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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】カセットホルダ
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/673 20060101AFI20221024BHJP
   B65D 81/07 20060101ALI20221024BHJP
   B65D 85/30 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
H01L21/68 T
B65D81/07
B65D85/30 500
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018139484
(22)【出願日】2018-07-25
(65)【公開番号】P2020017625
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】関家 一馬
【審査官】宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-153355(JP,A)
【文献】特開2005-053705(JP,A)
【文献】特開2017-212322(JP,A)
【文献】特開2014-078656(JP,A)
【文献】特開2015-074547(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/673
B65D 81/07
B65D 85/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハを収容するカセットを支持するカセットホルダであって、
該カセットが載置される長方形状の底面部と、長方形状の該底面部の一端部及び該一端部に対向する他端部からそれぞれ立設し該カセットの一対の側面にそれぞれ対面する一対の突き当て側壁と、該底面部の該一端部及び該他端部を接続する後端部から立設する後壁と、を備えるカセット収容部と、
該カセット収容部が該カセット収容部の該底面部に沿った方向へ所定量移動または所定量傾斜するのを許容しつつ該カセット収容部を支持する移動吸収支持部と、
該カセットホルダを移動させるオペレータを撮影するカメラと、
該カメラで撮影した画像データを記録する画像データ記録部と、を備えることを特徴とするカセットホルダ。
【請求項2】
該移動吸収支持部は、
該カセット収容部の該底面部よりも大きく、該カセット収容部を摺動可能に支持する長方形状の支持板と、
該支持板の一端部及び該一端部に対向する他端部からそれぞれ立設し、該カセット収容部の該一対の突き当て側壁にそれぞれ対面する一対の側壁と、
該支持板の該一端部及び該他端部を接続する後端部から立設し、該カセット収容部の該後壁に対面する壁部と、
該一対の側壁の一方、該一対の側壁の他方、及び、該壁部のいずれかと、該支持板に支持された該カセット収容部と、に接続された弾性部材と、
を有することを特徴とする請求項1記載のカセットホルダ。
【請求項3】
加速度センサと、
該加速度センサで検出された振動データを記録する振動データ記録部と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のカセットホルダ。
【請求項4】
該振動データ記録部で記録した該振動データを送信する情報送信部をさらに備えることを特徴とする請求項3記載のカセットホルダ。
【請求項5】
該画像データ記録部で記録した画像データを送信する情報送信部をさらに備えることを特徴とする請求項記載のカセットホルダ。
【請求項6】
該カセットを搬送する搬送台車に固定されることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のカセットホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のウェーハを収容するカセットを搭載する搬送台車に配置され、該カセットを支持するカセットホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やパソコン等の電子機器に使用されるデバイスチップの製造工程では、まず、半導体等の材料からなるウェーハの表面に複数のIC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integrated circuit)等のデバイスを形成する。その後、該ウェーハをデバイス毎に切断すると、個々のデバイスチップが形成される。デバイスチップの製造工程に使用される加工装置として、ウェーハを分割するための切削装置及びレーザ加工装置が知られている。
【0003】
該ウェーハ及びデバイスチップの取り扱いを容易にするために、該ウェーハは、開口を有するフレームと、粘着テープと、と一体化されたフレームユニットの状態で搬送され、該加工装置に搬入され、加工される。フレームユニットを形成する際には、該ウェーハの径よりも大きな径の開口を有するフレームを準備し、該開口を塞ぐように粘着テープを該フレームに貼り、該開口の内側で該ウェーハを該粘着テープに貼り付ける。
【0004】
ウェーハは、フレームユニットの状態で、または、そのままの状態でカセットと呼ばれる容器に収容されて搬送される。該カセットは、複数のウェーハを収容できる。カセットは、例えば、複数のウェーハが収容される空間と、該空間を挟んで互いに対面する一対の側壁と、を有する。そして、一対の側壁の互いに向かい合う面には、それぞれ、複数の直線状のガイドレールが設けられている。ガイドレールは、一対の側壁のそれぞれ対応する位置に形成されている。
【0005】
カセットにウェーハを収容する際は、一つの側壁に形成された一つのガイドレールと、該ガイドレールに隣接する他のガイドレールと、の間にウェーハまたはフレームの一端を差し入れるとともに、該側壁に対面する他の側壁の対応する位置に該ウェーハまたは該フレームの他端を差し入れる。すなわち、該ガイドレールは、カセットにおけるウェーハを収容する位置を規定する機能を有し、ガイドレールが規定する複数の収容位置のそれぞれにウェーハが収容される。
【0006】
加工装置を操作するオペレータは、カセットを持ち運ぶことにより複数のウェーハを搬送していた。しかし、近年、デバイスチップの製造効率を高めるためにウェーハが大型化しており、これに伴いカセットも大型化している。そのため、複数のウェーハを収容するカセットの重量が著しく増加し、カセットを搬送するオペレータにかかる負担も大きくなっている。そこで、オペレータが手で持たずにカセットを搬送できる搬送台車が利用されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平7-66095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
搬送台車は、デバイスチップの製造工場等で使用される。該製造工場には、多数の加工装置や配管等が配置されており、また、該製造工場の床面には、様々な機能を有する溝やレール等が設けられている。そのため、カセットを搭載する搬送台車を移動させる間に、該搬送台車が製造工場内部の構造物等に衝突する場合がある。また、該搬送台車の車輪が床面の溝に嵌る場合や、車輪がレールに引っかかる場合がある。
【0009】
これらの場合、衝撃により搬送台車に搭載されたカセットが転倒または転落して、該カセットに収容された複数のウェーハが一度に破損することがある。特に、デバイスが形成されたウェーハが破損した場合、該ウェーハにはそれまでにデバイスを形成するための数多くの工程が実施されており、膨大なコストが投入されているため、その損害の規模は極めて大きくなる。
【0010】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、複数のウェーハを収容するカセットを搭載する搬送台車に配置され、該搬送台車に搭載されたカセットに伝達される衝撃を緩和するカセットホルダを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様によると、ウェーハを収容するカセットを支持するカセットホルダであって、該カセットが載置される長方形状の底面部と、長方形状の該底面部の一端部及び該一端部に対向する他端部からそれぞれ立設し該カセットの一対の側面にそれぞれ対面する一対の突き当て側壁と、該底面部の該一端部及び該他端部を接続する後端部から立設する後壁と、を備えるカセット収容部と、該カセット収容部が該カセット収容部の該底面部に沿った方向へ所定量移動または所定量傾斜するのを許容しつつ該カセット収容部を支持する移動吸収支持部と、該カセットホルダを移動させるオペレータを撮影するカメラと、該カメラで撮影した画像データを記録する画像データ記録部と、を備えることを特徴とするカセットホルダが提供される。
【0012】
好ましくは、該移動吸収支持部は、該カセット収容部の該底面部よりも大きく、該カセット収容部を摺動可能に支持する長方形状の支持板と、該支持板の一端部及び該一端部に対向する他端部からそれぞれ立設し、該カセット収容部の該一対の突き当て側壁にそれぞれ対面する一対の側壁と、該支持板の該一端部及び該他端部を接続する後端部から立設し、該カセット収容部の該後壁に対面する壁部と、該一対の側壁の一方、該一対の側壁の他方、及び、該壁部のいずれかと、該支持板に支持された該カセット収容部と、に接続された弾性部材と、を有する。
【0013】
さらに好ましくは、加速度センサと、該加速度センサで検出された振動データを記録する振動データ記録部と、をさらに備える。
【0015】
さらに好ましくは、該振動データ記録部で記録した該振動データを送信する情報送信部をさらに備える。
【0016】
また、好ましくは、該画像データ記録部で記録した画像データを送信する情報送信部をさらに備える。
【0017】
さらに好ましくは、該カセットを搬送する搬送台車に固定される。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様に係るカセットホルダは、例えば、ウェーハを収容するカセットを搬送する搬送台車に固定されて使用される。該カセットホルダは、カセット収容部を備える。該カセット収容部が備える底面部には該カセットが載置される。底面部の一端部と、該一端部に対向する他端部と、には、カセットの一対の側面にそれぞれ対面する一対の突き当て側壁がそれぞれ立設され、底面部の後端部には後壁が立設されている。
【0019】
該カセットホルダは、さらに、カセット収容部を支持する移動吸収支持部を備える。該移動吸収支持部は、カセット収容部が底面部に沿った方向へ移動または傾斜するのを許容しつつ該カセット収容部を支持する。ここで、底面部に沿った方向とは、例えば、水平方向である。
【0020】
ウェーハを収容するカセットを搭載した搬送台車を移動させている間に該搬送台車に予期せぬ衝撃が加わった際、該衝撃は該移動吸収支持部により緩和される。そのため、カセット収容部に収容されたカセットに伝わる衝撃は比較的小さくなる。さらに、カセットを移動または傾斜させるような衝撃がカセットホルダに加わった場合でも、カセットは適切に支持され続ける。そのため、カセットの転倒や落下が防止される。
【0021】
したがって、本発明の一態様によると、複数のウェーハを収容するカセットを搭載する搬送台車に配置され、該搬送台車に搭載されたカセットに伝達される衝撃を緩和するカセットホルダが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】ウェーハを含むフレームユニットをカセットに収容する様子を模式的に示す斜視図である。
図2】カセットがカセットホルダに収容される様子を模式的に示す斜視図である。
図3】カセットが収容されたカセットホルダを模式的に示す断面図である。
図4】カセットが収容されたカセットホルダを模式的に示す側面図である。
図5】カセットホルダが固定された搬送台車でカセットを搬送する様子を模式的に示す斜視図である。
図6】カセットホルダが固定された収容棚にカセットが保管されている様子を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。まず、本実施形態に係るカセットホルダに収容されるカセットと、カセットに収容されるウェーハと、について説明する。図1は、ウェーハ1を含むフレームユニット1aをカセット9に収容する様子を模式的に示す斜視図である。
【0024】
図1に示す通り、ウェーハ1は、ウェーハ1の径よりも大きい径の開口を有する環状のフレーム5に貼られた粘着テープ3に貼り付けられ、フレームユニット1aの状態でカセット9に収容される。または、ウェーハ1は、そのままの状態でカセット9に収容される。ウェーハ1は、例えば、シリコン、SiC(シリコンカーバイド)、若しくは、その他の半導体等の材料でなるウェーハ、または、サファイア、ガラス、石英等の材料からなる円板状の基板である。
【0025】
ウェーハ1の表面には、IC(Integrated circuit)やLED(Light emitting diode)等のデバイス7が形成されており、ウェーハ1がデバイス7毎に分割されると、デバイス7を備える個々のデバイスチップが形成される。形成されたデバイスチップは、粘着テープ3により支持される。その後、粘着テープ3を外周方向に拡張すると、デバイスチップ間の間隔が広がりデバイスチップのピックアップが容易となる。
【0026】
カセット9は、複数のウェーハ1、または、フレームユニット1aを収容できる。カセット9は、例えば、図1に示す通り、互いに向かい合う一対の側壁9a,9bを備える。さらに、側壁9aの一端及び側壁9bの一端を接続する前壁9cと、側壁9aの他端及び側壁9bの他端を接続する後壁9dと、を備える。また、カセット9の底部には、底板(不図示)が設けられる。カセット9の一対の側壁9a,9b間の間隔は、被収容物であるウェーハ1またはフレームユニット1aの大きさに対応する大きさとされる。
【0027】
カセット9の一対の側壁9a,9bの互いに向かい合う面には、それぞれ、複数の直線状のガイドレール13a,13bが設けられる。ガイドレール13a,13bは、一対の側壁9a,9bのそれぞれ対応する位置に形成される。図1に示す通り、ガイドレール13a,13bは、例えば、上下方向に沿って形成される。一対の側壁9a,9b、前壁9c、及び後壁9dのそれぞれの上端部により搬出入口11が構成され、ウェーハ1は該搬出入口11を通じてカセット9に搬出入される。
【0028】
カセット9にウェーハ1を収容する際は、側壁9aに形成された一つのガイドレール13aと、該ガイドレール13aに隣接する他のガイドレール13aと、の間にウェーハ1またはフレーム5の一端を差し入れる。それと同時に、側壁9bの対応する位置にウェーハ1またはフレーム5の他端を差し入れる。すなわち、ガイドレール13a,13bはウェーハ1を収容する位置を規定する機能を有し、ガイドレール13a,13bが規定する複数の収容位置のそれぞれにウェーハ1が収容される。
【0029】
なお、図1に例示されるカセット9には上方からウェーハ1が搬入され、カセット9に収容されたウェーハ1は上方に搬出されるが、ウェーハ1を収容するカセット9はこれに限定されない。例えば、カセット9は前壁9cを備えておらず、前側がウェーハ1の搬出入口となっていてもよい。この場合、一対の側壁9a,9bの内面には水平方向に沿った複数のガイドレール13a,13bが形成され、カセット9には、水平方向前側からウェーハ1が搬入される。
【0030】
以下、上部に搬出入口11を備えるカセット9に複数のウェーハ1を収容し、このカセット9を搬送する場合を例に説明する。デバイスチップの製造工場には複数の加工装置が配されており、各加工装置間でウェーハ1を搬送する際には、ウェーハ1はカセット9に収容される。該製造工場において加工装置を使用するオペレータは、カセット9を搬送することでウェーハ1を搬送する。
【0031】
近年、ウェーハ1の大型化の傾向が著しく、複数のウェーハ1を収容するカセット9の重量が大きく増加している。そこで、オペレータの負担を軽減するために、カセット9を搬送する搬送台車28(図5参照)が使用される。しかしながら、カセット9を搭載する搬送台車28が該製造工場の構造物等に衝突等して、カセット9に予期せぬ衝撃が加わり、カセット9が転倒等して収容されたウェーハ1に破損が生じる場合がある。
【0032】
そこで、該衝撃を緩和し、ウェーハ1の破損を防止するために本実施形態に係るカセットホルダ2(図2等参照)が使用される。該カセットホルダ2は、該搬送台車28に固定される。カセット9は、カセットホルダ2に収容されることで搬送台車28に搭載され、搬送される。以下、本実施形態に係るカセットホルダ2について説明する。
【0033】
図2は、カセット9がカセットホルダ2に収容される様子を模式的に示す斜視図である。カセット9には、複数のウェーハ1が収容されている。カセットホルダ2は、カセット9が収容されるカセット収容部4を備える。カセット収容部4は、カセット9の底部よりも大きい長方形状の底面部6を備える。底面部6の上にはカセット9が載置される。
【0034】
長方形状の底面部6の一端部6a及び該一端部6aに対向する他端部6bからは、それぞれ一対の突き当て側壁8a,8bが立設されている。カセット9がカセット収容部4に収容されるとき、一対の突き当て側壁8a,8bは、それぞれ、カセット9の一対の側壁9a,9bに対面する。さらに、一端部6a及び他端部6bを接続する底面部6の後ろ側の後端部からは、後壁4aが立設されている。カセット9は、底面部6、一対の突き当て側壁8a,8b、及び後壁4a等に囲まれた収容空間内に収容される。
【0035】
本実施形態に係るカセットホルダ2は、カセット収容部4が所定量移動または所定量傾斜するのを許容しつつ該カセット収容部4を支持する移動吸収支持部10をさらに備える。移動吸収支持部10は、カセット収容部4を支持する長方形状の支持板12を備える。支持板12上に載るカセット収容部4は、支持板12に対して摺動可能である。
【0036】
移動吸収支持部10は、さらに、支持板12の一端部12a及び該一端部12aに対向する他端部12bからそれぞれ立設する一対の側壁14a,14bを備える。該一対の側壁14a,14bは、カセット収容部4の一対の突き当て側壁8a,8bとそれぞれ対面する。また、一端部12a及び他端部12bを接続する支持板12の後ろ側の後端部からは、壁部10aが立設されている。
【0037】
図3は、カセット9が収容されたカセットホルダ2を模式的に示す断面図である。図3に示す断面図は、カセットホルダ2を支持板12に平行な面で切断した断面を示す。図3に示す通り、カセット収容部4は、複数の弾性部材16a,16b,16cに接続されている。
【0038】
移動吸収支持部10は、カセット収容部4の後壁4aと、該壁部10aと、を接続する弾性部材16aを備える。また、カセット収容部4の突き当て側壁8aと、該側壁14aと、を接続する弾性部材16bを備え、カセット収容部4の突き当て側壁8bと、該側壁14bと、を接続する弾性部材16cをさらに備える。
【0039】
図5は、カセットホルダ2が固定された搬送台車28でカセット9を搬送する様子を模式的に示す斜視図である。搬送台車28は、例えば、鉛直方向に沿って伸長する4本の支柱28aと、該4本の支柱28aの最下端に設けられた車輪28bと、該4本の支柱28aに固定された長方形状の網棚28cと、を備える。該網棚28cのそれぞれの角は、4本の支柱28aのいずれかに、それぞれ該支柱28aの同じ高さに固定されている。
【0040】
網棚28c上には、複数のカセットホルダ2が固定されており、ウェーハ1を収容したカセット9を搬送する際には、該カセットホルダ2にカセット9を収容させる。カセットホルダ2にカセット9が収容された状態で、オペレータ15が搬送台車28を移動させると、カセット9が搬送される。このとき、オペレータ15が誤って搬送台車28をデバイスチップの製造工場内に設けられた構造物等に衝突させる場合がある。
【0041】
カセット収容部4は、支持板12の上に摺動可能に支持されており、また、弾性部材16a,16b,16cにより水平方向に沿って移動吸収支持部10に接続されている。そのため、カセットホルダ2が固定された搬送台車28に衝撃等が加わった際、弾性部材16a,16b,16cにより緩和された衝撃がカセット9に伝わる。
【0042】
さらに、外部からの衝撃等によりカセット収容部4が底面部6に沿った横方向に移動しようとする際、または、傾斜しようとする際、主に弾性部材16b,16cが該衝撃を緩和する。そして、カセット収容部4の該横方向への所定量の移動または所定量の傾斜を許容しつつ移動吸収支持部10が該カセット収容部4を支持する。
【0043】
また、外部からの衝撃等によりカセット収容部4が該底面部6に沿った前後方向、すなわち、該横方向に垂直な方向に移動しようとする際、または、傾斜しようとする際、主に弾性部材16aが該衝撃を緩和する。そして、カセット収容部4の該前後方向への所定量の移動または所定量の傾斜を許容しつつ移動吸収支持部10が該カセット収容部4を支持する。
【0044】
したがって、カセットホルダ2に収容されたカセット9には該衝撃等が緩和されて伝達されるため、また、カセット9の転倒や、搬送台車28からの転落が防止されるため、カセット9に収容されたウェーハ1の破損を防止できる。
【0045】
さらに本実施形態に係るカセットホルダ2の構成について説明する。図4は、カセット9を収容するカセットホルダ2を模式的に示す側面図である。図4に示す通り、例えば、カセットホルダ2のカセット収容部4の突き当て側壁8aの外側には、記録ユニット18が設けられる。該記録ユニット18は、例えば、カセットホルダ2の前方を捉えるカメラ20と、加速度センサ22と、情報を出力する情報送信部24と、各種の情報が記録される記憶部26と、を備える。
【0046】
カメラ20は、カセット9がカセット収容部4に収容されるときや、搬送台車28が移動するとき、また、カセット収容部4に収容されたカセット9が搬出されるときに作動し、作業に従事するオペレータ15を撮影する。撮影により得られた画像は、例えば、記憶部26に画像データとして蓄積される。すなわち、記憶部26は、画像データ記録部として機能する。カセット9、または、収容されたウェーハ1等に問題等が生じた際には、その時に作業を実施していたオペレータ15を該画像データにより特定できる。
【0047】
加速度センサ22は、搬送台車28によりカセット9が搬送される際、カセット9が収容されるカセット収容部4に加わる振動や衝撃の大きさを監視する機能を有する。例えば、カセット9を搬送する際、加速度センサ22によりカセット収容部4の振動の様子を検出し続け、許容される範囲の強度を超えた強度の振動や衝撃を検出した際には、該記録ユニット18がオペレータに警告を発してもよい。
【0048】
また、得られた振動データは、記憶部26に蓄積されてもよい。すなわち、記憶部26は、振動データ記録部として機能する。記憶部26に蓄積された振動データを解析することにより、カセット9に加えられた振動の履歴を後に参照できる。さらに、振動データは搬送作業を実施したオペレータ15の情報とともに記憶部26に記憶されてもよい。記憶部26に蓄積された振動データを解析することにより、例えば、各オペレータ15の作業水準等を比較できる。
【0049】
情報送信部24は、該画像データや該振動データを記録ユニット18から外部に送信する機能を備える。情報送信部24は、例えば、無線方式による通信により外部の機器に接続できるアンテナや通信モジュール等を備えるユニットであり、例えば、赤外線通信ユニット、無線LANユニット、または、携帯電話回線用の通信ユニット等のユニットである。または、情報送信部24は、外部の機器との間で通信ケーブルにより接続されるユニットであり、該通信ケーブルに接続される端子を備える。
【0050】
カメラ20、加速度センサ22、情報送信部24、及び記憶部26を備える記録ユニット18は、例えば、市販のスマートフォンにより実現されてもよい。例えば、記録ユニット18として機能するように該スマートフォンに専用のアプリケーションをインストールし、これをカセット収容部4の突き当て側壁8aに取り付けることで記録ユニット18をカセットホルダ2に設けても良い。
【0051】
カセットホルダ2は、さらに、該カセットホルダ2の搬送台車28への固定に使用される固定部10bを備えてもよい。固定部10bは、例えば、図4に示す通り移動吸収支持部10の底面に設けられる。固定部10bは、例えば、一端が移動吸収支持部10に接続され、他端がアンカー部材に接続された弾性部材を備える。図5に示す通り搬送台車28にカセットホルダ2が固定される際は、例えば、網棚28cの開口に該アンカー部材が嵌められることによりカセットホルダ2が網棚28cに固定される。
【0052】
以上に説明する通り、カセットホルダ2を介して搬送台車28にカセット9を搭載すると、搬送台車28によりカセット9を搬送する際に衝撃等が発生した場合でも、カセット9に伝達される衝撃が緩和される。また、カセット9が移動や傾斜が許容されつつ適切に支持されるため、カセット9が転倒や転落しにくい。したがって、ウェーハ1に損傷等が生じにくく、デバイス7が形成された高価なウェーハ1をより安全に搬送できる。
【0053】
なお、本発明は、上記の実施形態の記載に限定されず、種々変更して実施可能である。例えば、上記実施形態では、搬送台車28に固定されて使用されるカセットホルダ2について説明したが、本発明の一態様はこれに限定されない。例えば、カセットホルダ2は搬送台車28以外の物に固定されていてもよい。
【0054】
例えば、本発明の一態様に係るカセットホルダ2は、図6に示す通り、移動しない収容棚30に固定されて使用されてもよい。図6は、カセットホルダ2が固定された収容棚30にカセット9が保管されている様子を模式的に示す斜視図である。該収容棚30は、一対の側壁30aと、両端がそれぞれ該側壁30aに固定された棚板30bと、を備える。
【0055】
例えば、地震が頻発する地域にデバイスチップの製造工場が存在する場合、収容棚30にカセット9を収容してウェーハ1を保管している間に、大規模な地震が該地域で発生する場合がある。そのような場合においても、収容棚30にカセットホルダ2を固定し、該カセットホルダ2にカセット9を収容していれば、地震による振動や衝撃が弾性部材16a,16b,16c等により緩和され、カセット9の転落や転倒が防止される。そして、ウェーハ1に伝わる衝撃が緩和されるため、ウェーハ1に損傷が生じにくくなる。
【0056】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0057】
1 ウェーハ
1a フレームユニット
3 テープ
5 フレーム
7 デバイス
9 カセット
9a,9b 側壁
9c,9d 壁
11 搬出入口
13a,13b ガイドレール
15 オペレータ
2 カセットホルダ
4 カセット収容部
4a 後壁
6 底面部
6a,6b 端部
8a,8b 突き当て側壁
10 移動吸収支持部
10a 壁部
10b 固定部
12 支持板
12a,12b 端部
14a,14b 側壁
16a,16b,16c 弾性部材
18 記録ユニット
20 カメラ
22 加速度センサ
24 情報送信部
26 記憶部
28 搬送台車
28a 支柱
28b 車輪
28c 網棚
30 収容棚
30a 側壁
30b 棚板
図1
図2
図3
図4
図5
図6