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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】送信装置及び受信装置
(51)【国際特許分類】
   H04L 1/00 20060101AFI20221025BHJP
   H04H 20/12 20080101ALI20221025BHJP
【FI】
H04L1/00 C
H04H20/12
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018140403
(22)【出願日】2018-07-26
(65)【公開番号】P2019030005
(43)【公開日】2019-02-21
【審査請求日】2021-06-14
(31)【優先権主張番号】P 2017145334
(32)【優先日】2017-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】110001564
【氏名又は名称】フェリシテ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】青木 秀一
(72)【発明者】
【氏名】竹内 知明
(72)【発明者】
【氏名】蔀 拓也
【審査官】阿部 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-174299(JP,A)
【文献】特開2008-160235(JP,A)
【文献】国際公開第03/084077(WO,A1)
【文献】特開平10-262015(JP,A)
【文献】特開2010-010793(JP,A)
【文献】橋本 明記 Akinori HASHIMOTO,高度衛星デジタル放送の伝送路符号化方式 Channel Coding Scheme for Advanced Digital Satellite Broadcasting System.,NHK技研R&D NO.119 ,日本,日本放送出版協会,2010年01月15日,第119号,pp. 18-35
【文献】Sierra Wireless,PUSCH Link-level Simulation Results[online], 3GPP TSG-RAN WG1#80 R1-150069,インターネット<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_80/Docs/R1-150069.zip>,2015年02月18日,pp. 1-7
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 1/00
H04H 20/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル放送におけるビットエラーレート(BER)を測定するための信号を送信する送信装置であって、
前記ビットエラーレートを測定するための信号のビット系列から、大きさが可変である可変長パケットを生成するパケット生成部と、
前記パケット生成部によって生成された前記可変長パケットに対して誤り訂正符号化処理を施すことによって、大きさが固定である誤り訂正符号ブロックを生成するブロック生成部と、
前記ブロック生成部で生成された前記誤り訂正符号ブロックを送信する送信部とを備え、
前記誤り訂正符号ブロックは、前記可変長パケットが格納されるパケット格納領域を有し、
前記パケット生成部は、前記パケット格納領域に整数個の可変長パケットが格納されるように、前記可変長パケットの大きさを設定することを特徴とする送信装置。
【請求項2】
前記パケット生成部は、前記整数個の可変長パケットの合計の大きさが前記パケット格納領域の大きさと等しくなるように、前記整数個の可変長パケットのそれぞれの大きさを設定することを特徴とする請求項1に記載の送信装置。
【請求項3】
前記パケット格納領域の大きさは、前記誤り訂正符号ブロックに適用される誤り訂正の符号化率に応じて定まり、
前記パケット生成部は、前記符号化率に基づいて、前記パケット格納領域に格納される可変長パケットの数及び前記パケット格納領域に格納される各可変長パケットの大きさを設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の送信装置。
【請求項4】
予め定められたテーブルを保持するテーブル保持部を更に備え、
前記テーブルは、前記符号化率と、前記パケット格納領域に格納される可変長パケットの数と、前記パケット格納領域に格納される各可変長パケットの大きさとの対応付けを示し、
前記パケット生成部は、前記テーブルを用いて、前記パケット格納領域に格納される可変長パケットの数及び前記パケット格納領域に格納される各可変長パケットの大きさを設定することを特徴とする請求項3に記載の送信装置。
【請求項5】
前記ビット系列は、前記送信装置及び受信装置で共通になるよう定められた疑似乱数系列であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の送信装置。
【請求項6】
請求項1に記載の送信装置から送信された信号を受信する受信装置であって、
前記信号を受信する受信部と、
前記受信した信号に含まれる、大きさが固定である誤り訂正符号ブロックに対して誤り訂正復号処理を施す誤り訂正復号部と、
前記誤り訂正復号部で復号された誤り訂正符号ブロックから、大きさが可変である可変長パケットを切り出すパケット分離部と、
前記パケット分離部によって切り出された前記可変長パケットに格納されているビット系列を用いて、ビットエラーレートを測定するビットエラーレート測定部とを備え、
前記誤り訂正符号ブロックは、前記可変長パケットが格納されるパケット格納領域を有し、
前記ビットエラーレートの測定時において、前記パケット分離部は、前記パケット格納領域に整数個の可変長パケットが格納されているとみなして、前記誤り訂正復号処理後の誤り訂正符号ブロックから前記可変長パケットを切り出すことを特徴とする受信装置。
【請求項7】
前記整数個の可変長パケットの合計の大きさは、前記パケット格納領域の大きさと等しいことを特徴とする請求項6に記載の受信装置。
【請求項8】
前記パケット格納領域の大きさは、前記誤り訂正符号ブロックに適用される誤り訂正の符号化率に応じて定まり、
前記パケット分離部は、前記符号化率に基づいて、前記パケット格納領域に格納される可変長パケットの数及び前記パケット格納領域に格納される各可変長パケットの大きさを判定することを特徴とする請求項6又は7に記載の受信装置。
【請求項9】
予め定められたテーブルを保持するテーブル保持部を更に備え、
前記テーブルは、前記符号化率と、前記パケット格納領域に格納される可変長パケットの数と、前記パケット格納領域に格納される各可変長パケットの大きさとの対応付けを示し、
前記パケット分離部は、前記テーブルを用いて、前記パケット格納領域に格納される可変長パケットの数及び前記パケット格納領域に格納される各可変長パケットの大きさを判定することを特徴とする請求項8に記載の受信装置。
【請求項10】
前記ビット系列は、前記送信装置及び前記受信装置で共通になるよう定められた疑似乱数系列であることを特徴とする請求項6乃至9の何れか一項に記載の受信装置。
【請求項11】
前記可変長パケットは、前記ビット系列が格納される所定フィールドに加えて、前記所定フィールドに格納されたデータの種類を示す種類情報が格納されるフィールドと、前記所定フィールドの大きさを示す大きさ情報が格納されるフィールドとを有し、
前記ビットエラーレート測定部は、前記ビット系列に加えて、前記種類情報及び/又は前記大きさ情報を前記ビットエラーレートの測定に用いることを特徴とする請求項6乃至10の何れか一項に記載の受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にデジタル放送システムにおいて用いられる送信装置及び受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高度BS(Broadcasting Satellite)放送や次世代地上放送では、大きさが可変である可変長パケットを用いた伝送を行うことが想定されている(例えば、特許文献1参照)。このような可変長パケットは、TLV(Type Length Value)パケットと称されることがある。
【0003】
送信装置は、伝送時の誤り訂正(FEC:Forward Error Correction)の単位である誤り訂正符号ブロック(FECブロック)に可変長パケットを格納する。一方、誤り訂正符号ブロックの大きさは固定であり、1つの可変長パケットが複数の誤り訂正符号ブロックに跨がって格納され得る。このため、送信装置は、トップポインタを誤り訂正符号ブロックの先頭の領域に格納する。トップポインタは、誤り訂正符号ブロックにおいて最初に始まる可変長パケットの先頭位置を示すポインタである。
【0004】
受信装置は、誤り訂正符号ブロックに対する誤り訂正復号処理を行う。誤り訂正復号処理に成功した場合、受信装置は、トップポインタが示す位置を可変長パケットの先頭位置と判断し、可変長パケットの中にある大きさフィールドを参照し、誤り訂正復号処理後の誤り訂正符号ブロックから可変長パケットを切り出す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-80029号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
受信装置における受信品質の指標の1つとしてビットエラーレート(BER:Bit Error Rate)がある。ビットエラーレートの測定時において、送信装置は、ビットエラーレート測定用のビット系列を可変長パケットに格納する。受信装置は、送信装置が用いるビット系列と同じ参照ビット系列を生成する。受信装置は、誤り訂正復号処理後の誤り訂正符号ブロックから可変長パケットを切り出し、この可変長パケットに格納されたビット系列を参照ビット系列と比較することによって、ビットエラーレートを測定する。
【0007】
ビットエラーレートを正しく測定するためには、誤り訂正復号処理に成功した場合におけるビットエラーレートを測定することに限らず、誤り訂正復号処理に失敗した場合におけるビットエラーレートも測定することが望まれる。しかしながら、誤り訂正復号処理に失敗した場合、トップポインタ及び/又は大きさフィールドに誤りがある可能性がある。よって、受信装置は、誤り訂正復号処理後の誤り訂正符号ブロックからトップポインタ及び/又は大きさフィールドに基づいて可変長パケットを正しく切り出すことが難しい。
【0008】
したがって、可変長パケットを用いた伝送を行うケースにおいて、ビットエラーレートを正しく測定することが難しいという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、可変長パケットを用いた伝送を行うケースにおいて、ビットエラーレートを正しく測定することを可能とする送信装置及び受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の特徴に係る送信装置は、デジタル放送におけるビットエラーレート(BER)を測定するための信号を送信する。前記送信装置は、ビットエラーレート測定用のビット系列から、大きさが可変である可変長パケットを生成するパケット生成部と、前記パケット生成部によって生成された前記可変長パケットに対して誤り訂正符号化処理を施すことによって、大きさが固定である誤り訂正符号ブロックを生成するブロック生成部と、前記ブロック生成部で生成された前記誤り訂正符号ブロックを送信する送信部とを備える。前記誤り訂正符号ブロックは、前記可変長パケットが格納されるパケット格納領域を有する。前記パケット生成部は、前記パケット格納領域に整数個の可変長パケットが格納されるように、前記可変長パケットの大きさを設定する。
【0011】
第2の特徴に係る受信装置は、第1の特徴に係る送信装置から送信された信号を受信する。前記受信装置は、前記信号を受信する受信部と、前記受信した信号に含まれる、大きさが固定である誤り訂正符号ブロックに対して誤り訂正復号処理を施す誤り訂正復号部と、前記誤り訂正復号部で復号された誤り訂正符号ブロックから、大きさが可変である可変長パケットを切り出すパケット分離部と、前記パケット分離部によって切り出された前記可変長パケットに格納されているビット系列を用いて、ビットエラーレートを測定するビットエラーレート測定部とを備える。前記誤り訂正符号ブロックは、前記可変長パケットが格納されるパケット格納領域を有する。前記ビットエラーレートの測定時において、前記パケット分離部は、前記パケット格納領域に整数個の可変長パケットが格納されているとみなして、前記誤り訂正復号処理後の誤り訂正符号ブロックから前記可変長パケットを切り出す。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、可変長パケットを用いた伝送を行うケースにおいて、ビットエラーレートを正しく測定することを可能とする送信装置及び受信装置を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る送信装置を示す図である。
図2】一般的なTLVパケットの格納例を示す図である。
図3】実施形態に係る符号化率2/16の場合のTLVパケットの格納例を示す図である。
図4】実施形態に係る符号化率3/16の場合のTLVパケットの格納例を示す図である。
図5】実施形態に係る符号化率4/16の場合のTLVパケットの格納例を示す図である。
図6】実施形態に係る符号化率14/16の場合のTLVパケットの格納例を示す図である。
図7】実施形態に係る受信装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。実施形態に係る送信装置及び受信装置は、高度BS放送や次世代地上放送等のデジタル放送システムにおいて用いられる。このようなデジタル放送システムでは、大きさが可変である可変長パケットを用いた伝送を行う。実施形態に係る可変長パケットは、例えば、ARIB STD-B32 第3部に規定されたTLVパケットである。但し、可変長パケットは、ALP(ATSC Link-layer Protocol)パケット等であってもよい。ALPパケットについては、例えばhttps://www.atsc.org/wp-content/uploads/2016/10/A330-2016-Link-Layer-Protocol.pdf等に規定されている。或いは、可変長パケットは、GSE(Generic Stream Encapsulation)パケットでもよい。GSEパケットについては、例えばETSI TS 102 606等に規定されている。実施形態においては、可変長パケットがTLVパケットである一例について説明する。
【0015】
実施形態に係る送信装置及び受信装置は、ビットエラーレート(BER:Bit Error Rate)を測定するために用いられる。一例として、送信装置は放送局に設置され、受信装置はBER測定機器に設置され、受信装置(BER測定機器)によって複数の地点においてBER測定を行う。これによって、各地点におけるBERを把握可能になる。測定されたBERは、例えば、放送局の伝送パラメータ(例えば、誤り訂正の符号化率、変調方式等)を最適化するために用いられる。
【0016】
(1)送信装置
図1は、実施形態に係る送信装置100を示す図である。図1に示すように、実施形態に係る送信装置100は、PN(Pseudorandom Numbers)系列生成部110、TLVパケット化部120、テーブル保持部130、FECブロック生成部140、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)フレーム生成部150、及び変調部160を備える。
【0017】
PN系列生成部110は、BER測定用のビット系列として、送信装置100及び受信装置200(図7参照)で共通になるよう定められた疑似乱数系列(PN系列)を生成し、PN系列をTLVパケット化部120に出力する。但し、BER測定用のビット系列は、PN系列とは異なるビット系列であってもよい。BER測定用のビット系列は、送信装置100及び受信装置200で共通に生成可能であり、かつ、送信装置100及び受信装置200で同期が確保できるビット列であれば、どのような系列をBER測定用のビット系列として用いてもよい。BER測定用のビット系列は、ランダム性を有するビット系列であることが好ましい。以下においては、BER測定用のビット系列がPN系列である一例について説明する。
【0018】
TLVパケット化部120は、パケット生成部の一例である。TLVパケット化部120は、PN系列生成部110が出力するPN系列からTLVパケットを生成し、TLVパケットをFECブロック生成部140に出力する。TLVパケットは、Typeフィールド、Lengthフィールド、及びValueフィールドを有する。Typeフィールドには、Valueフィールドに格納されたデータの種類を示す情報が格納される。Lengthフィールドには、Valueフィールドの大きさを示す情報が格納される。Valueフィールドには、データが格納される。TLVパケット化部120は、PN系列をIP(Internet Protocol)パケットに格納した後、IPパケットをTLVパケットのValueフィールドに格納してもよい。或いは、TLVパケット化部120は、PN系列をTLVパケットのValueフィールドに直接的に格納してもよい。TLVパケット化部120は、TLVパケットにおいて、ValueフィールドにPN系列が格納されていることを示す値(例えば、0xFD)をTypeフィールドに格納する。
【0019】
FECブロック生成部140は、ブロック生成部の一例である。FECブロック生成部140は、TLVパケット化部120によって生成されたTLVパケットに対して誤り訂正符号化処理を施すことによって、大きさが固定であるFECブロックを生成する。FECブロックの大きさ(ビット長)は、例えば、69120ビット(すなわち、8640バイト)である。FECブロックは、TLVパケットが格納されるTLVパケット格納領域(パケット格納領域)を有する。一例として、FECブロックは、16ビット固定のトップポインタ領域、可変長のTLVパケット格納領域、192ビット固定のBCHパリティ領域、及び可変長のLDPC(Low Density Parity Check)パリティ領域によって構成される。TLVパケット格納領域及びLDPCパリティ領域のそれぞれの大きさは、誤り訂正(LDPC符号化)の符号化率に応じて変化する。符号化率は、例えば、2/16から14/16までの13通りである。符号化率が低いほど、LDPCパリティ領域が大きくなり、かつ、TLVパケット格納領域が小さくなる。これに対し、符号化率が高いほど、LDPCパリティ領域が小さくなり、かつ、TLVパケット格納領域が大きくなる。
【0020】
ここで、一般的な映像及び音声の伝送においては、大きさが可変であるTLVパケットをFECブロックのTLVパケット格納領域に格納することによって、1つのTLVパケットが、連続する複数のFECブロックに跨がって格納され得る。図2は、一般的なTLVパケットの格納例を示す図である。図2において、4つのTLVパケット#1~#4が3つのFECブロック#1~#3に格納される一例を示している。具体的には、FECブロック#1のTLVパケット格納領域には、TLVパケット#1とTLVパケット#2の前半部分とが格納される。FECブロック#2のTLVパケット格納領域には、TLVパケット#2の後半部分とTLVパケット#3の前半部分とが格納される。FECブロック#3のTLVパケット格納領域には、TLVパケット#3の後半部分とTLVパケット#4の前半部分とが格納される。また、各FECブロック#1~#3の先頭には、このFECブロック内で最初に始まるTLVパケットの先頭位置を示すトップポインタが格納される。FECブロック#1のトップポインタは、TLVパケット#1の先頭位置を示す。FECブロック#2のトップポインタは、TLVパケット#3の先頭位置を示す。FECブロック#3のトップポインタは、TLVパケット#4の先頭位置を示す。
【0021】
実施形態では、BER測定用のビット系列(PN系列)の伝送において、TLVパケット化部120は、TLVパケット格納領域に整数個のTLVパケットが格納されるように、TLVパケットの大きさを設定する。言い換えると、TLVパケット化部120は、1つのTLVパケットが複数のFECブロックに跨がって格納されないように、TLVパケットの大きさを設定する。この場合、各FECブロックのトップポインタの値はゼロである。FECブロック生成部140は、整数個のTLVパケットの合計の大きさがTLVパケット格納領域の大きさと等しくなるように、整数個のTLVパケットのそれぞれの大きさを設定してもよい。
【0022】
上述したように、TLVパケット格納領域の大きさは、FECブロックに適用される誤り訂正の符号化率に応じて定まる。FECブロック生成部140は、符号化率に基づいて、TLVパケット格納領域に格納されるTLVパケットの数及びTLVパケット格納領域に格納される各TLVパケットの大きさを設定する。一例として、送信装置100は、予め定められたテーブルを保持するテーブル保持部130を備え、テーブルは、符号化率と、TLVパケット格納領域に格納されるTLVパケットの数と、TLVパケット格納領域に格納される各TLVパケットの大きさとの対応付けを示す。FECブロック生成部140は、テーブルを用いて、TLVパケット格納領域に格納されるTLVパケットの数及びTLVパケット格納領域に格納される各TLVパケットの大きさを設定する。かかるテーブルの一例を表1に示す。
【0023】
【表1】
【0024】
表1に示すように、予め定められた符号化率ごとに、TLVパケット格納領域に格納されるTLVパケットの数及びTLVパケット格納領域に格納される各TLVパケットの大きさが規定される。符号化率ごとのTLVパケット格納領域の大きさの最大公約数をTLVパケットの大きさとしてもよい。符号化率ごとのTLVパケット格納領域の大きさの最大公約数が小さい場合(つまり、FECブロック格納領域に格納するTLVパケット数が多すぎる場合)、各符号化率に応じたTLVパケットの大きさとしてもよい。
【0025】
表1の例において、符号化率2/16の場合に、TLVパケット格納領域が最も小さい。このTLVパケット格納領域の大きさである1054バイトを第1サイズと称する。符号化率2/16以外の場合、TLVパケット格納領域の大きさは、第1サイズ(1054バイト)と540バイトの整数倍との和になる。この540バイトを第2サイズと称する。表1に示すように、TLVパケット格納領域に格納されるTLVパケットの大きさは、第1サイズ及び第2サイズの何れかである。このように、TLVパケット格納領域に格納されるTLVパケットの大きさを2種類(第1サイズ、第2サイズ)に限定しているので、画一的な処理を行うことができる。また、第2サイズが第1サイズ未満であるため、TLVパケット化部120からFECブロック生成部140に出力される各TLVパケットの大きさを抑制することができる。
【0026】
図3に示すように、符号化率2/16の場合、TLVパケット化部120は、TLVパケットの大きさを1054バイトに設定し、1054バイトのTLVパケットをFECブロック生成部140に出力する。FECブロック生成部140は、1054バイトのTLVパケットを各FECブロック(FECブロック#1~#3のそれぞれ)のTLVパケット格納領域に格納する。
【0027】
図4に示すように、符号化率3/16の場合、TLVパケット化部120は、1054バイトのTLVパケットを出力し、540バイトのTLVパケットを出力する。FECブロック生成部140は、各FECブロック(FECブロック#1~#3のそれぞれ)のTLVパケット格納領域に、1054バイトのTLVパケットと540バイトのTLVパケットとを1つずつ格納する。
【0028】
図5に示すように、符号化率4/16の場合、TLVパケット化部120は、1054バイトのTLVパケットを出力し、540バイトのTLVパケットを2つ出力する。FECブロック生成部140は、各FECブロック(FECブロック#1~#3のそれぞれ)のTLVパケット格納領域に、1054バイトのTLVパケットを格納した後、540バイトのTLVパケットを2つ格納する。
【0029】
図6に示すように、符号化率14/16の場合、各FECブロック(FECブロック#1~#3のそれぞれ)に1054バイトのTLVパケットと12個の540バイトのTLVパケットとが格納される。
【0030】
このように、TLVパケット化部120は、符号化率が1段階高くなる度に、各FECブロックに格納する540バイトのTLVパケットを1つずつ増やしていく。FECブロック生成部140は、PN系列の順番になるように各TLVパケットをFECブロックに格納する。
【0031】
OFDMフレーム生成部150には、FECブロック生成部140が生成した各FECブロックが入力される。OFDMフレーム生成部150は、FECブロックからOFDMフレームを生成し、OFDMフレームを変調部160に出力する。OFDMフレームは、TMCC(Transmission and Multiplexing Configuration Control)信号等の伝送制御信号を含む。TMCC信号は、伝送パラメータ(例えば、変調方式、符号化率等)を示す情報を含む。OFDMフレームは、所定数のサブキャリア(周波数軸)及び所定数のシンボル数(時間軸)によって定義される。
【0032】
変調部160は、OFDMフレーム生成部150が生成したOFDMフレームを構成する各シンボルに対してキャリア変調及びIFFT処理等を施して送信信号を出力する。変調部160が出力する送信信号は、図示を省略する送信アンテナを介して送信される。このようにして、送信装置100は、TLVパケットのデータ部にPN系列を格納した送信信号を送信する。実施形態において、OFDMフレーム生成部150及び変調部160は、TLVパケット化部120によって生成されたFECブロック(誤り訂正符号ブロック)を送信する送信部を構成する。
【0033】
(2)受信装置
図7は、実施形態に係る受信装置200を示す図である。図7に示すように、受信装置200は、復調部210、誤り訂正復号部220、TLVパケット分離部230、テーブル保持部240、及びビットエラーレート測定部250を備える。
【0034】
図示を省略する受信アンテナを介して受信した受信信号は、復調部210に入力される。受信信号には、無線伝搬路においてノイズが含まれていることが想定される。復調部210は、受信信号の復調処理を行い、OFDMフレームを取り出して誤り訂正復号部220に出力する。実施形態において、復調部210は、送信装置100から送信された信号を受信する受信部を構成する。
【0035】
誤り訂正復号部220は、復調部210から入力されたOFDMフレームに含まれるFECブロック単位で誤り訂正復号処理を行う。誤り訂正復号部220は、誤り訂正復号処理後のFECブロックをTLVパケット分離部230に出力する。
【0036】
TLVパケット分離部230は、パケット分離部の一例である。TLVパケット分離部230は、誤り訂正復号処理後のFECブロックからTLVパケットを切り出す。
【0037】
一般的な映像及び音声の伝送においては、誤り訂正復号処理に失敗した場合(すなわち、BCH復号結果であるシンドロームが非ゼロである場合)、TLVパケット分離部230は、誤り訂正復号処理に失敗したFECブロックにその一部分又は全部が格納されたTLVパケットを破棄する。一方、誤り訂正復号処理に成功した場合(すなわち、BCH復号結果であるシンドロームがゼロである場合)、TLVパケット分離部230は、トップポインタが示す位置をTLVパケット先頭位置と判断し、TLVパケット中のLengthフィールドを参照し、誤り訂正復号処理後のFECブロックから可変長パケットを切り出す。
【0038】
実施形態では、BER測定時において、TLVパケット分離部230は、誤り訂正復号処理に成功したか否かにかかわらず、TLVパケット格納領域に整数個のTLVパケットが格納されているとみなして、誤り訂正復号処理後のFECブロックからTLVパケットを切り出して出力する。すなわち、TLVパケット分離部230は、誤り訂正後のFECブロックについて、BCH復号結果であるシンドロームの値によらず、図3図6に示したようなTLVパケットがTLVパケット格納領域に格納されているとみなして、FECブロックに格納してある情報をTLVパケットとして分割して出力する。これにより、TLVパケット分離部230は、BER測定時において、トップポインタを用いることなく、誤り訂正復号処理後のFECブロックからTLVパケットを切り出すことができる。特に、誤り訂正復号処理に失敗した場合、トップポインタ及び/又はLengthフィールドに誤りがある可能性があるが、TLVパケット分離部230は、トップポインタ及び/又はLengthフィールドに依存することなく、誤り訂正復号処理後のFECブロックからTLVパケットを正しく切り出すことができる。
【0039】
TLVパケット分離部230は、OFDMフレームに含まれる伝送制御信号(TMCC信号)によって示される符号化率に基づいて、TLVパケット格納領域に格納されるTLVパケットの数及びTLVパケット格納領域に格納される各TLVパケットの大きさを判定してもよい。具体的には、受信装置200は、表1に示したようなテーブルを保持するテーブル保持部240を備え、TLVパケット分離部230は、伝送制御信号(TMCC信号)によって示される符号化率とテーブルとを用いて、TLVパケット格納領域に格納されるTLVパケットの数及びTLVパケット格納領域に格納される各TLVパケットの大きさを判定する。
【0040】
ビットエラーレート測定部250は、TLVパケット分離部230によって切り出されたTLVパケットに格納されているビット系列(すなわち、PN系列)を用いてBERを測定する。ビットエラーレート測定部250は、送信側と同じPN系列を参照ビット系列として生成するPN系列生成部250aと、PN系列生成部250aによって生成されたPN系列とTLVパケット中のPN系列とを比較するPN系列比較部250bとを備える。PN系列比較部250bは、TLVパケット中のPN系列(受信ビット系列)と、生成したPN系列(参照ビット系列)との同期を確保した上で、あるビットが同じであれば正しく伝送できたビットとしてカウントし、あるビットが異なる値であれば誤って伝送したビットとしてカウントする。PN系列比較部250bは、このようにして得られたカウント結果からBERを計算して出力する。
【0041】
ビットエラーレート測定部250は、TLVパケットのValueフィールド中のPN系列の比較に加え、TLVパケットの先頭の固定バイト(0x7F)、TLVパケットのTypeフィールド中の情報(例えば0xFD)、及びTLVパケットのLengthフィールド中の情報のうち少なくとも1つをBER算出に用いてもよい。これらの情報からもBERを算出する際は、ビットエラーレート測定部250は、受信TLVパケットの先頭の固定バイトを、正しい値である0x7Fと比較する。ビットエラーレート測定部250は、受信TLVパケットのTypeフィールド中の情報を、正しい値(例えば、0xFD)と比較する。ビットエラーレート測定部250は、受信TLVパケットのLengthフィールド中の情報を、正しい値(例えば、表1のテーブルに規定された値)と比較する。PN系列に加え、TLVパケットの先頭の固定バイト(0x7F)、TLVパケットのTypeフィールド中の情報(例えば0xFD)、及びTLVパケットのLengthフィールド中の情報のうち少なくとも1つをBER算出に用いる場合には、より短時間でBERを算出することができる。
【0042】
(3)実施形態のまとめ
このように、実施形態では、TLVパケット格納領域に整数個のTLVパケットが格納される。すなわち、1つのTLVパケットが複数のFECブロックに跨がって格納されない。そして、受信装置200(TLVパケット分離部230)は、BERの測定時において、TLVパケット格納領域に整数個のTLVパケットが格納されているとみなして、誤り訂正復号処理後のFECブロックからTLVパケットを切り出す。これによって、受信装置200(TLVパケット分離部230)は、FECブロックのトップポインタ及びTLVパケットの大きさフィールドに依存することなく、誤り訂正復号処理後のFECブロックからTLVパケットを正しく切り出すことができる。したがって、TLVパケットを用いた伝送を行うケースにおいて、BERを正しく測定することを可能とすることができる。
【0043】
送信装置100(FECブロック生成部140)は、整数個のTLVパケットの合計の大きさがTLVパケット格納領域の大きさと等しくなるように、整数個のTLVパケットのそれぞれの大きさを設定してもよい。これによって、TLVパケット格納領域を有効に活用することができ、効率的なBER測定が可能となる。
【0044】
送信装置100(FECブロック生成部140)は、FECブロックに適用される誤り訂正の符号化率に基づいて、TLVパケット格納領域に格納されるTLVパケットの数及びTLVパケット格納領域に格納される各TLVパケットの大きさを設定してもよい。これによって、様々な符号化率に対応したBER測定が可能となる。例えば符号化率ごとにBER測定を行い、所要BERを満たす符号化率を判定するといったことが可能となる。
【0045】
送信装置100(テーブル保持部130)及び受信装置200(テーブル保持部240)は、予め定められたテーブルを保持してもよい。テーブルは、符号化率と、TLVパケット格納領域に格納されるTLVパケットの数と、TLVパケット格納領域に格納される各TLVパケットの大きさとの対応付けを示す。送信装置100(FECブロック生成部140)は、かかるテーブルを用いて、TLVパケット格納領域に格納されるTLVパケットの数及びTLVパケット格納領域に格納される各TLVパケットの大きさを設定する。これによって、予め定められたテーブルを用いて、TLVパケット格納領域に格納されるTLVパケットの数及びTLVパケット格納領域に格納される各TLVパケットの大きさを円滑かつ速やかに設定することができる。また、このようなテーブルを受信装置200側でも保持することによって、送信側と受信側とでTLVパケット構成に関する認識を一致させることができる。
【0046】
BER測定用のビット系列は、送信装置及び受信装置で共通になるよう定められたPN系列(疑似乱数系列)であってもよい。これによって、ランダム性を有するビット系列を用いて適切なBER測定を行うことができる。
【0047】
TLVパケットは、PN系列が格納されるValueフィールドに加えて、種類情報が格納されるTypeフィールドと大きさ情報が格納されるLengthフィールドとを有する。ビットエラーレート測定部250は、PN系列に加えて、種類情報及び/又は大きさ情報をBERの測定に用いてもよい。これによって、より高速にBERを算出することができる。
【0048】
(4)その他の実施形態
上記のように、本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。
【0049】
実施形態において、送信装置100(テーブル保持部130)及び受信装置200(テーブル保持部240)が予め定められたテーブルを保持する一例を説明した。しかしながら、送信装置100及び受信装置200は、テーブルに代えて所定の計算式を用いて、TLVパケット格納領域に格納されるTLVパケットの数及びTLVパケット格納領域に格納される各TLVパケットの大きさを設定又は判定してもよい。
【0050】
実施形態において、受信装置200がBER測定のタイミングを判断する方法について特に触れなかったが、例えば、送信側及び受信側ともに、BER測定機能を有効にした際に、BER測定を行うと判断してもよい。あるいは、TLVパケットのTypeフィールドに、PN系列が格納されていることを示す情報(Type=0xFD)を含める場合、受信装置200は、TLVパケットのTypeフィールドの値が0xFDの時に、BER測定を行うと判断してもよい。具体的には、受信装置200は、最初はBER測定モードではなく通常モード(一般的な映像及び音声の伝送時と同様な処理)で受信及びTLVパケットの切り出しを行う。受信装置200は、通常モードにおいてTLVパケットのTypeフィールドの値が0xFDであることを検知した際に、BER測定モードであると判断し、BER測定モードに切り替えてもよい。
【0051】
実施形態において、受信装置200がBER測定機器に設けられる一例を説明した。しかしながら、受信装置200は、一般的なデジタル放送受信機に設けられてもよいし、一般的なモバイル端末に設けられてもよい。この場合、デジタル放送受信機又はモバイル端末は、測定されたBERを表示してもよいし、測定されたBERをネットワーク経由で報告してもよい。
【0052】
実施形態において、送信装置100及び受信装置200がデジタル放送システムにおいて用いられる一例を説明した。しかしながら、可変長パケットを固定長の誤り訂正符号ブロックに格納してBERを測定するシステムであれば、デジタル放送システム以外のシステムに送信装置100及び受信装置200を適用可能である。
【0053】
送信装置100の機能を実行するためのプログラムが提供されてもよく、受信装置200の機能を実行するためのプログラムが提供されてもよい。また、送信装置100及び受信装置200のそれぞれは、半導体集積回路(チップ)として構成されてもよい。
【符号の説明】
【0054】
100…送信装置、110…PN系列生成部、120…TLVパケット化部、130…テーブル保持部、140…FECブロック生成部、150…OFDMフレーム生成部、160…変調部、200…受信装置、210…復調部、220…誤り訂正復号部、230…TLVパケット分離部、240…テーブル保持部、250…ビットエラーレート測定部、250a…PN系列生成部、250b…PN系列比較部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7