(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 31/18 20060101AFI20221025BHJP
【FI】
H01L31/04 460
(21)【出願番号】P 2021513535
(86)(22)【出願日】2020-03-16
(86)【国際出願番号】 JP2020011380
(87)【国際公開番号】W WO2020209010
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2021-09-24
(31)【優先権主張番号】P 2019074375
(32)【優先日】2019-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】石崎 順也
(72)【発明者】
【氏名】古屋 翔吾
(72)【発明者】
【氏名】秋山 智弘
【審査官】桂城 厚
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1011025(KR,B1)
【文献】米国特許第09837453(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0148293(US,A1)
【文献】特開2014-154172(JP,A)
【文献】特開2007-036988(JP,A)
【文献】国際公開第2018/194030(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0235262(US,A1)
【文献】特開2008-160138(JP,A)
【文献】特表2013-531893(JP,A)
【文献】特表平06-511357(JP,A)
【文献】特開2007-324563(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0089637(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00-31/20
H01L 51/42-51/48
H02S 10/00-10/40
H02S 30/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池構造を備えた駆動回路を有する電子デバイスを製造する方法であって、
出発基板上にエピタキシャル成長によって形成された、化合物半導体からなる複数の独立した太陽電池構造を有する第一のウェーハと、複数の独立した駆動回路が形成された第二のウェーハを、前記複数の
独立した太陽電池構造と前記複数の
独立した駆動回路が夫々重なり合うように接合して接合ウェーハとする工程と、
前記接合ウェーハにおいて前記複数の
独立した太陽電池構造から前記複数の
独立した駆動回路に夫々電力が供給可能なように配線を行う工程と、
前記接合ウェーハをダイシングすることで、前記太陽電池構造を備えた駆動回路を有する電子デバイスを製造する工程と
を有することを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記接合を、熱硬化性の接着剤を用いて行うことを特徴とする請求項1に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項3】
前記熱硬化性の接着剤の厚みを2.0μm以上とすることを特徴とする請求項2に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項4】
前記接合を行った後、前記接合ウェーハから前記出発基板を分離することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項5】
前記配線を、
前記接合を行う前に前記第二のウェーハにおいて前記駆動回路に電力を供給可能なようにパッド電極を設けることと、
前記接合を行う前及び後の少なくともいずれかにおいて、前記第一のウェーハの太陽電池構造から電力を取り出すことが可能なように太陽電池構造用電極を形成することと、
前記パッド電極及び前記太陽電池構造用電極を電気的に接続することと
により行うことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IoT(Internet of Things)用のセンサーなどの電子デバイスは、小型かつ低消費電力で駆動するチップが必要であり、かつ、安価であることが求められる。このような電子デバイスでは、電源を外部に設け、外部供給電力により各種センサーを駆動するのが安定動作には理想的ではあるが、配線に要する設置コストが膨大になり、安価なセンサー設置が困難となる。従って、IoT用のセンサーは、駆動電源として有線を必要としないデバイスの実現が必要である。
【0003】
また、電子デバイスが安価であるためには小型である必要がある。以上の条件を実現するためには、電子デバイスにおいて駆動回路と駆動電源受電素子を1チップで実現する必要がある。電源を無線で得る方式はマイクロ波もしくは光のどちらかが選択可能だが、マイクロ波は距離による出力減衰が大きく、分散配置するIoT用センサーの給電方式としては適さない。
【0004】
従って、IoTセンサー用途としては光無線給電方式が適切である。
【0005】
光無線給電の受電素子は太陽電池になるが、駆動回路と受電素子を1チップに設けることは難しい。駆動回路エリアを最初に設け、駆動回路エリアと別の領域に受電用(受光用)の太陽電池素子を形成することは可能である。
【0006】
しかし、駆動回路を設けるSi系太陽電池の受電効率は高くなく、大きな面積を必要とする。
【0007】
その結果、安価な素子を作製することが困難となる。受電素子の効率を高めるため、太陽電池部に化合物半導体からなる太陽電池をエピタキシャル成長することも可能である。
【0008】
しかし、化合物半導体太陽電池をSi基板上にエピタキシャル成長しようとすると、Si基板との格子不整合が大きい。その結果、結晶品質を高めて高効率の受電用太陽電池を形成するため、エピタキシャル成長のためのバッファ層を工夫する必要があるなど、エピタキシャルコストの上昇を招く。
【0009】
その結果、やはり、素子製造コストが高価になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2018-148074号公報
【文献】特開2013-4632号公報
【文献】特開2008-210886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
電子デバイスに追加の素子を設ける技術として、機能層と基体を接合する技術がある。機能層と基体の接合に関する技術として、特許文献1~3が挙げられる。特許文献1には、機能層と基体をBCB(ベンゾシクロブテン)で接合する技術が記載されている。特許文献2には、犠牲層エッチングの技術が開示されている。特許文献3には、駆動回路基板にチップをフリップ接合する技術が開示されている。しかしながら、駆動回路と太陽電池構造を1チップに備える電子デバイスの製造方法に関する技術は、特許文献1~3には開示されていない。
【0012】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたもので、駆動回路と太陽電池構造を1チップに備え、かつ製造コストを抑制した電子デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明は、太陽電池構造を備えた駆動回路を有する電子デバイスを製造する方法であって、出発基板上にエピタキシャル成長によって形成された、化合物半導体からなる複数の独立した太陽電池構造を有する第一のウェーハと、複数の独立した駆動回路が形成された第二のウェーハを、前記複数の太陽電池構造と前記複数の駆動回路が夫々重なり合うように接合して接合ウェーハとする工程と、前記接合ウェーハにおいて前記複数の太陽電池構造から前記複数の駆動回路に夫々電力が供給可能なように配線を行う工程と、前記接合ウェーハをダイシングすることで、前記太陽電池構造を備えた駆動回路を有する電子デバイスを製造する工程とを有することを特徴とする電子デバイスの製造方法を提供する。
【0014】
このように、複数の独立した太陽電池構造を有する第一のウェーハと複数の独立した駆動回路が形成された第二のウェーハを、前記複数の太陽電池構造と前記複数の駆動回路が夫々重なり合うように接合することで、電子デバイスの面積を極めて小さくすることが可能となる。したがって、太陽電池構造を備えた駆動回路を有する電子デバイスの製造コストを抑制できる。
【0015】
また、前記接合を、熱硬化性の接着剤を用いて行うことが好ましい。
【0016】
このように、熱硬化性の接着剤を用いて接合を行うことにより、低温で接合できる。また、そのため、接合に要する熱処理で太陽電池構造や駆動回路部の物性が変化することがないため、太陽電池構造や駆動回路形成後に接合工程を行うことができる。
【0017】
このとき、前記熱硬化性の接着剤の厚みを2.0μm以上とすることができる。
【0018】
このように、熱硬化性の接着剤を2.0μm以上の厚さで設けることにより、接着力を強化することができる。
【0019】
また、前記接合を行った後、前記接合ウェーハから前記出発基板を分離することが好ましい。
【0020】
このように、接合ウェーハから出発基板を分離することで、出発基板を再利用することもでき、コストを低減させることができる。
【0021】
また、本発明の電子デバイスの製造方法では、前記配線を、前記接合を行う前に前記第二のウェーハにおいて前記駆動回路に電力を供給可能なようにパッド電極を設けることと、前記接合を行う前及び後の少なくともいずれかにおいて、前記第一のウェーハの太陽電池構造から電力を取り出すことが可能なように太陽電池構造用電極を形成することと、前記パッド電極及び前記太陽電池構造用電極を電気的に接続することとにより行うことができる。
【0022】
本発明の電子デバイスの製造方法では、具体的には、このようにして配線を行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の電子デバイスの製造方法では、太陽電池構造を備えた駆動回路を有する電子デバイスの面積を極めて小さくすることが可能となる。したがって、電子デバイスの製造コストを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の電子デバイスの工程の途中経過を示す概略図であり、第一のウェーハを示す概略図である。
【
図2】本発明の電子デバイスの工程の途中経過を示す概略図であり、接着層を形成した第一のウェーハを示す概略図である。
【
図3】本発明の電子デバイスの工程の途中経過を示す概略図であり、第二のウェーハを示す概略図である。
【
図4】本発明の電子デバイスの工程の途中経過を示す概略図であり、第一のウェーハと第二のウェーハの接合を示す概略図である。
【
図5】本発明の電子デバイスの工程の途中経過を示す概略図であり、接合ウェーハからの出発基板の分離を示す概略図である。
【
図6】本発明の電子デバイスの工程の途中経過を示す概略図であり、接合ウェーハの一部加工を示す概略図である。
【
図7】本発明の電子デバイスの工程の途中経過を示す概略図であり、接合ウェーハのSiO
2被覆を示す概略図である。
【
図8】本発明の電子デバイスの工程の途中経過を示す概略図であり、接合ウェーハの電極形成を示す概略図である。
【
図9】本発明の電子デバイスの工程の途中経過を示す概略図であり、接合ウェーハのパッド電極の露出を示す概略図である。
【
図10】本発明の電子デバイスの工程の途中経過を示す概略図であり、接合ウェーハの配線を示す概略図である。
【
図11】本発明の電子デバイスの工程の途中経過を示す概略図であり、第二の実施形態による接合ウェーハを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
上述したようにIoT用のセンサーなどの電子デバイスは小型かつ低消費電力で駆動するチップが必要であり、かつ、安価であることが求められる。電源を外部に設け、外部供給電力により各種センサーを駆動するのが安定動作には理想的ではあるが、配線に要する設置コストが膨大になり、安価なセンサー設置が困難となる。従って、IoT用のセンサーは、駆動電源として有線を必要としないデバイスの実現が必要である。本発明者らが検討を重ねたところ、基板上にエピタキシャル成長によって形成された化合物半導体からなる複数の独立した太陽電池構造を有する第一のウェーハと複数の独立した駆動回路が形成された第二のウェーハを前記複数の太陽電池構造と前記複数の駆動回路が夫々重なり合うように接合し、前記複数の太陽電池構造から前記複数の駆動回路に夫々電力が供給可能なように電極及び配線を行った後、ダイシングを行うことで太陽電池構造を備えた駆動回路を有する電子デバイスであれば、電子デバイスの面積を極めて小さくすることが可能となり、製造コストを抑制できる事が判り、本発明を完成させた。
【0026】
本発明は、太陽電池構造を備えた駆動回路を有する電子デバイスを製造する方法であり、以下の工程を備える。すなわち、(a)出発基板上にエピタキシャル成長によって形成された、化合物半導体からなる複数の独立した太陽電池構造を有する第一のウェーハと、複数の独立した駆動回路が形成された第二のウェーハを、前記複数の太陽電池構造と前記複数の駆動回路が夫々重なり合うように接合して接合ウェーハとする工程、(b)前記接合ウェーハにおいて前記複数の太陽電池構造から前記複数の駆動回路に夫々電力が供給可能なように配線を行う工程、(c)前記接合ウェーハをダイシングすることで、前記太陽電池構造を備えた駆動回路を有する電子デバイスを製造する工程、の各工程である。
【0027】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0028】
(第一の実施形態)
まず、出発基板上にエピタキシャル成長によって形成された、化合物半導体からなる複数の独立した太陽電池構造を有する第一のウェーハを準備する。
図1及び
図2に第一のウェーハ100の概略を示した。第一のウェーハ100は、出発基板10上にエピタキシャル成長により、太陽電池構造101を複数形成する。
【0029】
より具体的には以下のように太陽電池構造を形成することができるが、太陽電池構造は、化合物半導体からなる種々の構造を採用することができる。まず、GaAsからなる出発基板10上に、例えば厚さ0.5μmのp-GaAsバッファ層(不図示)、例えば厚さ0.3μmのp-AlAs犠牲層11、例えば厚さ0.3μmのp-GaAsコンタクト層12、例えば厚さ0.2μmのp-In
0.5Ga
0.5Pウィンドウ層13、例えば厚さ0.5μmのp-GaAsエミッタ層14、例えば厚さ3.5μmのn-GaAsベース層15、例えば厚さ0.05μmのn-In
0.5Ga
0.5PからなるBSF(Back Surface Field、裏面電界)層16を形成し、太陽電池構造を有する第一のウェーハ100を準備する。
図1の段階では、素子分離を行っておらず、太陽電池構造は独立していない。太陽電池構造の各層の構成や組成、厚さなどは、適宜設計することができる。例えば、ここでIn
0.5Ga
0.5Pは擬似格子整合する条件で積層していればよく、臨界膜厚以下の膜厚であれば、例示した組成に限定されない。
【0030】
次に、第一のウェーハ100上にP-CVD法(プラズマ-化学気相堆積法)にてSiO2膜17を例えば0.1μm形成し、SiO2膜17上にスピンコート法により、熱硬化性の接着剤として、BCB(ベンゾシクロブテン)膜18を例えば0.2μm形成する。BCB膜(すなわち、熱硬化性の接着剤)18の厚さは好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上である。このような厚さのBCB18膜は、より良好なウェーハ接合を実現することができる。BCB膜18の厚さ(熱硬化性の接着剤の厚さ)は2.0μm以下とすることができ、さらには、1.0μm以下とすることができる。このようなBCB膜18の厚さであれば、コストの上昇が抑えられる。また、そのような厚さであれば、接合圧力による変形量を小さくでき、分離パターンの側面への付着量も増加せず、その後の犠牲層エッチング及びパターン出し工程を容易にできる。
【0031】
本実施形態においては、第一のウェーハ100にSiO2膜17を形成した構造を例示しているが、SiO2膜17はBCB膜18の接着増強層である。そのため、SiO2膜17を必ずしも設ける必要はない。本発明で用いることができる熱硬化性の接着剤としてはBCB(ベンゾシクロブテン)樹脂を用いることが好ましいが、これに限定されない。
【0032】
BCB膜18の塗布後、100℃前後の熱処理により溶剤を飛ばしておくことが好ましい。
【0033】
また、BCB膜等の熱硬化性の接着剤の厚みを2.0μm以上とすることもできる。熱硬化性の接着剤を2.0μm以上の厚さで設けることにより、接着力を強化することができる。特に、犠牲層エッチングを行って出発基板を分離し、エピタキシャル層のみを残した時、エピタキシャル層が剥離することをより効果的に防止することができる。熱硬化性の接着剤を3.0μm以上の厚さのような厚膜にする場合、一旦接着剤を塗布後、熱を加えた硬化処理を行い、更に塗布して重ねる手法により厚膜を形成することもできる。
【0034】
次にBCB膜18上に、太陽電池構造を独立したものとするための素子分離を予定する部分(素子分離予定部)が開口したレジストパターンをフォトレジスト工程により形成する。フッ素含有ガス(NF3あるいはSF6など)とArガスの混合プラズマ雰囲気下でICP(誘導結合プラズマ)処理を行うことにより、BCB膜18及びSiO2膜17のパターニングを行う。
【0035】
ICP処理の条件としては例えば雰囲気圧力は1.0Pa,NF3とArガスの総流量は50sccmとすることができる。しかし、BCB/SiO2のパターニングが出来る条件であれば、この条件に限定されるものではない。
【0036】
BCB膜18/SiO2膜17の開口パターンニング後、レジストパターンを除去する。例えば、レジスト除去はアッシング処理を行うことができるが、これに限定されるものではなく、有機洗浄やその他の脱脂処理にて除去してもよい。
【0037】
BCB膜18/SiO
2膜17の開口を、GaAs層に対しては酒石酸過酸化水素混合溶液、InGaPに対しては塩酸燐酸混合液にてエッチングし、素子分離予定部をエッチングする(
図2参照)。なお、酒石酸過酸化水素混合溶液はInGaPに対してエッチング選択性を有し、塩酸燐酸混合液はGaAsに対してエッチング選択性を有するため、各層をエッチングするため、適宜切り替える。以上の工程により、
図2に示したように、化合物半導体からなる複数の独立した太陽電池構造101を有する第一のウェーハ100を準備することができる。
【0038】
上記の第一のウェーハ100とは別に、複数の独立した駆動回路が形成された第二のウェーハを準備する。第二のウェーハは、シリコン(Si)基板に駆動回路を形成して準備することが好ましい。具体的には、
図3に示したように、Si基板(駆動回路基板20)上に駆動回路と入力用の受電パッド部(パッド電極22、23)を有する第二のウェーハ200を準備する。駆動回路は、求める機能に合わせて形成するが、受電パッド(パッド電極22、23)に太陽電池構造からの電流逆流を防止する整流用ダイオードが接続された構成とすることが好ましい。
図3中には、複数の独立した駆動回路201(破線で囲った部分が個々の駆動回路である。)を形成した例を示している。
【0039】
次に、駆動回路基板表面にSiO
2膜21を例えば0.1μmの厚さで成膜することが好ましい(
図3参照)。
【0040】
本実施形態においては、駆動回路基板上にSiO2膜21を形成した構造を例示しているが、SiO2膜21は、上記した熱硬化性の接着剤であるBCB膜の接着増強層であるため、必ずしもSiO2膜21を設ける必要はない。
【0041】
次に、
図4に示すように、第一のウェーハ100及び第二のウェーハ200を、複数の太陽電池構造101と複数の駆動回路201が夫々重なり合うように接合して接合ウェーハとする。接合後、第一のウェーハ100及び第二のウェーハ200は、接合ウェーハ300を構成する(
図4中には接合直前の様子を示している。)。ここで、より具体的には、第一のウェーハ100及び第二のウェーハ200を、第二のウェーハ200側のパッド(パッド電極22、23)の位置が予定位置になる様にアライメントを行い、対向して重ね合わせ、例えば300℃の熱と250N/cm
2程度の圧力を加えつつ接合する(
図4参照)。BCB膜18を介した接合温度は150℃以上とするのが好ましく、210℃以上とするのがより好ましい。BCB硬化時間は高温にするほど早くなるが、駆動基板の特性変化を極力抑制する観点から好ましくは400℃以下、より好ましくは320℃以下とする。
【0042】
また、接合圧力は好ましくは2N/cm2以上、より好ましくは5N/cm2以上とする。接合圧力が大きいほど、容易に接合が得られるため、大きい方が望ましいが、接合圧力による変形量が大きくなり、分離パターンの側面への付着量が増加し、その後の犠牲層エッチング及びパターン出し工程が難しくなるため、好ましくは500N/cm2以下、より好ましくは250N/cm2以下とする。
【0043】
接合後、犠牲層11のエッチングを行う。AlAsからなる犠牲層の場合、エッチングはフッ素含有溶液で行う。素子分離予定部が開口しているため、フッ素含有液はAlAs犠牲層に速やかに達し、犠牲層をエッチングする。フッ素含有液は犠牲層以外の層に対してエッチング選択性を有するため、AlAs犠牲層のみが選択的に除去される。犠牲層が消失したことにより、太陽電池構造101となるエピタキシャル層は第二のウェーハ200に残留し、GaAs出発基板10は分離する(
図5参照)。
【0044】
分離したGaAs出発基板10はエピタキシャル成長用基板に再利用することができる。出発基板10は、必要に応じて表面を再度ポリッシュして利用しても良い。
【0045】
次に、接合ウェーハ300に対し、フォトリソグラフィー法により、一部が開口したパターンを形成し、BSF層16部が露出するパターンを形成する。BSF層16部が露出するパターンを形成後、レジストを除去する(
図6参照)。BSF層16を露出させるため、前述の選択エッチング液を使用しても良いし、ICPなどのドライプロセスを適用しても良い。
【0046】
BSF層16の露出部形成後、例えば0.1μm厚のSiO
2膜31にてウェーハ全体を被覆する。次にフォトリソグラフィー法により、一部が開口したパターンを形成し、p-GaAsコンタクト層12上の一部とBSF層16上の一部が開口したパターンを形成し、フッ素含有溶液にてエッチングすることでSiO
2膜31の一部を開口する。SiO
2膜31の一部を開口した後、レジストを除去する(
図7参照)。
【0047】
次にSiO
2開口部に電極32、33を形成する。(
図8)。
【0048】
p-GaAsコンタクト層12に接する電極33はBeを含有するAuにて、BSF層16に接する電極32にはGeを含有するAuにて、例えば各0.5μm厚の電極を形成する。電極材料はこれに限らず、オーミックコンタクトが形成されればどの様な材料でも選択可能である。
【0049】
次にフォトリソグラフィー法により駆動回路部上を被覆しているSiO
2膜21が開口したレジストパターンを形成する。開口後、例えばフッ素含有溶液によるエッチングにより駆動回路部のパッド電極22、23を露出させる(
図9の露出部35)。
【0050】
次に駆動基板上のパッド電極22、23とエピタキシャル層部の電極(電極32、33)を結んで金属配線36、37を形成する。フォトリソグラフィー法により開口パターンを形成し、例えばAl層0.5μmを蒸着し、リフトオフ法により配線パターンを形成する(
図10参照)。これにより、接合ウェーハ300において複数の太陽電池構造101から複数の駆動回路201に夫々電力が供給可能なように配線が行われる。
【0051】
この第一の実施形態では、配線が、接合を行う前に第二のウェーハ200において駆動回路201に電力を供給可能なようにパッド電極22、23を設けること(
図3)と、接合を行った後に、第一のウェーハ100の太陽電池構造101から電力を取り出すことが可能なように太陽電池構造用電極32、33を形成することと、パッド電極22、23及び太陽電池構造用電極32、33を電気的に接続することとにより行われる。
【0052】
このようにして
図10に示した接合ウェーハ(電子デバイス製造用ウェーハ)400が作製される。接合ウェーハ400には、複数の電子デバイス構造301が形成される。このような接合ウェーハ400をダイシングすることで、電子デバイス構造301を個々に分離し、太陽電池構造101を備えた駆動回路201を有する電子デバイスを製造することができる。
【0053】
(第二の実施形態)
次に、第一の実施形態の途中工程を変更した本発明の第二の実施形態を説明する。第二の実施形態は、基本的に第一の実施形態と同様であるが、配線方式が異なる。第二の実施形態において形成される電子デバイス用接合を行う前に第二のウェーハ200において駆動回路に電力を供給可能なようにパッド電極22、23を設けることは同様であるが、接合を行う前において、予め、第一のウェーハの太陽電池構造から電力を取り出すことが可能なように太陽電池構造用電極52を形成することが異なる(
図11参照)。以下では、第一の実施形態との差異に着目して第二の実施形態を説明する。第一の実施形態と本質的に同じ構成要素は同じ符号を用いて説明する。
【0054】
まず、出発基板上にエピタキシャル成長によって形成された、化合物半導体からなる複数の独立した太陽電池構造を有する第一のウェーハを準備する。ここで準備する第一のウェーハは、第一の実施形態と同様に、出発基板10上にエピタキシャル成長により、太陽電池構造を複数形成する(
図1及び
図2参照)。より具体的には、GaAsからなる出発基板10上に、例えば厚さ0.5μmのp-GaAsバッファ層、例えば厚さ0.3μmのp-AlAs犠牲層11、例えば厚さ0.3μmのp-GaAsコンタクト層12、例えば厚さ0.2μmのp-In
0.5Ga
0.5Pウィンドウ層13、例えば厚さ0.5μmのp-GaAsエミッタ層14、例えば厚さ3.5μmのn-GaAsベース層15、例えば厚さ0.05μmのn-In
0.5Ga
0.5PからなるBSF層16を形成した太陽電池構造を有する第一のウェーハ100を準備する。太陽電池構造の各層の構成や組成、厚さなどは、適宜設計することができる。例えば、ここでIn
0.5Ga
0.5Pは擬似格子整合する条件で積層していればよく、臨界膜厚以下の膜厚であれば、例示した組成に限定されない。
【0055】
次に、第一のウェーハ100のBSF層16の一部に接するN型電極52を形成する(
図11参照)。このように予め電極52を形成することが第一の実施形態との違いである。以下、
図1~9について、
図11のようにBSF層16の一部に接するN型電極52が形成されているものに置き換えて説明する。
【0056】
N型電極52はGeを含有するAuにて、例えば0.5μm厚の電極を形成する。電極材料はこれに限定されず、オーミックコンタクトが形成されれば、どの様な材料でも選択可能である。
【0057】
次に、N型電極52を形成した第一のウェーハ100上にP-CVD法にてSiO2膜17を例えば0.1μm形成し、SiO2膜17上にスピンコート法により、熱硬化性の接着剤として、BCB(ベンゾシクロブテン)膜18を例えば0.2μm形成する。BCB膜(すなわち、熱硬化性の接着剤)18の厚さは好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上である。このような厚さのBCB18膜は、より良好なウェーハ接合を実現することができる。BCB膜18の厚さ(熱硬化性の接着剤の厚さ)は2.0μm以下とすることができ、さらには、1.0μm以下とすることができる。このようなBCB膜18の厚さであれば、コストの上昇が抑えられる。また、そのような厚さであれば、接合圧力による変形量を小さくでき、分離パターンの側面への付着量も増加せず、その後の犠牲層エッチング及びパターン出し工程を容易にできる。
【0058】
本実施形態においては、第一のウェーハ100にSiO2膜17を形成した構造を例示しているが、SiO2膜17はBCB膜18の接着増強層である。そのため、SiO2膜17を必ずしも設ける必要はない。
【0059】
BCB膜18の塗布後、100℃前後の熱処理により溶剤を飛ばしておくことが好ましい。
【0060】
また、第一の実施形態と同様に、BCB膜等の熱硬化性の接着剤の厚みを2.0μm以上とすることもできる。
【0061】
次にBCB膜18上に、素子分離予定部が開口したレジストパターンをフォトレジスト工程により形成する。フッ素含有ガス(NF3あるいはSF6など)とArガスの混合プラズマ雰囲気下でICP(誘導結合プラズマ)処理を行うことにより、BCB膜18及びSiO2膜17のパターニングを行う。
【0062】
ICP処理の条件としては例えば雰囲気圧力は1.0Pa,NF3とArガスの総流量は50sccmとすることができる。しかし、BCB/SiO2のパターニングが出来る条件であれば、この条件に限定されるものではない。
【0063】
BCB膜18/SiO2膜17の開口パターンニング後、レジストパターンを除去する。例えば、レジスト除去はアッシング処理を行うことができるが、これに限定されるものではなく、有機洗浄やその他の脱脂処理にて除去してもよい。
【0064】
BCB膜18/SiO
2膜17の開口を、GaAs層に対しては酒石酸過酸化水素混合溶液、InGaPに対しては塩酸燐酸混合液にてエッチングし、素子分離予定部をエッチングする(
図2参照)。なお、酒石酸過酸化水素混合溶液はInGaPに対してエッチング選択性を有し、塩酸燐酸混合液はGaAsに対してエッチング選択性を有するため、各層をエッチングするため、適宜切り替える。以上の工程により、
図2に示したように、化合物半導体からなる複数の独立した太陽電池構造を有する第一のウェーハ100を準備することができる。
【0065】
次にBCB膜18上にN電極部52が開口したレジストパターンをフォトレジスト工程により形成する。
【0066】
フッ素含有ガス(NF3あるいはSF6など)とArガスの混合プラズマ雰囲気下でICP処理を行うことにより、BCB膜及びSiO2膜のパターニングを行う。
【0067】
また、複数の独立した駆動回路が形成された第二のウェーハを準備する。
図3に示したように、Si基板上に駆動回路と入力用の受電パッド部(パッド電極22、23)を有する第二のウェーハ200を準備する。駆動回路は、求める機能に合わせて形成するが、受電パッド(パッド電極22、23)に太陽電池構造からの電流逆流を防止する整流用ダイオードが接続された構成とすることが好ましい。このとき、パッド電極22は、
図11に示すように、第一のウェーハに形成されたN型電極52と位置が合うように形成される。
【0068】
次に、駆動回路基板表面にSiO
2膜21を例えば0.1μmの厚さで成膜することが好ましい(
図3参照)。
【0069】
本実施形態においては、駆動回路基板上にSiO2膜21を形成した構造を例示しているが、SiO2膜21は、上記した熱硬化性の接着剤であるBCB膜の接着増強層であるため、必ずしもSiO2膜21を設ける必要はない。
【0070】
次に、第一のウェーハ100及び第二のウェーハ200を、複数の太陽電池構造と複数の駆動回路が夫々重なり合うように接合して接合ウェーハとする。接合後、第一のウェーハ100及び第二のウェーハ200は、接合ウェーハ300を構成する。より具体的には、第一のウェーハ100及び第二のウェーハ200を第二のウェーハ200側のパッド(パッド電極22、23)の位置が予定位置になる様にアライメントを行い、対向して重ね合わせ、例えば300℃の熱と250N/cm
2程度の圧力を加えつつ接合する(
図4参照)。BCB膜18を介した接合温度は150℃以上とするのが好ましく、210℃以上とするのがより好ましい。BCB硬化時間は高温にするほど早くなるが、駆動基板の特性変化を極力抑制する観点から好ましくは400℃以下、より好ましくは320℃以下とする。第二の実施形態では、特に
図11に示すように、第二のウェーハ200のパッド電極22と、第一のウェーハ100に形成されたN型電極52とが位置が合うように接合される。
【0071】
また、接合圧力は好ましくは2N/cm2以上、より好ましくは5N/cm2以上とする。接合圧力が大きいほど、容易に接合が得られるため、大きい方が望ましいが、接合圧力による変形量が大きくなり、分離パターンの側面への付着量が増加し、その後の犠牲層エッチング及びパターン出し工程が難しくなるため、好ましくは500N/cm2以下、より好ましくは250N/cm2以下とする。
【0072】
接合後、犠牲層11のエッチングを行う。AlAsの犠牲層の場合、エッチングはフッ素含有溶液で行う。素子分離予定部が開口しているため、フッ素含有液はAlAs犠牲層に速やかに達し、犠牲層をエッチングする。フッ素含有液は犠牲層以外の層に対してエッチング選択性を有するため、AlAs犠牲層のみが選択的に除去される。犠牲層が消失したことにより、太陽電池構造となるエピタキシャル層は第二のウェーハ200に残留し、GaAs出発基板10は分離する(
図5参照)。
【0073】
分離したGaAs出発基板10はエピタキシャル成長用基板に再利用することができる。出発基板10は、必要に応じて表面を再度ポリッシュして利用しても良い。
【0074】
次に、接合ウェーハ300に対し、フォトリソグラフィー法により、一部が開口したパターンを形成し、BSF層16部が露出するパターンを形成する。BSF層16部が露出するパターンを形成後、レジストを除去する(
図6参照)。BSF層16を露出させるため、前述の選択エッチング液を使用しても良いし、ICPなどのドライプロセスを適用しても良い。
【0075】
BSF層16の露出部形成後、例えば0.1μm厚のSiO
2膜31にてウェーハ全体を被覆する。次にフォトリソグラフィー法により、一部が開口したパターンを形成し、p-GaAsコンタクト層12上の一部が開口したパターンを形成し、フッ素含有溶液にてエッチングすることでSiO
2膜31の一部を開口する。SiO
2膜31の一部を開口した後、レジストを除去する(
図7参照)。
【0076】
次にSiO2開口部に電極53を形成する。
【0077】
p-GaAsコンタクト層12に接する電極53はBeを含有するAuにて、例えば0.5μm厚の電極を形成する。電極材料はこれに限らず、オーミックコンタクトが形成されればどの様な材料でも選択可能である。
【0078】
次にフォトリソグラフィー法により駆動回路部上を被覆しているSiO
2膜21が開口したレジストパターンを形成する。開口後、例えばフッ素含有溶液によるエッチングにより駆動回路部のパッド電極23を露出させる(
図9の露出部35)。
【0079】
次に駆動基板上のパッド電極23とエピタキシャル層部の電極(電極53)を結んで金属配線37を形成する。フォトリソグラフィー法により開口パターンを形成し、例えばAl層0.5μmを蒸着し、リフトオフ法により配線パターンを形成する(
図11参照)。第二の実施形態では、上記のように、パッド電極22と、N型電極52は位置合わせされており(
図11参照)、改めて金属配線による配線は必要ない。
【0080】
このようにして
図11に示した接合ウェーハ(電子デバイス製造用ウェーハ)500が作製され、接合ウェーハ500をダイシングすることで、太陽電池構造を備えた駆動回路を有する電子デバイスを製造することができる。
【0081】
太陽電池(PV)は面積増大により受電電力が大きくなるため、面積が大きい方が駆動電力の点では有利である。従来例では太陽電池構造部と駆動回路部が同一面に設けられており、受電電力を大きくするためには素子の面積が大きくなる。しかし、本発明においては、駆動回路部上に受電部を設けるため、素子面積を極小化することができる。
【0082】
また、特に、接合の際に熱硬化性の接着剤を用いることにより、接合時の温度が300℃と低温とすることができる。従って、接合に要する熱処理で駆動回路部の物性が変化することがないため、駆動回路形成後に接合工程を行うことが可能である。接合時の温度が300℃と低温であり、接合に要する熱処理で太陽電池構造部の物性が変化することがないため、太陽電池構造部の電極形成後に接合工程を行うことが可能である。
【0083】
また、本発明では、駆動回路基板と太陽電池構造部を別個に形成できることから歩留まりの向上に寄与する。
【0084】
また、本発明では、太陽電池構造部の出力用電極と、駆動回路部の入力用電極の、位置合わせを行って接合することから配線形成精度と、配線形成に伴う歩留まりを向上させることができる。
【0085】
また、本発明では、太陽電池構造部形成と駆動回路形成を別々の工程で行うことで、積層後の不良発生に伴う歩留まり低下を防止することができる。
【0086】
また、駆動回路部に太陽電池構造のエピタキシャル層を形成する場合、バッファ層形成に伴う材料コストが大きな比重を占めるが、太陽電池構造形成基板・工程と駆動回路形成基板・工程をそれぞれ分離することで、各々コスト最少の最適な設計で形成することが可能であり、総コストを下げることができる。
【0087】
また、太陽電池構造のエピタキシャル層のコストが高価であり、出発基板のコストが大きな比重を占める。太陽電池構造部の素子分離を行ってから接合を行うため、エピタキシャルリフトオフの工程適用が可能であり、剥離した出発基板の再利用により、エピコストを低減させることができる。
【0088】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。