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特許7163930ハイドロクロロフルオロオレフィンの保存方法およびハイドロクロロフルオロオレフィンの保存容器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】ハイドロクロロフルオロオレフィンの保存方法およびハイドロクロロフルオロオレフィンの保存容器
(51)【国際特許分類】
   C07C 17/38 20060101AFI20221025BHJP
   C07C 21/18 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
C07C17/38
C07C21/18
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019549222
(86)(22)【出願日】2018-10-10
(86)【国際出願番号】 JP2018037751
(87)【国際公開番号】W WO2019078062
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2021-08-12
(31)【優先権主張番号】P 2017204017
(32)【優先日】2017-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チン曽我 環
(72)【発明者】
【氏名】福島 正人
【審査官】牧野 晃久
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/047297(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/047298(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/161724(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/008695(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/157763(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイドロクロロフルオロオレフィンを密閉された保存容器内で保存する方法であって、前記保存容器内でハイドロクロロフルオロオレフィンを気相と液相とが共存する状態で保存し、前記保存容器内の気相の温度25℃における空気の濃度を3.0体積%以下に保持することを特徴とするハイドロクロロフルオロオレフィンの保存方法。
【請求項2】
前記空気の濃度を、1体積ppm以上3.0体積%以下に保持する、請求項1に記載のハイドロクロロフルオロオレフィンの保存方法。
【請求項3】
前記ハイドロクロロフルオロオレフィンが、炭素数2~5のハイドロクロロフルオロオレフィンである、請求項1または2に記載のハイドロクロロフルオロオレフィンの保存方法。
【請求項4】
前記ハイドロクロロフルオロオレフィンが、1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを含む請求項1~3のいずれか一項に記載のハイドロクロロフルオロオレフィンの保存方法。
【請求項5】
未充填の保存容器内の空気を除去した後、液状のハイドロクロロフルオロオレフィンを充填して密閉し、密閉された保存容器内でハイドロクロロフルオロオレフィンを保存する、請求項1~4のいずれか一項に記載のハイドロクロロフルオロオレフィンの保存方法。
【請求項6】
気相と液相とが共存する状態でハイドロクロロフルオロオレフィンが充填されている、密閉された保存容器であり、前記保存容器内の気相の温度25℃における空気の濃度が3.0体積%以下であることを特徴とするハイドロクロロフルオロオレフィンの保存容器。
【請求項7】
前記空気の濃度が、1体積ppm以上3.0体積%以下である、請求項6に記載のハイドロクロロフルオロオレフィンの保存容器。
【請求項8】
前記ハイドロクロロフルオロオレフィンが、炭素数2~5のハイドロクロロフルオロオレフィンである、請求項6または7に記載のハイドロクロロフルオロオレフィンの保存容器。
【請求項9】
前記ハイドロクロロフルオロオレフィンが、1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを含む請求項6~8のいずれか一項に記載のハイドロクロロフルオロオレフィンの保存容器。
【請求項10】
ハイドロクロロフルオロオレフィンを密閉された保存容器内で保存する方法であって、前記保存容器内でハイドロクロロフルオロオレフィンを気相と液相とが共存する状態で保存し、前記保存容器内の気相の温度25℃における酸素の濃度を0.6体積%以下に保持することを特徴とするハイドロクロロフルオロオレフィンの保存方法。
【請求項11】
前記酸素の濃度を、0.2体積ppm以上0.6体積%以下に保持する、請求項10に記載のハイドロクロロフルオロオレフィンの保存方法。
【請求項12】
前記ハイドロクロロフルオロオレフィンが、炭素数2~5のハイドロクロロフルオロオレフィンである、請求項10または11に記載のハイドロクロロフルオロオレフィンの保存方法。
【請求項13】
前記ハイドロクロロフルオロオレフィンが、1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを含む請求項10~12のいずれか一項に記載のハイドロクロロフルオロオレフィンの保存方法。
【請求項14】
未充填の保存容器内の空気を除去した後、液状のハイドロクロロフルオロオレフィンを充填して密閉し、密閉された保存容器内でハイドロクロロフルオロオレフィンを保存する、請求項10~13のいずれか一項に記載のハイドロクロロフルオロオレフィンの保存方法。
【請求項15】
気相と液相とが共存する状態でハイドロクロロフルオロオレフィンが充填されている、密閉された保存容器であり、前記保存容器内の気相の温度25℃における酸素の濃度が0.6体積%以下であることを特徴とするハイドロクロロフルオロオレフィンの保存容器。
【請求項16】
前記酸素の濃度が、0.2体積ppm以上0.6体積%以下である、請求項15に記載のハイドロクロロフルオロオレフィンの保存容器。
【請求項17】
前記ハイドロクロロフルオロオレフィンが、炭素数2~5のハイドロクロロフルオロオレフィンである、請求項15または16に記載のハイドロクロロフルオロオレフィンの保存容器。
【請求項18】
前記ハイドロクロロフルオロオレフィンが、1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを含む請求項15~17のいずれか一項に記載のハイドロクロロフルオロオレフィンの保存容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイドロクロロフルオロオレフィンの保存方法および保存容器に係り、特に、貯蔵および輸送等のためにハイドロクロロフルオロオレフィンを安定に保存する方法、およびハイドロクロロフルオロオレフィンが安定に保存された容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイドロクロロフルオロオレフィンは、オゾン層を破壊する温室効果ガスであるクロロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、およびハイドロフルオロカーボンに代わる新しい冷媒、溶剤、洗浄剤等として、近年使用が期待されている。
【0003】
このようなハイドロクロロフルオロオレフィンは、密閉容器に常温以下の温度で加圧充填され、あるいは冷却下に加圧液化充填されて、貯蔵や輸送がなされている。こうして密閉容器に充填されたハイドロクロロフルオロオレフィンは、気相と液相とを有する気液状態を呈している。そして、気液状態のハイドロクロロフルオロオレフィンは、冷媒、溶剤、洗浄剤等の各種用途に適用するための品質の維持や、容器内での不純物(固体)の付着防止などのために、分解や酸化等を生じさせることなく安定に保持することが求められている。
【0004】
ここで、ハイドロクロロフルオロオレフィンと同様に不飽和二重結合を有するハイドロフルオロオレフィンは、酸素が存在すると、酸素がラジカル源になって重合反応が生起することが知られている。このため、ハイドロフルオロオレフィンを保存する際には、酸素存在下で自己重合反応に対して、どの程度安定であるかを見極め、さらには製造コスト等の経済性を考慮して、許容される酸素含有量が決定されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
一方、ハイドロクロロフルオロオレフィンについては、例えば、冷媒として使用する際に、冷凍機油の存在を前提とし、安定化剤の添加等により冷媒組成物を安定化することで冷却システム全体を安定化する方法が知られている(例えば、特許文献2を参照)。しかしながら、貯蔵や輸送のための容器内でのハイドロクロロフルオロオレフィンの安定化とは条件が異なるため、この方法を容器内でのハイドロクロロフルオロオレフィンの保存に適用することは難しい。また、安定化剤を添加する方法では、冷媒等の各種用途に適用する際に安定化剤の除去を必要とし、工程の負荷が大きいばかりでなく、蒸留等の物理的精製法では安定化剤を完全に除去できない場合もあり、品質管理上好ましくない。
【0006】
このように、ハイドロクロロフルオロオレフィンについては、各種用途に適用するための品質を保持し、安全かつ安定的に貯蔵および輸送を行うための保存方法について技術が確立していない現状がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2013/161724号
【文献】国際公開第2012/157763号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題に対処してなされたものであり、貯蔵や輸送のために容器内に充填されたハイドロクロロフルオロオレフィンにおいて、安全かつ安定に保存する方法、およびハイドロクロロフルオロオレフィンが安定に保存された容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の構成を有するハイドロクロロフルオロオレフィンの保存方法およびハイドロクロロフルオロオレフィンの保存容器を提供する。
[1]ハイドロクロロフルオロオレフィンを密閉された保存容器内で保存する方法であって、前記保存容器内でハイドロクロロフルオロオレフィンを気相と液相とが共存する状態で保存し、前記保存容器内の気相の温度25℃における空気の濃度を3.0体積%以下に保持することを特徴とするハイドロクロロフルオロオレフィンの保存方法。
[2]前記空気の濃度を、1体積ppm以上3.0体積%以下に保持する、[1]のハイドロクロロフルオロオレフィンの保存方法。
[3]前記ハイドロクロロフルオロオレフィンが、炭素数2~5のハイドロクロロフルオロオレフィンである、[1]または[2]のハイドロクロロフルオロオレフィンの保存方法。
[4]前記ハイドロクロロフルオロオレフィンが、1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを含む[1]~[3]のいずれかのハイドロクロロフルオロオレフィンの保存方法。
[5]未充填の保存容器内の空気を除去した後、液状のハイドロクロロフルオロオレフィンを充填して密閉し、密閉された保存容器内でハイドロクロロフルオロオレフィンを保存する、[1]~[4]のいずれかのハイドロクロロフルオロオレフィンの保存方法。
[6]気相と液相とが共存する状態でハイドロクロロフルオロオレフィンが充填されている、密閉された保存容器であり、前記保存容器内の気相の温度25℃における空気の濃度が3.0体積%以下であることを特徴とするハイドロクロロフルオロオレフィンの保存容器。
[7]前記空気の濃度が、1体積ppm以上3.0体積%以下である、[6]に記載のハイドロクロロフルオロオレフィンの保存容器。
[8]前記ハイドロクロロフルオロオレフィンが、炭素数2~5のハイドロクロロフルオロオレフィンである、[6]または[7]のハイドロクロロフルオロオレフィンの保存容器。
[9]前記ハイドロクロロフルオロオレフィンが、1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを含む[6]~[8]のいずれかのハイドロクロロフルオロオレフィンの保存容器。
[10]ハイドロクロロフルオロオレフィンを密閉された保存容器内で保存する方法であって、前記保存容器内でハイドロクロロフルオロオレフィンを気相と液相とが共存する状態で保存し、前記保存容器内の気相の温度25℃における酸素の濃度を0.6体積%以下に保持することを特徴とするハイドロクロロフルオロオレフィンの保存方法。
[11]前記酸素の濃度を、0.2体積ppm以上0.6体積%以下に保持する、[10]のハイドロクロロフルオロオレフィンの保存方法。
[12]前記ハイドロクロロフルオロオレフィンが、炭素数2~5のハイドロクロロフルオロオレフィンである、[10]または[11]のハイドロクロロフルオロオレフィンの保存方法。
[13]前記ハイドロクロロフルオロオレフィンが、1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを含む[10]~[12]のいずれかのハイドロクロロフルオロオレフィンの保存方法。
[14]未充填の保存容器内の空気を除去した後、液状のハイドロクロロフルオロオレフィンを充填して密閉し、密閉された保存容器内でハイドロクロロフルオロオレフィンを保存する、[10]~[13]のいずれかのハイドロクロロフルオロオレフィンの保存方法。
[15]気相と液相とが共存する状態でハイドロクロロフルオロオレフィンが充填されている、密閉された保存容器であり、前記保存容器内の気相の温度25℃における酸素の濃度が0.6体積%以下であることを特徴とするハイドロクロロフルオロオレフィンの保存容器。
[16]前記酸素の濃度が、0.2体積ppm以上0.6体積%以下である、[15]に記載のハイドロクロロフルオロオレフィンの保存容器。
[17]前記ハイドロクロロフルオロオレフィンが、炭素数2~5のハイドロクロロフルオロオレフィンである、[15]または[16]のハイドロクロロフルオロオレフィンの保存容器。
[18]前記ハイドロクロロフルオロオレフィンが、1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを含む[15]~[17]のいずれかのハイドロクロロフルオロオレフィンの保存容器。
【発明の効果】
【0010】
本発明のハイドロクロロフルオロオレフィンの保存方法、およびハイドロクロロフルオロオレフィンの保存容器によれば、ハイドロクロロフルオロオレフィンの分解、酸化等が抑制されるので、ハイドロクロロフルオロオレフィンを高純度および高品質に維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本明細書において、ハロゲン化炭化水素については、化合物名の後の括弧内にその化合物の略称を記すが、本明細書では必要に応じて化合物名に代えてその略称を用いる。また、幾何異性体を有する化合物の名称およびその略称に付けられた(E)は、E体(トランス体)を示し、(Z)はZ体(シス体)を示す。該化合物の名称、略称において、E体、Z体の明記がない場合、該名称、略称は、E体、Z体、およびE体とZ体の混合物を含む総称を意味する。
【0012】
本明細書において、ハイドロクロロフルオロオレフィンの気相における空気の濃度は、特に断りのない限り、気体温度が25℃の場合の空気の濃度をいう。本明細書において、空気は、空気の全容量に対して20体積%の酸素と80体積%の窒素からなる。
【0013】
本発明の第1の実施形態は、ハイドロクロロフルオロオレフィンを密閉された保存容器内で保存する方法であって、保存容器内でハイドロクロロフルオロオレフィンを気相と液相とが共存する状態で保存し、保存容器内の気相の温度25℃における空気の濃度を3.0体積%以下に保持することを特徴とする。なお、密閉容器内でハイドロクロロフルオロオレフィンは気液共存状態で保持されているので、保存容器内におけるハイドロクロロフルオロオレフィンの圧力は、そのハイドロクロロフルオロオレフィンの飽和蒸気圧である。上記空気の濃度は、ハイドロクロロフルオロオレフィンと空気を含む保存容器内の気相において、空気がどれだけ含有されているかを示す含有割合ということもできる。
【0014】
保存容器中のハイドロクロロフルオロオレフィンの一部が取り出され、その後残りのハイドロクロロフルオロオレフィンが引き続き保存容器中に保存されることが少なくない。その場合、保存容器中の気相の体積が増加するが、体積が増加した気相においてもその空気の濃度は3.0体積%以下に保持される。気相の空気の濃度は、通常、液相のハイドロクロロフルオロオレフィン中の空気の濃度と平衡状態にあり、ハイドロクロロフルオロオレフィンの一部が取り出される際に保存容器内に空気が侵入しない限り、気相の空気の濃度は実質的に上昇しないと考えられる。
【0015】
本発明の第2の実施形態であるハイドロクロロフルオロオレフィンの保存容器は、気相と液相とが共存する状態でハイドロクロロフルオロオレフィンが充填されている、密閉された保存容器であり、保存容器内の気相の温度25℃における空気の濃度が3.0体積%以下であることを特徴とする。
【0016】
本発明の第3の実施形態は、ハイドロクロロフルオロオレフィンを密閉された保存容器内で保存する方法であって、保存容器内でハイドロクロロフルオロオレフィンを気相と液相とが共存する状態で保存し、保存容器内の気相の温度25℃における酸素の濃度を0.6体積%以下に保持することを特徴とする。
【0017】
本発明の第4の実施形態であるハイドロクロロフルオロオレフィンの保存容器は、気相と液相とが共存する状態でハイドロクロロフルオロオレフィンが充填されている、密閉された保存容器であり、保存容器内の気相の温度25℃における酸素の濃度が0.6体積%以下であることを特徴とする。
【0018】
このような本発明の第1~第4の実施形態においてハイドロクロロフルオロオレフィンとして具体的には、炭素数2~10のハイドロクロロフルオロオレフィンが挙げられる。本発明が好ましく適用できるハイドロクロロフルオロオレフィンの炭素数は2~8であり、より好ましくは2~5である。
【0019】
炭素数2のハイドロクロロフルオロオレフィンとしては、1-クロロ-2,2-ジフルオロエチレン(HCFO-1122)、1,2-ジクロロフルオロエチレン(HCFO-1121)、1-クロロ-2-フルオロエチレン(HCFO-1131)が挙げられる。
【0020】
炭素数3のハイドロクロロフルオロオレフィンとしては、1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd)、2-クロロ-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224xe)、1-クロロ-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224zb)、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233xf)、1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233yd)、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd)、1-クロロ-1,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zb)、2-クロロ-1,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233xe)、2-クロロ-1,1,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233xc)、3-クロロ-1,2,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233ye)、3-クロロ-1,1,2-トリフルオロプロペン(HCFO-1233yc)、1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1223xd)、1,3-ジクロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1223yd)、2,3-ジクロロ-3,3-ジフルオロプロペン(HCFO-1232xf)、1,2,3-トリクロロ-3,3-ジフルオロプロペン(HCFO-1222xd)、2,3,3-トリクロロ-3-フルオロプロペン(HCFO-1231xf)等が挙げられる。
【0021】
炭素数5のハイドロクロロフルオロオレフィンとしては、1-クロロ-2,3,3,4,4,5,5-ヘプタフルオロ-1-ペンテン(HCFO-1437dycc)等が挙げられる。
【0022】
本発明の第1~第4の実施形態において、ハイドロクロロフルオロオレフィンは複数種のハイドロクロロフルオロオレフィンの混合物として保存されてよく、その1種が単独で保存されてもよい。
【0023】
ハイドロクロロフルオロオレフィンの保存容器としては、内部圧力下で気液混合物を封入することができる密閉容器であれば、特別な構造または構成材料を必要とせず、広い範囲の形態および機能を有することができる。例えば、固定した保存容器である貯蔵タンク、輸送に使用される充填ボンベ、2次充填ボンベ(サービス缶)等の耐圧容器等が挙げられる。保存容器の構成材料としては、例えば、炭素鋼、マンガン鋼、クロムモリブデン鋼、その他の低合金鋼、ステンレス鋼、アルミニウム合金、銅、鉄、アルミニウム、ニッケル、チタニウム、金属シリコン、ケイ素鋼、スズ、マグネシウムおよび亜鉛から選ばれる1種の材料、またはこれらからなる群から選択される少なくとも2種の材料、を主体とする金属を用いることができる。
【0024】
本発明の第1および第2の実施形態において保存容器内の気相における空気の濃度は、3.0体積%以下である。気相における空気の濃度が3.0体積%以下であれば、液相および気相のハイドロクロロフルオロオレフィンの分解、酸化等を十分に防止し、品質を保持することができる。
【0025】
本発明の第3および第4の実施形態において保存容器内の気相における酸素の濃度は、0.6体積%以下である。気相における酸素の濃度が0.6体積%以下であれば、液相および気相のハイドロクロロフルオロオレフィンの分解、酸化等を十分に防止し、品質を保持することができる。
【0026】
本発明者らは、ハイドロクロロフルオロオレフィンは、同様に不飽和二重結合を有するハイドロフルオロオレフィンが少量の酸素の存在で重合反応が生起するのに対して、ハイドロフルオロオレフィンにおいて重合が生起する程度の酸素の存在においても重合反応が進行しないことを見出した。
【0027】
そして、ハイドロクロロフルオロオレフィンの保存に際しては、ハイドロフルオロオレフィンと異なる観点から酸素あるいはこれを含む空気の存在量を規定できるという知見に基づき、鋭意検討を行った結果、気相における空気の濃度が3.0体積%以下、または、酸素の濃度が0.60体積%以下であれば、ハイドロクロロフルオロオレフィンの品質を保持することができることを見出した。ハイドロクロロフルオロオレフィンのより長期に亘るより高い品質保持のために、気相における空気の濃度は1.7体積%以下、酸素の濃度は0.34体積%以下が好ましく、空気の濃度は0.7体積%以下、酸素の濃度は0.14体積%以下がより好ましい。
【0028】
このように、本発明の第1および第2の実施形態において、気相における空気の濃度を特定値以下に規定することは、酸素の濃度を該空気濃度の特定値の1/5以下に規定することと同じである。本発明においては、ハイドロクロロフルオロオレフィンを保存容器に保存する際に、通常、保存容器内に混入される空気、または酸素の量を上記のとおり規定することで、ハイドロクロロフルオロオレフィンの分解、酸化等を促進する酸素の量を規定するものである。
【0029】
なお、保存容器への充填時の操作性の観点からは、気相における空気の濃度は1.8~3.0体積%、酸素の濃度は0.36~0.6体積%が好ましい。
【0030】
さらに、気相における空気の濃度は、1体積ppm以上とすることで製造コスト等を抑えることができ好ましい。製造コストの点から気相における空気の濃度は、3体積ppm以上がより好ましく、5体積ppm以上がさらに好ましく、7体積ppm以上が特に好ましい。気相における酸素の濃度は、0.2体積ppm以上とすることで製造コスト等を抑えることができ好ましい。製造コストの点から気相における空気の濃度は、0.6体積ppm以上がより好ましく、1体積ppm以上がさらに好ましく、1.4体積ppm以上が特に好ましい。
【0031】
本発明の第1および第2の実施形態において、気相における空気の濃度は、上に説明した観点から、1体積ppm以上3.0体積%以下が好ましく、3体積ppm以上1.7体積%以下がより好ましく、3体積ppm以上0.7体積%以下がさらに好ましい。
【0032】
本発明の第3および第4の実施形態において、気相における酸素の濃度は、上に説明した観点から、0.2体積ppm以上0.6体積%以下が好ましく、0.6体積ppm以上0.34体積%以下がより好ましく、0.6体積ppm以上0.14体積%以下がさらに好ましい。
【0033】
本発明の第1~第4の実施形態がより好適に使用できるハイドロクロロフルオロオレフィンとしては、上記の中でも、炭素数3のハイドロクロロフルオロプロペンが挙げられ、モノクロロテトラフルオロプロペンおよびモノクロロトリフルオロプロペンから選ばれる1種以上が好ましく、HCFO-1224yd(以下、「1224yd」ともいう。)が特に好ましい。
【0034】
1224yd(CF-CF=CHCl)は、ハイドロクロロフルオロオレフィンの中でも、安定性が高い。これにより、本発明の第1および第2の実施形態を、1224ydに適用する場合、気相における空気の濃度の下限を、例えば、10体積ppmに、より好ましくは、15体積ppmに設定できる。本発明の第3および第4の実施形態を、1224ydに適用する場合、気相における酸素の濃度の下限を、例えば、2体積ppmに、より好ましくは、3体積ppmに設定できる。
【0035】
1224ydは、互いに幾何異性体である、1224yd(Z)と1224yd(E)が存在し、1224yd(Z)は1224yd(E)に比べて化学的安定性が高い。1224ydは、化学的安定性の観点から、1224yd全量に対する1224yd(Z)の含有割合が30~100質量%であるのが好ましく、50~100質量%がより好ましく、80~100質量%がさらに好ましく、99~100質量%が特に好ましい。1224yd(Z)のみからなるのが特に好ましい。本発明の第1および第2の実施形態を、1224yd(Z)に適用する場合、気相における空気の濃度の下限を、例えば、20体積ppmに、より好ましくは、25体積ppm、さらに好ましくは50体積ppm、最も好ましくは80体積ppmに設定できる。
【0036】
本発明の第3および第4の実施形態を、1224yd(Z)に適用する場合、気相における酸素の濃度の下限を、例えば、4体積ppmに、より好ましくは、5体積ppm、さらに好ましくは10体積ppm、最も好ましくは16体積ppmに設定できる。
【0037】
本発明の第1~第4の実施形態において、保存容器内にはハイドロクロロフルオロオレフィンおよび空気または酸素以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、微量成分が存在してもよい。微量成分としては、ハイドロクロロフルオロオレフィンを製造する際に生成される副生物、未反応原料、精製の際に用いる各種化合物が挙げられる。この場合、気相における空気または酸素の濃度は、ハイドロクロロフルオロオレフィンと微量成分と空気を含む保存容器の気相部に対する空気または酸素の濃度である。
【0038】
これら微量成分の含有量は、例えば、目的のハイドロクロロフルオロオレフィンと微量成分の合計量に対して、合計で1.5質量%未満が好ましく、1.0質量%以下がより好ましい。ただし、本発明の第1~第4の実施形態において、製造コストの観点から、微量成分の含有量の下限を好ましくは4質量ppm、より好ましくは50質量ppm、さらに好ましくは100質量ppmとすることができる。微量成分の含有量が上記下限値以上であっても、上記上限値以下であれば、本発明の第1~第4の実施形態においては、気相中の空気または酸素の濃度が十分に抑えられているため、本発明の効果を達成できる。
【0039】
本発明の第1~第4の実施形態において、保存容器内に1224ydを保存する場合、このような微量成分としては、1,3-ジクロロ-1,1,2,2,3-ペンタフルオロプロパン(CClF-CF-CHClF、HCFC-225cb)、1,1,1,2-テトラフルオロプロパン(CF-CHF-CH、HFC-254eb)、1,1-ジクロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(CF-CF=CCl、CFO-1214ya)、(Z)-2-クロロ-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン((Z)-CF-CCl=CHF、HCFO-1224xe(Z))、(E)-2-クロロ-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン((E)-CF-CCl=CHF、HCFO-1224xe(E))、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(CF-CF=CH、HFO-1234yf)、(Z)-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン((Z)-CF-CH=CHF、HFO-1234ze(Z))、(E)-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン((E)-CF-CH=CHF、HFO-1234ze(E))、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-1-プロピン(CF-C≡CCl)、Cで示されるフッ化炭化水素、2-クロロ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパン(HCFC-244bb)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245fa)、2-クロロ-1,1,3,3,3-ペンタフルオロ-1-プロペン(CFO-1215xc)、3,3-ジクロロ-1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン(HCFC-225ca)、1,1,1,2,2,3,3-ヘプタフルオロプロパン(FC-227ca)、メタノール、エタノール、アセトン、クロロホルムおよびヘキサンから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0040】
また、上記の微量成分は化合物の種類によっては、1224ydと微量成分の合計量に対して1.5質量%未満の適当量を含有することで特定の機能を発揮する場合がある。例えば、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-1-プロピンは、1224ydと微量成分の合計量に対して1.5質量%未満で含有する場合に、1224ydの安定性を高める化合物である。1224ydの安定性の観点から、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-1-プロピンは、1224ydと微量成分の合計量に対して0.0001~0.1質量%の範囲で含まれることが好ましく、より好ましくは、0.0001~0.001質量%である。
【0041】
また、例えば、HCFC-244bbは、1224ydと微量成分の合計量に対して1.5質量%未満で含有する場合に、1224ydの安定性を高める化合物である。1224ydの安定性の観点から、HCFC-244bbは、1224ydと微量成分の合計量に対して0.001~0.5質量%の範囲で含まれることが好ましく、より好ましくは、0.01~0.1質量%である。
【0042】
なお、微量成分の中には、ハイドロフルオロオレフィン、例えば、1224ydの場合には、HFO-1234yf、HFO-1234ze(E)、HFO-1234ze(Z)、Cで示されるフッ化炭化水素が含まれてもよい。ただし、ハイドロフルオロオレフィンについては、微量の酸素の存在で重合し容器内に固体状の重合生成物を生じさせる可能性があるため、目的のハイドロクロロフルオロオレフィンと微量成分の合計量に対するハイドロフルオロオレフィンの含有量は、合計で5000質量ppm以下が好ましく、2000質量ppm以下がより好ましい。製造コストを勘案すれば、目的のハイドロクロロフルオロオレフィンと微量成分の合計量に対するハイドロフルオロオレフィンの含有量の下限は、50質量ppmが好ましく、100質量ppmがより好ましい。
【0043】
保存容器に1224ydを保存する場合、上記の微量成分が存在する場合には、保存容器中の空気の量を5体積ppm~1.5体積%とする、または酸素の量を1体積ppm~0.3体積%とすることが1224ydの安定性をさらに向上させる点から好ましく、空気の量を7体積ppm~1.0体積%、または酸素の量を1.4体積ppm~0.2体積%とすることがより好ましい。
【0044】
また、本発明の第1~第4の実施形態において、保存容器内には水は含まれないことが好ましい。本発明の効果を損なわずに含有できる水の量の上限としては、目的のハイドロクロロフルオロオレフィンと微量成分の合計量に対して、20質量ppmが好ましく、15質量ppmがより好ましく、10質量ppmがさらに好ましく、5質量ppmが特に好ましい。製造コストを勘案すれば、水の量の下限として、目的のハイドロクロロフルオロオレフィンと微量成分の合計量に対して、0.1質量ppmが好ましく、1質量ppmがより好ましい。
【0045】
保存容器内の水の量を上記範囲にするために、ハイドロクロロフルオロオレフィンを保存容器に充填する前に、ハイドロクロロフルオロオレフィンをモレキュラーシーブ等の固体吸着と接触させる等の公知の方法により、ハイドロクロロフルオロオレフィン中の水の量を低減させることができる。ハイドロクロロフルオロオレフィン中の水の量はカールフィッシャー電量滴定法により測定できる。
【0046】
本発明の第1~第4の実施形態において、気相における空気または酸素の濃度の調整は、ハイドロクロロフルオロオレフィンを加圧して液体を生成させ、この液体を、予め空気を真空脱気し、空気の濃度を温度25℃で3.0体積%以下に、または酸素の濃度を温度25℃で0.6体積%以下に低減させた密閉容器に注入することにより実施することができる。ハイドロクロロフルオロオレフィンの液体を容器に注入すると、容器内の空間は、液体からの蒸気によって速やかに飽和される。そして、このようにハイドロクロロフルオロオレフィンの飽和蒸気により満たされた気相における空気の濃度は3.0体積%以下(温度25℃)、または酸素の濃度は0.6体積%以下(温度25℃)となる。気相における空気または酸素の濃度はガスクロマトグラフィーにより測定できる。
【0047】
本発明の第1~第4の実施形態において、保存容器を125℃の恒温状態で5日間放置した後の保存容器中のハイドロクロロフルオロオレフィンの酸分量は、ハイドロクロロフルオロオレフィンの全量に対して30質量ppm未満が好ましく、10質量ppm未満がより好ましく、1質量ppm未満がさらに好ましい。なお、保存容器内の酸分量は後述の実施例に記載の測定方法により求められる。保存容器中に微量成分が存在する場合は、ハイドロクロロフルオロオレフィンと微量成分の合計量に対する酸分量が30質量ppm未満であることが好ましい。
【0048】
このような本発明のハイドロクロロフルオロオレフィンの保存方法によれば、気液共存状態で密閉容器内に充填されたハイドロクロロフルオロオレフィンに分解や酸化等が生じることがないので、ハイドロクロロフルオロオレフィンの純度および冷媒等としての高品質を維持することができる。また、気相の空気の濃度の下限を1体積ppmまたは酸素の濃度の下限を0.2体積ppmとする好ましい態様とすれば、低コストでハイドロクロロフルオロオレフィンを保存することができる。さらに、微量成分についてハイドロフルオロオレフィンの含有量を規定することで、密閉容器内に例えば固体状の重合生成物が生じることがないので、バルブ等の閉塞や冷媒システムへの異物混入が生じるおそれがない。
【0049】
本発明の保存方法の評価は、例えば、密閉容器内に所定量の空気または酸素とともに気液共存状態となるようにハイドロクロロフルオロオレフィンを封入し、全体を所定温度に加熱し恒温状態で所定の時間保持した後、ハイドロクロロフルオロオレフィンの液相中の反応生成物を同定し、分析することにより行う。この評価は、熱負荷をかけた加速試験に相当する。加熱温度は、恒温槽の設定温度範囲である-70~300℃の範囲に設定できる。また、加熱処理時間は任意に設定できる。反応生成物の同定・分析は、例えば、後述する実施例に記載の方法により実施することができる。
【実施例
【0050】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。例1~8は実施例であり、例9、10は比較例である。例11~13は、ハイドロフルオロオレフィンを用いた参考例である。
【0051】
[例1~10]
内容積200ccのSUS316製耐圧容器(最高使用温度300℃、最高使用圧力20MPa)内に、予め重量を計測したパイレックス(登録商標)製の内挿管を挿入し、耐圧容器を密閉した後、容器内の真空排気を行った。なお、内挿管は耐圧試験容器内での重合物の生成の有無を確認するために挿入した。次に、上記耐圧容器内に所定量の空気を封入した後、液化された1224yd(Z)と微量成分を含む1224yd(Z)組成物50gを充填した。耐圧容器内の気相を採取し、ガスクロマトグラフィーで空気の濃度を測定したところ表1に示す値であった。なお、試料採取時の耐圧容器内の温度は25℃であった。また、空気の濃度から求めた酸素の濃度を表1に併せて示す。
【0052】
1224yd(Z)組成物における微量成分は、HFC-254eb、HFO-1234ze(Z)、Cで示されるフッ化炭化水素、HCFC-244bb、HFC-245fa、CFO-1215xc、FC-227ca、HCFO-1224xe、HFO-1224yd(E)、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-1-プロピン、HFO-1234yfおよびメタノールであり、その含有量は、1224yd(Z)と上記微量成分の合計量に対して合計で0.52質量%であった。さらに、水の含有量は1224yd(Z)と上記微量成分の合計量に対して20質量ppmであった。
【0053】
次いで、このように所定濃度の空気とともに1224yd(Z)組成物が封入された耐圧容器を、熱風循環型恒温槽内に設置し、125℃の恒温状態で5日間放置した。
【0054】
5日間経過後、恒温槽から耐圧容器を取り出し、1224yd(Z)組成物について次のようにして酸分量の分析を行った。
【0055】
(酸分量の測定)
上記試験後の耐圧容器を室温になるまで静置した。室温になった耐圧容器に、吸収瓶4本にそれぞれ純水を100ml入れ、導管で直列に連結したものをつなぎ、徐々に耐圧容器の弁を開放して、1224yd(Z)組成物を吸収瓶の水中に導入し、1224yd(Z)組成物に含まれる酸分を抽出した。
【0056】
抽出後の吸収瓶の水は、1本目と2本目を合わせて指示薬(BTB:ブロモチモールブルー)を1滴加え、1/100N-NaOHアルカリ標準液を用いて滴定した。同時に、吸収瓶の3本目および4本目の水を合わせて同様に滴定し、測定ブランクとした。これら測定値と測定ブランクの値から、試験後の1224yd(Z)組成物に含まれる酸分の濃度をHCl濃度として求めた。結果を表1に示す。表1において、◎は「酸分濃度が1質量ppm未満」を、○は「酸分濃度が質量1ppm以上10質量ppm未満」を、△は「酸分濃度が10質量ppm以上30質量pm未満」を、×は「酸分濃度が30質量ppm以上」をそれぞれ示す。
【0057】
さらに、内挿管内の固形物生成の有無を肉眼で調べるとともに、固形物の生成量を内挿管の試験前後における質量変化として調べた。結果を表1に示す。表1において、○は「固形物生成量が10mg以下」を、×は「固形物生成量が10mg超」をそれぞれ示す。
【0058】
[例11~13]
ハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)との比較のために、以下の3種のハイドロフルオロオレフィン(HFO)について、気相の空気濃度および酸素濃度が例3と同じになるように耐圧容器に充填し、上記と同様の評価を行った。結果を表1に併せて示す。
【0059】
例11には、純度99.5質量%以上のHFO-1234yf、例12には、純度99.5質量%以上のHFO-1234ze(E)を、例13には、純度99.5質量%以上のトリフルオロエチレン(HFO-1123)を用いた。
【0060】
【表1】
【0061】
表1から、本発明の方法は、ハイドロクロロフルオロオレフィンの保存に関し、長期に亘り分解、酸化を生起させない安定的な保存方法として有効であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の保存方法および保存容器によれば、ハイドロクロロフルオロオレフィンに分解、酸化等が生じることがないので、ハイドロクロロフルオロオレフィンの高品質を維持しつつ、貯蔵および輸送等に供することができる。