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特許7162311光反応性液晶組成物、表示素子、光学素子、表示素子の製造方法、光学素子の製造方法
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  • 特許-光反応性液晶組成物、表示素子、光学素子、表示素子の製造方法、光学素子の製造方法 図1
  • 特許-光反応性液晶組成物、表示素子、光学素子、表示素子の製造方法、光学素子の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】光反応性液晶組成物、表示素子、光学素子、表示素子の製造方法、光学素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 311/18 20060101AFI20221021BHJP
   C09K 19/54 20060101ALI20221021BHJP
【FI】
C07D311/18 CSP
C09K19/54 B
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021026269
(22)【出願日】2021-02-22
(62)【分割の表示】P 2018516338の分割
【原出願日】2016-12-07
(65)【公開番号】P2021102766
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2021-02-24
(31)【優先権主張番号】P 2016093932
(32)【優先日】2016-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成27(2015)年12月8日発行のProceeding of The International DisplayWorkshop Volume 22 LCTp2 - 1「Photoinduced In-Plane Alignment of Nematic LCs Doped with Photoalignable Composite Materials (光配向性複合材料をドープしたネマチック液晶の光誘起性面内配向)」 〔刊行物等〕 平成27(2015)年12月9日~11日に大津プリンスホテル(滋賀県大津市におの浜4-7-7)において開催されたThe International Display Workshopにおける、平成27(2015)年12月10日発表のLCTp2 - 1 「Photoinduced In-Plane Alignment of Nematic LCs Doped withPhotoalignable Composite Materials (光配向性複合材料をドープしたネマチック液晶の光誘起性面内配向)」のポスター発表原稿
(73)【特許権者】
【識別番号】513099603
【氏名又は名称】兵庫県公立大学法人
(73)【特許権者】
【識別番号】304021288
【氏名又は名称】国立大学法人長岡技術科学大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097102
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 敬夫
(74)【代理人】
【識別番号】100094640
【弁理士】
【氏名又は名称】紺野 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100103447
【弁理士】
【氏名又は名称】井波 実
(74)【代理人】
【識別番号】100111730
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 武泰
(74)【代理人】
【識別番号】100180873
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 慶政
(72)【発明者】
【氏名】川月 喜弘
(72)【発明者】
【氏名】南 悟志
(72)【発明者】
【氏名】近藤 瑞穂
(72)【発明者】
【氏名】後藤 耕平
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 友之
(72)【発明者】
【氏名】小野 浩司
【審査官】黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0353668(US,A1)
【文献】特開平08-062561(JP,A)
【文献】特開2002-265475(JP,A)
【文献】特表2002-520472(JP,A)
【文献】特開2011-236333(JP,A)
【文献】特開平03-181490(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 19/00-19/60
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(A)-1-1~(A)-1-3(式中、Meはメチル基を表す)からなる群から選ばれるいずれか1種の式で表される化合物。
【化1】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光反応性液晶組成物、該光反応性液晶組成物を有して形成される表示素子及び光学素子、並びに表示素子及び光学素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の液晶表示素子は、高分子分散型液晶(Polymer Dispersed Liquid Crystal、PDLC)などの一部の素子を除いて、液晶を均一配向させるために配向処理を施した液晶配向膜を用いている(非特許文献1)。液晶配向膜の配向処理は液晶配向膜を塗布した後に、一般的にはラビング処理と呼ばれる、布を巻きつけたローラーで膜表面を擦る手法がとられているが、該手法は膜表面を物理的に擦る手法であるため、ラビングによる傷や削れカスが液晶表示素子の表示性能を低下させる問題点がある。さらに、この配向処理には、液晶配向膜形成工程、液晶配向処理工程、液晶配向膜の洗浄工程と数多くの工程を経る必要があり、製造工程を煩雑化していた。
そのため、該液晶配向膜を用いずに、液晶の配向性が制御できる液晶セルが作製できるとプロセス面及びコスト面で大きなメリットとなる。
【0003】
実際に、液晶配向膜を用いずに、光学素子及び表示素子を提供できる光反応性液晶組成物を、特許文献1は開示する。特許文献1開示の光反応性液晶組成物は、(A)(A-1)光架橋及び(A-2)光異性化からなる群から選ばれる少なくとも1種の反応を生じる光反応性側鎖を有する光反応性高分子液晶;及び(B)低分子液晶;を有する。該組成物をセルに注入し、偏光紫外線を照射することにより、(A)光反応性高分子液晶及び(B)低分子液晶が配向性を示し、光学素子及び/又は表示素子を提供することができる。
【0004】
しかしながら、特許文献1開示の光反応性液晶組成物は、(A)光反応性高分子液晶と(B)低分子液晶との均一混合性が良好ではない場合が生じる。特に、(A)光反応性高分子液晶の量を多くすると、(B)低分子液晶との均一混合性が低下し、光反応性液晶組成物自体が製造できないという問題、ひいては光学素子及び/又は表示素子が提供できないという問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】WO2015/114864A1号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、液晶配向膜を用いずに、液晶の配向性を液晶バルク内で制御して得られる素子、具体的には表示素子及び光学素子を提供すること、及び/又は該素子を作製するための光反応性液晶組成物を提供することにある。
特に、本発明の目的は、光反応性液晶組成物に用いる(B)低分子液晶との均一混合性が高い化合物を用いる、光反応性液晶組成物を提供することにあり、加えて、該組成物により、液晶配向膜を用いずに、液晶の配向性を液晶バルク内で制御して得られる素子、具体的には表示素子及び光学素子を提供することにある。
特に、上記目的に加えて、又は上記目的以外に、本発明の目的は、光反応性液晶組成物に用いる(B)低分子液晶との均一混合性が高い化合物を用いる、光反応性液晶組成物により、液晶配向膜を用いずに、液晶の配向性を液晶バルク内で制御して得られる素子、具体的には表示素子及び光学素子を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、以下の発明を見出した。
<1> (A)シロキサン骨格を備え且つ光反応性基を有する光反応性化合物;及び
(B)低分子液晶;
を有する光反応性液晶組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、液晶配向膜を用いずに、液晶の配向性を液晶バルク内で制御して得られる素子、具体的には表示素子及び光学素子を提供すること、及び/又は該素子を作製するための光反応性液晶組成物を提供することができる。
特に、本発明により、光反応性液晶組成物に用いる(B)低分子液晶との均一混合性が高い化合物を用いる、光反応性液晶組成物を提供することができる。また、該組成物により、液晶配向膜を用いずに、液晶の配向性を液晶バルク内で制御して得られる素子、具体的には表示素子及び光学素子を提供することができる。
特に、本発明により、上記効果に加えて、又は上記効果以外に、光反応性液晶組成物に用いる(B)低分子液晶との均一混合性が高い化合物を用いる、光反応性液晶組成物により、液晶配向膜を用いずに、液晶の配向性を液晶バルク内で制御して得られる素子、具体的には表示素子及び光学素子を製造する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1で得られた液晶セルA2について、室温における低分子液晶の配向状態の偏光顕微鏡像を示す図である。
図2】比較例3で得られた液晶セルA4について、室温における低分子液晶の配向状態の偏光顕微鏡像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本願は、液晶配向膜を用いずに、液晶の配向性を液晶バルク内で制御して得られる素子、具体的には表示素子及び光学素子、及び/又は該素子を作製するための光反応性液晶組成物を提供する。特に、本願は、光反応性液晶組成物に用いる(B)低分子液晶との均一混合性が高い化合物を用いる、光反応性液晶組成物を提供する。
また、本願は、液晶配向膜を用いずに、液晶の配向性を液晶バルク内で制御して得られる素子を製造する方法を提供する。特に、本願は、光反応性液晶組成物に用いる(B)低分子液晶との均一混合性が高い化合物を用いる光反応性液晶組成物により、上記素子を製造する方法を提供する。
以下、光反応性液晶組成物、該組成物によって得られる素子、素子の製造方法を説明する。
【0011】
<光反応性液晶組成物>
本発明の光反応性液晶組成物は、(A)シロキサン骨格を備え且つ光反応性基を有する光反応性化合物;及び(B)低分子液晶;を有する。
本発明の光反応性液晶組成物は、(A)光反応性化合物;及び(B)低分子液晶;のみからなっても、該(A)及び(B)の性質が変化しない程度のその他の成分を有する(A)及び(B)のみから本質的になってもよい。また、本発明の光反応性液晶組成物は、(A)又は(B)以外に、その他の成分を有してもよい。
【0012】
<<(B)低分子液晶>>
本発明の光反応性液晶組成物に含まれる(B)低分子液晶は、従来、液晶表示素子などに用いられているネマチック液晶や強誘電性液晶などをそのまま用いることができる。
具体的には、(B)低分子液晶として、4-シアノ-4’-n-ペンチルビフェニル、4-シアノ-4’-n-へプチルオキシビフェニル等のシアノビフェニル類;コレステリルアセテート、コレステリルベンゾエート等のコレステリルエステル類;4-カ ルボキシフェニルエチルカーボネート、4-カルボキシフェニル-n-ブチルカーボネート等の炭酸エステル類;安息香酸フェニルエステル、フタル酸ビフェニ ルエステル等のフェニルエステル類;ベンジリデン-2-ナフチルアミン、4’-n-ブトキシベンジリデン-4-アセチルアニリン等のシッフ塩基類;N,N’-ビスベンジリデンベンジジン、p-ジアニスアルベンジジン等のベンジジン類;4,4’-アゾキシジアニソール、4,4’-ジ-n-ブトキシ アゾキシベンゼン等のアゾキシベンゼン類;以下に具体的に示すフェニルシクロヘキシル系、ターフェニル系、フェニルビシクロヘキシル系などの液晶;などを挙げることができるがこれらに限定されない。
【0013】
【化1】
【0014】
【化2】
【0015】
【化3】
【0016】
<<(A)光反応性化合物>>
本発明に用いる(A)光反応性化合物(以下、(A)光反応性化合物を単に「(A)成分」と略記する場合がある)は、シロキサン骨格を備え且つ光反応性基を有する。
本明細書において光反応性とは、(A-1)光架橋、(A-2)光異性化、(A-3)光分解、及び(A-4)光転移、のうちのいずれかの反応;及びこれらの任意に組合せの反応;を生じる性質をいう。
光反応性基は、(A-1)光架橋、(A-2)光異性化、(A-3)光分解、及び(A-4)光転移からなる群から選ばれる少なくとも1種の反応を生じるのがよく、好ましくは(A-1)光架橋、及び(A-2)光異性化からなる群から選ばれる少なくとも1種の反応を生じるのがよく、より好ましくは(A-1)光架橋反応を生じるのがよい。
光反応性基として、下記構造及びその誘導体を挙げることができるがこれらに限定されない。
【0017】
【化4】
【0018】
(A)成分は、i)所定の温度範囲で液晶性を発現する化合物であって、光反応性基を有する化合物であるのが好ましい。
(A)成分は、ii)250nm~400nmの波長範囲の光で反応し、かつ50~300℃の温度範囲で液晶性を示すのがよい。
(A)成分は、iii)250nm~400nmの波長範囲の光、特に偏光紫外線に反応する光反応性基を有することが好ましい。
(A)成分の光反応性基は、iv)50~300℃の温度範囲で液晶性を示すためメソゲン基を有することが好ましい。
【0019】
(A)成分は、下記式(A)-1~(A)-4からなる群から選ばれる少なくとも1種であるのがよい。
なお、式(A)-1~(A)-4中、R101~R108は各々独立に、1価の有機基を表す。ただし、下記式(A)-1のR103~R105は、m4の値に依存して定義される。詳細は後述する。
ここで、1価の有機基は、水素原子であるか又は直鎖または分岐鎖の炭素数1~6のアルキル基、直鎖または分岐鎖の炭素数1~6のアルコキシ基、置換または非置換のフェニル基、ビニル基、メルカプト基、(メタ)アクリル基、およびその組み合わせからなる基(炭素原子に結合している水素原子がハロゲン原子、水酸基で置換されていてもよい。また、隣り合わない炭素原子が-O-、-CO-O-、-O-CO-、-NH-CO-O-、-O-CO-NH-、-NH-CO-NH-で置換されていてもよい)から選ばれる基であるのがよい。
~Q、及びQは各々独立に、光反応性基を表す。
~Qは各々独立に、光反応性基であっても、R101~R108と同様に1価の有機基であってもよい。Q~Qが各々独立に1価の有機基である場合、該基はR101~R108と同様の定義を有する。
は炭素数1~10の直鎖または分岐鎖のアルキレン基(炭素原子に結合している水素原子は1価の有機基で置換されていてもよい。また、アルキレン基中、隣り合わない炭素原子が-O-、-CO-O-、-O-CO-、-NH-CO-O-、-O-CO-NH-、-NH-CO-NH-で置換されていてもよい。好ましくは、Pは炭素数1~10の直鎖のアルキレン基であるのがよい。
n11、n12、及びn14は各々独立に、1~20、好ましくは1~10、より好ましくは1~4の整数を表し、n13は3~20、好ましくは3~10、より好ましくは3~5の整数を表す。
m4は1~4の整数を表す。上述したとおり、下記式(A)-1のR103~R105は、m4の値に依存する。m4=1の場合、R103~R105は、上述の1価の有機基を表す。m4=2の場合、R103~R105のうち、いずれか2つが上述の1価の有機基であり、残りの1つがm4の括弧内で示された基であるのがよい。また、m4=3の場合、R103~R105のうち、いずれか1つが上述の1価の有機基であり、残りの2つがm4の括弧内で示された基であるのがよい。さらに、m4=4の場合、R103~R105の全てが、m4の括弧内で示された基であるのがよい。
【0020】
【化5】
【0021】
本発明の光反応性液晶組成物において、(A)光反応性化合物と(B)低分子液晶との重量比((A)光反応性化合物:(B)低分子液晶)は、0.2:99.8~20:80、好ましくは1:99~15:85、より好ましくは2:98~10:90であるのがよい。
【0022】
(A)成分は、上述のように、光反応性を有する光反応性基を有する。該基の構造は、特に限定されないが、上記(A-1)~(A-4)のうちいずれか1種又は2種以上の反応を生じるのがよく、好ましくは上記(A-1)及び/又は(A-2)に示す反応を生じるのがよく、より好ましくは(A-1)光架橋反応を生じるのがよい。(A-1)光架橋反応を生じる構造は、その反応後の構造が、熱などの外部ストレスに曝されたとしても、(A)成分の配向性を長期間安定に保持できる点で好ましい。
(A)成分の光反応性基の構造は、剛直なメソゲン成分を有する方が、液晶の配向が安定するため、好ましい。(A)成分が剛直なメソゲン成分を有し且つ液晶性を示すと、(B)成分の低分子液晶との相溶性が向上するため好ましい。
【0023】
メソゲン成分として、ビフェニル基、ターフェニル基、フェニルシクロヘキシル基、フェニルベンゾエート基、アゾベンゼン基などを挙げることができるがこれらに限定されない。
メソゲン基としては下記の構造が好ましい。
【0024】
【化6】
【0025】
(A)成分の光反応性基として、下記式(1)~(6)の少なくとも1種からなる基であるのが好ましい。
【0026】
【化7】
【0027】
式中、A、B、Dはそれぞれ独立に、単結合、-O-、-CH-、-COO-、-OCO-、-CONH-、-NH-CO-、-CH=CH-CO-O-、又は-O-CO-CH=CH-を表す;
Sは、炭素数1~12のアルキレン基であり、それらに結合する水素原子はハロゲン基に置き換えられていてもよい;
Tは、単結合または炭素数1~12のアルキレン基であり、それらに結合する水素原子はハロゲン基に置き換えられていてもよい;
は、1価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、ピロール環および炭素数5~8の脂環式炭化水素から選ばれる環を表すか、それらの置換基から選ばれる同一又は相異なった2~6の環が結合基Bを介して結合してなる基であり、それらに結合する水素原子はそれぞれ独立に-COOR(式中、Rは水素原子又は炭素数1~5のアルキル基を表す)、-NO、-CN、-CH=C(CN)、-CH=CH-CN、ハロゲン基、炭素数1~5のアルキル基、又は炭素数1~5のアルキルオキシ基で置換されても良い;
は、2価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、ピロール環、炭素数5~8の脂環式炭化水素、および、それらの組み合わせからなる群から選ばれる基であり、それらに結合する水素原子はそれぞれ独立に-NO、-CN、-CH=C(CN)、-CH=CH-CN、ハロゲン基、炭素数1~5のアルキル基、又は炭素数1~5のアルキルオキシ基で置換されても良い;
Rは、ヒドロキシ基、炭素数1~6のアルコキシ基を表すか、又はYと同じ定義を表す;
Xは、単結合、-COO-、-OCO-、-N=N-、-CH=CH-、-C≡C-、-CH=CH-CO-O-、又は-O-CO-CH=CH-を表し、Xの数が2となるときは、X同士は同一でも異なっていてもよい;
Couは、クマリン-6-イル基またはクマリン-7-イル基を表し、それらに結合する水素原子はそれぞれ独立に-NO、-CN、-CH=C(CN)、-CH=CH-CN、ハロゲン基、炭素数1~5のアルキル基、又は炭素数1~5のアルキルオキシ基で置換されても良い;
q1とq2は、一方が1で他方が0である;
q3は0または1である;
P及びQは、各々独立に、2価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、ピロール環、炭素数5~8の脂環式炭化水素、および、それらの組み合わせからなる群から選ばれる基である;ただし、Xが-CH=CH-CO-O-、-O-CO-CH=CH-である場合、-CH=CH-が結合する側のP又はQは芳香環であり、Pの数が2以上となるときは、P同士は同一でも異なっていてもよく、Qの数が2以上となるときは、Q同士は同一でも異なっていてもよい;
l1は0または1である;
l2は0~2の整数である;
l1とl2がともに0であるときは、Tが単結合であるときはAも単結合を表す;
l1が1であるときは、Tが単結合であるときはBも単結合を表す;
H及びIは、各々独立に、2価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、ピロール環、およびそれらの組み合わせから選ばれる基である。
【0028】
光反応性基は、下記式(7)~(10)からなる群から選ばれるいずれか1種であるのがよい。
式中、A、B、D、Y、X、Y、及びRは、上記と同じ定義を有する;
lは1~12の整数を表す;
mは、0~2の整数を表し、m1、m2は1~3の整数を表す;
nは0~12の整数(ただしn=0のときBは単結合である)を表す。
【0029】
【化8】
【0030】
光反応性基は、下記式(11)~(13)からなる群から選ばれるいずれか1種であるのがよい。
式中、A、X、l、m、m1及びRは、上記と同じ定義を有する。
【0031】
【化9】
【0032】
光反応性基は、下記式(14)又は(15)で表される基であるのがよい。
式中、A、Y、l、m1及びm2は上記と同じ定義を有する。
【0033】
【化10】
【0034】
光反応性基は、下記式(16)又は(17)で表される基であるのがよい。
式中、A、X、l及びmは、上記と同じ定義を有する。
【0035】
【化11】
【0036】
光反応性基は、下記式(20)で表される基であるのがよい。
式中、A、Y、X、l及びmは上記と同じ定義を有する。
【0037】
【化12】
【0038】
<<(A)成分の例>>
(A)成分として、具体的には、次のような化合物を挙げることができるがこれらに限定されない。
【0039】
【化13】
【0040】
【化14】
【0041】
【化15】
【0042】
本発明の光反応性液晶組成物は、上述したように、(A)成分又は(B)成分以外に、その他の成分を有してもよい。
その他の成分として、用いる(A)成分及び(B)成分の用途などに依存するが、例えば、ヒンダートアミン類やヒンダートフェノール類などの酸化防止剤や1つ以上の末端に光重合または光架橋する基を有する重合性化合物などを挙げることができる。
重合性化合物の具体的な例として、以下に示す化合物(式中、Vは、単結合又は-RO-、好ましくは-RO-で表され、Rは炭素数1~10、好ましくは炭素数2~6の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示す。Wは、単結合又は-OR-、好ましくは-OR-で表され、Rは炭素数1~10、好ましくは炭素数2~6の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示す。V及びWは同一の構造でも異なっていてもよいが、同一であると合成が容易である。RはHまたは炭素数1~4のアルキル基を示す)を挙げることができるがこれらに限定されない。
【0043】
【化16】
【0044】
<光反応性液晶組成物によって得られる素子及びその製造方法>
本願は、上記の光反応性液晶組成物によって得られる素子、及び該素子の製造方法も提供する。
本発明の素子は、上記の光反応性液晶組成物を有する液晶セルを有して形成される。
素子として、表示素子;及び回折格子、レンズ、ミラーなどの光学素子;などを挙げることができる。
【0045】
本発明の素子、具体的には表示素子又は光学素子は、セルに上記の光反応性液晶組成物を充填して形成することができる。
具体的には、本発明の素子は、次の工程により製造することができる。
[I] (A)シロキサン基を備え且つ光反応性基を有する光反応性化合物;及び(B)低分子液晶;を有する光反応性液晶組成物を、平行離間配置された2枚の透明基体間に形成される空間に充填して液晶セルを形成する工程;及び
[II] [I]で得られた液晶セルに、前記2枚の透明基体のいずれか一方から、偏光した紫外線を照射する工程;
を有することにより、
本発明の素子を形成することができ、具体的には、液晶セル内で(B)低分子液晶が所定の配向性を有する素子が形成される。
【0046】
[I]工程は、上述の光反応性液晶組成物を、平行離間配置された少なくとも紫外線を照射する側の基体が透明な基体間に形成される空間に充填して液晶セルを形成する工程である。
液晶セルは、2枚の透明基体をある程度離間させて平行配置することにより空間を形成し、該空間に上述の光反応性組成物を充填して形成される。
基体は、例えば、ガラス;アクリルやポリカーボネート等のプラスチック等;を用いることができる。基体は、形成する素子に依存して、可撓性を有してもよい。
【0047】
基体は、形成する素子に依存して、空間側に、種々の膜、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエーテル、ポリエチレン、PET、ポリアミド、ポリイミド、アクリル、ポリカーボネート、ポリウレアなどから形成される膜を形成してもよい。なお、ここで用いる膜は、例えば、次のような作用を奏するのがよい。即ち、後述の[II]工程において、(A)光反応性化合物の光反応を誘起するためには、(A)光反応性化合物の分子長軸が偏光を吸収するように、基板面内に水平に位置するのがよい。一方、(A)光反応性化合物は(B)低分子液晶との組成物として液晶セル中に封入されるため、(A)光反応性化合物の分子長軸が基板面内に水平に位置するためには(B)低分子液晶も同様に基板面内に水平に位置するのがよい。したがって、上述の膜は、光反応性組成物の分子長軸が基板面内に水平に位置できるものであるのがよく、そのような膜であれば材料に限定されない。
【0048】
[II]工程は、[I]で得られた液晶セルに偏光した紫外線を照射する工程である。偏光した紫外線は、2枚の透明基体のいずれか一方の外側から照射するため、透明基体は、上述したように、偏光した紫外線を透過する基体である。
偏光した紫外線は、形成する素子に依存するが、波長100nm~400nmの範囲の紫外線を使用することができる。好ましくは、使用する塗膜の種類によりフィルター等を介して最適な波長を選択する。そして、例えば、選択的に光架橋反応を誘起できるように、波長290nm~400nmの範囲の紫外線を選択して使用することができる。紫外線としては、例えば、高圧水銀灯から放射される光を用いることができる。
偏光した紫外線を照射する工程では、照射される偏光紫外線の偏光度の低下や、偏光紫外線の散乱を抑制するため、偏光された紫外線は(B)低分子液晶の等方相転移温度より15℃低い温度以上で照射するのが良く、より好ましくは等方相転移温度以上で照射するのが良い。この温度範囲であれば、(A)光反応性化合物の偏光光反応による二色性が維持され、(B)低分子液晶の配向が均一となる点で好ましい。
【0049】
光学素子の第1の位置、該第1の位置とは異なる第2の位置に対して、異なる偏光紫外線を照射することにより、該第1の位置と第2の位置において(B)低分子液晶が異なる配向性を有する素子、例えば光学素子を形成することができる。
具体的には、第1の位置に対して第1の偏光軸とする偏光紫外線を照射し、第2の位置に対して第1の偏光軸とは異なる第2の偏光軸とする偏光紫外線を照射することにより、光学素子の第1及び第2の位置において(B)低分子液晶が異なる配向性を有する素子を形成することができる。
また、例えば、形成する素子が、回折格子の場合、偏光紫外線を液晶セルに干渉露光させることにより、素子の位置において配向性が異なる配向性分布、具体的には周期的に配向性が異なる配向性分布を有する光学素子である回折格子を形成することができる。
【0050】
偏光紫外線を照射すると、液晶セル内で、次のようなメカニズムが生じるものと考えられる。即ち、液晶セル内の(A)光反応性化合物は、該偏光紫外線に応じた配向性を有することとなる。
また、(B)低分子液晶は、(A)光反応性化合物の配向性にしたがって、配向する。
これにより、(A)光反応性化合物及び(B)低分子液晶は、偏光紫外線に応じて、配向性を有することとなる。
例えば、上述のように、偏光紫外線を液晶セルに干渉露光することにより、素子の位置において、(A)光反応性化合物が、異なる配向性を有し、これにしたがって、(B)低分子液晶も、素子の位置によって異なる配向性を有することとなる。よって、偏光紫外線を液晶セルに干渉露光することにより、素子の位置において配向性が異なる配向性分布、具体的には周期的に配向性が異なる配向性分布を有する光学素子である回折格子を形成することができる。
【実施例
【0051】
<合成例1:光反応性化合物Si-1の合成>
【0052】
【化17】
【0053】
<<化合物Cの合成>>
2L四つ口フラスコに、化合物[B](90.8g、412mmol)、トリフェニルホスフィン(以下、PPhと記載)(130.0g、495mmol)、テトラヒドロフラン(以下、THFと記載)(700g)を加え、窒素置換して溶液を0℃に冷却した。その後、アゾジカルボン酸ジイソプロピル(以下、DIADと記載)(49.5g、496mol)のTHF(100g)溶液を徐々に加え、その後、化合物[A](49.5g、496mol)のTHF(100g)溶液をさらに加えた後、23℃でさらに反応を行った。HPLCにて反応追跡を行い、反応終了を確認後、反応溶液を酢酸エチル/ブラインで洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、ろ過、エバポレーターにて溶媒留去することで、オイル状の粗物を得た。得られた粗物にヘキサン(1L)を加え、-20℃で冷却撹拌し、結晶化した固体をろ過で除去し、ろ液をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し黄色固体として、化合物[C]を110.3g得た(収率98%)。
1H-NMR(400MHz, CDCl3, δppm):7.54(1H, d), 7.44(2H, d), 6.87(2H, d), 5.86-5.78(1H, m), 5.87-5.78(1H, m), 5.10-4.97(2H, m), 3.99(2H, t), 2.22-2.09(2H, m), 1.84-1.76(2H,m), 1.61-1.52(2H, m), 1.43(9H, s).
【0054】
【化18】
【0055】
<<化合物Eの合成>>
300mL四つ口フラスコに、化合物[D](29.43g、198mmol)、化合物[C](30.00g、99.2mmol)、Karstedt触媒(1mmol)、トルエン(160g)を加え、窒素置換後、加熱還流を行った。HPLCにて反応追跡を行い、反応終了後、反応溶液をエバポレーターで濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、オイル状の化合物[E]を29.4g得た(収率66%)。
1H-NMR(400MHz, CDCl3, δppm):7.50(1H, d), 7.41(2H, d), 6.84(2H, d), 6.19(1H,d), 3.94(2H, t), 1.83-1.71(2H, m), 1.42(9H, s), 1.40-1.17(4H, m), 0.54-0.42(2H, m), 0.07-0.03(15H, m).
【0056】
【化19】
【0057】
<<光反応性化合物Si-1の合成>>
300mL四つ口フラスコに、化合物[E](29.48g、65.4mmol)とギ酸(120g)を加え、40℃で加熱撹拌を行った。HPLCにて反応追跡を行い、反応終了後、蒸留水(800g)に反応液を注ぎ、ヘキサン/酢酸エチルで分液した。有機層を蒸留水で3回洗浄し有機層をエバポレーターで濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、白色固体の光反応性化合物Si-1を10.5g得た(収率41%)
1H-NMR(400MHz, CDCl3, δppm):7.74(1H, d), 7.49(2H, d), 6.90(2H, d), 6.31(1H,d), 4.12(2H, t), 1.83-1.74(2H, m), 1.48-1.31(6H, m), 0.54-0.50(2H, m), 0.07-0.03(15H, m).
【0058】
<合成例2:光反応性化合物Si-2の合成>
【0059】
【化20】
【0060】
化合物[D]を化合物[F]に変更した以外、合成例1と同様な手法を用いて光反応性化合物Si-2を17.2g得た(収率56%)
1H-NMR(400MHz, CDCl3, δppm):7.74(1H, d), 7.49(2H, d), 6.89(2H, d), 6.31(1H,d), 4.00-3.95(2H, m), 1.81-1.74(2H, m), 1.46-1.33(6H, m), 0.54-0.50(2H, m), 0.16-0.03(21H, m).
【0061】
<合成例3:光反応性化合物Si-3の合成>
【0062】
【化21】
【0063】
化合物[D]を化合物[H]に変更した以外、合成例1と同様な手法を用いて光反応性化合物Si-3を13.5g得た(収率89%)
1H-NMR(400MHz, CDCl3, δppm):7.73(1H, d), 7.48(2H, d), 6.82(2H, d), 6.31(1H,d), 3.97-3.91(2H, m), 1.79-1.74(2H, m), 1.43-1.33(6H, m), 0.54-0.50(2H, m), 0.16-0.03(21H, m).
【0064】
<合成例4:光反応性化合物Si-4の合成>
【0065】
【化22】
【0066】
<<化合物Kの合成>>
2L四つ口フラスコに、化合物[J](84.0g、451mmol)、トリフェニルホスフィン(以下、PPhと記載)(130.0g、495mmol)、THF(700g)を加え、窒素置換して溶液を0℃に冷却した。その後、DIAD(49.5g、496mol)のTHF(100g)溶液を徐々に加え、その後、化合物[A] (49.5g、496mol)のTHF(100g)溶液をさらに加えた後、23℃でさらに反応を行った。HPLCにて反応追跡を行い、反応終了を確認後、反応溶液を酢酸エチル/ブラインで洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、ろ過、エバポレーターにて溶媒留去することで、化合物[K]の粗物を得た。得られた粗物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し化合物[K]を56.7g得た(収率47%)。
1H-NMR(400MHz, CDCl3, δppm):9.70(1H, s), 7.64-7.62(2H, m), 7.44-7.41(2H, m), 7.01-6.98(2H, m), 6.85-6.82(2H, m), 5.88-5.79(1H, m), 5.10-4.97(2H, m), 3.99(2H, t), 2.22-2.09(2H, m), 1.84-1.76(2H,m), 1.61-1.52(2H, m).
【0067】
<<化合物Mの合成>>
【0068】
【化23】
【0069】
300mL四つ口フラスコに、化合物[K](10.00g、37.3mmol)、化合物[L](6.65g、37.3mmol)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(以下、EDCと記載)(6.95g、44.8mmol)、N,N’-ジメチルアミノピリジン(以下、DMAPと記載)(0.46、3.73mmol)、THF(150g)を加え23℃で反応を行った。HPLCにて反応追跡を行い、反応終了を確認後、反応溶液を酢酸エチル/蒸留水で洗浄、分液操作にて水層を除去した。有機層をさらに蒸留水で2回洗浄した後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、ろ過、エバポレーターにて溶媒留去することで、化合物[M]の粗物を得た。得られた粗物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し化合物[M]を15.2g得た(収率95%)。
1H-NMR(400MHz, CDCl3, δppm):7.83(1H, d), 7.68-7.67(2H, m), 7.58-7.56(2H, m), 7.55-7.48(2H, m), 7.23-7.19(2H, m), 7.06-7.05(2H, m), 6.89-6.93(2H, m), 6.30(1H, d), 5.87-5.80(1H, m), 5.11-4.99(2H, m), 3.98(2H, t), 3,85 (3H, s), 2.23-2.10(2H, m), 1.83-1.77(2H,m), 1.62-1.52(2H, m).
【0070】
<<光反応性化合物Si-4の合成>>
【0071】
【化24】
【0072】
300mL四つ口フラスコに、化合物[D](0.8g、5.2mmol)、化合物[M](1.5g、3.5mmol)、Karstedt触媒(0.1mmol)、トルエン(80g)を加え、窒素置換後、室温で22時間撹拌した。HPLCにて反応追跡を行い、反応終了後、反応溶液をエバポレーターで濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、光反応性化合物[Si-4]を0.6g得た(収率38%)。
1H-NMR(400MHz, CDCl3, δppm):7.85(1H, d), 7.68-7.67 (2H, m), 7.47-7.55(4H, m), 7.2(2H, d), 6.92-6.96(4H, m), 6.48-6.52(1H, d), 4.00(2H, t), 3,85 (3H, s), 1.35-1.80(8H, m), 0.51-0.53(2H, t), 0.02-0.05(15H, m).
【0073】
<合成例5:光反応性化合物Si-5の合成>
【0074】
【化25】
【0075】
化合物[F]を化合物[N]に変更し、化合物[N]に対して、化合物[M]の仕込比を2倍にした以外、合成例4と同様な手法を用いて光反応性化合物Si-5を0.2g得た(収率11%)
1H-NMR(400MHz, CDCl3, δppm):7.85(2H, d), 7.68-7.67(4H, m), 7.58-7.56(4H, m), 7.55-7.48(4H, m), 7.23-7.19(4H, m), 7.06-7.05(4H, m), 6.89-6.93(4H, m), 6.50(2H, d), 4.02-3.97(4H, m), 3.85 (3H, s), 1.81-1.74(4H, m), 1.46-1.33(12H, m), 0.51-0.53(4H, m), 0.02-0.05(12H, m).
【0076】
<合成例6:光反応性化合物Si-6の合成>
【0077】
【化26】
【0078】
化合物[F]を化合物[H]に変更した以外、合成例4と同様な手法を用いて光反応性化合物Si-5を11.4g得た(収率82%)
1H-NMR(400MHz, CDCl3, δppm):7.82(1H, d), 7.67-7.68(2H, m), 7.60-7.58(2H, m), 7.54-7.49(2H, m), 7.24-7.18(2H, m), 7.05-7.05(2H, m), 6.89-6.93(2H, m), 6.30(1H, d), 4.02-3.97(2H, m), 3,85 (3H, s), 1.82-1.73(2H, m), 1.44-1.31(6H, m), 0.54-0.50(2H, m), 0.17-0.04(21H, m).
【0079】
(実施例1)
合成例4で合成されたSi-4で表される光反応性化合物5重量部を、低分子液晶ZLI-4792(メルク社製)95重量部に添加した後、室温で30分間撹拌し、光反応性液晶組成物A1を得た。撹拌後、該光反応性液晶組成物はZLI-4792に対するSi-4の析出も見られず、均一に混合されていることを確認した(表2)。なお、Si-4で表される光反応性高分子液晶は、118℃以上で液晶性を発現した。結果を表1に示す。なお、表1において、「C」は結晶相(液晶になる前の結晶状態)であること、「N」はネマティック相(液晶相の1種)であること、「I」は等方相であることを示す。また、「C」と「N」との間の数値は、結晶相からネマティック相に転移する温度を示し、「N」と「I」との数値は、ネマティック相から等方相へと転移する温度を示す。より具体的には、表1の「Si-4」の熱特性は、118℃で結晶相からネマティック相に転移し、198℃でネマティック相から等方相へと転移することを示している。
別途、基板の両面にITOを備える2枚のガラス基板をITOが向かい合うように張り合わせ、10μmギャップの並行平板の空セルを得た。この空セルに該光反応性液晶組成物をキャピラリー法により注入した後、該光反応性液晶組成物の等方相温度以上である110℃に加熱した状態で、高圧水銀ランプを用いて直線偏光紫外線を照射することにより配向処理が施された液晶セルA2を得た。配向処理に用いた直線偏光紫外線の波長は315nm(50mW/cm)で、露光量は500mJ/cmであった。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
<光反応性液晶組成物の配向状態>
A2作製後、偏光顕微鏡観察によって、室温における低分子液晶の配向状態を確認した。結果を図1、及び表3に示す。図1の結果から次のことが分かる。即ち、液晶セルの光学軸が偏光子と検光子に対して45度傾いた場合に明状態となり、偏光子と検光子のいずれかに対して、0度か90度に配置された場合に暗状態となることから、液晶セル内の低分子液晶が一軸に配向していることが分かる。
【0083】
【表3】
【0084】
(実施例2)
光反応性液晶組成物に添加するSi-4の量を2重量部及び低分子液晶の量を98重量部に変更した以外、実施例1と同様な手法で光反応性液晶組成物B1を得た。
該光反応性液晶組成物B1はZLI-4792に対するSi-4の析出も見られず、均一に混合されていることを確認した。結果を表2に示す。
次に、実施例1と同様に該光反応性液晶組成物が封入された液晶セルB2を作成した後、偏光顕微鏡観察により、室温における低分子液晶の配向状態を確認した。結果を表3に示す。なお、表3中、「良好」とは、「配向が均一」であったことを示し、「配向可能」とは、「液晶の配向は誘起できるが、欠陥などの配向不良が一部に見られ、配向が均一でない」ことを示している。
【0085】
(実施例3)
光反応性液晶組成物に添加するSi-4をSi-5に変更した以外、実施例1と同様な手法で光反応性液晶組成物C1を得た。
該光反応性液晶組成物C1はZLI-4792に対するSi-5の析出も見られず、均一に混合されていることを確認した。結果を表2に示す。
次に、照射する直線偏光紫外線の露光量を1000mJ/cmとした以外、実施例1と同様に該光反応性液晶組成物が封入された液晶セルC2を作成した後、偏光顕微鏡観察により、室温における低分子液晶の配向状態を確認した。その結果、図示しないが、実施例1と同様に、液晶セル内の低分子液晶が一軸に配向し、配向均一性が良好であることを確認した(表3を参照のこと)。
【0086】
(実施例4)
光反応性液晶組成物に添加するSi-4をSi-6に変更した以外、実施例1と同様な手法で光反応性液晶組成物D1を得た。該光反応性液晶組成物D1はZLI-4792に対するSi-5の析出も見られず、均一に混合されていることを確認した。結果を表2に示す。
次に、実施例3と同様に該光反応性液晶組成物が封入された液晶セルD2を作成した後、偏光顕微鏡観察により、室温における低分子液晶の配向状態を確認した。その結果、図示しないが、実施例1と同様に、液晶セル内の低分子液晶が一軸に配向し、配向均一性が良好であることを確認した(表3を参照のこと)。
【0087】
(実施例5)
実施例1で用いた低分子液晶:ZLI-4792(メルク社製)をE7(メルク社製)に変更した以外、実施例1と同様な手法で光反応性液晶組成物E1を得た。
【0088】
【化27】
【0089】
該光反応性液晶組成物E1はE7に対するSi-4の析出も見られず、均一に混合されていることを確認した。結果を表2に示す。
次に、実施例1と同様に該光反応性液晶組成物が封入された液晶セルE2を作成した後、偏光顕微鏡観察により、室温における低分子液晶の配向状態を確認した。その結果、図示しないが、実施例1と同様に、液晶セル内の低分子液晶が一軸に配向し、配向均一性が良好であることを確認した(表3を参照のこと)。
【0090】
光反応性液晶組成物に添加するSi-4をSi-1に変更した以外、実施例1と同様な手法で光反応性液晶組成物F1を得た。
該光反応性液晶組成物F1はZLI-4792に対するSi-1の析出も見られず、均一に混合されていることを確認した。結果を表2に示す。
次に、実施例1と同様に該光反応性液晶組成物が封入された液晶セルF2を作成した後、偏光顕微鏡観察により、室温における低分子液晶の配向状態を確認した。その結果、図示しないが、実施例1と同様に、液晶セル内の低分子液晶が一軸に配向し、配向均一性が良好であることを確認した(表3を参照のこと)。
【0091】
(実施例7)
光反応性液晶組成物に添加するSi-1の量を10重量部に変更した以外は、実施例6と同様な手法で光反応性液晶組成物G1を得た。
該光反応性液晶組成物G1はZLI-4792に対するSi-4の析出も見られず、均一に混合されていることを確認した。結果を表2に示す。
次に、実施例1と同様に該光反応性液晶組成物が封入された液晶セルG2を作成した後、偏光顕微鏡観察により、室温における低分子液晶の配向状態を確認した。その結果、図示しないが、実施例1と同様に、液晶セル内の低分子液晶が一軸に配向し、配向均一性が良好であることを確認した(表3を参照のこと)。
【0092】
(実施例8)
光反応性液晶組成物に添加するSi-4をSi-1とし、添加量を1重量部に変更した以外、実施例1と同様な手法で光反応性液晶組成物H1を得た。
該光反応性液晶組成物H1はZLI-4792に対するSi-1の析出も見られず、均一に混合されていることを確認した。結果を表2に示す。
次に、実施例1と同様に該光反応性液晶組成物が封入された液晶セルH2を作成した後、偏光顕微鏡観察により、室温における低分子液晶の配向状態を確認した。その結果、図示しないが、実施例1と同様に、液晶セル内の低分子液晶が一軸に配向し、配向均一性が良好であることを確認した(表3を参照のこと)。
【0093】
(実施例9)
光反応性液晶組成物に添加するSi-4をSi-2に変更した以外、実施例7と同様な手法で光反応性液晶組成物I1を得た。
該光反応性液晶組成物I1はZLI-4792に対するSi-2の析出も見られず、均一に混合されていることを確認した。結果を表2に示す。
次に、実施例1と同様に該光反応性液晶組成物が封入された液晶セルI2を作成した後、偏光顕微鏡観察により、室温における低分子液晶の配向状態を確認した。その結果、図示しないが、実施例1と同様に、液晶セル内の低分子液晶が一軸に配向し、配向均一性が良好であることを確認した(表3を参照のこと)。
【0094】
(実施例10)
照射する直線偏光紫外線の露光量を1000mJ/cmへと変更した以外、実施例1と同様に該光反応性液晶組成物A1が封入された液晶セルA3を作成した後、偏光顕微鏡観察により、室温における低分子液晶の配向状態を確認した。その結果、図示しないが、実施例1と同様に、液晶セル内の低分子液晶が一軸に配向し、配向均一性が良好であることを確認した(表3を参照のこと)。
【0095】
(実施例11)
実施例4において、照射する直線偏光紫外線の露光量を1500mJ/cmへと変更した以外、実施例4と同様に該光反応性液晶組成物D1が封入された液晶セルD3を作成した後、偏光顕微鏡観察により、室温における低分子液晶の配向状態を確認した。その結果、図示しないが、実施例1と同様に、液晶セル内の低分子液晶が一軸に配向し、配向均一性が良好であることを確認した(表3を参照のこと)。
【0096】
(実施例12)
実施例4において、光反応性液晶組成物に添加するSi-6の量を10重量部及び低分子液晶の量を90重量部に変更した以外、実施例4と同様な手法で光反応性液晶組成物J1を得た。該光反応性液晶組成物はZLI-4792に対するSi-6の析出も見られず、均一に混合されていることを確認した。結果を表2に示す。
次に、実施例4と同様に該光反応性液晶組成物が封入された液晶セルJ2を作成した後、偏光顕微鏡観察により、室温における低分子液晶の配向状態を確認した。その結果、図示しないが、実施例4と同様に、液晶セル内の低分子液晶が一軸に配向し、配向均一性が良好であることを確認した(表3を参照のこと)。
【0097】
(比較例1)
下記式M6CBで表される光反応性液晶モノマー10重量部を、低分子液晶ZLI-4792(メルク社製)95重量部に添加した後、室温で30分間撹拌し、光反応性液晶組成物K1を得た。しかしながら、該光反応性液晶組成物K1は、上記式M6CBで表される化合物のZLI-4792に対する溶解性が悪く、均一な混合ができなかった。結果を表2に示す。
組成物が均一混合できなかったため、液晶セルが作成できなかった。
【0098】
【化28】
【0099】
(比較例2)
下記式P6CBで表される光反応性高分子液晶5重量部を、低分子液晶ZLI-4792(メルク社製)95重量部に添加した後、室温で30分間撹拌し、光反応性液晶組成物L1を得た。しかしながら、該光反応性液晶組成物L1は、上記式P6CBで表される高分子液晶のZLI-4792に対する溶解性が悪く、均一な混合ができなかった。結果を表2に示す。
組成物が均一混合できなかったため、液晶セルが作成できなかった。
【0100】
【化29】
【0101】
(比較例3)
偏光紫外線を照射する温度を45度とした以外、実施例1と同様な手法で光反応性液晶組成物A1が封入された液晶セルA4を得た。その後、偏光顕微鏡観察によって、室温における低分子液晶の配向状態を確認した。結果を図2、及び表3に示す。
図2の結果から次のことが分かる。即ち、液晶セルの光学軸が偏光子と検光子に対して45度傾いた場合と、偏光子と検光子のいずれかに対して0度か90度に配置された場合のいずれにおいても、明暗が確認されなかったことから、液晶セル内の低分子液晶は配向していないことが分かる。
【0102】
実施例1~12及び比較例1~3から、本出願で開示された光反応性化合物は低分子液晶への溶解性が高く、光反応性液晶組成物の作成が容易であることが分かる。
また、該光反応性化合物を封入した液晶セルに直線偏光紫外線を照射することで、液晶配向膜を用いずとも均一に液晶が配向した液晶セルが作成できることが分かった。
図1
図2