(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】製麺用粉体組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 7/109 20160101AFI20221025BHJP
A23L 33/21 20160101ALI20221025BHJP
A23L 33/175 20160101ALI20221025BHJP
A23L 33/185 20160101ALI20221025BHJP
【FI】
A23L7/109 B
A23L33/21
A23L33/175
A23L33/185
(21)【出願番号】P 2018052201
(22)【出願日】2018-03-20
【審査請求日】2020-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】株式会社ニップン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100156982
【氏名又は名称】秋澤 慈
(72)【発明者】
【氏名】矢嶋 幹数
【審査官】田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-002000(JP,A)
【文献】特開平07-079688(JP,A)
【文献】特開2000-197459(JP,A)
【文献】特開平10-262588(JP,A)
【文献】特開平11-346689(JP,A)
【文献】特開2017-023050(JP,A)
【文献】特開平10-215803(JP,A)
【文献】特開2017-012114(JP,A)
【文献】日本畜産学会報, 1983年,第54巻, 第10号,p.661-666
【文献】乾燥卵白とは?乾燥卵白の使い方をご紹介,たべるご, 2017年8月29日,p.1-3,https://taberugo.net, 検索日:2021年10月21日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 7/109-7/113
A23L 31/00-33/29
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
難消化性澱粉、バイタルグルテン及び小麦粉からなる混合物(A)並びに含硫還元剤である成分(B)を含有する製麺用粉体組成物であって、
小麦粉の含有量が、混合物(A)の全量に対して20~60質量%であ
り、
難消化性澱粉の含有量が、混合物(A)の全量に対して26.7~59.4質量%であり、
バイタルグルテンの含有量が、混合物(A)の全量に対して13.3~20.6質量%であり、
成分(B)の含有量が、混合物(A)100質量部に対して0.00005~0.6質量部であり、
含硫還元剤が、システインであり、
バイタルグルテンの添加量が、混合物(A)のタンパク質総量が10~30質量%になるように調節されてなる、
前記組成物(ただし、前記組成物が難消化性デキストリンを含む場合を除く)。
【請求項2】
混合物(A)100質量部に対して成分(B)を
0.0001~0.4質量部含有する、請求項1に記載の製麺用粉体組成物。
【請求項3】
難消化性澱粉の含有量が、混合物(A)の全量に対して30~59.4質量%である、請求項1
又は2に記載の製麺用粉体組成物。
【請求項4】
小麦粉の含有量が、混合物(A)の全量に対して20~50質量%である、請求項1~3のいずれか1項に記載の製麺用粉体組成物。
【請求項5】
小麦粉の含有量が、混合物(A)の全量に対して20~30質量%であり、難消化性澱粉の含有量が、混合物(A)の全量に対して51.3~59.4質量%であり、バイタルグルテンの含有量が、混合物(A)の全量に対して18.7~20.6質量%である、請求項1~4のいずれか1項に記載の製麺用粉体組成物。
【請求項6】
前記難消化性澱粉が、難消化性小麦澱粉である、請求項1~5のいずれか1項に記載の製麺用粉体組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の製麺用粉体組成物を製麺用粉原料として用いて製麺することを特徴とする製麺方法。
【請求項8】
麺が手延べ干しめんである、請求項1~7のいずれか1項に記載の製麺用粉体組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製麺用粉体組成物及び製麺用粉体組成物を使用した麺類の製造方法に関する。詳細には、難消化性澱粉、バイタルグルテン及び任意の成分として小麦粉からなる混合物(A)並びに含硫還元剤である成分(B)を含有する製麺用粉体組成物、この製麺用粉体組成物を使用した麺類の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、肥満や糖尿病などの生活習慣病の増加が大きな社会問題となっているが、その大きな原因の一つとして食習慣の変化に伴った脂質や糖質の過剰摂取が上げられる。この対策の一つとして、食品の低糖質化が考えられ、数多くの低糖質化食品が市場に流通するようになってきた。
中華麺、うどん、スパゲッティーなどの麺類は、小麦粉と任意の副原料に水を加えて捏ね上げ、定法の製麺工程を得て製造される。麺類は、その大半の原料が小麦粉であり、小麦粉には主要構成成分として澱粉質が含まれており、それが糖質含量を押し上げる原因となっている。麺類を低糖質化する有効な手段として、小麦粉(つまり澱粉質)を食物繊維等に置換することが知られている。食物繊維は、様々な健康機能を有していることから、低糖質化のための澱粉質代替原料として注目されている。なお本明細書において、「低糖質麺」とは麺に使用される小麦粉などの澱粉質原料の使用量を通常より少なくし、澱粉代替原料を使用して全体として糖質含量を低減した麺を言う。特許文献1では、難消化性小麦澱粉を30~50質量%、難消化性デキストリンを2~15質量%及びバイタルグルテンを5~23質量%を含む製麺用粉体組成物が開示されており、これにより、50質量%以上の糖質を低減しつつ、通常の麺に期待される外観や食感を維持し、良好な作業性を有する麺類を製造できることが記載されている。
しかしながら、難消化性澱粉等の食物繊維素材を主体とした低糖質麺用生地は、小麦粉を主体とした生地と生地性が異なり、生地の伸展性の悪さ及び麺帯表面の荒れを十分に改善するには至っていないのが現状である。このような問題は、麺の品質にも悪影響を与えるため、低糖質麺における生地性のさらなる改良が求められている。
一方、小麦粉を主体とした製麺原料を使用した通常の麺類を改質するために、製麺原料としてシステイン等の還元剤を使用することが知られている。特許文献2では、麺類の茹でのびおよび老化を改良するための、アスコルビン酸類および含硫化合物(シスチン、グルタチオン、還元型グルタチオン、及びシステインからなる群から選ばれる1以上)を含有することを特徴とする麺類の茹でのびおよび老化改良剤が開示されている。特許文献3では、チルド麺等の麺類における澱粉の老化と食感の経時変化を抑制するための、トランスグルタミナーゼ及びキレート剤及び還元剤(グルタチオン及び/又はシステイン)を含有することを特徴とする酵素製剤が開示されている。特許文献4では、食塩を添加しなくとも麺質良好な麺類を得るための、小麦粉を主体とする穀物粉を配合してなる麺類において、前記穀物粉100質量部に対し、グルタチオンを0.02~1.0質量部含有することを特徴とする麺類が開示されている。特許文献5では、麺線の幅や厚みに拘わらず短時間で即席麺を復元するための、油脂α化澱粉及びグルタチオンを含有することを特徴とする即席麺の復元改善剤が開示されている。特許文献6では、麺線同士の結着が抑制され、茹でこぼし不要な生中華麺のための、副原料として、食塩、かんすい、食用油脂、アルコール、乳酸ナトリウム、グルタチオン、及び水と、を含む生中華麺であって、前記生中華麺の水分活性が0.85以上0.90未満であることを特徴とする生中華麺が開示されている。
しかしながら、これらの発明は小麦粉を主体とした製麺原料を使用した麺類の改良に関するものであり、低糖質麺が抱える問題を解決できるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-23050
【文献】特開2003-210126
【文献】特開2006-288218
【文献】特開平10-262588
【文献】特開2005-65505
【文献】特開2017-29079
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
生地の作業性(伸展性)に優れ、麺帯及び麺線の表面に荒れがなくつるみのある食感を有する低糖質麺を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は上記課題を解決する為鋭意研究を重ねた結果、麺類に高い含有量で難消化性澱粉を使用した場合におこる生地の作業性の低下(生地の低い伸展性、生地を麺帯や麺線とした場合に生じる表面の荒れ)や麺本来の食感への影響(主に、ボソボソとした食感)を、含硫還元剤の添加により補完できることを見いだした。具体的には難消化性澱粉、バイタルグルテン及び任意の成分として小麦粉からなる混合物(A)並びに含硫還元剤である成分(B)を所定量含有する製麺用粉体組成物を使用することで、生地の作業性(伸展性)に優れ、麺帯及び麺線の表面に荒れがなくつるみのある食感を有する低糖質麺を提供することができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は以下の通りである。
[1]難消化性澱粉、バイタルグルテン及び任意の成分として小麦粉からなる混合物(A)並びに含硫還元剤である成分(B)を含有する製麺用粉体組成物。
[2]混合物(A)100質量部に対して成分(B)を0.00005~0.6質量部含有する、前記[1]に記載の製麺用粉体組成物。
[3]含硫還元剤がシスチン、グルタチオン、還元型グルタチオン、及びシステインからなる群から選ばれる1種以上である、前記[1]又は[2]に記載の製麺用粉体組成物。
[4]難消化性小麦澱粉の含有量が、混合物(A)の全量に対して30~85質量%である、前記[1]~[3]のいずれか1項に記載の製麺用粉体組成物。
[5]小麦粉の含有量が、混合物(A)の全量に対して0~50質量%である、前記[1]~[4]のいずれか1項に記載の製麺用粉体組成物。
[6]前記難消化性澱粉が、難消化性小麦澱粉である、前記[1]~[5]のいずれか1項に記載の製麺用粉体組成物。
[7]前記[1]~[6]のいずれかに記載の製麺用粉体組成物を製麺用粉原料として用いて製麺することを特徴とする製麺方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、生地の作業性(伸展性)に優れ、麺帯及び麺線の表面に荒れがなくつるみのある食感を有する低糖質麺を提供することが出来、より高品質な製品を安定して製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本願発明の製麺用粉体組成物は、難消化性澱粉、バイタルグルテン及び任意の成分として小麦粉からなる混合物(A)並びに含硫還元剤である成分(B)を含有する製麺用粉体組成物であって、混合物(A)100質量部に対して成分(B)を0.00005~0.6質量部含有する。
【0008】
難消化性澱粉はヒトの胃及び小腸では消化されにくく、大腸に届く澱粉、および、澱粉分解物の総称である。難消化性澱粉は以下に示すようにRS1~RS4に分類されている。
RS1:雑穀のように、澱粉が物理的に硬い組織に囲まれていることで消化酵素が澱粉まで届かないタイプ(物理的に閉じ込められた澱粉)
RS2:十分に加熱されていない未糊化の澱粉やアミロースの極めて多い澱粉など、澱粉の粒子自体が消化されにくいタイプ(抵抗性澱粉粒)
RS3:澱粉を一度糊化(α化)した後、澱粉が再結晶して安定な構造(β化)をとるようになったタイプ(老化澱粉)
RS4:澱粉を高程度に化学修飾することで消化酵素が作用しにくくなったタイプ(加工澱粉)
【0009】
本発明に用いる「難消化性澱粉」は、澱粉を物理的及び/又は化学的に加工して得られる上記RS3及び/又はRS4に分類される難消化性澱粉であって、消化酵素により消化されない難消化性成分(食物繊維)の含量が少なくとも70質量%以上含まれるものをいう。
RS3に分類される難消化性澱粉としては、例えば湿熱処理、パーボイル加工、プルラナーゼ処理により得られるものが挙げられる。またRS4に分類される難消化性小麦澱粉としては、化学修飾により、エステル化やエーテル化による架橋を施したものなどが挙げられる。
好ましくは澱粉をリン酸架橋して得られる難消化性小麦澱粉であり、これは上記RS4に区分される難消化性小麦澱粉であって、澱粉を高度にリン酸架橋処理して消化酵素が極めて作用し難くなっているものをいう。
リン酸架橋処理された澱粉は、難消化性小麦澱粉と易消化性である品質改良用加工澱粉に大別される。難消化性澱粉を評価するパラメーターには膨潤度、架橋度及び食物繊維含量(プロスキー法による)が使われる。架橋度が高くても食物繊維含量が極めて低いリン酸架橋澱粉もあるため、本願発明においては難消化性澱粉であるか否かは実質的に食物繊維含量で評価し、食物繊維含量が70質量%以上であるものを難消化性澱粉に分類する。なお、RS3及びRS4の難消化性澱粉の食物繊維含量は、プロスキー法、プロスキー変法、衛新第13号の酵素-HPLC法の何れによっても測定可能である。
「難消化性澱粉」は公知の方法で製造することができるが、市販されているものを使用することもできる。原料とする澱粉には特に限定がなく、馬鈴薯やタピオカの様な根菜系、小麦や米、コーンの様な穀物系、サゴの様な樹幹系の澱粉を使用することができる。好ましくは、小麦澱粉を原料とする難消化性小麦澱粉である。市販されているものの好適な例として小麦澱粉を原料としたファイバージムRW(松谷化学社製)、タピオカ澱粉を原料としたパインスターチRT(松谷化学社製)、甘藷澱粉を原料とした松谷さつま(松谷化学社製)等が挙げられ、これらの食物繊維含量は70質量%以上である。
本発明において、難消化性澱粉の含有量は、好ましくは混合物(A)の全量に対して30~85質量%である。より好ましくは30~50質量%である。難消化性澱粉の含量が85質量%を超えると、つながりが悪くなり生地の製造が困難になる。難消化性澱粉の含量が30質量%未満でも効果は得られるが、低糖質麺とするには不十分である。
なお「難消化性デキストリン」は、コーンスターチなどの澱粉を酸存在下で焙焼して得られるデキストリンをアミラーゼ等の消化酵素で加水分解し、その内の難消化性成分を回収して得られる水溶性の食物繊維のことをいい、難消化性澱粉には分類されないが、本発明の効果を損なわない範囲で難消化性澱粉以外の任意の成分として使用することができる。
【0010】
本発明において、「バイタルグルテン」とは生のグルテンの活性を損なわないように乾燥し粉末状にしたグルテンであり、活性グルテンともいう。
本発明において、バイタルグルテンは、混合物(A)のタンパク質総含量(混合物(A)に含まれる小麦粉に含まれるタンパク質量も合わせる)が好ましくは10~30質量%となるように添加する。混合物(A)におけるタンパク質総含量が30質量%を超えると、生地のゴム感が強くなる傾向にあり、10質量%未満では、生地のつながりが悪くなる傾向にある。
【0011】
本発明に使用する小麦粉の原料小麦としては、通常製麺用として用いられる小麦粉の原料小麦とされるものであれば特に限定されず、例えば1CW、DNS、SH、ASW等を使用することができ、単独の品種又は2種以上の異なる品種を配合した原料小麦として使用してもよい。糖質を低減させるという観点から、小麦粉は、好ましくは混合物(A)の全量に対して0~50質量%の範囲で添加することが好ましい。より好ましくは30~50質量%添加する。
【0012】
本発明に使用する含硫還元剤は、還元性を有する含硫化合物であれば何れでも良い。本発明において含硫還元剤は、製麺用粉体組成物に含まれるバイタルグルテンや任意の成分である小麦粉のグルテンに対して収斂作用を有すると考えられる。そのような含硫還元剤の例としてはシスチン、グルタチオン、還元型グルタチオン、システイン及びそれらの食品として許容しうる塩等を挙げることができ、好ましくはシスチン、グルタチオン、還元型グルタチオン、及びシステインからなる群から選ばれる1種以上であり、さらに好ましくはシスチン及びシステインであり、最も好ましくはシステインである。なお、酵母、小麦等の穀類胚芽等の含硫還元剤を含有する天然原料を使用する場合においては、天然原料中の含硫還元剤の含有量を考慮して、添加量を調節することができる。
本発明の製麺用粉体組成物において、含硫還元剤である成分(B)の含有量は、難消化性澱粉、バイタルグルテン及び任意の成分として小麦粉からなる混合物(A)100質量部に対して好ましくは0.00005~0.6質量部である。混合物(A)100質量部に対する成分(B)の含有量の下限は、より好ましくは0.0001質量部、さらに好ましくは0.0005質量部、なお好ましくは0.001質量部であり、また混合物(A)100質量部に対する成分(B)の含有量の上限は、より好ましくは0.5質量部、さらに好ましくは0.4質量部、なお好ましくは0.15質量部である。
【0013】
本発明の製麺用粉体組成物は、麺質を改良し、食感を改良するために任意に増粘剤を配合することができる。そのような増粘剤としてガム質(キサンタンガム、グアーガム、アルギン酸塩等)、寒天、化学変性澱粉、化学変性セルロース等が挙げられ、好ましくはアルギン酸ナトリウムである。本発明の製麺用粉体組成物において、増粘剤は製麺用粉体組成物全量に対して3質量%未満の範囲、好ましくは0.1~1.5質量%の範囲で添加することができる。
【0014】
その他、製造する麺の種類に応じて、通常使用される副原料や添加物を本発明の効果を損なわない範囲で製麺用粉体組成物に配合しても良い。例えば、米粉、大麦粉、ライ麦粉、蕎麦粉、トウモロコシ粉等の小麦粉以外の穀粉;大豆蛋白質、卵黄粉、卵白粉、全卵粉、脱脂粉乳等の小麦蛋白以外の蛋白質素材;動物油脂、植物油脂、硬化油脂、粉末油脂等の油脂類;かんすい、ミネラル等の無機塩類、上記で規定した以外の食物繊維;膨張剤;乳化剤;糖類;甘味料;香辛料;調味料;ビタミン類;色素;香料;デキストリン等の澱粉分解物等が挙げられる。
【0015】
本発明の麺類の製造方法は、製麺用粉原料として本発明の製麺用粉体組成物を使用する以外は、常法の製麺方法を用いることができる。
例えば製麺用粉原料を十分に混合し、その製麺用粉原料100質量部に対して塩類等を溶解させた練水を44質量部添加し混捏して生地を得る。得られた生地をロール機で成形、複合及び圧延して麺帯とし、ビニール袋で包み、30分間室温で熟成させる。熟成の後、更にロール機で厚さ2.5mmになるまで圧延し、切刃10番薄で切り出して生麺を得ることができる。
また例えば製麺用粉原料を十分に混合した後、水55質量部に食塩5質量部を溶解させた練り水を投入して20分間混捏して生地を得る。捏ねあがった生地を足踏みしつつ板状に成形し、30分間熟成させた後、「板切り」→「油返し」→「こより」→「小巻き」→「かけば」→「小引き」→「門干し」→「裁断」→「ねかし」の各工程を経て、手延べ干しめん(素麺)を得ることが出来る。
【0016】
本発明の製麺用粉体組成物により得られる麺類としては、うどん、冷麦、そうめん、ラーメン、日本そば、パスタ、ビーフンなどの麺線や、餃子、春巻の皮などの麺皮が挙げられる。
【実施例】
【0017】
以下本発明を具体的に説明する為に実施例を示すが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
[製造例1 システイン含有低糖質生麺の製造]
表1記載の通りの配合で原料をミキサー(スズキ麺工社製ピンミキサー)に投入して粉体混合し製麺用粉体組成物を得た後、水40質量部に食塩4質量部を溶解させた練り水を投入して13分間混捏して生地を得た。得られた生地をロール機(スズキ麺工製製麺用ロール機)で成形、複合及び圧延して麺帯とし、ビニール袋で包み、30分間室温で熟成させた。熟成の後、更にロール機で厚さ2.5mmになるまで圧延し、切刃10番薄で切り出して生麺を得た。
なお小麦粉はニップン北海道(日本製粉社製)、難消化性澱粉はファイバージムRW(難消化性小麦澱粉、松谷化学社製)、バイタルグルテンはバイグル(マニルドラ社製)、システインはLシステイン塩酸塩一水和物(日本理化学薬品社製)を使用した。
【表1】
【0018】
[製造例2 システイン含有低糖質手延べ干しめんの製造]
製麺用粉体組成物においてシステインを0.02質量部にした以外は表1記載の通りの配合で原料をミキサー(スズキ麺工社製ニーダーミキサー)に投入して粉体混合した後、水55質量部に食塩5質量部を溶解させた練り水を投入して20分間混捏して生地を得た。捏ねあがった生地を足踏みしつつ板状に成形し、30分間熟成させた後、「板切り」→「油返し」→「こより」→「小巻き」→「かけば」→「小引き」→「門干し」→「裁断」→「ねかし」の各工程を経て、手延べ干しめん(素麺)を得た。
【0019】
[評価例1 作業性評価]
作業性は、製造例1では圧延時の、製造例2では「こより」、「小巻き」、「小引き」各工程の生地の伸展性について、下記表2に記載の評価基準に従って評価した。製麺用粉体組成物に代えて小麦粉を使用した標準的な生麺又は手延べ干しめんの評価点をそれぞれ5点とした。
【表2】
【0020】
[評価例2 食感評価]
製造例1で得られたシステイン含有低糖質生麺を沸騰湯浴中に投入して20分間茹で上げ、30秒間水洗冷却した。熟練のパネラー10名により、表3に記載の評価基準に従って食感評価し、その平均値を求めた。製麺用粉体組成物に代えて小麦粉を使用した標準的な生麺の評価点を5点とした。
製造例2で得られたシステイン含有低糖質手延べ干しめんを沸騰湯浴中に投入して3分間茹で上げ、30秒間水洗冷却した。熟練のパネラー10名により、表3に記載の評価基準に従って食感評価し、その平均値を求めた。製麺用粉体組成物に代えて小麦粉を使用した標準的な手延べ干しめんの評価点を5点とした。なお、製麺用粉体組成物に代えて小麦粉を使用した標準的な生麺線又は手延べ干しめんは麺表面に荒れがなく、つるみ(滑らかな口当たり、ツルツルした食感)のある茹で麺が得られる。
【表3】
【0021】
[試験例1 低糖質生麺におけるシステイン添加量の検討]
表4記載のシステイン添加量(混合物(A)100質量部に対する質量部)にした以外は製造例1に従って低糖質生麺を製造し、評価例1及び2に従って評価し、結果を表4に記載した。
【表4】
システインの添加がない場合(対照例1)では、生地を抵抗感なく伸ばすことができ、許容範囲であり、作業性の評点は3.0となった。また食感はわずかにザラつきがあるが、ボソつきはなく、許容範囲であり、食感の評点は3.0となった。実施例1~6のいずれにおいても対照例1と比較して作業性と食感が改善された。特に混合物(A)100質量部に対しシステインを0.001~0.1質量部添加した実施例2~4では、製麺用粉体組成物に代えて小麦粉を使用した標準的な生麺に近い作業性、食感を得ることができた。
【0022】
[試験例2 低糖質生麺における難消化性澱粉配合量の検討]
製麺用粉体組成物の各成分を表5記載の配合(質量部)にした以外は製造例1に従って低糖質生麺を製造し、評価例1及び2に従って評価し、結果を表5に記載した。なお、バイタルグルテン添加量は、小麦粉中のタンパク質含量を13質量%、バイタルグルテン中のタンパク質含量を70質量%として、製麺用粉体組成物中のたんぱく質含量がほぼ一定になるように調節した。
【表5】
対照例1~6の結果にも示されているように通常であれば難消化性でん粉の配合量が増えるに従い作業性及び食感が悪化するところ、システインを添加することによって難消化性でん粉の量にかかわらず、生地性及び食感を改善することが出来ることが確認された。
【0023】
[試験例3 低糖質手延べ干しめんにおけるシステイン添加量の検討]
表6記載のシステイン添加量(混合物(A)100質量部に対する質量部)にした以外は製造例2に従って低糖質手延べ干しめんを製造し、評価例1及び2に従って評価し、結果を表6に記載した。
【表6】
システインの添加がない場合(対照例7)では手延べ製法での製麺自体が困難であり作業性の評点は1.0となった。また食感は評価できなかった。これに対し、システインを添加した実施例12~17ではいずれも手延製法での製麺が可能であった。特に混合物(A)100質量部に対しシステインを0.002~0.02質量部添加した実施例13~14では製麺用粉体組成物に代えて小麦粉を使用した標準的な手延べ干しめんに近い作業性、食感を得ることができた。
【0024】
[試験例4 低糖質手延べ干しめんにおける難消化性澱粉配合量の検討]
製麺用粉体組成物の各成分を表7記載の配合(質量部)にした以外は製造例2に従って低糖質手延べ干しめんを製造し、評価例1及び2に従って評価し、結果を表7に記載した。なお、バイタルグルテン添加量は、小麦粉中のグルテン含量を13質量%、バイタルグルテン中のグルテン含量を70質量%として、低糖質麺用粉末原料中のグルテン含量がほぼ一定なるように調節した。
【表7】
その結果、システインを添加しない対照例8~11では手延べ製法での製麺自体が困難であり作業性の評点は1.0となった。また食感は評価できなかった。なお小麦粉を60質量部使用した対照例12では、作業性は極めて悪いものの辛うじて製麺することが出来た。これに対し、システインを添加した実施例18~23ではいずれも手延べ製法での製麺が可能であった。また特に混合物(A)100質量部に対し小麦粉を30質量部以上添加した実施例20~23では製麺用粉体組成物に代えて小麦粉を使用した標準的な手延べ干しめんに近い作業性、食感を得ることができた。