(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】検体ホルダ搬送ライン及び検体検査自動化システム
(51)【国際特許分類】
G01N 35/04 20060101AFI20221024BHJP
【FI】
G01N35/04 B
(21)【出願番号】P 2020538417
(86)(22)【出願日】2019-08-21
(86)【国際出願番号】 JP2019032541
(87)【国際公開番号】W WO2020040165
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-02-15
(31)【優先権主張番号】P 2018156202
(32)【優先日】2018-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】田村 一真
(72)【発明者】
【氏名】神原 克宏
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 正史
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05388682(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0126302(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0098503(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の方向へ検体ホルダを搬送する第一搬送ラインと、
前記第一の方向と異なる方向である第二の方向へ前記検体ホルダを搬送する第二搬送ラインと、
前記第一搬送ラインと前記第二搬送ラインとの間に設けられ、前記検体ホルダが通過する通過口を備える検体ホルダ搬送ラインであって、
前記検体ホルダが前記通過口に導かれるように、前記第一搬送ラインに対して傾斜して配置される傾斜ガイドをさらに備え、
前記検体ホルダが前記傾斜ガイドに接触すると、前記第一搬送ラインの搬送力によって、前記傾斜ガイドは押し出さ
れ、
前記検体ホルダが前記傾斜ガイドに沿って移動するにつれて、前記傾斜ガイドが元の状態に戻ることにより、前記検体ホルダが前記通過口を通過して前記第二搬送ラインに受け渡されることを特徴とする検体ホルダ搬送ライン。
【請求項2】
第一の方向へ検体ホルダを搬送する第一搬送ラインと、
前記第一の方向と異なる方向である第二の方向へ前記検体ホルダを搬送する第二搬送ラインと、
前記第一搬送ラインと前記第二搬送ラインとの間に設けられ、前記検体ホルダが通過する通過口を備える検体ホルダ搬送ラインであって、
前記検体ホルダが前記通過口に導かれるように、前記第一搬送ラインに対して傾斜して配置される傾斜ガイドをさらに備え、
前記検体ホルダが前記傾斜ガイドに接触すると、前記第一搬送ラインの搬送力によって、前記傾斜ガイドは押し出されるか撓むかし、
前記検体ホルダが前記傾斜ガイドに沿って移動するにつれて、前記傾斜ガイドが元の状態に戻ることにより、前記検体ホルダが前記通過口を通過して前記第二搬送ラインに受け渡され、
前記傾斜ガイドの一端を回転可能に支持する回転軸と、
前記検体ホルダが前記傾斜ガイドに接触したときに前記傾斜ガイドを押し出せ、前記検体ホルダが前記通過口に導かれたときに前記傾斜ガイドを元の状態に戻せる弾性力を有し、前記傾斜ガイドに接続される弾性体をさらに備えることを特徴とする検体ホルダ搬送ライン。
【請求項3】
請求項2に記載の検体ホルダ搬送ラインであって、
前記弾性体は、前記回転軸に一端が固定されるねじりバネであることを特徴とする検体ホルダ搬送ライン。
【請求項4】
請求項2に記載の検体ホルダ搬送ラインであって、
前記弾性体は、前記傾斜ガイドの他端に接続される引きバネであることを特徴とする検体ホルダ搬送ライン。
【請求項5】
第一の方向へ検体ホルダを搬送する第一搬送ラインと、
前記第一の方向と異なる方向である第二の方向へ前記検体ホルダを搬送する第二搬送ラインと、
前記第一搬送ラインと前記第二搬送ラインとの間に設けられ、前記検体ホルダが通過する通過口を備える検体ホルダ搬送ラインであって、
前記検体ホルダが前記通過口に導かれるように、前記第一搬送ラインに対して傾斜して配置される傾斜ガイドをさらに備え、
前記検体ホルダが前記傾斜ガイドに接触すると、前記第一搬送ラインの搬送力によって、前記傾斜ガイドは押し出されるか撓むかし、
前記検体ホルダが前記傾斜ガイドに沿って移動するにつれて、前記傾斜ガイドが元の状態に戻ることにより、前記検体ホルダが前記通過口を通過して前記第二搬送ラインに受け渡され、
前記傾斜ガイドの中心を支持し、前記通過口の中心に配置される支持軸をさらに備え、
前記傾斜ガイドは、前記検体ホルダが接触したときに撓み、前記検体ホルダが前記通過口に導かれたときに元の状態に戻る弾性力を有することを特徴とする検体ホルダ搬送ライン。
【請求項6】
請求項5に記載の検体ホルダ搬送ラインであって、
前記第一搬送ラインに対する前記傾斜ガイドの傾斜角を調整することにより、前記第一搬送ラインと前記第二搬送ラインとの間で前記検体ホルダを受け渡すか否かを切り替えることを特徴とする検体ホルダ搬送ライン。
【請求項7】
検体に対して前処理を行う検体検査自動化システムであって、
請求項1
乃至6のいずれか一項に記載の検体ホルダ搬送ラインを備えることを特徴とする検体検査自動化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体検査自動化システムに備えられる検体ホルダ搬送ラインに関し、特に検体ホルダの搬送方向を転換する機構に係る。
【背景技術】
【0002】
病院や検査施設では、患者などから供される血液や尿などの検体が臨床検査のための分析装置により分析される。分析に先立ち、検体検査自動化システムでは遠心分離や開栓、分注といった前処理が検体に対して行われ、前処理後の検体が分析装置に搬送される。検体検査自動化システム内での検体の搬送には、検体の入った1本の検体容器を搭載可能な検体ホルダが用いられ、検体ホルダに搭載された検体容器を任意の箇所へ搬送するために検体ホルダの方向変換が行われる。
【0003】
特許文献1には、搬送方向が異なり所定の間隔を存して平行する二つの搬送路間で、検体ホルダに相当する試験管ホルダを受け渡す方向転換機構を備える搬送方向変換装置が開示されている。特許文献1の方向転換機構は、シリンダの作動により搬送路を開閉するアームとともに、モータにより回転するホルダ係脱杆または試験管ホルダを吸着するマグネット付きの回転体によって、二つの搬送路間で試験管ホルダを受け渡す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1では、モータにより回転するホルダ係脱杆やマグネット付きの回転体が二つの搬送路間に配置されるので、それらのスペースを確保する必要がある。また方向転換機構を駆動させるアクチュエータのような駆動機構も必要となるので、装置のコストアップや、制御の複雑化をまねく。
【0006】
そこで、本発明は、新たな駆動機構を用いることなく、搬送方向の異なる搬送ライン間で検体ホルダの受け渡しが可能な検体ホルダ搬送ライン及びそれを備える検体検査自動化システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、第一の方向へ検体ホルダを搬送する第一搬送ラインと、前記第一の方向と異なる方向である第二の方向へ前記検体ホルダを搬送する第二搬送ラインと、前記第一搬送ラインと前記第二搬送ラインとの間に設けられ、前記検体ホルダが通過する通過口を備える検体ホルダ搬送ラインであって、前記検体ホルダが前記通過口に導かれるように、前記第一搬送ラインに対して傾斜して配置される傾斜ガイドをさらに備え、前記検体ホルダが前記傾斜ガイドに接触すると、前記第一搬送ラインの搬送力によって、前記傾斜ガイドは押し出されるか撓むかし、前記検体ホルダが前記傾斜ガイドに沿って移動するにつれて、前記傾斜ガイドが元の状態に戻ることにより、前記検体ホルダが前記通過口を通過して前記第二搬送ラインに受け渡されることを特徴とする。
【0008】
また本発明は、検体に対して前処理を行う検体検査自動化システムであって、前記検体ホルダ搬送ラインを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、新たな駆動機構を用いることなく、搬送方向の異なる搬送ライン間で検体ホルダの受け渡しが可能な検体ホルダ搬送ライン及びそれを備える検体検査自動化システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】検体検査自動化システムの構成例を示す模式図である。
【
図4】実施例1のターン機構による鋭角方向への検体ホルダの受け渡しを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面に従って本発明に係る検体ホルダ搬送ライン及び検体検査自動化システムの好ましい実施例について説明する。なお、以下の説明及び添付図面において、同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略することにする。
【実施例1】
【0012】
図1を用いて、検体検査自動化システム1の構成例を説明する。検体検査自動化システム1は、血液や尿などの検体が入った検体容器が投入されると、遠心分離や開栓、分注といった前処理を行い、前処理後の検体を分析装置5へ搬送するシステムであって、前処理システム3と検体移載装置2とホルダ搬送システム4を有する。なお検体検査自動化システム1は、分析後の検体等の回収も行う。
【0013】
前処理システム3は、オペレータにより投入された検体容器を検体ホルダに搭載し、検体容器が搭載された検体ホルダをベルトコンベア等の搬送装置により各前処理ユニットへ搬送して、各前処理ユニットで前処理を行わせるシステムである。なお本実施例の検体ホルダには、一本の検体容器が搭載される。前処理がなされた検体容器は、検体ホルダに搭載されたままホルダ搬送システム4へ搬送される。
【0014】
ホルダ搬送システム4は、前処理システム3と検体移載装置2の間を接続するシステムであり、検体検査自動化システム1内のレイアウトに応じて、複数の検体移載装置2に接続される。検体容器が搭載された検体ホルダは、ホルダ搬送システム4を経由して、検体移載装置2へ搬送される。
【0015】
検体移載装置2は、検体ホルダに搭載された検体容器を、複数の検体容器が搭載される検体ラックへ移載する。検体ラックには、例えば五本の検体容器が搭載される。複数の検体容器が移載された検体ラックは、分析装置5へ搬送され、分析装置5による分析処理が実行される。なお本実施例の検体移載装置2は、分析装置5における異常停止やメンテナンス等による分析処理の一時停止の場合に備えて、搬送された複数個の検体ホルダを保有できる検体バッファラインを有する。検体バッファラインは、多数の検体ホルダを省スペースで保有可能とするため、搬送方向の異なる搬送ライン間で検体ホルダの受け渡しが可能であることが好ましい。
【0016】
図2を用いて、検体移載装置2についてさらに説明する。まず検体ホルダに搭載された検体容器が分析装置5に搬送されるまでについて説明する。ホルダ搬送システム4から搬送される検体ホルダは、検体移載装置2の検体搬入ライン10に搬送され、ホルダ停止機構14によってホルダ側移載位置25に停止させられる。検体搬入ライン10は、例えばベルトコンベアであり、検体検査自動化システム1や分析装置5が停止した場合を除き
図2中の矢印の方向へ動き続ける。後述される他のラインも検体搬入ライン10と同様である。ホルダ停止機構14は、例えば検体ホルダを停止させるときに検体搬入ライン10上に突き出るバーを含み、バーが検体ホルダを堰き止めて検体搬入ライン10上で空滑りさせる。後述される他の停止機構もホルダ停止機構14と同様である。
【0017】
ホルダ側移載位置25に停止した検体ホルダに搭載された検体容器は、移載アーム22によって把持され、ホルダ側移載位置25からラック側移載位置26に配置される検体ラック27へ移載される。なお検体ラック27は、複数の検体ラック27を保有するラック供給レーン21からラック側移載位置26へ予め供給される。ラック側移載位置26において検体容器が搭載された検体ラック27は、ラック搬送ライン20によって検体移載装置2から搬出され、分析装置搬入ライン28を通じて分析装置5へ搬入される。またホルダ側移載位置25において検体容器を抜き取られて空になった検体ホルダは、検体搬入ライン10での搬送が再開され、ホルダ搬出ライン13a及び13bを経由して、ホルダ搬送システム4へ搬出される。
【0018】
次に検体移載装置2の検体バッファラインについて説明する。検体バッファラインは、バッファ搬入ライン11とバッファ搬出ライン12とホルダ分岐機構15とホルダ停止機構16とターン機構17とホルダ停止機構29を有する。バッファ搬入ライン11とバッファ搬出ライン12は、複数の検体ホルダを保有可能な搬送ラインであり、
図2中の矢印で示されるように、搬送方向が異なる。ホルダ分岐機構15は、ホルダ搬送システム4から搬送される検体ホルダを、バッファ搬入ライン11に搬入させるか検体搬入ライン10の上で直進させるかをガイドの開閉により制御する。バッファ搬入ライン11に搬入された検体ホルダは、ホルダ停止機構16で堰き止められ、ホルダ停止機構16から放出されるまでバッファ搬入ライン11に保有される。ホルダ停止機構16から放出された検体ホルダは、
図3により後述されるターン機構17によってバッファ搬出ライン12へ受け渡され、ホルダ停止機構29で堰き止められ、バッファ搬出ライン12に保有される。ホルダ停止機構29から放出された検体ホルダ、または検体搬入ライン10の上を直進した検体ホルダは、前述のように、ホルダ側移載位置25で停止し、検体容器を検体ラック27へ移載される。
【0019】
図3を用いて本実施例の要部であるターン機構17について説明する。なお
図3には、ホルダ停止機構16が複数の検体ホルダ100を堰き止めるとともに一つの検体ホルダ101を放出した状態が示される。またバッファ搬入ライン11とバッファ搬出ライン12との間には、検体ホルダ100が通過可能な大きさ、すなわち検体ホルダ100の直径以上の大きさを有する通過口45が設けられる。通過口45のバッファ搬入ライン11の上流側端部は、検体ホルダ100が通過口45を円滑に通過できるように、丸められることが好ましい。
【0020】
ターン機構17は回転軸40と傾斜ガイド41とねじりバネ42を有する。回転軸40には傾斜ガイド41の一端が回転可能に支持されるとともに、ねじりバネ42の一端が固定される。なお回転軸40はバッファ搬出ライン12上であって、通過口45よりもバッファ搬入ライン11の下流側に設けられる。傾斜ガイド41は、バッファ搬入ライン11に対して傾斜して通過口45を塞ぐように配置され、検体ホルダ100を堰き止められる程度の長さ、例えば検体ホルダ100の直径の二倍を超える長さを有する。ねじりバネ42は回転軸40と傾斜ガイド41に接続される。検体ホルダ101がホルダ停止機構16から放出される前の状態では、
図3中で点線表示される傾斜ガイド(閉)41aのごとく、ねじりバネ42の弾性力によって通過口45が閉じられた状態で傾斜ガイド41は静止する。
【0021】
ホルダ停止機構16から検体ホルダ101が放出されると、バッファ搬入ライン11によって搬送される検体ホルダ101が傾斜ガイド41に接触する。検体ホルダ101の接触後、傾斜ガイド41はバッファ搬入ライン11の搬送力によって押し出され、
図3中の傾斜ガイド(開)41bのごとく通過口45が開かれた状態になる。このとき傾斜ガイド41がバッファ搬入ライン11の搬送方向に対して傾斜しているため、検体ホルダ101は傾斜ガイド41に沿って通過口45へ導かれるように移動する。検体ホルダ101が通過口45へ移動する過程で検体ホルダ101と傾斜ガイド41との接触位置は変化し、接触位置が通過口45に近づくにつれて傾斜ガイド41にかかるモーメント力が小さくなる。つまり検体ホルダ101が通過口45に近づくにつれて、検体ホルダ101が傾斜ガイド41を押し出す力が弱まるので、ねじりバネ42の弾性力によって傾斜ガイド41が傾斜ガイド(閉)41aの状態に戻ろうとする。そして傾斜ガイド41が元の状態に戻ることにより、通過口45に導かれた検体ホルダ101はバッファ搬出ライン12へ押し出され、バッファ搬入ライン11からバッファ搬出ライン12への検体ホルダ101の受け渡しが完了する。受け渡された検体ホルダ101はバッファ搬出ライン12によって搬送される。
【0022】
本実施例によれば、バッファ搬入ライン11の搬送力によって押し出される傾斜ガイド41が検体ホルダ101を通過口45へ導き、ねじりバネ42の弾性力によって元の状態に戻ることにより、検体ホルダ101がバッファ搬出ライン12へ押し出される。すなわち、新たな駆動機構を用いることなく、搬送方向の異なるバッファ搬入ライン11とバッファ搬出ライン12との間で検体ホルダ101の受け渡しが可能となる。
【0023】
なお、ねじりバネ42のバネ係数は、通過口45に導かれた検体ホルダ101をバッファ搬出ライン12へ押し出せるとともに、バッファ搬入ライン11上の検体ホルダ101の接触により傾斜ガイド41が押し出される程度の範囲にあることが望ましい。
【0024】
また、バッファ搬入ライン11とバッファ搬出ライン12とは並列配置に限定されない。例えば
図4に示すように、バッファ搬入ライン11とバッファ搬出ライン12とが鋭角に交わっている場合であっても、本実施例のターン機構17によって、バッファ搬入ライン11からバッファ搬出ライン12へ検体ホルダ101を受け渡せる。
【実施例2】
【0025】
実施例1では、回転軸40に一端が固定されるねじりバネ42の弾性力によって、通過口45を閉じる位置に戻る傾斜ガイド41を有するターン機構17について説明した。ターン機構は実施例1の構成に限定されない。本実施例では、傾斜ガイドの動く側の先端に引きバネを有するターン機構について説明する。なお実施例1と同じ構成については同じ符号を用いて説明を省略する。
【0026】
図5を用いて本実施例のターン機構60について説明する。ターン機構60は回転軸61と傾斜ガイド62と引きバネ63を有する。回転軸61には傾斜ガイド62の一端が回転可能に支持される。なお回転軸61はバッファ搬入ライン11上であって、通過口45よりもバッファ搬入ライン11の下流側に設けられる。傾斜ガイド62は、バッファ搬入ライン11に対して傾斜して通過口45を塞ぐように配置され、検体ホルダ102を堰き止められる程度の長さ、例えば検体ホルダ102の直径の二倍を超える長さを有する。傾斜ガイド62の他端とバッファ搬入ライン11の側部の間には引きバネ63が取り付けられる。
【0027】
図5(a)に示すように検体ホルダ102が傾斜ガイド62に接触する前の状態では、引きバネ63の弾性力により傾斜ガイド62が通過口45を塞ぐような状態で静止する。検体ホルダ102がバッファ搬入ライン11によって搬送され、
図5(b)に示すように検体ホルダ102が傾斜ガイド62に接触すると、バッファ搬入ライン11の搬送力によって傾斜ガイド62が押し出される。傾斜ガイド62は押し出された後もバッファ搬入ライン11に対し傾斜しているので、検体ホルダ102は傾斜ガイド62に沿って通過口45へ導かれるように移動する。検体ホルダ102が通過口45に近づくにつれて、検体ホルダ102が傾斜ガイド62を押し出す力が弱まるので、引きバネ63の弾性力によって傾斜ガイド62が通過口45を塞ぐような状態に戻ろうとする。そして傾斜ガイド62が元の状態に戻ることにより、通過口45に導かれた検体ホルダ102はバッファ搬出ライン12へ押し出され、バッファ搬入ライン11からバッファ搬出ライン12への検体ホルダ102の受け渡しが完了する。
【0028】
本実施例によれば、バッファ搬入ライン11の搬送力によって押し出される傾斜ガイド62が検体ホルダ102を通過口45へ導き、引きバネ63の弾性力によって元の状態に戻ることにより、検体ホルダ102がバッファ搬出ライン12へ押し出される。すなわち、新たな駆動機構を用いることなく、搬送方向の異なるバッファ搬入ライン11とバッファ搬出ライン12との間で検体ホルダ102の受け渡しが可能となる。
【0029】
なお、引きバネ63のバネ係数も、実施例1のねじりバネ42と同様に、通過口45に導かれた検体ホルダ102をバッファ搬出ライン12へ押し出せるとともに、検体ホルダ102の接触により傾斜ガイド41が押し出される程度の範囲にあることが望ましい。
【0030】
また本実施例によれば、回転軸61がバッファ搬入ライン11上に設けられるので、バッファ搬入ライン11からバッファ搬出ライン12への受け渡しがないときに、バッファ搬出ライン12上を検体ホルダ103のごとく搬送することができる。
【0031】
また、傾斜ガイド62はバッファ搬入ライン11に対して傾斜して通過口45を塞ぐように配置されればよく、傾斜ガイド62の一端を回転可能に支持する回転軸61と、傾斜ガイド62の他端に取り付けられる引きバネ63の位置を入れ替えても良い。また引きバネ63を押しバネに入れ替えて、本実施例で説明したように傾斜ガイド62を動作させても良い。
【実施例3】
【0032】
実施例1ではねじりバネ42の、実施例2では引きバネ63の弾性力を利用するターン機構について説明した。ターン機構はバネの弾性力を利用する構成に限定されない。本実施例では、傾斜ガイドの撓みよる弾性力を利用するターン機構について説明する。なお実施例1と同じ構成については同じ符号を用いて説明を省略する。
【0033】
図6を用いて本実施例のターン機構70について説明する。ターン機構70は支持軸71と傾斜ガイド72を有する。支持軸71は傾斜ガイド72の中心を支持し、バッファ搬入ライン11とバッファ搬出ライン12上の間の通過口75の中心に設けられる。通過口75は、検体ホルダの直径の二倍以上の大きさを有する。傾斜ガイド72は、通過口75の大きさと同等の長さであり、バッファ搬入ライン11やバッファ搬出ライン12の搬送力により先端が撓む程度の剛性を有する。なお支持軸71はバッファ搬入ライン11等の搬送力では回転しないものの、バッファ搬入ライン11に対する傾斜ガイド72の傾斜角度は、後述されるモードの切り替えに応じて調整される。傾斜ガイド72の傾斜角度の調整には、ステッピングモータ73等が用いられても良い。ステッピングモータ73はバッファ搬入ライン11とバッファ搬出ライン12の搬送面の背面側に配置される。
【0034】
本実施例のターン機構70は、傾斜ガイド72の傾斜角度を調整することにより、バッファ搬入ライン11とバッファ搬出ライン12との間で検体ホルダを受け渡すモードと、受け渡さないモードとに切り替えることができる。
図6(a)に受け渡すモードを、
図6(b)に受け渡さないモードを示し、それぞれについて説明する。
【0035】
図6(a)では、傾斜ガイド72と通過口75の端部との距離が検体ホルダ104の直径以上となるような傾斜角度に設定される。このような傾斜角度のとき、検体ホルダ104や検体ホルダ105が傾斜ガイド72に接触すると、傾斜ガイド72はバッファ搬入ライン11等の搬送力によって撓む。傾斜ガイド72は撓むものの、バッファ搬入ライン11に対して傾斜する状態を維持するので、検体ホルダ104等は撓んだ傾斜ガイド72に沿って通過口75に導かれるように移動する。検体ホルダ104等の移動にともなって、傾斜ガイド72にかかるモーメント力が小さくなるので、撓んだ傾斜ガイド72は元の状態に戻ろうとする。そして傾斜ガイド72が元の状態に戻ることにより、通過口75に導かれた検体ホルダ104や検体ホルダ105はバッファ搬出ライン12へ押し出され、隣接する搬送ライン間での検体ホルダ104等の受け渡しが完了する。
【0036】
図6(b)では、バッファ搬入ライン11やバッファ搬出ライン12と傾斜ガイド72が平行になるような傾斜角度に設定される。このような傾斜角度のとき、通過口75は傾斜ガイド72に塞がれ、検体ホルダ106や検体ホルダ107の受け渡しはなされず、各検体ホルダを直進させることができる。
【0037】
本実施例によれば、バッファ搬入ライン11等の搬送力によって撓む傾斜ガイド72が検体ホルダ104や検体ホルダ105を通過口75へ導き、傾斜ガイド72が撓みによる弾性力によって元の状態に戻ることにより、検体ホルダ104等が隣接する搬送ラインへ押し出される。すなわち、新たな駆動機構を用いることなく、搬送方向の異なるバッファ搬入ライン11とバッファ搬出ライン12との間で検体ホルダ104等の受け渡しが可能となる。
【0038】
なお本実施例では、傾斜ガイド72の傾斜角度を調整することにより、検体ホルダを受け渡すモードと受け渡さないモードとに切り替えることができる。
【0039】
以上、本発明の複数の実施例について説明した。本発明は上記実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形しても良い。また、上記実施例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせても良い。さらに、上記実施例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除しても良い。
【符号の説明】
【0040】
1:検体検査自動化システム、2:検体移載装置、3:前処理システム、4:ホルダ搬送システム、5:分析装置、10:検体搬入ライン、11:バッファ搬入ライン、12:バッファ搬出ライン、13a:ホルダ搬出ライン、13b:ホルダ搬出ライン、14:ホルダ停止機構、15:ホルダ分岐機構、16:ホルダ停止機構、17:ターン機構、20:ラック搬送ライン、21:ラック供給レーン、22:移載アーム、25:ホルダ側移載位置、26:ラック側移載位置、27:検体ラック、28:分析装置搬入ライン、29:ホルダ停止機構、40:回転軸、41:傾斜ガイド、41a:傾斜ガイド(閉)、41b:傾斜ガイド(開)、42:ねじりバネ、45:通過口、60:ターン機構、61:回転軸、62:傾斜ガイド、63:引きバネ、70:ターン機構、71:支持軸、72:傾斜ガイド、73:ステッピングモータ、75:通過口、100:検体ホルダ、101:検体ホルダ、102:検体ホルダ、103:検体ホルダ、104:検体ホルダ、105:検体ホルダ、106:検体ホルダ、107:検体ホルダ