(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】スポンジ形成性シリコーンゴム組成物およびシリコーンゴムスポンジ
(51)【国際特許分類】
C08J 9/28 20060101AFI20221025BHJP
C08K 3/20 20060101ALI20221025BHJP
C08L 83/07 20060101ALI20221025BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20221025BHJP
C08K 5/5415 20060101ALI20221025BHJP
C08K 13/02 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
C08J9/28 102
C08J9/28 CFH
C08K3/20
C08L83/07
C08L83/05
C08K5/5415
C08K13/02
(21)【出願番号】P 2019568999
(86)(22)【出願日】2019-01-18
(86)【国際出願番号】 JP2019001478
(87)【国際公開番号】W WO2019150991
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2022-01-11
(31)【優先権主張番号】P 2018016829
(32)【優先日】2018-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】719000328
【氏名又は名称】ダウ・東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】入江 正和
【審査官】千葉 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-189496(JP,A)
【文献】特開2008-214625(JP,A)
【文献】国際公開第2017/110565(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J3/00-3/28;99/00
C08J9/00-9/42
C08K3/00-13/08
C08L1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン 100質量部、
(B)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン{(A)成分中のアルケニル基1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が0.4~20モルとなる量}、
(C)水 20~1000質量部、
(D)増粘剤{(C)成分100質量部に対して0.01~15質量部}、
(E)界面活性剤 0.1~15質量部、
(F)ケイ素原子結合アルコキシ基を有するシラン化合物もしくはその部分加水分解縮合物 0.1~20質量部、および
(G)ヒドロシリル化反応用触媒(本組成物を架橋させるのに十分な量)
から少なくともな
り、前記(F)成分が、メチルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、メチルシリケート、またはエチルシリケートであるスポンジ形成性シリコーンゴム組成物。
【請求項2】
(A)成分が、(A-1)分子鎖末端にアルケニル基を平均2個有し、分子鎖側鎖にアルケニル基を有さないジオルガノポリシロキサン 10~90質量%、および(A-2)分子鎖側鎖にアルケニル基を少なくとも2個有するジオルガノポリシロキサン 10~90質量%からなるオルガノポリシロキサンである、請求項1に記載のスポンジ形成性シリコーンゴム組成物。
【請求項3】
(D)成分が、無機系増粘剤、セルロース繊維、水溶性ポリマー、吸水性ポリマー、前記無機系増粘剤と前記水溶性ポリマーとからなる親水性複合物、および前記無機系増粘剤と前記吸水性ポリマーとからなる親水性複合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の増粘剤である、請求項1に記載のスポンジ形成性シリコーンゴム組成物。
【請求項4】
(D)成分の無機系増粘剤がスメクタイトクレーである、請求項3に記載のスポンジ形成性シリコーンゴム組成物。
【請求項5】
(E)成分が、(E-1)HLBの値が3以上であるノニオン系界面活性剤、および(E-2)HLBの値が3未満であるノニオン系界面活性剤からなる界面活性剤{但し、(E-2)成分に対する(E-1)成分の質量比が少なくとも1である。}である、請求項1に記載のスポンジ形成性シリコーンゴム組成物。
【請求項6】
さらに、(H)ヒドロシリル化反応抑制剤を、(A)成分100質量部に対して0.001~5質量部含有する、請求項1乃至
5のいずれか1項に記載のスポンジ形成性シリコーンゴム組成物。
【請求項7】
さらに、(I)補強性シリカ微粉末を、(A)成分100質量部に対して40質量部以下含有する、請求項1乃至
6のいずれか1項に記載のスポンジ形成性シリコーンゴム組成物。
【請求項8】
請求項1乃至
7のいずれか1項に記載のスポンジ形成性シリコーンゴム組成物を架橋した後、シリコーンゴムから水を除去して得られるシリコーンゴムスポンジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポンジ形成性シリコーンゴム組成物、および該組成物を架橋した後、水を除去して得られるシリコーンゴムスポンジに関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンゴムスポンジは、耐熱性、耐候性に優れ、軽量であることから、自動車部品;複写機やプリンター等の画像形成装置のロールやベルト;その他、パッキング、ガスケット、Oリング等の各種シール部品等に使用されている。
【0003】
このようなシリコーンゴムスポンジを形成するためのシリコーンゴム組成物としては、例えば、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合アルケニル基を有するジオルガノポリシロキサン、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン、スメクタイトクレーを含有する水、ノニオン系界面活性剤、およびヒドロシリル化反応用触媒からなるスポンジ形成性シリコーンゴム組成物(特許文献1参照)、分子鎖両末端がアルケニル基で封鎖され、分子鎖側鎖にアルケニル基を有さないジオルガノポリシロキサン、分子鎖側鎖にアルケニル基を少なくとも2個有するジオルガノポリシロキサン、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン、水とスメクタイトクレーからなる混合物、ノニオン系界面活性剤、ヒドロシリル化反応用触媒、および硬化遅延剤からなるスポンジ形成性シリコーンゴム組成物(特許文献2参照)が知られている。そして、このようなシリコーンゴム組成物を均一な乳化状態で硬化した後、得られるシリコーンゴムから水を除去することによりシリコーンゴムスポンジを形成することができる。
【0004】
しかし、このようなスポンジ形成性シリコーンゴム組成物により得られるシリコーンゴムスポンジは、吸水性や保水性が乏しく、その用途が限定されるという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-346248号公報
【文献】特開2008-214625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、吸水性や保水性が優れるシリコーンゴムスポンジを形成するスポンジ形成性シリコーンゴム組成物を提供することにある。また、本発明の他の目的は、吸水性や保水性が優れ、吸水しても体積膨張しにくいシリコーンゴムスポンジを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のスポンジ形成性シリコーンゴム組成物は、
(A)一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン 100質量部、
(B)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン{(A)成分中のアルケニル基1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が0.4~20モルとなる量}、
(C)水 20~1000質量部、
(D)増粘剤{(C)成分100質量部に対して0.01~15質量部}、
(E)界面活性剤 0.1~15質量部、
(F)ケイ素原子結合アルコキシ基を有するシラン化合物もしくはその部分加水分解縮合物 0.1~20質量部、および
(G)ヒドロシリル化反応用触媒(本組成物を架橋させるのに十分な量)
から少なくともなることを特徴とする。
【0008】
(A)成分は、(A-1)分子鎖末端にアルケニル基を平均2個有し、分子鎖側鎖にアルケニル基を有さないジオルガノポリシロキサン 10~90質量%、および(A-2)分子鎖側鎖にアルケニル基を少なくとも2個有するジオルガノポリシロキサン 10~90質量%からなるオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0009】
(D)成分は、無機系増粘剤、セルロース繊維、水溶性ポリマー、吸水性ポリマー、前記無機系増粘剤と前記水溶性ポリマーとからなる親水性複合物、および前記無機系増粘剤と前記吸水性ポリマーとからなる親水性複合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の増粘剤であることが好ましく、前記無機系増粘剤はスメクタイトクレーであることが好ましい。
【0010】
(E)成分は、(E-1)HLBの値が3以上であるノニオン系界面活性剤、および(E-2)HLBの値が3未満であるノニオン系界面活性剤からなる界面活性剤{但し、(E-2)成分に対する(E-1)成分の質量比が少なくとも1である。}であることが好ましい。
【0011】
(F)成分は、メチルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、メチルシリケート、またはエチルシリケートであることが好ましい。
【0012】
本組成物は、さらに、(H)ヒドロシリル化反応抑制剤を、(A)成分100質量部に対して0.001~5質量部含有することが好ましい。
【0013】
また、本組成物は、さらに、(I)補強性シリカ微粉末を、(A)成分100質量部に対して40質量部以下含有することが好ましい。
【0014】
本発明のシリコーンゴムスポンジは、上記のスポンジ形成性シリコーンゴム組成物を架橋した後、シリコーンゴムから水を除去して得られることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明のスポンジ形成性シリコーンゴム組成物は、吸水性や保水性が良好であるシリコーンゴムスポンジを成形性良く形成できるという特徴がある。また、本発明のシリコーンゴムスポンジは、吸水性や保水性が良好であり、吸水しても体積膨張しにくいとい特徴がある。
【発明を実施するための形態】
【0016】
はじめに、本発明のスポンジ形成性シリコーンゴム組成物を詳細に説明する。
【0017】
(A)成分は本組成物の主剤であり、一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンである。(A)成分中のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ペンテニル基、ノネニル基、デセニル基、ドデセニル基等の炭素原子数2~12のアルケニル基が例示され、好ましくは、ビニル基である。このアルケニル基の結合位置は限定されず、分子鎖末端のケイ素原子および/または分子鎖中のケイ素原子に結合していてもよい。また、(A)成分中のアルケニル基以外のケイ素原子結合有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の炭素原子数1~12のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等の炭素数5~12のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等の炭素数6~12のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等の炭素数7~12のアラルキル基;およびこれらの基の水素原子の一部または全部をフッ素、塩素等のハロゲン原子で置換した基が例示され、好ましくは、メチル基、フェニル基である。
【0018】
(A)成分の分子構造は限定されず、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、分岐鎖状、環状、樹脂状が例示され、好ましくは、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状である。(A)成分としては、これらの分子構造を有する2種以上のオルガノポリシロキサンの混合物であってもよい。
【0019】
このような(A)成分としては、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジフェニルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジフェニルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、およびこれらのオオルガノポリシロキサンの2種以上の混合物が例示される。
【0020】
また、(A)成分の粘度は限定されないが、25℃における粘度が50mPa・s以上、または100mPa・s以上であり、一方、100,000mPa・s以下であることが好ましい。これは、(A)成分の粘度が上記下限以上であり、上記上限以下であると、得られるシリコーンゴム組成物の乳化物が安定で、均一な気泡を有するシリコーンゴムスポンジが得られやすいからである。なお、このオルガノポリシロキサンの25℃における粘度は、例えば、JIS K7117-1に準拠したB型粘度計によって測定することができる。
【0021】
このような(A)成分は、(A-1)分子鎖末端にアルケニル基を平均2個有し、分子鎖側鎖にアルケニル基を有さないジオルガノポリシロキサンと(A-2)分子鎖側鎖にアルケニル基を少なくとも2個有するジオルガノポリシロキサンの混合物であることが好ましい。
【0022】
(A-1)成分は、分子鎖末端にアルケニル基を平均2個有し、分子鎖側鎖にアルケニル基を有さないジオルガノポリシロキサンであり、具体的には、ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、主鎖がジメチルシロキサン単位の繰り返しからなり、主鎖の一部が分岐し、分子鎖末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された、分岐鎖状のジメチルポリシロキサンが例示され、好ましくは、主鎖が実質的に直鎖状であるジオルガノポリシロキサンである。
【0023】
(A-2)成分は、分子鎖側鎖にアルケニル基を少なくとも2個有するジオルガノポリシロキサンであり、具体的には、トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、主鎖がジメチルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位の繰り返しからなり、主鎖の一部が分岐し、分子鎖末端がトリメチルシロキシ基で封鎖された、分岐鎖状のジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体が例示され、好ましくは、主鎖が実質的に直鎖状であるジオルガノポリシロキサンである。
【0024】
(A-1)成分と(A-2)成分の配合比は限定されないが、得られるシリコーンゴムスポンジの収縮率が改善することから、(A)成分は、(A-1)成分 10~90質量%、および(A-2)成分 10~90質量%からなることが好ましい。
【0025】
(B)成分は本組成物の架橋剤であり、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンである。(B)成分中のケイ素原子結合水素原子は分子鎖末端のケイ素原子および/または分子鎖中のケイ素原子に結合していてもよい。(B)成分の分子構造は限定されず、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、分岐鎖状、環状、樹枝状が例示され、好ましくは、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状である。(B)成分としては、直鎖状のオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0026】
このような(B)成分としては、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、H(CH3)2SiO1/2単位およびSiO4/2単位からなるオルガノポリシロキサン、ならびにH(CH3)2SiO1/2単位、(CH3)3SiO1/2単位およびSiO4/2単位からなるオルガノポリシロキサンが例示される。
【0027】
また、(B)成分の粘度は限定されないが、25℃における動粘度が1mm2/s以上、1,000mm2/s以下であることが好ましい。なお、このオルガノポリシロキサンの25℃における動粘度は、JIS Z8803に準拠したウベローデ型粘度計によって測定することができる。
【0028】
(B)成分の含有量は、(A)成分中のアルケニル基1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が0.4~20モルの範囲内となる量であり、好ましくは、その下限が1.0モルとなる量、1.5モルとなる量、または1.8モルとなる量であり、一方、その上限が10モルとなる量、または5モルとなる量である。これは、(B)成分の含有量が上記範囲内であると、得られるシリコーンゴムスポンジの圧縮永久歪が改善されるからである。
【0029】
(C)成分の水は、本組成物を架橋した後、シリコーンゴムから除去されることで、該シリコーンゴムを多孔質状とするための成分である。(C)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して20~1000質量部の範囲内であり、好ましくは、その下限が20質量部、30質量部、40質量部、または50質量部であり、一方、その上限が800質量部、650質量部、または500質量部である。これは、(C)成分の含有量が上記範囲の下限以上であると、得られるシリコーンゴムスポンジが多孔質状で均一な気泡を有するようになりやすいからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、シリコーンゴムスポンジを得られやすいからである。
【0030】
(C)成分の水は限定されないが、水道水、井戸水、イオン交換水、蒸留水等を用いることができる。特に、(A)成分への分散が安定するという点から、(C)成分はイオン交換水であることが好ましい。
【0031】
(D)成分の増粘剤は、(C)成分の水を増粘させ、(C)成分の(A)成分中への分散を容易にし、(A)成分中の(C)成分の分散状態を安定にし、得られるシリコーンゴムを均一な多孔質状とするための成分である。このような(D)成分としては、無機系増粘剤、セルロース繊維、水溶性ポリマー、吸水性ポリマー、前記無機系増粘剤と前記水溶性ポリマーとからなる親水性複合物、および前記無機系増粘剤と前記吸水性ポリマーとからなる親水性複合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0032】
(D)成分の無機系増粘剤は、天然または合成の無機系増粘剤であり、ベントナイト(モンモリロナイト)、ヘクトライト、サポナイト、ソーコナイト、バイデライト、およびノントロナイト等の粘土鉱物を主成分とするベントナイト等の天然または合成のスメクタイトクレーが例示される。このようなスメクタイトクレーは、例えば、水熱合成品であるスメクトン(クニミネ工業株式会社の登録商標)、ルーセンタイト(コープケミカル株式会社の登録商標)、天然精製品であるクニピア(クニミネ工業株式会社の登録商標:)、ベンゲル(株式会社ホージュンの登録商標)、ベントン(エレメンティス株式会社の登録商標)、ビーガム(バンダービルト社の登録商標)として入手可能である。水に分散させたときの粘度の上昇が大きく、(E)成分の含有量を少なくすることができることから、この無機系増粘剤は、ベントナイト(モンモリロナイト)、ヘクトライト、またはサポナイトであることが好ましい。これらのスメクタイトクレーのpHはシリコーンゴムスポンジの耐熱性を維持する点からpH5.0~9.0の範囲内であることが好ましい。また、このようなスメクタイトクレーとポリアクリル酸等の水溶性ポリマーまたは吸水性ポリマーとからなる親水性複合物を用いてもよい。
【0033】
(D)成分のセルロース繊維は、天然または合成のセルロース繊維を化学処理や物理処理によりナノファイバー化したものである。このようなセルロース繊維は、分散性、増粘性等の観点から、好ましくは、その数平均繊維径が2~150nmの範囲内、2~100nmの範囲内、または、2~10nmの範囲内である。これは、数平均繊維径が上記範囲内であると、水に分散させた際に沈降しにくく、流動性を保持して増粘できるからである。
【0034】
(D)成分のセルロース繊維は、第一工業製薬株式会社製のセルロースナノファイバーの水分散液(商品名:Rheocrysta C-2SP)として入手可能である。
【0035】
(D)成分の水溶性ポリマーとしては、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、カルボキシレートのナトリウム塩、カルボキシセルロースのナトリウム塩、メチルセルロース、セルロースエーテル、ヒドロキシエチルセルロース、変性デンプン、ポリビニルアルコール、ポリアクリレートあるいはポリアクリレートのナトリウム塩が例示される。
【0036】
また、(D)成分の吸水性ポリマーとしては、ポリアクリル酸塩架橋体、ポリオキシアルキレン系吸水性樹脂が例示される。
【0037】
(D)成分の含有量は、(C)成分100質量部に対して0.01~15質量部の範囲内であり、好ましくは、その下限が0.05質量部、または0.1質量部であり、一方、その上限は10質量部、または5質量部である。これは、(D)成分の含有量が上記範囲の下限以上であると、(C)成分を十分に増粘できるからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、シリコーンゴム組成物の乳化を安定させることができるからである。
【0038】
(E)成分は、水をシリコーンゴム組成物中に均一に乳化させ、得られるシリコーンゴムを均一な多孔質状とするための界面活性剤である。このような(E)成分としては、アニオン系、カチオン系、両性イオン系、およびノニオン系の界面活性剤が例示され、具体的には、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、スクロース脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリプロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド等のノニオン系界面活性剤;ポリシロキサン・ポリオキシエチレングラフト共重合体等のポリオルガノシロキサンからなるノニオン系界面活性剤;脂肪族アミン塩、第4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩等のカチオン系界面活性剤;高級脂肪酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ポリエチレングリコール硫酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤;カルボキシベタイン型またはグリシン型の両性イオン系界面活性剤が例示される。特に、本組成物のヒドロシリル化反応による架橋に影響が少ないことからノニオン系の界面活性剤であることが好ましい。
【0039】
これらの界面活性剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。乳化剤のHLB値(なお、界面活性剤を2種以上併用するときは、その重量平均HLB値)は、好ましくは、1以上、10以下、1.5以上、6未満、または、3.5以上、6未満である。
【0040】
(E)成分としては、(E-1)HLBの値が3以上であるノニオン系界面活性剤、および(E-2)HLBの値が3未満であるノニオン系界面活性剤からなる界面活性剤を用いることが好ましい。(E-2)成分に対する(E-1)成分の質量比は少なくとも1であり、好ましくは、少なくとも5、少なくとも8、少なくとも10、あるいは少なくとも15である。また、(E-2)成分に対する(E-1)成分の質量比は、多くとも100以下であることが好ましく、より好ましくは、多くとも80、多くとも70、多くとも60、あるいは多くとも50である。これは、この質量比が上記の下限以上であれば、均一で微細な連続気泡構造を有する低密度のスポンジを形成できるからであり、一方、上記の上限以下であれば、(A)成分中に(C)成分および(D)成分を安定性良く分散することができ、結果として、均一で微細な連続気泡構造を有するシリコーンゴムスポンジを形成できるからである。
【0041】
(E)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.1~15質量部の範囲内であり、好ましくは、その下限は0.2質量部であり、一方、その上限は10質量部である。これは、(E)成分の含有量が上記範囲の下限以上であると、(C)成分を(A)成分中に均一に分散させることができるからであり、一方、上記範囲の下限以下であると、得られるシリコーンゴムスポンジの機械的特性や電気的特性に影響を与えないからである。
【0042】
(F)成分は、本組成物を硬化して得られるシリコーンゴムスポンジに吸水性や保水性を付与するための、ケイ素原子結合アルコキシ基を有するシラン化合物もしくはその部分加水分解縮合物である。このような(F)成分としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、メチルシリケート、またはエチルシリケートが例示され、好ましくは、メチルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、メチルシリケート、またはエチルシリケートである。
【0043】
(F)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して0.1~20質量部の範囲内であり、好ましくは、1~10質量部の範囲内である。これは、(F)成分の含有量が上記範囲の下限以上であると、吸水性や保水性が優れるシリコーンゴムスポンジを形成できるからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、均一で微細な連続気泡構造を有するシリコーンゴムスポンジを形成できるからである。
【0044】
(G)成分は、本組成物のヒドロシリル化反応を促進するためのヒドロシリル化反応用触媒であり、例えば、白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒が例示され、好ましくは白金系触媒である。このような(G)成分としては、塩化白金酸;アルコール変性塩化白金酸;塩化白金酸とオレフィン類、ビニルシロキサン又はアセチレン化合物との配位化合物;白金とオレフィン類、ビニルシロキサン又はアセチレン化合物との配位化合物、これらを熱可塑性樹脂中に分散させた粉末状白金系触媒等の白金系触媒;その他、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム等のパラジウム系触媒、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム等のロジウム系触媒が例示される。
【0045】
(G)成分の含有量は本組成物を架橋させるに十分な量であり、具体的には、(A)成分および(B)成分の合計量に対して、(G)成分中の触媒金属が質量単位で0.01~500ppmの範囲内となる量、あるいは0.1~100ppmの範囲内となる量であることが好ましい。
【0046】
本組成物には、本組成物の架橋速度や作業可使時間を調整する目的で、さらに(H)ヒドロシリル化反応抑制剤を含有してもよい。(H)成分としては、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、3-フェニル-1-ブチン-3-オール、1-エチニル-1-シクロヘキサノール等のアルキンアルコール;3-メチル-3-ペンテン-1-イン、3,5-ジメチル-3-ヘキセン-1-イン等のエンイン化合物;テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン、テトラメチルテトラヘキセニルシクロテトラシロキサン、分子鎖両末端ジメチルヒドロキシシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体オリゴマー、分子鎖両末端ジメチルヒドロキシシロキシ基封鎖メチルビニルシロキサンオリゴマー等のアルケニル基含有低分子量シロキサン;メチル-トリス(1,1-ジメチル-2-ブチンオキシ)シラン、ビニル-トリス(1,1-ジメチル-2-ブチンオキシ)シラン等のアルキン含有シランが例示される。
【0047】
(H)成分の含有量は限定されず、本組成物の使用方法や成形方法に応じて適宜選択されるが、本組成物の架橋速度や作業可使時間を十分に調整できることから、好ましくは、(A)成分100質量部に対して0.001質量部~5質量部の範囲内である。
【0048】
本組成物には、得られるシリコーンゴムスポンジの機械的強度を向上させる目的で、さらに(I)補強性シリカ微粉末を含有してもよい。(I)成分としては、ヒュームドシリカ、沈降シリカが例示される。また、これらのシリカ微粉末を、鎖状ポリオルガノシロキサン、環状ポリオルガノシロキサン、ヘキサメチルジシラザン、各種オルガノシラン等で表面処理してもよい。また、(I)成分は、好ましくは、BET吸着法によるその比表面積が50~350m2/g、または80~250m2/gである。
【0049】
(I)成分の含有量は、好ましくは、(A)成分100質量部に対して、40質量部以下であり、好ましくは25質量部以下である。これは、(I)成分の含有量が上記範囲の上限以下であると、得られるシリコーンゴムスポンジの気泡の均一性や細かさを損なうことなく、機械的強度を向上できるからである。
【0050】
本組成物には、得られるシリコーンゴムスポンジに電気伝導性を付与させる目的で導電性充填剤を含有してもよい。この導電性充填剤としては、カーボンブラック、炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラファイト等のカーボン系導電剤;金、銀、ニッケル等の金属粉;導電性酸化亜鉛、導電性酸化チタン、導電性酸化アルミニウム;各種フィラー表面に金属メッキ処理するなどのフィラー表面に導電被覆処理した導電性充填剤;およびこれらの2種以上の混合物が例示される。少量の添加で良好な導電性が得られることから、この導電性充填剤はカーボンブラックであることが好ましく、具体的には、アセチレンブラック、コンダクティブファーネスブラック(CF)、スーパーコンダクティブファーネスブラック(SCF)、エクストラコンダクティブファーネスブラック(XCF)、コンダクティブチャンネルブラック(CC)、および1500℃程度の高温で熱処理されたファーネスブラックまたはチャンネルブラックが例示される。この導電性充填剤の含有量は限定されないが、良好なスポンジを得ることができることから、好ましくは、(A)成分100質量部に対して100質量部以下、または70質量部以下である。
【0051】
本組成物には、本発明の目的を損なわない限り、その他任意の成分として、ヒュームド酸化チタン等のシリカ以外の補強充填剤;石英粉末、珪藻土、アルミノ珪酸、酸化鉄、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化セリウム、マイカ、クレイ、炭酸亜鉛等の非補強充填剤;これらの充填剤をオルガノシラン、ポリオルガノシロキサン等の有機ケイ素化合物で表面処理した充填剤;その他、防腐剤、防錆剤、顔料、耐熱剤、難燃剤、内部離型剤、可塑剤、受酸剤、無官能のシリコーンオイルを含有してもよい。
【0052】
本組成物は、(A)成分~(G)成分、および必要に応じてその他任意の成分を混合することにより調製することができる。本組成物を調製するため、ホモミキサー、パドルミキサー、ホモディスパー、コロイドミル、真空混合攪拌ミキサー等の公知の混練手段を用いることができる。本組成物を調製する方法としては、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分、および(F)成分をミキサーに投入し、所定時間攪拌混合し、使用直前に(G)成分を、例えば、スタティックミキサーやダイナミックミキサー等の混合装置を用いて混合する方法;(A)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分、(F)成分、および(G)成分をミキサーに投入し、所定時間攪拌混合し、使用直前に(B)成分を、例えば、スタティックミキサーやダイナミックミキサー等の混合装置を用いて混合する方法;(A)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分、および(F)成分をミキサーに投入し、所定時間攪拌混合し、使用直前に(B)成分と(G)成分を、例えば、スタティックミキサーやダイナミックミキサー等の混合装置を用いて混合する方法が例示される。
【0053】
また、本組成物を調製する際、その保存安定性の点から、
A液:(A)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分、(F)成分、および(G)成分からなり、(B)成分を含まない組成物、
B液:(A)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分および(F)成分からなり、(B)成分と(G)成分を含まない組成物、
C液:(B)成分からなり、(C)成分、(D)成分、(E)成分、(F)成分、および(G)成分を含まない組成物
からなる3液型スポンジ形成性シリコーンゴム組成物、または、
A‘液:(A)成分、(G)成分、(F)成分、および必要に応じて(E)成分からなり、(B)成分、(C)成分、および(D)成分を含まない組成物、
B‘液:(B)成分、および必要に応じて(E)成分、(F)成分からなり、(C)成分、(D)成分、および(G)成分を含まない組成物、
C‘液:(C)成分、(D)成分および必要に応じて(E)成分からなり、(A)成分、(B)成分、(F)成分、および(G)成分を含まない組成物
からなる3液型スポンジ形成性シリコーンゴム組成物として保存し、成形に供する直前に3液を、例えば、スタティックミキサーやダイナミックミキサー等の混合装置を用いて混合することが好ましい。また、
A‘’液:(A)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分、(F)成分、および(G)成分からなり、(B)成分を含まない組成物と
B‘’液:(B)成分からなり、(C)成分、(D)成分、(E)成分、(F)成分、および(G)成分を含まない組成物
からなる2液型スポンジ形成性シリコーンゴム組成物として保存し、成形に供する直前に2液を、例えば、スタティックミキサーやダイナミックミキサー等の混合装置を用いて混合することが好ましい。
【0054】
本組成物から種々の方法でシリコーンゴムスポンジを形成することができる。具体的には、本組成物を均一に乳化した後、成型用の金型のキャビティに注入し、加圧下で100℃未満、好ましくは50~90℃の温度に保持して含水状態のシリコーンゴム成形体を成形し、金型から取り出して120~250℃、より好ましくは、120~180℃で2次加硫して含水状態のシリコーンゴム成形体から水を除去することにより、微細で均一な気泡を有するシリコーンゴムスポンジを得ることができる。また、本組成物をノズルからロッド状に吐出し、例えば80~100℃の熱水中に導入して硬化させ、硬化物を熱風乾燥することにより紐状のシリコーンゴムスポンジを作製することもできる。また、本組成物を樹脂フィルム等の剥離性基材上にコーティングし、例えば50~120℃に加熱して硬化させ、熱風乾燥して水を除去する、あるいは、加熱して水を除去しつつ硬化させた後、剥離性基材を除くことによりシリコーンゴムスポンジシートを形成することができる。あるいは、本組成物を合成繊維織物やガラスクロス上にコーティングし、例えば50~120℃に加熱して硬化させ、熱風乾燥して水を除去する、あるいは、加熱して水を除去しつつ硬化させることによりシリコーンゴムスポンジコーティング布を形成することができる。
【0055】
次に、本発明のシリコーンゴムスポンジを詳細に説明する。
【0056】
本発明のシリコーンゴムスポンジは、上記のスポンジ形成性シリコーンゴム組成物をヒドロシリル化反応により架橋した後、得られたシリコーンゴムから水を除去するか、または該組成物をヒドロシリル化反応により架橋させながら水を除去することを特徴とする。このシリコーンゴムスポンジは、吸水性や保水性が優れ、吸水しても体積膨張しにくい、すなわち、膨潤しにくいので、冷却シート材料や吸水パッド材料として好適である。また、このシリコーンゴムスポンジは、水の他、無機塩の水溶液、有機化合物の水溶液、あるいは親水性の有機化合物の吸収材や保持材としても好適である。
【0057】
このシリコーンゴムスポンジ層の厚さは限定されないが、ゴム弾性を有効に利用することから、好ましくは、0.05~80mmの範囲内、または0.1~50mmの範囲内である。
【実施例】
【0058】
本発明のスポンジ形成性シリコーンゴム組成物およびシリコーンゴムスポンジを実施例により詳細に説明する、なお、実施例中の粘度は25℃における値である。
【0059】
<密度>
シリコーンゴムスポンジの密度をJIS K 6268に準じて測定した。
【0060】
<硬さ(Asker C)>
シリコーンゴムスポンジの硬さをJIS K 7312に規定されたタイプC硬さ試験機を用いた試験方法に準じて測定した。なお、測定においては、厚さ6mmのシリコーンゴムスポンジ試験片を2枚重ねて使用した。
【0061】
<引張強さ、伸び>
シリコーンゴムスポンジの引張強さ、および伸びをJIS K 6251に準じて測定した。
【0062】
<気泡の状態>
シリコーンゴムスポンジ試験片の断面を目視にて観察し、
・断面全体にわたって気泡状態が均一なものを均一、
・一部過大気泡が認められるものを不均一
として評価した。
【0063】
<平均気泡径>
シリコーンゴムスポンジ試験片をカミソリ刃で切断した中心部分を走査型電子顕微鏡にて観察し、気泡の直径を測定した。
【0064】
[吸水性および保水性]
厚さ2mmの成形シートから、幅15mm、長さ100mmの短冊状の試験片を作成し、100ccの水を入れた300ccの容器に、短冊状の試験片の下側20mmが、水に接触した状態で、25℃、24時間放置した。24時間後に試験片を取り出し、水を吸い上げた高さを測定し、吸水性の指標とした。試験片全体が吸水した場合は、100mmとして、100mmが最大値となる。
【0065】
また、試験片の初期の質量に対する吸水後の試験片の質量増加を下記式に従って、百分率で求めた値を保水性の指標とした。
【0066】
【0067】
[実施例1~5、比較例1、2]
下記のシリカマスターバッチ、(A)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分、(F)成分、およびその他の成分を表1の配合比でホモミキサー(特殊機化株式会社製)に投入し、25℃で均一になるまで混合した。次いで、得られた混合物に、(B)成分を配合し、脱気してスポンジ形成性シリコーンゴム組成物を調製した。なお、シリコーンゴム組成物中、(A)成分に相当する成分中のビニル基の合計1モルに対する(B)成分に相当する成分中のケイ素原子結合水素原子のモル比を3とした。
【0068】
得られたスポンジ形成性シリコーンゴム組成物を、圧縮成形機を用いて、90℃/10分の条件下で架橋・硬化させ、含水状態のシリコーンゴム試験片を作製した。次に、この試験片を150℃で4時間、開放系に放置して試験片中の水を除去し、シリコーンゴムスポンジ試験片を得た。このシリコーンゴムスポンジ試験片を用いて、密度、硬さ、引張強さ、伸び、気泡の状態、気泡径、吸水性、保水性を測定し、その結果を表1に示した。
【0069】
シリカマスターバッチとして、粘度40Pa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ビニル基含有量=0.09質量%) 100質量部、BET比表面積225m2/gのフュームドシリカ 50質量部、ヘキサメチルジシラザン 10質量部、水 2質量部、粘度20mPa・sの分子鎖両末端ジメチルヒドロキシシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体(ビニル基含有量=約10.9質量%) 0.2質量部をロスミキサーに投入し、室温で均一になるまで混合した後、減圧下、200℃で2時間加熱処理したものを用いた。
【0070】
(A-1)成分として、次の成分を用いた。
(a-1)成分:粘度9Pa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ビニル基含有量=0.14質量%)。
(a-2)成分:粘度2Pa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ビニル基含有量=0.23質量%)。
【0071】
(A-2)成分として、次の成分を用いた。
(a-3)成分:粘度40Pa・sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルメチルビニルポリシロキサン(ビニル基含有量=0.50質量%)。
(a-4)成分:粘度350mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体(ビニル基含有量=約1.17質量%)。
(a-5)成分:粘度40Pa・sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体(ビニル基含有量=0.13質量%)。
【0072】
(B)成分として、粘度63mPa・sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体(ケイ素原子結合水素原子含有量=約0.70質量%)を用いた。
【0073】
(C)成分としてイオン交換水を用い、(D)成分としてスメクタイトクレー(株式会社ホージュン製の有機ポリマー複合精製ベントナイト;pH6.5)を用い、スメクタイトクレー 0.85質量部とイオン交換水 99.15質量部をホモミキサーに投入し、室温で均一になるまで混合して調製した、水とスメクタイトクレーの混合物を調製した。
【0074】
(E)成分として、次の成分を用いた。
(e-1)成分:HLB4.3のノニオン系界面活性剤(ソルビタン脂肪酸エステル、花王社製のレオドールSP-O10V)。
(e-2)成分:HLB1.8のノニオン系界面活性剤(ソルビタン脂肪酸エステル、花王社製のレオドールSP-O30V)。
【0075】
(F)成分として、次の成分を用いた。
(f-1)成分:3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
(f-2)成分:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
(f-3)成分:メチルシリケート(多摩工業株式会社製のシリケート40)
【0076】
(G)成分として、白金の1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン溶液(白金金属含有量=約4000ppm)を用いた。
【0077】
(H)成分として、次の成分を用いた。
(h-1)成分:粘度20mPa・sの分子鎖両末端ジメチルヒドロキシシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体(ビニル基含有量=約10.9質量%)
(h-2)成分:1-エチニル-1-シクロヘキサノール 2質量部と粘度10Pa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ビニル基含有量=0.13質量%) 98質量部の混合物を用いた。
【0078】
顔料マスターバッチとして、ベンガラ(商品名:バイフェロクス、バイエル社製) 40質量部と粘度10Pa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ビニル基含有量=0.13質量%) 60質量部の混合物を用いた。
【0079】
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明のスポンジ形成性シリコーンゴム組成物は、吸水性や保水性が優れるシリコーンゴムスポンジを形成できるので、断熱材、吸音材、クッション、パッキン、ガスケット、パッド等の過酷な環境下で使用されるシリコーンゴムスポンジの形成用途に好適である。