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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】光学スイッチデバイス
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/137 20060101AFI20221024BHJP
   C09K 19/60 20060101ALI20221024BHJP
   C09K 19/30 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
G02F1/137
C09K19/60
C09K19/30
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017121168
(22)【出願日】2017-06-21
(65)【公開番号】P2018028655
(43)【公開日】2018-02-22
【審査請求日】2020-06-18
(31)【優先権主張番号】16175747.1
(32)【優先日】2016-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】ミハエル ユンゲ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス バイエル
(72)【発明者】
【氏名】ミラ フィッシャー
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/055274(WO,A1)
【文献】特開2002-365621(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0108317(US,A1)
【文献】特表2015-509206(JP,A)
【文献】国際公開第2015/117736(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/137
C09K 19/60
C09K 19/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
・偏光層と、および
・偏光層に平行に配置され、少なくとも1種類の二色性色素を含む液晶材料を含むスイッチ層であって、ただしスイッチ層は、スイッチ層を通る低い透過を有する暗スイッチ状態およびスイッチ層を通る高い透過を有する明スイッチ状態を有するスイッチ層と
を含む光学スイッチデバイスであって、
ただし少なくとも1種類の二色性色素の吸収主軸に平行に偏光された光について、デバイスの暗スイッチ状態におけるスイッチ層のEN410規格に従う20℃の温度における光透過率τは3%未満であり、
ただし光学スイッチデバイスは、1層のみの偏光層を含み、
ただし偏光層は、光を直線偏光するものであり、
ただしスイッチ層は、2および15μmの間の厚さを有し、
ただし光を直線偏光する偏光層の吸収軸は、スイッチ層の暗スイッチ状態において少なくとも1種類の二色性色素の吸収主軸に対して、85°~95°の角度で配置され、
ただしスイッチ層の少なくとも1種類の二色性色素は、アゾ化合物類、アントラキノン類、ベンゾチアジアゾール類、ジケトピロロピロール類およびリレン類から選択され、
ただし液晶材料において二色性色素の総比率は、0.1~15重量%であり、
ただし液晶材料は、80℃より高い透明点を有し、
ただし液晶材料は、式(I)の化合物を含み、
【化1】
(式中Rは、1~10個のC原子を有するアルキル基から選択される。)
ただし層順序は、
・偏光層
・基板層
・導電性透明層
・配向層
・少なくとも1種類の二色性色素を含む液晶材料を含むスイッチ層
・配向層
・導電性透明層
・基板層
であり、
光学スイッチデバイスの偏光層は550nmの光波長において、95%より大きい偏光度を有し、
空間内で湾曲している光学スイッチデバイス。
【請求項2】
少なくとも1種類の二色性色素の吸収主軸に平行に偏光された光について、デバイスの暗スイッチ状態におけるスイッチ層のEN410規格に従う20℃の温度における光透過率τは、0.7%以下であることを特徴とする請求項1に記載の光学スイッチデバイス。
【請求項3】
偏光層は、光源に向かってスイッチ層の外側に面する側に配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の光学スイッチデバイス。
【請求項4】
偏光層は、共通の固定された空間的配向を有する1種類以上の異なる有機色素化合物を含む材料から形成されることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の光学スイッチデバイス。
【請求項5】
色素化合物は、延伸で得られる配向ポリマーとの混合物中または液晶材料との混合物中の層中に存在することを特徴とする請求項4に記載の光学スイッチデバイス。
【請求項6】
色素化合物は、延伸で得られる配向ポリマーとの混合物中の層中に存在することを特徴とする請求項5に記載の光学スイッチデバイス。
【請求項7】
スイッチ層を取り囲む2層の配向層の配向方向は、0°~270°の角度を囲むことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の光学スイッチデバイス。
【請求項8】
デバイスの少なくとも一方のスイッチ状態において、スイッチ層の液晶材料の分子は平面態様でツイストしており、
ただしスイッチ層の厚さ全体にわたって、ツイストは30°および360°の間の値を有することを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の光学スイッチデバイス。
【請求項9】
スイッチ層の少なくとも1種類の二色性色素は、蛍光性であることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の光学スイッチデバイス。
【請求項10】
偏光層に隣接する基板層は、ポリマーから成ることを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の光学スイッチデバイス。
【請求項11】
1層以上の基板層を含むこと、および
スイッチ層の観点から考慮して、偏光層および次の基板層の間の接着層および接着フィルムから選択される層を含むことを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の光学スイッチデバイス。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の光学スイッチデバイスを含有することを特徴とする建物、容器または車両用の窓。
【請求項13】
環境から空間内への太陽光の通過を制御するための、請求項1~11のいずれか1項に記載の光学スイッチデバイスの使用。
【請求項14】
・偏光層と、および
・偏光層に平行に配置され、少なくとも1種類の二色性色素を含む液晶材料を含むスイッチ層であって、ただしスイッチ層は、スイッチ層を通る低い透過を有する暗スイッチ状態およびスイッチ層を通る高い透過を有する明スイッチ状態を有するスイッチ層と
を含む光学スイッチデバイスを含有する自動車スライディングルーフまたは自動車パノラマルーフであって、
ただし少なくとも1種類の二色性色素の吸収主軸に平行に偏光された光について、デバイスの暗スイッチ状態におけるスイッチ層のEN410規格に従う20℃の温度における光透過率τは3%未満であり、
ただし光学スイッチデバイスは、1層のみの偏光層を含み、
ただし偏光層は、光を直線偏光するものであり、
ただしスイッチ層は、2および15μmの間の厚さを有し、
ただし光を直線偏光する偏光層の吸収軸は、スイッチ層の暗スイッチ状態において少なくとも1種類の二色性色素の吸収主軸に対して、85°~95°の角度で配置され、
ただしスイッチ層の少なくとも1種類の二色性色素は、アゾ化合物類、アントラキノン類、ベンゾチアジアゾール類、ジケトピロロピロール類およびリレン類から選択され、
ただし液晶材料において二色性色素の総比率は、0.1~15重量%であり、
ただし液晶材料は、80℃より高い透明点を有し、
ただし液晶材料は、式(I)の化合物を含み、
【化2】
(式中Rは、1~10個のC原子を有するアルキル基から選択される。)
ただし層順序は、
・偏光層
・基板層
・導電性透明層
・配向層
・少なくとも1種類の二色性色素を含む液晶材料を含むスイッチ層
・配向層
・導電性透明層
・基板層
であり、
光学スイッチデバイスの偏光層は550nmの光波長において、95%より大きい偏光度を有し、
光学スイッチデバイスは空間内で湾曲している自動車スライディングルーフまたは自動車パノラマルーフ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は偏光層およびスイッチ層を有し、スイッチ層が二色性色素を含む液晶材料を含む光学スイッチデバイスに関する。本出願は更に、領域要素を通る光の通過を制御するため、特に部屋要素、例えば建物内部または乗物内部への光の入射を制御するために光学スイッチデバイスを使用することに関する。
【背景技術】
【0002】
本願発明の目的に関し、光という用語は、特にUV-A、VISおよびNIR領域における電磁放射、即ち通常の定義に従い、320~2000nmの波長を有する光を意味するものとする。
【0003】
本発明によるデバイスで通過が制御される光は好ましくは、太陽光を意味するものとする。太陽光は好ましくは、太陽より直接発せられる。しかしながら例えば反射、屈折を介して、または任意で所望の材料で吸収およびそれに続く発光を介して間接的に発せられてもよい。
【0004】
本発明によるデバイスは対応して好ましくは、領域要素を通る太陽光の通過を制御するため、特に領域要素を通り実質的に密閉された空間要素内への太陽光の通過を制御するために使用される。この種のデバイスは、一般的な用語のスイッチ可能ウィンドウまたはスマートウィンドウとしても知られている。これらは例えば、B.Jelleら著、Solar Energy Materials & Solar Cells 2012年、第1~28頁(非特許文献1)で概説されている。ここでスイッチ可能ウィンドウという用語は、スイッチ可能な光透過屋根、例えば天窓または自動車屋根も包含する。
【0005】
ある型のこれらのスイッチ可能ウィンドウは、スイッチ層用の材料として液晶材料を使用する。多数の異なる機能原理、例えばTNモード、VAモードまたはゲスト-ホストモードが液晶材料によるスイッチを基礎とする、この種のデバイスに知られている。
【0006】
前記デバイスは、幾つかの点で改善の必要がある。これらとしては特に光の通過を可能な限り完全に阻止し、好ましくはデバイスの垂直視野の場合だけでなく、代わりに側方からの観察者の場合にも光の通過を可能な限り完全に阻止する能力が挙げられる。更にデバイスは、可能な限り広い温度範囲で光の通過を可能な限り完全に阻止する必要がある。再度更にデバイスは、特に光、特にUV光へおよび熱への集中的な曝露において長期間安定でなければならない。
【0007】
スイッチ層中の液晶材料を基礎とし可能な限り完全に光の通過を阻止する当業者に既知のデバイスは特に、スイッチ層中に色素を含まないTNモードおよびVAモードを基礎とするデバイスである。よって、可能な限り完全に光の通過を阻止できることを意図するスイッチ可能ウィンドウについては、特に上述のTNおよびVAモードを有するLCセルが当業者の視点から明らかな選択肢である。しかしながら、これらは幾つかの不具合を有し、とりわけ高温の影響を受けやすい。加えて前記モードの場合、光の遮蔽はデバイスを見る一定の角度で生じるに過ぎない。ディスプレイとは異なりスイッチ可能ウィンドウは、実質的に一定の視野角では見ないので、これはウィンドウでの使用には望ましくない。加えてスイッチ可能ウィンドウの暗スイッチ状態は、所望の効果をもって太陽光によるエネルギーの入力を阻止しないため、LCセルによる低い遮断作用のみが起こる角度でスイッチ可能ウィンドウに当たる光は内部の加熱に寄与する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】B.Jelleら著、Solar Energy Materials & Solar Cells 2012年、第1~28頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この状況に対する解決策の模索において驚くべきことに、偏光層およびスイッチ層を含み、スイッチング層が液晶材料および二色性色素を含む特定の設計を有するデバイスが上記所望の特性を有することが見出された。
【課題を解決するための手段】
【0010】
よって本出願は、
・偏光層と、および
・偏光層に平行に配置され、少なくとも1種類の二色性色素を含む液晶材料を含むスイッチ層であって、ただしスイッチ層は、スイッチ層を通る低い透過を有する暗スイッチ状態およびスイッチ層を通る高い透過を有する明スイッチ状態を有するスイッチ層と
を含む光学スイッチデバイスに関し、
ただし少なくとも1種類の二色性色素の吸収主軸に平行に偏光された光について、デバイスの暗スイッチ状態におけるスイッチ層のEN410規格に従う光透過率τは5%未満である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
光透過率τは、対応する規格EN410、式(1)に示される通り決定される。それは測定されたスペクトル透過率から、標準光源の相対スペクトル分布および標準観察者のスペクトル輝度感度を考慮して決定される。それは対照としてスイッチ層中に色素のない同一のスイッチ層に対するパーセントで表示され、即ち、色素を含むスイッチ層を通過する光の強度(分子)および色素のない同一の構成のスイッチ層を通過する対照ビームの強度(分母)の商に対応する。本出願の目的のために光透過率τは、20℃の温度における光透過率である。τを決定する正確な方法は、実施例に示される。
【0012】
本明細書において液晶材料とは、少なくとも1つの温度範囲において液晶特性を示す材料を意味すると解する。これは好ましくは、-50℃~200℃のスパン内、特に好ましくは-30℃~150℃のスパン内の温度範囲を意味すると解する。液晶特性は好ましくは、ネマチック液晶特性を意味すると解する。
【0013】
正の二色性色素の場合、少なくとも1種類の二色性色素の吸収主軸は、化合物の最大寸法に平行な軸(縦軸)を意味すると解する。対応して負の二色性色素の場合、それは化合物の最大寸法に垂直な軸(横軸)であることを意味すると解する。
【0014】
デバイスは好ましくは、5%未満、特に好ましくは3%未満、非常に特に好ましくは2%未満、最も好ましくは1%未満の暗スイッチ状態におけるEN410規格に従って決定される光透過率を有する。デバイスの光透過率は実施例に示される通り決定され、20℃のデバイス温度に関する。
【0015】
少なくとも1種類の二色性色素の吸収主軸に平行に偏光された光についてデバイスの暗スイッチ状態におけるスイッチ層の光透過率τは、好ましくは4%未満、特に好ましくは3%未満、非常に特に好ましくは2%未満である。
【0016】
デバイスは好ましくは、以下の層順序を有し、ただし更なる層が追加して存在してよい。下に示す層は好ましくは、デバイス内で互いに直接隣接している:
・偏光層
・好ましくはガラスまたはポリマーを含む基板層
・好ましくはITOを含む導電性透明層
・配向層
・液晶材料および少なくとも1種類の二色性色素を含むスイッチ層
・配向層
・好ましくはITOを含む導電性透明層
・好ましくはガラスまたはポリマーを含む基板層。
【0017】
原理的には、当業者に既知の全ての製品を偏光層に用いることができる。薄光学フィルムの形態の偏光子が好ましくは使用される。本発明によるデバイスに使用できる反射偏光子の例は、DRPF(diffusive reflective polariser film、拡散反射偏光子フィルム、3M社)、DBEF(dual brightness enhanced film、二重輝度増強フィルム、3M社)、DBR(layered-polymer distributed Bragg reflector、層状ポリマー分布ブラッグ反射器、米国特許第7,038,745号明細書および米国特許第6,099,758号明細書に記載される通り)およびAPF(Advanced Polariser film、先進偏光フィルム、3M社、Technical Digest SID 2006年、第45巻.第1頁、米国特許出願公開第2011/0043732号明細書および米国特許第7023602号明細書参照)である。更に、ワイヤグリッド偏光子(WGP、wire-grid polariser)を用いることができる。本発明によるデバイスで用いることができる吸収偏光子の例は、Itos XP38偏光子フィルム、日東電工GU-1220DUN偏光子フィルムおよびItos XP40HT偏光子フィルムである。
【0018】
偏光層は好ましくは例えばXP40HT偏光子フィルムなどの共通の固定された空間的配向を有し、可視領域の光を吸収する1種類以上の異なる有機化合物を含む材料から形成される。偏光層は特に好ましくは、共通の固定された空間的配向を有する1種類以上の異なる有機色素化合物を含む材料から形成される。この場合における色素化合物は好ましくは、例えば延伸で得られる配向ポリマーとの混合物中または液晶材料との混合物中の層中に存在する。このタイプの偏光子の例は、Thulstrupら、Spectrochimica Acta 1988年、第8巻、第767~782頁および国際公開第2013/097919号の実施例に開示されている。このタイプの偏光層によって、特に太陽光への集中的な曝露および/または高温において非常に長期間安定なスイッチデバイスを得ることが可能であることが見出された。更に、ワイヤグリッド(WGP、wire-grid polariser)から成る偏光層を使用することが可能である。よって、非常に長い耐用年数を有するデバイスを同様に得ることができる。更なる別法として、延伸ポリマー、好ましくはPVAおよびその中に含まれるヨウ素を含む偏光層を使用することが可能である。
【0019】
本発明によるデバイスの偏光層は好ましくは高効率で、即ち光を非常に高い割合で偏光する。特に偏光層は、それぞれの場合で550nmの光波長において、95%より大きい、特に好ましくは98%より大きい、非常に特に好ましくは99%より大きい偏光度を有することが好ましい。本明細書において偏光度は、通過方向の透過率および遮断方向の透過率の差と、通過方向の透過率および遮断方向の透過率の和との間の商として定義される。これは、下式に対応する。
【0020】
【数1】
式中、Pは偏光度であり、T1は通過方向の透過率であり、T2は遮断方向の透過率である。
【0021】
デバイスは好ましくは、偏光層を1層のみ含む。これは好ましくは、スイッチ層の外側に面する側、即ち光源、特に太陽およびスイッチ層の間に配置される。
【0022】
偏光層は好ましくは、光を直線偏光する。
【0023】
光を直線偏光する偏光層の吸収軸は、スイッチ層の暗スイッチ状態において少なくとも1種類の二色性色素の吸収主軸に対して、好ましくは70°~110°の角度で配置される。光を直線偏光する偏光層の吸収軸は、スイッチ層の暗スイッチ状態において少なくとも1種類の二色性色素の吸収主軸に対して、特に好ましくは80°~100°、非常に特に好ましくは85°~95°、最も好ましくは90°の角度で配置される。
【0024】
偏光層の吸収軸は偏光層の面内であって、同軸に平行に偏光された光が主な割合で吸収される軸を意味すると解する。対照的に吸収軸に対して垂直に偏光された光は主な割合では吸収されず、代わりに通過できる。偏光層の吸収軸は、偏光層のいわゆる通過方向に対して垂直である。
【0025】
本発明によるデバイスは好ましくは、1種類以上、特に2種類以上の配向層を含む。配向層は好ましくは、スイッチ層の2つの側面に直接隣接している。
【0026】
本発明によるデバイスで使用できる配向層は、この目的のために当業者に既知で任意所望の層である。ポリイミド層が好ましく、ラビングされたポリイミドを含む層が特に好ましい。当業者に既知の一定の様式でラビングされたポリイミドによって分子が配向層に平行な場合(平面配向)、液晶材料の分子がラビング方向に配向する結果となる。本明細書において液晶材料の分子は配向層上の完全な平面状ではなく、むしろ僅かにプレチルト角を有することが好ましい。配向層の表面への分子の垂直配向(ホメオトロピック配向)を達成するために、配向層(非常に高いプレチルト角用のポリイミド)の材料として一定の様式で処理されたポリイミドが好ましく用いられる。更に配向軸(光配向)に従って分子の配向を達成するために、偏光に曝露して得られたポリマーを配向層として用いることができる。例示的材料は、アクリレートなどの重合性基を含むポリアクリレートまたはケイ皮酸からも成る。
【0027】
本発明によるデバイスにおいてスイッチ層を取り囲む2層の配向層の配向方向は、0°~270°の角度を囲むことが好ましい。
【0028】
本明細書において配向方向との用語は、配向層がスイッチ層の分子を配向させる方向を意味すると解する。これは例えば、配向層の製造のタイプ、ラビング方向または光配向の場合のポリマーの配向方向に依存し得る。
【0029】
スイッチ層は、好ましくは1μmおよび150μmの間、特に好ましくは2および15μmの間、非常に特に好ましくは5および10μmの間の厚さを有する。柔軟な基板を用いる本願においては、より薄いスイッチ層ほど、より安定なデバイスが結果として得られ、特に、基板層に対するスペーサーの望ましくない移動が起こりにくい。
【0030】
スイッチ層は好ましくは電圧の印加によってスイッチされ、その結果、スイッチ層内に電界が形成される。本明細書において好ましくは電圧を、液晶材料を含むスイッチ層の両側に適用される電極に印加する。電極は好ましくは、ITOまたは薄く好ましくは透明な金属および/または金属酸化物層から成り、例えば銀またはこの目的のために当業者に既知の代替材料を含む。電極は好ましくは、電気的接続を備える。電源は好ましくは、電池、充電式電池、スーパーキャパシタまたは外部電源によって提供される。
【0031】
本明細書において電圧を印加することによるスイッチは好ましくは、電圧のない暗スイッチ状態から電圧を伴う明スイッチ状態へと行われる。本明細書において暗スイッチ状態という用語は僅かに殆ど光がデバイスを通過することができない、即ちその透過率が低いスイッチ状態を意味すると解する。明スイッチ状態という用語は対応して、より多くの光がデバイスを通過することができる、即ちその透過率が比較的高いスイッチ状態を意味すると解する。
【0032】
スイッチ層の液晶材料は好ましくは、両方のスイッチ状態においてネマチックである。電圧のない状態は好ましくは、液晶材料の分子、よって少なくとも1種類の二色性色素の分子が配向層に平行に配向していることを特徴とする。これは好ましくは、対応して選択された配向層によって達成される。電圧下の状態は好ましくは、液晶材料の分子、よって二色性色素が配向層に対して垂直であることを特徴とする。
【0033】
代替的な実施形態においてデバイスは、電圧なしで存在する明スイッチ状態から電圧の印加によって暗スイッチ状態に変換される。液晶材料は好ましくは、両方の状態でネマチックである。電圧のない状態は好ましくは、液晶材料の分子、よって二色性色素が配向層に垂直に配向していることを特徴とする。これは好ましくは、対応して選択された配向層によって達成される。よって電圧下の状態は好ましくは、液晶材料の分子、よって二色性色素が配向層に平行に配向していることを特徴とする。
【0034】
好ましくは平面状態におけるスイッチ層の液晶材料の分子配向は、好ましくはスイッチ層の暗スイッチ状態に対応し、スイッチ層の厚さ全体にわたって同じであるか、またはスイッチ層内でツイストを有しているかのいずれかである。ツイストの好ましい値は、30°および360°の間、特に好ましくは90°および270°の間である。ツイストを有する場合、このツイストは好ましくは、90°の倍数である値を有する。ツイストの特に好ましい値は、90°、180°または270°である。そのツイストは、互いに対応する角度を形成するスイッチ層に隣接して使用される配向層上の配向方向によって達成される。ツイストの場合、スイッチ層の液晶材料がキラルドーパントを含むことが更に好ましい。
【0035】
キラルドーパントは好ましくは0.01重量%~3%重量%、特に好ましくは0.05重量%~1重量%の総濃度で液晶材料中で用いる。また高い値のツイストを得るためには、キラルドーパントの総濃度を3重量%より高く、好ましくは最高10重量%までで選択してもよい。
【0036】
好ましいドーパントは、以下の表に図示する化合物である。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
スイッチ層の液晶材料は更に好ましくは、1種類以上の安定剤を含む。安定剤の総濃度は、液晶材料全体の好ましくは0.00001重量%および10重量%の間、特に好ましくは0.0001重量%および1重量%の間である。
【0039】
好ましい安定剤を、以下の表に示す。
【0040】
【表3】
【0041】
【表4】
【0042】
【表5】
【0043】
【表6】
【0044】
【表7】
デバイスは好ましくは、スイッチ層が少なくとも2種類の異なる二色性色素、特に好ましくは2種類のみ、3種類のみ、4種類のみ、5種類のみまたは6種類のみの異なる二色性色素、非常に特に好ましくは2種類のみ、3種類のみまたは4種類のみの異なる二色性色素を含むことを特徴とする。
【0045】
少なくとも1種類の二色性色素は発光性、好ましくは蛍光性であることが更に好ましい。
【0046】
液晶媒体における二色性色素の吸収スペクトルは好ましくは、デバイスの黒色の印象が眼に生じるように互いに補完する。デバイスは特に好ましくは、通して見た際に全てのスイッチ状態で無色であり、ただし、灰色および黒色の印象が同様に無色と見なされる。
【0047】
液晶材料の2種類以上の二色性色素は好ましくは、可視スペクトルの大部分をカバーする。これは好ましくは、赤色光を吸収する少なくとも1種類の二色性色素、緑色から黄色光を吸収する少なくとも1種類の二色性色素および青色光を吸収する少なくとも1種類の二色性色素で達成される。
【0048】
眼に黒色または灰色に見える二色性色素の混合物を調製できる正確な方法は当業者に既知であり、例えば、Manfred Richter著、Einfuehrung in die Farbmetrik(比色分析入門)、第2版、1981年刊、ISBN 3-11-008209-8、Walter de Gruyter&Co社刊に記載されている。
【0049】
二色性色素は更に好ましくは、UV-VIS-NIR領域における、即ち、320~2000nmの範囲の波長範囲における光を主に吸収する。本明細書において、UV光、VIS光およびNIR光は上で定義される通りである。二色性色素は特に好ましくは、400~1300nmの範囲に最大吸収を有する。
【0050】
液晶材料において二色性色素の総比率は、好ましくは0.01~20重量%、特に好ましくは0.1~15重量%、非常に特に好ましくは0.2~12重量%である。1種類以上の色素のそれぞれ個々の1種類の比率は、好ましくは0.01~15重量%、好ましくは0.05~12重量%、非常に特に好ましくは0.1~10重量%である。
【0051】
少なくとも1種類の二色性色素は好ましくは、液晶材料に溶解される。色素は好ましくは、液晶材料の分子配列による配向の影響を受ける。
【0052】
少なくとも1種類の二色性色素は好ましくは、B.Bahadur著、Liquid Crystals-Applications and Uses、第3巻、1992年刊、World Scientific Publishing社、第11.2.1節に示される化合物類、特に好ましくは本明細書に存在する表に示される明示的化合物から選択される。
【0053】
少なくとも1種類の二色性色素は好ましくは、アゾ化合物類、アントラキノン類、メチン化合物類、アゾメチン化合物類、メロシアン化合物類、ナフトキノン類、テトラジン類、リレン類、特にペリレン類およびテリレン類、ベンゾチアジアゾール類、ピロメテン類ならびにジケトピロロピロール類およびから選択される。これらの内、アゾ化合物類、アントラキノン類、ベンゾチアジアゾール類(特に国際公開第2014/187529号に開示される通り)、ジケトピロロピロール類(特に国際公開第2015/090497号に開示される通り)およびリレン類(特に国際公開第2014/090373号に開示される通り)が特に好ましい。少なくとも1種類の二色性色素は非常に特に好ましくは、アゾ化合物類、ベンゾチアジアゾール色素類およびリレン色素類から選択される。
【0054】
以下の化合物は、好ましい二色性色素の例である。
【0055】
【表8】
【0056】
【表9】
【0057】
【表10】
【0058】
【表11】
【0059】
【表12】
【0060】
【表13】
【0061】
【表14】
【0062】
【表15】
【0063】
【表16】
【0064】
【表17】
【0065】
【表18】
【0066】
【表19】
【0067】
【表20】
【0068】
【表21】
【0069】
【表22】
【0070】
【表23】
【0071】
【表24】
【0072】
【表25】
【0073】
【表26】
【0074】
【表27】
【0075】
【表28】
【0076】
【表29】
【0077】
【表30】
【0078】
【表31】
スイッチ層の液晶材料は好ましくは、デバイスの動作温度でネマチック液晶である。それは特に好ましくは、デバイスの動作温度の上下±20℃の範囲内、非常に特に好ましくは±30℃の範囲内でネマチック液晶である。液晶材料は更に好ましくは、80℃より高い、特に好ましくは100℃より高い、非常に特に好ましくは120℃より高い、最も好ましくは130℃より高い透明点、好ましくはネマチック液晶状態から等方性状態への相転移を有する。
【0079】
液晶材料は更に好ましくは、3~30種類の異なる化合物、好ましくは6~20種類、特に好ましくは8~18種類の異なる化合物を含む。
【0080】
液晶材料は更に好ましくは、0.01~0.3、特に好ましくは0.04~0.27の光学異方性(Δn)を有する。液晶材料は同様に好ましくは、2~70または-1.5~-10の誘電率異方性Δεを有する。
【0081】
液晶材料の構成成分として使用できる化合物は当業者に既知であり、基本的には所望に応じて選択できる。液晶材料は、1,4-フェニレンおよび1,4-シクロヘキシレンを基礎とする構造要素を含有する少なくとも1種類の化合物を含むことが好ましい。液晶材料は特に好ましくは、1,4-フェニレンおよび1,4-シクロヘキシレンを基礎とする2個、3個または4個、特に好ましくは3個または4個の構造要素を含有する少なくとも1種類の化合物を含む。液晶材料は更に好ましくは、式(I)の化合物を含む。
【0082】
【化1】
式中Rは、1~10個のC原子を有するアルキル基から選択される。
【0083】
デバイスは好ましくは、1層以上の基板層、特に好ましくは2層のみの基板層を含み、その間にスイッチング層が配置される。基板層は好ましくは、ガラスまたはポリマー、特に好ましくはポリマーから形成される。特に偏光子に隣接する基板層において、低い複屈折率を有するポリマーが好ましい。基板層に好ましいポリマー材料は、PMMA、ポリカーボネート、PET、PEN、COPまたはPVBである。ポリマー材料を含む基板層の使用は、湾曲した基板層を多大な労力なく製造でき、対応して湾曲したガラス層よりも応力複屈折が少ないという利点を有する。更にポリマー材料を含む基板層は非常に効率的なUVフィルターを備えることができ、液晶材料および二色性色素をUV光およびそれにより生じる分解から保護する。
【0084】
本発明によるデバイスの基板層は好ましくはポリマーを含み、好ましくは光学等方性ポリマーを含む。デバイスにおいて偏光子に隣接する基板層は、特に好ましくはポリマーを含み、好ましくは光学等方性ポリマーを含む。前記基板層は好ましくは、応力複屈折が全くないかまたは僅かしかない。これは特に、ポリマーを含む基板層によって達成できる。基板層として使用できる光学等方性材料は、当業者に既知である。本発明によるデバイスにおいて、光学等方性の基板層としてリターデーションを有さないかまたは僅かに低いリターデーションを有する光学等方性ポリマーの使用が好ましい。デバイスの基板層に関連して光学等方性とは実質的に、好ましくは完全に複屈折がないことを意味し、ただし応力複屈折は、複屈折という用語に包含される。
【0085】
1層以上の更なる層がスイッチ層の観点から、偏光層および次の基板層の間に配置されることが好ましい。これらの層は好ましくは、偏光層および基板層の異なる熱膨張係数を補償する。接着層および接着フィルムから選択される層、例えば、3M社製Optically Clear AdhesiveもしくはPVB(polyvinylbutyral、ポリビニルブチラール)またはEVA(ethylene vinyl acetate、エチレンビニルアセテート)がこの目的のために好ましい。
【0086】
光スイッチデバイスは、ディスプレイ装置(ディスプレイ)またはスイッチ可能ウィンドウに使用できる。スイッチ可能ウィンドウは、領域要素を通る光の通過を均一に制御するため、特に太陽光の通過を制御するためのデバイスを意味すると解する。前記デバイスは好ましくは、スイッチ可能ウィンドウに用いられる。本明細書において均一制御とは、領域要素内の全ての点において透過が実質的に同じであることを意味すると解する。
【0087】
本明細書において領域要素は好ましくは、少なくとも0.05m、特に好ましくは少なくとも0.1m、特に好ましくは少なくとも0.2mの寸法を有する。建物の窓に使用する場合は更に大きな領域要素が好ましく、少なくとも0.5m、特に好ましくは少なくとも0.8mである。
【0088】
領域要素を通る光の通過を制御するためのデバイスは好ましくは、層の形態の混合物を含む。この層は好ましくはスイッチ可能で、即ちスイッチ層を表す。層は好ましくは、12~40μm、特に好ましくは14~30μm、非常に特に好ましくは15~25μmの厚さを有する。
【0089】
本発明によるデバイスは好ましくは、環境から空間内への太陽光の形態の光の通過を制御するのに適している。本明細書において空間は、環境から実質的に密閉された任意所望の空間でよく、例えば、建物、乗物または容器である。特に空間が環境との空気の交換が限られており、光エネルギーの形態で外部からのエネルギーの侵入が可能な光透過境界面を有する場合、デバイスは一般に任意所望の空間に使用できる。デバイスは特に好ましくは、光透過領域、例えば窓領域を介して強い日射を受ける空間に使用される。その例は外に対して大きな窓領域を有する空間および乗物、例えば、自動車、船舶または航空機、特に自動車の車内である。自動車での使用の場合、屋根領域、特にサンルーフおよびパノラマルーフにおける使用が好ましい。
【0090】
本発明によるデバイスは好ましくは比較的大きな二次元構造の開口内に配置され、ただし二次元構造自体は殆どまたは全く光を通過せず、ただし相対的に開口が光をより多く透過する。二次元構造は好ましくは、壁または外部からの空間の別の区切りである。
【0091】
本発明によるデバイスは好ましくは、国際公開第2009/141295号に好ましくは記載される通り、光および/または熱エネルギーを電気エネルギーに変換するために太陽電池または他の装置に光を輸送する光導波路システムを含有する。
【0092】
デバイスは好ましくは、建物の窓に使用される。この場合、本発明によるデバイスは光透過をスイッチできる窓の構成要素であり、特に好ましくは少なくとも1つのガラス領域を含有する窓であり、非常に特に好ましくは複数の断熱ガラスを含有する窓である。本明細書において窓は特に、フレームと、このフレームによって囲まれた少なくとも1個の窓ガラスとを含む建物内の構造を意味すると解する。それは好ましくは、断熱フレームおよび2枚以上の窓ガラス(多重断熱ガラス)を含む。好ましい実施形態によれば本発明によるデバイスは、窓のガラス領域に、特に好ましくは多重断熱ガラスの2枚の窓ガラスの間の空間に直接適用される。
【0093】
デバイスは更に好ましくは、部分的に透光性のスイッチ可能な自動車屋根またはスイッチ可能な自動車窓のアクティブスイッチ構成要素として使用される。
【0094】
本明細書において層順序は好ましくは、
・偏光層
・好ましくはガラスまたはポリマーを含む基板層
・好ましくはITOを含む導電性透明層
・配向層
・液晶材料および少なくとも1種類の二色性色素を含むスイッチ層
・配向層
・好ましくはITOを含む導電性透明層
・好ましくはガラスまたはポリマーを含む基板層
であり、
ただし偏光層は、光源に向かって、特に太陽に向かって外側に面している。
【0095】
あるいは偏光層は、2層の基板層の間または太陽から離れて面するデバイスの側に配置されてもよい。この場合、スイッチ層の外側にある層はUV光を吸収することが好ましい。特に基板層がUV吸収剤を含むこと、またはUVフィルターが基板層に適用されていることが好ましい。
【0096】
特にスイッチ可能な自動車屋根でデバイスを使用する場合、デバイスは平らではなく、むしろ空間内で湾曲していることが好ましい。これは好ましくは、湾曲した基板層を使用することで達成される。本明細書において好ましくは、光学的に等方性のポリマー基板層を使用する。これにより二次元または三次元に湾曲し、均一な透過性を有し、干渉色の変化がないデバイスを得ることが可能である。
【実施例
【0097】
<1)スイッチ層に使用する材料>
液晶化合物の構造は、略語(頭字語)によって再現される。使用した略語については、国際公開第2012/052100号、第63~89頁の説明を参照されたい。
【0098】
全ての物理的性質は、「Merck Liquid Crystals、Physical Properties of Liquid Crystals」1997年11月刊、メルク社、ドイツに従って決定され、20℃の温度で適用される。
【0099】
以下のホスト混合物を調製する。
【0100】
【表32】
以下の色素化合物を使用する。
【0101】
【化2】
【0102】
【化3】
これらを使用して、以下の組成を有する混合物M1およびM2を調製する:
M1:0.47重量%のD1、1.03重量%のD2および0.892重量%のD3を含むH1、
M2:0.6重量%のD4、0.3重量%のD5、1.0重量%のD6、1.5重量%のD7および1.5重量%のD8を含むH1。
【0103】
<2)スイッチデバイスの製造>
本発明によるデバイスは、以下の一般的な層順序を有する:
a0)ITOS XP40HT偏光子フィルム
a)10nm未満のレターデーションを有する125μmのポリカーボネートを含むポリマー層
b)インジウム亜鉛酸化物(ITO)層、200オングストローム
c)JSR社製ポリイミドAL-1054配向層、300オングストローム
d)スイッチング層、厚さ10μm
e)はc)の通り
f)はb)の通り
g)をa)の通り。
【0104】
液晶材料の分子の優先方向を達成するために、配向層をラビングする。90°のツイストを達成すべき場合、2層の配向層をデバイス内で互いに交差して、即ち、ラビング方向が互いに90°の角度を包含するように配置する。加えてこの場合、0.05重量%のキラルドーパントS-811が液晶材料中に存在する。ITO層(当業者に既知の他の導電性の透明層を代替的に使用することができる)には電気的にスイッチ可能とするために、対応するコンタクトが設けられる。電圧のない状態は、製造されるスイッチデバイスの場合の暗状態である。液晶材料の分子を配向層の面に対して直立位置に設定する電圧を印加することで、デバイスを明スイッチ状態にスイッチする。
【0105】
以下のスイッチデバイスを製造する:
E1:混合物M1を含むスイッチ層、90°ツイスト
E2:混合物M1を含むスイッチ層、0°ツイスト
E3:混合物M2を含むスイッチ層、0°ツイスト。
【0106】
<3)スイッチデバイスの性能データ>
a)スイッチ層の光透過率τv暗の決定
光透過率τv暗は、標準光源の相対スペクトル分布および標準観察者のスペクトル輝度感度を考慮して測定されたスペクトル透過率から、欧州規格EN410、式(1)(板ガラスの視感および太陽特性の決定)に従い決定される。デバイスの暗スイッチ状態における二色性色素の吸収主軸に平行に偏光された光のためのデバイスのスイッチ層の透過率τを測定する。
【0107】
スイッチ層の特性を測定するために分光計は、対照および測定用ビーム内に2個のGlan Thompson石英偏光子を備える。測定されるべきデバイスを、その表面が光線に対して正確に垂直に取り付ける。光ビームに面する第1のデバイス基板の配向方向が例えば、それが下方から上方、即ち実験室空間に対して垂直に向くよう選択される。正の二色性色素はこの方向に正確に配向するので、ツイストのない例E2およびE3の最も強い吸収主軸は、この方向と正確に平行である。(ツイストされた例E1では、第1層が同様にこの方向に正確に平行であり、最終層はこの方向に対して正確に垂直である)。
【0108】
2個のGlan Thompson偏光子は、透過率がこの角度位置で正確に可能な最低値に対応するよう配置する。
【0109】
分光透過率の測定値は対照としてスイッチ層中の色素を含まない他は同一であるデバイスと比較され、即ち、色素(1種類または多種類)を有するスイッチ層を通る光強度(分子)および色素(1種類または多種類)を有さないスイッチ層を通る光強度(分母)の商に相当する。
【0110】
【表33】
b)偏光子を有する完成デバイスの光透過率τv暗の決定
この目的のために、光透過率を計算するために偏光子を有する完成デバイスを通った光の通過後の強度が決定され(分子)、これらを偏光子を有さず色素を有さないデバイスを通った強度と比較することが異なるa)の通りの手順に従う。
【0111】
【表34】
この結果は、デバイスの暗スイッチ状態において、本発明によるデバイスで優れた暗化が達成されることを示している(τv暗=0.5%~0.7%)。加えて、非常に暗いスイッチ状態が広い温度範囲にわたって達成される。ホスト混合物の透明点より上の温度でさえ、1桁台の範囲のパーセントのτv暗の低い値が依然として得られる。
【0112】
c)透過率の角度依存性の決定
波長の関数としての透過率を、極角θおよび方位角φの組の種々の値のそれぞれの場合で、デバイスE1~E3について決定する。ここでスペクトル透過率は、光がデバイスを通過する角度とは実質的に無関係であることが見出される。これは広い波長範囲に関連する。よってデバイスは、観察者が異なる視野角から観察する場合、観察者にとって望ましくない色を有さない。更なる利点は、デバイスが暗スイッチ状態にスイッチされる場合に、デバイスが広い範囲の通過角に対して光を効果的に遮断することである。
【0113】
デバイスE1、E2およびE3の最大透過率変化を、以下の表に示す。
【0114】
【表35】
【0115】
【表36】
【0116】
【表37】
d)三次元に湾曲したデバイスの製造
2)で得られたデバイスを大きな半径を有する2個の時計皿の間にそれらを固定し、それらを時計皿に接触させてその湾曲をとるように時計皿に対して押し付けることによって湾曲形状に変換する。
【0117】
続いてデバイスをスイッチし、それらの透過率を測定する。ここで暗スイッチ状態および明スイッチ状態の両方において、デバイスの領域にわたって均一な透過が観察される。更に目に見える色の変化は、観察されない。
【0118】
これはポリマーを含む基板層を含むデバイスで、均一な透過性および色を有する湾曲したデバイスを得ることができることを示す。
【0119】
<4)ガラス基板層を含むスイッチデバイス>
デバイスを層a)およびb)の代わりに、下に示す層a’)およびb’)の層を有する点においてのみ異なる2)で上に示す通り製造する:
a’)コーニング社製、1.1mmのソーダライムガラスを含むガラス層
b’)ITO層、200オングストローム。
【0120】
これらのデバイスで、ポリマー基板層を有するデバイスについて上に与える通りの光透過率τについての同じ値が得られる。また上に示す最大透過率変化についても、同じ値が得られる。
【0121】
しかしながら予期せず容易に破損するため、余り良好ではない湾曲性を有するデバイスが製造され得る。更にガラス基板層を有するこのタイプの湾曲したデバイスは、垂線とは異なる角度から見ると色効果を示す。