(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】クリルオイルと魚油とシソ油とを含有する組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 33/115 20160101AFI20221024BHJP
A61K 35/612 20150101ALI20221024BHJP
A61K 35/60 20060101ALI20221024BHJP
A61K 35/742 20150101ALI20221024BHJP
A61K 36/535 20060101ALI20221024BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20221024BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20221024BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20221024BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20221024BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20221024BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20221024BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20221024BHJP
A23L 2/52 20060101ALN20221024BHJP
【FI】
A23L33/115
A61K35/612
A61K35/60
A61K35/742
A61K36/535
A61P3/00
A61P25/28
A61P1/16
A61P19/02
A61P29/00
A61P15/00
A23L33/135
A23L2/00 F
(21)【出願番号】P 2020205685
(22)【出願日】2020-12-11
(62)【分割の表示】P 2016254270の分割
【原出願日】2016-12-27
【審査請求日】2021-01-05
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 慎治
【審査官】澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-131043(JP,A)
【文献】サラリズム DHA&EPA うるおいの里オンラインショップ, [online], Internet Archive:Wayback Machine,2016.04.24,[Retrieved on 2020-10-19], Retrieved from the internet:<URL:https://web.archive.org/web/20160424073128/https://moist-corp.jp/items/sararizumu>
【文献】オメガ3脂肪酸 DHA EPA サプリ ( 日本製 ) うっかり 対策 サプリメント [偏った食生活に] フィッシュオイル イチョウ葉エキス エゴマ油 クリルオイル [ おめがさん 1袋 ] 60粒入 (約1か月分), [online], Amazon.co.jp, 2016.03.31,[Retrieved on 2020-10-19], Retrieved from the internet:<URL:https://www.amazon.co.jp/オメガ3脂肪酸-偏った食生活に-フィッシュオイル-イチョウ葉エキス-おめがさん/dp/B01DP3CM1I>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21D,A23L,A61K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリルオイルと魚油とシソ油とを含有する組成物であって、
当該組成物中、クリルオイル、魚油及びシソ油の配合比率(重量比)が、
クリルオイル0.5~2:魚油10~15:シソ油1~
4である、組成物。
【請求項2】
クリルオイルと魚油とシソ油とを含有する組成物において、更に納豆菌培養エキスを含有する、請求項1に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリルオイルと魚油とシソ油とを含有する組成物に関する。
【0002】
また、本発明は、クリルオイルと魚油とシソ油とを含有する組成物において、更に納豆菌培養エキスを含有する組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
深海に棲む魚には、冷たい海の中でも生きられるように低音でも固まりにくい脂分(魚油)を体内に溜めている。この油は、多価不飽和脂肪酸(エイコサペンタエン酸(EPA)
、ドコサヘキサエン酸(DHA)等)であり、動物油脂(バター、ラード等)よりも凝固し
難い。
【0004】
クリルオイルは、南極オキアミから抽出できる脂質成分である。オキアミは、動物プランクトンの一種であり、世界中の海に分布している。このクリルオイルは、前記魚油に含まれるDHAやEPAと異なり、リン脂質が結合している。クリルオイルは、そのため、親水性が高く、水との混合が容易な脂である。米国では、クリルオイルの健康効果が広く知られており、珍重されている。
【0005】
魚油及びクリルオイルは、健康効果が高い成分であるが、日持ちが悪く、劣化すると独特の臭気を発生したり、組成物が変色したりする。
【0006】
これまで、ショ糖脂肪酸エステルを多価不飽和脂肪酸用又は多価不飽和脂肪酸含有油脂用の酸化防止剤として用いる技術が開示されている(特許文献1)。その多価不飽和脂肪
酸は、リノール酸、α-リノレン酸、γ-リノレン酸、エレオステアリン酸、EPA、DHA等であり、その油脂は、鰯油、鮭油、鮪油、マリンクロレラ油、メンヘーデン油、アプリコット核油、あまに油、オレンジ種子油、かぼちゃ種子油、胡麻油、月見草種子油、ひまわり油、綿実油等である。これは、魚油等にショ糖脂肪酸エステルを添加することで、色を変えずに酸化防止効果をもたらす技術である。
【0007】
また、本発明者は、既に、ナットウキナーゼと共に、エイコサペンタエン酸(EPA)、
ドコサヘキサエン酸(DHA)等を組み合わせて含む経口組成物を開発している(特許文献2)。この経口組成物は、ナットウキナーゼの活性低下を抑制し、フィブリン分解作用を発揮する。
【0008】
これまで、魚油等の独特の臭気や変色を抑える技術は見出されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平9-59669公報
【文献】特開2016-013976公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
魚油等を含む組成物の独特の臭気や変色を抑える技術を提供する。
【0011】
本発明は、クリルオイルと魚油とシソ油とを含有する組成物、クリルオイルと魚油とシソ油とを含有する組成物において、更に納豆菌培養エキスを含有する組成物を提供するこ
とを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、魚油及びクリルオイルを含む成分が、日持ちが悪く、劣化すると独特の臭気を発生したり、組成物が変色したりすることへの対応を検討した。本発明者は、この課題について、鋭意検討を重ねた。
【0013】
本発明者は、クリルオイルと魚油とを含有する組成物に、シソ油を配合することで、組成物の保管時の臭気の発生を抑えることを発見した。
【0014】
本発明者は、また、クリルオイルと魚油とシソ油とを含有する組成物に、更に納豆菌培養エキスを配合することで、組成物の色調の変化を抑えることも発見した。
【0015】
本発明はこれらの知見に基づいて完成したものであり、下記の実施態様を含むものである。
【0016】
(I)クリルオイル-魚油-シソ油の組成物
(I-1) クリルオイルと魚油とシソ油とを含有する組成物。
【0017】
(I-2) 組成物中、クリルオイル、魚油及びシソ油の配合比率(重量比)が、
クリルオイル0.5~5:魚油5~20:シソ油0.1~10
である、(I-1)に記載の組成物。
【0018】
(I-3) 組成物中、クリルオイル、魚油及びシソ油の配合比率(重量比)が、
クリルオイル0.5~2:魚油10~15:シソ油1~5
である、(I-1)又は(I-2)に記載の組成物。
【0019】
(I-4) クリルオイルと魚油とを含有する組成物に、シソ油を配合することを特徴と
する、組成物の臭気抑制方法。
【0020】
(I-5) シソ油を含む、クリルオイルと魚油とを含有する組成物の臭気抑制剤。
【0021】
(II)クリルオイル-魚油-シソ油-納豆菌培養エキスの組成物
(II-1) クリルオイルと魚油とシソ油とを含有する組成物において、更に納豆菌培養エキスを含有する組成物。
【0022】
(II-2) 組成物中、クリルオイル、魚油、シソ油及び納豆菌培養エキスの配合比率(重量比)が、
クリルオイル0.5~5:魚油5~20:シソ油0.1~10:納豆菌培養エキス0.01~2
である、(II-1)に記載の組成物。
【0023】
(II-3) 組成物中、クリルオイル、魚油、シソ油及び納豆菌培養エキスの配合比率(重量比)が、
クリルオイル0.5~2:魚油10~15:シソ油1~5:納豆菌培養エキス0.2~1
である、(II-1)又は(II-2)に記載の組成物。
【0024】
(II-4) クリルオイルと魚油とシソ油とを含有する組成物に、納豆菌培養エキスを配合することを特徴とする、組成物の変色抑制方法。
【0025】
(II-5) 納豆菌培養エキスを含む、クリルオイルと魚油とシソ油とを含有する組成物
の変色抑制剤。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、魚油等を含む組成物の独特の臭気や変色を抑えることができる。
【0027】
本発明によれば、クリルオイルと魚油とを含有する組成物に、シソ油を配合することで、組成物の臭気を抑制することができる。
【0028】
本発明のクリルオイルと魚油とシソ油とを含有する組成物は、クリルオイルや魚油等から発生する臭気が抑制された組成物である。
【0029】
本発明によれば、クリルオイルと魚油とシソ油とを含有する組成物に、更に納豆菌培養エキスを配合することで、組成物の臭気を抑制することができると共に、組成物の変色を抑制することもできる。
【0030】
本発明のクリルオイルと魚油とシソ油と納豆菌培養エキスとを含有する組成物は、その臭気及び変色が抑制された組成物である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(I)クリルオイル-魚油-シソ油の組成物
本発明の組成物は、クリルオイルと魚油とシソ油とを含有することを特徴とする。
【0032】
クリルオイルと魚油とを含有する組成物に、シソ油を配合することで、組成物の臭気を抑制することができる。
【0033】
組成物中、クリルオイル、魚油及びシソ油の配合比率(重量比)は、クリルオイル0.5
~5:魚油5~20:シソ油0.1~10であることが好ましい。組成物中、クリルオイル、魚油
及びシソ油の配合比率(重量比)は、クリルオイル0.5~2:魚油10~15:シソ油1~5であることがより好ましい。
【0034】
本発明は、シソ油を含む、クリルオイルと魚油とを含有する組成物の臭気抑制剤である。
【0035】
本発明は、クリルオイルと魚油とを含有する組成物に、シソ油を配合することを特徴とする、組成物の臭気抑制方法である。
【0036】
クリルオイル
クリルオイルは、食品組成物に配合することができ、脳機能改善、肝機能保護、関節炎の炎症抑制、月経前症候群の改善等の健康効果を有する。
【0037】
クリルオイルは、南極オキアミから抽出される油である。クリルオイルは、エイコペンタエン酸(EPA、総脂質の18.8%)、ドコサヘキサエン酸(DHA、総脂質の10.0%)等のω-3脂肪酸が含まれている。クリルオイルは、血流を良くする、中性脂肪を減らす、悪玉コ
レステロールを減らす、善玉コレステロールを増やす等の効果があることが知られている。健康志向が高い昨今では、クリルオイルはサプリメントとして上市されている。
【0038】
クリルオイルに含まれるEPA、DHAは、鰯等の一般的な魚の油にも含まれている。EPA、DHAは、2つの脂肪酸と結合してトリグリセリドの構造を呈する。これに対して、クリルオ
イルは、2番目の脂肪酸の代わりに、リン酸基-コリンと結合した構造を呈している。クリルオイルのEPA、DHAはこのリン酸基-コリンと結合しているため、体内に効率よく吸収さ
れる。
【0039】
魚油
魚油は、食品組成物に配合することができ、血中中性脂肪値の改善、善玉コレステロールの増加、血管疾患リスクの低下等の健康効果を有する。
【0040】
魚油は、天然から得られるものであり、有効成分としてエイコサペンタエン酸(EPA)
、ドコサヘキサエン酸(DHA)等を含む。その他、魚類由来、魚卵由来、水産動物由来、
藻類由来等が有る。魚油には、EPA及びDHAのいずれか一方が単独で含まれていてもよく、またこれらの双方含んでいてもよい。
【0041】
魚油において、DHA及びEPAの含量範囲は、DHA:4~55重量%程度、EPA:10~30%程度で
ある。
【0042】
魚油は、主にEPA及びDHAを含む油脂であり、具体的には、イワシ油、マグロ油、サンマ油、カツオ油、タラ肝油等の魚油;イクラ油、タラコ油等の魚卵油;アザラシ油等の水産動物油;藻油等を用いることが好ましい。これらの油脂は、1種単独で使用してもよく、
また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0043】
20炭素鎖のEPAは、5, 8, 11, 14(ω-6)、17(ω-3)位に二重結合を有する不飽和脂
肪酸である。22炭素鎖のDHAは、4、7、10、13、16(ω-6)、19(ω-3)位に二重結合を
有する不飽和脂肪酸である。EPA及びDHAは、酸化され易く、酸化される不快な臭いが伴う。
【0044】
シソ油
シソ油は、食品組成物に配合することができ、血管疾患リスクの低下、前立腺がんのリスク低下等の健康効果を有する。
【0045】
クリルオイルと魚油とを含有する組成物に、シソ油を配合することで、組成物の臭気を抑制することができる。
【0046】
シソ油は、α-リノレン酸を多く含有する植物油である。
【0047】
クリルオイル-魚油-シソ油の組成物の配合割合
本発明の組成物において、クリルオイルと魚油とシソ油との配合割合は、シソ油により、組成物の臭気を抑制することができる範囲に調整することが好ましい。
【0048】
組成物中、クリルオイル、魚油及びシソ油の配合比率(重量比)は、クリルオイル0.5
~5:魚油5~20:シソ油0.1~10であることが好ましい。
【0049】
組成物中、クリルオイル、魚油及びシソ油の配合比率(重量比)は、クリルオイル0.5
~2:魚油10~15:シソ油1~5であることがより好ましい。
【0050】
組成物中、クリルオイル、魚油及びシソ油の配合比率(重量比)は、クリルオイル0.5
~2:魚油10~15:シソ油1~4であることが更に好ましい。
【0051】
この配合割合で、シソ油により、クリルオイルと魚油とを含む組成物の臭気を抑制することができる。
【0052】
臭気抑制剤
本発明は、シソ油を含む、クリルオイルと魚油とを含有する組成物の臭気抑制剤である。本発明は、クリルオイルと魚油とを含有する組成物に対する、シソ油を含む臭気抑制剤である。本発明のシソ油を含む組成物は、クリルオイルと魚油とを含有する組成物の臭気抑制剤として有用である。
【0053】
臭気抑制方法
本発明は、クリルオイルと魚油とを含有する組成物に、シソ油を配合することで、組成物の臭気を抑制することができる。
【0054】
本発明の組成物では、臭気抑制剤という用途は、シソ油がクリルオイルと魚油とを含有する組成物の臭気を抑制するという未知の属性を発見したことにより見いだされたものである。また、その属性により見いだされた用途は、シソ油を含む組成物について、従来知られている用途とは異なる新たなものである。
【0055】
(II)クリルオイル-魚油-シソ油-納豆菌培養エキスの組成物
本発明の組成物は、クリルオイルと魚油とシソ油とを含有する組成物において、更に納豆菌培養エキスを含有することを特等とする。クリルオイルと魚油とシソ油とを含有する組成物は、前述(I)の「クリルオイル-魚油-シソ油の組成物」を使用することができる
。
【0056】
クリルオイルと魚油とシソ油とを含有する組成物に、納豆菌培養エキスを配合することで、組成物の変色を抑制することができる。
【0057】
組成物中、クリルオイル、魚油、シソ油及び納豆菌培養エキスの配合比率(重量比)は、クリルオイル0.5~5:魚油5~20:シソ油0.1~10:納豆菌培養エキス0.01~2であるこ
とが好ましい。
【0058】
組成物中、クリルオイル、魚油、シソ油及び納豆菌培養エキスの配合比率(重量比)は、クリルオイル0.5~2:魚油10~15:シソ油1~5:納豆菌培養エキス0.2~1であることがより好ましい。
【0059】
組成物中、クリルオイル、魚油、シソ油及び納豆菌培養エキスの配合比率(重量比)は、クリルオイル0.5~2:魚油10~15:シソ油1~4:納豆菌培養エキス0.2~1であることが更に好ましい。
【0060】
本発明は、納豆菌培養エキスを含む、クリルオイルと魚油とシソ油とを含有する組成物の変色抑制剤である。
【0061】
本発明は、クリルオイルと魚油とシソ油とを含有する組成物に、納豆菌培養エキスを配合することを特徴とする、組成物の変色抑制方法である。
【0062】
クリルオイル、魚油及びシソ油については、前述の通りである。
【0063】
納豆菌培養エキス
納豆菌培養エキスは、食品組成物に配合することができ、血流改善、血栓溶解等の健康効果を有する。
【0064】
クリルオイルと魚油とシソ油とを含有する組成物に、納豆菌培養エキスを配合することで、組成物の臭気を抑制すると共に、組成物の変色を抑制することもできる。
【0065】
納豆菌培養エキスには、有効成分としてナットウキナーゼが含まれる。ナットウキナーゼは、納豆菌が産生するキナーゼであり、フィブリン分解作用を有する酵素である。
【0066】
本発明の組成物では、納豆菌培養エキスをナットウキナーゼとして含んでも良い。
【0067】
納豆菌培養エキスは、公知の納豆菌を培養する方法により得られる、納豆菌の培養物である。
【0068】
ナットウキナーゼは、公知の製造方法で得ることができる。ナットウキナーゼは、納豆菌を培養する方法、ナットウキナーゼをコードする遺伝子を組み込んだ形質転換体から得る方法、化学合成によって合成する方法等で調製することができる。本発明では、製造コストの低減等の観点から、納豆菌を培養する方法で得られたものが好ましい。
【0069】
納豆菌を培養することにより得られたナットウキナーゼを使用する場合、納豆菌の培養物を、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー等に供してナットウキナーゼを精製することができる。納豆菌の培養物を必要に応じて固液分離等の粗精製処理に供した後に、水分の除去又は乾燥させたもの等であってもよい。
【0070】
クリルオイル-魚油-シソ油-納豆菌培養エキスの組成物の配合割合
本発明の組成物において、クリルオイルと魚油とシソ油と納豆培養エキスとの配合割合は、シソ油により、組成物の臭気を抑制することができる範囲である共に、納豆培養エキスにより、組成物の変色を抑制することができる範囲に調整することが好ましい。
【0071】
組成物中、クリルオイル、魚油、シソ油及び納豆菌培養エキスの配合比率(重量比)は、クリルオイル0.5~5:魚油5~20:シソ油0.1~10:納豆菌培養エキス0.01~2であるこ
とが好ましい。組成物中、クリルオイル、魚油、シソ油及び納豆菌培養エキスの配合比率(重量比)は、クリルオイル0.5~2:魚油10~15:シソ油1~5:納豆菌培養エキス0.2~1であることがより好ましい。
【0072】
この配合割合で、シソ油により、クリルオイルと魚油とを含む組成物の臭気を抑制すると共に、納豆培養エキスにより、クリルオイルと魚油とシソ油とを含む組成物の変色を抑制することもできる。
【0073】
変色抑制剤
本発明は、納豆培養エキスを含む、クリルオイルと魚油とシソ油とを含有する組成物の変色抑制剤である。本発明は、クリルオイルと魚油とシソ油とを含有する組成物に対する、納豆培養エキスを含む臭気抑制剤である。本発明の納豆培養エキスを含む組成物は、クリルオイルと魚油とシソ油とを含有する組成物の変色抑制剤として有用である。
【0074】
変色抑制方法
本発明は、クリルオイルと魚油とシソ油とクリルオイルと魚油とを含有する組成物に、納豆培養エキスを配合することで、組成物の変色を抑制することができる。
【0075】
本発明の組成物では、変色抑制剤という用途は、納豆培養エキスがクリルオイルと魚油とシソ油を含有する組成物の変色を抑制するという未知の属性を発見したことにより見いだされたものである。また、その属性により見いだされた用途は、納豆培養エキスを含む組成物について、従来知られている用途とは異なる新たなものである。
【0076】
(III)組成物の形態
本発明の組成物、臭気抑制剤及び変色抑制剤は、クリルオイル、魚油、シソ油、納豆菌培養エキス等を含有し、本発明の効果に基づいて、商品の品質(特に臭気や外観性状)の低下が抑制できるという利点が享受できるものであれば良い。その限りにおいて、製剤の形態、使用態様、及び用途を特に限定するものではない。
【0077】
本発明の組成物の使用態様は制限されず、目的に応じて適宜設定することができる。本発明の組成物の使用態様として、食品組成物(各種保健機能食品等)や医薬組成物等、また食品組成物や医薬組成物等への添加剤等として使用することができる。
【0078】
組成物として、経口組成物、口腔用組成物等が好ましい。経口組成物として、経口医薬組成物、経口医薬部外品、食品組成物(食品添加剤を含む)等が好ましい。口腔用組成物として、口腔医薬組成物、口腔医薬部外品、口腔化粧組成物等が好ましい。
【0079】
本発明の組成物を経口医薬組成物とする場合、上述した組成物をそのまま経口医薬組成物としても良いし、医薬品の分野において許容される担体や添加剤と共に様々な剤型に調製しても良い。経口医薬組成物の剤型は、特に制限されないが、例えば、散剤、錠剤、顆粒剤、丸剤、カプセル剤(軟(ソフト)カプセル剤又は硬カプセル剤)、トローチ、チュアブル錠、ドライシロップ剤等の固形剤や、ドリンク剤、シロップ剤等の液剤が挙げられる。また、薬効成分の放出性を制御した製剤形態を有するものであっても良い(例えば、速放性製剤、徐放性製剤等)。このような剤型を有する製剤は、当業界の慣用法に従って調製することができる。
【0080】
好ましくは軟カプセル剤等の固形剤である。
【0081】
また、上記成分の他、本発明の効果が抑制されない範囲であれば、通常医薬品の添加物として許容される賦形剤、安定剤、分散剤、流動化剤、緩衝剤、湿潤剤、粘稠剤、防腐剤、pH調整剤、溶剤、溶解補助剤等の任意成分を所望に応じて添加することもできる。
【0082】
上記の経口医薬組成物の投与量(摂取量)は、製剤の用途、患者の年齢、性別、治療すべき症状の程度、及び投与方法により左右される。
【0083】
クリルオイルと魚油とシソ油とからなる組成物(混合物)、或いはクリルオイルと魚油とシソ油と納豆培養エキスとからなる組成物(混合物)は、経口組成物において、5~95
重量%程度含むことが好ましく、8~90重量%程度含むことがより好ましく、10~85重量%程度含むことが更に好ましい。
【0084】
軟(ソフト)カプセル剤
軟(ソフト)カプセル剤は、クリルオイルと魚油とシソ油とからなる組成物(混合物)、或いはクリルオイルと魚油とシソ油と納豆培養エキスとからなる組成物(混合物)を、50~95重量%程度含むことが好ましく、65~90重量%程度含むことがより好ましく、70~85重量%程度含むことが更に好ましい。
【0085】
軟(ソフト)カプセル剤は、その他の成分として、賦形剤油(大豆油等)、分散剤(グリセリン脂肪酸エステル、ミツロウ等)等を含む。
【0086】
ドリンク剤(飲料)
ドリンク剤は、クリルオイルと魚油とシソ油とからなる組成物(混合物)、或いはクリルオイルと魚油とシソ油と納豆培養エキスとからなる組成物(混合物)を、5~25重量%程度含むことが好ましく、8~20重量%程度含むことがより好ましく、10~18重量%程度含む
ことが更に好ましい。
【0087】
ドリンク剤は、その他の成分として、クエン酸、香料等を含む。
【0088】
各成分の摂取量
経口医薬組成物に含まれているクリルオイルの量に換算して、成人に対する1日あたり
の投与量が通常100mg程度となる割合を挙げることができる。コレステロール値が悪化し
、BMI<30の成人に、クリルオイル:1,000mg/日摂取した時に改善が認められている。こ
のクリルオイル有効量の1/10程度(100mg/日)の配合を目安とする。
【0089】
経口医薬組成物に含まれている魚油は、主にDHAやEPAを含む。心疾患リスク低減に必要な摂取量(900mg/日)に対する不足量補充(日本人の平均摂取量約400mg/日)として、DHA:344mg/日程度やEPA:156mg/日程度の配合を目安とする。
【0090】
経口医薬組成物に含まれているシソ油は、α-リノレン酸を55重量%程度含む。米国心臓、肺、血液研究所の疫学調査より、1090mg/日摂取で、血圧低下作用が認められている。このシソ油(α-リノレイン酸)有効量の1/10程度(α-リノレイン酸109mg/日)の配合を目安とする。
【0091】
経口医薬組成物に含まれている納豆菌培養エキスは、ナットウキナーゼとして換算することができる。ナットウキナーゼの含有量は、経口組成物の製剤形態、用途、服用量等に応じて適宜設定できる。例えば、166,666~1,333,333FU/100g、好ましくは200,000~1,333,333FU/100g、更に好ましくは333,333~1,333,333FU/100gが挙げられる。
【0092】
ナットウキナーゼの活性を示す「FU」は、財団法人日本健康・栄養食品協会が2003年1
月15日に公示したナットウ菌培養エキス食品の規格基準に従うフィブリン分解活性単位であり、具体的には、実施例の欄に記載するナットウキナーゼの活性測定方法において、酸不溶性物質を除いた反応液の275nmにおける吸光度を1分間に0.01増加させる酵素量が1FUに該当する。
【0093】
ナットウキナーゼの含有量、及びナットウキナーゼと他の成分の比率に関しして使用するナットウキナーゼの活性単位「FU」は、本発明の経口組成物の調製時に配合されるナットウキナーゼの含有量及び比率である。これは、本発明の経口組成物の調製後に残存する活性に基づいて求められるナットウキナーゼの含有量及び比率を示すものではない。
【0094】
経口医薬組成物に含まれている納豆菌培養エキスは、ナットウキナーゼ協会推奨量2,000FU/日を目安とする。
【0095】
(IV)食品組成物
本発明の組成物を食品組成物として用いることができる。
【0096】
食品組成物は、クリルオイル、魚油及びシソ油、追加で納豆菌培養エキスの生理作用に基づいて、各種の保健機能食品(栄養機能食品、特定保健用食品、サプリメント等)、病者用食品等の機能性食品として調製することができる。
【0097】
食品組成物として、錠菓(タブレットキャンデー)、キャンディー、チョコレート、ガム、キャラメル、グミ、ゼリー、ようかん、まんじゅう、スナック菓子、クッキー、せんべい等の菓子類や、アイスクリーム、ヨーグルト、フルーツソース、ミルク等の乳製品等が好ましい。食品形態は、固体であっても液体であっても良い。
【0098】
また、食品として調製する場合、継続的な摂取が行い易いように、例えば顆粒剤、散剤
、フィルム、タブレット、カプセル(軟カプセル剤又は硬カプセル剤)、錠剤(チュアブル剤等を含む)、丸剤、飲料(ドリンク剤)等の形態で調製することも可能である。
【0099】
食品組成物として、中でもカプセル剤、錠剤の形態が、摂取の簡便さの点からは好ましい。食品組成物は、食品の分野で許容される担体を用いて、常法に従って適宜調製することができる。
【0100】
本発明の食品組成物では、クリルオイルと魚油とを含有する組成物に、シソ油を配合することで、組成物の臭気を抑制することができる。
【0101】
本発明の食品組成物では、クリルオイルと魚油とシソ油とを含有する組成物に、納豆菌培養エキスを配合することで、組成物の臭気を抑制すると共に、組成物の変色を抑制することもできる。
【実施例】
【0102】
以下、本発明及びその効果を、試験例及び実施例を用いてより明確に説明する。
【0103】
但し、本発明はかかる試験例及び実施例になんら制限されるものではない。
【0104】
(1)組成物の作製
クリルオイルと魚油とを含有する組成物にシソ油を配合することで、クリルオイルと魚油とシソ油とを含有する組成物を作製した。この組成物の臭気が抑制された程度を評価した。
【0105】
クリルオイルと魚油とシソ油とを含有する組成物に納豆菌培養エキスを配合することで、クリルオイルと魚油とシソ油と納豆菌培養エキスとを含有する組成物を作製した。この組成物の臭気が抑制された程度と変色が抑制された程度とを評価した。
【0106】
(2)組成物の臭気発生及び色調変化の確認
(2-1)臭気抑制
クリルオイルと魚油とシソ油とを混合した油成分(組成物)の劣化臭の抑制を確認した。
【0107】
クリルオイルと魚油とを混合し、更にシソ油を追加配合して、この組成物を50℃1週間
保管した。
【0108】
その後、被験者による組成物が発生する臭気の確認を行なった。
【0109】
臭気評価数値
数値は10名の被験者によるデータの平均値とした。
評価0:不快でない
評価-1:やや不快
評価-2:不快
評価-3:耐えられないほど不快
【0110】
比較例1は、シソ油を含まず、クリルオイルと魚油とを含む組成物であり、これは臭気
が最も耐えられない程の不快であることを示す基準である。
【0111】
(2-2)変色抑制
更に、納豆菌培養エキスを配合した時の組成物について、その色調の変化の抑制を確認
した。
【0112】
臭気の改善が見られた区分(クリルオイルと魚油とをシソ油とを含む組成物)で、更に納豆菌培養エキス(ナットウキナーゼ含有)を配合し、色調を検査した。
【0113】
調製した組成物の色調を、室温条件下で分光色彩計にて測定した。
【0114】
器具:分光色彩計CLR-7100F(株式会社島津社製)
各組成物を蓋のできる透明容器に充填し、50℃に設定した恒温器に入れて1週間静置し
た。1週間静置後、温度を室温に戻した後、再び色調を分光色彩計で測定した。
【0115】
Labの変化量(Δ(L+a+b))
加温前後の色調から、Labの変化量(Δ(L+a+b))を求め、これを変色評価の指標とした。
【0116】
Labの変化量(Δ(L+a+b))が小さいことは、試験開始時(1週間前)からの変色の程
度が少ないことを意味する。
【0117】
比較例2は、納豆菌培養エキスを含まず、クリルオイルと魚油とシソ油とを含む組成物
であり、これはLabの変化量の最大値としての基準である。
【0118】
【0119】
(3)試験結果
【0120】
【0121】
本発明は、食品組成物として、クリルオイルを含むので、脳機能改善、肝機能保護、関節炎の炎症抑制、月経前症候群の改善等の健康効果を有する。本発明は、食品組成物として、魚油を含むので、血中中性脂肪値の改善、善玉コレステロールの増加、血管疾患リスクの低下等の健康効果を有する。本発明は、食品組成物として、シソ油を含むので、血管疾患リスクの低下、前立腺がんのリスク低下等の健康効果を有する。本発明は、食品組成物として、納豆菌培養エキスを含むので、血流改善、血栓溶解等の健康効果を有する。
【0122】
本発明によれば、魚油等を含む組成物の独特の臭気や変色を抑えることができる。
【0123】
本発明によれば、クリルオイルと魚油とを含有する組成物に、シソ油を配合することで、クリルオイルや魚油等から発生する臭気を抑制することができる。本発明によれば、クリルオイルと魚油とシソ油とを含有する組成物に、更に納豆菌培養エキスを配合することで、組成物の臭気を抑制することができると共に、組成物の変色を抑制することもできる。
【0124】
(4)処方例
ソフトカプセル剤
皮膜:ゼラチン70重量%+グリセリン30重量%
【0125】
【0126】
飲料
【0127】