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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】細胞保存容器
(51)【国際特許分類】
   A61J 1/10 20060101AFI20221021BHJP
   A61J 3/00 20060101ALN20221021BHJP
【FI】
A61J1/10 335B
A61J3/00 301
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019526995
(86)(22)【出願日】2018-06-27
(86)【国際出願番号】 JP2018024440
(87)【国際公開番号】W WO2019004304
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-05-12
(31)【優先権主張番号】P 2017125601
(32)【優先日】2017-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、再生医療実用化研究事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000153030
【氏名又は名称】株式会社ジェイ・エム・エス
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(72)【発明者】
【氏名】長村 登紀子
(72)【発明者】
【氏名】中野 源紀
【審査官】村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-195443(JP,A)
【文献】特開昭58-004567(JP,A)
【文献】特開2009-136597(JP,A)
【文献】特開2009-034546(JP,A)
【文献】特開2017-036076(JP,A)
【文献】特開2003-205016(JP,A)
【文献】実開昭62-027636(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/10
A61J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する樹脂部材により構成され細胞収容部を有する容器本体と、
前記容器本体に接続され前記細胞収容部に細胞を導入する細胞導入チューブと、
前記細胞導入チューブを挟むように配置され、該細胞導入チューブにおける前記容器本体との接続部の近傍を保護する一対のチューブ保護部と、を備え、
前記一対のチューブ保護部は、前記接続部において互いに接合される基端部と、前記基端部と連続して形成され、互いに接合されておらず、前記細胞導入チューブを挟むように延出した形状であり、前記接続部の近傍を露出可能である先端側部分と、を有する細胞保存容器。
【請求項2】
前記容器本体は、
シート状部材が重ね合わせられると共に周縁部が接合されて形成され、
前記チューブ保護部は、前記容器本体の周縁部から延出している請求項1に記載の細胞保存容器。
【請求項3】
前記チューブ保護部は、前記容器本体を構成するシート状部材により構成される請求項2に記載の細胞保存容器。
【請求項4】
前記チューブ保護部には、前記細胞導入チューブの外形に対応した凹溝が形成されている請求項1~3のいずれかに記載の細胞保存容器。
【請求項5】
前記凹溝は、前記細胞導入チューブの外形よりも大きく形成される請求項4に記載の細胞保存容器。
【請求項6】
前記チューブ保護部が前記細胞導入チューブを挟んだ状態を保持させる係止部を更に備える請求項1~5のいずれかに記載の細胞保存容器。
【請求項7】
前記一対のチューブ保護部は、互いに異なる大きさに形成される請求項1~6のいずれかに記載の細胞保存容器。
【請求項8】
前記一対のチューブ保護部は、互いに同一形状に形成され、かつ、重ならない部分を有する請求項1~6のいずれかに記載の細胞保存容器。
【請求項9】
前記容器本体は、シート状部材が重ね合わせられると共に周縁部が接合されて形成されると共に、前記細胞収容部から外方に延出するシール部を有し、
前記細胞収容部は、該細胞収容部の断面の内壁側が曲線形状となるように前記シート状部材が立体成形されて構成されている請求項1~8のいずれかに記載の細胞保存容器。
【請求項10】
前記細胞収容部は、平面方向の断面形状及び厚さ方向の断面形状が楕円形状に形成される請求項9に記載の細胞保存容器。
【請求項11】
前記細胞導入チューブは、前記細胞収容部における長径側の端部に接続される請求項9又は10に記載の細胞保存容器。
【請求項12】
前記細胞収容部における前記細胞導入チューブが接続される側と反対側の端部に配置される細胞導出部を更に備える請求項11に記載の細胞保存容器。
【請求項13】
前記シール部は、平面視において矩形形状に形成される請求項9~12のいずれかに記載の細胞保存容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体試料から採取された間葉系細胞を含む組織由来細胞、造血幹細胞を含む血液細胞、それらの細胞を培養した細胞や遺伝子改変された細胞を含む細胞浮遊液、及び血漿を含む体液やそれらの抽出物を保存する細胞保存容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、造血幹細胞移植(末梢血幹細胞、臍帯血や骨髄細胞)では、必要に応じて細胞は凍結・解凍して移植されている。また、生体組織試料から採取調製されて得られた間葉系細胞に代表される組織細胞、それらの細胞を培養した細胞や遺伝子改変された細胞は、再生医療や免疫細胞療法、遺伝子細胞治療等、様々な用途に用いられている。こうした細胞は、凍害保護液に浮遊され、細胞保存容器に収容されて、凍結され、解凍して使用されるまで長期間凍結保管される(例えば、特許文献1参照)。血漿を含む体液やそれらの抽出物も同様に長期凍結保管されている(以下、これらの細胞、細胞浮遊液、体液等を総称して細胞という)。
【0003】
特許文献1で提案された細胞保存容器は、可撓性を有する樹脂部材により構成されており、細胞を収容可能な細胞収容部を有する容器本体と、この容器本体に接続され細胞収容部に細胞を導入する細胞導入チューブと、細胞収容部に収容された細胞を導出する細胞導出部と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-42212号公報
【0005】
以上の細胞保存容器に細胞を収容して保存する場合には、まず、細胞導入チューブから細胞収容部に細胞が導入される。次いで、細胞導入チューブが容器本体の近傍において溶着されると共に切断されて(溶断されて)密閉される。その後、細胞が収容された細胞保存容器は、凍結保存される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、細胞保存容器が凍結された場合、この細胞保存容器を構成する樹脂部材は硬化する。そのため、細胞保存容器の保存時に細胞導入チューブの溶断部分が他の細胞保存容器や細胞保存容器を収容する容器等に接触して、この溶断部分において細胞導入チューブが破損してしまうおそれがある。
【0007】
従って、本発明は、凍結保存時に細胞導入チューブが破損しにくい細胞保存容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、可撓性を有する樹脂部材により構成され細胞収容部を有する容器本体と、前記容器本体に接続され前記細胞収容部に細胞を導入する細胞導入チューブと、前記細胞導入チューブを挟むように配置され、該細胞導入チューブにおける前記容器本体との接続部の近傍を保護する一対のチューブ保護部と、を備える細胞保存容器に関する。
【0009】
また、前記容器本体は、シート状部材が重ね合わせられると共に周縁部が接合されて形成され、前記チューブ保護部は、前記容器本体の周縁部から延出していることが好ましい。
【0010】
また、前記チューブ保護部は、前記容器本体を構成するシート状部材により構成されることが好ましい。
【0011】
また、前記チューブ保護部には、前記細胞導入チューブの外形に対応した凹溝が形成されていることが好ましい。
【0012】
また、前記凹溝は、前記細胞導入チューブの外形よりも大きく形成されることが好ましい。
【0013】
また、細胞保存容器は、前記チューブ保護部が前記細胞導入チューブを挟んだ状態を保持させる係止部を更に備えることが好ましい。
【0014】
また、前記一対のチューブ保護部は、互いに異なる大きさに形成されることが好ましい。
【0015】
また、前記一対のチューブ保護部は、互いに同一形状に形成され、かつ、重ならない部分を有することが好ましい。
【0016】
また、前記容器本体は、シート状部材が重ね合わせられると共に周縁部が接合されて形成されると共に、前記細胞収容部から外方に延出するシール部を有し、前記細胞収容部は、該細胞収容部の断面の内壁側が曲線形状となるように前記シート状部材が立体成形されて構成されていることが好ましい。
【0017】
また、前記細胞収容部は、平面方向の断面形状及び厚さ方向の断面形状が楕円形状に形成されることが好ましい。
【0018】
また、前記細胞導入チューブは、前記細胞収容部における長径側の端部に接続されることが好ましい。
【0019】
また、細胞保存容器は、前記細胞収容部における前記細胞導入チューブが接続される側と反対側の端部に配置される細胞導出部を更に備えることが好ましい。
【0020】
また、前記シール部は、平面視において矩形形状に形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の細胞保存容器によれば、保存時に破損しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1実施形態に係る細胞保存容器を示す斜視図である。
図2】第1実施形態に係る細胞保存容器の分解斜視図である。
図3】第1実施形態に係る細胞保存容器の平面図である。
図4図3のX-X線断面図である。
図5A】第1実施形態に係る細胞保存容器の使用状態を示す図であり、細胞導入チューブを溶断する前の状態を示す図である。
図5B】第1実施形態に係る細胞保存容器の使用状態を示す図であり、一対のチューブ保護部をめくって細胞導入チューブを溶断した状態を示す図である。
図5C】第1実施形態に係る細胞保存容器の使用状態を示す図であり、細胞導入チューブを溶断した後、一対のチューブ保護部により溶断部分が保護された状態を示す図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る細胞保存容器を示す斜視図であり、一対のチューブ保護部を少し開いた状態を示す図である。
図7】第2実施形態に係る細胞保存容器を示す斜視図であり、一対のチューブ保護部が閉じられた状態を示す図である。
図8】第2実施形態に係る細胞保存容器を示す平面図である。
図9図7のA矢視図である。
図10】本発明の第3実施形態に係る細胞保存容器を示す斜視図である。
図11】本発明の第4実施形態に係る細胞保存容器を示す斜視図である。
図12】本発明の第5実施形態に係る細胞保存容器を示す斜視図である。
図13】本発明の第6実施形態に係る細胞保存容器を示す斜視図である。
図14】第6実施形態の細胞保存容器の変形例を示す斜視図である。
図15】第1実施形態の細胞保存容器の変形例を示す平面図である。
図16】第2実施形態の細胞保存容器の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の細胞保存容器の好ましい各実施形態について、図面を参照しながら説明する。本発明の細胞保存容器は、生体試料から採取された幹細胞等の細胞を凍結保存する場合に用いられる。
本明細書において、細胞とは、生体試料から採取された間葉系細胞を含む組織由来細胞、造血幹細胞を含む血液細胞、それらの細胞を培養した細胞や遺伝子改変された細胞を含む細胞浮遊液及び血漿を含む体液やそれらの抽出物を総称していう。
【0024】
まず、第1実施形態の細胞保存容器1について、図1図4を参照しながら説明する。
第1実施形態の細胞保存容器1は、図1図3に示すように、容器本体10と、細胞導入チューブ20と、ポート部材30と、チューブ保護部40と、を備える。
【0025】
容器本体10は、EVA樹脂(エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂)等の可撓性を有する熱可塑性樹脂部材により構成される。容器本体10は、熱可塑性樹脂からなる第1シート状部材50及び第2シート状部材60が重ね合わせられると共に、それぞれの周縁部の大部分が接合されることで扁平な袋状に形成される。第1実施形態では、容器本体10は、平面視で矩形状に形成される。
【0026】
容器本体10は、細胞収容部11と、シール部12と、を備える。細胞収容部11は、第1シート状部材50及び第2シート状部材60に囲まれた空間であり、所定の量の細胞を収容する。細胞収容部11の容量は、好ましくは10mL~500mL、より好ましくは25mL~200mLである。
【0027】
シール部12は、細胞収容部11の周縁において第1シート状部材50と第2シート状部材60とが接合された部分により構成される。シール部12は、図1~3に示すように、容器本体10の全周に亘って形成される。シール部12の幅は、細胞保存容器1の強度を確保する観点から、3mm~20mmであることが好ましく、5mm~15mmであることがより好ましい。
【0028】
細胞導入チューブ20は、生体試料から採取された細胞を無菌的かつ気密の状態で細胞収容部11に導く。この細胞導入チューブ20は、EVA樹脂等の熱可塑性樹脂により構成される。細胞導入チューブ20の一端部は、容器本体10の一方の短辺部分の一端側に接続される。より具体的には、図2に示すように、第1シート状部材50及び第2シート状部材60の周縁部の短辺部分の一端側には、それぞれ、細胞導入チューブ20の外形に対応した形状の断面視半円形状の凹溝51,61が真空成形等により形成されている。そして、細胞導入チューブ20は、一端部が細胞収容部11に連通するように凹溝51,61に配置され、この状態で第1シート状部材50及び第2シート状部材60の周縁部が接合されることで容器本体10に接続される。
【0029】
細胞導入チューブ20の他端側は、例えば、血液等の生体試料を収容する生体試料収容容器(図示せず)に無菌的かつ気密に接続される。
【0030】
ポート部材30は、細胞収容部11に収容された細胞を取り出す細胞導出部として機能する。ポート部材30は、細胞導入チューブ20と同様のEVA樹脂等の熱可塑性樹脂により構成される。
【0031】
ポート部材30は、図2に示すように、筒状部31と、筒状部31の一端側から長手方向に延出する一対のガード部32と、を備える。ポート部材30は、容器本体10における細胞導入チューブ20が配置された短辺部分の他端側に配置される。
より具体的には、第1シート状部材50及び第2シート状部材60の周縁部の短辺部分の他端側には、それぞれ、ポート部材30の外形に対応した形状の断面視半円形状の凹部52,62が真空成形等により形成されている。そして、ポート部材30は、図1に示すように、一対のガード部32が細胞収容部11の内部に位置し、かつ、一対のガード部32が第1シート状部材50及び第2シート状部材60に対向するように凹部52,62に配置される。また、ポート部材30の他端部は、第1シート状部材50及び第2シート状部材60の外縁よりも内側、かつ、凹部52,62の端部よりも内側に配置される。この状態で、第1シート状部材50及び第2シート状部材60の周縁部が接合されることで、ポート部材30は、一端側が細胞収容部11に連通し他端側がシール部12に覆われた状態で容器本体10と一体化される。
【0032】
チューブ保護部40は、シート状に形成され、細胞導入チューブ20を挟むように一対配置される。そして、細胞導入チューブ20における容器本体10との接続部の近傍を保護する。ここで、細胞導入チューブ20における容器本体10との接続部の近傍とは、当該接続部(シール部12の外縁)から50mm程度までの範囲を示し、細胞収容部11に細胞が収容された後に、細胞導入チューブ20が溶断される部分を示す。
第1実施形態では、チューブ保護部40は、第1シート状部材50及び第2シート状部材60の一部により構成される。具体的には、チューブ保護部40は、第1シート状部材50及び第2シート状部材60における細胞導入チューブ20が配置される部分を、容器本体10を構成する部分(シール部12の外縁)から更に細胞導入チューブ20の延びる方向に延出させ、かつ、これら延出させた第1シート状部材50及び第2シート状部材60を接合しないことで形成される。ここで、延出させた第1シート状部材50及び第2シート状部材60は細胞導入チューブ20とも接合されない。これにより、一対のチューブ保護部40は、基端部のみがシール部12の外縁において接合され、先端側が細胞導入チューブ20を挟むように延出した形状となる。
【0033】
第1実施形態では、一対のチューブ保護部40は、互いに異なる大きさに形成される。具体的には、一対のチューブ保護部40は、図3に示すように、延出方向の長さの短い第1チューブ保護部41と、延出方向の長さの長い第2チューブ保護部42と、からなる。
図4に示すように、チューブ保護部40の幅W1は、細胞導入チューブ20の外径D1よりも広く形成される。チューブ保護部40の幅W1は、細胞導入チューブ20を好適に保護する観点から、細胞導入チューブ20の外径D1の2倍~10倍であることが好ましく、3倍~7倍であることがより好ましい。
【0034】
チューブ保護部40には、図2に示すように、細胞導入チューブ20の外形に対応した凹溝51,61が形成されている。第1実施形態では、これら凹溝51,61は、シール部12に形成された凹溝51,61と連続して一体的に形成されている。また、第1実施形態では、凹溝51、61の幅W2は、細胞導入チューブ20の外径D1と略等しく、また凹溝51,61の深さH1は、細胞導入チューブ20の外径D1の略2分の1に形成される。
【0035】
次に第1実施形態の細胞保存容器1の使用方法について、図5A図5Cを参照して説明する。
細胞保存容器1は、細胞導入チューブ20を介して血液バッグ等の生体試料収容容器に無菌的かつ気密に接続されて用いられる。
細胞保存容器1に細胞を収容する場合、生体試料収容容器において分離された所定の細胞(例えば、血清や臍帯血)は、細胞導入チューブ20を介して細胞収容部11に導入される。
次いで、細胞収容部11に細胞が収容された後、図5A及び図5Bに示すように、細胞導入チューブ20は、容器本体10との接続部の近傍において溶断される。これにより、細胞保存容器1は密閉される。このとき、図5Bに示すように、一対のチューブ保護部40をめくるようにして、細胞導入チューブ20における一対のチューブ保護部40に挟まれた部分が溶断される。これにより、細胞導入チューブ20における溶断部分21は、図5Cに示すように、一対のチューブ保護部40により挟まれることで、外部に露出せず保護される。
この状態で、細胞保存容器1は、凍結保存される。
【0036】
凍結保存された細胞保存容器1に収容された細胞を使用する場合には、まず、細胞収容部11に収容された細胞を解凍する。次いで、容器本体10のポート部材30を覆っている部分(シール部12)をハサミ等で切断してポート部材30の先端(他端部)を露出させる。その後、先端に注射針が取り付けられたシリンジ(図示せず)等を用いて解凍された細胞をポート部材30から採取する。
【0037】
以上説明した第1実施形態の細胞保存容器1によれば、以下のような効果を奏する。
【0038】
(1)細胞保存容器1が凍結保存されている状態では、細胞保存容器1を構成する熱可塑性樹脂は硬化する。そのため、細胞保存容器1の保存時に細胞導入チューブ20の溶断部分21が他の細胞保存容器や細胞保存容器を収容する容器等に接触して破損し、細胞保存容器1が開放して収容物が流出してしまう、また収容された細胞が汚染されてしまうおそれがある。そこで、細胞保存容器1を、細胞導入チューブ20を挟むように配置される一対のチューブ保護部40を含んで構成した。これにより、細胞収容部11に細胞を導入した後、細胞導入チューブ20を溶断した場合に、細胞導入チューブ20の溶断部分21をチューブ保護部40により挟み込んで保護できる。よって、細胞導入チューブ20の溶断部分21が他の細胞保存容器や細胞保存容器を収容する容器等に接触しにくくできるので、細胞保存容器1が凍結された場合に細胞保存容器1を構成する樹脂部材が硬化しても、細胞導入チューブ20の溶断部分21を破損しにくくできる。
【0039】
(2)容器本体10を、第1シート状部材50と第2シート状部材60とを重ね合わせると共に周縁部を接合されて形成し、チューブ保護部40を容器本体10の周縁部から延出させて構成した。これにより、細胞導入チューブ20における容器本体10との接続部分の近傍(例えば、容器本体10(シール部12)の外縁から50mmまでの範囲であり、細胞を細胞収容部11に導入した後、溶断部分21となる箇所)を好適に保護できる。よって、残存部がより短くなるように細胞導入チューブ20を溶断でき、かつ、溶断部分21を好適に保護できる。その結果、細胞導入チューブ20部分に残存する空気の量を低減できるので、空気に接触することに起因する細胞の品質の劣化を低減できる。また、残存する細胞導入チューブ20の長さが長い場合には、細胞収容部11に収容された細胞の一部が細胞導入チューブ20の残存部分に付着すること等により利用可能な細胞の量が減少してしまうおそれがあるが、残存部を短くすることで細胞収容部11に収容された細胞をより有効に利用できる。更に、チューブ保護部40を容器本体10の周縁部から延出させて構成することで、細胞導入チューブ20と容器本体10との接続部の近傍の強度を高められるので、細胞導入チューブ20が容器本体10との接続部において折れてしまうことを防げる。
【0040】
(3)チューブ保護部40を、容器本体10を構成するシート状部材(第1シート状部材50及び第2シート状部材60)により構成した。これにより、容器本体10とチューブ保護部40を一体的に形成できるので、細胞保存容器1の製造効率を向上させられる。
【0041】
(4)チューブ保護部40に、細胞導入チューブ20の外形に対応した凹溝51,61を形成した。これにより、チューブ保護部40により細胞導入チューブ20をより好適に挟めるので、チューブ保護部40による細胞導入チューブ20(溶断部分21)の保護性能及び耐破損性を向上させられる。
【0042】
(5)一対のチューブ保護部40を、互いに異なる大きさに(延出方向の長さを異ならせるように)形成した(図3及び図5C参照)。これにより、細胞収容部11に細胞を導入した後、細胞導入チューブ20を溶断する場合に、細胞導入チューブ20を挟んでいる一対のチューブ保護部40を容易にめくって開くことができる(図5A及び図5B参照)。よって、一対のチューブ保護部40を含む細胞保存容器1の操作性を向上させられる。
【0043】
次に、第2実施形態の細胞保存容器1Aにつき、図6図9を参照しながら説明する。第2実施形態の細胞保存容器1Aは、主として、細胞収容部11Aの形状、及び凹溝51A,61Aの形状において第1実施形態と異なる。尚、第2実施形態以降の説明にあたって、同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
【0044】
第2実施形態の細胞保存容器1Aは、1mL~10mL程度の小容量の細胞を保存する場合に特に好適に用いられる。第2実施形態では、細胞収容部11Aは、細胞収容部11Aの断面の内壁側が曲線形状となるように立体的に形成される。より具体的には、細胞収容部11Aは、図8及び図9に示すように、厚さ方向の断面形状及び平面方向の断面が共に楕円形状となるように形成される。言い換えれば、細胞収容部11Aの内面は、角部を有さない凹曲面により構成されている。第2実施形態では、細胞収容部11Aは、図8及び図9に示すように、短径方向の長さ(幅)W4が20mm、長径方向の長さL1が30mm、厚さT1が8mmに形成され、2mLの細胞を収容可能に構成される。細胞収容部11Aの楕円形状(立体形状)は、第1シート状部材50及び第2シート状部材60を、細胞収容部11Aの形状に対応する形状を有する金型を用いて、真空成形すること等により形成される。
【0045】
また、第2実施形態では、細胞導入チューブ20は、楕円形状の細胞収容部11Aの長径側の一端部に接続され、ポート部材30は、楕円形状の細胞収容部11Aの長径側の他端部(細胞導入チューブ20とは異なる側)に配置される。
【0046】
また、第2実施形態では、平面視で楕円形状の細胞収容部11Aに対して、シール部12Aの外形(外縁)は、矩形形状に形成される。また、シール部12Aの幅方向の長さW3は、強度を確保する観点から、3mm~20mmであることが好ましく、5mm~15mmであることがより好ましい。更に、シール部12Aの細胞導入チューブ20側の長手方向の長さ(細胞収容部11Aの端部からシール部12Aの外縁までの長さ)L2及びシール部12Aのポート部材30側の長さ(凹部52A,62Aの端部から容器本体10Aの外縁までの長さ)L3は、いずれも、細胞保存容器1A(細胞収容部11A)の強度を確保する観点から、3mm~20mmであることが好ましく、3mm~15mmであることがより好ましい。
シール部12Aの各部における長さを、細胞収容部11Aに対して上記の範囲とすることで、細胞保存容器1Aの保存時に外部から衝撃を受けても、この衝撃をシール部12Aにより軽減させられる。
【0047】
第2実施形態では、一対のチューブ保護部40Aは、図6図8に示すように、容器本体10Aの細胞導入チューブ20が接続された短辺部分の全体から延出して形成される。また、図9に示すように、凹溝51A,61Aのうちのチューブ保護部40Aに形成された部分は、細胞導入チューブ20の外形よりも大きく形成される。具体的には、第2実施形態の凹溝51A,61Aは、図6に示すように、シール部12Aに対応する位置に形成されるシール部側凹溝511A,611Aと、チューブ保護部40Aに対応する位置に形成される保護部側凹溝512A,612Aと、を備える。
【0048】
シール部側凹溝511A,611Aは、第1実施形態と同様に細胞導入チューブ20の外形と略一致する形状及び大きさに形成される。
保護部側凹溝512A,612Aは、図9に示すように、細胞導入チューブ20の外形よりも大きく形成される。具体的には、保護部側凹溝512A,612Aは、図8に示すように、シール部側凹溝511A,611A側を基端側として先端側に向かって拡径する拡径部分512Aa,612Aa及び細胞導入チューブ20の外径よりも大きい大径部分512Ab,612Abを有する。
【0049】
保護部側凹溝512A,612Aの大径部分の幅W5は、細胞導入チューブ20の外径D1の2倍~4倍であることが好ましい。また、保護部側凹溝512A,612Aの大径部分の深さH2は、細胞導入チューブ20の外径D1の1.4倍~3.5倍であることが好ましい。保護部側凹溝512A,612Aの大径部分の幅W5を、細胞導入チューブ20の外径D1の2倍~4倍の範囲とすることで、細胞導入チューブ20の溶断部分21の幅が細胞導入チューブ20の外径D1よりも広くなってしまった場合にも、この溶断部分21を保護部側凹溝512A,612Aに好適に収容できる。また、保護部側凹溝512A,612Aの大径部分の幅W5を、細胞導入チューブ20の外径D1の2倍~4倍の範囲とすることで、細胞導入チューブ20とチューブ保護部40Aとの間に空隙を形成できるので、外部からの衝撃をより細胞導入チューブ20(溶断部分21)に伝わりにくくでき、また、他の細胞収容容器等が直接細胞導入チューブ20(溶断部分21)に接触する機会を少なくできる。
【0050】
次に第2実施形態の細胞保存容器1の使用方法について説明する。細胞保存容器1Aは、第1実施形態と同様に、細胞導入チューブ20を介して血液バッグ等の生体試料収容容器に無菌的かつ気密に接続されて用いられる。
【0051】
細胞保存容器1Aに細胞を収容する場合、生体試料収容容器において分離された所定の細胞(例えば、血清や臍帯血)は、細胞導入チューブ20を介して細胞収容部11Aに導入される。ここで、第2実施形態では、細胞収容部11Aの内壁(内面)が角部を有さない曲面により構成されている。これにより、細胞収容部11Aへの細胞が導入されるのと入れ替わりに細胞収容部11Aからスムーズに空気が排出され、細胞収容部11Aに気泡を残存しにくくできる。よって、細胞収容部11Aに設定された量の細胞を好適に導入できる。
【0052】
次いで、細胞収容部11Aに細胞が収容された後、細胞導入チューブ20は、第1実施形態と同様に溶断される。これにより、細胞保存容器1Aは密閉される。この状態で、細胞保存容器1Aは、凍結保存される。
【0053】
凍結保存された細胞保存容器1Aに収容された細胞を使用する場合には、まず、細胞収容部11Aに収容された細胞を解凍する。次いで、容器本体10Aのポート部材30を覆っている部分(シール部12A)をハサミ等で切断してポート部材30の先端(他端部)を露出させる。その後、先端に注射針が取り付けられたシリンジ(図示せず)等を用いて解凍された細胞をポート部材30から採取する。
【0054】
以上説明した第2実施形態の細胞保存容器1Aによれば、上述した(1)~(5)の効果を奏する他、以下のような効果を奏する。
【0055】
(6)凹溝51A,61A(保護部側凹溝512A,612A)を、細胞導入チューブ20の外形よりも大きく形成したことで、細胞導入チューブ20の溶断部分21の幅が細胞導入チューブ20の外径D1よりも広くなってしまった場合にも、この溶断部分21を保護部側凹溝512A,612Aに好適に収容できる。また、細胞導入チューブ20とチューブ保護部40Aとの間に空隙を形成できるので、外部からの衝撃をより細胞導入チューブ20(溶断部分21)に伝わりにくくできる。
(7)細胞収容部11Aを、断面の内壁側が曲線形状となるようにシート状部材(第1シート状部材50及び第2シート状部材60)を立体成形して構成した。これにより、細胞収容部11Aの内部において細胞導入チューブ20に向けて気泡をスムーズに移動させられるので、細胞導入チューブ20から細胞を導入するときに細胞収容部11Aに気泡を残存しにくくできる。特に、小容量の細胞を保存する場合には、細胞収容部11Aに気泡が残存することによる細胞の収容量不足の影響が大きくなるため、本実施形態の細胞保存容器1は、1mL~10mL程度の小容量の細胞を保存する細胞保存容器に好適に適用できる。
【0056】
(8)細胞収容部11Aの平面方向の断面及び厚さ方向の断面形状を楕円形状とした。これにより、細胞収容部11Aの内部において気泡を細胞導入チューブ20に向けてよりスムーズに移動させられるので、細胞導入チューブ20から細胞を導入するときに細胞収容部11Aに気泡をより残存しにくくできる。
【0057】
(9)細胞導入チューブ20を、細胞収容部11Aにおける長径側の一端部に接続した。これにより、細胞導入チューブ20を、楕円形状の細胞収容部11Aの長手方向の端部に配置できる。よって、細胞収容部11Aに更に気泡を残存しにくくできる。
【0058】
(10)細胞保存容器1を、細胞導出部として機能するポート部材30を含んで構成し、このポート部材30を、細胞収容部11Aにおける細胞導入チューブ20が配置された側と反対側の端部(長径側の他端部)に配置した。これにより、楕円形状の細胞収容部11Aを有する細胞保存容器1Aにおいて、細胞の導入を妨げない位置に細胞導出部を配置できるので、細胞の導入及び取り出しをスムーズに行え、また、収容した細胞を残存させることなく取り出せる。
【0059】
(11)シール部12Aを、平面視において矩形形状に形成した。これにより、曲線形状となるように細胞収容部11Aを形成した場合であっても、容器本体10Aを平面視で矩形形状に構成できるので、細胞保存容器1Aをキャニスタ等の収納容器に収納した場合における収納性を向上させられる。また、細胞保存容器1Aの保存時にキャニスタ等に接触した場合に、衝撃をシール部12Aにより軽減させられる。更に、例えば、細胞収容部11Aを小容量(例えば、2ml)とした場合には、曲線形状となった細胞収容部11Aにはラベル等を付しにくいが、シール部12Aを矩形形状とすることで、このシール部12Aにラベル等を容易に付すことができる。よって、細胞保存容器1Aの内容表示等を好適に行える。
【0060】
次に、第3実施形態の細胞保存容器1Aにつき、図10を参照しながら説明する。第3実施形態の細胞保存容器1Aは、細胞収容部11Aの構成において第2実施形態と異なる他は、第2実施形態と同様の構成を備える。
第3実施形態では、細胞収容部11Aは、略円筒形状を有するように立体的に形成される。第3実施形態においても、細胞収容部11Aの立体形状は、第1シート状部材50及び第2シート状部材60を、細胞収容部11Aの形状に対応する形状を有する金型を用いて、真空成形すること等により形成される。
第3実施形態の細胞保存容器1Aによれば、上述した(1)~(6)、(9)~(11)の効果を奏する。
【0061】
次に、第4実施形態の細胞保存容器1Bにつき、図11を参照しながら説明する。第4実施形態の細胞保存容器1Bは、主として、一対のチューブ保護部40Bの構成において第1実施形態と異なる。
【0062】
第4実施形態では、一対のチューブ保護部40Bは、容器本体10Bを構成するシート状部材とは別体のシート状部材により構成される。そして、一対のチューブ保護部40Bは、細胞導入チューブ20と容器本体10との接続部の近傍において、細胞導入チューブ20に接合されることで、細胞導入チューブ20を挟み込むように配置される。
第4実施形態の細胞保存容器1Bによれば、上述した(1)、(4)~(6)の効果を奏する他、以下のような効果を奏する。
【0063】
(12)チューブ保護部40Bを、容器本体10Bを構成するシート状部材とは別体のシート状部材により構成した。これにより、チューブ保護部40Bの材質の選択の自由度を高められる。よって、より衝撃吸収性の高い材質の部材によりチューブ保護部を構成することができる。
【0064】
次に、第5実施形態の細胞保存容器1Cにつき、図12を参照しながら説明する。
第5実施形態の細胞保存容器1Cは、係止部70を更に備える点で第1実施形態と異なる。
係止部70は、一対のチューブ保護部40Cが細胞導入チューブ20を挟んだ状態を保持させる。第5実施形態では、係止部70は、延出方向の長さの短い第1チューブ保護部41Cの先端部に配置され細胞導入チューブ20の延びる方向に延出する一対の係止片71と、延出方向の長さの長い第2チューブ保護部42Cに形成され、一対の係止片71が挿入可能な一対の係止スリット72と、により構成される。
以上の係止部70によれば、細胞導入チューブ20を溶断した後又は、細胞保存容器1Cの使用前に、一対の係止片71を一対の係止スリット72に挿入することで、一対のチューブ保護部40Cにより細胞導入チューブ20を挟んだ状態を再開封しないように好適に保持させられる。
【0065】
以上説明した第5実施形態の細胞保存容器1Cによれば、上述した(1)~(6)の効果を奏する他、以下のような効果を奏する。
【0066】
(13)細胞保存容器1Cを、チューブ保護部40Cが細胞導入チューブ20を挟んだ状態を保持させる係止部70を含んで構成した。これにより、細胞導入チューブ20を溶断した後、一対のチューブ保護部40により細胞導入チューブ20を挟んだ状態を再開封しないように保持させられる。よって、チューブ保護部40による細胞導入チューブ20(溶断部分21)の保護性能を更に向上させられる。
【0067】
次に、第6実施形態の細胞保存容器1Dにつき、図13を参照しながら説明する。
第6実施形態の細胞保存容器1Dは、一対のチューブ保護部40Dが開く方向において第1実施形態と異なる。
第6実施形態では、一対のチューブ保護部40Dは、細胞導入チューブ20の延びる方向に沿う一方の側縁において互いに接合されており、その他の部分では接合されていない。また、一対のチューブ保護部40Dと容器本体10Dとは、一対のチューブ保護部40が接合されている部分においてつながっているが、その他の部分では、分離している。これにより、図13に示すように、一対のチューブ保護部40を幅方向(横)に開いてめくることで細胞導入チューブ20と容器本体10Dとの接続部まで細胞導入チューブ20を露出できるので、溶断機を溶断箇所に位置させやすくなり、その結果、溶断処置が容易となる。よって、細胞導入チューブ20をより容器本体10D側において溶断できるので、溶断後に残存する細胞導入チューブ20の長さを短くできる。
【0068】
第6実施形態の細胞保存容器1Dによれば、上述した(1)~(6)の効果を奏する他、以下のような効果を奏する。
【0069】
(14)一対のチューブ保護部40Dを、細胞導入チューブ20の延びる方向に沿う一方の側縁において互いに接合して構成した。これにより、図13に示すように、一対のチューブ保護部40を幅方向(横)に開いてめくることで細胞導入チューブ20と容器本体10Dとの接続部まで細胞導入チューブ20を好適に露出させられる。よって、細胞導入チューブ20をより容器本体10D側において溶断できるので、溶断後に残存する細胞導入チューブ20の長さを短くできる。
【0070】
以上、本発明の細胞保存容器の好ましい各実施形態につき説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
上述した各実施形態では、一対のチューブ保護部40の延出方向の長さを互いに異ならせたが、これに限らない。即ち、一対のチューブ保護部の幅方向の長さを互いに異ならせてもよい。
【0071】
また、第2実施形態では、細胞収容部11Aを平面視で楕円形状に形成したがこれに限らない。例えば、細胞収容部を平面視で円形に形成してもよい。
【0072】
また、第2実施形態では、細胞収容部11Aを平面視で楕円形状に形成し、長軸側の端部に細胞導入チューブ20を接続したが、これに限らない。即ち、細胞収容部を、細胞導入チューブが接続される側半分を半楕円形状に形成し、ポート部材が配置される側を他の形状(例えば、半円形状や円筒形状)に形成してもよい。即ち、細胞収容部は、細胞導入チューブが接続される側を上に位置させた状態で、気泡の上昇を妨げるような角部を有しない内面形状に形成すればよい。
【0073】
また、第2実施形態では、シール部12Aを、平面視において矩形形状に形成したが、これに限らない。即ち、シール部12Aの一部(例えば、ポート部材30側半分位)を、細胞収容部11A及び凹部52A,62Aの形状に沿うような形状に形成してもよい。
【0074】
また、第5実施形態では、係止部70を、一対の係止片71及び一対の係止スリット72により構成したが、これに限らない。即ち、例えば、一対のチューブ保護部それぞれの一対の側縁に、幅方向に延びるスリットを形成し、これらのスリットを組み合わせることにより一対のチューブ保護部を係止させてもよい。
【0075】
また、第6実施形態では、一対のチューブ保護部40Dを、細胞導入チューブ20の延びる方向に沿う一方の側縁において互いに接合し、また、一対のチューブ保護部40Dと容器本体10Dとを、一対のチューブ保護部40が接合されている部分以外の部分において分離して構成したが、これに限らない。即ち、図14に示すように、一対のチューブ保護部40のうちの一方(例えば、第1チューブ保護部41E)のみを容器本体10Eと分離させて構成してもよい。
【0076】
また、チューブ保護部40の形状は、上述した実施形態の形状に限らない。即ち、例えば、図15に示すように、第1シート状部材及び第2シート状部材の細胞導入チューブ20及びポート部材30が配置される側を同程度延出させると共に、これら第1シート状部材及び第2シート状部材を接合するときにチューブ保護部40Fに対応する部分を接合しないことでチューブ保護部40Fを構成し、その後、チューブ保護部40Fと接合部分との境界に切れ目を入れて細胞保存容器1Fを構成してもよい。
【0077】
また、上述した各実施形態では、一対のチューブ保護部を、互いに異なる大きさに形成したが、これに限らない。例えば、第2実施形態のような小容量の細胞を保存する細胞保存容器において、図16に示すように、一対のチューブ保護部40Gを、互いに同一形状に形成し、かつ、重ならない部分を有するように構成してもよい。
【0078】
図16に示す変形例の細胞保存容器1Gを製造する場合、まず、2枚のシート状部材を、長手方向の一方の端縁が斜辺となった同形同大の矩形に切断する。次いで、切断された2枚のシート状部材に立体形状を形成する。ここで、立体形状は、2枚のシート状部材を、斜辺が交差するように重ね合わせた場合に内面となる側から凹んだ形状となるように形成される。
次いで、立体形状が形成された2枚のシート状部材を、斜辺が交差するように重ね合わせた状態で接合する。具体的には、2枚のシート状部材において容器本体(図示せず)を構成する部分の立体形状が形成されていない部分を接合する(2枚のシート状部材におけるチューブ保護部40Gを構成する部分は接合しない)。これにより、一対のチューブ保護部40Gの延出端側に、シート状部材が重ならない部分Pが形成された細胞保存容器1Gが製造される。
【0079】
以上の変形例によれば、同形状に切断した1種類のシート状部材により、互いに重ならない部分Pを有するチューブ保護部40Gを備える細胞保存容器1Gを製造できる。よって、細胞保存容器1Gの製造に係る部品点数を削減しつつ、重ならない部分Pにより操作性を向上させた細胞保存容器1Gを実現できる。
【符号の説明】
【0080】
1,1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G 細胞収容容器
10,10A,10B,10C,10D,10E 容器本体
11 細胞収容部
20 細胞導入チューブ
40,40A,40B,40C,40D,40E,40F,40G チューブ保護部
50 第1シート状部材(シート状部材)
51,51A 凹溝
61,61A 凹溝
60 第2シート状部材(シート状部材)
70 係止部
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16