及びR20は各々アルキル基、アルケニル基、アリール基又はヘテロ環基を示す。R11及びR12は各々独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基又はアルケノキシ基を示し、R13、R14、R15、R16及びR17は各々独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基又はアリール基を示す。
【0331】
式(IV)におけるR10で示されるアルキル基としては、例えばメチル、エチル、プロピル、ベンジル等;アルケニル基としては、例えばアリル等;アリール基としては、例えばフェニル等;アラルキル基としては、例えばベンジル等;ヘテロ環基としては、例えばテトラヒドロピラニル、ピリミジル等が挙げられる。また、R18、R19及びR20は、各々独立にアルキル基(例えば、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、ベンジル等)、アルケニル基(例えば、アリル等)、アリール基(例えば、フェニル、メトキシフェニル等)又はヘテロ環基(例えば、ピリジル、ピリミジル等)を示す。
【0332】
式(IV)におけるR11又はR12で示されるハロゲン原子としては、例えば塩素、臭素等;アルキル基としては、例えばメチル、エチル、n-ブチル、ベンジル等;アルケニル基としては、例えばアリル等;アルコキシ基としては、例えばメトキシ、エトキシ、ベンジルオキシ等;アルケノキシ基としては、例えば2-プロペニロキシ等が挙げられる。
【0333】
式(IV)におけるR13、R14、R15、R16又はR17で表されるアルキル基としては、例えばメチル、エチル、n-ブチル、ベンジル等;アルケニル基としては、例えば2-プロペニル等;アリール基としては、例えばフェニル、メトキシフェニル、クロルフェニル等が挙げられる。
10~R20はさらに置換基を有していてもよく、置換基としてはR10~R20で示される各基が挙げられる。
一般式(IV)で表される化合物の具体例を以下に示す。
【0334】
【化101】
【0335】
【化102】
【0336】
下記一般式[III]で表される化合物も本発明に用いる褪色防止剤として好ましく用いることができる。
【0337】
【化103】
【0338】
一般式[III]中、R31は脂肪族基又は芳香族基を示し、Yは窒素原子と共に5~7員環を形成するのに必要な非金属原子群を示す。
【0339】
次に、上記一般式[III]において、R31は脂肪族基又は芳香族基を示すが、好ましくはアルキル基、アリール基、複素環基であり、最も好ましくはアリール基である。Yが窒素原子と共に形成する複素環としては、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、チオモルホリン環、チオモルホリン-1,1-ジオン環、ピロリジン環、イミダゾリジン環等が挙げられる。
また、上記複素環はさらに置換基を有してもよく、置換基としてはアルキル基、アルコキシ基等が挙げられる。
【0340】
以下に一般式[III]で表される化合物の具体例を示す。
【0341】
【化104】
【0342】
以上の具体例の他に、上記一般式[III]で表される化合物の具体例としては、特開平2-167543号公報明細書の第8頁~11頁に記載された例示化合物B-1~B-65、特開昭63-95439号公報明細書の第4~7頁に記載された例示化合物(1)~(120)等を挙げることができる。
【0343】
本発明の偏光板保護膜中の褪色防止剤の含有量は、好ましくは0~20質量%であり、より好ましくは0~5質量%であり、さらに好ましくは0~3質量%、特に好ましくは0~2質量%である。褪色防止剤の添加量を上記上限値以下に制御することにより、偏光板保護膜の変色等の副作用を起こすことなく、色素の堅牢性を向上することができる。
【0344】
(マット剤)
本発明の偏光板保護膜の表面には、滑り性付与やブロッキング防止のために微粒子を添加することが好ましい。この微粒子としては、疎水基で表面が被覆され、二次粒子の態様をとっているシリカ(二酸化ケイ素,SiO)が好ましく用いられる。なお、微粒子には、シリカとともに、あるいはシリカに代えて、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、燐酸カルシウムなどの微粒子を用いてもよい。市販の商品としては、微粒子は商品名R972、又はNX90S(いずれも日本アエロジル株式会社製)などが挙げられる。
【0345】
この微粒子はいわゆるマット剤として機能し、微粒子添加によりフィルム表面に微小な凹凸が形成されこの凹凸によりフィルム同士が重なっても互いに貼り付かず、フィルム同士の滑り性が確保される。この際のフィルム表面からの微粒子が突出した突起による微小凹凸は高さ30nm以上の突起が1mmあたりに10個/mm以上である場合に特に滑り性、ブロッキング性の改善効果が大きい。
【0346】
マット剤微粒子は特に表層に付与することが、ブロッキング性、滑り性改善するために好ましい。表層に微粒子を付与する方法としては、重層流延又は塗布などによる手段があげられる。
偏光板保護膜中のマット剤の含有量は目的に応じて適宜に調整される。
【0347】
(レベリング剤)
本発明の偏光板保護膜には、レベリング剤(界面活性剤)を適宜混合することができる。レベリング剤としては、従来公知の化合物が挙げられるが、特に含フッ素界面活性剤が好ましい。具体的には、例えば特開2001-330725号公報明細書中の段落番号[0028]~[0056]記載の化合物が挙げられる。
偏光板保護膜中のレベリング剤の含有量は目的に応じて適宜に調整される。
【0348】
本発明の偏光板保護膜は、上記各成分に加え、低分子可塑剤、オリゴマー系可塑剤、レタデーション調整剤、紫外線吸収剤、劣化防止剤、剥離促進剤、赤外線吸収剤、酸化防止剤、フィラー、相溶化剤等を含有してもよい。
【0349】
<偏光板保護膜の製造方法>
本発明の偏光板保護膜は、公知の溶液製膜法、溶融押出し法、又は基材フィルム(離型フィルム)上に公知の方法でコーティング層を形成する方法(コーティング法)で作製することができ、適宜延伸を組み合わせることもできる。本発明の偏光板保護膜は、好ましくはコーティング法により作製される。
【0350】
(溶液製膜法)
溶液製膜法は、偏光板保護膜の材料を有機溶媒又は水に溶解した溶液を調製し、濃縮工程やろ過工程などを適宜実施した後に、支持体上に均一に流延する。次に、生乾きの膜を支持体から剥離し、適宜ウェブの両端をクリップなどで把持して乾燥ゾーンで溶媒を乾燥させる。また、延伸は、フィルムの乾燥中や乾燥が終了した後に別途実施することもできる。
【0351】
(溶融押出し法)
溶融押出し法は、偏光板保護膜の材料を熱で溶融し、ろ過工程などを適宜実施した後に、支持体上に均一流延する。次に、冷却されて固まったフィルムを剥離し、適宜延伸することができる。本発明の偏光板保護膜の主材料が熱可塑性ポリマー樹脂である場合、基材フィルムの主材料も熱可塑性ポリマー樹脂を選定し、溶融状態にしたポリマー樹脂を公知の共押出し法で製膜することができる。この際、偏光板保護膜と基材フィルムのポリマー種類や各層に混合する添加剤を調整したり、共押出ししたフィルムの延伸温度、延伸速度、延伸倍率等を調整したりすることによって、偏光板保護膜と基材フィルムとの接着力を制御することができる。
【0352】
共押出し方法としては、例えば、共押出Tダイ法、共押出インフレーション法、共押出ラミネーション法等が挙げられる。これらの中でも、共押出Tダイ法が好ましい。共押出Tダイ法にはフィードブロック方式及びマルチマニホールド方式がある。その中でも、厚みのばらつきを少なくできる点で、マルチマニホールド方式が特に好ましい。
【0353】
共押出Tダイ法を採用する場合、Tダイを有する押出機における樹脂の溶融温度は、各樹脂のガラス転移温度(Tg)よりも、80℃高い温度以上にすることが好ましく、100℃高い温度以上にすることがより好ましく、また、180℃高い温度以下にすることが好ましく、150℃高い温度以下にすることがより好ましい。押出機での樹脂の溶融温度を上記範囲の下限値以上とすることにより樹脂の流動性を十分に高めることができ、上限値以下とすることにより樹脂の劣化を防止することができる。
【0354】
通常、ダイスの開口部から押出されたシート状の溶融樹脂は、冷却ドラムに密着させるようにする。溶融樹脂を冷却ドラムに密着させる方法は、特に制限されず、例えば、エアナイフ方式、バキュームボックス方式、静電密着方式などが挙げられる。
冷却ドラムの数は特に制限されないが、通常は2本以上である。また、冷却ドラムの配置方法としては、例えば、直線型、Z型、L型などが挙げられるが特に制限されない。またダイスの開口部から押出された溶融樹脂の冷却ドラムへの通し方も特に制限されない。
【0355】
冷却ドラムの温度により、押出されたシート状の樹脂の冷却ドラムへの密着具合が変化する。冷却ドラムの温度を上げると密着はよくなるが、温度を上げすぎるとシート状の樹脂が冷却ドラムから剥がれずに、ドラムに巻きつく可能性がある。そのため、冷却ドラム温度は、ダイスから押し出す樹脂のうちドラムに接触する層の樹脂のガラス転移温度をTgとすると、好ましくは(Tg+30)℃以下、さらに好ましくは(Tg-5)℃~(Tg-45)℃の範囲にする。そうすることにより滑りやキズなどの不具合を防止することができる。
【0356】
ここで、延伸前フィルム中の残留溶剤の含有量は少なくすることが好ましい。そのための手段としては、例えば、(1)原料となる樹脂の残留溶剤を少なくする;(2)延伸前フィルムを成形する前に樹脂を予備乾燥する;などの手段が挙げられる。予備乾燥は、例えば樹脂をペレットなどの形態にして、熱風乾燥機などで行われる。乾燥温度は100℃以上が好ましく、乾燥時間は2時間以上が好ましい。予備乾燥を行うことにより、延伸前フィルム中の残留溶剤を低減させる事ができ、さらに押し出されたシート状の樹脂の発泡を防ぐことができる。
【0357】
(コーティング法)
コーティング法では、基材フィルムに偏光板保護膜材料の溶液を塗布し、コーティング層を形成する。基材表面には、コーティング層との接着性を制御するため、適宜離型剤等を予め塗布しておいてもよい。コーティング層は、後工程で接着層を介して偏光層と積層させた後、基材フィルムを剥離して用いることができる。なお、基材フィルムにポリマー溶液又はコーティング層が積層された状態で、適宜基材フィルムごと延伸することができる。
【0358】
偏光板保護膜材料の溶液に用いられる溶媒は、偏光板保護膜材料を溶解又は分散可能であること、塗布工程、乾燥工程において均一な面状となり易いこと、液保存性が確保できること、適度な飽和蒸気圧を有すること、等の観点で適宜選択することができる。
【0359】
-色素の添加-
偏光板保護膜材料に上記色素を添加するタイミングは、製膜される時点で添加されていれば特に限定されない。例えば、マトリックス樹脂の合成時点で添加してもよいし、偏光板保護膜材料のコーティング液調製時に偏光板保護膜材料と混合してもよい。
【0360】
-基材フィルム-
偏光板保護膜を、コーティング法等で形成させるために用いられる基材フィルムは、膜厚が5~100μmであることが好ましく、10~75μmがより好ましく、15~55μmがさらに好ましい。膜厚が5μm以上であると、十分な機械強度を確保しやすく、カール、シワ、座屈等の故障が生じにくいため、好ましい。また、膜厚が100μm以下であると、本発明の偏光板保護膜と基材フィルムとの複層フィルムを、例えば長尺のロール形態で保管する場合に、複層フィルムにかかる面圧を適正な範囲に調整しやすく、接着の故障が生じにくいため、好ましい。
【0361】
基材フィルムの表面エネルギーは、特に限定されることはないが、偏光板保護膜の材料やコーティング溶液の表面エネルギーと、基材フィルムの偏光板保護膜を形成させる側の表面の表面エネルギーとの関係性を調整することによって、偏光板保護膜と基材フィルムとの間の接着力を調整することができる。表面エネルギー差を小さくすれば、接着力が上昇する傾向があり、表面エネルギー差を大きくすれば、接着力が低下する傾向があり、適宜設定することができる。
【0362】
水及びヨウ化メチレンの接触角値からOwensの方法を用いて、基材フィルムの表面エネルギーを計算することが出来る。接触角の測定には、例えば、DM901(協和界面科学(株)製、接触角計)を用いることができる。
基材フィルムの偏光板保護膜を形成する側の表面エネルギーは、41.0~48.0mN/mであることが好ましく、42.0~48.0mN/mであることが、より好ましい。表面エネルギーが41.0mN/m以上であると、偏光板保護膜の厚みの均一性を高められるため好ましく、48.0mN/m以下であると、偏光板保護膜を基材フィルムとの剥離力を適切な範囲に制御しやすいため、好ましい。
【0363】
また、基材フィルムの表面凹凸は、特に限定されることはないが、偏光板保護膜表面の表面エネルギー、硬度、表面凹凸と、基材フィルムの偏光板保護膜を形成させる側とは反対側の表面の表面エネルギー、硬度との関係性に応じて、例えば本発明の複層フィルムを長尺のロール形態で保管する場合の接着故障を防ぐ目的で調整することができる。表面凹凸を大きくすれば、接着故障を抑制する傾向にあり、表面凹凸を小さくすれば、偏光板保護膜の表面凹凸が減少し、偏光板保護膜のヘイズが小さくなる傾向にあり、適宜設定することができる。
【0364】
このような基材フィルムとしては、公知の素材やフィルムを適宜使用することができる。具体的な材料として、ポリエステル系ポリマー、オレフィン系ポリマー、シクロオレフィン系ポリマー、(メタ)アクリル系ポリマー、セルロース系ポリマー、ポリアミド系ポリマー等を挙げることができる。また、基材フィルムの表面性を調整する目的で、適宜表面処理を行うことが出来る。表面エネルギーを低下させるには、例えば、コロナ処理、常温プラズマ処理、鹸化処理等、を行うことができ、表面エネルギーを上昇させるには、シリコーン処理、フッ素処理、オレフィン処理等を行うことができる。
【0365】
-偏光板保護膜と基材フィルムとの剥離力-
本発明の偏光板に用いられる偏光板保護膜を、コーティング法で形成させる場合、偏光板保護膜と基材フィルムとの間の剥離力は、偏光板保護膜の材料、基材フィルムの材料、偏光板保護膜の内部歪み等を調整して制御することができる。この剥離力は、例えば、基材フィルムを90°方向に剥がす試験で測定することができ、300mm/分の速度で測定したときの剥離力が、0.001~5N/25mmが好ましく、0.01~3N/25mmがより好ましく、0.05~1N/25mmがさらに好ましい。0.001N/25mm以上であれば、基材フィルムの剥離工程以外での剥離を防ぐことができ、5N/25mm以下であれば、剥離工程における剥離不良(例えば、ジッピングや、偏光板保護膜の割れ)を防ぐことができる。
【0366】
<偏光板保護膜の膜厚>
本発明の偏光板保護膜の膜厚は、1~18μmであり、1~12μmが好ましく、2~8μmがより好ましい。薄いフィルムに高濃度で色素を添加することにより、色素が発する蛍光による偏光度の低下を抑えることができる。また、消光剤や褪色防止剤の効果も発現しやすい。一方、偏光板保護膜が薄すぎると、高温高湿環境下で長時間保存した際に偏光性能を維持することが難しくなる。
本発明において膜厚が1~18μmであるとは、偏光板保護膜の厚さを、どの部位で図っても1~18μmの範囲内にあることを意味する。このことは、膜厚1~12μm、2~8μmについても同様である。膜厚は、アンリツ(株)社製電子マイクロメーターにより測定することができる。
【0367】
<偏光板保護膜の吸光度>
本発明の偏光板保護膜は、波長450nmにおける吸光度は0.05以上3.0以下が好ましい。さらに好ましくは、0.01以上2.0以下であり、0.1以上1.0以下であることがより好ましい。
また、波長590nmにおける吸光度は0.1以上3.0以下が好ましい。さらに好ましくは、0.2以上2.0以下であり、0.3以上1.5以下であることがより好ましい。
吸光度を上記範囲に調節した偏光板保護膜を含む偏光板を液晶表示装置に組み込むことにより、高輝度で色再現性のよい表示性能が得られる。
本発明の偏光板保護膜の吸光度は、色素の種類及び添加量により調整することができる。
【0368】
<偏光板保護膜の含水率>
本発明の偏光板保護膜の含水率は、偏光子に貼合した場合の耐久性の観点から、膜厚のいかんに関わらず、25℃、相対湿度80%の条件において、0.5質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以下であることがより好ましい。
本明細書において、偏光板保護膜の含水率は、必要に応じて膜厚を厚くした試料を用いて測定することができる。試料を24時間以上調湿した後に、水分測定器、試料乾燥装置“CA-03”及び“VA-05”(共に三菱化学(株)製)にてカールフィッシャー法で測定し、水分量(g)を試料質量(g、水分量を含む)で除して算出できる。
【0369】
<偏光板保護膜のガラス転移温度(Tg)>
本発明の偏光板保護膜のガラス転移温度は、50℃以上140℃以下であることが好ましい。よりに好ましくは、60℃以上130℃以下であり、70℃以上120℃以下がさらに好ましい。ガラス転移温度が低すぎると、高温使用した場合の偏光子の劣化が問題となる。また、ガラス転移温度が高すぎると、塗布液に使用した有機溶剤が偏光板保護膜中に残存しやすくなる問題が生じる。
本発明の偏光板保護膜のガラス転移温度は以下の方法により測定できる。
示差走査熱量測定装置(X-DSC7000(アイティー計測制御(株)製))にて、偏光板保護膜20mgを測定パンに入れ、これを窒素気流中で速度10℃/分で30℃から120℃まで昇温して15分間保持した後、30℃まで-20℃/分で冷却した。この後、再度30℃から250℃まで昇温して、ベースラインが低温側から偏倚し始める温度をガラス転移温度Tgとした。
本発明の偏光板保護膜のガラス転移温度は、ガラス転移温度の異なる2種類以上のポリマーを混合することにより、あるいは褪色防止剤等の低分子化合物の添加量を変化させることにより調節することができる。
【0370】
<偏光板保護膜の処理>
偏光板保護膜には公知のグロー放電処理、コロナ放電処理、又は、アルカリ鹸化処理などにより親水化処理を施すことが好ましく、コロナ放電処理が最も好ましく用いられる。特開平6-94915号公報、又は同6-118232号公報などに開示されている方法などを適用することも好ましい。
【0371】
なお、得られた膜には、必要に応じて、熱処理工程、過熱水蒸気接触工程、有機溶媒接触工程などを実施することができる。また、適宜に表面処理を実施してもよい。
【0372】
[偏光板]
本発明の偏光板は、本発明の偏光板保護膜を含む。より詳細には、本発明の偏光板は、偏光子(偏光層)と、この偏光子の少なくとも一方の面に本発明の偏光板保護膜を有する。偏光子と偏光板保護膜との接着は、接着層を介することが好ましい。
【0373】
<偏光子(偏光層)>
偏光層の構成に特に制限はない。例えば、ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素溶液中に浸漬して延伸したもの等を用いることができる。
【0374】
<接着層>
本発明の偏光板は、上記偏光板保護膜と上記偏光層とを接着層を介して貼り合せた偏光板であることが好ましい。接着層の膜厚は、1~10000nmであり、30~5000nmであることが好ましく、50~3000nmであることがさらに好ましい。接着層の膜厚を1nm以上とすることにより、偏光板保護膜と偏光層との接着性を確保でき、10000nm以下とすることにより、変形故障を少なくできる。
本発明の偏光板における接着層は、水溶性材料を含むことが好ましい。上記のように本発明の偏光板における偏光板保護膜は光弾性係数が大きい。すなわち、偏光板保護膜は双極子モーメントが大きい材料を含んでおり、接着層に水溶性材料を用いて接着層に極性を持たせることにより、偏光板保護膜と接着層の相互作用が強くなり、接着性がさらに向上すると考えられる。
具体的には、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液からなる接着剤を用いて、偏光層の片面又は両面に対し、本発明の偏光板に用いられる上述の偏光板保護膜の表面処理面を直接貼り合わせることができる。接着剤としては、ポリビニルアルコール又はポリビニルアセタール(例えば、ポリビニルブチラール)の水溶液、紫外線(UV)硬化型接着剤を用いることができるが、完全鹸化ポリビニルアルコールの水溶液が最も好ましい。
【0375】
光硬化性の接着剤も本発明に用いられる接着剤として好ましい。以下に本発明の偏光板に好ましく用いられる光硬化性接着剤について詳しく述べる。
(光硬化性接着剤)
本発明において、ポリビニルアルコールフィルムからなる偏光子に偏光板保護膜を接着するための光硬化性接着剤は、少なくとも以下の(A)及び(B)を含有し、好ましくは(A)~(C)の三成分を含有する。
(A)光カチオン硬化性成分、
(B)光カチオン重合開始剤、及び
(C)光増感剤。
【0376】
-光カチオン硬化性成分(A)-
光硬化性接着剤の主成分であり、重合硬化により接着力を与える光カチオン硬化性成分(A)は、以下の三種類の化合物の内、少なくとも(A1)及び(A3)を含有することが好ましく、(A1)~(A3)を含有していてもよい。
(A1)下記一般式(XI)で表される脂環式ジエポキシ化合物、
(A2)下記一般式(XII)で表されるオキシラン環含有エポキシシクロヘキサン化合物、及び
(A3)下記一般式(XIII)で表されるジグリシジル化合物。
【0377】
【化105】
【0378】
光カチオン硬化性成分(A)における脂環式ジエポキシ化合物(A1)の量は、光カチオン硬化性成分(A)の全体量を100質量%として、5~100質量%が好ましく、10~70質量%がより好ましい。光カチオン硬化性成分(A)中に脂環式ジエポキシ化合物(A1)を5~100質量%含有させることにより、それを含む光硬化性接着剤を硬化させた後の貯蔵弾性率を高くし、その接着剤を介して偏光子と偏光板保護膜を貼合した偏光板が激しい温度履歴にさらされたときに、偏光子の割れを防ぐことができる。また、脂環式ジエポキシ化合物(A1)の量を70質量%以下とした場合には、後述するオキシラン環含有エポキシシクロヘキサン化合物(A2)及びジグリシジル化合物(A3)の量がより好ましい量となり、光硬化性接着剤の粘度が高くなり過ぎず、より優れた塗布適性とすることができる。
【0379】
また、光カチオン硬化性成分(A)におけるオキシラン環含有エポキシシクロヘキサン化合物(A2)の量は、光カチオン硬化性成分(A)の全体量100質量%として、0~35質量%が好ましく、15~35質量%がより好ましい。光カチオン硬化性成分(A)中のオキシラン環含有エポキシシクロヘキサン化合物(A2)の量を0~35質量%とすることで、それを含む光硬化性接着剤の粘度を低下させ、良好な塗工性を示すようになる。また、光硬化性接着剤を硬化させた後の貯蔵弾性率が十分になり、その接着剤を介して偏光子と偏光板保護膜を貼合した偏光板が激しい温度履歴にさらされたときに、偏光子が割れにくくなる。
【0380】
さらに、光カチオン硬化性成分(A)におけるジグリシジル化合物(A3)の量は、光カチオン硬化性成分(A)の全体量を100質量%として、0~25質量%が好ましく、5~25質量%がより好ましい。光カチオン硬化性成分(A)中にジグリシジル化合物(A3)を配合することで(特に5~25質量%配合することで)、それを含む光硬化性接着剤を硬化させた後の貯蔵弾性率を高い値に保ちながら、偏光子と保護膜との密着性を高めることができる。また、光硬化性接着剤を硬化させた後の貯蔵弾性率が十分になり、その接着剤を介して偏光子と保護膜を貼合した偏光板が激しい温度履歴にさらされたときに、偏光子が割れにくくなる。
【0381】
脂環式ジエポキシ化合物(A1)は、一般式(XI)によって表される化合物である。
一般式(XI)において、R及びRは各々独立に、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を示す。このアルキル基は、一般式(XI)においてXに結合するシクロヘキサン環の位置を1-位として(したがって、2つのシクロヘキサン環におけるエポキシ基の位置はいずれも3,4-位となる)、1-位~6-位のいずれの位置に結合することもできる。このアルキル基は、直鎖でもよいし、炭素数3以上の場合は分岐していてもよい。また、アルキル基は、炭素数3以上の場合は脂環構造を有していてもよい。脂環構造を有するアルキル基の典型的な例としては、シクロペンチルやシクロヘキシルがある。
【0382】
一般式(XI)において、Xは、酸素原子、炭素数1~6のアルカンジイル基又は下記一般式(XIa)~(XId)のいずれかで表される2価の基を示す。ここで、アルカンジイル基は、アルキレンやアルキリデンを含む概念であり、アルキレンは直鎖でもよいし、炭素数3以上の場合は分岐していてもよい。
【0383】
【化106】
【0384】
一般式(XIa)~(XId)のいずれかで表される2価の基において、各式における連結基Y、Y、Y及びYは、各々炭素数1~20のアルカンジイル基を示す。このアルカンジイル基は、直鎖でもよいし、炭素数3以上の場合は分岐していてもよい。また、アルカンジイル基は、炭素数3以上の場合は脂環構造を有していてもよい。脂環構造を有するアルカンジイル基の典型的な例としては、シクロペンチレンやシクロヘキシレンがある。
aは0~20の整数であり、bは0~20の整数である。
【0385】
一般式(XI)で表される脂環式ジエポキシ化合物(A1)についてさらに具体的に説明する。
一般式(XI)におけるXが一般式(XIa)で示され、その式中のaが0である化合物は、3,4-エポキシシクロヘキシルメタノール(そのシクロヘキサン環に炭素数1~6のアルキル基が結合していてもよい)と、3,4-エポキシシクロヘキサンカルボン酸(そのシクロヘキサン環に炭素数1~6のアルキル基が結合していてもよい)とのエステル化物である。その具体例を挙げると、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート〔一般式(XI)(ただし、Xはa=0である一般式(XIa)で表される2価の基)において、R=R=Hの化合物〕、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキサンカルボキシレート〔上と同じXを有する一般式(XI)において、R=6-メチル、R=6-メチルの化合物〕、3,4-エポキシ-1-メチルシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシ-1-メチルシクロヘキサンカルボキシレート〔上と同じXを有する一般式(XI)において、R=1-メチル、R=1-メチルの化合物〕、3,4-エポキシ-3-メチルシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシ-3-メチルシクロヘキサンカルボキシレート〔上と同じXを有する一般式(XI)において、R=3-メチル、R=3-メチルの化合物〕などがある。
【0386】
一般式(XI)におけるXが一般式(XIb)で表される2価の基である化合物は、アルキレングリコール類と3,4-エポキシシクロヘキサンカルボン酸類(そのシクロヘキサン環にアルキル基が結合していてもよい)とのエステル化物である。
一般式(XI)におけるXが一般式(XIc)で表される2価の基である化合物は、脂肪族ジカルボン酸類と3,4-エポキシシクロヘキシルメタノール(そのシクロヘキサン環にアルキル基が結合していてもよい)とのエステル化物である。
また、一般式(XI)におけるXが一般式(XId)で表される2価の基である化合物は、3,4-エポキシシクロヘキシルメタノール(そのシクロヘキサン環にアルキル基が結合していてもよい)のエーテル体(b=0の場合)、又は、アルキレングリコール類もしくはポリアルキレングリコール類と3,4-エポキシシクロヘキシルメタノール(そのシクロヘキサン環にアルキル基が結合していてもよい)とのエーテル化物(b>0の場合)である。
【0387】
オキシラン環含有エポキシシクロヘキサン化合物(A2)は、一般式(XII)によって表される化合物である。
一般式(XII)において、R及びRは各々独立に、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基であり、アルキル基が炭素数3以上の場合は脂環構造を有していてもよい。エポキシシクロヘキサン環に結合するRがアルキル基の場合、このアルキル基は、一般式(XII)における結合手が出ているシクロヘキサン環の位置を1-位として(したがって、シクロヘキサン環におけるエポキシ基の位置は3,4-位となる)、1-位~6-位のいずれの位置に結合することもできる。このアルキル基は、直鎖でもよいし、炭素数3以上の場合は分岐していてもよい。また、上述のとおり、炭素数3以上の場合は脂環構造を有していてもよい。脂環構造を有するアルキル基の典型的な例としては、シクロペンチルやシクロヘキシルがある。
一般式(XII)において、cは、0~20の整数である。
【0388】
一般式(XII)で表されるオキシラン環含有エポキシシクロヘキサン化合物の多くは、常温で液体であって、粘度が低いことから、エポキシ樹脂の分野において反応性稀釈剤として用いられることもあるものであり、とりわけ、その式中のcが0である化合物が代表的である。その具体例を挙げると、4-ビニルシクロヘキセンジエポキシド〔一般式(XII)において、c=0、R=R=Hの化合物〕、リモネンジエポキシド〔一般式(XII)において、c=0、R=4-メチル(ただし、位置番号は上述のとおり)、R=メチルの化合物〕などがある。
【0389】
ジグリシジル化合物(A3)は、一般式(XIII)で表される化合物である。
一般式(XIII)において、Zは、炭素数1~9のアルキレン基、炭素数3もしくは4のアルキリデン基、2価の脂環式炭化水素基、又は式-C2m-Z-C2n-で示される2価の基であり、ここに-Z-は、-O-、-CO-O-、-O-CO-、-SO-、-SO-、又はCO-であり、m及びnは各々独立に1以上の整数であるが、両者の合計は9以下である。
Zが採りうるアルキレン基は、直鎖でもよいし、炭素数3以上の場合は分岐していてもよい。Zがアルキリデン基の場合、プロピリデンやブチリデンのように結合手が末端の炭素原子から出ていてもよいし、イソプロピリデンのように結合手が末端でない炭素原子から出ていてもよい。2価の脂環式炭化水素基の典型的な例としては、シクロペンチレンやシクロヘキシレンがある。
【0390】
一般式(XIII)においてZがアルキレン基である化合物は、アルキレングリコールのジグリシジルエーテルである。その具体例を挙げると、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,3-プロパンジオールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルなどがある。
【0391】
また、一般式(XIII)においてZが式-C2m-Z-C2n-で示される2価の基である場合は、Zが炭素数2以上のアルキレン基であり、そのアルキレン基のC-C結合が、-O-、-CO-O-、-O-CO-、-SO-、-SO-、又は-CO-で中断されていることに相当する。
【0392】
光硬化性接着剤を構成する光カチオン硬化性成分(A)は、以上説明した脂環式ジエポキシ化合物(A1)、オキシラン環含有エポキシシクロヘキサン化合物(A2)及びジグリシジル化合物(A3)が、これまでに説明した量となる範囲において、他のカチオン重合性化合物を含んでいてもよい。他のカチオン重合性化合物としては、一般式(XI)、一般式(XII)及び一般式(XIII)で表される化合物以外のエポキシ化合物や、オキセタン化合物などを挙げることができる。
【0393】
一般式(XI)、一般式(XII)及び一般式(XIII)で表される化合物以外のエポキシ化合物には、一般式(XI)及び一般式(XII)で表される化合物以外の分子内に少なくとも1個の脂環式環に結合するエポキシ基を有する脂環式エポキシ化合物、一般式(XIII)以外の脂肪族炭素原子に結合するオキシラン環を有する脂肪族エポキシ化合物、分子内に芳香族環とエポキシ基を有する芳香族エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物における芳香族環が水素化されている水素化エポキシ化合物などがある。
【0394】
一般式(XIII)で表される化合物以外の脂肪族炭素原子に結合するオキシラン環を有する脂肪族エポキシ化合物の例を挙げると、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテルなどがある。
【0395】
分子内に芳香族環とエポキシ基を有する芳香族エポキシ化合物は、分子内に少なくとも2個のフェノール性水酸基を有する芳香族ポリヒドロキシ化合物のグリシジルエーテルであることができる。その具体例を挙げると、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、ビスフェノールSのジグリシジルエーテル、フェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテルなどがある。
【0396】
芳香族エポキシ化合物における芳香族環が水素化されている水素化エポキシ化合物は、上記の芳香族エポキシ化合物の原料である分子内に少なくとも2個のフェノール性水酸基を有する芳香族ポリヒドロキシ化合物に対し、触媒の存在下、加圧下で選択的に芳香族環の水素化反応を行なうことにより得られる水添ポリヒドロキシ化合物をグリシジルエーテル化したものであることができる。その具体例を挙げると、水添ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSのジグリシジルエーテルなどがある。
【0397】
また、任意に光カチオン硬化性成分(A)の一部となりうるオキセタン化合物は、分子内に4員環エーテル(オキセタニル基)を有する化合物である。その具体例を挙げると、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、1,4-ビス〔(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル〕ベンゼン、3-エチル-3-(フェノキシメチル)オキセタン、ジ〔(3-エチル-3-オキセタニル)メチル〕エーテル、3-エチル-3-(2-エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(シクロヘキシルオキシメチル)オキセタン、フェノールノボラックオキセタン、1,3-ビス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ〕ベンゼン、オキセタニルシルセスキオキサン、オキセタニルシリケートなどがある。
【0398】
光カチオン硬化性成分(A)全体量を100質量%として、オキセタン化合物を80質量%以下の割合で配合することにより、エポキシ化合物だけをカチオン硬化性成分(A)とする場合に比べ、硬化性が向上するといった効果が期待できることがある。
【0399】
-光カチオン重合開始剤(B)-
本発明の、光硬化性接着剤を用いる形態では、以上のような光カチオン硬化性成分(A)を活性エネルギー線の照射によるカチオン重合で硬化させて接着剤層を形成する。このため、光硬化性接着剤組成物には、光カチオン重合開始剤(B)を配合する。光カチオン重合開始剤(B)は、可視光線、紫外線、X線、電子線の如き活性エネルギー線の照射によって、カチオン種又はルイス酸を発生し、光カチオン硬化性成分(A)の重合反応を開始するものである。光カチオン重合開始剤(B)は、光で触媒的に作用するため、光カチオン硬化性成分(A)に混合しても保存安定性や作業性に優れる。活性エネルギー線の照射によりカチオン種やルイス酸を生じる化合物として、例えば、芳香族ジアゾニウム塩;芳香族ヨードニウム塩や芳香族スルホニウム塩のようなオニウム塩;鉄-アレン錯体などを挙げることができる。
【0400】
芳香族ジアゾニウム塩としては、例えば、次のような化合物が挙げられる。
ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロホスフェート、
ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロボレートなど。
【0401】
芳香族ヨードニウム塩としては、例えば、次のような化合物が挙げられる。
ジフェニルヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、
ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
ジ(4-ノニルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロホスフェートなど。
【0402】
芳香族スルホニウム塩としては、例えば、次のような化合物が挙げられる。
トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、
トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
トリフェニルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
4,4′-ビス(ジフェニルスルホニオ)ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート、
4,4′-ビス〔ジ(β-ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロアンチモネート、
4,4′-ビス〔ジ(β-ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート、
7-〔ジ(p-トルイル)スルホニオ〕-2-イソプロピルチオキサントン ヘキサフルオロアンチモネート、
7-〔ジ(p-トルイル)スルホニオ〕-2-イソプロピルチオキサントン テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
4-フェニルカルボニル-4′-ジフェニルスルホニオ-ジフェニルスルフィド ヘキサフルオロホスフェート、
4-(p-tert-ブチルフェニルカルボニル)-4′-ジフェニルスルホニオ-ジフェニルスルフィド ヘキサフルオロアンチモネート、
4-(p-tert-ブチルフェニルカルボニル)-4′-ジ(p-トルイル)スルホニオ-ジフェニルスルフィド テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなど。
【0403】
鉄-アレン錯体としては、例えば、次のような化合物が挙げられる。
キシレン-シクロペンタジエニル鉄(II) ヘキサフルオロアンチモネート、
クメン-シクロペンタジエニル鉄(II) ヘキサフルオロホスフェート、
キシレン-シクロペンタジエニル鉄(II) トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メタナイドなど。
【0404】
これらの光カチオン重合開始剤(B)は、それぞれ単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。これらのなかでも特に芳香族スルホニウム塩は、300nm付近の波長領域でも紫外線吸収特性を示すことから、硬化性に優れ、良好な機械強度や接着強度を有する硬化物を与えることができるため、好ましく用いられる。
【0405】
光カチオン重合開始剤(B)の配合量は、光カチオン硬化性成分(A)の全体量100質量部に対して1~10質量部とする。光カチオン硬化性成分(A)100質量部あたり光カチオン重合開始剤(B)を1質量部以上配合することにより、光カチオン硬化性成分(A)を十分に硬化させることができ、それを用いて得られる偏光板に高い機械強度と接着強度を与える。一方、その量が多くなると、硬化物中のイオン性物質が増加することで硬化物の吸湿性が高くなり、偏光板の耐久性能を低下させる可能性があるため、光カチオン重合開始剤(B)の量は、光カチオン硬化性成分(A)100質量部あたり10質量部以下とする。光カチオン重合開始剤(B)の配合量は、光カチオン硬化性成分(A)100質量部あたり2質量部以上とするのが好ましく、また6質量部以下とするのが好ましい。
【0406】
-光増感剤(C)-
本発明の光硬化性接着剤は、以上のようなエポキシ化合物を含む光カチオン硬化性成分(A)及び光カチオン重合開始剤(B)に加えて、380nmより長い波長の光に極大吸収を示す光増感剤(C)を含有してもよい。光カチオン重合開始剤(B)は、300nm付近又はそれより短い波長に極大吸収を示し、その付近の波長の光に感応して、カチオン種又はルイス酸を発生し、光カチオン硬化性成分(A)のカチオン重合を開始させるが、それより長い波長の光にも感応するように、380nmより長い波長の光に極大吸収を示す光増感剤(C)が配合されることが好ましい。かかる光増感剤(C)として、下記一般式(XV)で表されるアントラセン系化合物を好ましく用いることができる。
【0407】
【化107】
【0408】
一般式(XV)において、Rc1、Rc2及びRc3はそれぞれ、独立に、水素原子又は置換基を示す。置換基としては一般式(2)のRとして採りうる置換基から適宜に選択することができ、アルキル基、アルコキシアルキル基が好ましい。
一般式(XV)で表されるアントラセン系光増感剤(C)の具体例を挙げる。
【0409】
9,10-ジメトキシアントラセン、
9,10-ジエトキシアントラセン、
9,10-ジプロポキシアントラセン、
9,10-ジイソプロポキシアントラセン、
9,10-ジブトキシアントラセン、
9,10-ジペンチルオキシアントラセン、
9,10-ジヘキシルオキシアントラセン、
9,10-ビス(2-メトキシエトキシ)アントラセン、
9,10-ビス(2-エトキシエトキシ)アントラセン、
9,10-ビス(2-ブトキシエトキシ)アントラセン、
9,10-ビス(3-ブトキシプロポキシ)アントラセン、
2-メチル-又は2-エチル-9,10-ジメトキシアントラセン、
2-メチル-又は2-エチル-9,10-ジエトキシアントラセン、
2-メチル-又は2-エチル-9,10-ジプロポキシアントラセン、
2-メチル-又は2-エチル-9,10-ジイソプロポキシアントラセン、
2-メチル-又は2-エチル-9,10-ジブトキシアントラセン、
2-メチル-又は2-エチル-9,10-ジペンチルオキシアントラセン、
2-メチル-又は2-エチル-9,10-ジヘキシルオキシアントラセンなど。
【0410】
また、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントンなどのチオキサントン系化合物も光増感剤(C)として好ましく用いることができる。
【0411】
光硬化性接着剤に光増感剤(C)を配合することにより、それを配合しない場合に比べ、接着剤の硬化性が向上する。光硬化性接着剤を構成する光カチオン硬化性成分(A)の100質量部に対する光増感剤(C)の配合量を0.1質量部以上とすることにより、このような効果が発現する。一方、光増感剤(C)の配合量が多くなると、低温保管時に析出するなどの問題を生じることから、その量は、光カチオン硬化性成分(A)100質量部に対して2質量部以下とする。偏光板のニュートラルグレーを維持する観点からは、偏光子と保護膜との接着力が適度に保たれる範囲で、光増感剤(C)の配合量を少なくするほうが有利であり、例えば、光カチオン硬化性成分(A)100質量部に対し、光増感剤(C)の量を0.1~1.5質量部、さらには0.1~1質量部の範囲とするのが好ましい。
【0412】
(光硬化性接着剤の物性)
以上説明した光カチオン硬化性成分(A)、及び光カチオン重合開始剤(B)、必要により光増感剤(C)をそれぞれ所定量配合して、光硬化性接着剤が構成される。この光硬化性接着剤は液状で得られるが、接着剤としての塗工性の面からは、その25℃における粘度が100mPa・sec以下であることが好ましい。
特に、光カチオン硬化性成分(A)に、一般式(XII)で表されるオキシラン環含有エポキシシクロヘキサン化合物(A2)、及び一般式(XIII)で表されるジグリシジル化合物(A3)をそれぞれ所定量存在させたことによって、このような低い粘度を達成することができる。25℃における粘度の下限に特別な制限はないが、これまでに説明した配合割合を維持すれば、概ね30mPa・sec以上となる。良好な塗工特性を維持しながら、偏光子と保護膜の高い接着性を与えるという観点からも、少なくともこの程度の粘度を示すことが好ましい。
【0413】
接着剤に光硬化性接着剤を用いる場合、光硬化性接着剤組成物を塗布した偏光板保護膜を偏光層と貼合した後、活性エネルギー線を照射することによって光硬化性接着剤を硬化させる硬化工程を行う。活性エネルギー線の種類は特に限定されないが、波長400nm以下にピーク波長を有する活性エネルギー線(紫外線)が好ましく、より好ましくは波長280~320nmの間にピーク波長を有するUV-Bである。
【0414】
活性エネルギー線の光源としては、特に限定されないが、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀ランプ、メタルハライドランプなどが好ましく用いられる。
【0415】
光硬化性接着剤への光照射強度は、光硬化性接着剤の組成によって適宜決定されるが、重合開始剤の活性化に有効な波長領域の照射強度が0.1~6000mW/cmとなるように設定されることが好ましい。照射強度が0.1mW/cm以上である場合、反応時間が長くなりすぎず、6000mW/cm以下である場合、光源から輻射される熱及び光硬化性接着剤の硬化時の発熱による光硬化性接着剤の黄変や偏光子51,52の劣化を生じるおそれが少ない。
【0416】
光硬化性接着剤への光照射時間についても、光硬化性接着剤の組成によって適宜決定されるが、上記照射強度と照射時間との積として表される積算光量が10~10000mJ/cmとなるように設定されることが好ましい。積算光量が10mJ/cm以上である場合、重合開始剤由来の活性種を十分量発生させて硬化反応をより確実に進行させることができ、10000mJ/cm以下である場合、照射時間が長くなりすぎず、良好な生産性を維持できる。
【0417】
また、接着層として、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂等をベースポリマーとし、そこに、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物のような架橋剤を加えた粘着剤組成物からなる層を適用することもできる。
【0418】
<偏光板の作製>
本発明の偏光板は、偏光板保護膜の構成を除き、通常の方法で作製することができ、偏光層の吸収軸と、上記偏光板保護膜の音波伝播速度が最大となる方向とのなす角が平行、又は直交するように貼合して作製される。
本明細書中、2つの直線が平行とは、2つの直線のなす角度が0°である場合のみではなく、光学的に許容される程度の誤差を含む場合も含まれる。具体的には、2つの直線が平行とは、2つの直線のなす角度が0°±10°であることが好ましく、2つの直線のなす角度が0°±5°であることがより好ましく、2つの直線のなす角度が0°±1°であることが特に好ましい。同様に、2つの直線が直交する(垂直)とは、2つの直線のなす角度が90°である場合のみではなく、光学的に許容される程度の誤差を含む場合も含まれる。具体的には、2つの直線が直交する(垂直)とは、2つの直線のなす角度が90°±10°であることが好ましく、2つの直線のなす角度が90°±5°であることがより好ましく、2つの直線のなす角度が90°±1°であることが特に好ましい。
【0419】
偏光層に偏光板保護膜が貼合された面の反対面には、さらに偏光板保護膜を貼合してもよいし、従来知られている光学フィルムを貼合してもよい。
上記した従来知られている光学フィルムについては、光学特性及び材料のいずれについても特に制限はないが、セルロースエステル樹脂、アクリル樹脂、環状オレフィン樹脂、及び/又はポリエチレンテレフタレートを含む(あるいは主成分とする)フィルムを好ましく用いることができ、光学的に等方性のフィルムを用いても、光学的に異方性の位相差フィルムを用いてもよい。
上記の従来知られている光学フィルムについて、セルロースエステル樹脂を含むものとしては、例えばフジタックTD40UC(富士フイルム(株)製)などを利用することができる。
上記の従来知られている光学フィルムについて、アクリル樹脂を含むものとしては、特許第4570042号公報に記載のスチレン系樹脂を含有する(メタ)アクリル樹脂を含む光学フィルム、特許第5041532号公報に記載のグルタルイミド環構造を主鎖に有する(メタ)アクリル樹脂を含む光学フィルム、特開2009-122664号公報に記載のラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂を含む光学フィルム、特開2009-139754号公報に記載のグルタル酸無水物単位を有する(メタ)アクリル系樹脂を含む光学フィルムを利用することができる。
また、上記の従来知られている光学フィルムについて、環状オレフィン樹脂を含むものとしては、特開2009-237376号公報の段落[0029]以降に記載の環状オレフィン系樹脂フィルム、特許第4881827号公報、特開2008-063536号公報に記載のRthを低減する添加剤を含有する環状オレフィン樹脂フィルムを利用することができる。
【0420】
[液晶表示装置]
次に本発明の液晶表示装置について説明する。
本発明の液晶表示装置は、本発明の偏光板を少なくとも1枚含む。
図1は、本発明の液晶表示装置の例を示す概略図である。図1において、液晶表示装置10は、液晶層5とこの上下に配置された液晶セル上電極基板3及び液晶セル下電極基板6とを有する液晶セル、液晶セルの両側に配置された上側偏光板1及び下側偏光板8からなる。上電極基板3又は下電極基板6にカラーフィルター層が積層されていてもよい。上記液晶表示装置10の背面にはバックライトを配置する。バックライトの光源としては発光ダイオード、レーザーダイオード、エレクトロルミネッセント素子等が使用できるが、輝度の観点から発光ダイオード(LED)が好ましい。中でも、青色LEDと黄色蛍光体を組み合わせた白色LED、又は青色LEDと緑色蛍光体及び赤色蛍光体を組み合わせた白色LEDが、本発明の偏光板との組み合わせにおいて色再現性を向上する観点から、好ましい。また、青色LEDと量子ドットを含有する光学部材を組み合わせた光源も、同様に好ましい。
【0421】
上側偏光板1及び下側偏光板8は、それぞれ2枚の偏光板保護膜で偏光子を挟むように積層した構成を有しており、本発明の液晶表示装置10は、少なくとも一方の偏光板が本発明の偏光板である。本発明の偏光板保護膜は、液晶セルと偏光子との間に配されてもよく、例えば、液晶セル上電極基板3と偏光子との間に配される。
液晶表示装置10には、画像直視型、画像投影型又は光変調型が含まれる。TFTやMIMのような3端子又は2端子半導体素子を用いたアクティブマトリックス液晶表示装置であることも好ましい。また、時分割駆動と呼ばれるSTNモードに代表されるパッシブマトリックス液晶表示装置であることも好ましい。
また、特開2010-102296号公報の段落128~136に記載のIPSモードの液晶表示装置も本発明の液晶表示装置の形態として好ましい。
【0422】
<粘着剤層>
本発明の液晶表示装置において、本発明の偏光板が粘着剤層を介して液晶セルと貼り合わされていることが好ましく、本発明の偏光板保護膜側の面が粘着剤層を介して液晶セルと貼り合わされていることがより好ましい。
【0423】
粘着剤層の形成に用いられる粘着剤組成物の組成は、特に限定されず、例えば、質量平均分子量(M)が500,000以上のベース樹脂を含む粘着剤組成物を使用してもよい。ベース樹脂の質量平均分子量が500,000未満のとき、凝集力低下によって高温及び/又は多湿条件下で気泡又は剥離現象が生ずる等、粘着剤の耐久信頼性が低下する場合がある。ベース樹脂の質量平均分子量の上限は特に限定されないが、質量平均分子量が過度に増加すれば、粘度上昇によりコーティング性が悪化する場合があるため、2,000,000以下が好ましい。
【0424】
ベース樹脂の具体的な種類は特に限定されず、例えば、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、ゴム系樹脂又はEVA系樹脂が挙げられる。液晶表示装置のような光学装置に適用される場合、透明性、酸化抵抗性及び黄変に対する抵抗性に優れている側面から、アクリル系樹脂が主に用いられるが、これに制限されるものではない。
【0425】
アクリル系樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル単量体80質量部~99.8質量部;及び、他の架橋性単量体0.02質量部~20質量部(好ましくは、0.2質量部~20質量部)を含む単量体混合物の重合体が挙げられる。
【0426】
(メタ)アクリル酸エステル単量体の種類は特に限定されず、例えば、アルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。この場合、単量体に含まれるアルキル基が過度に長鎖になれば、粘着剤の凝集力が低下し、ガラス転移温度(T)又は粘着性の調節が難しくなる場合があるため、炭素数1~14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体を用いることが好ましい。このような単量体の例は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルブチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート及びテトラデシル(メタ)アクリレートが挙げられる。本発明では、上記単量体を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。(メタ)アクリル酸エステル単量体は、単量体混合物100質量部中、80質量部~99.8質量部含まれることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有量が80質量部未満のとき、初期接着力が低下する場合があり、99.8質量部を超えると、凝集力低下によって耐久性が低下する場合がある。
【0427】
単量体混合物に含まれる他の架橋性単量体は、後述する多官能性架橋剤と反応して粘着剤に凝集力を付与し、粘着力及び耐久信頼性などを調節する役割をする架橋性官能基を重合体に付与することができる。このような架橋性単量体としては、ヒドロキシ基含有単量体、カルボキシル基含有単量体及び窒素含有単量体が挙げられる。ヒドロキシ基含有単量体としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチレングリコール(メタ)アクリレート又は2-ヒドロキシプロピレングリコール(メタ)アクリレートが挙げられる。カルボキシル基含有単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシ酢酸、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル酸、4-(メタ)アクリロイルオキシブチル酸、アクリル酸二量体、イタコン酸、マレイン酸及びマレイン酸無水物が挙げられる。窒素含有単量体としては、(メタ)アクリルアミド、N-ビニルピロリドン又はN-ビニルカプロラクタムが挙げられる。本発明では、これらの架橋性単量体を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0428】
他の架橋性単量体は、単量体混合物100質量部中、0.02質量部~20質量部含まれ得る。含有量が0.02質量部未満のとき、粘着剤の耐久信頼性が低下する場合があり、20質量部を超えると、粘着性及び/又は剥離力が低下する場合がある。
【0429】
単量体混合物は、下記一般式(10)で表される単量体が更に含まれていてもよい。このような単量体は粘着剤のガラス転移温度の調節及びその他機能性付与を目的として付加できる。
【0430】
【化108】
【0431】
{式中、R~Rはそれぞれ独立して水素又はアルキルを表し、Rはシアノ;アルキルで置換された又は無置換のフェニル;アセチルオキシ;又はCOR(ここで、Rはアルキル又はアルコキシアルキルで置換された又は無置換のアミノ又はグリシジルオキシを表す。)を表す。}
【0432】
上記式のR~Rの定義で、アルキル又はアルコキシは炭素数1~12、好ましくは炭素数1~8、より好ましくは炭素数1~12のアルキル又はアルコキシを意味し、具体的にはメチル、エチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ又はブトキシであってもよい。
【0433】
一般式(10)で表される単量体としては、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド又はN-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどの窒素含有単量体;スチレン又はメチルスチレンなどのスチレン系単量体;グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有単量体;又はビニルアセテートなどのカルボン酸ビニルエステルなどの1種又は2種以上が挙げられるが、これに制限されるものではない。一般式(10)で表される単量体は、(メタ)アクリル酸エステル単量体と他の架橋性単量体の合計100質量部に対し、20質量部以下の量で含まれ得る。含有量が20質量部を超えると、粘着剤の柔軟性及び/又は剥離力が低下する場合がある。
【0434】
単量体混合物を用いて重合体を製造する方法は特に限定されず、例えば、溶液重合、光重合、バルク重合、サスペンション重合又はエマルジョン重合などの一般的な重合法を介して製造することができる。本発明では、特に溶液重合法を用いることが好ましく、溶液重合はそれぞれの単量体が均一に混合された状態で開始剤を混合し、50℃~140℃の重合温度で遂行することが好ましい。この時、用いられる開始剤としてはアゾビスイソブチロニトリル又はアゾビスシクロヘキサンカルボニトリルなどのアゾ系重合開始剤;及び/又は過酸化ベンゾイル又は過酸化アセチルなどの過酸化物などの通常の開始剤が挙げられる。
【0435】
本発明の粘着剤組成物は、ベース樹脂100質量部に対して0.1質量部~10質量部の架橋剤を更に含んでいてもよい。このような架橋剤はベース樹脂と架橋反応を通じて粘着剤に凝集力を付与することができる。架橋剤の含有量が0.1質量部未満のとき、粘着剤の凝集力が落ちる場合がある。また、10質量部を超えると、層間剥離や浮き現象が生ずる等、耐久信頼性が低下する場合がある。
【0436】
架橋剤の種類は特に限定されず、例えば、イソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、アジリジン系化合物及び金属キレート系化合物と同じ一般的な架橋剤を使用できる。
【0437】
イソシアネート系化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、及びこれらのいずれかの化合物とポリオール(例えば、トリメチルロールプロパン)との反応物よりなる群から選択された一つ以上が挙げられ;エポキシ系化合物としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、トリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、N、N、N‘、N’-テトラグリシジルエチレンジアミン及びグリセリンジグリシジルエーテルよりなる群から選択された一つ以上が挙げられ;アジリジン系化合物としては、N、N‘-トルエン-2,4-ビス(1-アジリジンカルボキサミド)、N、N’-ジフェニルメタン-4,4‘-ビス(1-アジリジンカルボキサミド)、トリエチレンメラミン、ビスイソプロタロイル(bisprothaloyl)-1-(2-メチルアジリジン)及びトリ-1-アジリジニルホスフィンオキシドよりなる群から選択された一つ以上が挙げられる。また、金属キレート系化合物としては、アルミニウム、鉄、亜鉛、スズ、チタン、アンチモン、マグネシウム及び/又はバナジウムなどの多価金属がアセチルアセトン又はアセト酢酸エチルなどに配位している化合物が挙げられる。
【0438】
本発明の粘着剤組成物は、ベース樹脂100質量部に対して0.01質量部~10質量部のシラン系カップリング剤を更に含んでいてもよい。シラン系カップリング剤は粘着剤が高温又は多湿条件で長時間放置された時、接着信頼性向上に寄与することができ、特にガラス基材との接着時に接着安定性を改善し、耐熱性及び耐湿性を向上させることができる。シラン系カップリング剤としては、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン及びγ-アセトアセテートプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。これらのシラン系カップリング剤は、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0439】
シラン系カップリング剤は、ベース樹脂100質量部に対して0.01質量部~10質量部の量で含まれるのが好ましく、0.05質量部~1質量部の量で含まれるのが更に好ましい。含有量が0.01質量部未満のとき、粘着力増加効果が十分でない場合があり、10質量部を超えると、気泡又は剥離現象が生ずるなど耐久信頼性が低下する場合がある。
【0440】
本発明の粘着剤組成物は、帯電防止剤をさらに含むことができ、帯電防止剤としては、アクリル樹脂など粘着剤組成物に含まれる他の成分との相溶性に優れ、粘着剤の透明性、作業性及び耐久性などに悪影響を及ぼさないで、且つ粘着剤に帯電防止性能を付与することができるものであれば、何れの化合物でも使用することができる。帯電防止剤としては、無機塩または有機塩などを挙げることができる。
【0441】
無機塩は、陽イオン成分としてアルカリ金属陽イオン又はアルカリ土類金属陽イオンを含む塩である。陽イオンとしては、リチウムイオン(Li)、ナトリウムイオン(Na)、カリウムイオン(K)、ルビジウムイオン(Rb)、セシウムイオン(Cs)、ベリリウムイオン(Be2+), マグネシウムイオン(Mg2+), カルシウムイオン(Ca2+)、ストロンチウムイオン(Sr2+) 及びバリウムイオン(Ba2+) などの1種又は2種以上を挙げることができ、好ましくは、リチウムイオン(Li)、ナトリウムイオン(Na)、カリウムイオン(K)、セシウムイオン(Cs)、ベリリウムイオン(Be2+)、マグネシウムイオン(Mg2+)、カルシウムイオン(Ca2+)及びバリウムイオン(Ba2+)が挙げられる。無機塩は、1種単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。イオン安全性及び粘着剤内での移動性の側面から、リチウムイオン(Li)が特に好ましい。
【0442】
有機塩は、陽イオン成分として、オニウム(onium)陽イオンを含む塩である。用語「オニウム陽イオン」は、少なくとも一部の電荷が窒素(N)、リン(P)及び硫黄(S)からなる群より選択された一つ以上の原子に偏在されている陽(+)に荷電されたイオンを意味する。オニウム陽イオンは、環型又は非環型化合物であり、環型化合物の場合、非芳香族又は芳香族化合物であることができる。また、環型化合物の場合、窒素、リン又は硫黄原子以外のヘテロ原子(例えば、酸素)を一つ以上含むことができる。また、環型又は非環型化合物は、任意に水素、ハロゲン、アルキル又はアリールなどの置換体により置換されている。また、非環型化合物の場合、一つ以上、好ましくは、4個以上の置換体を含むことができ、この時、置換体は、環型又は非環型置換体、芳香族又は非芳香族置換体である。
【0443】
オニウム陽イオンは、窒素原子を含む陽イオンであり、好ましくは、アンモニウムイオンである。アンモニウムイオンは、4級アンモニウムイオン又は芳香族アンモニウムイオンである。
【0444】
4級アンモニウムイオンは、具体的に、下記一般式11で表される陽イオンであることが好ましい。
【0445】
【化109】
【0446】
一般式11において、RからRは、各々独立的に水素、置換又は非置換されたアルキル、置換又は非置換されたアルコキシ、置換又は非置換されたアルケニル、置換又は非置換されたアルキニル、置換又は非置換されたアリール、又は置換又は非置換されたヘテロアリールを示す。
【0447】
上記一般式11中のアルキル又はアルコキシとしては、炭素数1から12、好ましくは、1から8のアルキル又はアルコキシを示し、アルケニル又はアルキニルとしては、炭素数2から12、好ましくは、炭素数2から8のアルケニル又はアルキニルを示す。
【0448】
一般式11において、アリールは、芳香族化合物から誘導された置換基として、フェニル、ビフェニル、ナフチル又はアントラセニル環状システムなどを示し、ヘテロアリールは、O、N及びSから選択された一つ以上のヘテロ原子を含む5から12環のヘテロ環又はアリール環を意味し、具体的には、プリル、ピロリル、ピロデジニル、チエニル、ピリジニル、ピペリジル、インドリル、キノリル、チアゾール、ベンゾチアゾール及びトリアゾールなどを示す。
【0449】
一般式11において、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、アリール又はヘテロアリールは、一つ以上の置換基により置換されていてもよく、この時、置換基としては、ヒドロキシ基、ハロゲン又は炭素数1から12、好ましくは、1から8、より好ましくは、1から4のアルキル又はアルコキシなどを挙げることができる。
【0450】
本発明では、一般式11で表される陽イオンとして、4級アンモニウム系陽イオンを使用することが好ましくて、特に、RからRが各々独立的に炭素数1から12、好ましくは、炭素数1から8の置換又は非置換されたアルキルである陽イオンを使用する。
【0451】
一般式11で表示される4級アンモニウムイオンとしては、例えば、N-エチル-N,N-ジメチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウムイオン、N,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウムイオン、 N-エチル-N,N-ジメチル-N-プロピルアンモニウムイオン、N-メチル-N,N,N-トリオクチルアンモニウムイオン、N,N,N-トリメチル-N-プロピルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラヘキシルアンモニウムイオン及びN-メチル-N,N,N-トリブチルアンモニウムイオンなどを挙げることができる。
【0452】
芳香族アンモニウムイオンとしては、例えば、ピリジ二ウム、ピリダジニウム、 ピリミジニウム、ピラジニウム、イミダゾリウム、ピラゾリウム、チアゾリウム、オキサゾリウム及びトリアゾリウムからなる群より選択された一つ以上を挙げることができ、好ましくは、炭素数4から16のアルキル基に置換されたN-アルキルピリジニウム、炭素数2から10のアルキルグル基に置換された1,3-アルキルメチルイミダゾリウム、及び炭素数2から10のアルキル基に置換された1,2-ジメチル-3-アルキルイミダゾリウムである。これらの芳香族アンモニウムイオンは、1種単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0453】
また、芳香族アンモニウムイオンは、下記一般式12で表示される化合物である。
【0454】
【化110】
【0455】
一般式12において、R10からR15は、各々独立的に水素、置換又は非置換されたアルキル、置換又は非置換されたアルコキシ、置換又は非置換されたアルケニル、置換又は非置換されたアルキニル、置換又は非置換されたアリール、又は置換又は非置換されたヘテロアリールを示す。
【0456】
一般式12において、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、アリール及びヘテロアリール、及びその置換体に対する定義は、上記一般式11と同一である。
【0457】
一般式12の化合物としては、特に、R11からR15が各々独立的に水素又はアルキルであり、R10がアルキルであることが好ましい。
【0458】
本発明の帯電防止剤において上記のような陽イオンを含む無機塩又は有機塩に含まれる陰イオンの例では、フルオライド(F)、クロライド(Cl)、ブロマイド(Br)、ヨーダイド(I)、ペルクロラート(ClO )、ヒドロキシド(OH)、カーボネート(CO 2-)、ニトレート(NO ) スルホネート(SO )、メチルベンゼンスルホネート(CH(C6H4)SO )、p-トルエンスルホネート(CHSO )、カルボキシベンゼンスルホネート(COOH(C)SO )、トリフルオロメタンスルホネート(CFSO )、ベンゾエート(CCOO)、アセテート(CHCOO)、トリフルオロアセテート(CFCOO)、テトラフルオロボレート(BF )、テトラベンジルボレート(B(C) )、ヘキサフルオロホスフェート(PF )、トリスペンタフルオロエチルトリフルオロホスフェート(P(C) )、ビストリフルオロメタンスルホンイミド(N(SOCF) )、ビスペンタフルオロエタンスルホンイミド(N(SOC) )、ビスペンタフルオロエタンカルボニルイミド(N(COC) )、ビスぺルフルオロブタンスルホンイミド(N(SO) )、ビスぺルフルオロブタンカルボニルイミド(N(COC) )、トリストリフルオロメタンスルホニルメチド(C(SOCF) )、及びトリストリフルオロメタンカルボニルメチド(C(SOCF) )からなる群より選択されることが好ましいが、これらに限定されるものではない。陰イオンのうち、電子求引(electron withdrawing)の役目を行うことができ、疎水性が良好なフッ素によって置換されイオン安定性が高いイミド系陰イオンを使用することが好ましい。
【0459】
一般式11で表わされる4級アンモニウムイオンを有する帯電防止剤は本発明の色素の耐久性を高める点から特に好ましい。
【0460】
本発明の粘着剤組成物は、帯電防止剤を、ベース樹脂100質量部に対して、0.01質量部から5質量部、好ましくは、0.01質量部から2質量部、より好ましくは、0.1質量部から2質量部含む。含有量が0.01質量部未満の場合、目的する帯電防止効果が得られない場合があり、5質量部を超過すれば、他成分との相溶性が低下されて、粘着剤の耐久信頼性又は透明性が悪くなる場合がある。
【0461】
本発明の粘着剤組成物は、帯電防止剤、具体的には、帯電防止剤に含まれる陽イオンと配位結合を形成することができる化合物(以下、「配位結合性化合物」と称する)をさらに含むことができる。配位結合性化合物を適切に含むことにより、相対的に少量の帯電防止剤を使用する場合にも、粘着剤層内部の陰イオン濃度を増加させて効果的に帯電防止性能を付与することができる。
【0462】
使用できる配位結合性化合物の種類は、分子内に帯電防止剤と配位結合可能な官能基を有するものであれば、特別に限定されず、例えば、アルキレンオキシド系化合物が挙げられる。
【0463】
アルキレンオキシド系化合物としては、特別に限定されないが、基本単位の炭素数が2以上、好ましくは、3から12、より好ましくは、3から8であるアルキレンオキシド単位を含むアルキレンオキシド系化合物を使用することが好ましい。
【0464】
アルキレンオキシド系化合物は、分子量が5,000以下であることが好ましい。本発明で使用する用語「分子量」は、化合物の分子量又は質量平均分子量を意味する。本発明において、アルキレンオキシド系化合物の分子量が5,000を超過すれば、粘度が過度に上昇してコーティング性が悪くなるか、金属との錯体形成能が低下する場合がある。一方、アルキレンオキシド化合物の分子量の下限は特に限定されるものではないが、500以上が好ましく、4,000以上がより好ましい。
【0465】
アルキレンオキシド系化合物としては、上述の特性を示す限り、特別に限定されるものではなく、例えば、下記一般式13で表される化合物を使用することができる。
【0466】
【化111】
【0467】
一般式13中、Aは、炭素数2以上のアルキレンを示し、nは、1から120を示し、R16及びR17は、各々独立的に水素、ヒドロキシ、アルキル又はC(=O)R18を示し、上記R18は、水素又はアルキル基を示す。
【0468】
一般式13において、アルキレンは、炭素数3から12、好ましくは、3から8のアルキレンを示し、具体的には、エチレン、プロピレン、ブチレン又はペンチレンを示す。
【0469】
一般式13において、アルキルは、炭素数1から12、好ましくは、1から8、より好ましくは、1から4のアルキルを示し、nは、好ましくは、1から80、より好ましくは、1から40を示す。
【0470】
一般式13で表される化合物としては、ポリアルキレンオキシド(例えば、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキシド、ポリブチレンオキシド又はポリペンチレンオキシドなど)、ポリアルキレンオキシド(例えば、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキシド、ポリブチレンオキシド又はポリペンチレンオキシドなど)の脂肪酸系アルキルエステル又はポリアルキレンオキシド(例えば、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキシド、ポリブチレンオキシド又はポリペンチレンオキシドなど)のカルボン酸エステルなどを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0471】
本発明では、上述のアルキレンオキシド系化合物の以外にも、韓国公開特許第2006-0018495号に開示された、分子のうち一つ以上のエーテル結合を有するエステル化合物や、韓国公開特許第2006-0128659に開示されたオキサラート基含有化合物、ジアミン基含有化合物、多価カルボキシル基含有化合物又はケトン基含有化合物などの多様な配位結合性化合物を必要によって適切に選択して使用することができる。
【0472】
配位結合性化合物は、ベース樹脂100質量部に対して、3質量部以下の割合で粘着剤組成物に含まれるのが好ましく、より好ましくは0.1質量部から3質量部、さらに好ましくは、0.5質量部から2質量部である。含有量が3質量部を超過すると、剥離力などの粘着剤物性が低下する場合がある。
【0473】
本発明の粘着剤組成物は、粘着性能の調節の観点から、ベース樹脂100質量部に対して、1質量部~100質量部の粘着性付与樹脂を更に含んでいてもよい。粘着性付与樹脂の含有量が1質量部未満の場合、添加効果が十分でない場合があり、100質量部を超えると、相溶性及び/又は凝集力向上効果が低下する場合がある。このような粘着性付与樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、(水素化)ヒドロカーボン系樹脂、(水素化)ロジン樹脂、(水素化)ロジンエステル樹脂、(水素化)テルペン樹脂、(水素化)テルペンフェノール樹脂、重合ロジン樹脂又は重合ロジンエステル樹脂などが挙げられる。これらの粘着性付与樹脂は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0474】
本発明の粘着剤組成物は発明の効果に影響を及ぼさない範囲で、熱開始剤又は光開始剤のような開始剤;エポキシ樹脂;硬化剤;紫外線安定剤;酸化防止剤;調色剤;補強剤;充填剤;消泡剤;界面活性剤;多官能性アクリレートなどの光重合性化合物;及び可塑剤よりなる群から選択される一つ以上の添加剤を更に含んでいてもよい。
【0475】
粘着剤層は、本発明の偏光板上、より詳細には、本発明の偏光板保護膜側に形成される。粘着剤層を形成する方法は特に限定されず、例えば、偏光板にバーコーターなどの通常の手段で粘着剤組成物を塗布し、乾燥及び硬化させる方法;粘着剤組成物をまず、剥離性基材の表面に塗布、乾燥した後、剥離性基材を用いて粘着剤層を偏光板に転写し、熟成、硬化させる方法などが用いられる。
【実施例
【0476】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例に限定されるものではない。
【0477】
[偏光板保護膜の作製]
偏光板保護膜に用いた材料を次に示す。
<マトリックス樹脂>
(樹脂1)
市販のポリスチレン樹脂(PSジャパン(株)製、SGP-10(商品名)、Tg 100℃、fd 0.86)を110℃で加熱し、常温(23℃)に戻してから用いた。
【0478】
(樹脂2)
市販の環状ポリオレフィン樹脂(JSR(株)製、アートンRX4500(商品名)、Tg140℃)を110℃で加熱し、常温に戻してから用いた。
(樹脂3)
市販の環状ポリオレフィン樹脂(JSR(株)製、アートンG7810(商品名)、Tg140℃、fd 0.81)を110℃で加熱し、常温に戻してから用いた。
【0479】
(樹脂4)
市販の環状ポリオレフィン樹脂(ポリプラスティクス(株)製、TOPAS8007(商品名)、Tg78℃、エチレンとノルボルネンの共重合ポリマー、fd 0.93)。
(樹脂5)
市販の環状ポリオレフィン樹脂(三井化学(株)製、APL6011T(商品名)、Tg 105℃、エチレンとノルボルネンの共重合ポリマー、fd 0.91)。
(樹脂6)
市販のポリメチルメタクリレート(三菱レーヨン(株)製、ダイアナールBR80(商品名)、Tg 110℃、fd 0.70)。
(樹脂7)
市販のポリフェニレンエーテル樹脂(旭化成(株)製、ザイロンS201A(商品名)、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンオキサイド)、Tg 210℃
(樹脂8)
市販の環状ポリオレフィン樹脂(ポリプラスティクス(株)製、TOPAS6013、Tg 138℃、エチレンとノルボルネンの共重合ポリマー)。
(樹脂9)
市販の環状ポリオレフィン樹脂(三井化学(株)製、APL6509T(商品名)、Tg 80℃、エチレンとノルボルネンとの共重合ポリマー)。
(接着改良性樹脂1)
エポクロス RPS-1005(商品名、オキサゾリン基含有ポリスチレン系樹脂、日本触媒製)
(接着改良性樹脂2)
市販の水添スチレン系熱可塑性エラストマー(旭化成(株)製、タフテックH1043(商品名)、スチレン/エチレン/ブチレン/スチレンのブロック共重合物の水素添加物)
(接着改良性樹脂3)
市販の酸変性水添スチレン系熱可塑性エラストマー(旭化成(株)製、タフテックM1193(商品名)、スチレン/エチレン/ブチレン/スチレンのブロック共重合物の水素添加物の無水マレイン酸付加体)
(伸長性樹脂成分1)
アサフレックス810(商品名、旭化成(株)製、スチレン-ブタジエン樹脂)
(剥離性制御樹脂成分1)
バイロン550(商品名、東洋紡(株)製、ポリエステル系添加剤)
(ボロン酸エステル基含有共重合体(共重合体(a))
【0480】
【化112】
【0481】
<色素>
【0482】
【化113】
【0483】
【化114】
【0484】
【化115】
【0485】
<添加剤>
(偏光度向上剤)
【0486】
【化116】
【0487】
【化117】
【0488】
【化118】
【0489】
(褪色防止剤)
上記のIII-2、IV-1、IV-2、IV-8
(マット剤1)
二酸化ケイ素微粒子、NX90S(日本アエロジル(株)製、粒子サイズ20nm、モース硬度約7)
【0490】
(レベリング剤1)
下記構造の界面活性剤を用いた。下記構造式中、t-Buはtert-ブチル基を意味する。
【0491】
【化119】
【0492】
(界面活性剤)
メガファックF-552(商品名、DIC株式会社社製)
【0493】
(基材フィルム)
(基材1)
市販のポリエチレンテレフタレートフィルム、ルミラー(R)S105(膜厚38μm、東レ(株)製)を基材1として用いた。
(基材2)
市販のポリエチレンテレフタレートフィルム、ルミラー(R)SK50(膜厚50μm、東レ(株)製)を基材2として用いた。
【0494】
<色素の酸化電位、偏光度向上剤の酸化電位、及び偏光度向上剤の還元電位の測定>
本発明に用いる色素及び偏光度向上剤の酸化電位及び還元電位は、電気化学アナライザー(ALS社製660A)により、作用電極は金電極、対極は白金黒電極、参照電極はAg線、支持電解質はヘキサフルオロリン酸テトラブチルアンモニウム、をそれぞれ用いて測定した。測定溶媒は、ジクロロメタン又はアセトニトリルを用いた。
なお、本発明では、同条件で測定したフェロセン/フェリシニウムイオン系(Fc/Fc)を標準電位として電位の値を示した。
なお、偏光度向上剤内蔵型色素(C-49)、(C-55)及び(C-65)については、二つの酸化電位が検出されるが、貴の電位を色素部の酸化電位、卑の電位を偏光度向上剤部の酸化電位に帰属した。
【0495】
<色素の還元電位の算出>
まず、色素の吸収スペクトルを分光光度計(HP社製8430)、同じく蛍光スペクトルを蛍光光度計(HORIBA社製Fluorog3)、を用いて測定した。なお、測定溶媒は上記電位測定と同じ溶媒を用いた。
次に、上記で得られた吸収スペクトル及び蛍光スペクトルを、吸収極大波長における吸光度及び発光極大波長における発光度で各々規格化し、両者の交点となる波長を求め、この波長の値をエネルギー単位(eV)に変換し、HOMO-LUMOバンドギャップとした。
上記で測定した色素の酸化電位の値(eV)に上記HOMO-LUMOバンドギャップの値を加えることにより、色素の還元電位を算出した。
【0496】
<基材つき偏光板保護膜101の作製>
(樹脂溶液の調製)
各成分を下記に示す組成で混合し、偏光板保護膜形成液(組成物)Ba-1を調製した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
偏光板保護膜層形成液Ba-1の組成
――――――――――――――――――――――――――――――――――
樹脂1 100質量部
上記色素3-11 0.348質量部
α-トコフェロール 1.54質量部
マット剤1 0.002質量部
酢酸エチル(溶媒) 574質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0497】
続いて、得られた溶液を絶対濾過精度10μmの濾紙(#63、東洋濾紙(株)製)で濾過し、さらに絶対濾過精度2.5μmの金属焼結フィルター(FH025、ポール社製)にて濾過した。
【0498】
(基材つき偏光板保護膜の作製)
上記濾過処理後の形成液Ba-1を、基材1上に、乾燥後の膜厚が5.0μmとなるようにバーコーターを用いて塗布し、100℃で乾燥し、基材つき偏光板保護膜101を作製した。
【0499】
<基材つき偏光板保護膜102~114、116~140、及び201~204、211~213の作製>
マトリックス樹脂の種類、色素の種類、添加量、膜厚を表1の内容に変更した以外は基材つき偏光板保護膜101と同様に実施して本発明の基材つき偏光板保護膜102~114、116~140、及び比較例の基材つき偏光板保護膜201~204、211~213を得た。
【0500】
<基材つき偏光板保護膜301の作製>
(伸長性樹脂成分1の酢酸エチル溶液の調製)
伸長性樹脂成分1の14.5質量部を酢酸エチル85.5質量部に溶解した。次に、キョーワード700SEN-S(商品名、協和化学工業(株)製)を5質量部添加し、室温で1時間撹拌したのち、絶対濾過精度2.5μmの金属焼結フィルター(FH025(商品名)、ポール社製)にて濾過してキョーワード700SEN-Sを除去し、塩基成分を除去した伸長性樹脂成分1の酢酸エチル溶液を調製した。
【0501】
(樹脂溶液の調製)
各成分を下記に示す組成で混合し、偏光板保護膜形成液(組成物)Ba-3を調製した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
偏光板保護膜層形成液Ba-3の組成
――――――――――――――――――――――――――――――――――
樹脂1 17.1質量部
接着改良性樹脂1 49.8質量部
上記で調製した伸長性樹脂成分1の酢酸エチル溶液 206.7質量部
剥離性制御樹脂成分1 0.2質量部
ボロン酸エステル基含有共重合体(AD-19) 0.3質量部
色素C-73 0.33質量部
マット剤1 0.002質量部
酢酸エチル(溶媒) 397.3質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0502】
続いて、得られた溶液を絶対濾過精度10μmの濾紙(#63、東洋濾紙(株)製)で濾過し、さらに絶対濾過精度2.5μmの金属焼結フィルター(FH025、ポール社製)にて濾過した。
【0503】
(基材つき偏光板保護膜の作製)
上記濾過処理後の形成液Ba-3を、基材1上に、乾燥後の膜厚が5.0μmとなるようにバーコーターを用いて塗布し、105℃で乾燥し、基材つき偏光板保護膜301を作製した。
【0504】
<基材つき偏光板保護膜302~304の作製>
マトリックス樹脂成分の種類、添加量、界面活性剤の添加量を表2の内容に変更した以外は基材つき偏光板保護膜301と同様に実施して本発明の基材つき偏光板保護膜302~304を得た。
【0505】
<基材つき偏光板保護膜401の作製>
(樹脂溶液の調製)
各成分を下記に示す組成で混合し、偏光板保護膜形成液(組成物)Ba-4を調製した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
偏光板保護膜層形成液Ba-4の組成
――――――――――――――――――――――――――――――――――
樹脂1 85.6質量部
樹脂7 10.0質量部
剥離性制御樹脂成分1 0.10質量部
色素C-73 0.33質量部
褪色防止剤(IV-8) 4.0質量部
マット剤1 0.002質量部
トルエン(溶媒) 767.3質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0506】
続いて、得られた溶液を絶対濾過精度10μmの濾紙(#63、東洋濾紙(株)製)で濾過し、さらに絶対濾過精度2.5μmの金属焼結フィルター(FH025、ポール社製)にて濾過した。
【0507】
(基材つき偏光板保護膜の作製)
上記濾過処理後の形成液Ba-4を、基材2上に、乾燥後の膜厚が5.0μmとなるようにバーコーターを用いて塗布し、120℃で乾燥し、基材つき偏光板保護膜401を作製した。
【0508】
<基材つき偏光板保護膜402~407の作製>
マトリックス樹脂中の樹脂1と樹脂7の比率、褪色防止剤の添加量、膜厚を表3の内容に変更した以外は基材つき偏光板保護膜401と同様に実施して本発明の基材つき偏光板保護膜402~407を得た。
【0509】
<基材つき偏光板保護膜501の作製>
(樹脂溶液の調製)
各成分を下記に示す組成で混合し、偏光板保護膜形成液(組成物)Ba-5を調製した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
偏光板保護膜層形成液Ba-5の組成
――――――――――――――――――――――――――――――――――
樹脂4 68.6質量部
樹脂8 29.4質量部
剥離性制御樹脂成分1 0.10質量部
色素C-73 0.73質量部
褪色防止剤(IV-8) 1.1質量部
レベリング剤:メガファックF-554(DIC(株)製フッ系ポリマー)
0.08質量部
マット剤1 0.002質量部
トルエン(溶媒) 770.0質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0510】
続いて、得られた溶液を絶対濾過精度10μmの濾紙(#63、東洋濾紙(株)製)で濾過し、さらに絶対濾過精度2.5μmの金属焼結フィルター(FH025、ポール社製)にて濾過した。
【0511】
(基材つき偏光板保護膜の作製)
上記濾過処理後の形成液Ba-5を、基材2上に、乾燥後の膜厚が2.5μmとなるようにバーコーターを用いて塗布し、120℃で乾燥し、基材つき偏光板保護膜501を作製した。
【0512】
<基材つき偏光板保護膜502~507の作製>
マトリックス樹脂の比率、色素の添加量、膜厚を表4の内容に変更した以外は基材つき偏光板保護膜501と同様に実施して本発明の基材つき偏光板保護膜502~507を得た。
【0513】
(偏光板保護膜の評価)
以下の方法により本発明及び比較例の基材つき偏光板保護膜の含水率を測定した。
【0514】
<含水率>
基材つき偏光板保護膜から本発明の偏光板保護膜を剥離し、偏光板保護膜の平衡含水率を以下の方法により算出した。
試料を温度25℃、湿度80%の環境下に24時間以上調湿した後に、水分測定器、試料乾燥装置“CA-03”及び“VA-05”(共に三菱化学(株)製)にてカールフィッシャー法で水分量(g)を測定し、含水率(質量%)を算出した。
【0515】
[偏光板の作製]
<偏光板保護膜の表面処理>
基材つき偏光板保護膜101~114、116~140、201~204、211~213、301~304、401~407、501~507について、基材フィルムとは反対側の面にコロナ処理を行い、表面処理した基材つき偏光板保護膜101~114、116~140、201~204、211~213、301~304、401~407、501~507を作製した。
【0516】
<偏光子(偏光層)の作製>
特開2001-141926号公報の実施例1に従い、2対のニップロール間に周速差を与え、長手方向に延伸し、厚み12μmのポリビニルアルコール樹脂を含む偏光層を作製した。
【0517】
<フロント側偏光板保護膜(アウター偏光板保護膜)の作製>
(アクリル樹脂の調製)
攪拌装置、温度センサー、冷却管及び窒素導入管を備えた内容積30Lの反応釜に、メタクリル酸メチル(MMA)8000g、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)2000g及び重合溶媒としてトルエン10000gを仕込み、これに窒素を通じつつ、107℃まで昇温させた。昇温に伴う環流が始まったところで、重合開始剤としてt-アミルパーオキシイソノナノエート10gを添加するとともに、t-アミルパーオキシイソノナノエート20gとトルエン100gとからなる溶液を2時間かけて滴下しながら、約105~110℃の環流下で溶液重合を進行させ、さらに4時間の熟成を行った。重合反応率は95%、得られた重合体におけるMHMAの含有率(質量比)は20%であった。
【0518】
次に、得られた重合溶液に、環化触媒として10gのリン酸ステアリル/リン酸ジステアリル混合物(堺化学工業製、Phoslex A-18)を加え、約80~100℃の環流下において5.5時間、環化縮合反応を進行させた。
【0519】
次に、得られた重合溶液を、バレル温度260℃、回転速度100rpm、減圧度13~400hPa(10~300mmHg)、リアベント数1個及びフォアベント数4個のベントタイプスクリュー二軸押出機(φ=29.75mm、L/D=30)に、樹脂量換算で2.0kg/時の処理速度で導入し、押出機内で環化縮合反応及び脱揮を行った。次に、脱揮完了後、押出機内に残された熱溶融状態にある樹脂を押出機の先端から排出し、ペレタイザーによりペレット化して、(メタ)アクリル樹脂Aを得た。アクリル樹脂Aはラクトン環構造を有する。この樹脂の質量平均分子量は110000、ガラス転移温度は125℃であった。
【0520】
(アウター偏光板保護膜の作製)
上記(メタ)アクリル樹脂A;100質量部とゴム質弾性体C-1;10質量部とを二軸押し出し機に供給し、約280℃でシート状に溶融押し出しして、厚さ40μmの長尺状のアウター偏光板保護膜を作製した。なお、ゴム質弾性体C-1としては、カネエースM-210(株式会社カネカ製)を用いた。
【0521】
(貼り合せ)
偏光層と、上記表面処理した基材つき偏光板保護膜を、この保護膜のコロナ処理面が偏光層側になるように、ポリビニルアルコール((株)クラレ製、PVA-117H)3質量%水溶液を用いて、偏光層の吸収軸と基材つき偏光板保護膜の長手方向とが平行になるようにロールツーロールで積層した。
つぎに、アウター偏光板保護膜に下記組成の接着剤Mを、マイクログラビアコーター(グラビアロール:#300,回転速度140%/ライン速)を用いて、厚さ5μmになるように塗工し、接着剤付きフロント用偏光板保護膜とした。次いで、この接着剤付きフロント用偏光板保護膜と上記偏光層を、接着剤付きフロント用偏光板保護膜の接着剤が付いている側の面と、上記偏光層の基材つき偏光板保護膜がついていない面を貼り合わせ、基材つき偏光板保護膜の側から紫外線を照射して、偏光板を作製した。なお、ライン速度は20m/min、紫外線の積算光量300mJ/cmとした。ここで、偏光子の透過軸とアウター偏光板保護膜の搬送方向とが直交するように配置した。
-接着剤Mの組成-
2-ヒドロキシエチルアクリレート 100質量部
トリレンジイソシアネート 10質量部
光重合開始剤(イルガキュア907、BASF製) 3質量部
【0522】
続けて、70℃で乾燥した後、基材つき偏光板保護膜の基材フィルムであるポリエチレンテレフタレートを、剥離ローラーを有するセパレータの剥離装置と同様の装置を用いて連続剥離し、さらに市販のアクリレート系粘着剤を塗工して偏光板を作製した。
【0523】
得られた偏光板(5cm×5cm)の偏光度を測定した。偏光板保護膜101~114、116~140、201~204、211~213、301~304、401~407、501~507がガラス側になるようにガラス上に偏光板を粘着剤を介して貼り付けた。このサンプルを、日本分光(株)製自動偏光フィルム測定装置VAP-7070にサンプルのガラス側を光源に向けてセットし、380nm~700nmの波長範囲の直交透過率及び平行透過率を測定した。上記直交透過率及び平行透過率の測定値から以下の式により偏光度スペクトルを算出し、さらに光源(補助イルミナントC)とCIE視感度(Y)の重み付け平均を計算することにより、偏光度を算出した。結果を表1~4に示した。
偏光度(%)=[(平行透過率-直交透過率)/(直交透過率+平行透過率)]1/2×100
【0524】
上記各評価の結果を下表に示す。
【0525】
【表1】
【0526】
【表1-1】
【0527】
【表1-2】
【0528】
【表2】
【0529】
【表3】
【0530】
【表4】
【0531】
表1~4の結果から、関係式[A-1]を満たす電子供与型消光剤、関係式[B-1]を満たす電子受容型消光剤、又は偏光度向上剤内蔵型色素を添加した実施例117~122、124~131、133~137、301~304、401~407、501~507の偏光板保護膜は偏光度向上剤を含有しない偏光板保護膜116に対して偏光度が高く好ましい。
中でも、偏光度向上剤を色素に結合させた実施例135~137、301~304、401~407、501~507の偏光板保護膜は偏光度向上効果が特に大きい。
一方、膜厚が本発明の範囲を超える比較例212及び213では、偏光度向上剤を添加しても偏光度が向上しない。
また、fd値が関係式[C]を満たす樹脂を用いた本発明の偏光板保護膜116、138~140は比較例の偏光板保護膜211に対して偏光度が高く好ましい。
【0532】
続いて、偏光板保護膜の耐光性に対する樹脂の影響を調べた。
【0533】
マトリックス樹脂の種類、色素の種類、添加量、膜厚を表5の内容に変更した以外は基材つき偏光板保護膜101と同様に実施して本発明の基材つき偏光板保護膜115及び比較例の基材つき偏光板保護膜206及び207を得た。基材つき偏光板保護膜104は、上記で得られたものを使用した。
【0534】
<耐光性>
(偏光板保護膜の吸収極大値)
島津製作所(株)製UV3150分光光度計により基材つき偏光板保護膜の、400nmから800nmの波長範囲における吸光度1nmごとに測定した。基材つき偏光板保護膜の各波長における吸光度と、色素を含有しない、基材つき偏光板保護膜(マトリックス樹脂は同じもの)の吸光度との吸光度差を算出し、この吸光度差の最大値を吸収極大値として定義した。
(耐光性)
基材つき偏光板保護膜を、(株)スガ試験機社製スーパーキセノンウェザーメーターSX75で、60℃、相対湿度50%の環境下において200時間光を照射し、この照射前後における吸収極大値を測定し、以下の式により耐光性を算出した。
[耐光性(%)]=([200時間光照射後の吸収極大値]/[光照射前の吸収極大値])×100
結果を下表に示す。
【0535】
【表5】
【0536】
表5に示される通り、偏光板保護膜に用いるマトリックス樹脂の含水率が1.0%であると、耐光性に劣る結果となった。すなわち、マトリックス樹脂が一定の疎水的性状を有することが、耐光性の向上において重要であることがわかる。
【0537】
マトリックス樹脂の種類、色素の種類、添加量、膜厚を表5の内容に変更した以外は基材つき偏光板保護膜101と同様に実施して比較例の基材つき偏光板保護膜208~210を得た。これらを用いて、上記と同様にして、偏光板を得た。
基材つき偏光板保護膜101~114、116~122及びこれらを用いた偏光板は、上記で得られたものを用いた。
【0538】
[液晶表示装置の作製]
市販の液晶表示装置(LG Electronics社製SJ8500 55V)の液晶パネルを取り出してフロント側(視認者側)の偏光板を剥がし、代わりに上記で調製した偏光板を、粘着剤を介して貼り付けた。こうして液晶表示装置を作製した。なお、SJ8500の光源は、青色LEDと緑色蛍光体及び赤色蛍光体を組み合わせた白色LEDが使用されていた。
【0539】
[色再現域の評価]
作製した液晶表示装置で白、赤、緑、青を全画面表示させ、白表示の輝度、及び赤、緑、青それぞれの色度を、分光放射計(トプコンテクノハウス社製SR-UL2)を用いて測定した。測定された赤、緑、青の色度点をCIE表色系xy色度図上で結んで作られる三角形が、DCI-P3規格の3原色点を結んで作られる三角形と重なる部分の面積を求め、DCI-P3規格の3原色点を結んで作られる三角形の面積で除して、DCI-P3規格に対するカバー率を算出した。結果を表5に示す。
なお、DCI-P3規格の3原色点はそれぞれ以下のとおりである。
赤:x=0.680、y=0.320緑:x=0.265、y=0.690青:x=0.150、y=0.060
【0540】
【表6】
【0541】
上記表6に示されるように、本発明の偏光板保護膜を用いることにより、液晶表示装置の色再現性が高められることがわかる。
【0542】
<基材つき偏光板保護膜601の作製>
【0543】
(樹脂溶液の調製)
各成分を下記に示す組成で混合し、偏光板保護膜形成液(組成物)Ba-6を調製した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
偏光板保護膜層形成液Ba-6の組成
――――――――――――――――――――――――――――――――――
樹脂1 48.0質量部
接着改良性樹脂1 50.8質量部
剥離性制御樹脂成分1 0.2質量部
ボロン酸エステル基含有共重合体(AD-19) 1.0質量部
色素C-73 0.55質量部
マット剤1 0.002質量部
酢酸エチル(溶媒) 397.3質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0544】
続いて、得られた溶液を絶対濾過精度10μmの濾紙(#63、東洋濾紙(株)製)で濾過し、さらに絶対濾過精度2.5μmの金属焼結フィルター(FH025、ポール社製)にて濾過した。
【0545】
(基材つき偏光板保護膜の作製)
上記濾過処理後の形成液Ba-6を、基材1上に、乾燥後の膜厚が3.0μmとなるようにバーコーターを用いて塗布し、105℃で乾燥し、基材つき偏光板保護膜601を作製した。
【0546】
<粘着剤層つき偏光板601-A>
実施例301において、基材つき偏光板保護膜301を上記で得られた基材つき偏光板保護膜601に変更したこと以外は実施例301と同様にして偏光板601を作製した。
【0547】
<アクリル系共重合体(A-1)の製造>
窒素ガスが還流され、温度調節が容易なように冷却装置を備えた1Lの反応器に、n-ブチルアクリレート(n-BA)95.8質量部、アクリル酸(AA)4質量部及びヒドロキシエチルメタアクリレート(2-HEMA)0.2質量部を含む単量体混合物を投入し、溶剤としてエチルアセテート(EAc)100質量部を投入した。次いで、酸素除去のために窒素ガスを1時間パージングした後、62℃に保持した。その後、上記混合物を均一にした後、反応開始剤として、エチルアセテートを用いて50%濃度に希釈したアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.03質量部を投入し、8時間反応させてアクリル系共重合体(A-1)を製造した。
【0548】
上記で製造したアクリル系共重合体A-1の100質量部に、架橋剤としてイソシアネート系トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート付加物(TDI-1)を0.5質量部、及び、帯電防止剤として、トリブチルメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを0.5質量部投入し、適正の濃度に希釈して均一に混合した後、離型紙にコーティングして乾燥し、厚さ25μmの均一な粘着剤層を製造した。
【0549】
上記で製造された粘着剤層を、本発明の偏光板601の、本発明の偏光板保護膜601側に粘着加工し、本発明の粘着剤つき偏光板保護膜601-Aを作製した。
【0550】
<粘着剤つき偏光板601-B及び601-Cの作製>
粘着剤つき偏光板601-Aの製造において、帯電防止剤の種類を表7に示す化合物に変更したこと以外は偏光板601-Aの製造と同様にして、本発明の偏光板601-B及び601-Cを作製した。
【0551】
帯電防止剤A:
トリブチルメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド
帯電防止剤B:
1-ブチル-4-メチルピリジニウムヘキサフルオロホスファート
帯電防止剤C:
トリブチルメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド
【0552】
<基材つき偏光板保護膜602>
基材つき偏光板保護膜601の作製において、樹脂1と伸長性樹脂成分1の添加量を表7に記載の量に変更したこと以外は基材つき偏光板保護膜601の作製と同様に実施して、本発明の基材つき偏光板保護膜602を得た。
【0553】
<粘着剤層つき偏光板602-Aの作製>
粘着剤層つき偏光板601-Aの製造において、偏光板601を偏光板602に変更したこと以外は偏光板601-Aの製造と同様にして、本発明の偏光板602-Aを作製した。
【0554】
上記で製造された粘着層つき偏光板601-A、601-B、601-C、602-Aをそれぞれ4cm×4cmに裁断し、ガラスにはりつけた。つぎにガラスつき偏光板を日本分光(株)製自動偏光フィルム測定装置VAP-7070にサンプルのガラス側を光源に向けてセットし、波長595nmにおける単板透過率を測定した。さらに、ガラスつき偏光板を80℃の環境下で500時間保管した後に、再びVAP-7070で波長595nmにおける単板透過率を測定した。80℃の環境下で500時間保管することによる単板透過率の変化を以下の式より算出し、表7に示した。
ΔTs=(80℃で500時間保管後の単板透過率)-(初期の単板透過率)
【0555】
【表7】
【0556】
表7の結果から、一般式11で表わされる陽イオンを有する帯電防止剤Aを用いた粘着層つき偏光板601-Aは、粘着層つき偏光板601-B及び同601-Cに対して、偏光板の耐熱性が高く、特に好ましいことがわかる。
【0557】
<基材つき偏光板保護膜701の作製>
【0558】
(樹脂溶液の調製)
各成分を下記に示す組成で混合し、偏光板保護膜形成液(組成物)Ba-7を作製した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
偏光板保護膜層形成液Ba-7の組成
――――――――――――――――――――――――――――――――――
樹脂4 37.4質量部
樹脂8 56.1質量部
色素C-73 0.73質量部
褪色防止剤(IV-8) 1.1質量部
色相調節剤:m-テルフェニル 4.5質量部
レベリング剤:メガファックF-554(DIC(株)製フッ系ポリマー)
0.08質量部
マット剤1 0.002質量部
シクロヘキサン(溶媒) 770.0質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0559】
続いて、得られた溶液を絶対濾過精度10μmの濾紙(#63、東洋濾紙(株)製)で濾過し、さらに絶対濾過精度2.5μmの金属焼結フィルター(FH025、ポール社製)にて濾過した。
【0560】
(基材つき偏光板保護膜の作製)
上記濾過処理後の形成液Ba-7を、基材2上に、乾燥後の膜厚が2.5μmとなるようにバーコーターを用いて塗布し、120℃で乾燥し、基材つき偏光板保護膜701を作製した。
基材つき偏光板保護膜701について、基材とは反対側の面にコロナ処理を行い、表面処理した基材つき偏光板保護膜701を作製した。
【0561】
(接着剤組成物Aの作製)
3,4-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(Daicel社のCelloxide2021P(商品名))(脂環式ジエポキシ化合物(A1))25質量%、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル(ジグリシジル化合物(A3))25質量%、3-エチル-3-[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシメチル]オキセタン(東亞合成株式会社のアロンオキセタンDOX221(商品名))(他のカチオン重合性化合物(オキセタン化合物))50質量%を入れて製造した樹脂組成物100質量部(光カチオン硬化性成分(A))に、光カチオン重合開始剤(B)であるOmnicat 250(商品名、IGM Resins B.V.社)(芳香族ヨードニウム塩)5質量部と光増感剤(C)である2-イソプロピルチオキサントン(東京化成株式会社製)0.9質量部を添加して偏光板用接着剤組成物Aを製造した。
【0562】
(貼り合せ)
偏光層と、上記表面処理した基材つき偏光板保護膜701を、この保護膜のコロナ処理面が偏光層側になるように、上記で作製した偏光板用接着剤組成物Aを用いて偏光層の吸収軸と基材つき偏光板保護膜701の長手方向とが平行になるようにロールツーロールで積層した。つぎに、偏光板501の作製で使用したものと同じアウター偏光板保護膜に上記偏光板用接着剤組成物Aを厚さ3μmになるように塗工し、接着剤付きフロント用偏光板保護膜とした。次いで、この接着剤付きフロント用偏光板保護膜と上記偏光層を、接着剤付きフロント用偏光板保護膜の接着剤が付いている側の面と、上記偏光層の基材つき偏光板保護膜がついていない面を貼り合わせ、基材つき偏光板保護膜の側から紫外線を照射して、偏光板701を作製した。なお、ライン速度は20m/min、紫外線の積算光量300mJ/cmとした。ここで、偏光子の透過軸とアウター偏光板保護膜の搬送方向とが直交するように配置した。
【0563】
粘着剤つき偏光板601-Bの作製で作製した粘着剤層を、偏光板701の、偏光板701側に粘着加工し、本発明の粘着剤つき偏光板701-Bを作製した。
【0564】
<基材つき偏光板保護膜702~708の作製>
マトリックス樹脂の種類、比率、及びm-テルフェニルの添加量を表8の内容に変更した以外は表面処理した基材つき偏光板保護膜701と同様に実施して本発明の表面処理した基材つき偏光板保護膜702~708を得た。
【0565】
<粘着剤層つき偏光板701-B~同708-Bの作製>
表面処理した基材つき偏光板保護膜701を上記で得られた表面処理した基材つき偏光板保護膜702~708に変更したこと以外は粘着剤つき偏光板701-Bと同様にして粘着剤層つき偏光板702-B~同708-Bを作製した。
【0566】
(偏光板保護膜のガラス転移温度の測定)
基材つき偏光板保護膜701から基材をはぎ取り、残った偏光板保護膜701の20mgを測定パンに入れ、これを窒素気流中で速度10℃/分で30℃から120℃まで昇温して15分間保持した後、30℃まで-20℃/分で冷却した。この後、再度30℃から250℃まで昇温して、ベースラインが低温側から偏倚し始める温度をガラス転移温度Tgとした。
基材つき偏光板保護膜702~708についても上記と同様にしてTgを測定した。結果を表8に示す。
【0567】
(偏光度の測定)
実施例101の粘着剤つき偏光板と同様にして、粘着剤つき偏光板701-B~708-Bの偏光度を測定した。さらに、粘着剤つき偏光板701-B~708-Bを、温度85℃相対湿度85%の環境下で500時間保管した後の偏光度を測定した。結果を表8に示す。
【0568】
【表8】
【0569】
表8の結果から、偏光板保護膜のTgが70℃以上である粘着剤つき偏光板701-B~704-B、706-B~708-Bは偏光板保護膜のTgが70℃未満である粘着剤つき偏光板705-Bに対して温度85℃相対湿度85%で500時間保管することによる偏光度の低下が小さく、特に好ましいことがわかる。
【0570】
本発明をその実施態様とともに説明したが、我々は特に指定しない限り我々の発明を説明のどの細部においても限定しようとするものではなく、添付の請求の範囲に示した発明の精神と範囲に反することなく幅広く解釈されるべきであると考える。
【0571】
本願は、2017年9月29日に日本国で特許出願された特願2017-192085、2017年12月25日に日本国で特許出願された特願2017-247933、2018年2月28日に日本国で特許出願された特願2018-035024、2018年5月31日に日本国で特許出願された特願2018-104900、及び2018年6月27日に日本国で特許出願された特願2018-122094に基づく優先権を主張するものであり、これはここに参照してその内容を本明細書の記載の一部として取り込む。
【符号の説明】
【0572】
1 上側偏光板
2 上側偏光板吸収軸の方向
3 液晶セル上電極基板
4 上基板の配向制御方向
5 液晶層
6 液晶セル下電極基板
7 下基板の配向制御方向
8 下側偏光板
9 下側偏光板吸収軸の方向
10 液晶表示装置
図1