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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】水質測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/18 20060101AFI20221025BHJP
   C02F 1/44 20060101ALI20221025BHJP
   C02F 1/00 20060101ALI20221025BHJP
   G01N 1/10 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
G01N33/18 106A
C02F1/44 A
C02F1/00 V
G01N1/10 B
G01N33/18 106Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021101691
(22)【出願日】2021-06-18
【審査請求日】2022-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】新井 伸説
(72)【発明者】
【氏名】深和 裕二
(72)【発明者】
【氏名】赤崎 和
【審査官】中村 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-044022(JP,A)
【文献】特開2014-185904(JP,A)
【文献】特開2002-282850(JP,A)
【文献】特開2004-077299(JP,A)
【文献】特開2016-200479(JP,A)
【文献】特開2005-017098(JP,A)
【文献】国際公開第2018/179494(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/00-33/46
G01N 33/18
C02F 1/44
C02F 1/00
G01N 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の採水点から採水配管を介して採水した水質測定対象水を共通の水質測定器に導入して水質を測定する水質測定装置において、
各採水配管の下流端が連なるループ状流路と、
該ループ状流路と前記水質測定器とを接続する測定配管と、
各採水配管に設けられた採水弁と
を有し
前記採水配管から流入した水は、前記ループ状流路の双方向に流れて前記測定配管に到達し、前記水質測定器に導入されることを特徴とする水質測定装置。
【請求項2】
前記水質測定器は微粒子数測定器であることを特徴とする請求項1の水質測定装置。
【請求項3】
前記採水配管がn個(nは2以上の整数)設けられ、第1ないし第nの採水配管の下流端がこの順に前記ループ状流路に連なっており、
第1の採水配管のループ状流路への接続点から前記測定配管の接続点までの距離と、第nの採水配管のループ状流路への接続点から前記測定配管の接続点までの距離とが略同一である請求項1又は2の水質測定装置。
【請求項4】
前記水質測定器からの流出水が流れる排出配管が設けられており、該排出配管に流量調整弁が設けられている請求項1~3のいずれかの水質測定装置。
【請求項5】
前記採水弁を所定の順番で所定時間開とするよう制御する制御手段を有する請求項1~4のいずれかの水質測定装置。
【請求項6】
並列設置された膜モジュールと、
共通の給水配管及びそれから分岐した分岐配管を介して各膜モジュールに被処理水を供給する供給手段と、
各膜モジュールの処理水が合流する合流配管と
を有する膜濾過システムにおいて、
請求項1~5のいずれかの水質測定装置を備えており、
該水質測定装置は、少なくとも各膜モジュールの処理水を測定対象とするように設置されている膜濾過システム。
【請求項7】
前記水質測定装置は、さらに前記共通の給水配管を流れる被処理水と、前記合流配管を流れる合流処理水を測定対象とするように設置されている請求項6の膜濾過システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、純水、超純水などの水質を測定する水質測定装置に関し、特に複数の採水点から採水した水を1台の水質測定器で水質測定する水質測定装置に関する。本発明は、特に、純水、超純水中に極少量含まれる微粒子数を測定する場合に好適な水質測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体洗浄用水として用いられている超純水は、前処理システム、一次純水製造装置、サブシステム(二次純水製造装置)から構成される超純水製造装置で原水(工業用水、市水、井水等)を処理することにより製造される。
【0003】
サブシステムは、サブタンク、ポンプ、熱交換器、低圧紫外線酸化装置(UV装置)、イオン交換装置及び限外濾過膜(UF膜)分離装置等を備えている。
【0004】
低圧紫外線酸化装置では、低圧紫外線ランプより出される185nmの紫外線によりTOCを有機酸、さらにはCOまで分解する。分解により生成した有機物及びCOは後段のイオン交換装置で除去される。限外濾過膜分離装置では、微粒子が除去され、イオン交換樹脂からの流出粒子も除去される。このようにして製造された超純水がユースポイントに送水される。
【0005】
純水、超純水は、半導体などの電子部品を製造する工程において、洗浄水やリンス水として使用されている。半導体集積回路の微細化に伴い、超純水に対しては、水中の不純物量(濃度)の更なる低減や、より厳密な水質管理が求められている。
【0006】
微粒子数は超純水の水質管理項目の1つで、粒径数十nmの微粒子を<1個/mLのオーダーで管理することが求められている。
【0007】
上記の通り、超純水製造装置では、超純水中の微粒子数を低減するために、粒径数十nmの微粒子を高い除去率で除去することができ、また膜自体からの微粒子発塵や溶出がないように留意して製造された特別なUF膜が用いられる。
【0008】
現在この分野で使用されているUF膜は、1モジュール(1本)当たり、10m/h程度を処理できるものが一般的である。すなわち、100m/hの超純水を必要とする設備では、上述のUF膜モジュール10モジュール前後で並列処理することとなる。
【0009】
複数のモジュールで並列処理する際のメリットとしては、1つのモジュールで問題が発生したときに当該モジュールを切り離すことで正常な水質を維持できることが挙げられる。例えば、100m/hの超純水を製造するに際し、10m/hの処理水を製造できるUF膜モジュールを11モジュール並設し、1つのUF膜モジュールを切り離しても100m/hを十分供給できる構成としておけば、1つのUF膜モジュールで問題(例えば中空糸膜が破断し処理水の微粒子数が増加する等)が発生した場合にも、この1つのUF膜モジュールを切り離すことで、超純水の水質を維持し、100m/hの処理水流量も維持できる。
【0010】
また、複数のモジュールで並列処理する際のメリットとして、モジュール交換後の初期の溶出成分に起因した超純水の水質悪化を最小化できることも挙げられる。即ち、並列設置された複数のモジュールのすべてを同時に交換するのではなく、一部のモジュールを交換する場合には、初期溶出に起因した超純水水質の悪化の程度を小さくすることができる。
【0011】
複数のUF膜モジュールで並列処理する濾過システムにおいて、あるUF膜モジュールにおいて中空糸膜の破断などの問題が発生し、濾過水中の微粒子数が増加した場合、どのモジュールで問題が発生しているか特定するために、それぞれのUF膜モジュールに微粒子モニタを設置し常時監視するのでは、微粒子モニタの数が多くなり、コストが嵩む。
【0012】
複数のラインを流れる水を分取用のバルブを介して共通の測定装置に導入して水質を測定することは従来より行われている。例えば、特許文献1では、超純水ラインからの超純水と、この超純水を逆浸透膜分離装置で濃縮した濃縮水とを、バルブで切り替えて共通の測定装置に導入して分析することが記載されている。分析項目としては、金属イオン濃度、抵抗率、微粒子数、TOC濃度、シリカ濃度、溶存酸素濃度が例示されている(0049段落)。
【0013】
複数箇所の対象水を切換弁で流路を切り換え、共通の測定装置に順次導入して水質を測定する場合、流路に滞留していた水が混入すると測定精度の低下が懸念される。
【0014】
特許文献2には、ブローラインを設け、常時ブローを行うことで対象水の滞留を避け、測定精度を保つ方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】特開2010-44022号公報
【文献】特開2014-185904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
特許文献2のように常時ブローする場合、対象の箇所が多くなればなるほどブローラインの数が多くなって測定装置周りが煩雑となるだけでなく、ブロー水量(系外に排出される水量)も多くなることから、超純水製造効率の低下に繋がる。全体のブロー水量を少なくするために個々のブロー水量を小さくすれば効率の低下は抑えられるが、測定装置周りの煩雑さの改善には繋がらない。
【0017】
本発明は、対象水の滞留に起因する測定精度の低下を回避し、またブロー水量の増大による超純水製造効率の低下が防止されるとともに、測定装置周りが煩雑となることも回避することができる水質測定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の水質測定装置は、複数の採水点から採水配管を介して採水した水質測定対象水を共通の水質測定器に導入して水質を測定する水質測定装置において、各採水配管の下流端が連なるループ状流路と、該ループ状流路と前記水質測定器とを接続する測定配管と、
各採水配管に設けられた採水弁とを有することを特徴とする。
【0019】
本発明の一態様では、前記水質測定器は微粒子数測定器である。
【0020】
本発明の一態様では、前記採水配管がn個(nは2以上の整数)設けられ、第1ないし第nの採水配管の下流端がこの順に前記ループ状流路に連なっており、第1の採水配管のループ状流路への接続点から前記供給配管の接続点までの距離と、第nの採水配管のループ状流路への接続点から前記供給配管の接続点までの距離とが略同一である。
【0021】
本発明の一態様では、前記水質測定器からの流出水が流れる排出配管が設けられており、該排出配管に流量調整弁が設けられている。
【0022】
本発明の一態様では、前記採水弁を所定の順番で所定時間開とするよう制御する制御手段を有する。
【0023】
本発明の膜濾過システムは、並列設置された膜モジュールと、共通の給水配管及びそれから分岐した分岐配管を介して各膜モジュールに被処理水を供給する供給手段と、各膜モジュールの処理水が合流する合流配管とを有する膜濾過システムにおいて、本発明の水質測定装置を備えており、該水質測定装置は、少なくとも各膜モジュールの処理水を測定対象とするように設置されている。
【0024】
本発明の膜濾過システムの一態様では、前記水質測定装置は、さらに前記共通の給水配管を流れる被処理水と、前記合流配管を流れる合流処理水を測定対象とするように設置されている。
【発明の効果】
【0025】
本発明の水質測定装置によれば、採水点から採水弁までの流路には、水質測定時(採水弁が開き水質測定器に通水しているとき)以外は採取した水が滞留することとなるが、採水弁から下流の水質測定器に至る共用の流路においては、ループ状流路に双方向に常に水が流れるため、水が滞留することがなく、前回の測定対象水の残留や、測定対象水の混和の影響を最小限とすることができ、精度の高い水質測定値を得ることができる。
【0026】
本発明の水質測定装置によれば、系外に排出される水量は水質測定中の1箇所分であり、少ない。また、測定装置周りの配管類も少ない。採水点が多数(例えば20以上)となる場合、この排出水量と測定装置周り配管の削減効果は非常に大きい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施の形態に係る水質測定装置を備えた膜濾過システムの構成図であり、図1(a)は濾過部の構成を示し、図1(b)は水質測定部の構成を示している。
図2】サブシステムの構成図である。
図3】実施の形態に係る水質測定装置の構成図である。
図4】実施の形態に係る水質測定装置の構成図である。
図5】実験結果を示すグラフである。
図6】実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図1を参照して実施の形態について説明する。図1は実施の形態に係る水質測定装置を備えた膜濾過システムの構成図であり、図1(a)は濾過部の構成を示し、図1(b)は水質測定部の構成を示している。
【0029】
この実施の形態では、濾過部に3台のUF膜(限外濾過膜)モジュール4a,4b,4cが設置されているが、2台又は4台以上であってもよい。
【0030】
サブシステム(2次純水装置)のイオン交換器流出水などよりなる被処理水は、ポンプ2を有する配管1から分岐配管3a,3b,3cを介して各UFモジュール4a~4cに送水可能とされている。UF膜モジュール4a~4cのUF膜を透過した濾過水は、濾過水配管5a,5b,5cから合流配管6に流れ、濾過水として取り出される。
【0031】
ポンプ2の下流側の配管1、各濾過水配管5a,5b,5c及び合流配管6にそれぞれ採水点が設定されており、これらの5か所の採水点からそれぞれ採水用(試料水分取用)の採水配管10~14が分岐している。
【0032】
図1(b)の通り、各採水配管10~14の末端はループ状配管20に接続されている。各採水配管10~14の途中に採水弁として開閉弁よりなるバルブ10V,11V,12V,13V,14Vが設けられている。
【0033】
ループ状配管20は、この実施の形態では略円環形であり、円の中心を挟んで一半側に採水配管10~14の末端が接続されている。採水配管10~14のループ状配管20への接続点は、円の周回方向に等間隔であることが好ましい。周回方向一端側の採水配管10のループ状配管20への接続点から他端側採水配管14の接続点までの距離は、ループ状配管20の周回方向の全長の10~80%特に20~50%程度であることが好ましい。
【0034】
周回方向一端側の採水配管10末端の接続点と周回方向他端側の採水配管14末端の接続点との周回方向の中間(この実施の形態では採水配管12末端の接続点)と円の中心を挟んで反対側に測定配管21が接続されている。ループ状配管20を流れる水は、この測定配管21を通って水質測定器22に導入され、水質測定される。測定排水は、流量調整弁24を有する排出配管23を介して系外に排出される。
【0035】
水質測定器22として、この実施の形態では微粒子計が用いられているが、TOC計やナトリウム計等の各種オンライン水質計器を用いることもできる。
【0036】
各バルブ10V~14Vの開閉は、制御器によって自動的に行われる。
【0037】
採水配管10とループ状配管20との接続点から測定配管21の接続点までの距離(周回方向の短い方の距離)を100%とした場合、採水配管14とループ状配管20との接続点から測定配管21の接続点までの距離(周回方向の短い方の距離)は10~45%特に25~40%であることが好ましいが、これに限定されない。
【0038】
このように構成された膜濾過システムにおいて、被処理水は、配管1から配管3a~3cに分流し、各UF膜モジュール4a~4cで膜濾過され、濾過水配管5a~5cを通って合流配管6にて合流し、濾過水として取り出され、次工程やユースポイントに送水される。
【0039】
各配管1,5a,5b,5c,6を流れる水を順番に又は特定順序で採水し、水質測定を行う。
【0040】
この実施の形態の一例では、まず、バルブ10Vを所定時間開とし、ポンプ2の下流側の配管1からの採水を配管10、ループ状20、配管21を経て水質測定器22に流入させ、水質測定を行う。その後、バルブ10Vを閉とし、バルブ11Vを所定時間開とする。これにより、濾過水配管5aからUF膜モジュール4aの濾過水の一部が分取され、配管11、ループ状配管20、配管21を介して水質測定器22に流入し、UF膜モジュール4aの濾過水の水質が測定される。
【0041】
その後、バルブ11Vを閉とし、バルブ12Vを所定時間開とし、UF膜モジュール4bの濾過水の水質測定を行う。以下、同様にしてUF膜モジュール4cの濾過水の水質測定及び合流濾過水の水質測定を行う。以上を1サイクルとし、これを繰り返すことにより、被処理水、各UF膜モジュール濾過水及び合流濾過水の水質測定を順番に行う。なお、測定の順番はこれに限定されるものではなく、適宜入れ替えてもよく、後述のように特定の採水点の測定頻度を多くするようにしてもよい。
【0042】
この水質測定装置を用いた水質測定方法によると、採水配管10~14のいずれかからループ状配管20に流入した水は、周回方向の一方向(図1(b)の時計回り方向)と他方向(図1(b)の反時計回り方向)との双方向に流れて測定配管21に到達し、水質測定器22に導入される。
【0043】
1つの採水配管(例えば採水配管12)からループ状配管20に流入した水がループ状配管20を双方向に流れるので、ループ状配管20内に残っていた前番の測定時の水(この場合、採水配管11からの水)は速やかに全量が配管23へ押し出され、前番の採水が混和していない今回採水の水質測定を行うことができるので、測定精度が高くなり、しかも測定に要する時間を短縮することができる。
【0044】
1つの採水配管(例えば採水配管12)からの採水の水質測定が終了し、次番の採水(この場合、採水配管13からの採水)の水質測定に切り替えられると、採水配管12内には、採水が滞留するが、ループ状配管20には水が滞留しないので、次番採水への混和は切り換え後、短時間で解消する。
【0045】
この水質測定装置では、水質測定排水量は、水質測定している1つの採水配管からの採水量のみであり、少量である。
【0046】
本発明の水質測定装置では、ループ状流路20は、距離の影響で片流れしたりすることのない様に、また1つ前の測定時の測定対象水を速やかに押し出すために、通液したい流量とその流量条件で発生する流路差圧とを考慮し設計することが好ましい。より具体的には、一般的な平滑表面の流路配管を用いる場合、線速度として0.3~2.0m/秒程度となる流路配管の構成とすることが好ましい。
【0047】
本発明の水質測定装置を用いた水質測定方法においては、バルブ10V~14Vの切り換え後、所定時間の間は水質測定器22のデータを棄却することが好ましい。これは、バルブが切り替わる際には、バルブが動作することに起因した発塵や溶出が起こることがあるためである。これらの影響による水質の変化は、本来監視したい水質の変化ではないため、バルブの切り換え後の所定時間のデータを棄却することにより、水質測定結果の精度を向上させることができる。
【0048】
また、監視対象の水質が微粒子数であり、水質測定器がレーザー光散乱方式の微粒子計である場合には、上述の所定時間、レーザーを消灯し水質測定を休止することが好ましい。水質測定を休止することで、高価なレーザー光源の見かけ寿命(測定休止期間を含む使用期間)を延ばすことができ、メンテナンスコストを低減できる。
【0049】
本発明の水質測定装置を用いた水質測定方法においては、得られる水質測定結果を平均化して取り扱うことが好ましい。即ち、上述の通り、バルブの開閉動作に起因した水質変動の影響を避けるために、バルブ切替後の所定時間のデータを棄却しても、影響する時間は必ずしも明確ではないため、所定時間を経過後も影響が残っている可能性はある。そこで、所定時間後から次の切り換え時までに得られた複数のデータを平均化して取り扱うことで、この影響を平準化又は最小化することができ、測定結果の信頼度が向上する。
【0050】
本発明の水質測定装置にあっては、水質測定結果の良否を判断する機能と自動弁などを利用して流路を切り換える機能とを併用して、水質測定結果に基づき(水質測定結果が不良と判断された場合)該当する水処理機器を自動的に切り離す機構を付帯してもよい。
【0051】
このような機構の具体的な構成としては、複数のUF膜モジュールの濾過水中の微粒子数を、オンライン微粒子モニタにて測定し、あらかじめ規定した微粒子数を超過した場合には、該当するUF膜モジュールの給水、処理水、濃縮水配管に設置された全て、またはいずれかの自動弁を閉止し、超純水の水質悪化を回避する構成が挙げられる。
【0052】
本発明の水質測定装置を用いた水質測定方法において、流量や系内の圧力を調整したい場合には、水質測定器22の下流側に圧力計や流量計(図示なし)、流量調整弁24を配置し、圧力や流量を適宜調整することが好ましい。水質測定器の下流側にこれら機器を設置することで、所定の流量や圧力への調整が可能になるとともに、流量調整弁24の操作に起因する発塵の影響や、圧力計や流量計内部の滞留部の影響を回避することができる。
【0053】
また、水質測定器の下流に設置した流量調整弁24の開度を絞り、水質測定器に背圧がかかる条件としてもよい。これにより、溶存ガス成分が減圧されたときに気泡化して微粒子として誤検知されることを回避でき、測定精度の向上に繋がる。
【0054】
本実施の形態では、複数のUF膜モジュールの処理水だけでなく、合流水や、給水の水質を併せて測定している。そのため、例えば、従来は1台のオンライン微粒子モニタで合流水のみを監視していた設備において、本発明の構成を採用することにより、1台のオンライン微粒子モニタで、複数の水処理機器の処理水を監視するとともに、従来通りの合流水の監視もできる。また、給水の監視も行うことにより、微粒子数が増加する様な有事の際に、給水の微粒子数の変化も即時確認できるので、微粒子数増加原因の絞り込みに要する時間を短縮できる。
【0055】
本発明の水質測定装置では、UF膜モジュール等の水処理機器の個数が多数の場合、合流水の測定間隔が過度に長くなる懸念がある。この様な場合には、合流水の測定回数を増やす構成とすることで改善できる。例えば、10台のUF膜モジュールA~Jが並列設置されており、各モジュールの濾過水W1~W10と合流水WMの合計11種の水質を測定する場合には、各濾過水W1~W10の測定の間にそれぞれ合流水WMの測定を介在させるようにしてもよい。即ち、測定対象とする水の順番をW1→WM→W2→WM→W3→WM→…→W9→WM→W10→WMの順番を1サイクルとし、これらを繰り返す。
【0056】
W1~W10の測定を複数のグループに分け、各グループの間にWMの測定を介在させるようにしてもよい。例えば、2グループの場合であれば、W1→W2→W3→W4→W5→WA→W6→W7→W8→W9→W10→WMの順番を1サイクルとし、これを繰り返す。
【0057】
このようにして、一部の測定対象水の測定頻度を他の対象水よりも高くすることができる。
【実施例
【0058】
[実施例1]
並列設置された3台のUF膜モジュールを備えた超純水製造用サブシステムに本発明装置を組み込み、UF膜モジュール給水、各UF膜モジュール濾過水及び合流濾過水の微粒子数を測定した。
【0059】
このサブシステムの全体構成は、図2の通り、サブタンク→サブポンプ→紫外線酸化器(UV)→[アニオン交換樹脂が充填された非再生式のイオン交換装置]→脱気膜→[カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とが混合充填された非再生式のイオン交換装置]→UF膜モジュール(並列に3台)→ユースポイントの構成であり、UF膜処理水量は約20m/hである。
【0060】
採水点は、各UF膜モジュール出口S1,S2,S3、ユースポイント送り(UF膜処理水の合流水)S4及びポンプ出口S5の5箇所とした。
【0061】
水質測定システムの採水バルブとして、エア駆動方式の5連マニホールド型の分岐弁(CKD社製の薬液用エアオペレイトバルブGAMDZ3R-6UR-Z05W)を使用した。
【0062】
図3に模式的に示すように、このエアオペレイトバルブ30は、5個の流入口と2個の流出口とが設けられている。2個の流出口はバルブボディーの両端側に位置している。2個の流出口を結ぶ水路31に対し、各流入口がそれぞれ開閉式のバルブV1~V5を介して臨んでいる。
【0063】
各流入口を採水点S1~S5とチューブによって接続した。水路31の一方の流出口にチューブ32の先端を接続し、他方の流出口にチューブ33の先端を接続した。チューブ32の後端をT字コネクタ34の第1流入口34aに接続し、チューブ33の後端をT字コネクタ34の第2流入口34bに接続した。T字コネクタの流出口34cには、チューブ35を介してオンライン微粒子計36を接続した。
【0064】
エアオペレイトバルブ30、チューブ32,33、及びT字コネクタ34を上述のように接続することにより、エアオペレイトバルブ30内部の水路31、チューブ32、T字コネクタ34及びチューブ33よりなるループ状の流路を構成した。チューブ32,33の長さは300mmであり、ループ状流路の全長は約800mmとなった。
【0065】
オンライン微粒子計36としては、栗田工業製、K-LAMIC-KS2を用いた。
【0066】
微粒子計36の出口側には流量調整弁(フロウエル社製、4601-F4P)37を設置して、約1L/minで流れるように調整した。
【0067】
上記の各チューブとしてはPFA製、内径4mmのチューブを使用した。コネクタとしてはフロウエル社製60シリーズ(フレア継手)を使用した。
【0068】
エアオペレイトバルブ、PFAチューブ、コネクタは、事前に薬液洗浄(水酸化コリン40mg/L溶液を2時間通液)とリンス(超純水を2時間通液)を行った。
【0069】
微粒子数の測定順番は、1本目のUF膜処理水(S1)→2本目のUF膜処理水(S2)→3本目のUF膜処理水(S3)→ユースポイント送り(S4)→サブポンプ出口(S5)の順番とし、繰り返し測定した。エアオペレイトバルブ30のバルブV1~V5の切り換えは2時間間隔とし、オンライン微粒子計36での微粒子数の測定は20分間隔で連続繰り返し測定とした。
【0070】
切換間隔2時間(120分)の間に20分毎の微粒子数測定結果6つを取得し、切換時の発塵影響がある1つの結果(最大値の結果)を棄却して、残りの5つの結果の平均値を求め、対象水の微粒子数として取り扱うこととした。
【0071】
測定結果を図5に示す。20分毎の微粒子数測定結果(>0.05μm微粒子数)を実線で示し、2時間分の測定結果である20分×6つの結果から最大値を棄却して平均値を求めた結果を破線で示す。
【0072】
図5の通り、サブポンプ出口の採水点S5からの採水水質を測定していた8~10時間、18~20時間、28~30時間、38~40時間、48~50時間において、微粒子数>100個/mLが繰り返し確認された。
【0073】
また、各UF膜処理水S1~S3とユースポイント送り水S4の水質を測定していた時間には、微粒子数<10個/mLが繰り返し確認された。
【0074】
エアオペレイトバルブ30の切り換えタイミングと、微粒子数測定の間隔とが微妙にずれてしまった10~28時間の区間では、20分測定2回分が微粒子数高めの結果となってしまい、最大値1点棄却後の平均値がバラついてしまったが、タイミングを修正した後の30時間以降においては、<1個/mLの安定した結果が繰り返し確認された。
【0075】
以上の結果から、本発明の水質測定装置によれば、微粒子数が100倍以上異なる採水点が含まれる様な場合においても、他の採水点の測定結果に影響することはなく、0.05μm未満の微粒子数<1個/mLのレベルで監視できることが認められた。
【0076】
[実施例2]
20台のUF膜モジュールを並列に設置したこと、図4の通り4台のエアオペレイトバルブ(5連マニホールド型の切換弁)30を直列に接続したこと、及び20個の各UF膜モジュールの流出部に採水点S1~S20を設け、各UF膜モジュールの濾過水を測定対象水とするように4台のエアオペレイトバルブ30に接続したこと以外は、実施例1と同様の方法で微粒子数の測定を行った。
【0077】
S1~S20の濾過水を順次に微粒子数測定して1サイクルとし、6サイクルの微粒子数測定を行った。結果を図6示す。
【0078】
棒グラフは、1~6サイクルの測定結果の平均値を示し、エラーバーの上端は1~6サイクルの測定結果の最大値、下端は最小値を示す。
【0079】
なお、各サイクルの測定結果は、採水点の切り換え間隔である2時間の間に20分間の微粒子数測定を6回行い、最大値を棄却した後の平均値とした。
【0080】
以上の結果から、採水点が20点となって、各点の水質測定間隔が38時間となる様な条件においても、約0.2個/mL程度のバラツキの範囲で、再現性のある微粒子数測定ができることが確認された。
【符号の説明】
【0081】
4a,4b,4c UF膜モジュール
10~14 採水配管
20 ループ状流路
22 水質測定器
30 エアオペレイトバルブ
34 T字コネクタ
36 オンライン微粒子計
【要約】
【課題】対象水の滞留に起因する測定精度の低下を回避し、ブロー水量の増大による超純水製造効率の低下が防止され測定装置周りが煩雑となることも回避することができる水質測定装置を提供することを課題とする。
【解決手段】バルブ10Vを所定時間開とし、ポンプ2の下流側の配管1からの採水を配管10、ループ状配管20、測定配管21を経て水質測定器22に流入させ、被処理水の水質測定を行う。その後、バルブ10Vを閉とし、バルブ11Vを所定時間開とし、UF膜モジュール4bの濾過水の水質測定を行う。以下、同様にバルブ12V,13V,14Vを順次に所定時間開とし、UF膜モジュール4cの濾過水、合流濾過水及び被処理水の水質測定を行う。以上を1サイクルとし、これを繰り返す。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6