(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】アンカーテンドンの頭部を法面から削孔内に埋没させた工法及びその構造
(51)【国際特許分類】
E02D 5/80 20060101AFI20221024BHJP
【FI】
E02D5/80 Z
(21)【出願番号】P 2021157672
(22)【出願日】2021-09-28
【審査請求日】2022-08-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504145308
【氏名又は名称】国立大学法人 琉球大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000170646
【氏名又は名称】国土防災技術株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593112252
【氏名又は名称】サンスイ・ナビコ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】316000965
【氏名又は名称】合同会社北谷中村
(73)【特許権者】
【識別番号】316000954
【氏名又は名称】旭建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】中村 真也
(72)【発明者】
【氏名】翁長 淳
(72)【発明者】
【氏名】山崎 勉
(72)【発明者】
【氏名】東 康治
(72)【発明者】
【氏名】小町 理
(72)【発明者】
【氏名】諸橋 篤史
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-059976(JP,A)
【文献】特開2007-039974(JP,A)
【文献】特開2013-241733(JP,A)
【文献】特開2017-014808(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
法面(A)に穿孔した削孔(C)に挿入したアンカーテンドン(2)の基部(2
2)をセメントミルク(5)の注入打設によって固定するアンカー工法において、
削孔(C)の開口部に嵌合した口元管(1)を通じてPC鋼より線を用いた養生管外管(3)を口元管(1)から削孔(C)内に挿入し、
続いて養生管内管(4)を削孔(C)に装着した養生管外管(3)の中に挿入して、
その端部(4
1)をアンカーテンドン(2)の頭部(2
1)に接触した状態にし、
セメントミルク(5)の養生を完了した後に養生管内管(4)を養生管外管(3)内から引き抜き、
その引き抜いた後に先端に落ち込み防止用ブラシ(7)を設けた回転ブラシ本体(6)を削孔(C)のテンドングリップ(2′)の頭部(2
1)に嵌合し、
当該回転ブラシ本体(6)の全長の半分程を削孔(C)の開口面から外部に突出し、
この状態で回転ブラシ本体(6)を回転しながら前後移動を繰り返して先端のブラシ(7)でアンカーテンドン(2)のテンドングリップ(2′)部分の付着物を除去し、
付着物を除去した後の回転ブラシ本体(6)を養生管外管(3)から抜き取り、続いて養生管外管(3)からも口元管(1)・削孔(C)から抜き取り、
その後先端部に落ち込み防止用ブラシ(9)を有するテンションカプラー(8)を口元管(1)内に挿入して当該ブラシ(9)をアンカーテンドン(2)の頭部(2
1)に嵌合し、
アンカープレートキット(11)の先端細径部(15)を削孔(C)内のテンドングリップ(2′)の頭部(2
1)に嵌合すると共にアンカープレート(12)を法面(B)に密着させ、
続いてテンションカプラー(8)の先端部寄りにナット(16)を嵌合すると共にナット回転具(17)をテンションカプラー(8)に嵌合すると共に先端開口部(17
2)をナット(16)の外径部(16
1)に嵌めてテンドングリップ(2′)の頭部(2
1)まで押し込み、
ラムチェア(18)をテンションカプラー(8)の頭部に嵌合してその開口端を(18′)をアンカーキット(11)のアンカーキットアンカープレート(12)に密着させ、
ナット回転具(17)のスパナ係合突起(17′)にナット回転具専用スパナ(19)の開口(19′)を咬合して回転し、締め込んで定着させ、
ラムチェア(18)・ナット回転具(17)の順にテンションカプラー(8)から抜き取った後に、
当該テンションカプラー(8)をテンドングリップ(2′)の頭部(2
1)から離脱して抜き取ることによってテンドングリップ(2′)の頭部(2
1)が法面(B)から削孔(C)内に埋没した状態に位置させ、
外径にオスネジ(20n)を有する頭部キャップ板(20)をアンカープレートキット(11)のネジ孔(11n)に嵌め、
頭部キャップ板(20)の引っ掛け孔(20
1)に専用スパナ(21)で締め込んで閉蓋することを特徴とするアンカーテンドンの頭部を法面から削孔内に埋没させた工法。
【請求項2】
地盤(A)の法面(B)に穿孔した削孔(C)内にセメントミルク(5)を注入打設してエポキシ樹脂で被覆したPC鋼より線を用いた金属製アンカーテンドン(2)を削孔(C)に挿入して基部(2
2)を固定したアンカー装置において、
当該金属製アンカーテンドン(2)のテンドングリップ(2′)の頭部(2
1)を法面(B)から内部に10~20cm程埋没設置し、
その削孔(C)内のテンドングリップ(2′)の頭部(2
1)側にアンカープレート(12)を有し、
基端側の細径孔(15)を有する筒形のアンカープレートキット(11)を配置して、そのアンカープレートキットジョイント(13)の法面側の開口部の外周にオスネジ(13n)を設け、アンカープレート(12)の開口内径にメスネジ(12n)を設けてその両者をネジ結合し、
基端側の細径孔(15)をテンドングリップ(2′)の頭部(2
1)に嵌合すると共にアンカープレート(12)を削孔(C)の法面(B)に密着し、
筒形のアンカープレートキット(11)内において、テンドングリップ(2′)を定着用ナット(16)でアンカープレートキット(11)に連結固定し、
アンカープレート(12)の開口に平板状の頭部キャップ(20)をネジ結合したことを特徴とするアンカーテンドンの頭部を法面から削孔内に埋没させた構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、法面安定用アンカーやナット定着方式の周面摩擦引張型アンカー(以下、「フィクサーアンカー(登録商標)」という。)の頭部を、削孔した地山の法面から埋没させて設置した工法及びその構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
法枠などの法面反力体からの突起物を極力低く設定して、法枠の外観低下を防止するとともに、他物との接触による破損を防止し得る定着金物を得るために、法面に施工したグランドアンカーの端部に固定され、ジャッキを介してグランドアンカーに引張力を作用させた状態で、当該グランドアンカーの端部に締結されて、法面反力体を法面上に定着させる定着金物であって、前記法面反力体に形成した挿入孔内において、グランドアンカーの端部に設けたオスネジ部の長さ方向の途中部に位置調整可能に螺合する螺合部と、前記法面反力体を上側から押える押え部と、前記螺合部と押え部とを連結する連結部とを備えた定着金物が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011- 63956号公報
【文献】特開2017-141570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、前記特許文献1記載の定着金物及びそれを用いた法面安定化構造並びに法面安定化工法においては、先行技術ではアンカーをアンカープレート等内に埋没させて緊張・定着を行う場合、テンドングリップの外ネジまたはオスネジ部材を使用するため緊張部材のセットには極めて大きな孔(保孔管)と過大な治具が必要となり施工費が増大となるばかりでなく、一般的な受圧構造物の一つである法枠工等には設置することが不可能となる。
【0005】
また、外ネジを掴むため、テンドン設置深度をシビアに設定しなければならずかなりの手間を要すること、また過緊張時には荷重開放が不可能と考えられる。本技術はインナーネジを使用することから大きな孔を必要とせず最小限の施工費(標準保孔管サイズ)で対応可能となり、設置位置についても寛容になることから手間を要しない構造となっている。
【0006】
さらに、前記特許文献1記載の定着金物及びそれを用いた法面安定化構造並びに法面安定化工法においては、グランドアンカーのオスネジ部の頭部が法枠の表面近くまで延びているものであり、そのオスネジ部の頭部を連結する連結部定着金物は法枠表面から外方に出っ張っている。また、座板を用いるものは、その板厚分がさらに出っ張っているという問題がある。
【0007】
法枠の外観の景観を保つためには、法枠などの法面反力体からの突起物を極力低く設定することが望ましいのであるから、引用文献1の工法は法枠を設けない法面保護工事には不向きであり、法面から削孔内に埋没させることが望ましい。
【0008】
また、特許文献2は法面(A)に穿孔した削孔(C)に挿入したアンカーテンドン(2)の基部(22)をセメントミルク(5)の注入打設によって固定するアンカーテンドン工法に関するものであり、アンカーテンドンを施工した後は、防食のための防錆材の補給を不要とし、耐食性及び長期定着性を図ることで維持管理を必要としない、いわゆるメンテナンスフリー化と長寿命化を図るものである。
【0009】
しかしながら、特許文献2であってもPC鋼より線製テンドンの頭部保護キャップ部分はアンカープレート表面から外部に突出した構造になっている。
【0010】
本発明は上記の問題を解決するために提供するものである。
本発明の第1は、アンカーテンドンの頭部を法面から削孔内に埋没させた工法において、エポキシ樹脂で被覆したPC鋼より線を用いた養生管外管を当該削孔の口元管内に挿入し、養生管内管を削孔に装着した養生管外管の中に挿入した状態でセメントミルクの養生を完了した後に養生管内管を養生管外管内から引き抜き、その引き抜いた後に、先端に落ち込み防止用ブラシを設けたテンションカプラーを削孔内のテンドングリップの頭部に嵌合し、当該テンションカプラーの大部分を削孔の開口面から外部に突出し、アンカープレートキットの先端孔を削孔内のテンドングリップの頭部に嵌合すると共にアンカープレートを法面に密着させ、続いてテンションカプラーの先端部寄りにナットを嵌合すると共にナット回転具をテンションカプラーに嵌合すると共に先端開口部をナットの外径部に嵌めてテンドングリップの頭部まで押し込み、ラムチェアをテンションカプラーの頭部に嵌合してその開口端をアンカーキットのアンカーキットアンカープレートに密着させ、ナット回転具のスパナ係合突起にナット回転具専用スパナの開口を咬合して回転し、締め込んで定着させ、ラムチェア・ナット回転具の順にテンションカプラーから抜き取った後に、当該テンションカプラーをテンドングリップの頭部から離脱して抜き取ることによってテンドングリップの頭部に何もない状態で法面から引っ込んだ状態に位置させ、外径にオスネジを有する頭部キャップをアンカープレートキットのネジ孔に嵌め、頭部キャップの引っ掛け孔に専用スパナで締め込んで閉蓋したものである。
【0011】
本発明の第2は、アンカーテンドンの頭部を法面から削孔内に埋没させた構造において、地盤の法面に穿孔した削孔内にセメントミルクを注入打設してエポキシ樹脂で被覆したPC鋼より線を用いた金属製アンカーテンドンを削孔に挿入して基部を固定したアンカーテンドンの頭部をアンカープレートから突出させない構造において、当該金属製アンカーテンドンのテンドングリップの頭部を法面から内部に10~20cm、又は条件によっては20cm以上に埋没設置し、その削孔内のテンドングリップの頭部側にアンカープレートを有し、基端側の細径孔を有する筒形のアンカープレートキットを配置して、そのアンカーキットプレートジョイントの法面側の開口部の外周にオスネジを設け、アンカープレートの開口内径にメスネジを設けてその両者をネジ結合し、基端側の細径孔をテンドングリップの頭部に嵌合すると共にアンカープレートを削孔の法面に密着し、筒形のアンカープレートキット内において、テンドングリップを定着用ナットでアンカープレートキットに連結固定し、アンカープレートの開口に平板状の頭部キャップをネジ結合したものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明は上記の構成であるから、次のような効果がある。
第1に、アンカープレート等から削孔内に埋没させたことで、落石や降雪による頭部部材(キャップ、テンドングリップ等)の破損を防止するこが可能となる。
第2に、アンカーテンドンが道路で施工された場合、車両(自動車全般)走行の阻害、接触による破損、自転車、歩行者からの接触による事故を防止することも可能となる。
第3に、法面から一切突起物がないことから、周囲の景観を損なうことがない。
第4に、テンドングリップの頭部を法面より相当の距離を削孔内に埋没してアンカープレート11の開口内で止めることができる。
第5に、アンカープレートキットジョイントの開口部の外周とアンカープレートの開口内径をネジ結合したことによって、施工現場の条件や施工方法によって、アンカープレートキットジョイントの長さの変更を行うための付け替えや、外形の大きさやプレートの厚さサイズの異なるアンカープレートを付け替えることができる。
第6に、テンドングリップの頭部を口元管の開口部から10~20cm程奥深く位置させたことにより、当該口元管の開口から挿入したアンカープレートキットのジョイント先端内径で当該キット台座とその台座及び台座センターライザー及びナットを介してテンドングリップの頭部を削孔の中心に安定して支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】地盤の削孔に嵌合した口元管内にテンドングリップの頭部を法面から引っ込めて挿入したアンカーテンドンの基端部側をセメントミルクで打設した状態の側面図である。
【
図2】
図1の口元管に養生管外管を嵌合するために対峙した状態の側面図である。
【
図3】
図2の養生管外管に養生管内管を挿入するために対峙した状態の側面図である。
【
図4】
図3の養生管内管を生管外管に挿入した側面図である。
【
図5】
図4の養生内管を養生外管から取り外した状態の側面図である。
【
図6】
図5のテンドングリップに回転ブラシ体を挿通するために対峙した側面図である。
【
図7】
図6のテンドングリップに回転ブラシ体を挿通した側面図である。
【
図8】
図7の回転ブラシ体を回転と前後移動する状態を示す側面図である。
【
図9】
図8の回転ブラシ体をテンドングリップから取り外した状態の側面図である。
【
図10】
図9の養生管外管を口元管から取り外した状態の側面図である。
【
図11】
図10のテンドングリップの頭部にテンションバーを接合するために対峙した状態の側面図である。
【
図12】
図11のテンドングリップバーの先端部をテンドングリップの頭部に接合した状態の側面図である。
【
図13】削孔にアンカープレートキットを装着するために対峙した状態の側面図である。
【
図14】アンカープレートキットの拡大縦断面図である。
【
図15】
図14におけるアンカープレートキットにおける矢視B―Bの正面図である。
【
図16】アンカープレートキットを口元管に挿入し、テンドングリップバーをテンドングリップの頭部に装着した状態の側面図である。
【
図17】テンドングリップバーをテンドングリップの頭部から離脱して取り外した状態の側面図である。
【
図18】テンションカプラーをテンドングリップの頭部に接合するために対峙した状態の側面図である。
【
図19】
図18におけるテンションカプラー先端部分の拡大縦断面図である。
【
図21】
図18のテンションカプラーをテンドングリップの頭部に接合した状態の側面図である。
【
図22】ナットをテンションカプラーに嵌合するために対峙した状態の側面図である。
【
図24】(A)はナット回転具をアンカープレートキットに嵌合するために対峙した状態の側面図である。(B)はナット回転具の一部の拡大縦断面図である。
【
図27】
図24のナット回転具をテンションカプラーに挿通した状態の側面図である。
【
図28】
図27のテンションカプラーとテンドングリップの頭部と接合部の拡大縦断面図である。
【
図30】ラムチェアをナット回転具に嵌合するために対峙した状態の側面図である。
【
図31】ラムチェアをナット回転具に嵌合して基端部をアンカープレートに接合した状態の側面図である。
【
図32】ラムチェアの空隙部から専用スパナを差し込んでナット回転具の六角形部を挟持した状態の側面図である。
【
図35】ナット回転具の締め付けを完了した状態の側面図である。
【
図36】
図35のラムチェアをナット回転具から取り外した状態の側面図である。
【
図37】
図36のナット回転具をテンションカプラーから抜いて取り外して状態の側面図である。
【
図38】
図37のテンションカプラーをテンドングリップの頭部から離脱して取り外した状態の側面図である。
【
図39】アンカープレートキットのアンカープレートの開口を塞ぐための頭部キャップを対峙した状態の側面図である。
【
図41】アンカープレートの開口に添え当てた頭部キャップを摘み付締め具で締め付けるために頭部キャップに対峙した状態の側面図である。
【
図43】
図42の頭部キャップ専用工具でアンカープレートの開口に添え当てた頭部プレートを締め付けている状態の側面図である。
【
図44】
図43の頭部キャップをアンカープレートの開口に締め付け完了した状態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施例を説明する。
図1において、Aは地盤、Bは法面、Cは地盤に掘削したアンカー挿入用の削孔である。1は口元管であり、法面Bから地中に向かって削孔Cした当該法面Bの地表部分の崩壊を防ぐために嵌合してある。その口元管1の長さL′は1mで、外径が140mm程度の形状を成している。2はアンカーテンドンであり、全長Lは、設計条件により異なり、7m~30m程度に設定される。2′はテンドングリップであり、アンカーテンドン2のアンカーテンドン2の頭部側に位置し、その比率はアンカーテンドン2の長さによって異なるが、長さL
1は0.5m程度に設定してある。当該アンカーグリップ2′の頭部2
1は、法面Bからの埋没距離L″を10~20cm程度又は施工条件によっては20cm以上に設定してある。アンカーテンドン2の地中側2nはセメントミルク5が打設充填されている。
【0015】
図2~
図4において、3は養生管外管であり、口元管1にとテンドングリップ2′のセンタリングをするために口元管1に挿入してある。4は養生管内管であり、養生管外管3の内径に挿入され、当該養生管外管3とテンドングリップ2′をセンタリングするために配置してある。当該内外の養生管3・4共にセメントミルク5の注入打設時に用いるものである。
【0016】
図5~
図7において、削孔Cのアンカーテンドン2の地中側端部側のセメントミルク5の養生が完了した後、養生管内管4は取り外される。6は管形の回転ブラシ本体であり、地表側先端内部の全周に設けたブラシ部7によって、テンドングリップ2′の外部に設けた雄ネジ付着したセメントミルクや泥を除去する作業に用いる。
【0017】
図8~
図10において、管形の回転ブラシ本体6を回転させることにより、テンドングリップ2′の外周面ネジ部に沿って回転ブラシ本体6が移動し、テンドングリップ2′の外周面ネジ部の付着物が除去される。そして、テンドングリップ2′の外周面ネジ部の付着物の除去が終了され、回転ブラシ本体6は取り外される。口元管1の内部に挿入されている養生管外管3は取り外されている。
【0018】
図11~
図17において、11はアンカープレートキットであり、そのジョイント13の開口部の外周にオスネジ13nを設け、アンカープレート12の開口内径にメスネジ12nを設けて両者を螺合して結合してある。また、筒形ジョイント13の反対側端部内周にメスネジ13nを設け、リング14の外周に設けたネジ14nと接続し、リング14の端部内周にメスネジ14
1を設け、細筒15の外周に設けたネジ15
1と結合してある。当該筒形ジョイント13とリング14はアンカープレート12の中心に取り付けられている。定着用のナット16はテンションカプラー8を中心に挿入される。当該ナット16の地表側側面の端部外周へ六角形の形状が設けられている。22はテンドングリップバーであり、テンドングリップ2′を仮設置するためのものである。当該テンドングリップバーの先端22
1はテンドングリップ2′の頭部2
1に接合し、作業を終了した後に当該テンドングリップバー22をテンドングリップ2′から離脱して取り外すようになっている。
【0019】
図18~
図38において、8はテンションカプラーであり、テンドングリップ2′と連結し、緊張治具を用いてアンカー体へ引張力を与える構成になっており、且つ先端に落ち込み防止用ブラシ9が設けられている。10はテンションカプラーリングであり、落ち込み防止用ブラシ9がテンションカプラー8から外れないようにするために設けられている。
【0020】
9はテンションカプラー8の地中側へ落ち込まない構造となっている。当該テンションカプラー8へ挿入されている落ち込み防止用ブラシ9のブラシは外周にわたり設けられている。また、テンションカプラー8はテンドングリップ2′の頭部内側へネジ構造により接続されている。
【0021】
図15~
図19において、アンカープレートキット11は地表より地盤側内部でアンカー体の引張力を受け止め、地表側へ部材を突出させないために複数の部材で構成されており、その先端が細径部15になっており、当該細径部15をテンションカプラー8に通して装着される。12はアンカープレートであり、その孔にはネジ12
1が設けられており、筒形のジョイント13の端部外側の外周に設けられたネジ13
1と結合し、筒形ジョイント13の反対側端部内周にネジ14
2が設けられ、リング14の外周に設けられたネジ14
1と接続され、リング14の端部内周にネジ14
2が設けられ、細径部15の端部外周に設けられたネジ15
1と接続されている。筒形ジョイント13とリング14はアンカープレート12の中心に取り付けられている。定着用のナット16はテンションカプラー8を中心に挿入される。当該ナット16の地表側側面の端部外周へ六角形の形状が設けられている。
【0022】
図20~
図25は、
図18に示すナット16をテンションカプラー8に嵌合して地中寄りに定着し、ナット回転具17をテンションカプラー8の頭部8
1にナットに対峙させてある。そのナット回転具17は、地中側端部にはメスの六角形が設けられている。ナット回転具17の地表側端部にはオスの六角形管17
1が設けられている。ナット回転具17をテンションカプラー8に嵌合してある。ナット回転具17の地中側端部に設けられたメスの六角形は、ナット16の地表側端部に設けられたオスの六角形に嵌め込み、ナット16はテンションカプラー8に挿入されている落ち込み防止用ブラシ9のブラシによりブラシ上に留まることによりナット16の自重でテンドングリップ2′まで落ち込み激しく接触することを防いでいる。ナット回転具17の地中側端部に設けられたメスの六角形管17
1がナット16の地表側端部に設けられているオスの六角形へ嵌り込んでいる。
【0023】
図26~
図36において、ラムチェア18は側面に作業を行える隙間が設けられ、地表側端部へ緊張ジャッキ(図示省略)が設置され、地中側のアンカープレートキットアンカープレート12との間に設置される。緊張ジャッキで(図示省略)の緊張作業であり、アンカープレートキットアンカープレート12を反力にテンドングリップ2′と接続されているテンションカプラー8を地表側へ引く事により打設されているアンターテンドンへ引張り力を与えている。19はナット回転具専用スパナであり、その先端はラムチェア18の中にあるナット回転具17の地表側端部に設けられたオスの六角形へ嵌まり込み、ナット回転具専用スパナ19の棒部分を回転させる事によりナット回転具が地中側のナット16を回転させてテンドングリップ2′の外周に設けられたネジにねじ込み、アンカープレートキット台座14までナット16の地中側端部が設置するまでねじ込まれ、アンカーテンドンへ引張り力を与えているテンションカプラー8を介したテンドングリップ2で引張り力が定着される。ラムチェア18の側面に設けられている隙間からナット回転具専用スパナ19の挟持部19
1でナット回転具17の地表側端部に設けられたオスの六角形を挟持して当該ナット回転具17を回転させるようになっている。ナット16はテンドングリップ2′の外周に設けられたネジを介してジョイント13の細径部15に固定されている。そして、ラムチェア18はテンションカプラー8から取り外される。
【0024】
図37及び
図38において、上記ラムチェア18の取り外しに続いて、テンションカプラー8もテンドングリップ2′の頭部2
1から離脱して口元管1から取り外した状態を示す。このテンションカプラー8を取り外すことにより、落ち込み防止用ブラシ9とテンションカプラーリング10はテンドングリップ2′から当該テンションカプラー8と一緒に取り外される。
【0025】
図39~
図45において、口元管1に対峙させる平板状の頭部キャップ20は、アンカープレートキット11のアンカープレート12の開口を塞ぐための円形プレート状の頭部キャップであり、その外表面に複数の凹条穴20
1を形成し、外周面にはオスネジ20nを設けてあり、アンカープレートキット11の開口の内面に設けられたメスネジ11nに取り付けられる。当該頭部キャップ20の表面には、複数の凹条穴20
1が複数設けられている。21は頭部キャップ20をアンカープレート12の開口にねじ込むための専用工具であり、その内表面に頭部キャップの凹条穴20
1に嵌り込む突起21
1が設けられている。
【0026】
「具体的な実施工程」
(1)法面Bにボーリングマシンにより設計した削孔長を穿孔して削孔Cとし、当該削孔Cに口元管1を嵌合し、続いてテンドングリップ2′付きのアンカーテンドン2を挿入する。(
図1)
(2)当該削孔C内にグラウトになるセメントミルク5を地盤Aと定着する目的のために注入してアンカーテンドン2の基端部2nを含んで打設する。(
図1)
(3)エポキシ樹脂で被覆したPC鋼より線を用いた養生管外管3を口元管1内に向けて挿入する。(
図2)
(4)養生管内管4を削孔Cに嵌合した養生管外管3の中に挿入する。(
図3)・(
図4)
(5)養生管内管4を養生管外管3の中に挿入した状態でアンカーテンドン2の基端部側においてセメントミルク5を養生し、養生した後に養生管内管4を引き抜いて取り外す。(
図4)・(
図5)
(6)削孔Cに対峙した先端にブラシ部7を設けた回転ブラシ本体6を養生管外管3に挿入してテンドングリップ2′の凹み付き頭部2
1に接合した後、当該回転ブラシ本体6を回転と前後移動して養生管外管3から漏れてテンドングリップ2に付着したセメントミルク5等をブラシ7で除去する。(
図6)~(
図8)
(7)セメントミルク5の養生を完了した後に回転ブラシ本体6を養生管外管3内から引き抜いて取り外す。(
図9)
(8)続いて、養生管内管4を口元管1から引き抜く。(
図10)
(9)次に、テンドングリップバー22の端部22
1をテンドングリップ2′の頭部2
1の凹部に接合する。(
図11)・(
図12)
(10)アンカープレートキット11の先端孔15を削孔C内のテンドングリップ2の頭部に嵌合すると共にアンカープレート12を削孔Cの法面Dに密着させる。続いてテンションカプラー8の頭部にナット16を対峙させる。(
図13)~(
図23)
(11)テンションカプラー8にナット16を嵌合すると共にナット回転具17をテンションカプラー8の頭部(左端)側に対峙させる。(
図24(A)・(B))~(
図26)
(12)ナット回転具17をテンションカプラー8に嵌合すると共に先端拡径部17
1をナット16の小径部16
1に嵌めてテンドングリップ2の頭部まで押し込む。(
図27)~(
図29)
(13)ラムチェア18をテンションカプラー8の頭部に対峙させる。(
図30)
(14)ラムチェア18をテンションカプラー8の頭部に嵌合してその開口端をアンカーキット11のアンカープレート12に密着させる。(
図31)
(15)ナット回転具17のスパナ係合突起17′にナット回転具専用スパナ19の開口19′を咬合して回転し、締め込んで定着させる。(
図32)~(
図35)
(16)ラムチェア18をテンションカプラー8から抜き取る。(
図36)
(17)続いて、ナット回転具17をテンションカプラー8から抜き取る。(
図37)
(18)テンションカプラー8をテンドングリップ2の頭部2
1から離脱して抜き取る。これによってテンドングリップ2の頭部に何もない状態で法面Bから削孔内に埋没した状態に位置している。(
図38)
(19)平板状の頭部キャップ20を削孔Cに対峙する。(
図39)、(
図40)
(20)頭部キャップ20をアンカープレートキットジョイント13の開口に嵌めて閉蓋する。(
図41)
(21)頭部キャップ20の引っ掛け孔20
1に頭部キャップ専用スパナ21の突起21
1を引っ掛けて頭部スパナを締め込む。締め込み終了後に頭部キャップ専用スパナ21を除去する。(
図42~
図45)
(22)これによって、テンドングリップ2の頭部を削孔C内に完全に埋没して配置し、そのアンカープレートキットジョイント13の開口を確実に閉鎖することによって、法面Bに比較的厚さが薄いアンカープレートキットアンカープレート12以外の突起物がなくなり、人の往来や法面作業等において全く支障がなくなる。
【符号の説明】
【0027】
1…口元管
2…アンカーテンドン
3…養生管外管
4…養生管内管
5…セメントミルク
6…回転ブラシ本体
7…回転ブラシ本体ブラシ部
8…テンションカプラー
9…落ち込み防止用ブラシ
10…テンションカプラーリング
11…アンカープレートキット
12…アンカープレートキットの-アンカープレート
13…アンカープレートキットジョイント
14…アンカープレートキット台座
15…アンカープレートキット台座センターライザー
16…ナット
17…ナット回転具
18…ラムチェア
19…ナット回転具専用スパナ
20…頭部キャップ
21…頭部キャップ専用工具
22…テンドングリップバー
A…地盤
B…法面
C…アンカーの削孔
【要約】
【目的】
本発明は、法面安定用ナット定着方式の周面摩擦引張型アンカーの頭部を、削孔した地山の法面から引っ込めて設置して、設置した法面から削孔内に埋没設置させた工法及びその構造に関するものである。
【解決手段】
地山法面にボーリングマシンにより設計した削孔長を穿孔し、当該孔内にグラウトになるセメントミルクを地盤と定着するために注入打設した後、エポキシ樹脂で被覆したPC鋼より線を用いた金属製アンカーテンドンを当該削孔に挿入し、さらに加圧注入してセメントミルクの硬化後にアンカープレートまたは埋設式のアンカープレートを取付け、インナーネジを使用した緊張部材をセット後、アンカー頭部を法面のアンカープレートに定着ナットを介してジャッキにより緊張力を加えながら固定し、緊張・定着作業後、埋設式アンカープレートに埋設式キャップを取り付けることを特徴とするアンカーテンドンの頭部を法面から削孔内に埋没させる工法。
【選択図】
図3