(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】一次元測定機及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01B 5/004 20060101AFI20221024BHJP
【FI】
G01B5/004
(21)【出願番号】P 2019017777
(22)【出願日】2019-02-04
【審査請求日】2022-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】藤原 秀朗
(72)【発明者】
【氏名】金松 敏裕
【審査官】續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-161903(JP,A)
【文献】特開2016-003855(JP,A)
【文献】特開2001-133203(JP,A)
【文献】実開昭57-147706(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/004
G01B 3/20-3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物における複数の測定要素のそれぞれについての二次元座標の測定を、前記測定対象物のそれぞれの前記測定要素について一次元座標を測定し、前記測定対象物を所定の方向に所定の角度回転させた後、回転後の前記測定対象物のそれぞれの前記測定要素について一次元座標を測定することで実現する一次元測定機であって、
表示部と、
第1入力情報に基づき、前記測定対象物における前記複数の測定要素のそれぞれのおおよその配置及び測定順番を前記表示部に表示させ、第2入力情報に基づき、それぞれの前記測定要素の位置関係を維持したまま前記配置全体を前記所定の方向に所定の角度回転させた前記複数の測定要素のそれぞれの配置及び測定順番を前記表示部に表示させる表示制御手段と、
前記第1入力情報と前記第2入力情報の入力を受け付ける入力部と、
を備えることを特徴とする一次元測定機。
【請求項2】
前記表示制御手段は、前記第1入力情報に基づく表示がされている間に行われた前記測定対象物の一次元座標の測定の結果を、前記配置の表示に反映させるとともに、前記第2入力情報に基づく表示がされている間に行われた、回転後の前記測定対象物の一次元座標の測定の結果を、前記配置の回転後の表示に反映させる
ことを特徴とする請求項1に記載の一次元測定機。
【請求項3】
コンピュータを請求項1又は2に記載の一次元測定機の表示制御手段として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次元座標の測定を行う際の作業性の向上が図られた一次元測定機及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一次元測定機は、一方向へ移動可能に設けられた測定子を備え、この測定子を測定対象物の測定部位に当接させて、測定対象物の寸法を測定する装置である。一般的には、測定子を上下方向に昇降させて高さ方向の座標を測定する、いわゆる高さ測定機が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
高さ測定機には、測定結果として、単に目盛やデジタル数値により高さ方向の座標値を表示する製品のほか、それに加えて、例えば測定対象物に存在する測定要素である穴の直径や中心の二次元座標などを測定できる製品もある。
【0004】
例えば、測定対象物に存在する円形の穴の中心の二次元座標を高さ測定機により測定する場合、測定対象物を定盤などにセットして、まずその状態における穴の中心の高さ座標の測定を行い、続いて測定対象物を90度回転させた上でその状態における当該穴の中心の高さ座標の測定を行うことで、当該穴の中心の二次元座標を得る。
【0005】
具体的な測定処理の例を、
図1を参照しながら説明する。
図1は、円1、円2及び円3という3つの測定要素を備える測定対象物Wについて、測定要素の二次元座標を高さ測定機を用いて測定する手順を説明する図である。具体的には、
図1(a)は、x軸が定盤面上にあり、高さ方向がz軸方向となっている状態を示した図であり、
図1(b)は、測定対象物Wをx軸及びz軸とともに90度回転させた、z軸が定盤面上にあり、高さ方向がx軸方向となっている状態を示した図である。
【0006】
まず、
図1(a)の状態において円1、円2、円3の順に中心のz軸座標を測定する。なお、それぞれの中心のz軸座標Z
Cは、実際には円の最上部のz軸座標Z
Uと最下部のz軸座標Z
Lをそれぞれ測定した上で、その中間値として測定機により計算される。
【0007】
続いて、測定対象物Wを
図1(b)に示すように90度回転させることでx軸方向を高さ方向とした上で、円1、円2、円3の順に中心のx軸座標を測定する。なお、それぞれの中心のx軸座標X
Cについても、実際には円の最上部のx軸座標X
Uと最下部のx軸座標X
Lをそれぞれ測定した上で、その中間値として測定機により計算される。
【0008】
そして、z軸座標の測定結果とx軸座標の測定結果とを測定した順番に合成して、二次元座標(Z、X)の測定結果とする。すなわち、z軸座標として1番目に測定されたz軸座標Zc1とx軸座標として1番目に測定されたx軸座標xc1とを合成して、円1の二次元座標(Zc1、xc1)として出力し、2番目、3番目に測定されたz軸座標及びx軸座標についてもそれぞれ同様に合成して、円2、円3の二次元座標としてそれぞれ(Zc2、xc2)、(Zc3、xc3)として出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
高さ測定機などの一次元測定機を用いて測定対象物の複数の測定要素について二次元座標を測定するに際し、背景技術に示す測定結果の合成方法、すなわち、回転前後の測定結果を、測定した順番により対応付けて合成する方法を採る場合、それぞれの測定要素について適切な測定結果を得るためには、各測定要素の測定順番が回転前と回転後とで同じである必要がある。
【0011】
そしてこのような事情から、測定要素が多数である場合や複雑な形状をした測定対象物の場合などにおいては、それぞれの測定要素の測定順番が、回転前後で食い違いが生じやすい。そのためオペレータは、例えば測定対象物の形状や測定要素の番号をメモするなどして細心の注意を払いながら測定を行う必要があり、作業性に問題があった。
【0012】
本発明の目的は、二次元座標の測定を行う際の作業性の向上が図られた一次元測定機及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一次元測定機は、測定対象物における複数の測定要素のそれぞれについての二次元座標の測定を、測定対象物のそれぞれの測定要素について一次元座標を測定し、測定対象物を所定の方向に所定の角度回転させた後、回転後の測定対象物のそれぞれの測定要素について一次元座標を測定することで実現する一次元測定機であって、表示部と、第1入力情報に基づき、測定対象物における複数の測定要素のそれぞれのおおよその配置及び測定順番を表示部に表示させ、第2入力情報に基づき、それぞれの測定要素の位置関係を維持したまま配置全体を所定の方向に所定の角度回転させた複数の測定要素のそれぞれの配置及び測定順番を表示部に表示させる表示制御手段と、第1入力情報と第2入力情報の入力を受け付ける入力部と、を備えることを特徴とする。
【0014】
このように構成された一次元測定機によれば、二次元座標の測定を行う際に、複数の測定要素の配置及び測定順番を表示部で確認しながら、測定対象物の回転前後で測定順番の齟齬を生じさせること無く行うことができるため、メモなどの作業が不要になり作業性の向上を図ることができる。
【0015】
表示制御手段が、第1入力情報に基づく表示がされている間に行われた測定対象物の一次元座標の測定の結果を、配置の表示に反映させるとともに、第2入力情報に基づく表示がされている間に測定制御手段が実行させた、回転後の測定対象物の一次元座標の測定の結果を、配置の回転後の表示に反映させてもよい。
【0016】
これにより、測定要素の配置が現実の配置に近い形で表示部に表示されるため、より確実に作業を行うことが可能となる。
【0017】
本発明の一次元測定機の表示制御手段の機能は、プログラムに記述してコンピュータに実行させることにより実現してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】測定対象物の測定要素の二次元座標を、高さ測定機を用いて測定する手順を説明する図である。
【
図3】測定要素の配置の入力画面を説明する図である。
【
図4】画面表示された測定要素の配置全体を90度回転させた後の画面表示を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明及び図面では、同一の機能部には同一の符号を付し、一度説明した機能部については説明を省略又は必要に応じた程度の説明にとどめることとする。
【0020】
本発明の一次元測定機は、測定対象物における複数の測定要素のそれぞれについての二次元座標の測定を、測定対象物のそれぞれの測定要素について一次元座標を測定し、測定対象物を所定の方向に所定の角度回転させた後、回転後の測定対象物のそれぞれの測定要素について一次元座標を測定することで実現する従来の一次元測定機に、表示制御手段の機能を追加することにより実現される。
【0021】
本発明は、検出部を一次元方向に移動させながら被測定物の測定を行うものであれば、任意の種類の一次元測定機に適用可能である。以下では、一次元測定機が高さ測定機である場合を例にとって説明する。
【0022】
〔高さ測定機の構成〕
図1は、高さ測定機100の構成例を示す図である。高さ測定機100は、位置検出部10とデータ処理部20とを備える。
【0023】
位置検出部10は、支持部11、リニヤスケール12、検出ヘッド13及びプローブ14を備える。
【0024】
支持部11は、高さ方向が測長方向とされたリニヤスケール12が設けられるとともに、リニヤスケール12の測長方向に沿って移動可能な形態で検出ヘッド13を支持する。
【0025】
検出ヘッド13は、オペレータが移動させることにより通過したリニヤスケール12の格子目盛の数量を示す信号を出力する。
【0026】
プローブ14は、検出ヘッド13に固設される探針であり、オペレータが測定対象物Wの測定要素に接触するように手動で移動させる。
【0027】
データ処理部20は、コンピュータであり、計数部21、記憶部22、演算部23、入力部24及び表示部25を備える。
【0028】
計数部21は、検出ヘッド13から出力された信号に基づき、検出ヘッド13の現在位置を特定する。
【0029】
記憶部22は、検出ヘッド13の現在位置情報や本発明の各手段を実現するためのプログラムなどが記憶される任意の記憶手段である。
【0030】
演算部23は、記憶部22からプログラムを読み出して実行するCPUである。
【0031】
入力部24は、第1入力情報及び第2入力情報をオペレータが入力する、キーボード、マウス、表示部25と一体化されたタッチパネルディスプレイなどの任意の方式の入力手段である。
【0032】
表示部25は、測定に関連する情報を表示する液晶ディスプレイなどの任意の方式の表示手段である。
【0033】
なお、データ処理部20は必ずしも一体構成する必要はなく、記憶部22、入力部24、及び表示部25のうち少なくともいずれかを、任意の方式の有線通信又は無線通信により接続された本体外部に設けてもよい。
【0034】
〔表示制御手段の機能〕
表示制御手段は、まず、第1入力情報に基づき、測定対象物における複数の測定要素のそれぞれのおおよその配置及び測定順番を表示部25に表示させる。
【0035】
第1入力情報は、オペレータが入力部24から入力する、測定対象物における複数の測定要素のそれぞれのおおよその配置及び測定順番の情報である。
【0036】
表示制御手段は、オペレータが第1入力情報の入力をしやすいように、例えば表示部25に入力画面を表示させ、そこにオペレータが入力部24から情報を入力できるように構成してもよい。
【0037】
例えば、表示制御手段は、表示部25に
図3(a)に示すような、測定対象物Wの底辺方向をx軸、高さ方向をz軸とする2次元入力画面を表示させて、入力部24からの情報入力を待機する。測定対象物Wが円1、円2、円3及び円4という4つの測定要素を
図3(b)に示す配置で備え、円の番号の順で測定を実行したいとき、オペレータは、4つの測定要素のおおよその配置を、
図3(a)に示す2次元入力画面にマウスクリックなどにより入力する。このとき、配置が入力された順番がそのまま測定順として配置とともに表示部25に表示されるようにしてもよいし、配置の入力・表示後に別途順番の入力を受けて表示されるようにしてもよい。これにより、測定対象物Wの測定要素の配置に対応する測定要素の配置及び測定順が、例えば
図3(c)に示すように表示部25に表示される。
【0038】
オペレータは、表示部25に表示された
図3(c)に示す測定要素の配置及び測定順を参照しながら、それぞれの測定要素のz軸座標の測定を表示された測定順で実行する。これにより、予定した測定順序を誤ることなく測定を実行することができる。
【0039】
測定が実行された際、表示制御手段は、z軸座標について得られた測定結果を取得して、配置の表示に反映させてもよい。反映させた例を
図3(d)に示す。このように反映させることで、表示される各測定要素のz軸方向の径の比率が実態に則したものになるため、測定順を誤る危険性をより低くすることができる。
【0040】
z軸座標の測定終了後、オペレータは測定対象物Wを所定の方向に所定の角度回転させる。
図4(a)に、
図3(b)に示す測定対象物Wを、反時計回りに90度回転させた例を示す。
【0041】
測定対象物Wを所定の角度回転させた後、オペレータは入力部24から第2入力情報を入力する。第2入力情報は、第1入力情報の入力により表示部25に表示された測定要素の配置全体を、それぞれの測定要素の位置関係を維持したまま所定の方向に所定の角度回転させるコマンドである。測定対象物Wの回転角度に関する情報をこの第2入力情報に含めてもよい。
【0042】
表示制御手段は、第2入力情報に基づき、第1入力情報の入力により表示部25に表示された測定要素の配置全体を、測定対象物Wを回転させた方向に所定の角度回転させた複数の測定要素のそれぞれの配置及び測定順番を表示部25に表示させる。
図4(b)に、
図3(d)に示す第1入力情報の入力により表示部25に表示された測定要素の配置全体を半時計回りに90度回転させた例を示す。
【0043】
オペレータは、表示部25に表示された
図4(b)に示す測定要素の配置及び測定順を参照しながら、それぞれの測定要素のx軸座標の測定を表示された測定順で実行する。これにより、予定した測定順序を誤ることなく測定を実行することができる。
【0044】
測定が実行された際、表示制御手段は、x軸座標について得られた測定結果を取得して、配置の表示に反映させてもよい。反映させた例を
図4(c)に示す。このように反映させることで、表示される各測定要素のx軸方向の径の比率が実態に則したものになるため、測定順が正しければ、表示部25に表示された円の配置及び大きさの比率が、測定対象物Wのものと概ね同じになる。そのため、測定順が誤っていないか否かを速やかに確認することができる。
【0045】
測定対象物Wの回転前と回転後のそれぞれの一次元座標の測定結果が得られた後、
図3(b)の状態から
図4(a)の状態に測定対象物Wを90度回転させた場合には、各測定要素について、回転前と回転後のそれぞれの測定結果を直接合成することで二次元座標を得ることができる。
【0046】
一方、測定対象物Wを90度以外の角度で回転させた場合には、各測定要素について、回転後の測定結果を、回転前の測定結果と実際に回転させた角度とに基づき変換し、これを回転前に測定された測定結果と合成することで二次元座標を得ることができる。
【0047】
〔表示制御手段の機能の追加方法〕
高さ測定機100への表示制御手段の機能の追加は、データ処理部20への表示制御手段専用の機能部の追加により実現することができるほか、表示制御手段の機能が記述されたプログラムを記憶部22に予め記憶させておき、これを演算部23が読み出して実行するように構成することによっても実現することができる。
【0048】
また、測定対象物Wの回転前と回転後のそれぞれの一次元座標の測定結果が得られた後、各測定結果を直接合成して、又は変換処理を経て合成して二次元座標を得る機能(座標合成手段)についても、データ処理部20への当該機能専用の機能部の追加により実現することができるほか、当該機能が記述されたプログラムを記憶部22に予め記憶させておき、これを演算部23が読み出して実行するように構成することによっても実現することができる。なお、変換処理を行う場合の測定対象物Wの回転角度の情報は、例えば、第2入力情報に含めて入力されたものを利用してもよい。
【0049】
以上説明した、本発明の一次元測定機によれば、二次元座標の測定を行う際に、複数の測定要素の配置及び測定順番を表示部で確認しながら、測定対象物の回転前後で測定順番の齟齬を生じさせること無く行うことができるため、メモなどの作業が不要になり作業性の向上を図ることができる。
【0050】
本発明は、上記の各実施形態に限定されるものではない。各実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。すなわち、本発明において表現されている技術的思想の範囲内で適宜変更が可能であり、その様な変更や改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含む。
【符号の説明】
【0051】
10…位置検出部
11…支持部
12…リニヤスケール
13…検出ヘッド
14…プローブ
20…データ処理部
21…計数部
22…記憶部
23…演算部
24…入力部
25…表示部
100…高さ測定機
W…測定対象物