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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】冷却構造体
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/473 20060101AFI20221025BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
H01L23/46 Z
H05K7/20 G
H05K7/20 M
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021509346
(86)(22)【出願日】2020-03-19
(86)【国際出願番号】 JP2020012486
(87)【国際公開番号】W WO2020196334
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-06-08
(31)【優先権主張番号】P 2019055695
(32)【優先日】2019-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】庄田 広明
(72)【発明者】
【氏名】山下 孝宏
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 和武
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-015240(JP,A)
【文献】特開2017-143171(JP,A)
【文献】特開2006-336902(JP,A)
【文献】国際公開第2016/080333(WO,A1)
【文献】特開2003-003248(JP,A)
【文献】特開2017-161204(JP,A)
【文献】特開平08-204068(JP,A)
【文献】国際公開第2011/145618(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/473
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を流通させる流路を形成する樹脂製の流路形成部材と、
被冷却体と、
金属層と、を有し、
前記流路は、前記冷媒が流通する方向における上流側の内壁よりも流路外方向に突出する突出部と、前記冷媒が流通する方向を前記突出部側に整流する整流部と、を有し、
前記被冷却体は、前記突出部の内壁の少なくとも一部と対向するように配置され、前記突出部を流通する前記冷媒により前記被冷却体が冷却され、
前記金属層は、前記流路形成部材における前記被冷却体の配置された側とは反対側の外壁に設けられている冷却構造体。
【請求項2】
前記整流部の前記突出部側の端部は、前記上流側の内壁よりも流路外方向に突出する請求項1に記載の冷却構造体。
【請求項3】
前記流路外方向における整流部の高さhと、前記流路外方向における前記突出部よりも上流側の前記流路の幅wとの比(h/w)は、0.5以上である請求項1又は請求項2に記載の冷却構造体。
【請求項4】
前記突出部は、前記冷媒が流通する方向における前記突出部よりも下流側の前記流路の内壁よりも前記流路外方向に突出している請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の冷却構造体。
【請求項5】
前記金属層は、前記流路形成部材における前記被冷却体の配置された側の外壁の一部にさらに設けられ、
前記被冷却体と、前記流路形成部材との間に前記金属層の一部がさらに設けられ、前記金属層は、前記被冷却体の少なくとも一部と接している請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の冷却構造体。
【請求項6】
前記金属層が、金属溶射層である請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の冷却構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車、電気自動車等のモータを搭載する車両には、モータを駆動する駆動手段が搭載されている。駆動手段は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のパワー半導体を複数備えるパワーモジュール、キャパシタ等の電子部品、これら電子部品を電気的に接合するバスバーなどから構成される。
モータを駆動する際には、パワー半導体、キャパシタ等、これら電子部品を接合するバスバーに大電流が流れることがある。この場合、スイッチング損失、抵抗損失等によって駆動手段が発熱するため、駆動手段を効率的に冷却する必要がある。
【0003】
駆動手段を冷却するための構造として、駆動手段の直下に冷却水が流通するヒートシンクを設ける構造が挙げられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-182831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
パワー半導体、キャパシタ等の電子部品の直下に冷媒が流通するヒートシンクを設けて電子部品を冷却する場合、電子部品の側面も冷却することが考えられる。例えば、冷媒が流通する経路を鉛直上側に突出させ、側面が電子部品と隣接する突出部を設け、さらに突出部の側面にもヒートシンクを設け、かつ冷媒が供給される構成とすることが考えられる。
【0006】
しかしながら、突出部に供給された冷媒が滞留しやすいという問題がある。
【0007】
本発明の一形態は上記従来の事情に鑑みてなされたものであり、突出部における滞留の発生が抑制された冷却構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 冷媒を流通させる流路を形成する樹脂製の流路形成部材と、前記流路は、前記冷媒が流通する方向における上流側の内壁よりも流路外方向に突出する突出部と、前記冷媒が流通する方向を前記突出部側に整流する整流部と、を有する冷却構造体。
<2> 前記整流部の前記突出部側の端部は、前記上流側の内壁よりも流路外方向に突出する<1>に記載の冷却構造体。
<3> 前記流路外方向における整流部の高さhと、前記流路外方向における前記突出部よりも上流側の前記流路の幅wとの比(h/w)は、0.5以上である<1>又は<2>に記載の冷却構造体。
<4> 前記突出部は、前記冷媒が流通する方向における前記突出部よりも下流側の前記流路の内壁よりも前記流路外方向に突出している<1>~<3>のいずれか1つに記載の冷却構造体。
<5> 前記突出部の内壁の少なくとも一部と対向するように被冷却体が配置され、前記突出部を流通する前記冷媒により前記被冷却体が冷却される<1>~<4>のいずれか1つに記載の冷却構造体。
<6> 前記流路形成部材の外壁の少なくとも一部に、金属層が設けられた<1>~<5>のいずれか1つに記載の冷却構造体。
<7> 前記流路形成部材の外壁の少なくとも一部に、金属層が設けられ、前記被冷却体と、前記流路形成部材との間に前記金属層の少なくとも一部が設けられ、前記金属層は、前記被冷却体の少なくとも一部と接している<5>に記載の冷却構造体。
<8> 前記金属層が、金属溶射層である<6>又は<7>に記載の冷却構造体。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一形態によれば、突出部における滞留が抑制された冷却構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】冷却構造体の一実施形態についての概略断面図である。
図2】冷却構造体の一実施形態を示す概略図である。
図3】被冷却体が配置された冷却構造体の一実施形態についての概略断面図である。
図4】冷却構造体の変形例についての概略断面図である。
図5】金属層の磁界シールド性能の評価結果を示す図である。
図6】冷却性能の評価方法を説明するために図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<冷却構造体>
本開示の冷却構造体は、冷媒を流通させる流路を形成する樹脂製の流路形成部材と、前記流路は、前記冷媒が流通する方向における上流側の内壁よりも流路外方向に突出する突出部と、前記冷媒が流通する方向を前記突出部側に整流する整流部と、を有する。本開示の冷却構造体は、流路外方向に突出する突出部と、冷媒が流通する方向を突出部側に整流する整流部と、を有するため、突出部に冷媒の流れが形成され、突出部に供給された冷媒は滞留しにくくなり、長期間にわたって冷媒が突出部に溜まる滞留の発生が抑制されると考えられる。また、突出部における滞留の発生が抑制されることにより、突出部における冷却効率が高まると考えられる。
【0012】
以下、本開示の冷却構造体を、図面を参照して説明する。なお、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。また、実質的に同一の機能を有する部材には全図面を通して同じ符号を付与し、重複する説明は省略する場合がある。
【0013】
図1及び図2に示す冷却構造体100は、冷媒を流通させる流路12を形成する樹脂製の流路形成部材14を備える。図1は、図2に示すAA線を含む鉛直面で切断したときの断面図である。流路の形状は、図1及び図2に示すように、冷媒が流通する方向と直交する方向における断面が略矩形であってもよく、断面が円形、楕円形、矩形以外の多角形等であってもよい。
【0014】
流路12は、冷媒が流通する方向(図1中の矢印X方向)において、鉛直上方向に突出する突出部40と、冷媒が流通する方向を突出部40側に整流する整流部41と、を有する。
【0015】
突出部40は、冷媒が流通する方向において、上流側の上部内壁42と下流側の上部内壁44との間に形成されている。整流部41の突出部40側の端部は、上流側の上部内壁42及び下流側の上部内壁44よりも鉛直上方向に突出している。
【0016】
突出部40は、側部内壁45、47及び上部内壁46を備え、冷媒が流通する方向と平行な方向の断面がいずれも矩形状である。冷媒が流通する方向において、側部内壁45は側部内壁47よりも上流側の壁面であり、側部内壁47は側部内壁45よりも下流側の壁面である。突出部は、冷媒が流通する方向と平行な方向の断面は、それぞれ独立に円形、楕円形、多角形等であってもよい。
【0017】
突出部は、冷媒が流通する方向と直交する断面は、図2に示すように矩形状であってもよく、円形、楕円形、矩形以外の多角形等であってもよい。
【0018】
なお、突出部は、冷媒が流通する方向において上流側の内壁よりも流路外方向に突出していればよく、上流側の上部内壁よりも鉛直上方向に突出する構成に限定されない。例えば、上流側の下部内壁よりも鉛直下方向に突出していてもよく、上流側の側部内壁よりも側部内壁の流路外方向に突出していてもよい。
本開示において、「流路外方向」とは、流路の内壁から外壁を介して流路形成部材の外部に向かう方向を意味する。
【0019】
整流部41は、下部内壁43から流路12内に向かって延設されている。整流部41は、冷媒が流通する方向を突出部40側、例えば、整流部41の延設方向(図1中の矢印Y方向)に整流する。整流部41は、突出部40における上部内壁46と対向する下部内壁43の部分の少なくとも一部から突出部40側に延設された板状構造を有する。
【0020】
整流部41を構成する材料は、後述する流路形成部材14を構成する樹脂であってもよく、後述する熱拡散部を構成する金属であってもよい。
【0021】
整流部41の突出部40側の端部は、上流側の上部内壁42よりも流路外方向である鉛直上方向に突出している。これにより、突出部40側に冷媒の流れが好適に形成され、突出部40に供給された冷媒はより滞留しにくくなる。
【0022】
整流部は、冷媒が流通する方向を突出部側に整流する構成であれば特に限定されず、例えば、整流部は、突出部の流路外方向の内壁と対面する流路形成部材の内壁の部分の少なくとも一部から突出部側に延設されている構成であってもよい。
【0023】
突出部40における上部内壁46と整流部41における上部内壁46と対面する壁面との距離Lと、流路外方向である鉛直上方向における突出部40よりも上流側の流路12の幅wとの比(L/w)は、1以上であることが好ましく、L/w=1、すなわち、L=wであることがより好ましい。
【0024】
また、流路外方向である鉛直上方向における突出部40よりも下流側の流路12の幅zと、幅wとの比(z/w)は、1以上であることが好ましく、z/w=1、すなわち、z=wであることがより好ましい。
【0025】
突出部40における側部内壁45と整流部41における側部内壁45と対面する壁面との距離mと、流路外方向である鉛直上方向における突出部40よりも上流側の流路12の幅wとの比(m/w)は、1以上であることが好ましく、m/w=1、すなわち、m=wであることがより好ましい。
【0026】
突出部40における側部内壁47と整流部41における側部内壁47と対面する壁面との距離nと、流路外方向である鉛直上方向における突出部40よりも上流側の流路12の幅wとの比(n/w)は、1以上であることが好ましく、n/w=1、すなわち、n=wであることがより好ましい。
【0027】
流路外方向である鉛直上方向における整流部41の高さhと、幅wとの比(h/w)は、0.5以上であることが好ましく、1以上であることがより好ましい。
【0028】
図3は、被冷却体が配置された冷却構造体の一実施形態についての概略断面図である。
図3に示す冷却構造体200は、上流側の上部内壁42及び突出部の側部内壁45と対向するように被冷却体50が配置され、突出部40を流通する冷媒により被冷却体50が冷却される構成を有する。
【0029】
被冷却体50としては、パワー半導体、キャパシタ等の電子部品が挙げられる。
被冷却体50は、上流側の上部内壁42から流路12内に向けて延設されたヒートシンク(図示せず)、及び側部内壁45から突出部40に向けて延設されたヒートシンク(図示せず)を備えていてもよい。
【0030】
冷却構造体200がヒートシンクを備える場合、被冷却体50とヒートシンクとの間に被冷却体50の発する熱をヒートシンクに伝える絶縁基板、絶縁シート等を備えていてもよい。また、ヒートシンクの一部が流路形成部材14に埋設されてヒートシンクと被冷却体50とが接触せずに流路形成部材14を介して被冷却体50の発する熱がヒートシンクに伝わる構成であってもよい。
【0031】
ヒートシンクは、例えば、被冷却体50の底部と対面する板状の熱拡散部と、熱拡散部における上流側の上部内壁42側の面から流路12内に延設された冷却フィンとを備えていてもよい。また、ヒートシンクとしては、被冷却体50の側面と対面する板状の熱拡散部と、熱拡散部における側部内壁45側の面から突出部40に延設された冷却フィンとを備えていてもよい。
【0032】
熱拡散部は金属製であり、冷却フィンの少なくとも表面は樹脂製であることが好ましい。これにより、熱伝導性の高い熱拡散部にて面方向に拡散された熱が冷却フィンにて放熱されやすい傾向にある。
【0033】
冷却フィンは、上流側の上部内壁42から下部内壁43にまで到達せずに、冷却フィンの先端部が流路12内に位置していてもよく、冷却フィンに触れる冷媒の量を増加させて冷却構造体200の冷却効率を高める観点から、冷却フィンの先端部が下部内壁43に接触していてもよい。また、冷却フィンの先端部が下部内壁43に接触している場合、例えば、上流側の上部内壁42から下部内壁43に向けて(又は、下部内壁43から上流側の上部内壁42に向けて)荷重がかかった際に、冷却構造体200の強度を高めることが可能となる。
【0034】
また、冷却フィンは、その先端部が被冷却体50側の側部内壁45から他方の側部内壁47にまで到達していてもよく、到達していなくてもよい。
【0035】
冷却フィンは、少なくとも表面が樹脂製であることが好ましい。また、冷却フィン全体が樹脂製であってもよいし、冷却フィンが金属製の棒状の芯材を含んでいてもよい。冷却フィンが棒状の芯材を含む場合、腐食等を抑制する観点から、金属製の芯材は樹脂により被覆されていることが好ましい。芯材の一端は、冷却効率を向上する観点から、熱拡散部と接続されていてもよい。
【0036】
(冷却構造体の変形例)
本開示の冷却構造体の変形例は、流路形成部材の外壁の少なくとも一部に金属層が設けられており、好ましくは、被冷却体であるパワー半導体、キャパシタ等と、流路形成部材との間に金属層の少なくとも一部が設けられ、金属層は被冷却体の少なくとも一部と接している。被冷却体の少なくとも一部が金属層と接触することにより、被冷却体にて生じた熱が金属層を介して流路を流通する冷媒に移動するため、被冷却体を効率よく冷却することができる。
【0037】
以下、本開示の冷却構造体の変形例について、図4を用いて説明する。図4は、冷却構造体の変形例を示す概略断面図である。図4は、冷却構造体300における流路12の冷媒が流通する方向に平行な断面を示す。
【0038】
図4に示す冷却構造体300では、被冷却体50が、流路形成部材14の外壁に設けられた金属層48を介して流路形成部材14と接している。
被冷却体50から生じた熱は、金属層48を介して流路形成部材14の外壁に達し、さらに上流側の上部内壁42及び突出部の側部内壁45に到達した熱は、不図示の冷却フィンに移動する。このときに、流路12を流通する冷媒により冷却フィンから熱が冷媒に移動する。被冷却体50が金属層48を介して流路形成部材14と接するため、被冷却体50から生じた熱が、効率的に冷却フィンへ移動しやすくなり、冷却効率が向上する。
【0039】
また、金属層48は、被冷却体50から発生する低周波域(特に、ラジオ帯)の磁界をシールドすることができる。そのため、流路形成部材14の外壁に金属層48を設けることは磁界シールドの観点から有効である。金属層48は、流路形成部材14の外壁の少なくとも一部に設ければよい。なお、金属層48は導電性であるため、絶縁性を求められる箇所には金属層48を設けなくともよい。また、流路形成部材14の外壁に金属層48を形成し、さらに絶縁性を求められる箇所の金属層48を樹脂層で覆ってもよい。
金属層48は、例えば、流路形成部材14における被冷却体50の配置された側とは反対側の外壁に設けることが好ましい。また、図4に示すように、金属層48が流路形成部材14における被冷却体50の配置された側の外壁の一部に設けられている場合、流路形成部材14における被冷却体50の配置された側とは反対側の外壁には、金属層48の設けられていない領域54が存在してもよい。
【0040】
本開示の冷却構造体の製造方法は、特に限定されるものではなく、インジェクション成形法、ダイスライドインジェクション成形法、ブロー成形法、圧縮成形法、トランスファ成形法、押出成形法、注型成形法等の通常の樹脂成形体の成形方法を採用することができる。なお、冷却構造体100の製造には高い位置精度を要求される場合があることから、ダイスライドインジェクション成形法が好ましい。また、整流部を流路形成部材と同じ樹脂で構成する場合、整流部を流路形成部材と一体で成形することができ、冷却構造体の製造を簡略化することができる。
【0041】
流路形成部材14及び冷却フィンを構成する樹脂の種類は特に限定されるものではない。樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂(PP)、複合ポリプロピレン系樹脂(PPC)、ポリフェニレンサルファイド系樹脂(PPS)、ポリフタルアミド系樹脂(PPA)、ポリブチレンテレフタレート系樹脂(PBT)、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アイオノマー系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS)及びポリカーボネート系樹脂が挙げられる。流路形成部材14及び冷却フィンを構成する樹脂は同じであっても異なっていてもよい。
【0042】
流路形成部材14及び冷却フィンを構成する樹脂は、無機充填材を含有してもよい。無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコン、酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、炭化珪素、窒化珪素、窒化ホウ素、ベリリア及びジルコニアが挙げられる。さらに、難燃効果のある無機充填材としては、水酸化アルミニウム、硼酸亜鉛等が挙げられる。
流路形成部材14及び冷却フィンを構成する樹脂に含まれる無機充填材は、同じであっても異なっていてもよい。また、流路形成部材14を構成する樹脂及び冷却フィンを構成する樹脂の一方に無機充填材が含まれ、他方に無機充填材が含まれなくてもよい。
【0043】
熱拡散部を構成する金属は、アルミニウム、鉄、銅、金、銀、ステンレス等の金属、合金などが挙げられる。
【0044】
熱拡散部は、流路形成部材14及び冷却フィンを構成する樹脂と熱拡散部を構成する金属との熱膨張係数差による冷却構造体200への負荷を抑制する観点から、メッシュ状、パンチングメタル等であってもよい。
【0045】
流路を流通する冷媒の種類は、特に限定されるものではない。冷媒としては、水、有機溶媒等の液体、空気等の気体などが挙げられる。冷媒として用いられる水には、不凍液等の成分が含まれていてもよい。
【0046】
金属層を構成する成分は特に限定されるものではなく、亜鉛、アルミニウム、亜鉛・アルミニウム合金、炭素鋼、ステンレス鋼、ニッケル、ニッケル合金、スズ、銅、銅合金、銀、銀合金、金、金合金、モリブデン等が挙げられる。これらの中でも、磁界シールド効果を高める観点からは、銀及び銅が好ましい。一方、被冷却体の冷却効率の観点からは、銀及び金が好ましい。
金属層を形成する方法は特に限定されるものではなく、電解メッキ、無電解メッキ、蒸着、金属板の張り付け、金属溶射等が挙げられる。金属層は、形成性の観点から、金属溶射法により形成された金属溶射層であることが好ましく、加工性の観点から亜鉛が好ましい。
【0047】
金属層の平均厚みは特に限定されるものではなく、1μm~2mmが好ましい。
【0048】
被冷却体と接触する金属層の平均厚みは、冷却効率の観点から、200μm~2mmが好ましく、500μm~2mmがより好ましい。
【0049】
流路形成部材における被冷却体の配置された側とは反対側の外壁に設けられた金属層の平均厚みは、磁界シールドの観点から、1μm~2mmが好ましく、200μm~2mmが好ましく、500μm~2mmがより好ましい。
【0050】
本開示の冷却構造体は、冷媒の温度を測定する温度センサを備えていてもよく、流路内の突出部及び整流部が設けられた領域よりも下流に温度センサを備えていてもよい。また、温度センサの温度に応じて冷媒の量を調節してもよく、温度センサの温度に応じて冷媒の量を調節する制御部を備えていてもよい。
【0051】
本開示の冷却構造体は、ハイブリッド自動車、電気自動車等のモータを搭載する車両における、パワー半導体を複数備えるパワーモジュール、キャパシタ等の電子部品、これら電子部品を電気的に接合するバスバーの冷却に有効である。
【実施例
【0052】
以下、実験例に基づいて、金属層の磁界シールド性能及び冷却性能を検証した。
【0053】
-磁界シールド性能評価-
縦120mm、横120mm、厚み5mmのPPS樹脂板を準備し、試験片1とした。
試験片1の一方の面に、溶射法により平均厚み200μmの亜鉛層を形成した。これを試験片2とした。
また、縦120mm、横120mm、厚み500μmのアルミニウム板を試験片3とした。
試験片1、試験片2及び試験片3について、磁界シールド性能を以下に示すKEC法(500Hzから1GHz)における磁界シールド効果評価用装置で評価した。
得られた結果を図5に示す。図5から明らかなように、試験片2及び試験片3によれば、試験片1に比較して優れた磁界シールド効果の得られることがわかる。
【0054】
-冷却性能評価-
PPS樹脂を用いて、外径が横30mm×縦15mmで、内径が横25mm×縦10mmで、長さが110mmの断面矩形の水路モデル1を形成した。水路モデル1における110mm×30mmの外壁の上面に、溶射法により平均厚み200μmの亜鉛層48を形成した。これを水路モデル2とした。
水路モデル1の110mm×30mmの外壁及び水路モデル2の亜鉛層48を形成した面上に、各々、100℃に熱した95mm×25mm×15mmの大きさの鉄ブロック52を図6に示すようにして配置し、各水路モデル内に20℃の水を8L/分の流量で流通させた。
鉄ブロック52の配置直後から、図6に示すA~Dの計4箇所の温度変化を、株式会社KEYENCE製 高機能レコーダ GR-3500を用いて測定したところ、鉄ブロック52の配置から17分後の各測定箇所の温度は、下記表1に示すとおりであり、亜鉛層48は被冷却体の冷却に有効であることが明らかとなった。
【0055】
【表1】
【0056】
2019年3月22日に出願された日本国特許出願2019-055695の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【符号の説明】
【0057】
12 流路
14 流路形成部材
40 突出部
41 整流部
42 上流側の上部内壁
43 下部内壁
44 下流側の上部内壁
45、47 側部内壁
46 上部内壁
48 金属層
50 被冷却体
52 鉄ブロック
54 領域
100、200、300 冷却構造体
図1
図2
図3
図4
図5
図6