IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東京エレクトロン株式会社の特許一覧

特許7162541基板処理装置、及び基板処理方法、及び記憶媒体
<>
  • 特許-基板処理装置、及び基板処理方法、及び記憶媒体 図1
  • 特許-基板処理装置、及び基板処理方法、及び記憶媒体 図2
  • 特許-基板処理装置、及び基板処理方法、及び記憶媒体 図3
  • 特許-基板処理装置、及び基板処理方法、及び記憶媒体 図4
  • 特許-基板処理装置、及び基板処理方法、及び記憶媒体 図5
  • 特許-基板処理装置、及び基板処理方法、及び記憶媒体 図6
  • 特許-基板処理装置、及び基板処理方法、及び記憶媒体 図7
  • 特許-基板処理装置、及び基板処理方法、及び記憶媒体 図8
  • 特許-基板処理装置、及び基板処理方法、及び記憶媒体 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】基板処理装置、及び基板処理方法、及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20221021BHJP
   G03F 7/30 20060101ALI20221021BHJP
【FI】
H01L21/30 567
H01L21/30 562
G03F7/30 501
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019008674
(22)【出願日】2019-01-22
(65)【公開番号】P2020119961
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122507
【弁理士】
【氏名又は名称】柏岡 潤二
(74)【代理人】
【識別番号】100171099
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】川上 真一路
(72)【発明者】
【氏名】水之浦 宏
(72)【発明者】
【氏名】佐野 要平
(72)【発明者】
【氏名】山内 剛
(72)【発明者】
【氏名】榎本 正志
【審査官】田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-098229(JP,A)
【文献】特開2001-291664(JP,A)
【文献】特開2011-205004(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板にメタル含有レジストの被膜を形成する成膜処理部と、
前記被膜が形成され、当該被膜に露光処理が施された前記基板を加熱処理する熱処理部と、
前記加熱処理が施された前記基板の前記被膜を現像処理する現像処理部と、
前記基板に形成された前記被膜内において、前記加熱処理の際に反応する水分量の前記基板ごとの差を縮小させる調整制御部と、
前記基板を搬送する搬送装置と、
前記搬送装置を収容する搬送空間に比較して、前記被膜に含まれる含有水分量の変化を抑制するように構成された基板収容部と、を備え
前記調整制御部は、前記加熱処理の開始時における前記含有水分量の前記基板ごとの差を縮小させるように、少なくとも前記露光処理前に前記基板ごとの前記含有水分量を調整し、
前記調整制御部は、前記成膜処理部による前記被膜の形成後、前記露光処理の前の前記基板を前記基板収容部に搬入するように前記搬送装置を制御する、基板処理装置。
【請求項2】
前記調整制御部は、前記成膜処理部から搬出されてから前記基板収容部に搬入されるまでの時間の前記基板ごとの差を縮小させるように前記搬送装置を制御する、請求項記載の基板処理装置。
【請求項3】
基板にメタル含有レジストの被膜を形成する成膜処理部と、
前記被膜が形成され、当該被膜に露光処理が施された前記基板を加熱処理する熱処理部と、
前記加熱処理が施された前記基板の前記被膜を現像処理する現像処理部と、
前記基板に形成された前記被膜内において、前記加熱処理の際に反応する水分量の前記基板ごとの差を縮小させる調整制御部と、
前記基板を搬送する搬送装置と、
前記被膜に含まれる含有水分量を減少させるように構成された脱水部と、を備え
前記調整制御部は、前記加熱処理の開始時における前記含有水分量の前記基板ごとの差を縮小させるように、少なくとも前記露光処理前に前記基板ごとの前記含有水分量を調整し、
前記調整制御部は、前記成膜処理部による前記被膜の形成後、前記露光処理の前の前記基板を前記脱水部に搬入するように前記搬送装置を制御する、基板処理装置。
【請求項4】
前記調整制御部は、前記脱水部からの搬出時における前記含有水分量の前記基板ごとの差を、前記脱水部への搬入時に比較して縮小させるように設定されたタイミングで前記脱水部から前記基板を搬出するように前記搬送装置を制御する、請求項記載の基板処理装置。
【請求項5】
基板にメタル含有レジストの被膜を形成する成膜処理部と、
前記被膜が形成され、当該被膜に露光処理が施された前記基板を加熱処理する熱処理部と、
前記加熱処理が施された前記基板の前記被膜を現像処理する現像処理部と、
前記基板に形成された前記被膜内において、前記加熱処理の際に反応する水分量の前記基板ごとの差を縮小させる調整制御部と、を備え、
前記調整制御部は、前記加熱処理の開始時における前記被膜に含まれる含有水分量の前記基板ごとの差を縮小させるように、少なくとも前記露光処理後に前記基板ごとの前記含有水分量を調整し、
前記調整制御部は、前記露光処理用の装置内の滞在時間に応じて、前記露光処理後に前記基板ごとの前記含有水分量を調整する、基板処理装置。
【請求項6】
前記基板を搬送する搬送装置と、
前記含有水分量を減少させるように構成された脱水部と、を更に備え、
前記調整制御部は、前記露光処理後の少なくとも一部の前記基板を前記脱水部に搬入し、前記露光処理用の装置内の滞在時間が短くなるにつれて、前記基板の前記脱水部内の滞在時間が長くなるように設定されたタイミングで前記脱水部から前記基板を搬出するように前記搬送装置を制御する、請求項記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記基板を搬送する搬送装置と、
前記含有水分量を増加させるように構成された加湿部と、を更に備え、
前記調整制御部は、前記露光処理後の少なくとも一部の前記基板を前記加湿部に搬入し、前記露光処理用の装置内の滞在時間が長くなるにつれて、前記基板の前記加湿部内の滞在時間が長くなるように設定されたタイミングで前記加湿部から前記基板を搬出するように前記搬送装置を制御する、請求項記載の基板処理装置。
【請求項8】
基板にメタル含有レジストの被膜を形成する成膜処理部と、
前記被膜が形成され、当該被膜に露光処理が施された前記基板を加熱処理する熱処理部と、
前記加熱処理が施された前記基板の前記被膜を現像処理する現像処理部と、
前記基板に形成された前記被膜内において、前記加熱処理の際に反応する水分量の前記基板ごとの差を縮小させる調整制御部と、を備え、
前記調整制御部は、前記露光処理用の装置内の滞在時間が長くなるにつれて、前記基板の前記加熱処理の時間が長くなるように前記熱処理部を制御する、基板処理装置。
【請求項9】
基板にメタル含有レジストの被膜を形成することと、
前記被膜が形成され、当該被膜に露光処理が施された前記基板を加熱処理することと、
前記加熱処理が施された前記基板の前記被膜を現像処理することと、
前記基板に形成された前記被膜内において、前記加熱処理の際に反応する水分量の前記基板ごとの差を縮小させることと、を含み、
前記加熱処理の際に反応する前記水分量の前記基板ごとの差を縮小させることは、前記加熱処理の開始時における前記被膜に含まれる含有水分量の前記基板ごとの差を縮小させるように、少なくとも前記露光処理前に前記基板ごとの前記含有水分量を調整することを含み、
少なくとも前記露光処理前に前記基板ごとの前記含有水分量を調整することは、前記被膜の形成後、前記露光処理の前の前記基板を、前記基板を搬送する搬送装置を収容する搬送空間に比較して、前記含有水分量の変化を抑制するように構成された基板収容部に搬入するように前記搬送装置を制御することを含む、基板処理方法。
【請求項10】
請求項記載の基板処理方法を装置に実行させるためのプログラムを記憶した、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置、基板処理方法、及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、化学増幅型レジストを用いてレジストパターンを形成する基板処理装置が開示されている。この基板処理装置では、制御部が、露光装置での露光終了後、露光後ベークユニットで露光後ベーク処理が開始されるまでの時間が基板毎に一定になるように待機部で基板を待機させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-130857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
化学増幅型レジストに代えて、メタル含有レジストが用いられる場合がある。本開示は、メタル含有レジストを用いたレジストパターンの寸法安定性の向上に有効な基板処理装置、基板処理方法、及び記憶媒体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
基板処理装置は、基板にメタル含有レジストの被膜を形成する成膜処理部と、被膜が形成され、当該被膜に露光処理が施された基板を加熱処理する熱処理部と、加熱処理が施された基板の被膜を現像処理する現像処理部と、基板に形成された被膜内において、加熱処理の際に反応する水分量の基板ごとの差を縮小させる調整制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、メタル含有レジストを用いたレジストパターンの寸法安定性の向上に有効な基板処理装置、基板処理方法、及び記憶媒体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1実施形態に係る基板処理システムの概略構成を例示する図である。
図2図2は、第1実施形態に係る基板処理装置の内部構成を例示する模式図である。
図3図3の(a)は、基板収容ユニットの一例を示す模式図である。図3の(b)は、脱水ユニットの一例を示す模式図である。
図4図4は、制御装置の機能的な構成の一例を示す機能ブロック図である。
図5図5は、制御装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図6図6は、含有水分量の調整手順の一例を示すフローチャートである。
図7図7は、含有水分量の調整手順の別の例を示すフローチャートである。
図8図8は、第2実施形態に係る基板処理システムでの反応水分量の調整手順の一例を示すフローチャートである。
図9図9は、第3実施形態に係る基板処理システムでの含有水分量の調整手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、種々の例示的実施形態について説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0009】
[第1実施形態]
まず、図1図7を参照して第1実施形態に係る基板処理システムを説明する。
【0010】
[基板処理システム]
基板処理システム1は、基板に対し、感光性被膜の形成、当該感光性被膜の露光、及び当該感光性被膜の現像を施すシステムである。処理対象の基板は、例えば半導体のウェハWである。感光性被膜は、例えばレジスト膜である。基板処理システム1は、塗布・現像装置2と露光装置3とを備える。露光装置3は、ウェハW(基板)上に形成されたレジスト膜(感光性被膜)を露光する露光処理用の装置である。露光装置3の内部空間は、例えば実質的な真空状態に保たれている。具体的には、露光装置3は、液浸露光等の方法によりレジスト膜の露光対象部分にエネルギー線を照射する。塗布・現像装置2は、露光装置3による露光処理の前に、ウェハW(基板)の表面にレジスト(薬液)を塗布してレジスト膜を形成する処理を行い、露光処理後にレジスト膜の現像処理を行う。基板処理システム1は、金属を含有するレジスト(以下、「メタル含有レジスト」という。)を用いて、メタル含有レジストの被膜を形成する。例えば、基板処理システム1は、酸化金属を含有するレジストを用いて上記被膜を形成してもよい。
【0011】
[基板処理装置]
以下、基板処理装置の一例として、塗布・現像装置2の構成を説明する。図1及び図2に示されるように、塗布・現像装置2は、キャリアブロック4と、処理ブロック5と、インタフェースブロック6と、調湿機構7と、制御装置100(調整制御部)とを備える。
【0012】
キャリアブロック4は、塗布・現像装置2内へのウェハWの導入及び塗布・現像装置2内からのウェハWの導出を行う。例えばキャリアブロック4は、ウェハW用の複数のキャリアCを支持可能であり、受け渡しアームを含む搬送装置A1を内蔵している。キャリアCは、例えば円形の複数枚のウェハWを収容する。搬送装置A1は、キャリアCからウェハWを取り出して処理ブロック5に渡し、処理ブロック5からウェハWを受け取ってキャリアC内に戻す。処理ブロック5は、複数の処理モジュール11,12,13,14を有する。
【0013】
処理モジュール11は、塗布ユニットU1と、熱処理ユニットU2と、これらのユニットにウェハWを搬送する搬送装置A3とを内蔵している。処理モジュール11は、塗布ユニットU1及び熱処理ユニットU2によりウェハWの表面上に下層膜を形成する。塗布ユニットU1は、下層膜形成用の処理液をウェハW上に塗布する。熱処理ユニットU2は、下層膜の形成に伴う各種熱処理を行う。
【0014】
処理モジュール12(成膜処理部)は、塗布ユニットU3と、熱処理ユニットU4と、これらのユニットにウェハWを搬送する搬送装置A3とを内蔵している。処理モジュール12は、塗布ユニットU3及び熱処理ユニットU4により下層膜上にメタル含有レジストの被膜を形成する。塗布ユニットU3は、被膜形成用の処理液として、メタル含有レジストを下層膜の上に塗布する。熱処理ユニットU4は、被膜の形成に伴う各種熱処理を行う。これにより、ウェハWの表面にメタル含有レジストの被膜が形成される。
【0015】
処理モジュール13は、塗布ユニットU5と、熱処理ユニットU6と、これらのユニットにウェハWを搬送する搬送装置A3とを内蔵している。処理モジュール13は、塗布ユニットU5及び熱処理ユニットU6によりレジスト膜上に上層膜を形成する。塗布ユニットU5は、上層膜形成用の液体をレジスト膜の上に塗布する。熱処理ユニットU6は、上層膜の形成に伴う各種熱処理を行う。
【0016】
処理モジュール14は、現像ユニットU7(現像処理部)と、熱処理ユニットU8(熱処理部)と、これらのユニットにウェハWを搬送する搬送装置A3とを内蔵している。処理モジュール14は、現像ユニットU7及び熱処理ユニットU8により、露光処理が施された被膜の現像処理及び現像処理に伴う加熱処理を行う。これにより、ウェハWの表面にメタル含有レジストを用いたレジストパターンが形成される。現像ユニットU7は、露光済みのウェハWの表面上に現像液を塗布した後、これをリンス液により洗い流すことで、メタル含有レジストの被膜の現像処理を行う。熱処理ユニットU8は、現像処理に伴う各種熱処理を行う。熱処理の具体例としては、現像処理前の加熱処理(PEB:Post Exposure Bake)、現像処理後の加熱処理(PB:Post Bake)等が挙げられる。現像ユニットU7は、熱処理ユニットU8により加熱処理(PEB)が施されたウェハWを現像処理する。以下、特に説明がない限り、熱処理ユニットU8での加熱処理は、「現像処理前の加熱処理(PEB)」であるとして説明する。また、メタル含有レジストの被膜は、単に「被膜」として説明する。
【0017】
処理ブロック5内におけるキャリアブロック4側には棚ユニットU10が設けられている。棚ユニットU10は、上下方向に並ぶ複数のセルに区画されている。棚ユニットU10の近傍には昇降アームを含む搬送装置A7が設けられている。搬送装置A7は、棚ユニットU10のセル同士の間でウェハWを昇降させる。
【0018】
処理ブロック5内におけるインタフェースブロック6側には棚ユニットU11が設けられている。棚ユニットU11は、上下方向に並ぶ複数のセルに区画されている。
【0019】
インタフェースブロック6は、露光装置3との間でウェハWの受け渡しを行う。例えばインタフェースブロック6は、受け渡しアームを含む搬送装置A8を内蔵しており、露光装置3に接続される。搬送装置A8は、棚ユニットU11に配置されたウェハWを、調湿機構7を介して露光装置3に渡す。搬送装置A8は、露光装置3からウェハWを受け取って調湿機構7を介して棚ユニットU11に戻す。
【0020】
調湿機構7は、ウェハWの表面に形成された被膜に含まれる水分量(以下、「含有水分量」という。)を調節するように構成された機構である。被膜の含有水分量の調節には、含有水分量を増加させること、含有水分量を減少させること、及び含有水分量の変動を抑制することの少なくとも一つが含まれる。例えば、調湿機構7は、インタフェースブロック6内に設けられている。調湿機構7は、基板収容ユニット20(基板収容部)と、脱水ユニット30(脱水部)とを含む。基板収容ユニット20は、複数のウェハWを収容し、収容されたウェハWにおける被膜の含有水分量の変化を抑制するように構成されている。脱水ユニット30は、1枚又は複数枚のウェハWを収容し、収容されたウェハWにおける被膜の含有水分量を減少させるように構成されている。これらの構成の一例については、後述する。
【0021】
制御装置100は、例えば以下の手順で塗布・現像処理を実行するように塗布・現像装置2を制御する。まず制御装置100は、キャリアC内のウェハWを棚ユニットU10に搬送するように搬送装置A1を制御し、このウェハWを処理モジュール11用のセルに配置するように搬送装置A7を制御する。
【0022】
次に制御装置100は、棚ユニットU10のウェハWを処理モジュール11内の塗布ユニットU1及び熱処理ユニットU2に搬送するように搬送装置A3を制御する。また、制御装置100は、このウェハWの表面上に下層膜を形成するように塗布ユニットU1及び熱処理ユニットU2を制御する。その後制御装置100は、下層膜が形成されたウェハWを棚ユニットU10に戻すように搬送装置A3を制御し、このウェハWを処理モジュール12用のセルに配置するように搬送装置A7を制御する。
【0023】
次に制御装置100は、棚ユニットU10のウェハWを処理モジュール12内の塗布ユニットU3及び熱処理ユニットU4に搬送するように搬送装置A3を制御する。また、制御装置100は、このウェハWの下層膜上にメタル含有レジストの被膜を形成するように塗布ユニットU3及び熱処理ユニットU4を制御する。その後制御装置100は、ウェハWを棚ユニットU10に戻すように搬送装置A3を制御し、このウェハWを処理モジュール13用のセルに配置するように搬送装置A7を制御する。
【0024】
次に制御装置100は、棚ユニットU10のウェハWを処理モジュール13内の各ユニットに搬送するように搬送装置A3を制御する。また、制御装置100は、このウェハWの被膜上に上層膜を形成するように塗布ユニットU5及び熱処理ユニットU6を制御する。その後制御装置100は、ウェハWを棚ユニットU11に搬送するように搬送装置A3を制御する。
【0025】
次に制御装置100は、棚ユニットU11のウェハWを基板収容ユニット20に搬入し、基板収容ユニット20に収容されたウェハWを露光装置3に送り出すように搬送装置A8を制御する。その後制御装置100は、露光処理が施されたウェハWを露光装置3から受け入れて、脱水ユニット30に搬入するように搬送装置A8を制御する。そして、制御装置100は、脱水ユニット30内のウェハWを棚ユニットU11における処理モジュール14用のセルに配置するように搬送装置A8を制御する。
【0026】
次に制御装置100は、棚ユニットU11のウェハWを処理モジュール14内の熱処理ユニットU8に搬送するように搬送装置A3を制御する。そして、制御装置100は、ウェハWの被膜に加熱処理を施すように熱処理ユニットU8を制御する。次に、制御装置100は、熱処理ユニットU8により加熱処理が施されたウェハWの被膜に現像処理、及び現像処理後の加熱処理を施すように現像ユニットU7及び熱処理ユニットU8を制御する。その後制御装置100は、ウェハWを棚ユニットU10に戻すように搬送装置A3を制御し、このウェハWをキャリアC内に戻すように搬送装置A7及び搬送装置A1を制御する。以上で塗布・現像処理が完了する。
【0027】
なお、基板処理装置の具体的な構成は、以上に例示した塗布・現像装置2の構成に限られない。基板処理装置は、メタル含有レジストの被膜を形成する成膜処理を行うユニット、露光処理後に被膜を加熱処理する熱処理ユニット、被膜を現像処理する現像ユニット、及びこれらを制御可能な制御装置を備えていればどのようなものであってもよい。調湿機構7の各ユニットは、キャリアブロック4又は処理モジュール11,12,13,14内に設けられてもよい。
【0028】
(調湿機構)
続いて調湿機構7の各ユニットの構成について説明する。上述したように、図3の(a)に示される基板収容ユニット20は、複数のウェハWを収容し、収容したウェハWの被膜内の含有水分量の変化を抑制する。基板収容ユニット20は、複数のウェハWを収容できるので、露光装置3にウェハWを受け渡すまでウェハWを待機させるバッファとして機能する。なお、基板収容ユニット20は、インタフェースブロック6と露光装置3との間に設けられてもよい。
【0029】
基板収容ユニット20内での含有水分量の変化は、塗布・現像装置2での搬送装置を収容する搬送空間(例えば搬送装置A3,A8が移動できる空間)に比べて、抑制されている。基板収容ユニット20内に収容されたウェハWにおける含有水分量の単位時間当たりの増減幅は、搬送空間及び露光装置3のいずれか一方において留まっているウェハWに比べて小さい。搬送空間において留まっているウェハWの含有水分量が増加する場合、基板収容ユニット20内に収容されたウェハWの含有水分量の単位時間当たりの増加幅は、搬送空間内のウェハWに比べて小さい。露光装置3内が実質的な真空状態に保たれている場合、ウェハWが露光装置3内に留まると当該ウェハWの被膜の含有水分量は減少していく。この場合、基板収容ユニット20内に収容されたウェハWの含有水分量の単位時間当たりの減少幅は、露光装置3内のウェハWに比べて小さい。
【0030】
例えば基板収容ユニット20は、筐体21と、複数の収容棚22と、供給路23とを有する。筐体21は、外部空間(搬送空間)と内部空間とを隔離するよう構成されている。例えば筐体21は内部空間を有する箱体である。筐体21の少なくとも一部にはウェハWの出し入れ用の開口が形成されていてもよい。筐体21は、上記開口を介した気体の出入りをエアカーテンにより抑制するように構成されていてもよい。筐体21は、複数の収容棚22を収容しており、筐体21の一端には供給路23が接続されている。複数の収容棚22は、複数のウェハWをそれぞれ保持する。供給路23は、含有水分量の変化が抑制されるようなエアを筐体21内の空間に供給する。例えば供給路23の一端に低湿度のドライエアを生成する装置が接続され、供給路23は低湿度のドライエアを筐体21内に供給してもよい。供給路23により供給されるドライエアは、基板収容ユニット20に収容されたウェハWにおける含有水分量の変化が抑制されるような湿度を有している。例えば供給路23により供給されるドライエアの湿度は、搬送空間内の湿度よりも小さく、露光装置3内の湿度もより大きい。
【0031】
図3の(b)に示される脱水ユニット30は、1枚又は複数枚のウェハWを収容し、収容したウェハWの被膜の含有水分量を減少させる。例えば脱水ユニット30は、筐体31と、支持板32と、接続管33とを有する。筐体31は、外部空間(搬送空間)と内部空間とを隔離する箱体である。支持板32は、脱水対象のウェハWを支持する板状の部材である。接続管33は、筐体31の一端に接続されており、接続管33の筐体31と反対側の一端には真空装置(不図示)が接続される。これにより、筐体31内の空間が真空吸引され、脱水ユニット30内(内部空間)は、実質的な真空状態に保たれる。筐体31内の内部空間が実質的な真空状態に維持されることにより、脱水ユニット30に収容されているウェハWにおける被膜の含有水分量が減少していく。
【0032】
(制御装置)
図2に戻り、制御装置100は、塗布・現像装置2に含まれる各要素を制御する。制御装置100は、ウェハWにメタル含有レジストの被膜を形成するように処理モジュール12を制御することと、被膜が形成され、当該被膜に露光処理が施されたウェハWを加熱処理するように熱処理ユニットU8を制御することと、加熱処理が施されたウェハWの被膜を現像処理するように現像ユニットU7を制御することと、ウェハWに形成された被膜内において、加熱処理の際に反応する水分量(以下、「反応水分量」という。)のウェハWごとの差を縮小させることと、を実行するように構成されている。
【0033】
制御装置100は、反応水分量のウェハWごとの差を縮小させるように、熱処理ユニットU8による加熱処理の開始時におけるメタル含有レジストに含まれる含有水分量のウェハWごとの差を縮小させることを実行するように構成されていてもよい。以下では、メタル含有レジストの被膜に含まれる含有水分量を単に「含有水分量」といい、熱処理ユニットU8による加熱処理の開始時における含有水分量を単に「加熱処理開始時の含有水分量」ということもある。
【0034】
以下、制御装置100の具体的な構成を例示する。図4に示されるように、制御装置100は、機能上の構成(以下、「機能モジュール」という。)として、搬送基準時間設定部102と、待機時間取得部104と、搬送制御部106と、滞在時間算出部108と、脱水時間算出部110と、熱処理ユニット制御部114と、動作指令保持部116とを有する。動作指令保持部116には、例えば複数のウェハWそれぞれに対する搬送計画を含む処理スケジュールが含まれていてもよい。
【0035】
搬送基準時間設定部102は、搬送基準時間を設定するように構成されている。例えば搬送基準時間は、1つのウェハWに対して処理モジュール12による成膜処理後から基板収容ユニット20への搬入までにかかる時間(収容待機時間)に対する一定の目標値である。収容待機時間は、いずれかの搬送装置が当該ウェハWを支持して搬送している時間と、当該ウェハWが搬送装置により搬送されていない時間とを含む。搬送基準時間設定部102は、動作指令保持部116に保持されている搬送計画に基づいて搬送基準時間を設定する。搬送基準時間設定部102は、設定した搬送基準時間を搬送制御部106に出力する。
【0036】
待機時間取得部104は、予定待機時間を取得するように構成されている。予定待機時間は、例えば棚ユニットU11内にウェハWが留まる予定の時間である。待機時間取得部104は、棚ユニットU11でのウェハWの予定待機時間を、動作指令保持部116に保持されている搬送計画に基づいて取得する。待機時間取得部104は、取得した予定待機時間を搬送制御部106に出力する。
【0037】
搬送制御部106は、ウェハWを搬送するように搬送装置A3及び搬送装置A8を制御する。搬送制御部106は、搬送基準時間設定部102により設定された搬送基準時間及び待機時間取得部104により取得された予定待機時間に基づいて、ウェハWごとに収容待機時間を調整する。例えば搬送制御部106は、搬送基準時間、予定待機時間、及び予定搬送所用時間に応じて調整時間を算出する。予定搬送所用時間は、例えば棚ユニットU11から基板収容ユニット20まで搬送装置A8によりウェハWが搬送されるのにかかる予定の時間である。調整時間は、収容待機時間のウェハWごとの時間差を縮小するために、予定搬送所用時間及び予定待機時間のいずれか一方に加算される時間である。具体的には、各ウェハWに対する調整時間は、搬送基準時間から、予定待機時間及び予定搬送所用時間を減算することにより算出される。搬送制御部106は、算出した調整時間分だけ予定待機時間を長くしてもよいし、予定搬送所用時間を長くしてもよい。搬送制御部106は、調整された収容待機時間にて各ウェハWを基板収容ユニット20に搬入するように搬送装置A3,A8を制御する。
【0038】
滞在時間算出部108は、複数のウェハWそれぞれの露光装置3内での滞在時間を算出するように構成されている。滞在時間算出部108は、算出した滞在時間を搬送制御部106及び脱水時間算出部110に出力する。
【0039】
脱水時間算出部110は、滞在時間算出部108により算出された露光装置3内での滞在時間に応じて、脱水ユニット30内での各ウェハWに対する脱水時間を算出する。脱水時間は、脱水ユニット30内にウェハWが滞在する時間である。脱水時間算出部110は、露光装置3内での滞在時間が長いほど、脱水ユニット30内で滞在する時間が短くなるように各ウェハWに対する脱水時間を算出する。脱水時間算出部110は、算出した脱水時間を搬送制御部106に出力する。
【0040】
熱処理ユニット制御部114は、熱処理ユニットU8による現像前及び現像後の加熱処理を制御する。例えば熱処理ユニット制御部114は、動作指令保持部116に保持されている処理スケジュールに基づいて熱処理ユニットU8での加熱処理の加熱時間を制御する。
【0041】
制御装置100は、一つ又は複数の制御用コンピュータにより構成される。例えば制御装置100は、図5に示される回路120を有する。回路120は、一つ又は複数のプロセッサ121と、メモリ122と、ストレージ123と、タイマー124と、入出力ポート125とを有する。ストレージ123は、例えばハードディスク等、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を有する。記憶媒体は、後述の基板処理手順を制御装置100に実行させるためのプログラムを記憶している。記憶媒体は、不揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク及び光ディスク等の取り出し可能な媒体であってもよい。メモリ122は、ストレージ123の記憶媒体からロードしたプログラム及びプロセッサ121による演算結果を一時的に記憶する。プロセッサ121は、メモリ122と協働して上記プログラムを実行することで、上述した各機能モジュールを構成する。入出力ポート125は、プロセッサ121からの指令に従って、搬送装置A3,A8及び熱処理ユニットU8との間で電気信号の入出力を行う。タイマー124は、例えば一定周期の基準パルスをカウントすることで経過時間を計測する。
【0042】
なお、制御装置100のハードウェア構成は、必ずしもプログラムにより各機能モジュールを構成するものに限られない。例えば制御装置100の各機能モジュールは、専用の論理回路又はこれを集積したASIC(Application Specific Integrated Circuit)により構成されていてもよい。
【0043】
[基板処理手順]
続いて、基板処理方法の一例として、塗布・現像装置2において実行される基板処理手順を説明する。この基板処理手順は、ウェハWに被膜(メタル含有レジストの被膜)を形成することと、被膜が形成され、当該被膜に露光処理が施されたウェハWを加熱処理することと、加熱処理が施されたウェハWの被膜を現像処理することと、を含む。この基板処理手順は、ウェハWに形成された被膜内において、熱処理ユニットU8による加熱処理の際に反応する水分量のウェハWごとの差を縮小させることを更に含む。以下、加熱処理時における反応水分量のウェハWごとの差を縮小させるように実行される調整手順(以下、「反応水分量の調整手順」という。)の例を説明する。
【0044】
本実施形態では、反応水分量の調整手順には、露光装置3による露光処理前にウェハWごとの含有水分量を調整する手順と、露光装置3による露光処理後にウェハWごとの含有水分量を調整する手順とが含まれる。制御装置100は、露光処理前の含有水分量の調整の一例として、被膜が形成されたウェハWを基板収容ユニット20に搬入するように搬送装置A8を制御する。また、制御装置100は、処理モジュール12から搬出されてから基板収容ユニット20に搬入されるまでの時間のウェハWごとの差を縮小させるように搬送装置A8を制御する。換言すると、制御装置100は、処理モジュール12での成膜処理後から基板収容ユニット20までのウェハWごとの収容待機時間を調整することで、ウェハWごとの含有水分量を調整する。
【0045】
図6は、露光処理前の含有水分量の調整手順を示すフローチャートである。この調整手順において、制御装置100は、まずステップS11を実行する。ステップS11では、搬送基準時間設定部102が、動作指令保持部116に記憶されている搬送計画に基づいて搬送基準時間を設定する。例えば搬送基準時間設定部102は、複数のウェハWに対する処理モジュール12の成膜処理後、基板収容ユニット20への収容までにかかる計画上の時間のうち最も長い時間を搬送基準時間として設定してもよい。あるいは、搬送基準時間設定部102は、オペレータにより予め動作指令保持部116に入力された基準時間を、搬送基準時間として設定してもよい。搬送基準時間設定部102は、設定した搬送基準時間を搬送制御部106に出力する。
【0046】
次に、制御装置100は、ステップS12を実行する。ステップS12では、待機時間取得部104が、動作指令保持部116に記憶されている搬送計画に基づいて予定待機時間を取得する。例えば待機時間取得部104は、動作指令保持部116から、上記搬送計画に含まれる調整対象のウェハWに対する棚ユニットU11での予定待機時間を取得する。搬送計画は、棚ユニットU11への予定搬入時刻と棚ユニットU11からの予定搬出時刻を含む。待機時間取得部104は、棚ユニットU11への予定搬入時刻と棚ユニットU11からの予定搬出時刻との差から予定待機時間を算出する。待機時間取得部104は、取得した予定待機時間を搬送制御部106に出力する。
【0047】
次に、制御装置100は、ステップS13を実行する。ステップS13では、搬送制御部106が、搬送対象のウェハWに対する調整時間を算出する。例えば、搬送制御部106は、搬送基準時間設定部102により設定された搬送基準時間と、待機時間取得部104により取得された予定待機時間と、既知の搬送所用時間とに基づいて、ウェハWの調整時間を算出する。既知の搬送所用時間は、1つのウェハWが搬送装置A8により棚ユニットU11から搬出され基板収容ユニット20に搬入されるまでの時間であり、ウェハWごとに略一定である。搬送制御部106は、搬送基準時間から、予定待機時間及び搬送所用時間を減算することで、調整時間を算出する。
【0048】
次に、制御装置100は、ステップS14,S15を実行する。ステップS14では、例えば搬送制御部106が、予定待機時間よりも調整時間だけ長くウェハWが棚ユニットU11に留まるように、搬送装置A8を制御する。言い換えると、搬送制御部106は、調整時間だけ棚ユニットU11からの取出しを待機するように搬送装置A8を制御する。ステップS14において、調整時間が経過すると、制御装置100は、ステップS15を実行する。ステップS15では、搬送制御部106が棚ユニットU11からウェハWを搬出し、当該ウェハWを基板収容ユニット20に搬入するように搬送装置A8を制御する。これにより、棚ユニットU11での待機時間に応じてウェハWごとに調整時間が算出され、処理モジュール14の成膜処理後から基板収容ユニット20への収容までにかかる収容待機時間のウェハWごとの時間差が縮小する。
【0049】
なお、搬送制御部106は、棚ユニットU11での予定待機時間を変更することなく、搬送装置A8による搬送速度を調整時間に応じて調整してもよい。搬送制御部106は、調整時間だけ予定搬送所用時間が長くなるように搬送装置A8の搬送速度を変更することで、収容待機時間のウェハWごとの時間差を縮小させてもよい。動作指令保持部116には、収容待機時間が既に調整された動作指令が記憶されていてもよく、搬送制御部106は、当該動作指令に基づいた搬送を実行することでウェハWごとの収容待機時間を調整してもよい。
【0050】
次に、制御装置100は、ステップS16を実行する。ステップS16では、搬送制御部106が、動作指令保持部116からウェハWの搬出指令を受けたかどうかを判断する。搬送制御部106は、上記搬出指令を受けていない場合、ステップS12~S16を繰り返す。これにより、複数のウェハWそれぞれに対する収容待機時間が搬送基準時間に調整されつつ、複数のウェハWが基板収容ユニット20に収容される。
【0051】
ステップS16において、搬送制御部106が上記搬出指令を受けた場合、制御装置100は、ステップS17を実行する。ステップS17では、搬送制御部106が、搬出対象のウェハWを搬出するように搬送装置A8を制御する。例えば搬送制御部106は、基板収容ユニット20内に最も長く滞在しているウェハWを搬出対象として搬出する。搬送制御部106は、基板収容ユニット20から搬出されたウェハWを露光装置3に受け渡すように搬送装置A8を制御する。露光装置3に搬入されるタイミングは、露光装置3による露光処理のタイミングにより規定される場合がある。このため、露光装置3の露光処理のタイミングにより、ウェハWごとに露光装置3に投入されるまでの待ち時間が異なり、仮に基板収容ユニット20外の搬送空間でウェハWを待機させると含有水分量が変化し得る(増加し得る)。これに対して、基板収容ユニット20内では、滞在時間が異なっても待ち時間に起因する含有水分量のウェハWごとの差が生じ難いので、制御装置100は、基板収容ユニット20にてウェハWを待機させることで含有水分量の差を縮小させている。
【0052】
続いて、露光処理後の含有水分量の調整手順の一例を説明する。図7は、脱水ユニット30内の脱水時間の調整手順を示すフローチャートである。制御装置100は、露光処理後の少なくとも一部のウェハWを脱水ユニット30に搬入し、露光装置3内の滞在時間が短くなるにつれて、ウェハWの脱水ユニット30内の滞在時間が長くなるように設定されたタイミングで脱水ユニット30からウェハWを搬出するように搬送装置A8を制御する。
【0053】
図7に示されるように、まず制御装置100は、ステップS21を実行する。ステップS21では、滞在時間算出部108が、ウェハWが露光装置3に搬入された時刻(搬入時刻)を取得する。制御装置100は、当該ウェハWに対する露光装置3での露光処理が終了するまで待機した後、ステップS22を実行する。ステップS22では、滞在時間算出部108が、ウェハWが露光装置3から搬出された時刻(搬出時刻)を取得する。
【0054】
次に、制御装置100は、ステップS23を実行する。ステップS23では、滞在時間算出部108が、露光装置3から搬出されたウェハWの露光装置3内での滞在時間を算出する。例えば滞在時間算出部108は、ステップS22で取得された搬出時刻とステップS21で取得された搬入時刻との差分を、露光装置3内での滞在時間として算出する。滞在時間算出部108は、算出した滞在時間を、脱水時間算出部110に出力する。
【0055】
次に、制御装置100は、ステップS24を実行する。ステップS24では、制御装置100が、滞在時間算出部108により算出された滞在時間が、予め定められた基準時間よりも小さいかどうかを判断する。基準時間は、想定される最大の露光装置3での滞在時間であってもよく、想定される含有水分量のサチレート時間であってもよい。サチレート時間は、含有水分量の単位時間当たりの減少幅を所定の閾値まで低下させるために露光装置3内に滞在させるべき時間である。ステップS24において、滞在時間が基準時間以上であると判断された場合、制御装置100はステップS29を実行する。ステップS29の処理内容は後述する。
【0056】
ステップS24において、滞在時間が基準時間(例えばサチレート時間)よりも小さいと判断された場合、制御装置100は、ステップS25を実行する。ステップS25では、脱水時間算出部110が、滞在時間算出部108により算出された滞在時間に基づいて、脱水ユニット30内での脱水時間を算出する。ここでの脱水時間は、脱水ユニット30内にウェハWが滞在する時間を意味する。例えば脱水時間算出部110は、露光装置3での滞在時間に応じて、当該ウェハWに対する脱水ユニット30内での脱水時間を算出する。脱水時間算出部110は、露光装置3での滞在時間が長くなるにつれて、脱水時間が短くなるように脱水時間を算出する。換言すると、脱水時間算出部110は、露光装置3での滞在時間が短くなるにつれて、脱水時間が長くなるように脱水時間を算出する。脱水時間算出部110は、上記基準時間と滞在時間との差分を脱水時間として算出してもよく、脱水時間算出部110は、当該差分に所定の補正処理を施して得られた値を脱水時間として算出してもよい。脱水時間算出部110は、予めストレージ123に記憶され、露光装置3での滞在時間と上記脱水時間とを対応付けたテーブルを参照することで、脱水ユニット30での脱水時間を算出してもよい。脱水時間算出部110は、算出した脱水時間を搬送制御部106に出力する。
【0057】
次に、制御装置100は、ステップS26を実行する。ステップS26では、搬送制御部106が、調整対象のウェハWを脱水ユニット30に搬入する。例えば搬送制御部106は、露光装置3から搬出された調整対象のウェハWを脱水ユニット30内に搬入するように搬送装置A8を制御する。
【0058】
次に、制御装置100は、ステップS27を実行する。ステップS27では、制御装置100が、調整対象のウェハWに対して算出(設定)された脱水時間が経過するのを待機する。制御装置100は、脱水時間が経過すると、ステップS28を実行する。ステップS28では、例えば搬送制御部106が、算出された脱水時間だけ脱水ユニット30内に滞在したウェハWを脱水ユニット30から搬出するように搬送装置A8を制御する。
【0059】
次に、制御装置100は、ステップS29を実行する。ステップS29では、搬送制御部106が、搬送対象のウェハWを熱処理ユニットU8まで搬送するように搬送装置A8及び搬送装置A3を制御する。ステップS22において、露光装置3での滞在時間が基準時間以上であると判断された場合、搬送制御部106は、露光装置3から熱処理ユニットU8に向けて脱水ユニット30を介さずに、当該ウェハWを搬送するように搬送装置A3,A8を制御する。
【0060】
以上により、1枚のウェハWに対する露光処理後の反応水分量(含有水分量)の調整手段が終了する。制御装置100は、ウェハWごとにステップS21~S29を実行する。なお、制御装置100は、ステップS24の判断処理を実行することなく、調整対象のウェハW全てを脱水ユニット30内に搬入し、全てのウェハWそれぞれの脱水時間の調整を実行してもよい。上記脱水時間の調整を経て熱処理ユニットU8にウェハWが搬入された後、熱処理ユニット制御部114は、動作指令保持部116に保持され、予め設定された加熱時間にて、ウェハWの加熱処理が行われるように熱処理ユニットU8を制御してもよい。
【0061】
[実施形態の効果]
以上説明した本実施形態に係る塗布・現像装置2は、ウェハWに被膜を形成する塗布ユニットU3及び熱処理ユニットU4と、被膜が形成され、当該被膜に露光処理が施されたウェハWを加熱処理する熱処理ユニットU8と、加熱処理が施されたウェハWの被膜を現像処理する現像ユニットU7と、ウェハWに形成された被膜内において、熱処理ユニットU8での加熱処理の際に反応する水分量のウェハWごとの差を縮小させる制御装置100と、を備える。
【0062】
この塗布・現像装置2では、ウェハWに形成された被膜内において、熱処理ユニットU8での加熱処理の際に反応する水分量(反応水分量)のウェハWごとの差が、制御装置100により縮小する。メタル含有レジストを用いて形成されたレジストパターンの寸法は、現像処理前の加熱処理時での被膜内において反応する水分量の影響を受けやすい。このため、反応水分量がウェハWごとに異なっていると、ウェハW間において形成されるレジストパターンの寸法にずれが生じやすい。これに対して、上記塗布・現像装置2では、露光処理が施されたウェハWを加熱処理する際の反応水分量の差が制御装置100により縮小するので、ウェハW間においてレジストパターンの寸法がずれ難い。その結果、塗布・現像装置2は、メタル含有レジストを用いたレジストパターンの寸法安定性の向上に有効である。
【0063】
制御装置100は、熱処理ユニットU8での加熱処理の開始時における被膜に含まれる含有水分量のウェハWごとの差を縮小させる。この場合、熱処理ユニットU8での加熱処理の開始時に被膜に含まれる水分量の差が縮小するので、上述の反応水分量の差が縮小する。その結果、メタル含有レジストを用いて形成されたレジストパターンの寸法安定性の向上が図られる。
【0064】
制御装置100は、熱処理ユニットU8での加熱処理の開始時における含有水分量のウェハWごとの差を縮小させるように、少なくとも露光処理前にウェハWごとの含有水分量を調整する。レジストパターンの寸法は、露光処理時の含有水分量にも影響を受ける。上記構成では、露光処理前に含有水分量の調整がされることで、露光処理時の含有水分量のウェハWごとの差も縮小される。その結果、レジストパターンの寸法安定性の向上がより確実に図られる。
【0065】
塗布・現像装置2は、ウェハWを搬送する搬送装置A3,A8と、搬送装置A3,A8を収容する搬送空間に比較して、含有水分量の変化を抑制するように構成された基板収容ユニット20と、を更に備える。制御装置100は、塗布ユニットU3及び熱処理ユニットU4による被膜の形成後後、露光処理の前のウェハWを基板収容ユニット20に搬入するように搬送装置A3,A8を制御する。熱処理ユニットU4による熱処理(被膜形成)後、露光装置3に搬送されるまでの時間がウェハWごとに異なる場合がある。上記構成では、被膜の含有水分量の変化が抑制される空間にてウェハWが待機することで、露光装置3に搬送されるまでの待機時間が長いウェハWの含有水分量の変化が抑制される。その結果、含有水分量のウェハWごとの差が縮小され、レジストパターンの寸法安定性を向上させることが可能となる。
【0066】
制御装置100は、熱処理ユニットU4から搬出されてから基板収容ユニット20に搬入されるまでの時間のウェハWごとの差を縮小させるように搬送装置A3,A8を制御する。熱処理ユニットU4による熱処理(被膜形成)後から基板収容ユニット20に搬入されるまでの搬送時に被膜の含有水分量が変化し得る。このため、ウェハW間において熱処理ユニットU4から基板収容ユニット20までの搬送時間に差が生じると、含有水分量のウェハWごとの差が生じてしまう。上記構成では、熱処理ユニットU4の熱処理後から基板収容ユニット20に搬入されるまでの搬送時間のウェハWごとの差が縮小されるので、搬送に起因するウェハWごと含有水分量の差が縮小する。その結果、レジストパターンの寸法安定性をより確実に向上させることが可能となる。
【0067】
制御装置100は、熱処理ユニットU8での加熱処理の開始時における含有水分量のウェハWごとの差を縮小させるように、少なくとも露光装置3による露光処理後にウェハWごとの含有水分量を調整する。露光装置3内においても、含有水分量が変化し得る。上記構成では、少なくとも露光処理後において、ウェハWごとに含有水分量の調整が行われるので、露光装置3に起因して生じる含有水分量のウェハWごとの差も含めて、含有水分量のウェハWごとの差が縮小する。その結果、メタル含有レジストを用いたレジストパターンの寸法安定性をより確実に向上させることが可能となる。
【0068】
制御装置100は、露光装置3内の滞在時間に応じて、露光処理後にウェハWごとの含有水分量を調整する。露光装置3において、ウェハWごとに滞在時間が異なると、含有水分量のウェハWごとの差が生じる。上記構成では、露光装置3内の滞在時間に応じて、ウェハWごとの含有水分量の差が調整されるので、露光装置3に滞在することに起因して生じる含有水分量のウェハWごとの差が縮小する。その結果、メタル含有レジストを用いたレジストパターンの寸法安定性を向上させることが可能となる。
【0069】
制御装置100は、露光処理後の少なくとも一部のウェハWを脱水ユニット30に搬入し、露光装置3内の滞在時間が短くなるにつれて、ウェハWの脱水ユニット30内の滞在時間(脱水時間)が長くなるように設定されたタイミングで脱水ユニット30からウェハWを搬出するように搬送装置A8を制御する。露光装置3での滞在時間が短いほど、当該ウェハWにおける含有水分量は減少しない。上記構成では、露光装置3での滞在時間が短いほど脱水ユニット30内での滞在時間が長くなるので、当該ウェハWにおける被膜の含有水分量はより減少する。これにより、含有水分量のウェハWごとの差が縮小されるので、メタル含有レジストを用いたレジストパターンの寸法安定性を向上させることが可能となる。
【0070】
以上、実施形態について説明したが、本開示は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0071】
(第1実施形態の変形例)
露光処理後における含有水分量の調整方法は、上記脱水ユニット30による方法に限られない。例えば、制御装置100は、脱水ユニット30に代えて加湿ユニット40(加湿部)を用いて、露光処理後にウェハWの含有水分量の調整を行ってもよい。
【0072】
例えば加湿ユニット40(構成例は不図示)は、筐体と、支持板と、供給路とを有する。筐体は、内部空間を有し支持板を収容する。支持板は、ウェハWを支持する。供給路は、筐体の一端に接続され、加湿された空気(加湿空気)を筐体内に供給する。加湿ユニット40内の加湿環境(例えば、単位時間当たりの含有水分量の増加幅)は、制御装置100により加湿空気の供給量が調整されることで、略一定に保たれてもよい。
【0073】
制御装置100は、露光処理後の少なくとも一部のウェハW(全てのウェハWを含む)を加湿ユニット40に搬入し、露光装置3内の滞在時間が長くなるにつれて、ウェハWの加湿ユニット40内の滞在時間が長くなるように設定されたタイミングで加湿ユニット40からウェハWを搬出するように搬送装置A8を制御する。なお、加湿ユニット40による加湿時間(加湿ユニット40内での滞在時間)の調整手順を示すフローチャートは省略されている。
【0074】
例えば加湿時間の調整では、まず滞在時間算出部108が、ステップS21と同様に露光装置3での滞在時間を算出する。次に、制御装置100は、露光装置3での滞在時間に応じて加湿ユニット40での加湿時間を算出する。制御装置100は、露光装置3での滞在時間が長くなるにつれて、加湿ユニット40での加湿時間が長くなるように加湿時間を算出する。言い換えると、制御装置100は、露光装置3での滞在時間が短くなるにつれて、加湿ユニット40での加湿時間が短くなるように加湿時間を算出する。そして、搬送制御部106が、ウェハWを加湿ユニット40に搬入するように搬送装置A8を制御する。
【0075】
加湿ユニット40にウェハWが搬入され、算出された加湿時間が経過した後、搬送制御部106は、当該ウェハWを加湿ユニット40から搬出するように搬送装置A8を制御する。そして、搬送制御部106は、当該ウェハWを熱処理ユニットU8に搬入するように搬送装置A3,A8を制御する。その後、熱処理ユニット制御部114は、動作指令保持部116の動作指令に基づいて、当該ウェハWに対して加熱処理が施されるように熱処理ユニットU8を制御する。制御装置100は、このような加湿時間の調整をウェハWごとに行うことで、露光処理後においてウェハWごとに含有水分量を調整する。
【0076】
この変形例では、制御装置100が、露光処理後の少なくとも一部のウェハWを加湿ユニット40に搬入し、露光装置3内の滞在時間が長くなるにつれて、ウェハWの加湿ユニット40の滞在時間(加湿時間)が長くなるように設定されたタイミングで加湿ユニット40からウェハWを搬出するように搬送装置A8を制御する。露光装置3での滞在時間が長いほど、当該ウェハにおける含有水分量が減少する。上記構成では、露光処理用の装置での滞在時間が長いほど加湿ユニット内での滞在時間が長くなるので、当該ウェハにおける含有水分量はより増加する。これにより、含有水分量のウェハごとの差が縮小されるので、メタル含有レジストを用いたレジストパターンの寸法安定性を向上させることが可能となる。
【0077】
なお、制御装置100は、露光処理後において、脱水ユニット30及び加湿ユニット40の双方を用いて、含有水分量の調整を行ってもよい。
【0078】
制御装置100は、脱水ユニット30及び加湿ユニット40のいずれか一方を用いて含有水分量の調整を行い、基板収容ユニット20及び搬送時間の調整による含有水分量の調整を行わなくてもよい。この場合、塗布・現像装置2は、基板収容ユニット20を備えていなくてもよい。
【0079】
制御装置100は、基板収容ユニット20及び搬送時間(収容待機時間)の調整による含有水分量の調整を行い、脱水ユニット30及び加湿ユニット40を用いた含有水分量の調整を行わなくてもよい。この場合、塗布・現像装置2は、脱水ユニット30及び加湿ユニット40を備えていなくてもよい。制御装置100は、搬送時間の調整による含有水分量の調整を行わずに、基板収容ユニット20にウェハWを収容することで露光処理前での含有水分量の調整を行ってもよい。例えば、露光装置3による処理タイミングに応じて生じるウェハWごとの待機時間の差に比較して、塗布・現像装置2内で搬送装置A8の動作に起因して生じる待機時間の差が微差である場合がある。この場合、搬送時間の調整を省略しても含有水分量が十分に調整できる可能性がある。このような場合には、搬送時間の調整を省略することにより、制御装置100の処理負荷が軽減される。
【0080】
[第2実施形態]
続いて、図8を参照して、第2実施形態に係る基板処理システム1について説明する。第2実施形態に係る基板処理システム1(塗布・現像装置2)では、制御装置100が脱水時間算出部110に代えて加熱時間算出部112を備えること、及び制御装置100による反応水分量の調整手順が第1実施形態と相違する。
【0081】
制御装置100は、露光装置3での滞在時間に応じて熱処理ユニットU8での加熱処理時間を調整する。具体的には、制御装置100は、露光装置3内の滞在時間が長くなるにつれて、ウェハWの加熱処理時間が長くなるように熱処理ユニットU8を制御してもよい。制御装置100の加熱時間算出部112は、滞在時間算出部108により算出された露光装置3内での滞在時間に応じて、熱処理ユニットU8による加熱処理での各ウェハWに対する加熱時間を算出する。加熱時間算出部112は、算出した加熱時間を熱処理ユニット制御部114に出力する。熱処理ユニット制御部114は、加熱時間算出部112により算出された加熱時間にて現像前の加熱処理を行うように熱処理ユニットU8を制御してもよい。
【0082】
図8は、熱処理ユニットU8での加熱処理時間の調整手順を示すフローチャートである。図8に示されるように、この加熱処理時間の調整手順において、まず制御装置100は、ステップS31を実行する。ステップS31では、滞在時間算出部108が、露光装置3への搬入時刻、及び露光装置3からの搬出時刻を取得し、ステップS23と同様に露光装置3での滞在時間を算出する。滞在時間算出部108は、算出した露光装置3での滞在時間を加熱時間算出部112に出力する。
【0083】
次に、制御装置100は、ステップS32を実行する。ステップS32では、加熱時間算出部112が、滞在時間算出部108により算出された滞在時間に基づいて、熱処理ユニットU8での加熱時間を算出する。ここでの加熱時間は、熱処理ユニットU8において行われるウェハWに対する現像前の加熱処理の時間を意味する。例えば加熱時間算出部112は、露光装置3での滞在時間に応じて、当該ウェハWに対する熱処理ユニットU8での加熱時間を算出する。加熱時間算出部112は、露光装置3での滞在時間が長くなるにつれて加熱時間が長くなるように、加熱時間を算出する。言い換えると、加熱時間算出部112は、露光装置3での滞在時間が短くなるにつれて加熱時間が短くなるように、加熱時間を算出する。加熱時間算出部112は、予めストレージ123に記憶され、露光装置3での滞在時間と上記加熱時間とを対応付けたテーブルを参照することで、熱処理ユニットU8での加熱時間を算出してもよい。加熱時間算出部112は、算出した加熱時間を熱処理ユニット制御部114に出力する。
【0084】
次に、制御装置100は、ステップS33を実行する。ステップS33では、搬送制御部106が、ウェハWを熱処理ユニットU8に搬入するように搬送装置A3,A8を制御する。搬送装置A3によりウェハWが熱処理ユニットU8に搬入された後、熱処理ユニット制御部114は、当該ウェハWの加熱処理を開始するように熱処理ユニットU8を制御する。
【0085】
次に、制御装置100は、ステップS34を実行する。ステップS34では、熱処理ユニット制御部114が、加熱時間算出部112により算出された加熱時間が経過するまで待機する。上記加熱時間が経過した後、制御装置100は、ステップS35を実行する。ステップS35では、例えば搬送制御部106が、加熱時間算出部112により算出(設定)された加熱時間だけ加熱処理が施されたウェハWを熱処理ユニットU8から搬出するように搬送装置A3を制御する。なお、上記加熱時間だけ加熱処理が施されたウェハWが熱処理ユニットU8内の冷却板にて冷却された後に、搬送制御部106は、当該ウェハWを熱処理ユニットU8から搬出するように搬送装置A8を制御してもよい。
【0086】
以上により1枚のウェハWに対する加熱処理時間の調整手順が終了する。制御装置100は、ウェハWごとにステップS31~S35の処理を繰り返す。なお、ステップS35の処理後、搬送制御部106は、熱処理ユニットU8から搬出されたウェハWを現像ユニットU7に搬入するように搬送装置A3を制御する。その後、制御装置100は、当該ウェハWに対して現像処理を施すように現像ユニットU7を制御する。そして、制御装置100は、現像処理後、熱処理ユニットU8において当該ウェハWに対して現像処理後の加熱処理を施すように、搬送装置A3及び熱処理ユニットU8を制御してもよい。
【0087】
第2実施形態に係る基板処理システム1の塗布・現像装置2では、制御装置100が、露光装置3内の滞在時間が長くなるにつれて、ウェハWの加熱処理の時間が長くなるように熱処理ユニットU8を制御する。この場合、露光装置3での滞在時間が長いほど、含有水分量が少なくなり、熱処理ユニットU8での加熱処理時間が長くなる。また、露光装置3での滞在時間が短いほど、含有水分量が多くなり、熱処理ユニットU8での加熱処理時間が短くなる。したがって、露光装置3での滞在時間に差があったとしても、熱処理ユニットU8での加熱処理の際の反応水分量のウェハWごとの差は縮小する。その結果、メタル含有レジストを用いたレジストパターンの寸法安定性を向上させることが可能となる。
【0088】
制御装置100は、熱処理ユニットU8での加熱時間の調整に加えて、第1実施形態と同様に、露光処理前において基板収容ユニット20及び搬送時間の調整による含有水分量の調整を行ってもよい。制御装置100は、熱処理ユニットU8での加熱時間の調整を行い、露光処理前において基板収容ユニット20及び搬送時間の調整による含有水分量の調整を行わなくてもよい。この場合、仮に反応水分量の調整を行うための装置(調湿機構7)を設けないとしても反応水分量の調整が行われるので、寸法安定性と塗布・現像装置2の簡素化の両立を図り得る。なお、制御装置100は、第2実施形態における加熱時間の調整と第1実施形態における脱水ユニット30又は加湿ユニット40による調整とを組み合わせてもよい。
【0089】
[第3実施形態]
続いて、図9を参照して、第3実施形態に係る基板処理システム1について説明する。第3実施形態に係る基板処理システム1(塗布・現像装置2)では、制御装置100による露光処理前の含有水分量の調整手順が第1実施形態と相違する。制御装置100は、脱水ユニット30によって露光処理前に含有水分量の調整を行う。この場合、制御装置100は、熱処理ユニットU4の熱処理(被膜形成)後、露光装置3による露光処理の前のウェハWを脱水ユニット30に搬入するように搬送装置A8を制御する。また、制御装置100は、脱水ユニット30からの搬出時における含有水分量のウェハWごとの差を、脱水ユニット30への搬入時に比較して縮小させるように設定されたタイミングで脱水ユニット30からウェハWを搬出するように搬送装置A8を制御する。
【0090】
図9は、露光処理前での脱水ユニット30による調整手順の一例として、脱水ユニット30からの搬出タイミング(脱水ユニット30内で滞在時間)の調整手順を示している。この調整手順において、まず制御装置100は、ステップS41を実行する。ステップS41では、例えば搬送制御部106が、動作指令保持部116の搬送計画に基づいて、複数のウェハWを順に棚ユニットU11から脱水ユニット30に搬入するように搬送装置A8を制御する。
【0091】
次に、制御装置100は、ステップS42を実行する。ステップS42では、搬送制御部106が、動作指令保持部116からウェハWの搬出指令を受けたかどうかを判断する。搬送制御部106は、上記搬出指令を受けていない場合、ステップS41,S42を繰り返す。これにより、複数のウェハWが脱水ユニット30に搬入される。
【0092】
ステップS42において、搬送制御部106が上記搬出指令を受けた場合、制御装置100は、ステップS43を実行する。ステップS43では、例えば制御装置100が、現時点で脱水ユニット30に収容されている複数のウェハWそれぞれの滞在時間を算出する。そして、制御装置100は、ステップS44を実行する。ステップS44では、搬送制御部106が、搬出対象のウェハWを搬出するように搬送装置A8を制御する。具体的には、搬送制御部106は、脱水ユニット30内の複数のウェハWのうち最も滞在時間が長いウェハWを搬出対象として、脱水ユニット30から搬出するように搬送装置A8を制御する。脱水ユニット30から搬出された後、搬送制御部106は、当該ウェハWを露光装置3に搬入するように搬送装置A8を制御する。
【0093】
制御装置100は、以上のステップS41~S44を繰り返す。この処理により、搬出指令を受けるたびに、最も滞在時間が長いウェハWが搬出されるので、脱水ユニット30を介して露光装置3に搬入されるウェハWそれぞれにおける含有水分量は、サチレートレベル(単位時間当たりの減少幅が所定の閾値まで低下したレベル)に達する。このため、脱水ユニット30からの搬出時において含有水分量のウェハWごとの差は、脱水ユニット30からの搬出時に比べて縮小される。なお、制御装置100は、脱水ユニット30に収容されているウェハWが少なく、いずれのウェハWもサチレートレベルに達していない場合に、脱水ユニット30から搬出することを待機してもよい。
【0094】
なお、制御装置100は、上述のステップS44の処理に代えて、熱処理ユニットU4から脱水ユニット30までの搬送時間に応じて、脱水ユニット30での滞在時間(脱水時間)を調整するように搬送装置A8を制御してもよい。例えば制御装置100は、脱水ユニット30までの搬送時間が長いほど、脱水ユニット30での滞在時間が長くなるようなタイミングで当該ウェハWを脱水ユニット30から搬出するように搬送装置A8を制御してもよい。なお、制御装置100は、脱水ユニット30に代えて加湿ユニット40により、上述と同様の手順により反応水分量の調整を行ってもよい。
【0095】
第3実施形態に係る基板処理システム1の塗布・現像装置2では、制御装置100が、熱処理ユニットU4の熱処理(成膜処理)後、露光処理の前のウェハWを脱水ユニット30に搬入するように搬送装置A8を制御する。ウェハWが脱水ユニット30に搬入され当該ウェハWにおける含有水分量が減少していくと、含有水分量の減少は、あるレベルで鈍化していく状態(鈍化状態)に達する。このため、脱水ユニット30にウェハWを搬入した後に露光装置3にウェハWを引き渡すことにより、複数のウェハW間において含有水分量の最大値と最小値との差が縮小する。これにより、ウェハWごとの含有水分量の差が縮小するので、レジストパターンの寸法安定性を向上させることが可能となる。
【0096】
制御装置100は、脱水ユニット30からの搬出時における含有水分量のウェハWごとの差を、脱水ユニット30への搬入時に比較して縮小させるように設定されたタイミングで脱水ユニット30からウェハWを搬出するように搬送装置A8を制御する。例えば、脱水ユニット30内において全てのウェハWにおける含有水分量がサチレートレベルに達するタイミングで脱水ユニット30からウェハWが搬出される。このため、含有水分量の減少が鈍化状態となったウェハWが露光装置3内に入っても、滞在時間の長短にかかわらず、露光装置3内において含有水分量は僅かしか減少しない。これにより、露光装置3内の滞在時間に起因して生じるウェハW間での含有水分量の差が抑えられ、ウェハWごとの含有水分量の差が縮小する。あるいは、脱水ユニット30までの搬送時間に応じて脱水ユニット30の滞在時間を変化させる(例えば搬送時間が長いほど滞在時間を長く設定する)ことで、ウェハWごとの含有水分量の差が縮小する。これらの結果、レジストパターンの寸法安定性をより確実に向上させることが可能となる。
【0097】
第3実施形態において、制御装置100は、複数のウェハWそれぞれに対して、露光処理前に脱水ユニット30において含有水分量がサチレートレベルに達するように調整を行い、露光処理後において反応水分量(含有水分量)の調整を行わなくてもよい。基板処理システム1において、塗布・現像装置2でのスループットは、露光装置3でのスループットよりも大きい場合がある。この場合、露光装置3により基板処理システム1全体のスループットが規定されるので、露光装置3の露光処理後のウェハWの処理は、滞りなく(ウェハWの生産に必要な最低限の工程のみ)実行したほうが生産効率の観点から有効な場合がある。このため、含有水分量の調整と生産効率との両立を図りたい場合に、塗布・現像装置2は、制御装置100により、露光処理前において含有水分量の上記調整が行われ、露光処理後に調整が行われないように構成されてもよい。
【0098】
制御装置100は、第1実施形態における脱水ユニット30又は加湿ユニット40による調整及び第2実施形態における加熱時間の調整の少なくとも一方と、第3実施形態における脱水ユニット30による調整とを組み合わせてもよい。例えば、制御装置100は、露光処理前の脱水ユニット30による含有水分量の調整に加えて、露光処理後に脱水ユニット30により含有水分量を調整してもよい。この場合、塗布・現像装置2は、異なる2つの脱水ユニット30を備えていてもよい。例えば、制御装置100は、露光処理前の脱水ユニット30による含有水分量の調整に加えて、露光処理後に熱処理ユニットU8の加熱時間の調整により反応水分量を調整してもよい。なお、基板処理システム1(基板処理装置)は、露光装置3内のウェハWごとの滞在時間を調整することにより、反応水分量(含有水分量)の調整を行ってもよい。
【0099】
処理対象の基板は半導体ウェハに限られず、例えばガラス基板、マスク基板、FPD(Flat Panel Display)などであってもよい。
【符号の説明】
【0100】
1…基板処理システム、2…塗布・現像装置、3…露光装置、7…調湿機構、20…基板収容ユニット、30…脱水ユニット、40…加湿ユニット、100…制御装置、A3,A8…搬送装置、U3…塗布ユニット、U7…現像ユニット、U8…熱処理ユニット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9