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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】研磨スラリーを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/14 20060101AFI20221025BHJP
   B24B 57/02 20060101ALI20221025BHJP
   B01D 36/04 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
C09K3/14 550Z
B24B57/02
B01D36/04
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019546789
(86)(22)【出願日】2018-03-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-30
(86)【国際出願番号】 US2018019092
(87)【国際公開番号】W WO2018156678
(87)【国際公開日】2018-08-30
【審査請求日】2021-01-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】永田 剛士
(72)【発明者】
【氏名】テン チンチェン
(72)【発明者】
【氏名】馬込 伸貴
(72)【発明者】
【氏名】ユアン バウサン
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-043781(JP,A)
【文献】特開2000-273443(JP,A)
【文献】国際公開第2005/017989(WO,A1)
【文献】特開2001-009706(JP,A)
【文献】実開平06-031802(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/14
C09G 1/02
H01L 21/304
H01L 21/463
B24B 3/00 - 3/60
B24B 21/00 - 39/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラリー生成システムにより研磨スラリーを製造する方法であって、
前記システムの分散部分において、流体媒質に研磨固体粒子を含む第1の懸濁液を生成することと、
前記システムの分離部分において、前記流体媒質に前記研磨固体粒子の第2の懸濁液を生成するために、前記第1の懸濁液に含まれる粘性成分を前記第1の懸濁液から分離すること、
前記システムの濾過部分において、前記第2の懸濁液を少なくとも1つのフィルタに通して閾値寸法を超える寸法の粒子を除去することで前記第2の懸濁液を濾過することと、
前記分離は、所定の容器内で実施され、
前記第1の懸濁液を、前記容器の前記第1の懸濁液によって形成される液面を横断する第1の軸に沿って前記容器へ移送することと、
前記液面に対して傾いている前記容器の表面に前記粘性成分の沈殿物を生成することと、
前記容器から、前記液面に実質的に平行な第2の軸に沿って前記第2の懸濁液を取り出すことと、
を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記分離は、前記第1の懸濁液中の前記研磨固体粒子の相対的割合を超える、前記研磨固体粒子の相対的割合の前記第2の懸濁液を生成することを含む、方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法であって、
前記分離は、前記沈殿物の上方の前記流体媒質中に研磨固体粒子を懸濁させている間に、前記容器の前記表面に前記粘性成分の前記沈殿物を生成する工程を含む、方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の方法であって、
前記生成は、前記第1の懸濁液が前記容器を通って流れている間に、前記容器の底部に前記沈殿物を生成することを含む、方法。
【請求項5】
請求項に記載の方法であって、
前記第1の懸濁液が前記容器を通って流れ続けている間に、前記容器の前記底部から前記沈殿物を除去することをさらに含む、方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の方法であって、
前記濾過は、濾過圧力レベルの全体が、前記濾過の持続期間全体にわたって、前記第2の懸濁液を前記システムの前記濾過部分に供給するときの供給圧力レベルより実質的に下回るように維持される、方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の方法であって、
前記濾過は、前記システムの前記濾過部分のフィルタを通る前記第2の懸濁液の流量について、前記流量が、前記濾過の開始における実質的ゼロ・レベルから一定のレベルまで増加し、前記濾過の持続期間の実質的に全体にわたって、前記一定のレベルで実質的に変化せずに維持される、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、(i)前記容器の容積と、(ii)前記分離する間の前記第1の懸濁液の流体流量の逆数を示す値、との積に実質的に等しい分離時間の間、前記分離を実施することをさらに含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2017年2月23日に出願された米国仮特許出願第62/462,508号明細書の優先権および利益を主張しており、その開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明の実施形態は、研磨スラリーを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
従来の研磨スラリー製造プロセスの操業能率は、プロセスに使用されるスラリーの品質によってしばしば制限されてきた。当然のことながら、スラリーの品質は、プロセスにおいてスラリーの使用に先立って、ユーザがスラリーを適切に濾過できる能力があることに少なくともある程度依存している。濾過工程(本明細書においては、「濾過による精製」という用語または同様の用語を同義で用いる)の成否は、少なくともある程度、フィルタが意図した通り機能しているのか、それとも何らかの理由で「不正な挙動をしている」および/もしくは劣化しているかにより変わる。
【発明の概要】
【0004】
実施形態は、研磨スラリーを製造するシステムおよび方法を提供する。方法は、前記システムの分散部分において、流体媒質に研磨固体粒子を含む第1の懸濁液を生成することと、前記システムの分離部分において、前記流体媒質に前記研磨固体粒子の第2の懸濁液を生成するために、前記第1の懸濁液に含まれる粘性成分を前記第1の懸濁液から分離すること、前記システムの濾過部分において、前記第2の懸濁液を少なくとも1つのフィルタに通して閾値寸法を超える寸法の粒子を除去することで前記第2の懸濁液を濾過することと、前記分離は、所定の容器内で実施され、前記第1の懸濁液を、前記容器の前記第1の懸濁液によって形成される液面を横断する第1の軸に沿って前記容器へ移送することと、前記液面に対して傾いている前記容器の表面に前記粘性成分の沈殿物を生成することと、前記容器から、前記液面に実質的に平行な第2の軸に沿って前記第2の懸濁液を取り出すことと、を含む。
【0005】
本発明は、一様ではない縮尺の図面とともに、以下の具体的な実施形態の詳細な説明を参照することでより充分に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、従来構成の流体生成での流体生成システムおよび関連プロセス(工程104と108が直列に配置された場合)、および、本発明の実施形態(工程104と工程108との間に工程112を介在して含む場合)をともに示す概略図である。
【0007】
図2】(A)、(B)は、図1の流体生成プロセスの分離工程112を達成するように構成されたハードウェアを示す概略図である。
【0008】
図3】(A)、(B)、(C)、(D)は、図1の分離工程の能力の実験的な確認を提供する簡単化された実験を示す概略図である。
【0009】
図4】(A)、(B)、(C)、(D)は、図1の分離工程の能力の実験的な確認を提供する簡単化された実験を示す概念図である。
【0010】
図5】(A)、(B)は、分離工程112がない場合の図1のプロセスの工程108における濾過流量および濾過圧力の測定値の実証結果を示しており、すなわち、関連技術に対応する原理に従って構成された図1のシステムの濾過部の性能を示す図である。
【0011】
図6】(A)、(B)は、分離工程112が、図1のプロセスの分散工程104と濾過工程108との間に実装された場合における、図1のプロセスの工程108における濾過流量および濾過圧力の測定値の実証結果を示しており、すなわち、本開示において提示された原理に従って構成された図1のシステムの濾過部の性能を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
通常、図面中の要素のサイズや相対的なスケールは、図面の簡潔さ、明瞭さ、および理解のために、実際とは異なるように設定される場合がある。同じ理由で、1つの図面中に存在する要素の全てが、必ずしも別の図面中に示されていないことがある。
【0013】
従来、研磨スラリーは、たとえば、適切な粒子または成分を主媒質中に分散することにより生成され、そのような分散に由来するスラリー材料は、さらに濾過されて精製される。このような従来の方法では、ユーザは、粒子フィルタの多用と頻繁な交換をしなければならず、研磨スラリー製造における品質管理にとってこのことは必須となっている。実際に、最初に調合されたスラリーは、固体粒子と懸濁媒質流体または液体(粒子凝集塊などのような多くの粘性物質を含む)とが撹拌された混合物であるので、供給スラリー中の粘性物質成分は、フィルタを痛め、濾過阻害物として作用し、たとえば、使用しているフィルタを詰まらせる、さもなければその機能品質を抑制する。その結果、典型的な精製プロセスでは、所望の濾過品質および/または所望の濾液量が最終的に得られる前に、多くのフィルタを使用したりおよび/または濾過品質が犠牲になったりする。濾過工程の前に良好にスラリー前処理工程が実施されないと、フィルタ交換が増加して、生産性を低下し製造コストを増加させる(また、粘性物質がフィルタを通って浸出し続けるため、最終製品スラリーを汚染する可能性もある)。
【0014】
換言すれば、現状用いられている流体(たとえば、流体媒質中に分散された粒子から作製された研磨スラリーなど)の生成プロセスにおける未解決で現存する問題は、準備されたスラリーの前処理を行ってスラリー濾過ラインの作業負荷を軽減し、さらに回避しようとするには、操作プロセスが洗練されていないということに起因していることがわかっている。
【0015】
換言すると、従来の流体生成プロセスにおける現存する操業上の問題は、濾過流体中に存在する濾過阻害物を中和するために現在用いられている手順の能力が限定的であるために、現在用いられているプロセスでは流体を濾過して精製することが容易できないことに由来している。本実施形態は、この問題に対処しており、濾過の工程の前に製造システム内の流体の賢明に定義された処理を導入することによって、この問題を解決する。そのような処理(または、前処理)の工程において、流体中に存在する濾過阻害物は、(i)分離(たとえば、沈殿など)によって;および/または、(ii)構成物質(すなわち、研磨剤粒子などの求められている製品成分と、粘着性堆積物などの濾過阻害物)の間で、物理化学的な特性(たとえば、密度または粘性など)の差を利用することによって;および/または、(iii)流体精製プロセス内の濾過の最適化された使用を可能にするために、流体分離処理ユニットまたはシステム(たとえば、濾過の前に据え付けられる、タンク、タンクへの入口、および、タンクからの出口)を適正に構成することによって、少なくとも部分的に、好ましくは実質的に完全に除去される。本発明の実施形態の実用的な実装は、現在使用されている典型的なフィルタ(および、とりわけ、500nmを超える直径を有する粒子に関して99.9%粒子除去率によって特徴付けられるフィルタ)の寿命を長くする技術的効果を実現することが証明された。
【0016】
(流体の濾過による流体精製が実施されなるべき)製造ラインにおいて対象とする流体懸濁液の生成のプロセスの最適化を容易にするために、本発明の実施形態は、流体中に存在する問題の原因となる濾過阻害物(たとえば、研磨スラリー生成の場合、粘着性堆積物など)を中和し、一方、その際に重要な製品成分(たとえば、スラリーの研磨剤粒子)は保持し、最終的な製品流体懸濁液の品質に影響を与えることなく、後工程の濾過工程をより効率的にするために、濾過工程前にスラリーの流体前処理のための構成を提供する。これにより、このような前処理プロセスに対応した流体処理システムと全体的なスラリー精製手純の実施はともに、産業用の特異な流体を生成する際に、最終製品の品質を維持しながら効率を改善しコストを削減する。提案する流体精製プロセスの進行とその結果は、提案するハードウェア構成および/またはその場で収集される測定データを用いることにより、検出され制御される。
【0017】
図1を参照して、スラリー生成プロセス100(従来の工程104、108および新たに提案する中間工程112の両方を含むように示されている)を概略辿ってみると、本発明の思想は、(研磨スラリー生成の例では)従来の流体中の粒子分散と流体懸濁液濾過プロセスとの間に、流体懸濁液プロセスの構成成分の分離を行うことで、濾過の前に対象組成の「前処理」を可能にし、その前処理は、所望の結果を実現し、従来の処理手順には、これまで存在しなかったこと、を実現することに由来するものである。
【0018】
従来、濾過プロセス(工程108)の方策として用いられてきた手順は、対象流体124中に対象粒子120を分散させる工程104(典型的には、適切な分散メカニズム130を使用するある種の分散タンク128内で実施)の直後に、間を置かずに、すなわち矢印116によって示されているように、濾過(工程108)処理を行うものであった。簡単な例では、分散タンク128内で生成されたスラリーのフロー132は、(適切なポンプ134を任意に使用して)スラリーガイド138のパイプを通して、供給タンク136内に送られ、この従来例の場合、いかなる容器や大きな容積も介在することなく、分散タンク128、136は直接的に流体的に接続される。従って、従来構成のプロセスでは、分散タンク128内で生成されたスラリーは、スラリーのフロー140として供給タンク136に直接移送される(図1においては、プロセス/システムの濾過部分108に流入するスラリーのフローを表示するのに、参照数字140’も用いており、参照数字140’は、下記説明のプロセスの実施の結果として分離されたスラリーを表すために使用される)。
【0019】
撹拌機142によって適切に攪拌回転されたスラリーは、さらにポンプ144により供給タンク136からスラリーフィルタ146を通して位相される。濾過されたスラリーはスループット流148としてバルブ流路にさらに移送される。バルブ流路は、典型的には、少なくとも1つの出力バルブ150(それにより、所定の条件を満たす品質のスラリーが、後の使用のために適切に梱包および/または貯蔵される方向に設定する)と、少なくとも1つの循環バルブ152(基準以下のまたは精製が不十分なスラリーを撹拌機構142に戻し濾過ループ108を再循環させるための帰還の場を提供するように構成されている)を含む。粒子分散プロセス104および/または濾過プロセス108のフローの流れを示す測定データを収集し、これらのプロセスのうちの少なくとも1つの動作および/または動作の変化を管理するための、検出および/または測定および/またはデータ処理電子回路が、分散機130のドライバ(説明図を簡単にするために示されていない);ポンプ134、144;撹拌メカニズム142のドライバ(図示せず);バルブ回路150、152;および濾過部146のうちの少なくともいくつかと動作可能に接続されていることがわかる。
【0020】
このような従来から構成されている処理手法は、上記の2工程生成プロセス(直列する2つの工程104および108)は、スラリーが146で濾過される前に、スラリーのフロー132、140に分散された物質が堆積するかまたはスラリーから分離される時間を提供しておらず、それにより、スラリー製品の材料物質の減少は防止される、実践定な理由により、関連技術分野において広く受け入れられてきた。しかし、実際には、粒子分散プロセス104は完全ではなく、粒子バッチ129からの材料不純物により、粒子バッチ129内の材料の濾過阻害物(フィルタを目詰まりさせる)は、分散タンク128内に生成されるスラリー中にしばしば残留する。このような物質は、非常に粘性が高いために粒子フィルタ146を詰まらせて工程108における濾過機能を無力化し、最終的に、濾過目的を無効にし、濾過工程108を効率的に実行することを妨げる。また、146において濾過されたスラリー中に存在するフィルタを目詰まりさせる物質は、ユニット146を、濾過部品を頻繁に交換して使用する原因となる。
【0021】
図1は、本発明の実施形態は、スラリー濾過の工程108の前にスラリー分離を行う中間工程112を導入することによって、この状況に対処することを示す。分離工程112(図1の例に示されるように、分離タンク156を用いることにより実行される)の実行は、全体的なスラリー生成システムのいかなる濾過メカニズムと無関係であり、かつ、それらに依存しないので、濾過阻害物を効果的に除去するスラリー生成システムがスラリーを可能とし、それにより、濾過部146の動作および寿命を改善する。
【0022】
図1の全体概略図は、従って、概略的に示された3つの構成要素104、112、および108の全てを含み、開示された思想に従って構成されたスラリー生成システムおよびプロセスの実施形態を示す。上記の通り、研磨スラリー生成の具体例においては、粒子分散プロセスから得られるスラリー懸濁液は、研磨剤粒子(所望の製品特徴成分)とともに、粘着性堆積物(濾過阻害物)の要因となる物質を含む。1つの実施形態では、スラリー懸濁液は入口から分離タンクを有する分離プロセスに流入する。
【0023】
図2(A)、(B)は、図1の全体プロセスおよび/またはスラリー生成システム100の分離部分112に関連する実施形態の具体的な詳細について示している。ここで、工程104における粒子分散の結果として生成される懸濁液の構成成分の分離プロセスは、従来から関連技術に用いられてきたあらゆる濾過手順と無関係である。スラリー分離112の前処理プロセスは、上記の濾過阻害物を効果的および効率的に除去する能力を有し、後続の濾過プロセスにおけるフィルタの粒子選択能力のより良い使用を促進し、全体的な生成プロセスの時間を節減し、コストを削減する。
【0024】
分離プロセスおよび/またはサブシステムについての2つの関連かつ非限定的な実施形態について説明する。図2(A)は、分散されたスラリーの流入フロー132が、分離タンク156に蓄積されたスラリーの液面210に実質的に沿って、分離タンク156を通って出口138に向かう構成を概略的に図示している。図2(B)は、関連する構成を概略的に図示しており、その構成では、分散されたスラリーの流入フロー132が、液面210に対して実質的に直角に分離タンク156を通って向かい、システム100の濾過部分108に向けて出口138を通る(すでに分離された)スラリーの流出フロー140’は、液面210に実質的に平行に向けられる。このように移送される際、分散されたスラリーの流入フロー212の方向は、流出フロー140’が生成される前の分離プロセス中に(矢印212、214によって示されるように)実質的に反転され、流出フロー140’の方向は、入口フロー212の方向に直角となる。任意に、分離タンクに通じる入口214およびへ/分離タンクから通じる出口のいずれかを、たとえば、図2(B)に、タンク156からの2つの出口を示すように、複数の(入口/出口)として、システムに存在させてもよい。
【0025】
スラリーが入口214から出口138までタンク156を通過するのに伴って、スラリーの粘着性堆積物220は、それらの凝集特性およびより高い密度および/または粘性(分散されたスラリー材料の残りの部分と比較して)によって、タンク156を横切って/タンク156に沿って、懸濁液の残部よりもゆっくりと移動し、タンク156の底部および/または壁部に留まる(その後または同時に、240で示されるように除去することができる)。タンク156の底部および/または壁部のうち少なくとも1方には、液面210に対して適度な勾配が設けられ、操作中に、矢印240で示されように、(重力によりおよび/または不図示の専用の吸引部/ポンプ部を用いることにより)廃棄出口を通して成分220を除去し易いように構成されている。一方、研磨剤粒子230は、効率的に凝集しないので、タンク156を通過する流体中での分散は維持され、このような特性の違いにより、タンク156に進入する懸濁液の残りの部分は、高い流動性を維持する。すなわち、タンク156の出口138から流出する際に、粘着性で粘性のある好ましくない成分は沈殿するので(分離タンクに流入するスラリーのフローに比べて)、スラリー懸濁液140’は精製され、その際、研磨剤粒子はスラリー140’中に充分に残留する。
【0026】
一実施形態において、実際にスラリー生成プロセスの分離工程112の具体化を成功させるためには、たとえば、タンク156を通過する流体流量とタンク156の容積との賢明な調整によって、分離を通じた物質の選択に注意を要する。これらの値は、密度および粘性などのような、スラリー物質特性に応じて選択される。タンク容積と流体流量の逆数の値との積は、分離プロセスを意図した通りおよび/または首尾よく進行するには、流体懸濁液がどの程度の時間タンク内に留まるべきであるかを表す。
【0027】
実際的な問題としてこの手法を示すために、理論的または実証的にかかわらず、処理された流体懸濁液の固有の物質特性(たとえば、密度および粘性など)との相関関係に基づいて、本発明者らは、流体懸濁液の分離プロセスがタンク内で適正に行われるためには10分必要であるとして、さらに、流体懸濁液の生産管理には、プロセス流量が毎分10リットル(LPM)であることが必要であると仮定する。これらの検討から、流体懸濁液がタンク内に留まるべき時間を示す数値(この場合、10[分])は、タンク容積を表す数値と、流体流量(この場合、10[LPM])の逆数に等しい数値との積と等しくすべきであり、そのことから、流体懸濁液の分離プロセスが適正に進行するために、分離プロセスに必要とされるタンク容積は、100[リットル]と算定できる。別の例として、本発明者らは、流体懸濁液生産システムのハードウェア設計制約から、タンク容積を10ガロン(=37.85リットル)に予め仮定する。また、本発明者らは、処理された流体懸濁液の固有の物質特性から、以前の例と同じ流体懸濁液を処理するには、その分離プロセスがタンク内で適正に行われるためには、10分を要すると仮定する。これらの状況から、10[分]、すなわち、流体懸濁液がタンク内に留まるべき時間の長さは、タンク容積10[ガロン]と流体流量の逆数の値との積に等しくすべきであり、流体懸濁液の分離プロセスが適正に行われるために必要とされる流体流量を1[ガロン毎分(=3.785LPM)]と言うことができる。
【0028】
好適な分離時間は、タンク容積と流量の逆数の値との積に関係する。プロセスの分離部分112での継続時間が、上記製品のその値よりも実質的に短い場合、同じ流体に関して、a)プロセスの効率に影響を与えることなく、同じ流量とするために必要なタンク容積を小さくできるか、あるいは、b)プロセスの効率に影響を与えることなく、同じタンク容積に対してより多い流量を設定して処理を実施できるか、のいずれかであることが実証された。プロセスの分離部分112での継続時間がこの製品よりも実質的に長い場合、同じ所定の流体に関する処理は、(a)一定の流量に対してより大きいタンク容積を必要とするか、あるいは、(b)一定のタンク容積に対して、より少ない流量とすること、のいずれかであることが実証された。
【0029】
ここで図3(A)、(B)、(C)、(D)、ならびに、図4(A)、(B)、(C)、(D)を参照すると、分離プロセス112をテストするための簡単な方式として、本発明者らは、(研磨スラリープロセスの例における)粒子分散工程104からのスラリーに、「沈殿させて注ぐ」という着想を適用した。粒子分散プロセスによって生成される初期のスラリー懸濁液は、粘着性堆積物と研磨剤粒子の両方を含む。スラリーが後続の濾過プロセスへ「そのまま」(すなわち、精製されずに、図3(A))供給された時点で、粘着性堆積物220の存在により、フィルタはすぐに詰まった。この影響を埋め合わせするおよび/または補償するために、初期のスラリーは、まず容器内に留められ(図3B)、粘着性堆積物は、その凝集性による堆積物のより高い密度によりスラリー容器310の底部に、体積させることができた。粘着性堆積物が沈殿した後、スラリー容器310は傾けられ、沈殿の結果として少し精製された第2のスラリー製品320は別の容器330に静かに注がれた。粘着性堆積物220は、第1の容器310の底部に留まり、それらのより高い粘性により、容器330へ移送されず、注ぎ出されたスラリー320(図3(C))は、その分散性により、研磨剤粒子230のほとんどをスラリー320に維持し、それにより、分離後の特性を有するスラリーで満たされたバッチを生成した(図3(D))。簡単な正常性チェックとして、フィルターバッグ(約1ミクロンのネットを備える)に、揺することなくゆっくりと注ぎ出されたスラリー320を受け、処理されたスラリーが粘着性堆積物220を含んでいないこと(それは、既知の場合に、粘着性堆積物の存在に起因して起こる着色、たとえば、赤味を帯びるなど)が無いことにより判定された)、および、結果としてのスラリー320がいかなるそれ以外の実質的な詰まりおよび/または残留物なしにフィルターバッグを通過したことを確認した。
【0030】
図4(A)、(B)、(C)、(D)は、図3(A)、(B)、(C)、(D)を参照して説明した実験的検証の実際的な実施を示している。ここで、図4(A)は、容器310の2つの図を含む(1つは、質量計の上、もう1つは、容器の底部の外側が見える状態)。図4(B)は、図3(C)を参照して説明されている工程に対応しており、図4(C)は、フィルターバッグを通してスラリー320を濾過された後の、フィルターバッグ(容器330として使用された)の内側を見た図を提供するものである。フィルタ330の内側表面には、何らかの明らかに視覚的に識別されるような着色は全くなく、従って、粘着性堆積物220の存在により生成するような染みは示しておらず、すなわち、フィルターバッグ330内にそのような堆積物が実質的に存在しない。図4(C)から(D)への移行は、分離プロセスを通して精製されるスラリーを、供給タンク136図1と比較されたい)へ、次いで、プロセスの濾過サブセット部分上へ移送することを示している。
【0031】
従って、分離のプロセスの実施形態は、選択した容器に流入する第1の懸濁液の粘性成分の沈殿物を、その容器の底部に生成する工程を含む。沈殿物の生成プロセスは、このような懸濁液が通って流れる容器の底部に沈殿物を生成する工程を含むことができ、さらに、このような懸濁液が容器を通って流れ続ける間に、容器の底部から沈殿物を除去する工程を任意に含むことができる。プロセスは、第1の懸濁液を、容器内に存在する流体の液面に対して実質的に直角な方向の流れとして選択した容器内へ移送する工程を含むことができる。関連する実施形態では、プロセスは、第1の懸濁液を、容器内に存在する流体の液面に対して実質的に平行な方向の流れとして選択した容器内へ移送する工程を含むことができる。あるいは、分離のプロセスは、進入する懸濁液が容器内に含まれず、選択した容器を通って流れない(すなわち、「静止」または実質的に不動)状態で、沈殿物を生成する工程を含むことが可能ででき、さらに、選択した容器内に沈殿物を残留させながら、(沈殿物を除去する工程の結果として)少し精製された第2の懸濁液を選択した容器から移送する工程をさらに含むことが可能である。
【0032】
図5(A)、(B)、図6(A)、(B)のに図示されているように、スラリー濾過テストの実証結果が、本発明の思想による、濾過工程の前に導入される分離前処理工程の有効性を証明している。ここで、図5(A)、図6(A)は、それぞれ、分離前処理のない状態とおよび分離前処理のある状態において、プロセス100の濾過部108においてフィルタ146(そのパラメーターが示されている)を通るスラリーの流量を表す図を示している。図5(B)、図6(B)は、(それぞれ、工程112におけるスラリーの前処理ありと前処理なしでの)プロセス100の濾過工程108において濾過システムを特徴付ける圧力パラメーターを示している。
【0033】
たとえば、図5(A)、(B)を参照することで、当業者は、分離前処理が無い場合のスラリーのバッチが、一定のスラリー供給圧力(514として示されており、この例では、約100kPa)で濾過プロセス108に流入されるときには、濾過流量(曲線510)は最初に上昇し、一方、濾過圧力(曲線518、520)が降下し、フィルタ146の初期のフロー抵抗を示すことを、容易に認識するであろう。しかし、濾過流量510は、(時間ウィンドウt1(この例では約40秒として示されている)内に)急速に低下し、その後、実質的にゼロ・レベルに近づき、同時に、濾過圧力(図5(B))のレベルは、スラリー供給圧力レベル514(システムにおける実効的最大濾過圧力レベルのレベル)まで急速に増加する。これらの結果は、スラリーの効率的な濾過が、フィルタ146を通るスラリー・フローに対する非常に高い(実用的な目的にとって実質的に無限)抵抗によって停止したことを示している。従って、図5(A)、(B)のグラフの530部分は、フィルタの実質的に完全な詰まり、すなわち、非持続可能な(または、持続しない)濾過の典型的なケースの原因に繋がることを示している。
【0034】
図6(A)、(B)を参照すると、図5(A)、(B)の従来の処理結果と異なり、もう一つのスラリーのバッチを同じように準備して、それに分離前処理プロセス工程112を追加した後に、同じ濾過プロセス108を適用/導入(たとえば、フィード供給圧力514および濾過率を同じ条件と設定に)した場合、濾過流量610が増加し、濾過圧力レベル(曲線618、620)は初期にのみ降下する。濾過流量610は、低下することなく一定レベルに実質的に維持され(図6(A)の例では、約1.06L/分として示されている)、同時に、濾過圧力618、620は、共にスラリー供給圧力514よりも低い一定のレベルに維持されている(PinletおよびΔPfiltとして示されている)。これらの結果は、フィルタフロー抵抗が、濾過工程108の始めからその間にかけて、低くかつ変化なく維持され、それにより、フィルタ146の詰まり(それは、従来は、プロセスの前処理工程112がないことが原因であった)が実質的にないことが証明された。そこで、分離工程112を含むことによって実証されたこれらの結果を、「持続」(または、持続可能)濾過と称する。
【0035】
従って、本発明の実施形態は、製造効率および製品品質の両方を最適化する流体生成プロセスのシステム設計および実行を可能にし、同時に、全体的な流体生成プロセス内の異なるサブコンポーネント・プロセスの間の負荷バランスを取ることのより良好な理解を可能にすることが評価される。
【0036】
本開示および添付の特許請求の範囲の目的のために、「実質的に(substantially)」、「およそ(approximately)」、「約(about)」という用語、および、値、要素、特性、または特質の記述子を参照した同様の用語の使用は、参照される値、要素、特性、または特質が、必ずしも正確に述べられている通りではないが、とはいえ、実用目的としては、述べられているように当業者には考えられるはずであることを強調することを意図している。これらの用語は、個別の特質または品質の記述子に適用される際には、「ほとんど」、「主に」、「かなり」、「概して」、「本質的に」、「大部分またはかなりの程度まで」、「概ね同じであるものの必ずしも完全に同じではない」ことを意味し、たとえば、近似の言語を合理的に示すように、個別の特質または記述子を、その範囲が当業者によって理解されるように説明するようになっている。1つの具体例では、「およそ」、「実質的に」、および「約」という用語は、数値を関して使用される場合、個別の値に対してプラスまたはマイナス20%の範囲、より好ましくは、個別の値に対して、プラスまたはマイナス10%の範囲、さらにより好ましくは、プラスまたはマイナス5%の範囲、最も好ましくは、プラスまたはマイナス2%の範囲を表す。非限定的な例として、2つの値が互いに「実質的に等しい」という場合、2つの値の間の差は、その値自身の+/-20%の範囲内にあり、好ましくは、その値自身の+/-10%の範囲内にあり、より好ましくは、その値自身の+/-5%の範囲内にあり、さらにより好ましくは、その値自身の+/-2%以下の範囲内にあることを暗示する。
【0037】
選択された特質または概念を説明する際のこれらの用語の使用は、不明確さの根拠を暗示も提供もすることもなく、また、個別の特質または記述子に対して数値限定を加えることに関する根拠を暗示も提供もすることはない。当業者によって理解されるように、そのような値、要素、または特性の正確な値または特質の、述べられているものからの実際の偏差は、そのような目的のために当技術分野において受け入れられている測定方法を使用するときに典型的である実験的な測定誤差によって定義される数値範囲内に入り、また、その範囲内で変化することが可能である。
【0038】
たとえば、一定のレベルとして実質的に変化しないままである流量(または、フローレート)に言及した場合、流量の値が、プラスまたはマイナス10%、より好ましくは、プラスまたはマイナス5%、最も好ましくは、プラスまたはマイナス2%だけしか、そのような一定のレベルから逸脱しない流量として解釈される。流量がk別の時間ウィンドウの持続期間全体にわたって実質的に変化しないで維持されている場合、20%を超えず、好ましくは、10%を超えず、さらにより好ましくは、5%を超えず、最も好ましくは、2%を超えず、個別の時間ウィンドウの持続期間とは異なる持続期間にわたって、実質的に一定のレベルに流量を保つこととして解釈される。
【0039】
「実質的に」、「約」、および/または「およそ」という用語の意味を、別の実用的な状況に適用した具体例が、本開示の他の場箇所で用いられているかもしれない。
【0040】
本明細書の全体を通して、「1つの実施形態」、「実施形態」、「関連する実施形態」、または類似の言語に言及することは、言及された「実施形態」に関連して説明されている個別の特徴、構造、または特質が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。従って、本明細書の全体を通して、「1つの実施形態に」、「実施形態に」という語句、および、同様の言語が出現することは、必ずしもそうであるわけではないが、すべてが同一の実施形態を参照してもよい。なお、単独で、および図との可能性の関連として理解される、開示のいずれの部分も、本発明のすべての特徴の完全な説明を提供することを目的としない。
【0041】
また、本発明のすべての特徴の完全な説明をサポートすることを意図する単一の図面はない。すなわち、示された図面は、一般的に、本発明の特徴の幾つかだけ(一般的には、全てではない)を説明している。示された図面、および、その図面を参照する説明を含む開示の関連部分は、一般的に、示された図面および考察を簡単にするため、この図に提示され得る全ての要素の個別の視界または全ての特徴を含んでおらず、この図面中に取り上げられる個別の要素の考察のためのものである。本発明は、場合によっては、個別の特徴、要素、構成要素、構造、詳細、もしくは特性のうちの1つまたは複数がない状態、または、別の、方法、構成要素、および材料などを用いることで実用され得ることを当業者は認識するであろう。従って、本発明の実施形態の個別の詳細が、必ずしも、そのような実施形態を説明するそれぞれのおよび全ての図面に示されていない可能性があるが、本説明の文脈がそうでないことを求めていない限り、図面中のこの詳細の存在が暗示されている。それ以外の場合、本発明の実施形態の態様を曖昧にすることを回避するために、周知の構造、詳細、材料、または動作は、示された対象図面には示されない、あるいは、詳細に説明されてない場合がある。また、説明された本発明の一つの、特徴、構造、または特性は、1または複数の別の実施形態にいかなる適切な方法で組み合わせてもよい。
【0042】
向上した流体処理能力によって、流体生成コントローラは、現場での消耗させるチューニングなしに最適な性能を実現するように、容易に設計できる。そのような(随意の)プログラム可能なコントローラ(図面を簡単にするために図面には示されていないが、使用される場合には、システムおよび/または処理工程104、112、108の一部のうちの少なくとも1つの動作を管理するように構成されている)の存在および/または動作は、本発明の実施形態においては、具体的で持続性のある記憶メモリに記憶された指示によって制御される具体的にプログラムされたコンピュータが読み出し可能なプロセッサを含むことが必要とされることがある。このようなプロセッサは、実施形態の動作を管理するように、および/または、このような動作の間に得られるデータを収集するように、適切にプログラムされ、実施形態の動作において実行される所定の測定に属する情報を抽出および処理することができる。メモリは、制御ソフトウェアまたは他のインストラクションおよびデータを記憶するのに適切な、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、リード・オンリー・メモリ(ROM)、フラッシュ・メモリやそれ以外のメモリ、または、それらの組み合わせとすることができる。指示情報は、有線または無線コンピュータネットワークを含む、通信媒体を通して、プロセッサに伝達できる。また、本発明はソフトウェアにより具体化できるが、本発明を実施するために必要な機能は、任意または代替的に、ファームウェアおよび/またはハードウェア・コンポーネント、たとえば、組み合わせ論理回路、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、あるいは、それ以外のハードウェア、または、幾つかの組み合わせハードウェア、ソフトウェア、および/またはファームウェア・コンポーネントを、部分的にまたは全体的に具現化できる。
【0043】
開示された態様、または、これらの態様の一部は、上記に記載されていない状態に組み合わせることができる。すなわち、本発明は、開示されている実施形態に限定されるものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6