(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】銅粉の製造方法、該製造方法により得られた銅粉、該銅粉を含有する樹脂組成物、該樹脂組成物の硬化物を形成する方法および該硬化物
(51)【国際特許分類】
B22F 1/00 20220101AFI20221021BHJP
B22F 1/102 20220101ALI20221021BHJP
B22F 7/04 20060101ALI20221021BHJP
H01B 1/00 20060101ALI20221021BHJP
H01B 1/22 20060101ALI20221021BHJP
H01B 5/00 20060101ALI20221021BHJP
H01B 5/14 20060101ALI20221021BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20221021BHJP
【FI】
B22F1/00 L
B22F1/102
B22F7/04 D
H01B1/00 F
H01B1/22 A
H01B1/22 B
H01B5/00 F
H01B5/14 Z
H01B13/00 501Z
H01B13/00 503Z
(21)【出願番号】P 2019561572
(86)(22)【出願日】2018-12-19
(86)【国際出願番号】 JP2018046782
(87)【国際公開番号】W WO2019131378
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-12-03
(31)【優先権主張番号】P 2017253344
(32)【優先日】2017-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【氏名又は名称】大宅 一宏
(72)【発明者】
【氏名】縫田 祐介
(72)【発明者】
【氏名】細川 仁
(72)【発明者】
【氏名】森田 博
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-018880(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00,1/102,7/04
B82Y 30/00,40/00
H01B 1/00,1/22,5/00,5/14,13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅粒子を水中で、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素ナトリウムおよび水素化ホウ素リチウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の水素化ホウ素化合物を用いて還元処理する第1の工程;
第1の工程で得られた前記銅粒子を、水、メタノールおよびエタノールからなる群から選ばれる少なくとも1種で処理する第2の工程;
第2の工程で得られた前記銅粒子を、エーテル化合物およびアルコール化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の溶剤で処理する第3の工程;および
第3の工程で得られた前記銅粒子を、一般式(1)で表される化合物に接触させる第4の工程;を含む銅粉の製造方法。
【化1】
(式中、X
1は炭素原子数14~20のアルキル基またはアルケニル基を表し、X
2は炭素原子数1~5のアルキル基を表し、Mはチタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子を表し、aは1~3の整数を表す。)
【請求項2】
前記第4の工程において、前記第3の工程における前記溶剤中に前記銅粒子を浸漬させた状態で、一般式(1)で表される前記化合物を添加し、前記銅粒子を前記化合物に接触させる
請求項1に記載の銅粉の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の製造方法により得られた銅粉。
【請求項4】
(A)請求項3に記載の銅粉;および
(B)フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂およびアクリル樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含有する樹脂組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の樹脂組成物を基体上に塗布する塗布工程;および
樹脂組成物が塗布された基体を大気中、50℃~200℃、1分~300分の条件下で加熱して硬化させる硬化工程;を含む硬化物を形成する方法。
【請求項6】
請求項4に記載の樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅粉の製造方法および、該製造方法により得られた銅粉、該銅粉と特定の樹脂を含有する樹脂組成物、該樹脂組成物の硬化物を形成する方法および該樹脂組成物の硬化物に関する。より具体的には、本発明の銅粉は、例えば、電気回路の形成や、セラミックコンデンサの外部電極の形成などに用いられる導電性ペースト用導電フィラーなど、各種用途の導電材として使用可能な銅粉である。
【背景技術】
【0002】
銅粉は各種用途の導電材、例えば電子部品等の電極や回路を形成するための材料として用いられており、銅粉の製造方法について様々な提案がなされている。
例えば、特許文献1には、水酸化銅スラリーにヒドラジンおよび/またはヒドラジン化合物を添加して得られた酸化銅スラリーを、ヒドラジンおよび/またはヒドラジン化合物によって銅粉末に還元析出させ、この銅粉末をアルコールで処理し、さらに脂肪酸含有溶液で処理することによる銅粉末の製造方法が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、二価の銅イオンを有する銅塩水溶液と第一還元剤である還元性の糖類との混合物に水酸化アルカリを添加して亜酸化銅粒子を含む懸濁液を得る第1工程、前記亜酸化銅粒子を含む懸濁液に第二還元剤を添加して亜酸化銅粒子と銅超微粒子を含む懸濁液を得る第2-1工程、前記亜酸化銅粒子と銅超微粒子を含む懸濁液にヒドラジン化合物またはアスコルビン酸から選ばれる1種以上の還元剤を添加して銅微粒子を生成させる第2-2工程を含む銅粉末の製造方法が開示されている。また、特許文献2の段落[0058]には、第2-1工程で用いる第二還元剤として、水素化ホウ素ナトリウムを用いることが好ましいことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭62-099406号公報
【文献】国際公開第2014/104032号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1および2に開示されているような従来から知られている銅粉の製造方法を用いて製造された銅粉を、フェノール樹脂などの樹脂と組み合わせて樹脂組成物とし、これを用いて塗膜を形成し、硬化させた場合、塗膜の体積抵抗値が高く、導電性が悪くなってしまうことが問題となっていた。
【0006】
従って、本発明の目的は、銅粉とフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂およびアクリル樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含有し、塗膜の体積抵抗値の低い樹脂硬化物を製造することができる樹脂組成物および銅粉の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題を克服するために鋭意検討を重ねた結果、特定の製造方法を用いて製造した銅粉を用いることで上記課題を解決しうることを知見し、本発明に到達したものである。
すなわち、本発明は、銅粒子を水中で水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素ナトリウムおよび水素化ホウ素リチウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の水素化ホウ素化合物を用いて還元処理する第1の工程;第1の工程で得られた前記銅粒子を、水、メタノールおよびエタノールからなる群から選ばれる少なくとも1種で処理する第2の工程;第2の工程で得られた前記銅粒子を、エーテル化合物およびアルコール化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の溶剤で処理する第3の工程;第3の工程で得られた前記銅粒子を、下記一般式(1)で表される化合物に接触させる第4の工程;を含む銅粉の製造方法である。
【0008】
【0009】
(式中、X1は炭素原子数14~20のアルキル基またはアルケニル基を表し、X2は炭素原子数1~5のアルキル基を表し、Mはチタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子を表し、aは1~3の整数を表す。)
【0010】
また、本発明は、(A)本発明の銅粉の製造方法によって得られた銅粉[以下、(A)成分と略す場合がある]および(B)フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂およびアクリル樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂[以下、(B)成分と略す場合がある]を含有する樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0011】
本発明により得られた銅粉と、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂およびアクリル樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含有する樹脂組成物により形成された塗膜は、硬化後の体積抵抗値が低く、導電性に優れている。そして、本発明では、上記樹脂組成物を製造するために用いられる銅粉を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明をさらに具体的に説明する。
本発明の銅粉の製造方法は、銅粒子を水中で水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素ナトリウムおよび水素化ホウ素リチウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の水素化ホウ素化合物を用いて還元処理する第1の工程;第1の工程で得られた前記銅粒子を、水、メタノールおよびエタノールからなる群から選ばれる少なくとも1種で処理する第2の工程;第2の工程で得られた銅粒子を、エーテル化合物およびアルコール化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の溶剤で処理する第3の工程;第3の工程で得られた銅粒子を、上記一般式(1)で表される化合物に接触させる第4の工程;を含む。なお、銅粉と銅粒子は明確な違いがないため、本明細書においては、各工程中は銅粒子と表記し、最終生成物を銅粉と表記する。また、本発明の全工程において、水とは、水道水、イオン交換水、純水、超純水、RO水(逆浸透水)等を指すものとする。これらの中でも、純水または超純水を用いることが好ましい。
【0013】
ここで、本発明の製造方法において、上記第1の工程は、銅粒子を水中で水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素ナトリウムおよび水素化ホウ素リチウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を用いて還元処理する工程である。
【0014】
第1の工程で用いられる銅粒子は、特に限定されるものではなく、周知一般の銅粒子を用いることができる。また、銅粒子の粒径は特に限定されるものではない。例えば、後述するフェノール樹脂などの樹脂との組成物にフィラーとして用いる場合には、平均粒径が数nm~数百μm程度の銅粒子を用いることができ、平均粒径が数nm~数十μmの銅粒子を用いることが好ましい。なお、銅粒子の平均粒径は、レーザー光回折法による粒子径分布測定装置を用いて、体積基準の粒度分布における累積50%となる粒子径(D50)として求めることができる。
【0015】
また、第1の工程で用いられる銅粒子が空気酸化などにより酸化されている場合には、無機酸や有機酸を溶解させた水溶液を用いて、あらかじめ銅粒子を処理しておくことが望ましい。なお、水溶液としては、例えば硫酸を溶解させた水溶液を用いることが好ましい。
【0016】
第1の工程で行われる、銅粒子の水中での水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素ナトリウムおよび水素化ホウ素リチウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の水素化ホウ素化合物を用いた還元処理方法は、周知一般の方法を用いることができる。例えば、銅粒子をあらかじめ水に添加し、10質量%~40質量%濃度の銅スラリーを調製し、この銅スラリーに、上記水素化ホウ素化合物から選ばれる少なくとも1種を添加することが好ましい。
【0017】
また、還元処理中の反応温度は、10℃~80℃が好ましく、15℃~70℃がより好ましく、20℃~50℃が特に好ましい。還元処理時間は、10分~300分が好ましく、30分~90分であることが特に好ましい。また、還元処理に用いる水素化ホウ素化合物の水溶液中の濃度は、銅粒子の量に対して0.1質量%~5質量%の範囲であることが好ましく、0.5質量%~2質量%であることが特に好ましい。上記水素化ホウ素化合物のなかでも、水素化ホウ素ナトリウムを用いて還元処理した銅粒子は、後述するフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂およびアクリル樹脂との樹脂組成物から形成される塗膜の硬化後の体積抵抗値が低いことから好ましい。
【0018】
本発明の第2の工程は、上記第1の工程で得られた銅粒子を、水、メタノールおよびエタノールからなる群から選ばれる少なくとも1種で処理(例えば、洗浄)する工程である。この処理に用いる処理液としては、少なくとも水を使用することが好ましく、水のみを使用することが特に好ましい。第2の工程で行われる処理方法は、特に限定されるものではなく、周知一般の方法で処理することができる。例えば、処理液として水を用いる場合には、第1の工程で得られた銅粒子を5℃~90℃の水や、水蒸気と接触させることによって行うことができる。特に、温度10℃~50℃の水と接触させることが望ましく、接触方法としては、銅粒子を水中に浸漬する方法や、銅粒子に水を噴霧する方法を採用することが好ましい。
【0019】
本発明の第3の工程は、第2の工程で得られた銅粒子を、エーテル化合物およびアルコール化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の溶剤で処理する工程である。第3の工程で用いられるエーテル化合物としては、例えば、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、モルホリン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジブチルエーテル、ジエチルエーテル、ジオキサン等が挙げられる。また、第3の工程で用いられるアルコール化合物としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、イソブタノール、2-ブタノール、第3ブタノール、ペンタノール、イソペンタノール、2-ペンタノール、ネオペンタノール、第3ペンタノール、ヘキサノール、2-ヘキサノール、ヘプタノール、2-ヘプタノール、オクタノール、2―エチルヘキサノール、2-オクタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロヘプタノール、メチルシクロペンタノール、メチルシクロヘキサノール、メチルシクロヘプタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングルコールモノエチルエーテル、ジエチレングルコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、2-(N,N-ジメチルアミノ)エタノール、3(N,N-ジメチルアミノ)プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、イソプレングリコール(3-メチル-1,3-ブタンジオール)、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,2-オクタンジオール、オクタンジオール(2-エチル-1,3-ヘキサンジオール)、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。これらのなかでも、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノールを用いた場合は、本発明の製造方法により得られた銅粉と、後述するフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂およびアクリル樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含有する樹脂組成物により形成された、塗膜の硬化後の体積抵抗値が低く、導電性に優れた硬化物を製造することができることから好ましく、なかでも、2-プロパノールを用いることが特に好ましい。ただし、第2工程で用いた処理液とは異なる溶剤を用いる。
【0020】
第3の工程で行われる処理(例えば、洗浄)方法は、特に限定されるものではなく、周知一般の方法で処理することができる。例えば、第2の工程で得られた銅粒子を5℃~90℃のエーテル化合物およびアルコール化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の溶剤や、これらの蒸気と接触させ、銅粒子中に存在する水分を除去できればよい。なかでも、10℃~50℃のエーテル化合物およびアルコール化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の溶剤と接触させることが望ましい。接触方法としては、銅粒子をこれらの溶剤中に浸漬する方法や、銅粒子にこれらの溶剤を噴霧する方法等を採用することが好ましい。
【0021】
本発明の第4の工程は、第3の工程で得られた銅粒子を、上記一般式(1)で表される化合物に接触させる工程である。上記一般式(1)において、X1は炭素原子数14~20のアルキル基またはアルケニル基を表し、X2は炭素原子数1~5のアルキル基を表し、Mはチタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子を表す。
X1で表される炭素原子数14~20のアルキル基としては、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、2-ヘプチルウンデシル基、16-メチルヘプタデシル基、2-(4,4-ジメチル-2-ペンチル)-5,7,7-トリメチルオクチル基などを挙げることができる。また、炭素原子数14~20のアルケニル基としては、9-オクタデセニル基、9-ヘキサデセニル基、9,11,13-オクタデカトリエニル基、8-ヘプタデセニル基などを挙げることができる。一般式(1)においてX1で表される炭素原子数14~20のアルキル基またはアルケニル基の部分を与える有機酸(X1COOH)としては、例えば、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、パルミトレイン酸、エレオステアリン酸などを挙げることができる。なかでも、この有機酸の炭素原子数が18の場合、すなわち、X1が炭素原子数17のアルキル基またはアルケニル基である場合は、得られた銅粉を含有する樹脂組成物により形成された塗膜の硬化後の体積抵抗値が低く、導電性に優れた硬化物を製造することができることから特に好ましい。
【0022】
X2で表される炭素原子数1~5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、第2ブチル基、第3ブチル基、イソブチル基などを挙げることができる。
一般式(1)においてX2で表される炭素原子数1~5のアルキル基の部分を与えるアルコール化合物(X2OH)としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、2-プロパノール、n-ブタノール、第2ブタノール、第3ブタノール、イソブチルアルコールなどを挙げることができる。なかでも、X2が炭素原子数3または4のアルキル基である場合は、得られた銅粉を含有する樹脂組成物により形成された塗膜の硬化後の体積抵抗値が低く、導電性に優れた硬化物を製造することができることから特に好ましい。
【0023】
上記一般式(1)で表される化合物の好ましい具体例としては、例えば、下記化合物No.1~No.108が挙げられる。「iPr」はイソプロピル基を表し、「nBu」はn-ブチル基を表す。
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
上記一般式(1)で表される化合物は、周知一般の製造方法で製造することができる。例えば、テトラキスアルコキシドチタン、テトラキスアルコキシドジルコニウム、テトラキスアルコキシドハフニウムなどに、対応する構造のカルボン酸を任意のモル比で反応させることで得ることができる。市販品として、例えば、S-151(上記化合物No.91)、S-152、(上記化合物No.92)、ZR-152(上記化合物No.106)(日本曹達社製)などを挙げることができる。
【0043】
第3の工程で得られた銅粒子を、上記一般式(1)で表される化合物に接触させる方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、第3の工程で得られた銅粒子と上記一般式(1)で表される化合物を直接混ぜ合わせる方法(方法I)や、上記一般式(1)で表される化合物を溶媒に溶解させた溶液に第3の工程で得られた銅粒子を浸漬させる方法(方法II)や、上記一般式(1)で表される化合物を溶媒に溶解させた溶液を、第3の工程で得られた銅粒子に噴霧する方法(方法III)や、水、エーテルまたはアルコールからなる群から選ばれる少なくとも1種の液体中に、第3の工程で得られた銅粒子を浸漬させた後、この液体中に上記一般式(1)で表される化合物を添加する方法(方法IV)などを挙げることができる。なかでも、方法IIや、方法IVを用いた場合は高い生産性で安定した品質の銅粉を製造することができることから好ましく、方法IVを用いて製造した銅粉を使用した場合は、得られた銅粉と後述するフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂およびアクリル樹脂との樹脂組成物から形成される塗膜の硬化後の体積抵抗値が特に低いことから好ましい。
【0044】
上述の第1の工程ないし第4の工程を経て製造された銅粉[(A)成分]は、該銅粉と、後述のフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂およびアクリル樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂[(B)成分]とを含有する樹脂組成物により塗膜を形成すると、塗膜の硬化後の体積抵抗値が、他の製造方法により得られた銅粉を配合した場合に比して低く、導電性に優れたものとなる特異的な特徴を有する。この理由を探るため、本出願人は、上記本発明の製造方法により得られた銅粉について、表面分析や電気特性分析を行い、その形状やパラメーターで銅粉の特徴を規定することを試みたが、後述の比較例に示すような他の製造方法で得られた銅粉との差異を見出すことができず、本出願人が有する現状の粉体分析技術では、本発明の製造方法により得られた銅粉自体の特性、性質、形状等を規定することはできず、本発明の製造方法により得られた銅粉のみが特異的な特性を有する理由を見出すことはできなかった。
【0045】
次に、本発明の樹脂組成物について説明する。
本発明の樹脂組成物は、上述の第1の工程ないし第4の工程を経て製造された銅粉[(A)成分]およびフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂およびアクリル樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂[(B)成分]を含有することを特徴とするものである。
【0046】
本発明の樹脂組成物に用いられる(A)成分は上述の製造方法によって製造された銅粉である。本発明の樹脂組成物中の(A)成分の濃度は、特に限定されるものではなく、所望とする樹脂硬化物の形状や厚さに応じて適宜変更することができるが、導電性が良好であることから、本発明の樹脂組成物中の(A)成分の濃度が20質量%~95質量%であることが好ましく、50質量%~95質量%がより好ましく、75質量%~95質量%であることが特に好ましい。
【0047】
本発明の樹脂組成物に用いられる(B)成分はフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂およびアクリル樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂である。
ここで、フェノール樹脂は、特に限定されるものではなく、周知一般のフェノール樹脂を使用することができ、例えば、ノボラック型フェノール樹脂や、レゾール型フェノール樹脂などを用いることができる。なかでも、レゾール型フェノール樹脂を用いることが好ましい。なお、市販品も使用することができ、例えば、粉末状フェノール樹脂(群栄化学社製、商品名:レヂトップ、PGA-4528、PGA-2473、PGA-4704、PGA-4504、住友ベークライト社製、商品名:スミライトレジンPR-UFC-504、PR-EPN、PR-ACS-100、PR-ACS-150、PR-12687、PR-13355、PR-16382、PR-217、PR-310、PR-311、PR-50064、PR-50099、PR-50102、PR-50252、PR-50395、PR-50590、PR-50590B、PR-50699、PR-50869、PR-51316、PR-51326B、PR-51350B、PR-51510、PR-51541B、PR-51794、PR-51820、PR-51939、PR-53153、PR-53364、PR-53497、PR-53724、PR-53769、PR-53804、PR-54364、PR-54458A、PR-54545、PR-55170、PR-8000、PR-FTZ-1、PR-FTZ-15)、フレーク状フェノール樹脂(住友ベークライト社製、商品名:スミライトレジンPR-12686R、PR-13349、PR-50235A、PR-51363F、PR-51494G、PR-51618G、PR-53194、PR-53195、PR-54869、PR-F-110、PR-F-143、PR-F-151F、PR-F-85G、PR-HF-3、PR-HF-6)、液状フェノール樹脂(住友ベークライト社製、商品名:スミライトレジンPR-50087、PR-50607B、PR-50702、PR-50781、PR-51138C、PR-51206、PR-51663、PR-51947A、PR-53123、PR-53338、PR-53365、PR-53717、PR-54135、PR-54313、PR-54562、PR-55345、PR-940、PR-9400、PR-967)、レゾール型液状フェノール樹脂(群栄化学社製、商品名:レヂトップPL-4826、PL-2390、PL-4690、PL-3630、PL-4222、PL-4246、PL-2211、PL-3224、PL-4329、PL-5208、住友ベークライト社製、商品名:スミライトレジンPR-50273、PR-51206、PR-51781、PR-53056、PR-53311、PR-53416、PR-53570、PR-54387)、微粒状フェノール樹脂(エアウオーター社製、商品名:ベルパール、R800、R700、R600、R200、R100、S830、S870、S890、S895、S290,S190)、真球状フェノール樹脂(群栄化学社製、商品名:マリリンGU-200、FM-010、FM-150、HF-008、HF-015、HF-075、HF-300、HF-500、HF-1500)、固形フェノール樹脂(群栄化学社製、商品名:レヂトップPS-2601、PS-2607、PS-2655、PS-2768、PS-2608、PS-4609、PSM-2222、PSK-2320、PS-6132)などを挙げることができる。
【0048】
また、エポキシ樹脂も特に限定されるものではなく、公知なエポキシ樹脂を用いることができる。上記エポキシ樹脂としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ピロカテコール、フロログルクシノール等の単核多価フェノール化合物のポリグリシジルエーテル化合物;ジヒドロキシナフタレン、ビフェノール、メチレンビスフェノール(ビスフェノールF)、メチレンビス(オルトクレゾール)、エチリデンビスフェノール、イソプロピリデンビスフェノール(ビスフェノールA)、イソプロピリデンビス(オルトクレゾール)、テトラブロモビスフェノールA、1,3-ビス(4-ヒドロキシクミルベンゼン)、1,4-ビス(4-ヒドロキシクミルベンゼン)、1,1,3-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,2,2-テトラ(4-ヒドロキシフェニル)エタン、チオビスフェノール、スルホビスフェノール、オキシビスフェノール、フェノールノボラック、オルソクレゾールノボラック、エチルフェノールノボラック、ブチルフェノールノボラック、オクチルフェノールノボラック、レゾルシンノボラック、テルペンフェノール等の多核多価フェノール化合物のポリグリジルエーテル化合物;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ポリグリコール、チオジグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ビスフェノールA-エチレンオキシド付加物等の多価アルコール類のポリグリシジルエーテル;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、コハク酸、グルタル酸、スベリン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、トリマー酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸等の脂肪族、芳香族または脂環族多塩基酸のグリシジルエステル類およびグリシジルメタクリレートの単独重合体または共重合体;N,N-ジグリシジルアニリン、ビス(4-(N-メチル-N-グリシジルアミノ)フェニル)メタン、ジグリシジルオルトトルイジン等のグリシジルアミノ基を有するエポキシ化合物;ビニルシクロヘキセンジエポキシド、ジシクロペンタンジエンジエポキサイド、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル-6-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート等の環状オレフィン化合物のエポキシ化物;エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化スチレン-ブタジエン共重合物等のエポキシ化共役ジエン重合体、トリグリシジルイソシアヌレート等の複素環化合物があげられる。また、これらのエポキシ樹脂は、末端にイソシアネート基を有するプレポリマーによって内部架橋されたものであっても、多価フェノール、ポリアミン、カルボニル基含有化合物、ポリリン酸エステル等の多価の活性水素化合物によって高分子量化されたものであってもよい。
【0049】
また、ポリエステル樹脂も特に限定されるものではなく、多塩基酸成分と多価アルコール成分とをエステル化反応させたものであればよい。多塩基酸成分としては、例えば、ジフェノール酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、フマル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、などの1 種以上の二塩基酸および、これらの酸の低級アルキルエステル化物が主として用いられ、必要に応じて、安息香酸、クロトン酸、p-t-ブチル安息香酸などの一塩基酸、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、無水ピロメリット酸などの3 価以上の多塩基酸などが併用される。なお、市販品も使用することができ、例えば、東洋紡績(株)、商品名:バイロン300、同500、同560、同600、同630、同650、同670、バイロンGK130、同140、同150、同190、同330、同590、同680、同780、同810、同890、同200、同226、同240、同245、同270、同280、同290、同296、同660、同885、バイロンGK250、同360、同640、同880、ユニチカ(株)製、商品名:エリーテルUE-3220、同3500、同3210、同3215、同3216、同3620、同3240、同3250、同3300、同UE-3200、同9200、同3201、同3203、同3350、同3370、同3380、同3600、同3980、同3660、同3690、同9600、同9800、東亞合成(株)製、商品名:アロンメルトPES-310、同318、同334、同316、同360などが挙げられる。
【0050】
なお、上記ポリエステル樹脂の中でも、蒸気圧浸透法(Vapor Pressure Osmometry法:VPO法)での数平均分子量10,000~50,000の範囲であり、ガラス転移点が-35℃~35℃の範囲であるポリエステル樹脂は、本発明によって得られた銅粒子との樹脂組成物により形成された、塗膜の硬化後の体積抵抗値が低く、導電性に優れた硬化物を製造することができることから好ましく、数平均分子量15,000~40,000の範囲であり、ガラス転移点が0℃~35℃の範囲であるポリエステル樹脂が特に好ましい。上記ガラス転移点は、ASTM3418/82に従ってDSC法(示唆走査熱量測定)によって測定できる温度である。
【0051】
さらに、アクリル樹脂もまた特に限定されるものではなく、周知一般のアクリル樹脂を使用することができる。アクリレート化合物やメタクリレート化合物を原料として重合反応により合成をしてもよいし、市販製品から入手してもよい。アクリル樹脂の市販品としては、例えば、三菱レイヨン(株)製、商品名:アクリペットMD、VH、MF、V、根上工業(株)製、商品名:ハイパールM-4003、M-4005、M-4006、M-4202、M-5000、M-5001、M-4501、三菱レイヨン(株)製、商品名:ダイヤナールBR-50、BR-52、BR-53、BR-60、BR-64、BR-73、BR-75、BR-77、BR-79、BR-80、BR-82、BR-83、BR-85、BR-87、BR-88、BR-90、BR-93、BR-95、BR-100、BR-101、BR-102、BR-105、BR-106、BR-107、BR-108、BR-112、BR-113、BR-115、BR-116、BR-117、BR-118等などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0052】
なお、上記アクリル樹脂の中でも、重量平均分子量10,000~100,000の範囲であり、ガラス転移点が0℃~100℃の範囲であるアクリル樹脂は、本発明によって得られた銅粒子との樹脂組成物により形成された、塗膜の硬化後の体積抵抗値が低く、導電性に優れた硬化物を製造することができることから好ましく、数平均分子量20,000~80,000の範囲であり、ガラス転移点が10℃~90℃の範囲であるアクリル樹脂が特に好ましい。上記ガラス転移点は、ASTM3418/82に従ってDSC法(示唆走査熱量測定)によって測定できる温度である。なお、本明細書における重量平均分子量は、溶媒としてテトラヒドロフランを用いたゲル浸透クロマトグラフィー分析によって測定した、ポリスチレン換算の重量平均分子量をいう。本明細書における「重量平均分子量」は、本発明が属する技術分野において「質量平均分子量」と呼ばれる場合もあるが、同義である。
【0053】
本発明の樹脂組成物中の(B)成分の濃度は、特に限定されるものではなく、所望とする樹脂硬化物の形状や厚さに応じて適宜変更することができるが、導電性が良好であることから、本発明の樹脂組成物中の(B)成分の濃度が5質量%~80質量%であることが好ましく、5質量%~50質量%がより好ましく、5質量%~25質量%であることが特に好ましい。
【0054】
なお、本発明の効果を損なわない限り、上記の樹脂組成物に、その他の溶剤、酸化防止剤、シランカップリング剤などを配合することができる。
【0055】
上記溶剤としては、例えば、水や有機溶剤を用いることができる。ここで、有機溶剤としては、例えば、アルコール系溶剤、ジオール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、脂肪族または脂環族炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、シアノ基を有する炭化水素系溶剤、ハロゲン化芳香族炭化水素系溶剤、その他の溶剤等が挙げることができる。
【0056】
アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、イソブタノール、2-ブタノール、第3ブタノール、ペンタノール、イソペンタノール、2-ペンタノール、ネオペンタノール、第3ペンタノール、ヘキサノール、2-ヘキサノール、ヘプタノール、2-ヘプタノール、オクタノール、2―エチルヘキサノール、2-オクタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロヘプタノール、メチルシクロペンタノール、メチルシクロヘキサノール、メチルシクロヘプタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングルコールモノエチルエーテル、ジエチレングルコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、2-(N,N-ジメチルアミノ)エタノール、3(N,N-ジメチルアミノ)プロパノール等が挙げられる。
【0057】
ジオール系溶剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、イソプレングリコール(3-メチル-1,3-ブタンジオール)、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,2-オクタンジオール、オクタンジオール(2-エチル-1,3-ヘキサンジオール)、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
【0058】
ケトン系溶剤としては、例えば、アセトン、エチルメチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、メチルヘキシルケトン、エチルブチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等が挙げられる。
【0059】
エステル系溶剤としては、例えば、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸第2ブチル、酢酸第3ブチル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸第3アミル、酢酸フェニル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソブチル、プロピオン酸第2ブチル、プロピオン酸第3ブチル、プロピオン酸アミル、プロピオン酸イソアミル、プロピオン酸第3アミル、プロピオン酸フェニル、2-エチルヘキサン酸メチル、2-エチルヘキサン酸エチル、2-エチルヘキサン酸プロピル、2-エチルヘキサン酸イソプロピル、2-エチルヘキサン酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸メチル、メトキシプロピオン酸エチル、エトキシプロピオン酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ第2ブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ第3ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ第2ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノイソブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ第3ブチルエーテルアセテート、ブチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ブチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ブチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、ブチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ブチレングリコールモノ第2ブチルエーテルアセテート、ブチレングリコールモノイソブチルエーテルアセテート、ブチレングリコールモノ第3ブチルエーテルアセテート、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、オキソブタン酸メチル、オキソブタン酸エチル、γ-ラクトン、マロン酸ジメチル、コハク酸ジメチル、プロピレングリコールジアセテート、δ-ラクトン等が挙げられる。
【0060】
エーテル系溶剤としては、例えば、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、モルホリン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジブチルエーテル、ジエチルエーテル、ジオキサン等が挙げられる。
【0061】
脂肪族または脂環族炭化水素系溶剤としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカリン、ソルベントナフサ、テレピン油、D-リモネン、ピネン、ミネラルスピリット、コスモ松山石油(株)製、商品名:スワゾール#310、エクソン化学(株)製、商品名:ソルベッソ#100等が挙げられる。
【0062】
芳香族炭化水素系溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、メシチレン、ジエチルベンゼン、クメン、イソブチルベンゼン、シメン、テトラリンが挙げられる。
【0063】
シアノ基を有する炭化水素系溶剤としては、例えば、アセトニトリル、1-シアノプロパン、1-シアノブタン、1-シアノヘキサン、シアノシクロヘキサン、シアノベンゼン、1,3-ジシアノプロパン、1,4-ジシアノブタン、1,6-ジシアノヘキサン、1,4-ジシアノシクロヘキサン、1,4-ジシアノベンゼン等が挙げられる。
【0064】
ハロゲン化芳香族炭化水素系溶剤としては、例えば、四塩化炭素、クロロホルム、トリクロロエチレン、塩化メチレン等が挙げられる。
【0065】
その他の有機溶剤としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アニリン、トリエチルアミン、ピリジンが挙げられる。
【0066】
上記酸化防止剤は、市販品を使用することもでき、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、イルガノックス1010、イルガノックス1035FF、イルガノックス565[BASFジャパン(株)製]などが挙げられる。なお、酸化防止剤の使用量は、0.0001質量%~10質量%が好ましい。
【0067】
上記シランカップリング剤は、市販品を使用することもでき、例えばエポキシ系[KBM403、KBM303:信越化学工業(株)製]、ビニル系[KBM1003:信越化学工業(株)製]、アクリル系シランカップリング剤[KBM503:信越化学工業(株)製]、3-エチル(トリエトキシシリルプロポキシメチル)オキセタン[TESOX:東亞合成(株)製]などが挙げられる。シランカップリング剤の使用量は、0.0001質量%~10質量%が好ましい。
【0068】
次に、上述の本発明の樹脂組成物を用いる硬化物の形成方法について説明する。
本発明の硬化物を形成する方法は、これまでに説明した本発明の樹脂組成物を基体上に塗布する塗布工程と、本発明の樹脂組成物が塗布された基体を加熱して硬化物を形成する硬化工程とを有する。硬化工程の温度は50℃~200℃の範囲が、導電性の良好な硬化物を得ることができることから好ましく、100℃~200℃の範囲が特に好ましい。硬化工程における加熱時間は1分~300分の範囲が好ましく、10分~60分の範囲が好ましい。なお、必要に応じて硬化工程の前に、基体または本発明の樹脂組成物が塗布された基体を50℃~150℃に保持し、有機溶剤等の低沸点成分を揮発させる乾燥工程をさらに有してもよい。
【0069】
本発明における基体として、樹脂基板、ガラス基板、セラミック基板等が挙げられる。樹脂基板の材質としてはポリイミド、ポリエステル、アラミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、テフロン(登録商標)等が挙げられ、セラミック基板の材質としてはアルミナ、アルミナジルコニア等が挙げられる。また、ガラス基板の種類としてはガラスエポキシ基板、ガラス・コンポジット基板等が挙げられる。
【0070】
上記の塗布工程における塗布方法としては、スピンコート法、ディップ法、スプレーコート法、ミストコート法、フローコート法、カーテンコート法、ロールコート法、ナイフコート法、バーコート法、スリットコート法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、インクジェット法、刷毛塗り等を挙げることができる。
【0071】
また、必要な膜厚を得るために、上記の塗布工程から任意の工程までを複数繰り返すことができる。例えば、塗布工程から硬化工程の全ての工程を複数回繰り返してもよく、塗布工程と乾燥工程を複数回繰り返すこともできる。
【0072】
上述のようにして形成された本発明の硬化物の用途としては、導電層、電極膜、配線などを挙げることができる
【実施例】
【0073】
以下、実施例および比較例により本発明を詳細に説明するが、これらによって本発明が限定されるものではないことを理解されたい。
【0074】
[銅粉の製造]
<実施例1>
銅粒子[体積累積平均粒径(D50):1.6μm]を純水に加え、20質量%銅スラリーとした。その後、水素化ホウ素ナトリウムを銅粒子に対し1質量%添加して25℃で1時間攪拌した(第1の工程)。その後、温度20℃の純水を用いて洗浄し(第2の工程)、さらに温度20℃の2-プロパノールで洗浄することで、純水を2-プロパノールで置換し、20質量%銅スラリーとした(第3の工程)。ここへ、化合物No.91をそのまま銅粒子の質量に対し1.0質量%添加することで、銅粒子を化合物No.91に接触させた(第4の工程)。その後、銅粒子を分離し、これを乾燥させて実施例銅粉No.1を得た。
【0075】
<実施例2>
第4の工程で用いる化合物をNo.92に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、実施例銅粉No.2を得た。
【0076】
<実施例3>
第4の工程で用いる化合物をNo.106に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、実施例銅粉No.3を得た。
【0077】
<比較例1>
第4の工程で用いる化合物をステアリン酸に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、比較銅粉1を得た。
【0078】
<比較例2>
第4の工程で用いる化合物をチタネート系カップリング剤であるテトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート[味の素ファインテクト(株)製、商品名:プレンアクト41B)]に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、比較銅粉2を得た。
【0079】
<比較例3>
第4の工程で用いる化合物をチタネート系カップリング剤であるテトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート[味の素ファインテクト(株)製、商品名:プレンアクト46B]に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、比較銅粉3を得た。
【0080】
[樹脂組成物の調製]
<実施例11~23>
表1に示す組成となるように各成分を混合し、樹脂組成物(実施例樹脂組成物No.1~8)を製造した。
【0081】
<比較例4~9>
表1に示す組成となるように各成分を混合し、樹脂組成物(比較樹脂組成物1~6)を製造した。
【0082】
【0083】
表中、
B-1:ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(ADEKA社製、商品名:アデカレジンEP-4005)とレゾール型フェノール樹脂(住友ベークライト社製、商品名:PR-50232)を重量比2:8で混合した混合物。
B-2:フェノール類で変性したレゾールタイプのキシレン樹脂(フドー社製、商品名:PR-1440)
【0084】
<実施例12~19>
実施例樹脂組成物No.1~8を用いて、PETフィルム上に膜厚が10μm~20μmとなるようにバーコート法による塗布を行った。なお、ジエチレングリコールモノブチルエーテルを各組成物の膜厚の調整するための溶媒として用いた。その後大気中にて150℃で30分間加熱焼成を行うことで、薄膜状の実施例硬化物No.1~8を得た。
【0085】
<比較例11~15>
比較組成物1~6を用いて、PETフィルム上に膜厚が10μm~20μmとなるようにバーコート法による塗布を行った。なお、ジエチレングリコールモノブチルエーテルを各組成物の膜厚の調整するための溶媒として用いた。その後大気中にて150℃で30分間加熱焼成を行うことで、薄膜状の比較硬化物1~6を得た。
【0086】
<評価例>
実施例硬化物No.1~8および比較硬化物1~6について、体積抵抗値を4端子4探針法を用いた高精度抵抗率計(三菱化学アナリテック社製、製品名:ロレスタGP)で測定した。結果を表2に示す。
【0087】
【0088】
表2の結果より、評価例1~8は、比較評価例1~6よりも低い体積抵抗値を示し、実施例硬化物No.1~8は、比較硬化物No.1~5よりも優れた導電性を有することがわかった。