(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】反応性ホットメルト接着剤及び被着体の接着方法
(51)【国際特許分類】
C09J 175/06 20060101AFI20221025BHJP
C09J 7/35 20180101ALI20221025BHJP
【FI】
C09J175/06
C09J7/35
(21)【出願番号】P 2018192602
(22)【出願日】2018-10-11
【審査請求日】2021-09-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】石田 翔大
(72)【発明者】
【氏名】小宮 聡一郎
(72)【発明者】
【氏名】馬籠 和幸
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/187968(WO,A1)
【文献】特開2009-286883(JP,A)
【文献】国際公開第2015/016029(WO,A1)
【文献】特開平08-113770(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性ポリエステルポリオールを含有するポリオール成分と、ポリイソシアネート成分との反応物である、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含み、
前記結晶性ポリエステルポリオールが、炭素数が5~11のポリカルボン酸と、炭素数が3~15の多価アルコールとに基づく構造を有し、
前記結晶性ポリエステルポリオールの含有量が、前記ポリオール成分の総量100質量部を基準として、
25~50質量部であり、
前記ポリイソシアネート成分のイソシアネート基当量/前記ポリオール成分の水酸基当量の比が、2.5~4であ
り、
前記ウレタンプレポリマーのNCO基含有率が、3.5~8%である
、反応性ホットメルト接着剤。
【請求項2】
前記ポリオール成分が、ポリブタジエンポリオールを更に含有する、請求項1に記載の反応性ホットメルト接着剤。
【請求項3】
前記ポリブタジエンポリオールの含有量が、前記ポリオール成分の総量100質量部を基準として、10~50質量部である、請求項2に記載の反応性ホットメルト接着剤。
【請求項4】
120℃における溶融粘度が、1~8Pa・sである、請求項1~3のいずれか一項に記載の反応性ホットメルト接着剤。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の反応性ホットメルト接着剤を溶融させ、第1の被着体に塗布して接着剤層を形成する工程と、
前記接着剤層を介して前記第1の被着体を第2の被着体と接着する工程と、
を備える、被着体の接着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応性ホットメルト接着剤及び被着体の接着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホットメルト型接着剤は、無溶剤型の接着剤であるため、環境及び人体への負荷が少なく、短時間接着が可能であるため、生産性向上に適した接着剤である。ホットメルト型接着剤は、熱可塑性樹脂を主成分とした接着剤及び反応性樹脂を主成分とした接着剤の2つに大別できる。主成分を熱可塑性樹脂としたホットメルト接着剤としては、主にエチレン酢酸ビニル共重合体が利用されている。
【0003】
一方、主成分を反応性樹脂としたホットメルト接着剤は、反応性ホットメルト接着剤と呼ばれている。反応性ホットメルト接着剤は、化学反応により高分子量化し、接着性等を発現する。反応性樹脂としては、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーが利用されている。反応性ホットメルト接着剤は、接着後、接着剤自体の冷却固化により、短時間である程度の接着強度を発現する。その後、ウレタンプレポリマーのイソシアネート基が空気中又は被着体表面の水分と反応することにより高分子量化し、架橋を生じることにより接着剤層を形成して耐熱性が発現する。そのため、ウレタンプレポリマーを主成分とする反応性ホットメルト接着剤は、高温時でも良好な接着強度を示す。
【0004】
反応性ホットメルト接着剤を電子機器の組み立て接着剤として用いる場合、内部の電子部品を保護するため、反応性ホットメルト接着剤には、防湿性に優れることが要求される。例えば、特許文献1及び2では、ホットメルト接着剤の防湿性を向上することが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-87150号公報
【文献】特開2013-245300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、製品の小型化、狭フレーム化が求められており、反応性ホットメルト接着剤の塗布幅が小さくなってきており、優れた塗布作業性と接着性とを有する反応性ホットメルト接着剤が望まれており、その開発が急務となっている。また、有機ELの適用も増加していることから、防湿性に対する要求特性が更に高まっている。
【0007】
そこで、本発明は、優れた塗布作業性、接着性及び防湿性を兼ね備える反応性ホットメルト接着剤、及び、該接着剤を用いた被着体の接着方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、結晶性ポリエステルポリオールを含有するポリオール成分と、ポリイソシアネート成分との反応物である、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含み、結晶性ポリエステルポリオールが、炭素数が5~11のポリカルボン酸と、炭素数が3~15の多価アルコールとに基づく構造を有し、結晶性ポリエステルポリオールの含有量が、ポリオール成分の総量100質量部を基準として、20~60質量部であり、ポリイソシアネート成分のイソシアネート基当量/ポリオール成分の水酸基当量の比が、2.5~4である、反応性ホットメルト接着剤を提供する。
【0009】
ポリオール成分は、ポリブタジエンポリオールを更に含有してもよい。また、ポリブタジエンポリオールの含有量は、ポリオール成分の総量100質量部を基準として、10~50質量部であってもよい。
【0010】
反応性ホットメルト接着剤の120℃における溶融粘度は、1~8Pa・sであってもよい。
【0011】
本発明はまた、上記反応性ホットメルト接着剤を溶融させ、第1の被着体に塗布して接着剤層を形成する工程と、接着剤層を介して第1の被着体を第2の被着体と接着する工程と、を備える被着体の接着方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、優れた塗布作業性、接着性及び防湿性を兼ね備える反応性ホットメルト接着剤、及び、該接着剤を用いた被着体の接着方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に何ら限定されるものではない。
【0014】
<定義>
本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。「A又はB」とは、A及びBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。本明細書において、接着剤中の各成分の含有量は、接着剤中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、接着剤中に存在する複数の物質の合計量を意味する。なお、本明細書において、ポリオール成分とは、ヒドロキシ基を2個以上有する化合物を含有する成分であり、ポリイソシアネート成分とは、イソシアネート基を2個以上有する化合物を含有する成分である。
【0015】
[反応性ホットメルト接着剤]
本実施形態の反応性ホットメルト接着剤(以下、「接着剤」と略記する場合がある。)は、結晶性ポリエステルポリオールを含有するポリオール成分と、ポリイソシアネート成分との反応物である、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含む。本実施形態に係る結晶性ポリエステルポリオールは、炭素数が5~11のポリカルボン酸と、炭素数が3~15の多価アルコールとに基づく構造を有し、当該結晶性ポリエステルポリオールの含有量は、ポリオール成分の総量100質量部を基準として、20~60質量部である。上記ウレタンプレポリマーにおいて、ポリイソシアネート成分のイソシアネート基当量/ポリオール成分の水酸基当量の比は、2.5~4である。
【0016】
(イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー)
本実施形態に係るウレタンプレポリマーは、炭素数が5~11のポリカルボン酸と、炭素数が3~15の多価アルコールとに基づく構造を有する結晶性ポリエステルポリオールを必須とするポリオール成分に、ポリイソシアネート成分を反応させて得られる。ウレタンプレポリマーは、結晶性ポリエステルポリオールに由来する構造単位及びポリイソシアネートに由来する構造単位を含む重合鎖の末端にイソシアネート基を有している。
【0017】
ポリエステルポリオールに由来する構造単位を有するウレタンポリマーを用いることで、接着剤の固化時間及び粘度の調整をすることができる。ポリエステルポリオールとしては、多価アルコールとポリカルボン酸との重縮合反応によって生成する化合物を用いることができる。
【0018】
ポリエステルポリオールとしては、ジオールとジカルボン酸とから生成する直鎖ポリエステルジオールであってもよく、トリオールとジカルボン酸とから生成する分岐ポリエステルトリオールであってもよい。また、分岐ポリエステルトリオールは、ジオールとトリカルボン酸との反応によって得ることもできる。
【0019】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ブタンジオールの各異性体、ペンタンジオールの各異性体、ヘキサンジオールの各異性体、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-メチルプロパンジオール、2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等の脂肪族又は脂環族ジオール;4,4’-ジヒドロキシジフェニルプロパン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ピロカテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン等の芳香族ジオールが挙げられる。多価アルコールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
ポリカルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸等の芳香族ポリカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、アコニット酸、1,2,3-プロパントリカルボン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸、1,4-シクロヘキサジエン-1,2-ジカルボン酸等の脂肪族又は脂環族ポリカルボン酸が挙げられる。ポリカルボン酸は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
上述したポリカルボン酸に代えて、カルボン酸無水物、カルボキシル基の一部がエステル化された化合物等のポリカルボン酸誘導体を用いることもできる。ポリカルボン酸誘導体として、例えば、ドデシルマレイン酸及びオクタデセニルマレイン酸が挙げられる。
【0022】
ポリエステルポリオールとしては、結晶性ポリエステルポリオール及び非晶性ポリエステルポリオールが挙げられる。結晶性及び非晶性は、25℃での状態で判断する。本明細書において、25℃で結晶であるポリエステルポリオールを結晶性ポリエステルポリオールとし、25℃で非結晶であるポリエステルポリオールを非晶性ポリエステルポリオールとする。
【0023】
本実施形態に係る結晶性ポリエステルポリオールは、炭素数が5~11のポリカルボン酸と、炭素数が3~15の多価アルコールと、に基づく構造を有している。多価アルコールとしては、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ブタンジオールの各異性体、ペンタンジオールの各異性体、ヘキサンジオールの各異性体、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-メチルプロパンジオール、2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等の脂肪族又は脂環族ジオールから選ばれる少なくとも1種を用いてもよい。これらの中でも、炭素数が3~15の脂肪族ジオールが好ましく、炭素数が4~12の脂肪族ジオールがより好ましい。
【0024】
ポリカルボン酸としては、アコニット酸、1,2,3-プロパントリカルボン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸、1,4-シクロヘキサジエン-1,2-ジカルボン酸等の脂肪族又は脂環族ポリカルボン酸から選ばれる少なくとも1種を用いてもよい。これらの中でも、炭素数が5~11の脂肪族ジカルボン酸が好ましく、炭素数が5~10の脂肪族ジカルボン酸がより好ましい。
【0025】
塗布作業性、接着性及び防湿性の観点から、ポリオール成分中の結晶性ポリエステルポリオールの割合は20~60質量部であり、20~50質量部であることが好ましく、25~40質量部であることがより好ましい。ポリオール成分中の結晶性ポリエステルポリオールの割合が20質量部以上であると、防湿性及び接着性に優れる傾向がある。ポリオール成分中の結晶性ポリエステルポリオールの割合が60質量部以下であると接着の際に十分なオープンタイムを確保でき、張り合わせし易くなる。
【0026】
結晶性ポリエステルポリオールの数平均分子量(Mn)は、塗布作業性及び接着性の観点から、500~10000が好ましく、800~9000がより好ましく、1000~8000が更に好ましい。
【0027】
本明細書において、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定され、標準ポリスチレン換算した値である。GPCの測定は、以下の条件で行うことができる。
カラム:「Gelpack GLA130-S」、「Gelpack GLA150-S」及び「Gelpack GLA160-S」(日立化成株式会社製、HPLC用充填カラム)
溶離液:テトラヒドロフラン
流量:1.0mL/分
カラム温度:40℃
検出器:RI
【0028】
作業性の観点から、本実施形態に係る結晶性ポリエステルポリオールの融点は、50~80℃であってもよい。結晶性ポリエステルポリオールの融点が上記範囲であることで、十分なオープンタイムを確保し易くなり、接着性に優れる傾向がある。
【0029】
ポリオール成分は、非晶性ポリエステルポリオールを更に含有することができる。非晶性ポリエステルポリオールの数平均分子量(Mn)は、塗布作業性及び接着性の観点から、500~10000が好ましく、800~9000がより好ましく、1000~8000が更に好ましい。
【0030】
ポリオール成分は、ポリブタジエンポリオールを更に含有することができる。ウレタンプレポリマーがポリブタジエンポリオールに由来する構造単位を有することで、防湿性をより一層向上することができる。ポリブタジエンポリオールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。ポリブタジエンポリオールは、分子末端に水酸基を有する液状ブタジエン共重合体であってもよい。
【0031】
ポリブタジエンポリオールのMnは1000~5000が好ましく、1000~4000がより好ましく、1200~3000が更に好ましい。ポリブタジエンポリオールのMnが1000以上であると、接着剤の湿気硬化反応の際の発泡が生じ難くなり、接着性の低下を抑制し易くなる。5000以下であると、防湿性に優れる傾向がある。
【0032】
ポリブタジエンポリオールの含有量は、ポリオール成分の総量100質量部を基準として10~50質量部であることが好ましく、15~45質量部であることがより好ましく、20~40質量部であることが更に好ましい。ポリブタジエンポリオールの含有量が10質量部以上であると、防湿性に優れる傾向があり、50質量部以下であると接着性に優れる傾向がある。
【0033】
ポリオール成分は、ポリエーテルポリオールを更に含有してもよい。ポリエーテルポリオールに由来する構造単位を有することで、接着剤の塗布後の適度な溶融粘度及びオープンタイムを調節可能となり、優れた作業性、接着性、防水性及び柔軟性を付与することができる。ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール及びエチレンオキサイド変性ポリプロピレングリコールが挙げられる。
【0034】
ポリエーテルポリオールのMnは、初期接着性、接着性、及び塗布後の適度なオープンタイムの観点から、500~5000の範囲が好ましく、700~4500の範囲がより好ましく、1000~4000の範囲が更に好ましい。ポリエーテルポリオールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
ポリエーテルポリオールの含有量は、接着剤を低粘度に調整し易い観点及び被着体への接着性を向上する観点から、ポリオールの総量100質量部を基準として10~30質量部であることが好ましく、15~25質量部であることがより好ましい。
【0036】
ポリイソシアネート成分としては、イソシアネート基を2個以上有する化合物であれば、特に制限なく用いることができる。
【0037】
ポリイソシアネート成分として、例えば、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、1,2-フェニレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、クロロフェニレン-2,4-ジイソシアネート、2,4,6-トリメチルフェニル-1,3-ジイソシアネート、2,4,6-トリイソプロピルフェニル-1,3-ジイソシアネート、1,4-ナフタレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、3,3’-ジメトキシジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、クルードトリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;o-キシリレンジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネート、p-キシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ポリイソシアネート;1,4-シクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トルエンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環族ポリイソシアネートが挙げられる。ポリイソシアネート成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
反応性及び接着性の観点から、ポリイソシアネート成分は、芳香族ポリイソシアネートを含有することが好ましく、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート等のジフェニルメタンジイソシアネートを含有することがより好ましい。
【0039】
ウレタンプレポリマーは、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させることで合成することができる。ウレタンプレポリマーを合成する場合、ポリイソシアネート成分とポリオール成分との混合割合は、ポリイソシアネートのイソシアネート基(NCO)当量/ポリオールの水酸基(OH)当量の比であるNCO/OHが2.5~4であるが、2.6~3.75が好ましく、2.7~3.5がより好ましい。NCO/OHが4以下であると、接着剤の湿気硬化反応の際の発泡が生じ難くなり、接着性の低下を抑制し易くなり、NCO/OHが2.5以上であると防湿性に優れる傾向がある。
【0040】
反応性ホットメルト接着剤の防湿性を向上する観点から、上記ウレタンプレポリマーのNCO基含有率は、3.5~8%が好ましく、4.0~7%がより好ましく、4.5~6.0%が更に好ましい。NCO基含有率は、JIS K 1603-1の「プラスチック-ポリウレタン原料芳香族イソシアネート試験方法-第1部:イソシアネート基含有率の求め方」に基づいて測定することができる。
【0041】
(他の成分)
本実施形態に係る接着剤には、必要に応じて、粘着付与剤、熱可塑性ポリマー、触媒、顔料、紫外線吸収剤、界面活性剤、難燃剤、充填剤、酸化防止剤、カップリング剤等を適量配合してもよい。
【0042】
粘着付与剤としては、例えば、ロジン系樹脂、ロジンエステル系樹脂、水添ロジンエステル系樹脂、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、水添テルペン系樹脂、石油樹脂、クマロン樹脂、ケトン樹脂、スチレン樹脂、キシレン樹脂及びエポキシ樹脂が挙げられる。石油樹脂としては、例えば、C5系の脂肪族樹脂、C9系の芳香族樹脂及びC5系とC9系との共重合樹脂が挙げられる。
【0043】
熱可塑性ポリマーとしては、例えば、エチレン系共重合体、プロピレン系共重合体、塩化ビニル系共重合体、アクリル共重合体及びスチレン-共役ジエンブロック共重合体が挙げられる。触媒としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチルチンオクテート、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジメチルベンジルアミン及びトリオクチルアミンが挙げられる。
【0044】
本明細書中において、良好な「塗布作業性」とは、反応性ホットメルト接着剤を被着体に塗布した際に、接着剤が被着体の表面に凹凸無く滑らかに塗布できることをいう。塗布作業性を向上する観点から、本実施形態に係る接着剤の回転粘度計を用いて測定される120℃における粘度は、1~8Pa・sであることが好ましく、1~6Pa・sであることがより好ましく、1~4Pa・sであることが更に好ましい。
【0045】
[被着体の接着方法]
本実施形態に係る接着剤を用いて、各種基材を接着することができる。本実施形態に係る接着方法は、反応性ホットメルト接着剤を溶融させ、第1の被着体に塗布して接着剤層を形成する工程と、接着剤層を介して第1の被着体を第2の被着体と接着する工程と、を備えていてもよい。
【0046】
本実施形態の反応性ホットメルト接着剤を用いて、各種被着体を接着することができる。被着体としては、特に限定されないが、例えば、金属材料、木質材料、ガラス材料、高分子材料(プラスチック、ゴム等)、繊維製品、天然皮革製品、合成皮革製品、及び紙製品が挙げられる。本実施形態の反応性ホットメルト接着剤は、同種類及び異種類の被着体を接着することができる。
【0047】
防湿性を向上する観点から、本実施形態に係る接着剤を用いて形成される接着剤層の透湿度は、接着剤層の厚みが100μmの場合、150g/m2・24h以下が好ましく、120g/m2・24h以下がより好ましく、100g/m2・24h以下が更に好ましい。透湿度は、JIS Z 0208の「防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)」に基づいて測定することができる。
【0048】
本実施形態に係る接着剤は、接着性及び防湿性に優れる接着剤層を被着体の接着部分に形成することができる。また、本実施形態に係る接着剤は、無溶剤型の接着剤であることから、環境及び人体への負荷が少なく、短時間接着が可能であると共に、一液型の接着剤であることから、取り扱いが容易である。
【実施例】
【0049】
以下、本発明の好適な実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。なお、特に断りのない限り、部は質量部である。
【0050】
(ポリオール成分)
結晶性ポリエステルポリオールとして、アジピン酸及び1,6-ヘキサンジオールを主成分として得られた結晶性ポリエステルポリオール(水酸基数:2、Mn:5000)を準備した。
非晶性ポリエステルポリオールとして、イソフタル酸及びネオペンチルグリコールを主成分として得られた非晶性ポリエステルポリオール(水酸基数:2、Mn:2000)を準備した。
ポリブタジエンポリオールとして、ポリブタジエンポリオール(水酸基数:2、Mn:1400、日本曹達株式会社の製品名「G-1000」)を準備した。
ポリエーテルポリオールとして、ポリプロピレングリコール(水酸基数:2、Mn:2000、AGC株式会社の製品名「EXCENOL2020」)を準備した。
【0051】
(イソシアネート成分)
イソシアネート成分として、ジフェニルメタンジイソシアネート(「MDI」と略す。イソシアネート基数:2、東ソー株式会社の製品名「ミリオネートMT」)を準備した。
【0052】
[反応性ホットメルト接着剤の作製]
(実施例1)
予め真空乾燥機により脱水処理したポリオール成分(結晶性ポリエステルポリオールを25部と、非晶性ポリエステルポリオールを75部)、及び、MDIを32部加えて均一に混合した。次いで、得られた混合物を110℃で1時間反応させた後、更に110℃で1時間減圧脱泡攪拌し、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含む接着剤を得た。
【0053】
(実施例2~4、比較例1~4)
各成分の配合量を表1に示す値に変更した以外は、実施例1と同様にして、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含む接着剤を得た。
【0054】
実施例及び比較例で得られた接着剤の各特性を以下のようにして評価した。結果を表1に示す。
【0055】
(粘度)
BH-HH型少量回転粘度計(東機産業株式会社製)で、4号ローターを使用して、ローター回転数100rpm、120℃における接着剤(試料量15g)の溶融粘度を測定した。
【0056】
(接着強度)
接着剤を100℃で溶融し、温度25℃、湿度50%の環境下で、縦75mm×横25mm×厚さ2mmのポリカーボネート板上に塗布して、同ポリカーボネート板で圧着することで、縦6mm×横25mm×厚さ100μmの接着剤層を有する試験片を作製した。圧着後、温度25℃、湿度50%の環境下で24時間養生した後、せん断試験(引張速度:10mm/分)を行い、接着強度(MPa)を測定した。
【0057】
(透湿度)
表面温度を100℃に調整したガラス板上に、離型処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを載置した。次いで、100℃で溶融した接着剤を、アプリケーターを用いてPETフィルム上に塗布して、厚さ100μmの接着剤層を形成した後、温度23℃、相対湿度50%の恒温恒湿槽に1週間静置した。その後、接着剤層をPETフィルムから剥離し、防湿性の測定用試料とした。測定用試料の透湿度を、透湿度カップ法(JIS Z 0208 B法)に基づいて測定した。
【0058】
【0059】
表1より、実施例で得られた反応性ホットメルト接着剤は、120℃における溶融粘度が小さく、良好な塗布作業性を備えると共に、当該接着剤から形成された接着剤層は、接着強度が高く、防湿性に優れることがわかる。