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特許7163387減少した表面スクラッチを示すメモリハードディスクを研磨するための組成物および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】減少した表面スクラッチを示すメモリハードディスクを研磨するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   G11B 5/84 20060101AFI20221024BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20221024BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20221024BHJP
   C09K 3/14 20060101ALI20221024BHJP
   C09G 1/02 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
G11B5/84 A
H01L21/304 622D
B24B37/00 H
C09K3/14 550D
C09K3/14 550Z
C09G1/02
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020526585
(86)(22)【出願日】2018-10-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-12
(86)【国際出願番号】 US2018057478
(87)【国際公開番号】W WO2019099161
(87)【国際公開日】2019-05-23
【審査請求日】2021-10-04
(31)【優先権主張番号】15/817,959
(32)【優先日】2017-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500397411
【氏名又は名称】シーエムシー マテリアルズ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100219553
【氏名又は名称】板谷 一弘
(72)【発明者】
【氏名】チャン コー
【審査官】中野 和彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-043575(JP,A)
【文献】特開2001-207170(JP,A)
【文献】特開2017-139386(JP,A)
【文献】特表2017-515298(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0315417(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0166779(US,A1)
【文献】国際公開第2007/123235(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 5/84
H01L 21/304
B24B 37/00
C09K 3/14
C09G 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学機械研磨組成物であって、
(a)湿式法シリカと、
(b)
(i)式(I):R-X-(CH-OHのアルコールであって、
式中、Rは、フェニル、ピリジル、HO-(CH-、またはC~Cアルキルであり、
mは、1~6の整数であり、
nは、1~6の整数であり、
Xは、存在しないか、またはOである、式(I)のアルコールと、
(ii)式(II):R-NR-(CH-OHのアルコールであって、
式中、Rは、フェニル、ピリジル、HN-(CH-、またはC~Cアルキルであり、
は、水素またはC~Cアルキルであり、
oは、1~6の整数であり、
pは、1~6の整数である、式(II)のアルコールと、の組み合わせと、
(c)過酸化水素と、
(d)鉱酸と、
(e)水と、を含み、
前記式(I)のアルコールが、フェノキシエタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、またはベンジルアルコールであり、
前記研磨組成物が、約1~約5のpHを有する、化学機械研磨組成物。
【請求項2】
前記湿式法シリカが、約5nm~約25nmの粒径を有する、請求項1に記載の研磨組成物。
【請求項3】
前記湿式法シリカが、約5nm~約10nmの粒径を有する、請求項2に記載の研磨組成物。
【請求項4】
前記式(I)のアルコールが、フェノキシエタノールである、請求項に記載の研磨組成物。
【請求項5】
前記式(II)のアルコールが、アミノエチルアミノエタノールである、請求項1に記載の研磨組成物。
【請求項6】
前記研磨組成物が、約1000ppm~約10,000ppmの前記式(I)のアルコールおよび約100ppm~約1000ppmの前記式(II)のアルコールを含む、請求項1に記載の研磨組成物。
【請求項7】
前記研磨組成物が、約1~約2のpHを有する、請求項1に記載の研磨組成物。
【請求項8】
基板を化学機械研磨する方法であって、
(i)基板を提供することと、
(ii)研磨パッドを提供することと、
(iii)化学機械研磨組成物を提供することであって、前記化学機械研磨組成物が、
(a)湿式法シリカと、
(b)
(i)式(I):R-X-(CH-OHのアルコールであって、
式中、Rは、フェニル、ピリジル、HO-(CH-、またはC~Cアルキルであり、
mは、1~6の整数であり、
nは、1~6の整数であり、
Xは、存在しないか、またはOである、式(I)のアルコールと、
(ii)式(II):R-NR-(CH-OHのアルコールであって、
式中、Rは、フェニル、ピリジル、HN-(CH-、またはC~Cアルキルであり、
は、水素またはC~Cアルキルであり、
oは、1~6の整数であり、
pは、1~6の整数である、式(II)のアルコールと、の組み合わせと、
(c)過酸化水素と、
(d)鉱酸と、
(e)水と、を含み、
前記式(I)のアルコールが、フェノキシエタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、またはベンジルアルコールであり、
前記研磨組成物が、約1~約5のpHを有する、前記化学機械研磨組成物を提供することと、
(iv)前記基板を前記研磨パッドおよび前記化学機械研磨組成物に接触させることと、
(v)前記研磨パッドおよび前記化学機械研磨組成物を前記基板に対して動かして、前記基板の少なくとも一部を研削して、前記基板を研磨することと、を含む、方法。
【請求項9】
前記湿式法シリカが約5nm~約25nmの粒径を有する、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記式(II)のアルコールが、アミノエチルアミノエタノールである、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記研磨組成物が、約1000ppm~約10,000ppmの前記式(I)のアルコールおよび約100ppm~約1000ppmの前記式(II)のアルコールを含む、請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記基板が、ニッケル-リンでコーティングされたアルミニウムメモリディスクであり、前記ニッケル-リンの少なくとも一部が研削されて前記基板を研磨する、請求項に記載の方法。
【請求項13】
基板を化学機械研磨する方法であって、
(i)基板を提供することと、
(ii)研磨パッドを提供することと、
(iii)化学機械研磨組成物を提供することであって、前記化学機械研磨組成物が、
(a)湿式法シリカと、
(b)式(III):R-O-(CH-OHのアルコールであって、
式中、Rは、フェニル、ピリジル、HO-(CH-、またはC~Cアルキルであり、
mは、1~6の整数であり、
nは、1~6の整数である、式(III)のアルコールと、
(c)過酸化水素と、
(d)鉱酸と、
(e)水と、を含み、
前記式(III)のアルコールが、フェノキシエタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、またはベンジルアルコールであり、
前記研磨組成物が、約1~約5のpHを有する、前記化学機械研磨組成物を提供することと、
(iv)前記基板を前記研磨パッドおよび前記化学機械研磨組成物に接触させることと、
(v)前記研磨パッドおよび前記化学機械研磨組成物を前記基板に対して動かして、前記基板の少なくとも一部を研削して、前記基板を研磨することと、を含む、方法。
【請求項14】
前記湿式法シリカが、約5nm~約25nmの粒径を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記研磨組成物が、式(II):R-NR-(CH-OHのアルコールをさらに含み、式中、Rは、フェニル、ピリジル、HN-(CH-、またはC~Cアルキルであり、Rは、水素またはC~Cアルキルであり、oは、1~6の整数であり、pは、1~6の整数である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記式(II)のアルコールが、アミノエチルアミノエタノールである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記研磨組成物が、約1000ppm~約10,000ppmの前記式(III)のアルコールおよび約100ppm~約1000ppmの前記式(II)のアルコールを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記基板が、ニッケル-リンでコーティングされたアルミニウムメモリディスクであり、前記ニッケル-リンの少なくとも一部が研削されて前記基板を研磨する、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
メモリまたはリジッドディスクの記憶容量の増加に対する需要と、メモリまたはリジッドディスクの小型化の傾向(コンピュータ機器のハードドライブの小型化に関する要求)により、メモリまたはリジッドディスクの製造プロセスの重要性が強調され続けている。いくつかの化学機械研磨(CMP)組成物および半導体デバイスの製造に関連して使用する方法が存在するが、従来のCMP法や市販のCMP組成物は、メモリまたはリジッドディスクの平坦化または研磨に適していない。
【0002】
2ステップのプロセスを使用して、メモリまたはリジッドディスクを研磨することができる。無電解コーティングプロセスを使用してニッケルリンでアルミニウムをコーティングした後、ディスク表面を平坦化するために第1の研磨ステップを実行し、続いて、均一な表面を達成するために第2の研磨ステップを実行する。この第2の研磨ステップでは、典型的には、研磨ステップで使用される研磨組成物中に存在するコロイドシリカ粒子などの研磨粒子の作用により、スクラッチおよび微小欠陥が生じる。スクラッチ欠陥のサイズおよび数を減らすと、ディスクの面密度を上げることができ、ディスクの記録容量を増やすことができる。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、(a)湿式法シリカと、(b)(i)式(I)のアルコール:R-X-(CH-OHであって、式中、Rは、フェニル、ピリジル、HO-(CH-、またはC~Cアルキルであり、mは、1~6の整数であり、nは、1~6の整数、Xは、存在しないかまたはOである、アルコールと、ii)式(II)のアルコール:R-NR-(CH-OHであって、式中、Rは、フェニル、ピリジル、HN-(CH-、またはC~Cアルキルであり、Rは水素またはC~Cアルキルであり、oは、1~6の整数であり、pは、1~6の整数である、アルコールとの組み合わせと、(c)過酸化水素と、(d)鉱酸と、(e)水と、を含み、約1~約5のpHを有する、化学機械研磨組成物を提供する。
【0004】
本発明はまた、(i)基板を提供することと、(ii)研磨パッドを提供することと、(iii)(a)湿式法シリカと、(b)(i)式(I):R-X-(CH-OHのアルコールであって、式中、Rは、フェニル、ピリジル、HO-(CH-、またはC~Cアルキルであり、mは、1~6の整数であり、nは、1~6の整数であり、Xは、存在しないかまたはOである、アルコールと、ii)式(II)のアルコール:R-NR-(CH-OHであって、式中、Rは、フェニル、ピリジル、HN-(CH-、またはC~Cアルキルであり、Rは水素またはC~Cアルキルであり、oは、1~6の整数であり、pは、1~6の整数である、アルコールとの組み合わせと、(c)過酸化水素と、(d)鉱酸と、(e)水と、を含み、約1~約5のpHを有する、化学機械研磨組成物を提供することと、(iv)基板を研磨パッドおよび化学機械研磨組成物と接触させることと、(v)基板に対して研磨パッドおよび化学機械研磨組成物を動かして、基板の少なくとも一部を研削して基板を研磨することと、を含む、基板を化学機械研磨する方法も提供する。
【0005】
本発明は、さらに、(i)基板を提供することと、(ii)研磨パッドを提供することと、(iii)(a)湿式法シリカと、(b)式(III):R-O-(CH-OHのアルコールであって、式中、Rは、フェニル、ピリジル、HO-(CH-、またはC~Cアルキルであり、mは、1~6の整数であり、nは、1~6の整数である、アルコールと、(c)過酸化水素と、(d)鉱酸と、(e)水と、を含み、約1~約5のpHを有する、化学機械研磨組成物を提供することと、(iv)基板を研磨パッドおよび化学機械研磨組成物と接触させることと、(v)研磨パッドおよび化学機械研磨組成物を基板に対して動かして、基板の少なくとも一部を研削して基板を研磨することと、を含む、基板を化学機械研磨する方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明は、(a)湿式法シリカと、(b)(i)式(I):R-X-(CH-OHのアルコールであって、式中、Rは、フェニル、ピリジル、HO-(CH-、またはC~Cアルキルであり、mは、1~6の整数であり、nは、1~6の整数、Xは、存在しないかまたはOである、アルコールと、(ii)式(II):R-NR-(CH-OHのアルコールであって、式中、Rは、フェニル、ピリジル、HN-(CH-、またはC~Cアルキルであり、Rは水素またはC~Cアルキルであり、oは、1~6の整数であり、pは、1~6の整数である、アルコールとの組み合わせと、(c)過酸化水素と、(d)鉱酸と、(e)水と、を含み、から本質的になる、またはからなる、約1~約5のpHを有する、化学機械研磨組成物を提供する。
【0007】
湿式法シリカは、任意の好適な湿式法シリカであることができる。例えば、湿式法シリカは、縮合重合シリカであることができる。縮合重合シリカ粒子は、典型的には、Si(OH)を縮合してコロイド粒子を形成することにより調製し、コロイドとは、約1nm~約1000nmの平均粒径を有すると定義される。かかる研磨粒子は、米国特許第5,230,833号に従って調製することができ、またはAkzo-Nobel Bindzil 50/80、30/360、159/500、40/220、および40/130製品、Nalco 1050、1060、2327、および2329製品、ならびにDuPont、Bayer、Applied Research、Nissan Chemical、Fuso、およびClariantから入手可能な他の同様の製品などの様々な市販製品のいずれかとして得ることができる。
【0008】
いくつかの実施形態では、湿式法シリカは、実質的に球状の粒子を含む。いくつかの他の実施形態において、湿式法シリカは、不規則な形状を有する粒子を含む。
【0009】
特定の実施形態では、湿式法シリカは、アルミニウムをドープした湿式法シリカであることができる。アルミニウムをドープした湿式法シリカ粒子は、粒子表面上の四価ケイ素原子の一部が三価アルミニウム原子で置換されている。好適なアルミニウムをドープした湿式法シリカの例は、Akzo-Nobel Bindzil 257/360 FGシリカである。Bindzil 257/360 FGシリカ粒子はまた、不規則な形状も有する。
【0010】
湿式法シリカは、任意の好適な平均粒径(すなわち、平均粒子直径)を有することができる。研磨粒子の粒径は、研磨粒子を包含する最小の球の直径である。湿式法シリカは、約5nm以上、例えば、約6nm以上、約7nm以上、約8nm以上、約9nm以上、約10nm以上、約11nm以上、12nm以上、約13nm以上、約14nm以上、または約15nm以上の平均粒径を有することができる。あるいは、またはさらに、湿式法シリカは、約40nm以下、例えば、約38nm以下、約36nm以下、約34nm以下、約32nm以下、約30nm以下、約28nm以下、または約26nm以下、または約25nm以下の平均粒径を有することができる。したがって、湿式法シリカは、湿式法シリカの粒径について列挙した上記の端点のいずれか2つによって範囲付けられる平均粒径を有することができる。例えば、湿式法シリカは、約5nm~約40nm、約6nm~約40nm、約7nm~約40nm、約8nm~約40nm、約9nm~約40nm、約10nm~約40nm、約10nm~約38nm、約10nm~約36nm、約10nm~約34nm、約10nm~約32nm、約10nm~約30nm、約10nm~約28nm、約10nm~約26nm、約10nm~約25nm、約5nm~約25nm、約5nm~約20nm、約5nm~約15nm、または約5nm~約10nmの平均粒径を有することができる。
【0011】
研磨組成物は、任意の好適な量の湿式法シリカを含むことができる。典型的には、研磨組成物は、約0.2重量%以上、例えば、約0.4重量%以上、約0.6重量%以上、約0.8重量%以上、または約1重量%以上の湿式法シリカを含むことができる。あるいは、またはさらに、研磨組成物は、約10重量%以下、例えば、約9重量%以下、約8重量%以下、約7重量%以下、約6重量%以下、または約5重量%以下の湿式法シリカを含有することができる。したがって、研磨組成物は、湿式法シリカについて列挙した上記端点のいずれか2つによって範囲付けられる量の湿式法シリカを含むことができる。例えば、研磨組成物は、約0.2重量%~約10重量%の湿式法シリカ、約0.4重量%~約9重量%、約0.6重量%~約8重量%、約0.8重量%~約7重量%、約1重量%~約6重量%、または約1重量%~約5重量%の湿式法シリカを含むことができる。
【0012】
いくつかの実施形態において、研磨組成物は、2つ以上の異なる湿式法シリカを含むことができる。2つ以上の異なる湿式法シリカは、同じかまたは異なる平均粒径を有することができるが、但し、2つ以上の異なる湿式法シリカの各々が、本明細書に記載の平均粒径を有することを条件とする。
【0013】
湿式法シリカは、好ましくはコロイド安定性である研削粒子を含む。コロイドという用語は、水性キャリア中の研磨粒子の懸濁を指す。コロイド安定性とは、その懸濁液の経時的な維持を指す。本発明の文脈では、研削粒子を100mlのメスシリンダーに入れ、2時間撹拌せずに静置するとき、メスシリンダーの底部の50mlにおける粒子の濃度([B]、単位g/ml)と、メスシリンダーの上部50mlにおける粒子の濃度([T]、単位g/ml)との差を、研削組成物における粒子の初期濃度([C]、単位g/ml)で割る(すなわち{[B]-[T]}/[C]≦0.5)と0.5以下である場合、研削粒子は、コロイド的に安定であると考えられる。より好ましくは、[B]-[T]/[C]の値は0.3以下であり、最も好ましくは0.1以下である。
【0014】
研磨組成物は、(i)式(I):R-X-(CH-OHのアルコールであって、式中、Rは、フェニル、ピリジル、HO-(CH-、またはC~Cアルキルであり、mは、1~6の整数であり、nは、1~6の整数、Xは、存在しないかまたはOである、アルコールと、(ii)式(II):R-NR-(CH-OHのアルコールであって、式中、Rは、フェニル、ピリジル、HN-(CH-、またはC~Cアルキルであり、Rは水素またはC~Cアルキルであり、oは、1~6の整数であり、pは、1~6の整数である、アルコールとの組み合わせを含む。C~Cアルキル基は、直鎖または分枝鎖であることができ、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、s-ブチル、イソブチル、n-ヘプチル、イソヘプチル、n-ヘキシル、イソヘキシルなどであることができる。式(I)のアルコールおよび式(II)のアルコールは、任意の好適なかかるアルコールであることができる。式(I)のアルコールの非限定的な例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノ-s-ブチルエーテル、エチレングリコールモノヘプチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ベンジルアルコール、2-フェニルエタノール、2-フェノキシエタノール、および2-(2-ピリジル)-エタノールが挙げられる。式(II)のアルコールの非限定的な例としては、アミノエチルアミノエタノール、アミノプロピルアミノエタノール、メチルアミノエタノール、エチルアミノエタノール、プロピルアミノエタノール、ブチルアミノエタノール、ヘプチルアミノエタノール、ヘキシルアミノエタノール、および2-(N-エチル-N-フェニルアミノ)エタノールが挙げられる。好ましい実施形態では、式(I)のアルコールはフェノキシエタノール(すなわち、PhO(CHOH)であり、式(II)のアルコールはアミノエチルアミノエタノール(すなわち、HN(CHNH(CHNH)である。
【0015】
研磨組成物は、任意の好適な量の式(I)のアルコールを含む。典型的には、研磨組成物は、約500ppm以上、例えば、約750ppm以上、約1000ppm以上、約1250ppm以上、約1500ppm以上、約1750ppm以上、約2000ppm以上を含み、約2250ppm以上、約2500ppm以上、約2750ppm以上、約3000ppm以上、約3250ppm以上、約3500ppm以上、約3750ppm以上、または約4000ppm以上の式(I)のアルコールを含む。あるいは、またはさらに、研磨組成物は、約10,000ppm以下、例えば、約9750ppm以下、約9500ppm以下、約9250ppm以下、約9000ppm以下、約8750ppm以下、約8500ppm以下、約8250ppm以下、約8000ppm以下、約7750ppm以下、約7500ppm以下、約7250ppm以下、または約7000ppm以下含む。したがって、研磨組成物は、式(I)のアルコールについて列挙した上記の端点の任意の2つによって範囲付けられる量の式(I)のアルコールを含むことができる。例えば、研磨組成物は、約500ppm~約10,000ppmの式(I)のアルコール、例えば、約750ppm~約10,000ppm、約1000ppm~約10,000ppm、約1000ppm~約9500ppm、約1000ppm~約9000ppm、約1500ppm~約9000ppm、約2000ppm~約9000ppm、約2000ppm~約8500ppm、約2000ppm~約8000ppm、約2000ppm~約7500ppm、約2000ppm~約7000ppm、約2500ppm~約7000ppm、約3000ppm~約7000ppm、約3500ppm~約7000ppm、約4000ppm~約7000ppm、約4500ppm~約7000ppm、約5000ppm~約7000ppm、約5000ppm~約7500ppm、約5000ppm~約8000ppm、約5000ppm~約8500ppm、または約5000ppm~約9000ppmの式(I)のアルコールを含むことができる。
【0016】
研磨組成物は、任意の好適な量の式(I)のアルコールを含む。典型的には、研磨組成物は、約50ppm以上、例えば、約75ppm以上、約100ppm以上、約125ppm以上、約150ppm以上、約175ppm以上、約200ppm以上を含み、約225ppm以上、約250ppm以上、約275ppm以上、または約300ppm以上の式(II)のアルコールを含む。あるいは、またはさらに、研磨組成物は、約1000ppm以下の式(II)のアルコール、例えば、約975ppm以下、約950ppm以下、約925ppm以下、約900ppm以下、約875ppm以下、約850ppm以下、約825ppm以下、約800ppm以下、約775ppm以下、約750ppm以下、約725ppm以下、または約700ppm以下含む。したがって、研磨組成物は、式(II)のアルコールについて列挙した上記の端点の任意の2つによって範囲付けられる量の式(II)のアルコールを含むことができる。例えば、研磨組成物は、約50ppm~約1000ppmの式(II)のアルコール、例えば、約75ppm~約1000ppm、約100ppm~約1000ppm、約100ppm~約950ppm、約100ppm~約900ppm、約150ppm~約900ppm、約200ppm~約900ppm、約200ppm~約850ppm、約200ppm~約800ppm、約200ppm~約750ppm、約200ppm~約700ppm、約250ppm~約700ppm、または約300ppm~約700ppmの式(I)のアルコールを含むことができる。
【0017】
特定の実施形態では、研磨組成物は、式(III):R-O-(CH-OHのアルコールを含み、式中、Rは、フェニル、ピリジル、HO-(CH-、またはC~Cアルキルであり、mは、1~6の整数であり、nは、1~6の整数である。C~Cアルキル基は、直鎖または分枝鎖であることができ、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、s-ブチル、イソブチル、n-ヘプチル、イソヘプチル、n-ヘキシル、イソヘキシルなどであることができる。式(III)のアルコールは、任意の好適なかかるアルコールであることができる。式(III)のアルコールの非限定的な例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノ-s-ブチルエーテル、エチレングリコールモノヘプチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、および2-フェノキシエタノールが挙げられる。好ましい実施形態では、式(III)のアルコールは、フェノキシエタノール(すなわち、PhO(CHOH)である。
【0018】
研磨組成物は、任意の好適な量の式(III)のアルコールを含む。典型的には、研磨組成物は、約500ppm以上、例えば、約750ppm以上、約1000ppm以上、約1250ppm以上、約1500ppm以上、約1750ppm以上、約2000ppm以上を含み、約2250ppm以上、約2500ppm以上、約2750ppm以上、約3000ppm以上、約3250ppm以上、約3500ppm以上、約3750ppm以上、または約4000ppm以上の式(III)のアルコールを含む。あるいは、またはさらに、研磨組成物は、約10,000ppm以下、例えば、約9750ppm以下、約9500ppm以下、約9250ppm以下、約9000ppm以下、約8750ppm以下、約8500ppm以下、約8250ppm以下、約8000ppm以下、約7750ppm以下、約7500ppm以下、約7250ppm以下、または約7000ppm以下の式(III)のアルコールを含む。したがって、研磨組成物は、式(III)のアルコールについて列挙した上記の端点の任意の2つによって範囲付けられる量の式(III)のアルコールを含むことができる。例えば、研磨組成物は、約500ppm~約10,000ppmの式(III)のアルコール、例えば、約750ppm~約10,000ppm、約1000ppm~約10,000ppm、約1000ppm~約9500ppm、約1000ppm~約9000ppm、約1500ppm~約9000ppm、約2000ppm~約9000ppm、約2000ppm~約8500ppm、約2000ppm~約8000ppm、約2000ppm~約7500ppm、約2000ppm~約7000ppm、約2500ppm~約7000ppm、約3000ppm~約7000ppm、約3500ppm~約7000ppm、約4000ppm~約7000ppm、約4500ppm~約7000ppm、約5000ppm~約7000ppm、約5000ppm~約7500ppm、約5000ppm~約8000ppm、約5000ppm~約8500ppm、または約5000ppm~約9000ppmの式(III)のアルコールを含むことができる。
【0019】
研磨組成物は、任意の好適なpHを有することができる。典型的には、研磨組成物は、約1以上、例えば、約1.2以上、約1.4以上、約1.6以上、約1.8以上、または約2以上のpHを有することができる。あるいは、またはさらに、研磨組成物は、約5以下、例えば、約4.5以下、約4以下、約3.5以下、または約3以下のpHを有することができる。したがって、研磨組成物は、研磨組成物のpHについて列挙した上記の端点のいずれか2つによって範囲付けられるpHを有することができる。例えば、研磨組成物は、約1~約5、例えば、約1~約4.5、約1~約4、約1~約3.5、約1~約3、約1~約2.5、または約1~約2のpHを有することができる。
【0020】
研磨組成物は過酸化水素を含む。過酸化水素は、研磨組成物中に任意の好適な量で存在することができる。例えば、研磨組成物は、約0.1重量%~約10重量%の過酸化水素、例えば、約0.5重量%~約10重量%、約0.5重量%~約5重量%、約0.1重量%~約5重量%、約0.1重量%~約2.5重量%、または約0.1重量%~約1重量%の過酸化水素を含むことができる。
【0021】
研磨組成物は鉱酸を含む。好適な鉱酸の非限定的な例としては、硝酸、硫酸、およびリン酸が挙げられる。
【0022】
研磨組成物は水を含む。水は、任意の好適な水であることができ、例えば、脱イオン水または蒸留水であることができる。いくつかの実施形態では、研磨組成物は、水と組み合わせて、1つ以上の有機溶媒をさらに含むことができる。例えば、研磨組成物は、ヒドロキシル溶媒、例えば、メタノールまたはエタノール、ケトン溶媒、アミド溶媒、スルホキシド溶媒、スルホキシド溶媒などをさらに含むことができる。好ましくは、研磨組成物は純水を含む。
【0023】
研磨組成物は、研磨組成物のpHを調整するための塩基をさらに含むことができる。適切な塩基の非限定的な例には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および水酸化アンモニウムが含まれる。
【0024】
特定の実施形態では、研磨組成物は、水溶性ポリマー、特に500以上の分子量を有する水溶性ポリマーを含まないか、また実質的に含まない。研磨組成物から除外され得る500以上の分子量を有する水溶性ポリマーの例としては、多糖類、例えば、アルギン酸、ペクチン酸、カルボキシメチルセルロース、寒天、カードラン、プルラン;ポリカルボン酸、そのエステルおよび塩、例えば、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ポリリジン、ポリリンゴ酸、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸アンモニウム塩、ポリメタクリル酸ナトリウム塩、ポリアミド酸、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸、ポリフマル酸、ポリ(p-スチレンカルボン酸)、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、アミノポリアクリルアミド、ポリアクリル酸アンモニウム塩、ポリアクリル酸ナトリウム塩、ポリアミド酸、ポリアミド酸アンモニウム塩、ポリアミド酸ナトリウム塩、およびポリグリオキシル酸;ビニルポリマー、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、およびポリアクロレインなどが挙げられる。
【0025】
特定の実施形態では、研磨組成物は複素環式芳香族化合物を含まないか、または実質的に含まない。研磨組成物から除外され得る500以上の分子量を有する水溶性ポリマーの例としては、ピラジン、トリアジン、オキサジアゾール、チアジアゾール、アミノピラゾール、ピラゾール、アミノイミダゾール、メチルイミダゾール、エチルイミダゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、トリアゾール、アミノトリアゾール、メルカプトトリアゾール、テトラゾール、アミノテトラゾール、1H-ベンゾトリアゾール、1H-トリルトリアゾール、アミノベンゾトリゾール、およびそれらのアルキルまたはアミノ置換誘導体が挙げられる。
【0026】
研磨組成物は、その多くが当業者には既知である任意の好適な技術によって調製することができる。研磨組成物は、バッチプロセスまたは連続プロセスで調製することができる。一般に、研磨組成物は、その成分を任意の順序で組み合わせることにより調製することができる。本明細書で使用される「成分」という用語は、個々の成分(例えば、湿式法シリカ、式(I)のアルコール、式(II)のアルコール、式(III)のアルコール、過酸化水素、鉱酸など)ならびに、成分の任意の組み合わせ(例えば、湿式法シリカ、式(I)のアルコール、式(II)のアルコール、式(III)のアルコール、過酸化水素、鉱酸など)を含む。
【0027】
例えば、湿式法シリカは水に分散させることができる。次いで、式(I)のアルコールおよび/または式(II)のアルコールまたは式(III)のアルコール、および鉱酸を、添加し、研磨組成物に成分を組み込むことができる任意の方法により混合することができる。過酸化水素は、研磨組成物の調製中のいずれの時点でも添加することができる。使用直前に研磨組成物に過酸化水素などの1つ以上の成分を添加して、研磨組成物を使用前に調製することができる(例えば、使用前の約1分以内、または使用前の約1時間以内、または使用前の約7日以内)。研磨組成物はまた、研磨作業中に基板の表面で成分を混合することによっても調製することができる。
【0028】
研磨組成物は、湿式法シリカ、式(I)のアルコールおよび/または式(II)のアルコールまたは式(III)のアルコール、鉱酸、および水を含むワンパッケージ系として供給することができる。あるいは、湿式法シリカは、第1の容器内の水中分散液として供給することができ、式(I)のアルコールおよび/または式(II)のアルコールまたは式(III)のアルコール、および鉱酸を、第2の容器内に、乾燥形態で、または水溶液または水分散液として、供給することができる。過酸化水素は、望ましくは、研磨組成物の他の成分とは別個に供給され、例えば、エンドユーザーによって、使用直前に研磨組成物の他の成分と組み合わされる(例えば、使用前の1週間以内、使用前の1日以内、使用前の1時間以内、使用前の10分以内、または使用前の1分以内)。第1または第2の容器中の成分は乾燥形態であってもよく、他方の容器中の成分は水性分散液の形態であってもよい。さらに、第1および第2の容器中の成分が異なるpH値を有すること、あるいは実質的に同様の、または等しいpH値を有することも適切である。研磨組成物の成分の別の2つの容器、または3つ以上の容器の組み合わせは、当業者の知識の範囲内である。
【0029】
本発明の研磨組成物は、使用前に適切な量の水で希釈することを意図した濃縮物として提供することもできる。かかる実施形態では、研磨組成物濃縮物は、過酸化水素の有無にかかわらず、湿式法シリカ、式(I)のアルコール、式(II)のアルコールおよび/または鉱酸または式(III)のアルコール、および水を、適切な量の水で濃縮物を希釈した際に、過酸化水素が適切な量で既に存在していない場合、研磨組成物の各成分が、各成分について上で列挙した適切な範囲内の量で研磨組成物中に存在することになるような量で、含むことができる。例えば、湿式法シリカ、式(I)のアルコールおよび/または式(II)のアルコールまたは式(III)のアルコール、および鉱酸は各々、各成分について上記した濃度の約2倍(例えば、約3倍、約4倍、または約5倍)の量で濃縮物中に存在することができ、その濃縮物が、等量(例えば、それぞれ、2等量の水、3等量の水、または4等量の水)の水で、好適な量の過酸化水素と一緒に、希釈されるとき、各成分は、各成分について上記した範囲内の量で研磨組成物中に存在することになる。その上、当業者には理解されるように、濃縮物は、他の成分が少なくとも部分的にまたは完全に濃縮物中に溶解することを確実にするために、最終研磨組成物中に存在する水の好適な部分を含有することができる。
【0030】
本発明はまた、(i)基板を提供することと、(ii)研磨パッドを提供することと、(iii)(a)湿式法シリカと、(b)(i)式(I):R-X-(CH-OHのアルコールであって、式中、Rは、フェニル、ピリジル、HO-(CH-、またはC~Cアルキルであり、mは、1~6の整数であり、nは、1~6の整数であり、Xは、存在しないかまたはOである、アルコールと、ii)式(II):R-NR-(CH-OHのアルコールであって、式中、Rは、フェニル、ピリジル、HN-(CH-、またはC~Cアルキルであり、Rは水素またはC~Cアルキルであり、oは、1~6の整数であり、pは、1~6の整数である、アルコールとの組み合わせと、(c)過酸化水素と、(d)鉱酸と、(e)水と、を含み、その研磨組成物が、約1~約5のpHを有する、化学機械研磨組成物を提供することと、(iv)基板を研磨パッドおよび化学機械研磨組成物と接触させることと、(v)基板に対して研磨パッドおよび化学機械研磨組成物を動かして、基板の少なくとも一部を研削して基板を研磨することと、を含む、基板を化学機械研磨する方法も提供する。
【0031】
他の実施形態では、本発明は、(i)基板を提供することと、(ii)研磨パッドを提供することと、(iii)(a)湿式法シリカと、(b)式(III):R-O-(CH-OHのアルコールであって、式中、R1は、フェニル、ピリジル、HO-(CH-、またはC1~アルキルであり、mは、1~6の整数であり、nは、1~6の整数である、アルコールと、(c)過酸化水素と、(d)鉱酸と、(e)水と、を含み、その研磨組成物が、約1~約5のpHを有する、化学機械研磨組成物を提供することと、(iv)基板を研磨パッドおよび化学機械研磨組成物と接触させることと、(v)研磨パッドおよび化学機械研磨組成物を基板に対して動かして、基板の少なくとも一部を研削して基板を研磨することと、を含む、基板を化学機械研磨する方法を提供する。
【0032】
本発明の方法を使用して研磨される基板は、任意の好適な基板、特にニッケルリンを含有する基板であることができる。好ましい基板は、ニッケル-リンの少なくとも一部が研削される(すなわち、除去される)ようにニッケル-リンを含む、本質的にそれからなる、またはそれからなる、研磨のための少なくとも1つの層、特に研磨のための露出層を含む。特に好適な基板としては、ニッケルリンでコーティングされたアルミニウムディスクなどのメモリまたはリジッドディスクが挙げられるが、それらに限定されない。
【0033】
本発明の研磨方法は、化学機械研磨(CMP)装置とともに使用するのに特に好適である。通常、CMP装置は、使用時に運動し、軌道運動、直線運動、または円運動から生じる速度を有するプラテンと、プラテンと接触し、運転時にプラテンとともに運動する研磨パッドと、研磨パッドの表面に対して接触し、動かすことにより、基板が研磨されるように保持するキャリアとを含む。基板の研磨は、基板が研磨パッドおよび本発明の研磨組成物と接触して配置され、次いで研磨パッドが基板に対して運動して、基板の少なくとも一部を研削して基板を研磨することにより行われる。
【0034】
基板は、任意の好適な研磨パッド(例えば研磨表面)とともに化学機械研磨組成物で平坦化または研磨することができる。好適な研磨パッドには、例えば、織布および不織布の研磨パッドが含まれる。さらに、好適な研磨パッドは、さまざまな密度、硬度、厚さ、圧縮率、圧縮時に反発する能力、および圧縮弾性率の任意の好適なポリマーを含むことができる。好適なポリマーには、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ナイロン、フルオロカーボン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリエーテル、ポリエチレン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリプロピレン、それらの成形製品、およびそれらの混合物を含み得る。
【0035】
望ましくは、CMP装置は、その場での研磨エンドポイント検出システムをさらに含み、その多くは当技術分野で既知である。加工物の表面から反射された光または他の放射を分析することにより研磨プロセスを検査および監視する技術は、当該技術分野で既知である。そのような方法は、例えば、米国特許5,196,353号、米国特許5,433,651号、米国特許5,609,511号、米国特許5,643,046号、米国特許5,658,183号、米国特許5,730,642号、米国特許5,838,447号、米国特許5,872,633号、米国特許5,893,796号、米国特許5,949,927号、および米国特許5,964,643号に開示されている。研磨される加工物に関する研磨プロセスの進行の検査または監視により、研磨終点の決定、すなわち特定の加工物に関する研磨プロセスをいつ終了するかの決定が可能になることが望ましい。
【0036】
望ましくは、本発明の研磨組成物は、ニッケル-リンでコーティングされた基板を研磨するために使用すると、基板表面のスクラッチが著しく減少し、かつニッケル-リンの除去率が増加する。湿式法シリカおよび式(I)のアルコールおよび/または式(III)のアルコールを含む研磨組成物は、基板のスクラッチを著しく減少させ、また、式(I)のアルコールおよび/または式(III)のアルコールを含有しない研磨組成物と比較して、ニッケル-リン除去率が増加する。湿式法シリカおよび式(II)のアルコールを含む研磨組成物は、式(II)のアルコールを含有しない研磨組成物と比較して、基板のスクラッチが著しく減少し、ニッケル-リン除去率がやや低下する。湿式法シリカと、および式(I)のアルコールおよび/または式(III)のアルコールおよび式(II)のアルコールの組み合わせと、を含む研磨組成物は、式(I)のアルコールおよび/または式(III)のアルコールまたは式(II)のうちの1つのみを含む研磨組成物と比較して、また、式(I)のアルコールおよび/または式(III)のアルコールまたは式(II)のアルコールのいずれかを含有しない研磨組成物と比較して、基板スクラッチが著しく低下する。特定の実施形態では、湿式法シリカと、式(I)のアルコールおよび/または式(III)のアルコールおよび式(II)のアルコールの組み合わせと、を含む研磨組成物は、式(I)、(II)、または(III)のアルコールのいずれも含有しない研磨組成物と比較して、増加したニッケル-リン除去率を示した。
【0037】
さらに、ニッケル-リン除去率は、湿式法シリカの選択によって影響を受ける可能性がある。式(I)もしくは式(III)のアルコールと別々に組み合わせて、または式(I)のアルコールおよび式(II)のアルコールの両方と組み合わせて、不規則な粒子形状および/または>12nmなどの粒子直径を有することにより比較的機械的に強い湿式法シリカ粒子を含む研磨組成物は、アルコールを含有しない研磨組成物と比較して、ニッケル-リン除去率の増加を示す。式(II)のアルコールのみと組み合わせた不規則な粒子形状および/または>12nmなどの粒子直径を有する湿式法シリカ粒子を含む研磨組成物は、総スクラッチ数の改善および同じかまたはわずかに低いニッケル-リン除去率を示す。式(I)のアルコールおよび式(II)のアルコールの両方と組み合わせて実質的に球形の粒子形状を有することにより、比較的機械的に弱い湿式法シリカ粒子を含む研磨組成物は、総スクラッチ数の改善を示し、同じかまたはわずかに低いニッケル-リン除去率を示す。
【0038】
本発明は、以下の実施形態によって特徴付けることができる。
実施形態
【0039】
(1)実施形態(1)では、:
(a)湿式法シリカと、
(b)
(i)式(I):R-X-(CH-OHのアルコールであって、
式中、Rは、フェニル、ピリジル、HO-(CH-、またはC~Cアルキルであり、
mは、1~6の整数であり、
nは、1~6の整数であり、
Xは、存在しないか、またはOである、式(I)のアルコールと、
(ii)式(II):R-NR-(CH-OHのアルコールであって、
式中、Rは、フェニル、ピリジル、HN-(CH-、またはC~Cアルキルであり、
は、水素またはC~Cアルキルであり、
oは、1~6の整数であり、
pは、1~6の整数である、式(II)のアルコールと、の組み合わせと、
(c)過酸化水素と、
(d)鉱酸と、
(e)水と、を含む化学機械研磨組成物であって、
その研磨組成物が、約1~約5のpHを有する、化学機械研磨組成物を提示する。
【0040】
(2)実施形態(2)では、湿式法シリカが、約5nm~約25nmの粒径を有する、実施形態1の研磨組成物を提示する。
【0041】
(3)実施形態(3)では、湿式法シリカが、約5nm~約10nmの粒径を有する、実施形態1または2の研磨組成物を提示する。
【0042】
(4)実施形態(4)では、式(I)のアルコールが、フェノキシエタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、またはベンジルアルコールである、実施形態1~3のいずれか1つの研磨組成物を提示する。
【0043】
(5)実施形態(5)では、式(I)のアルコールが、フェノキシエタノールである、実施形態4の研磨組成物を提示する。
【0044】
(6)実施形態(6)では、式(II)のアルコールが、アミノエチルアミノエタノールである、実施形態1~5のいずれか1つの研磨組成物を提示する。
【0045】
(7)実施形態(7)では、研磨組成物が、約1000ppm~約10,000ppmの式(I)のアルコールおよび約100ppm~約1000ppmの式(II)のアルコールを含む、実施形態1~6のいずれか1つの研磨組成物を提示する。
【0046】
(8)実施形態(8)では、研磨組成物が約1~約2のpHを有する、実施形態1~7のいずれか1つの研磨組成物を提示する。
【0047】
実施形態(9)では、
(i)基板を提供することと、
(ii)研磨パッドを提供することと、
(iii)化学機械研磨組成物を提供することであって、その化学機械研磨組成物は、
(a)湿式法シリカと、
(b)
(i)式(I):R-X-(CH-OHのアルコールであって、
式中、Rは、フェニル、ピリジル、HO-(CH-、またはC~Cアルキルであり、
mは、1~6の整数であり、
nは、1~6の整数であり、
Xは、存在しないか、またはOである、式(I)のアルコールと、
(ii)式(II):R-NR-(CH-OHのアルコールであって、
式中、Rは、フェニル、ピリジル、HN-(CH-、またはC~Cアルキルであり、
は、水素またはC~Cアルキルであり、
oは、1~6の整数であり、
pは、1~6の整数である、式(II)のアルコールと、の組み合わせと、
(c)過酸化水素と、
(d)鉱酸と、
(e)水と、を含み、
その研磨組成物が、約1~約5のpHを有する、化学機械研磨組成物を提示することと、
(iv)基板を研磨パッドおよび化学機械研磨組成物に接触させることと、
(v)研磨パッドおよび化学機械研磨組成物を基板に対して動かして、基板の少なくとも一部を研削して、基板を研磨することと、を含む、基板を化学的機械的に研磨する方法を提示する。
【0048】
(10)実施形態(10)では、湿式法シリカが、約5nm~約25nmの粒径を有する、実施形態9の方法を提示する。
【0049】
(11)実施形態(11)では、式(I)のアルコールが、フェノキシエタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、またはベンジルアルコールである、実施形態9または10の方法を提示する。
【0050】
(12)実施形態(12)では、式(II)のアルコールが、アミノエチルアミノエタノールである、実施形態9~11のいずれか1つの方法を提示する。
【0051】
(13)実施形態(13)では、研磨組成物が、約1000ppm~約10,000ppmの式(I)のアルコールおよび約100ppm~約1000ppmの式(II)のアルコールを含む、実施形態9~12のいずれか1つの方法を提示する。
【0052】
(14)実施形態(14)では、基板がニッケル-リンでコーティングされたアルミニウムメモリディスクであり、ニッケル-リンの少なくとも一部を研削して基板を研磨する、実施形態9~13のいずれか1つの方法を提示する。
【0053】
実施形態(15)では、
(i)基板を提供することと、
(ii)研磨パッドを提供することと、
(iii)化学機械研磨組成物を提供することであって、その化学機械研磨組成物は、
(a)湿式法シリカと、
(b)式(III):R-X-(CH-OHのアルコールであって、
式中、Rは、フェニル、ピリジル、HO-(CH-、またはC~Cアルキルであり、
mは、1~6の整数であり、
nは、1~6の整数である、式(III)のアルコールと、
(c)過酸化水素と、
(d)鉱酸と、
(e)水と、を含み、
その研磨組成物が、約1~約5のpHを有する、化学機械研磨組成物を提供することと、
(iv)前記基板を前記研磨パッドおよび前記化学機械研磨組成物に接触させることと、
(v)研磨パッドおよび化学機械研磨組成物を基板に対して動かして、基板の少なくとも一部を研削して、基板を研磨することと、を含む、基板を化学機械研磨する方法を提示する。
【0054】
(16)実施形態(16)では、湿式法シリカが約5nm~約25nmの粒径を有する、実施形態15の方法を提示する。
【0055】
(17)実施形態(17)では、式(III)のアルコールがフェノキシエタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、またはベンジルアルコールである、実施形態15または16の方法を提示する。
【0056】
実施形態(18)では、研磨組成物が、式(II)のアルコール:R-NR-(CH-OHをさらに含み、式中、Rは、フェニル、ピリジル、HN-(CH-、またはC~Cアルキルであり、Rは、水素またはC1~アルキルであり、oは、1~6の整数であり、pは、1~6の整数である、実施形態15~17のいずれか1つの方法を提示する。
【0057】
(19)実施形態(19)では、式(II)のアルコールが、アミノエチルアミノエタノールである、実施形態15~18のいずれか1つの方法を提示する。
【0058】
(20)実施形態(20)では、研磨組成物が、約1000ppm~約10,000ppmの式(III)のアルコールおよび約100ppm~約1000ppmの式(II)のアルコールを含む、実施形態18または19の方法を提示する。
【0059】
(21)実施形態(21)では、基板がニッケル-リンでコーティングされたアルミニウムメモリディスクであり、ニッケル-リンの少なくとも一部を研削して基板を研磨する、実施形態15~20のいずれか1つの方法を提示する。
【実施例
【0060】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するが、もちろん、その範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0061】
以下の実施例では、ニッケルリンでコーティングされたアルミニウムディスクを、Hamai 9B ポリッシャー(Hamai Co.,Ltd,Tokyo Japan)を用いてFK1N研磨パッド(Fujibo Group,Tokyo,Japan)で、300mL/分の研磨組成物流量、110g/cmのダウンフォース、約1rpmの上部プラテン速度、約32rpmの下部プラテン速度で、研磨した。研磨後、Invenpro(商標)ISW001 (Invenpro,Selangor Darul Ehsan,Malaysia)として市販されているクリーナーで、研磨後ディスクを清浄にし、乾燥させた。研磨後ディスクの重量測定を実施して、除去率を判定した。Candela(商標)7100ウェーハ表面欠陥検査システム(KLA Tencor,Milpitas,CA)を使用して、総スクラッチ数を判定した。
実施例1
【0062】
この実施例は、ニッケル-リンでコーティングされたアルミニウムディスクを含む基板を研磨するために使用するときに、湿式法シリカおよび式(I)のアルコールを含む研磨組成物によって示される、ニッケル-リン除去率および総スクラッチ数を実証する。
【0063】
研磨組成物1A~1Jは各々、7nmの平均粒径を有し、かつ不規則な粒子形状を有する5重量%の湿式法シリカと、pH1.6の水中の0.6重量%の過酸化水素とを含有し、そのpHをHPO調整した。研磨組成物1Aは、任意の追加の成分を含有していなかった。研磨組成物1B~1Dはさらに、それぞれ0.05重量%、0.2重量%、および1重量%のエチレングリコールブチルエーテルを含有していた。研磨組成物1E~1Gはさらに、それぞれ0.05重量%、0.2重量%、および0.5重量%のベンジルアルコールを含有していた。研磨組成物1H~1Jはさらに、それぞれ0.05重量%、0.2重量%、および0.5重量%の2-フェノキシエタノールを含有していた。エチレングリコールブチルエーテル、ベンジルアルコール、および2-フェノキシエタノールは、式(I)のアルコールである。
【0064】
研磨後、ニッケル-リン除去率および総スクラッチ数を判定した。結果を表1に示す。
【表1】
【0065】
表1に示した結果から明らかなように、それぞれ1重量%、0.5重量%、および0.5重量%の式(I)のアルコールを含有していた研磨組成物1D、1G、および1Jは、式(I)のアルコールを含有していなかった研磨組成物1Aによって示されたニッケル-リン除去率のそれぞれ約109%、114%、および125%であるニッケル-リン除去率を示した。研磨組成物1D、1G、および1Jを使用すると、研磨組成物1Aによる研磨から生じる合計スクラッチ数のそれぞれ約40%、31%、および19%である合計スクラッチ数となった。これらの結果は、ニッケル-リンの研磨組成物に式(I)のアルコールを使用することによりもたらされる改善された除去率と、減少したスクラッチ数との望ましい組み合わせを実証している。
実施例2
【0066】
この実施例は、ニッケル-リンでコーティングされたアルミニウムディスクを含む基板を研磨するために使用するときに、湿式法シリカと、式(I)のアルコールのみ、式(II)のアルコールのみ、および式(I)のアルコールと式(II)のアルコールとの組み合わせと、を含む研磨組成物によって示される、ニッケル-リン除去率および総スクラッチ数を実証する。
【0067】
研磨組成物2A~2Hは各々、5重量%の湿式法シリカと、pH1.6の水中の0.6重量%の過酸化水素とを含有し、そのpHをHPOで調整した。研磨組成物2A~2Dは、7nmの粒径を有し、かつ不規則な粒子形状を有する湿式法シリカを含んでいた。研磨組成物2E~2Hは、7nmの平均粒径を有する2.5重量%の湿式法シリカおよび5nmの平均粒径を有する2.5重量%の湿式法シリカを含有し、両方の湿式法シリカは、実質的に球形の粒子形状を有する。研磨組成物2Aおよび2E(対照)は、追加成分はなんら含有していなかった。研磨組成物2Bおよび2Fは、0.03重量%のアミノエチルアミノエタノール(AEEA)(すなわち、式(II)のアルコール)をさらに含有していた。研磨組成物2Cおよび2Gは、0.03重量%の2-フェノキエタノール(POE)(すなわち、式(I)のアルコール)をさらに含有していた。研磨組成物2Dおよび2Hは、0.03重量%のアミノエチルアミノエタノールおよび0.5重量%の2-フェノキシエタノールをさらに含有していた。
【0068】
研磨後、ニッケル-リン除去率および総スクラッチ数を判定した。結果を表2に示す。
【表2】
【0069】
表2に示した結果から明らかなように、7nmの平均粒径を有し、かつ不規則な粒子形状および0.03重量%のAEEAを有する、湿式法シリカを含有していた研磨組成物2Bは、AEEAを含有していなかった研磨組成物2Aによって示された除去率の約93%および65%のニッケル-リン除去率を示した。7nmの平均粒径を有する実質的に球形の湿式法シリカと、5nmの平均粒径を有しかつ0.03重量%のAEEAを有する実質的に球形の湿式法シリカとの組み合わせを含有していた研磨組成物2Fは、AEEAを含有していなかった研磨組成物2Eによって示された除去率の約65%のニッケル-リン除去率を示した。研磨組成物2Fと比較して、研磨組成物2Bによって示された高いニッケル-リン除去率は、研磨組成物2Fに存在する実質的に球形の湿式法シリカと比較して、研磨組成物2Bに存在する不規則な形状の湿式法シリカの高い機械的強度に起因している。研磨組成物2Bおよび2Fは、研磨組成物2Aおよび2Eによってそれぞれ示された総スクラッチ数のそれぞれ58%および82%である総スクラッチ数を示した。
【0070】
7nmの平均粒径を有し、かつ不規則な粒子形状および0.5重量%のPOEを有する湿式法シリカを含有していた研磨組成物2C、ならびに7nmの平均粒径を有する実質的に球形の湿式法シリカと、5nmの平均粒径および0.5重量%のPOEを有する実質的に球形の湿式法シリカとの組み合わせを含んでいた研磨組成物2Gは、POEを含有していなかった研磨組成物2Aおよび2Eによって示された除去率のそれぞれ約149%および123%であるニッケル-リン除去率を示した。研磨組成物2Cおよび2Gは、研磨組成物2Aおよび2Eによってそれぞれ示された総スクラッチ数のそれぞれ39%および61%である総スクラッチ数を示した。
【0071】
7nmの平均粒径を有し、かつ不規則な粒子形状、0.03重量%のAEEA、および0.5重量%のPOEを有する湿式法シリカを含有していた研磨組成物2D、ならびに7nmの平均粒径を有する実質的に球形の湿式法シリカと、5nmの平均粒径、0.03重量%のAEEA、および0.5重量%のPOEを有する実質的に球形の湿式法シリカとの組み合わせを含んでいた研磨組成物2Hは、POEを含有していなかった研磨組成物2Aおよび2Eによって示された除去率のそれぞれ約118%および76%であるニッケル-リン除去率を示した。研磨組成物2Dおよび2Hは、研磨組成物2Aおよび2Eによってそれぞれ示された総スクラッチ数のそれぞれ17%および24%である総スクラッチ数を示した。
【0072】
したがって、式(I)のアルコールと式(II)のアルコールとの組み合わせを含有する研磨組成物2Dおよび2Hは、有用なニッケル-リン除去率を維持しながら、すべての研磨組成物の中で最も低い総スクラッチ数を示した。
【0073】
加えて、7nmの平均粒径を有し、かつ不規則な粒子形状を有する湿式法シリカを含み、さらにPOE、またはPOEとAEEAとの組み合わせを含んでいた、研磨組成物2Cおよび2Dは、POEまたはAEEAを含んでいなかった対照の研磨組成物によって示されたニッケル-リン除去率のそれぞれ約148%および118%であった。7nmの平均粒径を有する実質的に球形の湿式法シリカと、5nmの平均粒径を有する実質的に球形の湿式法シリカとの組み合わせを含み、さらにPOE、またはPOEとAEEAとの組み合わせを含んでいた、研磨組成物2Gおよび2Hは、POEまたはAEEAを含んでいなかった対照の研磨組成物によって示されたニッケル-リン除去率のそれぞれ約122%および77%であるニッケル-リン除去率を示した。研磨組成物2Cおよび2Dと研磨組成物2Gおよび2Hとの間のニッケル-リン除去率の違いは、研磨組成物2Gおよび2Hと比較して、研磨組成物2Cおよび2Dにおける比較的機械的に硬い湿式法シリカ粒子に起因している。しかしながら、研磨組成物2Dおよび2Hによって示された総スクラッチ数は同等であった。
実施例3
【0074】
この実施例は、ニッケル-リンでコーティングされたアルミニウムディスクを含む基板を研磨するために使用するときに、様々な粒径の湿式法シリカと、式(I)のアルコールと式(II)のアルコールとの組み合わせと、を含む研磨組成物によって示されるニッケル-リン除去率および総スクラッチ数を実証する。
【0075】
研磨組成物3A~3Jは各々、5重量%の湿式法シリカと、pH1.6の水中の0.6重量%の過酸化水素とを含有し、そのpHはHPOで調整された。研磨組成物3Aと3B、3Cと3D、3Eと3F、3Gと3H、および3Iと3Jの各ペアは、表3に示すように、同じタイプの湿式法シリカを含んでいた。研磨組成物3A、3C、3E、3G、および3Iは、追加成分をなんら含んでいなかった。研磨組成物3B、3D、3F、3H、および3Jは各々、0.03重量%のアミノエチルアミノエタノール(AEEA)(すなわち、式(II)のアルコール)と、0.5重量%の2-フェノキシエタノール(POE)(すなわち、式(I)のアルコール)との組み合わせをさらに含んでいた。
【0076】
研磨後、ニッケル-リン除去率および総スクラッチ数を判定した。結果を表3に示す。
【表3】
【0077】
表3に示した結果から明らかなように、発明の研磨組成物3B、3D、3F、3H、および3Jのすべては、比較研磨組成物3A、3C、3E、3G、および3Iによって示された総スクラッチ数の1.6%~38%の範囲の総スクラッチ数を示した。より具体的には、22nmの平均粒径を有する実質的に球形の湿式法シリカを含み、さらにAEEAおよびPOEを含んでいた研磨組成物3Jは、AEEAおよびPOEを含んでいなかった比較研磨組成物3Iによって示された総スクラッチ数の約1.6%である総スクラッチ数を示した。
【0078】
7nmの平均粒径を有し、かつ不規則な粒子形状を有する湿式法シリカを含み、さらにAEEAおよびPOEを含んでいた、研磨組成物3Bは、AEEAおよびPOEを含んでいなかった比較研磨組成物3Aによって示されたニッケル-リン除去率の約166%であるニッケル-リン除去率を示したことを除いては、AEEAおよびPOEの存在は、除去率にわずかな変化しかもたらさなかった。これらの結果は、式(I)のアルコールと式(II)のアルコールの組み合わせは、有用なNi-P除去率を望ましく維持するか、またはNi-P除去率を改善すると同時に、湿式法シリカを含む研磨組成物による研磨から生じる総スクラッチ数を著しく減少させる、ことを実証している。これらの結果はさらに、式(I)のアルコールおよび式(II)のアルコールと組み合わせた不規則な粒子形状を有する湿式法シリカを含む研磨組成物が、実質的に球形湿式法シリカを含む研磨組成物と比較して、増加したニッケルリン除去率を示すことを実証している。
実施例4
【0079】
この実施例は、湿式法シリカ、過酸化水素、およびAEEAとPOEとの組み合わせを含む研磨組成物によって示される除去率および総スクラッチ数に関する、アミノエチルアミノエタノール(AEEA)および2-フェノキシエタノール(POE)濃度の効果を実証する。
【0080】
ニッケル-リンでコーティングされたメモリディスクを含む基板を、HPOでpHを調整したpH1.6の水中に、5.0重量%の実質的に球形の湿式法シリカ(Nalco 1030C)、0.6重量%の過酸化水素、および表4に列記した様々な濃度のAEEAとPOEを含む研磨組成物4A-4Iで研磨した。0.3重量%、0.5重量%、および0.7重量%の3つのAEEA濃度において、POE濃度は、0.03重量%、0.05重量%、および0.07重量%であった。
【0081】
研磨後、各基板の除去率および総スクラッチ数を判定し、その結果を表4に示した。
【表4】
【0082】
表4に示す結果から明らかなように、ニッケル-リン除去率は、AEEAの3つの濃度すべてでPOE濃度の増加とともに増加し、AEEA濃度はニッケル-リン除去率にはほとんど影響を示さなかった(例えば、研磨組成物4A、4D、および4G;4B、4E、および4H;および4C、4F、および4IのNi-P除去率と比較されたい)。
【0083】
0.3重量%の最低POE濃度での総スクラッチ数は、0.03重量%~0.07重量%のAEEA濃度の増加とともに減少した(例えば、研磨組成物4A、4D、および4Gによって示された総スクラッチ数と比較されたい)。最高のPOE濃度での総スクラッチ数は、AEEA濃度によって有意に影響を受けなかった(例えば、研磨組成物4C、4F、および4Iによって示された総スクラッチ数と比較されたい)。所定のAEEA濃度では、POEの濃度が増加すると、総スクラッチ数は減少した(例えば、研磨組成物4A-4C、4D-4F、および4G-4Iによって示された総スクラッチ数と比較されたい)。
【0084】
本明細書に引用された刊行物、特許出願および特許を含むすべての参考文献は、各参考文献が個々にかつ具体的に参照により組み込まれることが示され、その全体が本明細書に記載されているのと同じ程度に参照により本明細書に組み込まれる。
【0085】
(特に以下の特許請求の範囲の文脈において)本発明を説明する文脈における「a」および「an」および「the」および「少なくとも1つの(at least one)」という用語および同様の指示対象の使用は、本明細書において別段の指示がない限り、または文脈で明らかに矛盾しない限り、単数および複数形の両方を包含すると解釈されるべきである。1つ以上の項目の列挙に続く「少なくとも1つの」という用語(例えば、「AおよびBのうちの少なくとも1つ」)の使用は、本明細書において別段の指示がない限り、または文脈で明らかに矛盾しない限り、列挙された項目(AまたはB)から選択される1つの項目、または列挙された項目(AおよびB)の2つ以上の任意の組み合わせを意味すると解釈されるべきである。「備える」、「有する」、「含む」および「含有する」という用語は、別段の記載がない限り、オープンエンド用語(すなわち、「含むがこれらに限定されない」を意味する)として解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書において別段の指示がない限り、範囲内にある各別個の値を個々に参照する簡略方法としての役割を果たすことを単に意図しており、各別個の値は本明細書に個別に列挙されているかのように、本明細書に組み込まれる。本明細書に記載されるすべての方法は、本明細書において別段の指示がない限り、または文脈で明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実行することができる。本明細書において提供される任意のおよびすべての例、または例示的な言葉(例えば、「~など」)の使用は、単に本発明をより明らかにすることを意図しており、別段の主張がない限り、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書中のいかなる言葉も、本発明の実施に必須であるとして特許請求されていないすべての要素を示すものとして解釈されるべきではない。
【0086】
本発明を行うために本発明者らに既知の最良の形態を含む、本発明の好ましい実施形態が本明細書に記載される。これらの好ましい実施形態の変形は、前述の説明を読むことにより当業者には明らかになり得る。本発明者らは、当業者がこのような変形を適切なものとして使用することを期待しており、本発明者らは本発明が本明細書に具体的に記載されたとおりではなく別の方法で実行されることを意図する。したがって、本発明は、適用法によって許容されるように、本明細書に添付の特許請求の範囲に列挙された主題のすべての変形および同等物を含む。さらに、本明細書において別段の指示がない限り、または文脈で明らかに矛盾しない限り、それらのすべての可能な変形における上記の要素の任意の組み合わせが本発明に包含される。