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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】冷却構造体
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/473 20060101AFI20221025BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20221025BHJP
   H05K 7/06 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
H01L23/46 Z
H05K7/20 N
H05K7/06 C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021509347
(86)(22)【出願日】2020-03-19
(86)【国際出願番号】 JP2020012487
(87)【国際公開番号】W WO2020196335
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-06-08
(31)【優先権主張番号】P 2019055696
(32)【優先日】2019-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】庄田 広明
(72)【発明者】
【氏名】山下 孝宏
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 和武
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-346480(JP,A)
【文献】特開2018-166400(JP,A)
【文献】特開2004-349685(JP,A)
【文献】特開2003-003248(JP,A)
【文献】国際公開第2016/080333(WO,A1)
【文献】特開2012-015240(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/473
H05K 7/20
H05K 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を流通させる流路を形成する樹脂製の流路形成部材(樹脂材料から成るホスト材料である樹脂ホスト材料の中に、導電性材料を充填して成る材料である導電性フィラー充填樹脂系材料で形成されている流路形成部材を除く)と、
前記流路形成部材に埋設された、又は、前記流路と接触せずに前記流路形成部材の外壁に接合された、板状の熱拡散部と、
前記熱拡散部から前記流路内に延設された1つ又は複数の冷却フィンと、
前記熱拡散部に伝熱するバスバーと、
を備え、
前記流路形成部材の外壁面と、前記バスバーとの間に空間があり、前記流路形成部材と前記バスバーとが接触していない冷却構造体。
【請求項2】
前記熱拡散部と接触しているナット本体と、前記ナット本体に挿入されるボルトと、を備え、
前記バスバーは、前記ナット本体と前記ボルトとで固定されている請求項1に記載の冷却構造体。
【請求項3】
前記熱拡散部は金属製であり、前記冷却フィンの少なくとも表面は樹脂製である請求項1又は請求項2に記載の冷却構造体。
【請求項4】
前記バスバーと、前記流路形成部材の外壁面における前記バスバーと対面する部分との最小距離hは、0.2mm以上である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の冷却構造体。
【請求項5】
前記バスバーと接続する被冷却体が配置された請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の冷却構造体。
【請求項6】
前記流路形成部材の外壁の少なくとも一部に、金属層が設けられた請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の冷却構造体。
【請求項7】
前記バスバーと接続する被冷却体が配置され、前記流路形成部材の外壁の少なくとも一部に、金属層が設けられ、
前記金属層は、前記被冷却体の少なくとも一部と接している請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の冷却構造体。
【請求項8】
前記金属層が、金属溶射層である請求項6又は請求項7に記載の冷却構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車、電気自動車等のモータを搭載する車両には、モータを駆動する駆動手段が搭載されている。駆動手段は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のパワー半導体を複数備えるパワーモジュール、キャパシタ等の電子部品などから構成される。
モータを駆動する際には、パワー半導体、キャパシタ等に大電流の流れることがある。この場合、スイッチング損失、抵抗損失等によって駆動手段が発熱するため、駆動手段を効率的に冷却する必要がある。
【0003】
駆動手段を冷却するための構造として、駆動手段の直下に冷却水が流通するヒートシンクを設ける構造が挙げられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-182831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように、パワー半導体、キャパシタ等の電子部品の直下に冷媒が流通するヒートシンクを設けて電子部品を冷却する構造のほか、ヒートシンクが設けられたこれら電子部品と電気的に接合し、かつ電子部品から熱を受け取るバスバーを設け、バスバーと、冷媒と接触する冷却フィン等を備える冷却構造体と、を熱的に接合することで電子部品を冷却する構造が考えられる。
上述した後者の構造では、バスバーと、冷媒を流通させる流路を形成する樹脂製の流路形成部材との絶縁性を確保することが望まれる。
【0006】
本発明の一形態は上記従来の事情に鑑みてなされたものであり、バスバーと流路形成部材との絶縁性に優れる冷却構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 冷媒を流通させる流路を形成する樹脂製の流路形成部材と、前記流路形成部材に埋設された、又は、前記流路形成部材に接合された、板状の熱拡散部と、前記熱拡散部から前記流路内に延設された1つ又は複数の冷却フィンと、前記熱拡散部に伝熱するバスバーと、を備え、前記流路形成部材の外壁面と、前記バスバーとの間に空間があり、前記流路形成部材と前記バスバーとが接触していない冷却構造体。
<2> 前記熱拡散部と接触しているナット本体と、前記ナット本体に挿入されるボルトと、を備え、前記バスバーは、前記ナット本体と前記ボルトとで固定されている<1>に記載の冷却構造体。
<3> 前記熱拡散部は金属製であり、前記冷却フィンの少なくとも表面は樹脂製である<1>又は<2>に記載の冷却構造体。
<4> 前記バスバーと、前記流路形成部材の外壁面における前記バスバーと対面する部分との最小距離hは、0.2mm以上である<1>~<3>のいずれか1つに記載の冷却構造体。
<5> 前記バスバーと接続する被冷却体が配置された<1>~<4>のいずれか1つに記載の冷却構造体。
<6> 前記流路形成部材の外壁の少なくとも一部に、金属層が設けられた<1>~<5>のいずれか1つに記載の冷却構造体。
<7> 前記バスバーと接続する被冷却体が配置され、前記流路形成部材の外壁の少なくとも一部に、金属層が設けられ、前記金属層は、前記被冷却体の少なくとも一部と接している<1>~<4>のいずれか1つに記載の冷却構造体。
<8> 前記金属層が、金属溶射層である<6>又は<7>に記載の冷却構造体。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一形態によれば、バスバーと流路形成部材との絶縁性に優れる冷却構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】冷却構造体の一実施形態についての要部断面を示す図である。
図2】冷却構造体10における冷却フィン24の設けられた領域の一例を示す図である。
図3】冷却構造体10における冷却フィン24の設けられた領域の他の一例を示す図である。
図4】冷却構造体の変形例1についての要部断面を示す図である。
図5】冷却構造体の変形例2についての要部断面を示す図である。
図6】冷却構造体の変形例3についての要部断面を示す図である。
図7】金属層の磁界シールド性能の評価結果を示す図である。
図8】冷却性能の評価方法を説明するために図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<冷却構造体>
本開示の冷却構造体は、冷媒を流通させる流路を形成する樹脂製の流路形成部材と、前記流路形成部材に埋設された、又は、前記流路形成部材に接合された、板状の熱拡散部と、前記熱拡散部から前記流路内に延設された1つ又は複数の冷却フィンと、前記熱拡散部に伝熱するバスバーと、を備え、前記流路形成部材の外壁面と、前記バスバーとの間に空間があり、前記流路形成部材と前記バスバーとが接触していない。本開示の冷却構造体は、バスバーと流路形成部材との絶縁性に優れる。
【0011】
以下、本開示の冷却構造体を、図面を参照して説明する。なお、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。また、実質的に同一の機能を有する部材には全図面を通して同じ符号を付与し、重複する説明は省略する場合がある。
【0012】
図1に示す冷却構造体10は、冷媒を流通させる流路12を形成する樹脂製の流路形成部材14を備える。流路の形状は、図1に示すように断面が略矩形であってもよく、断面が円形、楕円形、矩形以外の多角形等であってもよい。
【0013】
流路12は、対向する一対の内壁のうちの一方側の内壁に相当する上部内壁16及び他方側の内壁に相当する下部内壁18並びに上部内壁16及び下部内壁18を接続する側部内壁20及び側部内壁22に取り囲まれて構成されている。
【0014】
上部内壁16側では、板状である熱拡散部34から流路12内に円筒状の冷却フィン24が複数延設されている。熱拡散部34は、金属製であり、冷却フィン24は、流路12と同様に樹脂製であることが好ましい。これにより、金属製の熱拡散部34は熱伝導性が高いため、面方向に熱が拡散されやすく、面方向に拡散された熱は放熱性に優れる樹脂製の冷却フィン24により放熱されやすくなる。
図1では、冷却フィン24の一部が想像線で示されている。
【0015】
熱拡散部34に伝熱することで冷却されるバスバー26が、ボルト28とナット本体32とで固定されている。より具体的には、バスバー26の開口部がボルト28のネジ部に挿通され、かつボルト28の頭部及びナット本体32にバスバー26の一部が挟持されることにより、バスバー26が、ボルト28とナット本体32とで固定されている。ナット30は、ナット本体32とナット本体32のボルト28が挿入される側とは反対側に設けられた熱拡散部34とを有する。熱拡散部34は、矩形の板状物とされ、ナット本体32と一体化されている。
バスバー26は、パワー半導体、キャパシタ等の不図示の電子部品と接続されている。
【0016】
バスバー26が、ボルト28とナット本体32とで固定され、かつ流路形成部材14の外壁面と、バスバー26との間に空間があり、流路形成部材14とバスバー26とが接触していないため、前述の外壁面とバスバー26とが接触している場合と比較して流路形成部材14の厚みを小さくすることができ、冷却構造体10の軽量化が可能である。
【0017】
ナット30における熱拡散部34の全体及びナット本体32のボルト28が挿入される側と反対側は、流路形成部材14に埋設されている。なお、熱拡散部は、流路形成部材に埋設された構成に限定されず、流路形成部材に接合された構成、例えば、流路と接触せずに流路形成部材の外壁に接合された構成であってもよい。例えば、レーザー粗化による樹脂金属接合技術を用い、熱拡散部を流路形成部材に接合させてもよい。
【0018】
また、複数の冷却フィン24はいずれも熱拡散部34から流路12内に延設されている。これにより、熱拡散部34にて面方向に拡散された熱が冷却フィン24にて放熱されやすい構造となっている。
【0019】
図2は、図1の冷却構造体10における冷却フィン24の設けられた領域を、ボルト28の挿入方向から見た図である。冷却フィン24と熱拡散部34との位置関係をわかりやすくするため、図2では、バスバー26等の記載を割愛している。また、冷却フィン24と熱拡散部34との位置関係がわかりやすいように、熱拡散部34を点線で表している。なお、図1は、図2に示すAA線で切断したときの断面図である。
図2に示すように、冷却フィン24は7本とされており、熱拡散部34の配置された範囲内に冷却フィン24が設けられている。また、熱拡散部34の主面は流路12と対向している。
【0020】
ここで、バスバー26に電流が流れると、抵抗損失によってバスバー26自体が発熱する。また、バスバー26は不図示の電子部品と接続されており、通電によりこれら電子部品から生じた熱がバスバー26を通じて拡散される。そのため、バスバー26は高温状態になりやすい。
【0021】
バスバー26自体から生じた熱及びバスバー26を通じて拡散された熱は、ボルト28及びナット本体32を介して熱拡散部34のナット本体と一体化されている箇所に伝達される。熱拡散部34は矩形の板状物とされているため、熱拡散部34に伝達された熱は熱拡散部34の面方向に拡散され、広範囲に熱を拡散することができる。
【0022】
熱拡散部34は冷却フィン24の根元部に配置されており、熱拡散部34まで拡散された熱は、流路形成部材14を介して冷却フィン24の根元部に到達する。冷却フィン24の根元部に到達した熱は、冷却フィン24を通じて冷却フィン24の根元部から流路12内に向けて移動する。このときに、流路12を流通する冷媒により冷却フィン24から熱が冷媒に移動する。このようにして、バスバー26、バスバー26に接続する電子部品等の被冷却体が冷却される。
【0023】
冷却構造体10では、冷却フィン24が上部内壁16から下部内壁18にまで到達せずに、冷却フィン24の先端部が流路12内に位置している。冷却フィン24に触れる冷媒の量を増加させて冷却構造体10の冷却効率を高める観点から、冷却フィン24の先端部が下部内壁18に接触していてもよい。また、冷却フィン24の先端部が下部内壁18に接触している場合、例えば、上部内壁16から下部内壁18に向けて(又は、下部内壁18から上部内壁16に向けて)荷重がかかった際に、冷却構造体10の強度を高めることが可能となる。
【0024】
図1において、バスバー26と、流路形成部材14の内壁面との距離hは、絶縁性及び冷却効率の観点から、10mm~50mmであることが好ましい。
なお、図1に示すように複数のバスバー26(図中では2つ)が、ボルト28とナット本体32とで固定されている場合、距離hは、ナット本体32に最も近いバスバー26と、流路形成部材14の内壁面におけるバスバー26と対面する部分と、の距離を意味する。
【0025】
図1において、バスバー26と、流路形成部材14の外壁面におけるバスバー26と対面する部分との最小距離hは、絶縁性の観点から、0.2mm以上であることが好ましく、0.5mm以上であることがより好ましく、1.0mm以上であることがさらに好ましい。前述の最小距離hは、冷却構造体10の小型化及びバスバー26の冷却効率の観点から、50mm以下であることが好ましく、30mm以下であることがより好ましく、10mm以下であることがさらに好ましい。
なお、図1に示すように複数のバスバー26(図中では2つ)が、ボルト28とナット本体32とで固定されている場合、最小距離hは、ナット本体32に最も近いバスバー26と、流路形成部材14の外壁面におけるバスバー26と対面する部分と、の最小距離を意味する。
【0026】
放熱性の観点から、熱拡散部は流路形成部材の外壁に接合されていてもよい。また、放熱性の観点から、バスバーとボルト及びナット本体との接触面積は大きい方が好ましい。ボルト及びナット本体のバスバーと接触する部分の形状は特に限定されず、円形、楕円形、多角形等であってもよい。
【0027】
図1において、流路12の冷却フィン24の設けられた領域を冷媒が流通する方向上流側から観察したときに、流路12の面積に占める冷却フィン24の観察される部分の面積(面積比率A)は、冷却効率を向上する観点から、30%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、100%であることがさらに好ましい。
【0028】
図1において、熱拡散部34の流路12側の面から流路形成部材14の内壁までの最小距離hは、絶縁性の観点から、0.3mm以上であることが好ましく、成形性の観点から、0.5mm以上であることがより好ましく、1.5mm以上であることがさらに好ましい。また、前述の最小距離hは、冷却効率の観点から2.5mm以下であることが好ましい。
【0029】
図1において、熱拡散部34のバスバー26側の面から流路形成部材14の外壁までの最小距離hは、成形性の観点から、0.5mm以上であることが好ましく、1.5mm以上であることがより好ましく、冷却効率を向上する観点から、2.5mm以下であることが好ましい。なお、最小距離hが0mmであることは、熱拡散部34のバスバー26側の面の少なくとも一部が流路形成部材14で覆われていないことを意味する。
【0030】
図2において、熱拡散部34の主面の面積に対する、熱拡散部34の主面と平行な方向における、熱拡散部34から流路12内に延設された冷却フィン24の断面積の合計の比率(面積比率B)は、冷却効率を向上する観点から、30%以上であることが好ましく、70%以上であることがさらに好ましい。前述の面積比率Bは、流路12内の抵抗の観点から、70%以下であることが好ましく、30%以下であることがさらに好ましい。
【0031】
図2では、熱拡散部34は矩形の板状物となっているが、矩形に限定されず、円形、楕円形、矩形以外の多角形等であってもよい。
【0032】
冷却フィン24は、少なくとも表面が樹脂製であってもよく、冷却フィン24全体が樹脂製であってもよいし、金属製の棒状の芯材を有し、この芯材の表面が樹脂で被覆されていてもよい。芯材の一端は、冷却効率を向上する観点から、熱拡散部34と接続されていてもよい。
【0033】
図1においては、冷却フィン24の先端は冷却フィン24の延設方向に直交する平坦状とされているが、冷却フィン24の先端の形状は特に限定されるものではなく、半球状、円錐状、角錐状等であってもよい。
【0034】
被冷却体としては、バスバー26と接続するパワー半導体、キャパシタ等の電子部品が挙げられる。被冷却体が電子部品である場合、冷却構造体の電子部品の配置される箇所に冷却フィンを設けてもよい。
【0035】
熱拡散部34から流路12内に延設された冷却フィン24の本数は、1本であってもよく、2本以上であってもよい。
例えば、図3に示すように、熱拡散部34から外れた位置に冷却フィン24が配置されていてもよい。
【0036】
(変形例1)
次に、前述の一実施形態の冷却構造体10の変形例1について、図4を用いて説明する。変形例1の冷却構造体100は、バスバー26と、流路形成部材14の外壁面におけるバスバー26と対面する部分との距離h、及び熱拡散部34のバスバー26側の面から流路形成部材14の外壁までの距離hがそれぞれ一定である点で、前述の冷却構造体10と異なる。図4中の距離hの好ましい範囲は、前述の図1中の最小距離hと同様である。
図4中の距離hの好ましい範囲は、絶縁性の観点から、0mm超であることが好ましく、成形性の観点から、0.5mm以上であることがより好ましく、1.5mm以上であることがさらに好ましく、冷却効率の観点から、2.5mm以下であることが好ましい。
【0037】
(変形例2)
さらに、前述の一実施形態の冷却構造体10の変形例2について、図5を用いて説明する。変形例2の冷却構造体200は、熱拡散部34のバスバー26側の面から流路形成部材14の外壁までの距離hが0mmである点、すなわち、熱拡散部34のバスバー26側の面が流路形成部材14で覆われていない点で、前述の冷却構造体100と異なる。
このような冷却構造体200は、冷却効率に優れる。
【0038】
(変形例3)
本開示の冷却構造体の変形例は、流路形成部材の外壁の少なくとも一部に金属層が設けられており、好ましくは、被冷却体であるパワー半導体、キャパシタ等が流路形成部材の外壁上に配置され、被冷却体の少なくとも一部が接触するように金属層が設けられている。被冷却体の少なくとも一部が接触するように金属層が設けられていることにより、被冷却体にて生じた熱が金属層を介して流路を流通する冷媒に移動するため、被冷却体を効率よく冷却することができる。
【0039】
以下、本開示の冷却構造体の変形例について、図6を用いて説明する。図6は、冷却構造体の変形例3についての要部断面を示す図である。図6は、冷却構造体44における流路12の冷媒が流通する方向に平行な断面を示す。なお、図6では、冷却フィンの記載を省略している。
【0040】
図6に示す冷却構造体44では、被冷却体であるパワー半導体46が、流路形成部材14の外壁に設けられた金属層48を介して流路形成部材14と接している。パワー半導体46にはバスバー26が接続されており、不図示の他のパワー半導体、その他の電子部品等と導通が確保されている。流路形成部材14のパワー半導体46と接触する箇所には、不図示の冷却フィンが上部内壁16から下部内壁18に向けて延設されている。つまり、不図示の冷却フィンの根元部に、パワー半導体46が配置されている。
パワー半導体46から生じた熱は、金属層48を介して流路形成部材14の外壁に達し、さらに不図示の冷却フィンの根元部に到達した熱は、冷却フィンを通じて冷却フィンの根元部から下部内壁18に向けて移動する。このときに、流路12を流通する冷媒により冷却フィンから熱が冷媒に移動する。パワー半導体46が金属層48を介して流路形成部材14と接するため、パワー半導体46から生じた熱が、効率的に冷却フィンへ移動しやすくなり、冷却効率が向上する。
【0041】
また、金属層48は、パワー半導体46から発生する低周波域(特に、ラジオ帯)の磁界をシールドすることができる。そのため、流路形成部材14の外壁に金属層48を設けることは磁界シールドの観点から有効である。金属層48は、流路形成部材14の外壁の少なくとも一部に設ければよい。なお、金属層48は導電性であるため、絶縁性を求められる箇所には金属層48を設けなくともよい。また、流路形成部材14の外壁に金属層48を形成し、さらに絶縁性を求められる箇所の金属層48を樹脂層で覆ってもよい。
金属層48は、例えば、流路形成部材14における被冷却体の配置された側とは反対側の外壁に設けることが好ましい。また、図6に示すように、金属層48が流路形成部材14における被冷却体の配置された側の外壁の一部に設けられている場合、流路形成部材14における被冷却体の配置された側とは反対側の外壁には、金属層48の設けられていない領域50が存在してもよい。さらに、図6における熱拡散部34の配置された箇所とは反対側の外壁には、金属層48の設けられていない領域が存在してもよい。
【0042】
本開示の冷却構造体の製造方法は、特に限定されるものではなく、インジェクション成形法、ダイスライドインジェクション成形法、ブロー成形法、圧縮成形法、トランスファ成形法、押出成形法、注型成形法等の通常の樹脂成形体の成形方法を採用することができる。なお、冷却構造体10の製造には高い位置精度を要求される場合があることから、ダイスライドインジェクション成形法が好ましい。
また、ナット30の流路形成部材14に埋設されている箇所は、別途インサート成形法により製造してもよい。
【0043】
流路形成部材14及び冷却フィン24を構成する樹脂の種類は特に限定されるものではない。樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂(PP)、複合ポリプロピレン系樹脂(PPC)、ポリフェニレンサルファイド系樹脂(PPS)、ポリフタルアミド系樹脂(PPA)、ポリブチレンテレフタレート系樹脂(PBT)、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アイオノマー系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS)及びポリカーボネート系樹脂が挙げられる。流路形成部材14及び冷却フィン24を構成する樹脂は同じであっても異なっていてもよい。
【0044】
流路形成部材14及び冷却フィン24を構成する樹脂は、無機充填材を含有してもよい。無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコン、酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、炭化珪素、窒化珪素、窒化ホウ素、ベリリア及びジルコニアが挙げられる。さらに、難燃効果のある無機充填材としては、水酸化アルミニウム、硼酸亜鉛等が挙げられる。
流路形成部材14及び冷却フィン24を構成する樹脂に含まれる無機充填材は、同じであっても異なっていてもよい。また、流路形成部材14及び冷却フィン24を構成する樹脂の一方に無機充填材が含まれ、他方に無機充填材が含まれなくてもよい。
【0045】
熱拡散部34を構成する金属は、アルミニウム、鉄、銅、金、銀、ステンレス等の金属、合金などが挙げられる。また、ボルト28及びナット本体32も前述の金属から構成されていてもよく、熱拡散部34並びにボルト28及びナット本体32を構成する金属は同じであっても異なっていてもよい。
【0046】
熱拡散部34は、流路形成部材14及び冷却フィン24を構成する樹脂と熱拡散部34を構成する金属との熱膨張係数差による冷却構造体10への負荷を抑制する観点から、メッシュ状、パンチングメタル等であってもよい。
【0047】
冷却構造体10では、熱拡散部34の熱の面方向への拡散性及び冷却フィン24の放熱性の観点から、熱拡散部34を構成する金属はアルミニウム、鉄、銅、金、銀及びステンレスからなる群より選択される少なくともいずれか1つであり、冷却フィン24を構成する樹脂は、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフタルアミド系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、フェノール系樹脂及びエポキシ系樹脂からなる群より選択される少なくともいずれか1つであることが好ましい。好ましいポリアミド系樹脂としては、ナイロン6、ナイロン66等が挙げられる。
【0048】
流路を流通する冷媒の種類は、特に限定されるものではない。冷媒としては、水、有機溶媒等の液体、空気等の気体などが挙げられる。冷媒として用いられる水には、不凍液等の成分が含まれていてもよい。
【0049】
金属層48を構成する成分は特に限定されるものではなく、亜鉛、アルミニウム、亜鉛・アルミニウム合金、炭素鋼、ステンレス鋼、ニッケル、ニッケル合金、スズ、銅、銅合金、銀、銀合金、金、金合金、モリブデン等が挙げられる。これらの中でも、磁界シールド効果を高める観点からは、銀及び銅が好ましい。一方、被冷却体の冷却効率の観点からは、銀及び金が好ましい。
金属層48を形成する方法は特に限定されるものではなく、電解メッキ、無電解メッキ、蒸着、金属板の張り付け、金属溶射等が挙げられる。金属層48は、形成性の観点から、金属溶射法により形成された金属溶射層であることが好ましく、加工性の観点から亜鉛が好ましい。
【0050】
金属層48の平均厚みは特に限定されるものではなく、1μm~2mmが好ましい。
【0051】
被冷却体であるパワー半導体46と接触する金属層48の平均厚みは、冷却効率の観点から、200μm~2mmが好ましく、500μm~2mmがより好ましい。
【0052】
流路形成部材14における被冷却体の配置された側とは反対側の外壁に設けられた金属層48の平均厚みは、磁界シールドの観点から、1μm~2mmが好ましく、200μm~2mmが好ましく、500μm~2mmがより好ましい。
【0053】
冷却構造体10は、冷媒の温度を測定する温度センサを備えていてもよく、流路12内の冷却フィン24が延設された領域よりも下流に温度センサを備えていてもよい。また、温度センサの温度に応じて冷媒の量を調節してもよく、温度センサの温度に応じて冷媒の量を調節する制御部を備えていてもよい。
【0054】
本開示の冷却構造体は、ハイブリッド自動車、電気自動車等のモータを搭載する車両における、パワー半導体を複数備えるパワーモジュール、キャパシタ等の電子部品、これら電子部品を電気的に接合するバスバーなどの冷却に有効である。
【実施例
【0055】
以下、実験例に基づいて、金属層の磁界シールド性能及び冷却性能を検証した。
【0056】
-磁界シールド性能評価-
縦120mm、横120mm、厚み5mmのPPS樹脂板を準備し、試験片1とした。
試験片1の一方の面に、溶射法により平均厚み200μmの亜鉛層を形成した。これを試験片2とした。
また、縦120mm、横120mm、厚み500μmのアルミニウム板を試験片3とした。
試験片1、試験片2及び試験片3について、磁界シールド性能を以下に示すKEC法(500Hzから1GHz)における磁界シールド効果評価用装置で評価した。
得られた結果を図7に示す。図7から明らかなように、試験片2及び試験片3によれば、試験片1に比較して優れた磁界シールド効果の得られることがわかる。
【0057】
-冷却性能評価-
PPS樹脂を用いて、外径が横30mm×縦15mmで、内径が横25mm×縦10mmで、長さが110mmの断面矩形の水路モデル1を形成した。水路モデル1における110mm×30mmの外壁の上面に、溶射法により平均厚み200μmの亜鉛層48を形成した。これを水路モデル2とした。
水路モデル1の110mm×30mmの外壁及び水路モデル2の亜鉛層48を形成した面上に、各々、100℃に熱した95mm×25mm×15mmの大きさの鉄ブロック52を図8に示すようにして配置し、各水路モデル内に20℃の水を8L/分の流量で流通させた。
鉄ブロック52の配置直後から、図8に示すA~Dの計4箇所の温度変化を、株式会社KEYENCE製 高機能レコーダ GR-3500を用いて測定したところ、鉄ブロック52の配置から17分後の各測定箇所の温度は、下記表1に示すとおりであり、亜鉛層48は被冷却体の冷却に有効であることが明らかとなった。
【0058】
【表1】
【0059】
2019年3月22日に出願された日本国特許出願2019-055696の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【符号の説明】
【0060】
10、44、100、200 冷却構造体
12 流路
14 流路形成部材
16 上部内壁
18 下部内壁
20 側部内壁
22 側部内壁
24 冷却フィン
26 バスバー
28 ボルト
30 ナット
32 ナット本体
34 熱拡散部
46 パワー半導体
48 金属層
50 領域
52 鉄ブロック
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8