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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】自動分析装置用反応容器
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/02 20060101AFI20221024BHJP
【FI】
G01N35/02 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020547980
(86)(22)【出願日】2019-06-20
(86)【国際出願番号】 JP2019024425
(87)【国際公開番号】W WO2020066165
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-03-11
(31)【優先権主張番号】P 2018181229
(32)【優先日】2018-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】松岡 裕哉
(72)【発明者】
【氏名】高田 英一郎
【審査官】松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-119382(JP,A)
【文献】特開平01-229974(JP,A)
【文献】特開平09-101302(JP,A)
【文献】特開平10-325838(JP,A)
【文献】特開2014-079194(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1軸を中心とする円筒形状の反応容器を用いて検体を分析する自動分析装置において、
前記反応容器を所定温度に管理し、該反応容器内の試薬と検体からなる混合物の反応を促進するインキュベータと、
前記反応容器に対して光を照射し、該反応容器を透過した光に基づいて、該反応容器内の反応液の吸光度を測定する分光光度計と、を備え、
前記インキュベータは、前記反応容器を収容する穴を備え、
前記反応容器は、前記第1軸方向の全体の長さが、該第1軸に垂直な第2軸の方向の全体の長さ、及び、該第1軸及び該第2軸に垂直な第3軸の方向の全体の長さよりも長く形成され、前記第1軸方向における一端側の部位に、液体を分注するための開口部を備え、前記第1軸方向における他端側の部位から、該第1軸方向に延伸する辺を一辺、前記第2軸方向に延伸する辺を他辺とする第1平面を備え、前記第3軸方向における前記第1平面と対向する部位に、前記第1平面と略平行な第2平面を備え、前記第1及び第2平面の側面側の部位は、該反応容器の外側に向かう方向に曲がるように形成され、前記第1平面及び前記第2平面の前記第1軸方向の長さは、該第1軸方向の全体の長さの半分未満であり、
前記穴の内壁には、前記第1平面に対向する部位、及び、前記第2平面に対向する部位に、前記分光光度計から照射された光を透過する透光面が形成されており、
前記反応容器の外壁は、該反応容器が前記穴に収容された場合において、前記第1平面及び前記第2平面を除く部位が前記穴の内壁に密着するように形成される、自動分析装置。
【請求項2】
前記インキュベータは、
生化学用の検査を行うための反応容器を収容する第1穴と、
免疫用の検査を行うための反応容器を収容する第2穴と、を備え、
前記第1穴の内壁には前記透光面に対向するスリットが形成され、前記第2穴の内壁には前記スリットが形成されない、請求項記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記第1平面及び前記第2平面の前記第1軸方向の長さは、該第1軸方向の全体の長さの4分の1未満である、請求項1又は2記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記第1軸方向における前記他端側の部位は、半球状に形成される、請求項1又は2記載の自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自動分析装置用反応容器に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、反応容器内における検体と試薬を混合した反応液に光を照射して得られる透過光や散乱光の光量を測定する生化学自動分析装置と、標識体を付加した試薬を検体と反応させ、該標識体の発光光量を測定する免疫自動分析装置の分析方式を一つに集約した複合型自動分析装置が知られている。この複合型自動分析装置で使用される反応容器についても検討されている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
特許文献1:特許第6,245,883号公報
特許文献2:特開平10-325838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記複合型自動分析装置では、反応容器を所定温度に維持しながら、該反応容器内の反応液に光を照射して透過光や散乱光の光量を測定できることが望ましい。一方、特許文献1や2の反応容器では、光量を測定するための形状については検討されているものの、所定温度に維持するために適切な形状については考慮されていない。
【0005】
そこで、本発明の目的は、反応容器を所定温度に維持する機能を低下させることなく、反応液からの光量を測定可能な反応容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の自動分析装置用反応容器は、第1軸を中心とする円筒形状であり、第1軸方向の全体の長さは、該第1軸に垂直な第2軸の方向の全体の長さ、及び、該第1軸及び該第2軸に垂直な第3軸の方向の全体の長さよりも長く、第1軸方向における一端側の部位に、液体を分注するための開口部を備え、第1軸方向における他端側の部位から、該第1軸方向に延伸する辺を一辺、前記第2軸方向に延伸する辺を他辺とする第1平面を備え、第3軸方向における第1平面と対向する部位に、第1平面と略平行な第2平面を備え、第1及び第2平面の側面側の部位は、該反応容器の外側に向かう方向に曲がるように形成され、第1平面及び第2平面の第1軸方向の長さは、該第1軸方向の全体の長さの半分未満である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、反応容器を所定温度に維持する機能を低下させることなく、反応液からの光量を測定可能な反応容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】自動分析装置の全体構成を示す図。
図2】自動分析装置の光学系を示す図。
図3】反応容器の概略図。
図4】インキュベータの概略図。
図5】インキュベータと反応容器の関係を示す図。
図6】反応容器の概略図。
図7】反応容器の概略図。
図8】反応容器の概略図。
図9】反応容器の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて実施形態を説明する。
【0010】
図1は、自動分析装置の全体構成を示す図である。インキュベータ1には複数の反応容器2が円周上に並んでいる。反応容器2は、全ての反応で共通のものを使用し、使い捨てである。モータなどの駆動機構は、インキュベータ1を1サイクルで所定数の反応容器に相当する距離を回転駆動するよう制御される。
【0011】
試薬・検体共通ディスク3(以下、「ディスク」)の中には複数の試薬ボトル4及び検体容器5を円周上に載置可能である。本例では、試薬ボトル4が検体容器5の内周に位置しているが、検体容器5が試薬ボトルの4内周に位置していても良いし、内周、外周で区分けされずに位置するような構成でも良い。
【0012】
インキュベータ1とディスク3の間には回転及び上下動可能な第一分注機構8と第二分注機構9が設置されており、各々分注ノズルを備えている。分注ノズルにはそれぞれポンプ10、11が接続している。
【0013】
第一分注機構8、第二分注機構9は異なる分析過程の検査で使い分ける。第一分注機構8を生化学用、第二分注機構9を免疫用とすると、免疫用の第二分注機構9では検体間のコンタミネーションを防ぐ必要性が高いため分注チップ18を使用する。第一分注機構8では、生化学検査用の検体、試薬を分注する。第二分注機構9では、免疫検査用の検体、試薬を分注する。生化学検査、免疫検査のどちらの検査も行う検体については、第一分注機構8、第二分注機構9共にアクセス可能である。
【0014】
分注ノズルは回転軸を中心に円弧を描きながら移動して検体容器5から反応容器2への検体分注を行う。分注ノズルの軌道上には、ディスク3上の試薬吸引位置6、検体吸引位置7と、インキュベータ1上の第一分注位置、第二分注位置と、分注ノズルを洗浄するための洗浄槽12、13が存在する。第二分注機構9では分注チップ18を使用するため、分注チップ装着位置22及び分注チップ廃棄位置23も軌道上に存在する。
【0015】
第一分注機構8と第二分注機構9は、各々、分注ノズルの軌道及び機構間が物理的に干渉しないように配置されている。分注ノズル又は分注ノズルに装着された分注チップ18により検体と試薬を吸引後、反応容器2内で分注ノズル又は分注チップ18の吸引吐出動作により検体と試薬は攪拌され混合される。
【0016】
検体と試薬が混合された反応液を収容した反応容器2は、インキュベータ1により所定温度に管理され、所定の時間反応を促進される。
【0017】
インキュベータ1の周囲には、生化学検査用の分光光度計15が配置される。分光光度計15は、図示しない光源や検出器を備えており、検体と試薬が混合された反応液に光を照射して得られる透過光を分光して検出することにより、反応液の吸光度を測定する。
【0018】
免疫検査用の検出機構16は、インキュベータ1により所定の時間反応させた反応液を測定する。免疫検査では、標識物質を検出する方式として、電気化学発光や化学発光を原理とするものがあり、各々に適する標識体や検出領域の構造と物性が選択され、その標識体の発光反応に由来する発光量を、光電子増倍管を検出器として測定する。
【0019】
インキュベータ1で吸光度の測定が完了した反応容器2は分注チップ/反応容器搬送機構17(以下、「搬送機構」)により分注チップ/反応容器廃棄ボックス21に廃棄される。インキュベータ1により所定の時間反応させた反応液が入った反応容器2の検出機構16への移動、及び、検出機構16で測定完了した反応容器2の分注チップ/反応容器廃棄ボックス21への移動も、搬送機構17により行われる。
【0020】
搬送機構17は、インキュベータ1により所定の時間反応させた反応液が入った反応容器2の検出機構16への移動や検出機構16で測定完了した反応容器2の分注チップ/反応容器廃棄ボックス21への移動の他、反応容器トレイ20に装填されている反応容器2のインキュベータ1への移動、インキュベータ1において分光光度計15により吸光度の変化を測定完了した反応容器2の廃棄ボックス21への移動、及び、分注チップトレイ19に装填されている分注チップ18の分注チップ装着位置22への移動等を行う。
【0021】
制御部24は、各機構に接続され(接続の様子は不図示)、インキュベータ1の回転駆動、ディスク3の回転動作、分注ノズルの駆動、液体の吸引・吐出の動作等を制御する。
【0022】
図2は、自動分析装置の光学系を示す図である。該光学系は、光源101、集光レンズ102、照射スリット103、反応容器2、受光スリット105、凹面回折格子106、及び、受光器107とからなる。光源101からの光は、集光レンズ102で集光され、照射スリット103によって照射範囲を限定され、反応容器2に入射した後、反応容器2内の反応液104の吸光度に応じた光量の光が出射され、受光スリット105により受光範囲を限定され、凹面回折格子106で分光され、受光器107で受光される。ここで受光された光の波長毎の光量を電気信号に変換することにより、吸光度の測定が行われる。
【0023】
ここで、吸光度を測定するためには、反応容器に平行な2平面が必要である。しかし、インキュベータは切削により加工されるため、長方形の穴を作るのは困難かつ製造コストが高くなるという問題がある。鋳造、ダイキャスト、ロストワックス法等による加工であれば長方形でも成型できるが、切削と比較して寸法精度が悪く反応容器とディスクの隙間が大きくなるため、温度制御の精度と昇温速度が悪化する。又、鋳造、ダイキャスト、ロストワックス法では、材料中に製造時に発生するガスによって材料が充填されない空間(「巣」と呼ばれる)を含む場合があり、温度の均一性が悪化する問題もある。
【0024】
又、免疫自動分析装置では、円錐形状の分注チップを用いる。搬送機構は分注チップ上部の円筒部を把持するため、搬送機構を分注チップと反応容器の双方共に搬送するようにするためには、双方共に円筒形状であることが望ましい。
【0025】
更に、反応容器を角型にすると、反応容器とインキュベータの穴の内側とをうまく接触させることができなくなる。接触面積が少なくなると、インキュベータからの熱が反応容器に伝わりにくくなり、ひいては、温度制御性能の悪化につながる。
【0026】
そこで、以下、基本形状を円筒形状とし、透過光が通過する部位のみを平面とすることで、反応容器を所定温度に維持する機能をあまり低下させずに、反応液からの光量を測定可能な、自動分析装置用の反応容器について、説明する。
【0027】
図3は、生化学的検査、免疫血清学的検査共通の反応容器の外観及び断面を示す。反応容器は、一例としては、分析に必要な光の波長に対して十分な透過率を持つプラスチック材料で構成され、直径d(例えばd=4~10mm)、全長e(例えばe=20~50mm)の円筒形で、上方は開口部51であり、下方は半球状の底面53を備え、底面53の近傍には反応容器2の長手方向(Z軸方向)の長さがf(例えばf=3~25mm)の、対向する2つの平面54,55を形成し、該平面54と55の2平面間の距離(以下、「光路長」)はg(例えばg=3~6mm)である。例えば、e=24mmのときにf=6mm以内、即ち、反応容器のZ軸方向の全長に対して、平面のZ軸方向の長さは4分の1未満であることが望ましく、平面の短手方向(X軸方向)の長さは3mm以上であることが望ましい(例えばd=6mmのときにg=4mm)。
【0028】
対向する2つの平面54、55はそれぞれ略平行である。又、該平面の上限の位置は遷移領域56の下限の位置と接しており、該平面の下限の位置は底部53との境界になっている(該下限の位置より下から曲率が生じる)。尚、全体を3つ以上の平面で構成して多角形とすることもできるが、温度制御性能を高めるためにインキュベータ1と密着する面の面積を増大させる必要があること、及び、後述するインキュベータの切削加工を考慮すると、対向する2平面のみを備える場合が最も容易で温度制御性能が高い。
【0029】
反応容器2の開口部51側の領域と底部53側の領域との間に、テーパ状の遷移領域56を備える。該遷移領域56の遷移面の角度は、反応液中に含まれる磁性粒子が遷移面上に滞留しない角度に設定されている。尚、反応容器2の底面53は半球状でなくとも良く、円錐や平面、あるいはそれら組み合わせで構成することもできる。
【0030】
免疫項目で用いられる試薬中には磁性ビーズと呼ばれる固形成分が含まれているため、反応中に磁性ビーズが沈降しても底面以外の位置で滞留しないよう、理論的、又は、実験的に遷移領域56に必要な角度を求め、遷移領域56に磁性ビーズが滞留しない範囲で最も水平に近い角度にする。即ち、反応容器2とインキュベータ1、及び、反応液とインキュベータ1が接近する領域を最大化すれば、温度制御性能を向上できる。
【0031】
反応容器2の上部には、回転方向の位置決めのために、鋭部が底面側に向かっているくさび形あるいはそれに準ずる形状の位置決め部52を備え、搬送機構17による反応容器2挿入時の回転方向及び高さ方向の位置ずれに対し、最終的に重力によって穴62への挿入と位置決めが行われる。
【0032】
図4は、インキュベータ1の外観及び断面を示す。インキュベータ1は反応容器を保持する穴62を備え、反応容器2内の反応液の温度を所定温度に昇温、維持する役割を持ち、光路には光を通すためのスリット63、64が開けられる。光源101からの光は、平面54に対して垂直に照射するように(インキュベータ1及びインキュベータ1のスリット63,64を構成する面には照射されないように)構成する。
【0033】
尚、吸光度の測定を伴わない免疫血清学的検査の項目(免疫項目)の分析のみに使用するポジションがある場合は、温度制御性能の向上と、免疫項目の試薬への強い光の照射による悪影響を排除するため、光路上にスリット63,64を設けなくても良い。又、インキュベータ1は円盤状の金属の外周部に等間隔に反応容器を入れる穴62があけられた形状であるが、必ずしも円盤状でなくても良く、また金属製でなくとも良い。
【0034】
反応容器を入れる穴62の形状は、反応容器の対向する2平面を除いた外形に準ずる形状、即ち、円筒形状で底面は半球もしくは円錐もしく平面もしくはそれらの組み合わせ形状であり、その寸法は、インキュベータ1と反応容器の熱抵抗を最小化するため、反応容器の外形寸法のばらつきの範囲で最大の個体でも滑らかに挿入できる最小の大きさで構成される。反応容器の対向する2平面を除いた外形に準ずる形状の穴であれば、回転対称の形状のみで構成されるため、切削による加工が容易となる他、万一インキュベータ1のスリット63、64加工時に微細なバリが残ったとしても反応容器と接触しないため、反応容器に傷をつけることなく滑らかな挿入を実現できる。
【0035】
図5は、インキュベータ1に反応液65が入った反応容器2を設置した状態の断面を示す。光源から発せられ入射側スリット63を通った入射光は、平面54から入射し、反応容器2内の反応液65を透過し、対向する平面55から反応液65の吸光度に応じた光量の光が出射される。出射された光は出射側スリット64を通り、分光光度計へ入射、分光され、波長毎の光量が計測される。ここで反応容器2の円筒部はインキュベータ1と密着するため、一定の温度に制御されたインキュベータ1から反応容器2及び反応液65へと熱が伝えられ、迅速にインキュベータ1と同じ温度まで昇温される。一方、反応容器2に設けられた2平面54、55は、インキュベータ1に密着しないため、2平面から伝わる熱量は小さく、昇温への寄与が小さい。従って、反応容器2に設ける平面を吸光度測定に必要な最小限の2面のみとすることで、最も高い昇温性能を得ることができる。
【0036】
対向する2平面の上端の位置(平面の上端と遷移領域56の境界)は、理論的、又は実験的に求められた最小限の必要な光束に加え、部品寸法の公差に起因する光束の位置ずれの最大値を、公差の積み上げ又は統計的手法によって求め、最小限の光束に公差の最大値を加えた大きさの平面を確保できる範囲において最小の面積を対向する2平面とする。これにより、インキュベータと反応容器の接触面積を最大化することができ、温度制御性能を向上できる。この時、該反応容器を用いる自動分析装置の最小の反応液量(検体と試薬の合計液量)は、平面部を全て満たし、かつ液面に気泡が形成されても光束に入らない液面高さを確保できる量に設定する必要がある。
【0037】
同様に、対向する2平面の幅に関しても、光束の大きさと、吸光度測定が行われる時間中に移動する距離と、部品の寸法誤差の最大値と、吸光度測定のタイミングの誤差を加えた大きさの平面を確保できる範囲において最小の面積を対向する2平面とすることにより、温度制御性能を向上できる。
【0038】
本実施例によれば、反応容器の底部近傍に、光の直進方向に垂直に(XZ平面に平行に)配置される2つの平面を備えるため、該平面に光を照射することにより光量の測定を行うことができる。又、2つの平面の側面側の部位は、反応容器の外側に向かう方向に曲がるように(基本形状である円筒形状となるように)形成され、かつ、反応容器のZ軸方向における2つの平面の長さは、反応容器の全体の長さの半分未満となるように構成されているため、光の経路として必要な部分を最小限に抑え、温度制御性能を落とさないようにすることができる。
【0039】
以下、本実施例のバリエーションについて説明する。図6は、上端から底部に向かって直径が細くなる円錐形状の反応容器を示す図である。この場合は、光路長が同じであれば上部の直径がより大きくなるため隣り合う反応容器同士を離す必要があり、実装密度が低くなる。又、反応液の体積に対する表面積の比率が下がるため温度制御性能も悪化する。しかし、搬送機構17の位置決め裕度が向上するという利点がある。
【0040】
実際には図5のように完全な円筒形状を実現するのは難しい。なぜなら、反応容器2をプラスチック材料の射出成形で製造する場合、金型からの抜き取りのため抜き勾配と呼ばれる傾きが必要になるからである。しかし、限りなく円筒に近い形状、一例として抜き勾配0.5度以下とする場合、反応容器上部と下部の直径の差はわずかであり、インキュベータ側を完全な円筒形状にしたとしても、下部の隙間を十分小さくできることから、インキュベータの穴形状は円筒のままにしても良い。この場合はインキュベータの加工が汎用の刃具で可能になることから、加工性及び生産性が向上する。
【0041】
図7は、把持部57を備えた反応容器を示す図である。把持部57は、開口部51側の領域と底部53側の領域の間、かつ、底部53よりも開口部51側に配置され、反応容器2外側の直径が開口部51の直径よりも大きく、開口部51側の領域との境界部、及び、底部53側の領域との境界部が段付き形状となっている。
【0042】
上端からhの長さの部分の直径をi(i>d)に拡大した把持部57を備えることで、搬送機構17が摩擦力のみに依存せずに反応容器2を保持するようなフィンガ形状とすることができ、装置上で反応容器2を落下させるリスクを低減できる。把持部57は必ずしも上端から下方に向かって設ける必要はなく、円筒の中間部に設けることもできる。
【0043】
上記実施例では、材料は透明なプラスチック材料としたが、光が通過する対向する2平面を除いて遮光性のある材料で製作しても良い。この場合、外部からの光が光路に入りにくくなるため、外部光に由来する迷光や散乱光による分析精度の低下を防ぐことができる他、吸光度の測定を行わない免疫項目についても反応液が外部光の影響を受けにくくなるため、光に反応して劣化が進む試薬を用いた項目について分析精度を向上できる。
【0044】
図8は、傷付き防止枠を備えた反応容器を示す図である。顧客への提供形態を、個々の反応容器の梱包やマガジンへの装填を行わず、数百個~数千個単位で袋詰めとする場合、反応容器同士の接触によって光が透過する透光面に傷がつき、装置上で不良と判定されて廃棄される、あるいは分析不良を招く恐れがある。これに対し、透光面の外縁部を対向する2平面ではなく円筒に沿うような傷付き防止枠58を備えれば、透光面への傷付きのリスクを低減できる。この傷付き防止枠は、透光面の外縁だけでなく、設計上の光束と、機構系の公差による光束の位置ずれを考慮した必要な範囲以外であれば拡大することができ(反応容器内面の平面59よりも外面の平面54、55の面積を小さくすることができ)、一例としては図9のように光路を除いて外面は円筒のままとすることもできる。この場合、光路部を除いて、対向する2平面の部位についてもインキュベータと反応容器を接触させることができるため、温度制御性能を向上できる。
【0045】
インキュベータ1において、反応容器を入れる穴の形状は、対向する2平面の部分に関しても反応容器の外形に沿った形状としても良い。切削による加工を用いる際の加工及び生産性に起因する制限がない加工法、例として鋳造や射出成形を用いる場合は、対向する2平面も含めてインキュベータのスリットを除く全ての面が接触する形状とした方が、温度制御性能を向上できる。
【符号の説明】
【0046】
1…インキュベータ、2…反応容器、3…試薬・検体共通ディスク、4…試薬ボトル、5…検体容器、6…試薬吸引位置、7…検体吸引位置、8…第一分注機構、9…第二分注機構、10…第一分注機構用ポンプ、11…第二分注機構用ポンプ、12…第一分注ノズル洗浄槽、13…第二分注ノズル洗浄槽、14…試薬攪拌機構、15…分光光度計、16…検出機構、17…分注チップ/反応容器搬送機構、18…分注チップ、19…分注チップトレイ、20…反応容器トレイ、21…分注チップ/反応容器廃棄ボックス、22…分注チップ装着位置、23…分注チップ廃棄位置、24…制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9