(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】ウエーハ生成装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20221025BHJP
H01L 21/677 20060101ALI20221025BHJP
H01L 21/673 20060101ALI20221025BHJP
B23K 26/53 20140101ALI20221025BHJP
B24B 7/04 20060101ALI20221025BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20221025BHJP
【FI】
H01L21/304 611Z
H01L21/68 A
H01L21/68 T
H01L21/68 U
B23K26/53
B24B7/04 A
B24B41/06 A
(21)【出願番号】P 2018202449
(22)【出願日】2018-10-29
【審査請求日】2021-08-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 健太呂
(72)【発明者】
【氏名】大宮 直樹
【審査官】三浦 みちる
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-030005(JP,A)
【文献】特開平10-050639(JP,A)
【文献】特開2000-061767(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第2975638(EP,A1)
【文献】特開平10-236651(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/677
H01L 21/683
B23K 26/53
B24B 7/04
B24B 41/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インゴットからウエーハを生成するウエーハ生成装置であって、
インゴットを保持する第一の保持テーブルと該第一の保持テーブルに保持されたインゴットの上面を研削して平坦化する研削手段とから少なくとも構成されるインゴット研削ユニットと、
インゴットを保持する第二の保持テーブルと該第二の保持テーブルに保持されたインゴットの上面から生成すべきウエーハの厚みに相当する深さにインゴットに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を位置づけてレーザー光線をインゴットに照射し剥離層を形成するレーザー照射手段とから少なくとも構成されるレーザー照射ユニットと、
インゴットを保持する第三の保持テーブルと該第三の保持テーブルに保持されたインゴットの上面を保持し剥離層からウエーハを剥離するウエーハ剥離手段とから少なくとも構成されるウエーハ剥離ユニットと、
インゴットを支持するインゴット支持部と剥離されたウエーハを支持するウエーハ支持部とを備えたトレーと、
該トレーに支持されたインゴットを該インゴット研削ユニットと該レーザー照射ユニットと該ウエーハ剥離ユニットとの間で搬送するベルトコンベアーユニットと、
該トレーに支持されたインゴットを収容するインゴットストッカーと、
該インゴットストッカーに収容された該トレーに支持されたインゴットを該ベルトコンベアーユニットに受け渡すインゴット受渡ユニットと、
から少なくとも構成されるウエーハ生成装置。
【請求項2】
該インゴットストッカーは、
インゴットを支持した該トレーが載置される載置テーブルと、該載置テーブルに配設されインゴットを支持した該トレーを送りだす第一の無端ベルトと、該第一の無端ベルトに連結され駆動力を伝達する駆動力伝達部と、該載置テーブルを上下に複数配設するラックと、から少なくとも構成され、
該インゴット受渡ユニットは、
該載置テーブルからインゴットを支持した該トレーを受け取る受取テーブルと、該受取テーブルに配設されインゴットを支持した該トレーを該ベルトコンベアーユニットに受け渡す第二の無端ベルトと、該第二の無端ベルトを駆動するモータと、該第二の無端ベルトに連結され駆動力を該駆動力伝達部に伝達するクラッチ部と、上下に複数配設された該載置テーブルに該受取テーブルを位置づけるエレベータと、から少なくとも構成される請求項1記載のウエーハ生成装置。
【請求項3】
剥離されたウエーハを収容するカセットが複数収容されたカセットストッカーと、
該トレーの該ウエーハ支持部に支持されたウエーハを該カセットストッカーに収容されたカセットに収容する収容手段と、
を更に備える請求項1記載のウエーハ生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インゴットからウエーハを生成するウエーハ生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI、LED等のデバイスは、Si(シリコン)やAl2O3(サファイア)等を素材としたウエーハの表面に機能層が積層され分割予定ラインによって区画されて形成される。また、パワーデバイス、LED等は単結晶SiC(炭化ケイ素)を素材としたウエーハの表面に機能層が積層され分割予定ラインによって区画されて形成される。デバイスが形成されたウエーハは、切削装置、レーザー加工装置によって分割予定ラインに加工が施されて個々のデバイスに分割され、分割された各デバイスは携帯電話やパソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
デバイスが形成されるウエーハは、一般的に円柱形状のインゴットをワイヤーソーで薄く切断することにより生成される。切断されたウエーハの表面および裏面は、研磨することにより鏡面に仕上げられる(たとえば特許文献1参照。)。しかし、インゴットをワイヤーソーで切断し、切断したウエーハの表面および裏面を研磨すると、インゴットの大部分(70~80%)が捨てられることになり不経済であるという問題がある。特に単結晶SiCインゴットにおいては、硬度が高くワイヤーソーでの切断が困難であり相当の時間を要するため生産性が悪いと共に、インゴットの単価が高く効率よくウエーハを生成することに課題を有している。
【0004】
そこで、単結晶SiCに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を単結晶SiCインゴットの内部に位置づけて単結晶SiCインゴットにレーザー光線を照射して切断予定面に剥離層を形成し、剥離層が形成された切断予定面に沿って単結晶SiCインゴットからウエーハを剥離する技術が提案されている(たとえば特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-94221号公報
【文献】特開2013-49161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、インゴットに剥離層を形成する工程、インゴットからウエーハを剥離する工程、インゴットの上面を研削して平坦化する工程、は人手を介して行われており、生産効率が悪いという問題がある。
【0007】
上記事実に鑑みてなされた本発明の課題は、インゴットからウエーハを自動的に生成できるウエーハ生成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明が提供するのは以下のウエーハ生成装置である。すなわち、インゴットからウエーハを生成するウエーハ生成装置であって、インゴットを保持する第一の保持テーブルと該第一の保持テーブルに保持されたインゴットの上面を研削して平坦化する研削手段とから少なくとも構成されるインゴット研削ユニットと、インゴットを保持する第二の保持テーブルと該第二の保持テーブルに保持されたインゴットの上面から生成すべきウエーハの厚みに相当する深さにインゴットに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を位置づけてレーザー光線をインゴットに照射し剥離層を形成するレーザー照射手段とから少なくとも構成されるレーザー照射ユニットと、インゴットを保持する第三の保持テーブルと該第三の保持テーブルに保持されたインゴットの上面を保持し剥離層からウエーハを剥離するウエーハ剥離手段とから少なくとも構成されるウエーハ剥離ユニットと、インゴットを支持するインゴット支持部と剥離されたウエーハを支持するウエーハ支持部とを備えたトレーと、該トレーに支持されたインゴットを該インゴット研削ユニットと該レーザー照射ユニットと該ウエーハ剥離ユニットとの間で搬送するベルトコンベアーユニットと、該トレーに支持されたインゴットを収容するインゴットストッカーと、該インゴットストッカーに収容された該トレーに支持されたインゴットを該ベルトコンベアーユニットに受け渡すインゴット受渡ユニットと、から少なくとも構成されるウエーハ生成装置である。
【0009】
好ましくは、該インゴットストッカーは、インゴットを支持した該トレーが載置される載置テーブルと、該載置テーブルに配設されインゴットを支持した該トレーを送りだす第一の無端ベルトと、該第一の無端ベルトに連結され駆動力を伝達する駆動力伝達部と、該載置テーブルを上下に複数配設するラックと、から少なくとも構成され、該インゴット受渡ユニットは、該載置テーブルからインゴットを支持した該トレーを受け取る受取テーブルと、該受取テーブルに配設されインゴットを支持した該トレーを該ベルトコンベアーユニットに受け渡す第二の無端ベルトと、該第二の無端ベルトを駆動するモータと、該第二の無端ベルトに連結され駆動力を該駆動力伝達部に伝達するクラッチ部と、上下に複数配設された該載置テーブルに該受取テーブルを位置づけるエレベータと、から少なくとも構成される。剥離されたウエーハを収容するカセットが複数収容されたカセットストッカーと、該トレーの該ウエーハ支持部に支持されたウエーハを該カセットストッカーに収容されたカセットに収容する収容手段と、を更に備えるのが好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明が提供するウエーハ生成装置は、インゴットを保持する第一の保持テーブルと該第一の保持テーブルに保持されたインゴットの上面を研削して平坦化する研削手段とから少なくとも構成されるインゴット研削ユニットと、インゴットを保持する第二の保持テーブルと該第二の保持テーブルに保持されたインゴットの上面から生成すべきウエーハの厚みに相当する深さにインゴットに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を位置づけてレーザー光線をインゴットに照射し剥離層を形成するレーザー照射手段とから少なくとも構成されるレーザー照射ユニットと、インゴットを保持する第三の保持テーブルと該第三の保持テーブルに保持されたインゴットの上面を保持し剥離層からウエーハを剥離するウエーハ剥離手段とから少なくとも構成されるウエーハ剥離ユニットと、インゴットを支持するインゴット支持部と剥離されたウエーハを支持するウエーハ支持部とを備えたトレーと、該トレーに支持されたインゴットを該インゴット研削ユニットと該レーザー照射ユニットと該ウエーハ剥離ユニットとの間で搬送するベルトコンベアーユニットと、該トレーに支持されたインゴットを収容するインゴットストッカーと、該インゴットストッカーに収容された該トレーに支持されたインゴットを該ベルトコンベアーユニットに受け渡すインゴット受渡ユニットと、から少なくとも構成されているので、インゴットからウエーハを生成する一連の作業を自動的に行うことができ、生産効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に従って構成されたウエーハ生成装置の斜視図。
【
図2】
図1に示すインゴット研削ユニットの斜視図。
【
図3】
図2に示すインゴット研削ユニットの一部拡大斜視図。
【
図7】
図6に示すウエーハ剥離ユニットの一部断面図。
【
図10】(a)昇降板が通過位置に位置する状態のトレーストッパーの斜視図、(b)昇降板が停止位置に位置する状態のトレーストッパーの斜視図、(c)昇降板が離間位置に位置する状態のトレーストッパーの斜視図。
【
図11】(a)
図10(a)に示す状態に対応するトレーストッパー等の断面図、(b)
図10(b)に示す状態に対応するトレーストッパー等の断面図、(c)
図10(c)に示す状態に対応するトレーストッパー等の断面図。
【
図12】(a)昇降板が上昇位置に位置する状態の搬送手段の斜視図、(b)昇降板が下降位置に位置する状態の搬送手段の斜視図。
【
図13】
図1に示すインゴットストッカーの斜視図。
【
図14】
図1に示すインゴット受渡ユニットの斜視図。
【
図15】
図13に示すインゴットストッカーと
図14に示すインゴット受渡ユニットとを組み合わせた状態の斜視図。
【
図17】(a)インゴットの正面図、(b)インゴットの平面図、(c)インゴットの斜視図。
【
図18】インゴットがレーザー照射ユニットの第二の保持テーブルに搬送されている状態を示す斜視図。
【
図19】(a)剥離層形成工程が実施されている状態を示す斜視図、(b)剥離層形成工程が実施されている状態を示す正面図。
【
図20】(a)剥離層が形成されたインゴットの平面図、(b)(a)におけるB-B線断面図。
【
図21】(a)ウエーハ剥離ユニットの第三の保持テーブルの上方に液槽体が位置する状態を示す斜視図、(b)液槽体の下端が保持テーブルの上面に接触した状態を示す斜視図。
【
図22】ウエーハ剥離ユニットによってインゴットからウエーハが剥離された状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に従って構成されたウエーハ生成装置の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0013】
図1に示すウエーハ生成装置2は、インゴット研削ユニット4と、レーザー照射ユニット6と、ウエーハ剥離ユニット8と、インゴットを支持するインゴット支持部と剥離されたウエーハを支持するウエーハ支持部とを備えたトレー9と、トレー9に支持されたインゴットをインゴット研削ユニット4とレーザー照射ユニット6とウエーハ剥離ユニット8との間で搬送するベルトコンベアーユニット10と、トレー9に支持されたインゴットを収容するインゴットストッカー11と、インゴットストッカー11に収容されたトレー9に支持されたインゴットをベルトコンベアーユニット10に受け渡すインゴット受渡ユニット12と、から少なくとも構成される。
【0014】
図2を参照してインゴット研削ユニット4について説明する。インゴット研削ユニット4は、インゴットを保持する円形状の第一の保持テーブル14と、第一の保持テーブル14に保持されたインゴットの上面を研削して平坦化する研削手段16と、から少なくとも構成される。図示の実施形態におけるインゴット研削ユニット4は、直方体状の基台18と、基台18の上面に回転自在に搭載された円形状のターンテーブル20とを備える。ターンテーブル20は、基台18に内蔵されたターンテーブル用モータ(図示していない。)によって、ターンテーブル20の径方向中心を通ってZ軸方向に延びる軸線を回転中心として回転される。そして、図示の実施形態における第一の保持テーブル14は、ターンテーブル20の上面に回転自在に一対搭載されていて、ターンテーブル20の径方向中心(回転中心)を対称点として点対称に配置されている。第一の保持テーブル14は、ターンテーブル20の回転によって、研削手段16により研削加工が実施される研削位置(
図2において奥側の位置)と、インゴットを着脱するためのインゴット着脱位置(
図2において手前側の位置)とに交互に位置づけられる。
【0015】
第一の保持テーブル14は、ターンテーブル20の下面に装着された第一の保持テーブル用モータ(図示していない。)によって、第一の保持テーブル14の径方向中心を通ってZ軸方向に延びる軸線を回転中心として回転される。また、第一の保持テーブル14の上面には、吸引手段(図示していない。)に接続された多孔質の吸着チャック22が配置されており、第一の保持テーブル14においては、吸引手段で吸着チャック22の上面に吸引力を生成することにより、吸着チャック22の上面に載せられたインゴットを吸引保持するようになっている。なお、Z軸方向は
図2に矢印Zで示す上下方向である。また、
図2に矢印Xで示すX軸方向はZ軸方向に直交する方向であり、
図2に矢印Yで示すY軸方向はX軸方向およびZ軸方向に直交する方向である。X軸方向およびY軸方向が規定する平面は実質上水平である。
【0016】
図示の実施形態では
図2に示すとおり、インゴット研削ユニット4の研削手段16は、基台18の上面に搭載された門型の支持フレーム24を備える。支持フレーム24は、Y軸方向に間隔をおいて基台18の上面から上方に延びる一対の支柱26と、支柱26の上端間に架け渡されY軸方向に延びる梁28とを有する。一対の支柱26には、スピンドルハウジング30が一対の連結片32を介してZ軸方向に移動自在(昇降自在)に支持されている。梁28の上面には、スピンドルハウジング30をZ軸方向に移動(昇降)させるための一対の昇降用モータ34が搭載されている。昇降用モータ34は、支柱26の内部においてZ軸方向に延びるボールねじ(図示していない。)の片端部に連結され、ボールねじのナット部(図示していない。)は連結片32に固定されている。そして、昇降用モータ34の回転運動がボールねじによって直線運動に変換されて連結片32に伝達され、これによってスピンドルハウジング30が昇降される。
【0017】
スピンドルハウジング30にはスピンドル36(
図3参照。)がZ軸方向に延びる軸線を中心として回転自在に支持されており、このスピンドル36は、スピンドルハウジング30に内蔵されたスピンドル用モータ(図示していない。)によってZ軸方向に延びる軸線を中心として回転される。スピンドル36の下端には円板状のホイールマウント38が固定され、ホイールマウント38の下面にはボルト40で環状の研削ホイール42が固定されている。研削ホイール42の下面の外周縁部には、周方向に間隔をおいて環状に配置された複数の研削砥石44が固定されている。
図3に示すとおり、第一の保持テーブル14が研削位置に位置づけられた際に、第一の保持テーブル14の回転中心を研削砥石44が通るように、研削ホイール42の回転中心は第一の保持テーブル14の回転中心に対して変位している。このため研削手段16においては、第一の保持テーブル14と研削ホイール42とを相互に回転させながら、第一の保持テーブル14に保持されたインゴットの上面と研削砥石44とを接触させることにより、インゴットの上面全体を研削砥石44で研削して平坦化することができる。
【0018】
図1および
図4を参照してレーザー照射ユニット6について説明する。
図1に示すとおり、インゴット研削ユニット4に隣接して配置されているレーザー照射ユニット6は、インゴットを保持する円形状の第二の保持テーブル60と、第二の保持テーブル60に保持されたインゴットの上面から生成すべきウエーハの厚みに相当する深さに、インゴットに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を位置づけて、レーザー光線をインゴットに照射し剥離層を形成するレーザー照射手段62と、から少なくとも構成される。
【0019】
図示の実施形態では
図4に示すとおり、レーザー照射ユニット6は直方体状の基台64を備えており、この基台64の上面には、下方に没入してX軸方向に延びる搭載凹所64aが形成されている。そして、図示の実施形態における第二の保持テーブル60は、X軸方向に移動自在かつZ軸方向に延びる軸線を中心として回転自在に基台64の搭載凹所64aに搭載されている。また、基台64には、搭載凹所64aに沿って第二の保持テーブル60をX軸方向に移動させるX軸送り手段(図示していない。)と、第二の保持テーブル60の径方向中心を通ってZ軸方向に延びる軸線を回転中心として第二の保持テーブル60を回転させる第二の保持テーブル用モータ(図示していない。)とが装着されている。X軸送り手段は、たとえば、第二の保持テーブル60に連結されX軸方向に延びるボールねじと、このボールねじを回転させるモータとを有する構成でよい。第二の保持テーブル用モータは第二の保持テーブル60と共にX軸送り手段でX軸方向に移動され、したがって第二の保持テーブル60がX軸送り手段でX軸方向に移動された場合でも、第二の保持テーブル用モータは第二の保持テーブル60を回転させる。また、第二の保持テーブル60の上面には、吸引手段(図示していない。)に接続された多孔質の吸着チャック66が配置されており、第二の保持テーブル60においては、吸引手段で吸着チャック66の上面に吸引力を生成することにより、吸着チャック66の上面に載せられたインゴットを吸引保持するようになっている。
【0020】
図4に示すとおり、レーザー照射ユニット6のレーザー照射手段62は、基台64の上面に搭載された門型の支持フレーム68と、支持フレーム68の内側に支持されたケーシング70と、Y軸方向に移動自在にケーシング70の下端側に装着されたY軸可動部材(図示していない。)と、Y軸可動部材をY軸方向に移動させるY軸送り手段(図示していない。)とを含む。Y軸送り手段は、たとえば、Y軸可動部材に連結されY軸方向に延びるボールねじと、このボールねじを回転させるモータとを有する構成でよい。
【0021】
図4と共に
図5を参照して説明すると、レーザー照射手段62は、更に、ケーシング70に内蔵されたレーザー発振器72(
図5参照。)と、Y軸可動部材の下端側に昇降自在に装着された集光器74(
図4および
図5参照。)と、集光器74とY軸方向に間隔をおいてY軸可動部材の下端側に装着されたアライメント手段76(
図4参照。)と、集光器74を昇降させて集光器74で集光するパルスレーザー光線LBの集光点のZ軸方向位置を調整する集光点位置調整手段(図示していない。)とを含む。レーザー発振器72は、インゴットに対して透過性を有する波長のパルスレーザー光線LBを発振するようになっている。集光器74は、レーザー発振器72が発振したパルスレーザー光線LBを集光する集光レンズ(図示していない。)を有する。アライメント手段76は、第二の保持テーブル60に保持されたインゴットを撮像してレーザー加工すべき領域を検出するようになっている。集光点位置調整手段は、たとえば、集光器74に連結されZ軸方向に延びるボールねじと、このボールねじを回転させるモータとを有する構成でよい。
【0022】
図5に示すとおり、ケーシング70には、レーザー発振器72とX軸方向に間隔をおいて配置され、光軸をX軸方向としてレーザー発振器72が発振したパルスレーザー光線LBを反射して光軸をY軸方向に変換する第一のミラー78と、第一のミラー78とY軸方向に間隔をおいて集光器74の上方に配置され、第一のミラー78で反射したパルスレーザー光線LBの光軸をY軸方向からZ軸方向に変換してパルスレーザー光線LBを集光器74に導く第二のミラー(図示していない。)とが内蔵されている。
【0023】
第二のミラーは、Y軸可動部材に装着されており、Y軸送り手段でY軸可動部材が移動されると、集光器74およびアライメント手段76と共にY軸方向に移動するようになっている。そして、光軸がX軸方向に設定されてレーザー発振器72から発振されたパルスレーザー光線LBは、第一のミラー78で光軸がX軸方向からY軸方向に変換されて第二のミラーに導かれ、次いで第二のミラーで光軸がY軸方向からZ軸方向に変換されて集光器74に導かれた後、集光器74の集光レンズで集光されて第二の保持テーブル60に保持されたインゴットに照射される。また、Y軸送り手段でY軸可動部材を移動させることにより集光器74をY軸方向に移動させた場合でも、また集光点位置調整手段で集光器74を昇降させた場合でも、X軸方向と平行にレーザー発振器72から発振されたパルスレーザー光線LBは、第一のミラー78で光軸がX軸方向からY軸方向に変換されて第二のミラーに導かれ、第二のミラーに導かれたパルスレーザー光線LBは第二のミラーで光軸がY軸方向からZ軸方向に変換されて集光器74に導かれる。
【0024】
そして、レーザー照射手段62においては、第二の保持テーブル60に保持されたインゴットをアライメント手段76で撮像してレーザー加工すべき領域を検出し、集光点位置調整手段で集光器74を昇降させて、第二の保持テーブル60に保持されたインゴットの上面から生成すべきウエーハの厚みに相当する深さに、インゴットに対して透過性を有する波長のパルスレーザー光線LBの集光点を位置づけた上で、Y軸送り手段で集光器74をY軸方向に適宜移動させながら、第二の保持テーブル60に保持されたインゴットにパルスレーザー光線LBを照射することにより、強度が低下した剥離層をインゴットの内部に形成することができる。なお、第二の保持テーブル60に保持されたインゴットにパルスレーザー光線LBを照射する際は、X軸送り手段で第二の保持テーブル60をX軸方向に移動させてもよい。
【0025】
図1および
図6を参照してウエーハ剥離ユニット8について説明する。
図1に示すとおり、レーザー照射ユニット6に隣接して配置されているウエーハ剥離ユニット8は、インゴットを保持する円形状の第三の保持テーブル80と、第三の保持テーブル80に保持されたインゴットの上面を保持し剥離層からウエーハを剥離するウエーハ剥離手段82と、から少なくとも構成される。
【0026】
図示の実施形態では
図6に示すとおり、ウエーハ剥離ユニット8は直方体状の基台84を備えており、この基台84の上面には、下方に没入してX軸方向に延びる搭載凹所84aが形成されている。そして、図示の実施形態における第三の保持テーブル80は、X軸方向に移動自在に基台84の搭載凹所84aに搭載されている。また、基台84には、搭載凹所84aに沿って第三の保持テーブル80をX軸方向に移動させるX軸送り手段(図示していない。)が装着されている。X軸送り手段は、たとえば、第三の保持テーブル80に連結されX軸方向に延びるボールねじと、このボールねじを回転させるモータとを有する構成でよい。また、第三の保持テーブル80の上面には、吸引手段(図示していない。)に接続された多孔質の吸着チャック86が配置されており、第三の保持テーブル80においては、吸引手段で吸着チャック86の上面に吸引力を生成することにより、吸着チャック86の上面に載せられたインゴットを吸引保持するようになっている。
【0027】
図6に示すとおり、ウエーハ剥離ユニット8のウエーハ剥離手段82は、基台84の上面に搭載された門型の支持フレーム88と、支持フレーム88の内側に支持されたケーシング90と、ケーシング90に昇降自在に支持された基端部からX軸方向に延びるアーム92と、アーム92を昇降させるアーム移動手段(図示していない。)とを含む。アーム移動手段は、たとえば、アーム92の基端部に連結されZ軸方向に延びるボールねじと、このボールねじを回転させるモータとを有する構成でよい。
【0028】
図6と共に
図7を参照してウエーハ剥離手段82についての説明を続ける。
図6および
図7に示すとおり、アーム92の先端部には、インゴットからウエーハを剥離する際に第三の保持テーブル80と協働して液体を収容する液槽体94が固定されている。液槽体94は、円形状の天面壁96と、天面壁96の周縁から垂下する円筒状のスカート壁98とを有し、下端側が開放されている。スカート壁98の外径は第三の保持テーブル80の直径以下に形成され、アーム92が下降されるとスカート壁98の下端が第三の保持テーブル80の上面に接触するようになっている。天面壁96には液槽体94の外部と内部とを連通する円筒状の液体供給部100が付設され、液体供給部100は液体供給手段(図示していない。)に接続されている。
図7に示すとおり、スカート壁98の下端には環状のパッキン102が付設されている。そして、アーム移動手段によりアーム92を下降させて第三の保持テーブル80の上面にスカート壁98の下端を密着させると、第三の保持テーブル80の上面と液槽体94の内面とで液体収容空間104が規定される。液体供給手段から液体供給部100を通って液体収容空間104に供給された液体106は、パッキン102によって液体収容空間104から漏れるのが防止される。
【0029】
図7に示すとおり、液槽体94の天面壁96にはエアシリンダ108が装着され、エアシリンダ108のシリンダチューブ108aは天面壁96の上面から上方に延びている。エアシリンダ108のピストンロッド108bの下端部は、天面壁96の貫通開口96aを通過して天面壁96の下方に突出している。ピストンロッド108bの下端部には圧電セラミックス等から形成され得る超音波振動生成部材110が固定され、超音波振動生成部材110の下面には吸着片112が固定されている。下面に複数の吸引孔(図示していない。)が形成されている吸着片112は吸引手段(図示していない。)に接続されており、吸引手段で吸着片112の下面に吸引力を生成することにより、吸着片112はインゴットを吸引保持するようになっている。
【0030】
そして、ウエーハ剥離手段82においては、アーム移動手段によりアーム92を下降させ、剥離層が形成されたインゴットを保持した第三の保持テーブル80の上面にスカート壁98の下端を密着させると共に、エアシリンダ108のピストンロッド108bを下降させてインゴットの上面に吸着片112を吸着させた上で、液体収容空間104に液体106を収容した後、超音波振動生成部材110を作動させてインゴットに超音波振動を付与することにより剥離層の強度を更に低下させることができる。また、ウエーハ剥離手段82においては、インゴットの上面を吸着片112で吸着した状態で、エアシリンダ108により吸着片112を上昇させることにより、強度が更に低下した剥離層を起点としてインゴットからウエーハを剥離することができる。
【0031】
図8を参照してトレー9について説明する。図示の実施形態のトレー9は、矩形状の上壁113と、上壁113の下方に配置された矩形状の下壁114と、上壁113と下壁114とを連結する矩形状の一対の側壁115と、一対の側壁115間を貫通する空洞116とを備えた筐体から構成され、インゴットを支持するインゴット支持部117を上壁113の上面に備え、剥離されたウエーハを支持するウエーハ支持部118を下壁114の上面に備える。
【0032】
図示の実施形態のインゴット支持部117は、2以上の大きさのインゴットに対応した凹部119を備える。凹部119は、上壁113の上面から下方に没入した環状の大径凹部119aと、大径凹部119aよりも直径が小さく大径凹部119aよりも更に下方に没入した円形の小径凹部119bとを有する。大径凹部119aと小径凹部119bとは同心状に形成されている。そして、トレー9においては、大径凹部119aで比較的大径(たとえば直径6インチ)のインゴットを支持し、小径凹部119bで比較的小径(たとえば直径5インチ)のインゴットを支持するようになっている。
【0033】
詳細な図示は省略するが、ウエーハ支持部118は、2以上の大きさのウエーハに対応した凹部120を備える。ウエーハ支持部118の凹部120の構成は、インゴット支持部117の凹部119の構成と同様に、下壁114の上面から下方に没入した環状の大径凹部と、この大径凹部よりも直径が小さく大径凹部よりも更に下方に没入した円形の小径凹部とを有する構成でよい。ウエーハ支持部118の大径凹部と小径凹部とは同心状に形成され得る。そして、トレー9においては、ウエーハ支持部118の大径凹部で比較的大径(たとえば直径6インチ)のウエーハを支持し、ウエーハ支持部118の小径凹部で比較的小径(たとえば直径5インチ)のウエーハを支持するようになっている。なお、図示の実施形態とは逆に、トレー9は、上壁113の上面にウエーハ支持部を備え、下壁114の上面にインゴット支持部を備える構成であってもよい。
【0034】
図9を参照してベルトコンベアーユニット10について説明する。インゴット研削ユニット4とレーザー照射ユニット6とウエーハ剥離ユニット8とに沿って配置されているベルトコンベアーユニット10は、
図9に矢印Y1で示すY1方向にトレー9を搬送する往路ベルトコンベアー121と、
図9に矢印Y2で示すY2方向(Y1の反対方向)にトレー9を搬送する復路ベルトコンベアー122と、往路ベルトコンベアー121の終点から復路ベルトコンベアー122の始点にトレー9を搬送する搬送手段123と、から少なくとも構成される。
【0035】
往路ベルトコンベアー121は、X軸方向に間隔をおいてY軸方向に延びる一対の支持壁125と、Y軸方向に間隔をおいて各支持壁125の内面に回転自在に装着された複数のローラー126と、ローラー126に巻き掛けられた一対の無端ベルト127と、ローラー126を回転させるモータ128とを備える。図示の実施形態では、Y軸方向に沿って3個の往路ベルトコンベアー121が配置されているが、往路ベルトコンベアー121の数量や支持壁125のY軸方向長さを適宜変更することにより、トレー9の搬送路の長さを変更することができる。そして、往路ベルトコンベアー121においては、ローラー126を介して無端ベルト127をモータ128で回転させることにより、無端ベルト127に搭載されたトレー9をY1方向に搬送するようになっている。
【0036】
図示の実施形態では
図9に示すとおり、往路ベルトコンベアー121の下方に配置されている復路ベルトコンベアー122の構成は往路ベルトコンベアー121の構成と実質上同一でよいため、復路ベルトコンベアー122の構成には往路ベルトコンベアー121の構成と同一の符号を付してある。そして復路ベルトコンベアー122においては、往路ベルトコンベアー121とは反対方向に、ローラー126を介して無端ベルト127をモータ128で回転させることにより、無端ベルト127に搭載されたトレー9をY2方向に搬送するようになっている。なお、復路ベルトコンベアー122は往路ベルトコンベアー121の上方に配置されていてもよい。また、ウエーハ生成装置2が稼働している際は、往路ベルトコンベアー121および復路ベルトコンベアー122の双方が常時稼働しているのが好ましい。
【0037】
図9に示すとおり、往路ベルトコンベアー121におけるインゴット研削ユニット4に対面する位置とレーザー照射ユニット6に対面する位置とのそれぞれには、往路ベルトコンベアー121で搬送されているトレー9を停止させるトレーストッパー129が配置されている。図示の実施形態では
図10に示すとおり、トレーストッパー129は、適宜のブラケット(図示していない。)により固定された基板130と、基板130の上面に昇降自在に支持された昇降板131と、昇降板131を昇降させるシリンダ手段132と、昇降板131のY1方向下流側端部に固定されたストッパー片133とを備える。
【0038】
図10に示すとおり、昇降板131の上面には、トレー9の下壁114の下面に形成された一対の被係合凹所(図示していない。)に係合する一対の係合突起131aが形成されている。
図10および
図11に示すとおり、エアー駆動または電気駆動のシリンダ手段132は、往路ベルトコンベアー121で搬送されているトレー9の下端よりもストッパー片133の上端が下方に位置する通過位置(たとえば
図10(a)および
図11(a)に示す位置)と、往路ベルトコンベアー121で搬送されているトレー9にストッパー片133が接触する停止位置(たとえば
図10(b)および
図11(b)に示す位置)と、トレー9を無端ベルト127から離間させる離間位置(たとえば
図10(c)および
図11(c)に示す位置)とに昇降板131を位置づける。
【0039】
そして、トレーストッパー129においては、昇降板131を通過位置に位置づけることによりトレーストッパー129の上方をトレー9が通過することを許容し(
図11(a)参照。)、かつ通過位置よりも上方の停止位置に昇降板131を位置づけることにより、往路ベルトコンベアー121で搬送されているトレー9を停止させることができる(
図11(b)参照。)。さらに、トレーストッパー129においては、停止位置よりも上方の離間位置に昇降板131を位置づけることにより、停止させたトレー9の下面と無端ベルト127の上面とが摺動することで往路ベルトコンベアー121のモータ128にかかる負荷が増大してしまうのが防止される(
図11(c)参照。)。また、停止位置や離間位置において昇降板131の係合突起131aがトレー9の被係合凹所に係合すると、昇降板131におけるトレー9の位置ずれが防止される。
【0040】
図9および
図12を参照して搬送手段123について説明する。往路ベルトコンベアー121の終点および復路ベルトコンベアー122の始点に隣接して配置されている搬送手段123は、Z軸方向に延びる支持壁134と、支持壁134に昇降自在に支持された昇降板135と、昇降板135を昇降させる昇降手段136と、Y軸方向に移動自在に昇降板135の上面に支持されたY軸可動板137と、Y軸可動板137をY軸方向に移動させるY軸送り手段(図示していない。)と、Y軸可動板137のY1方向下流側端部に固定されたストッパー片138とを備える。
【0041】
昇降手段136は、昇降板135に連結されZ軸方向に延びるボールねじ139と、ボールねじ139を回転させるモータ140とを有し、
図12(a)に示す上昇位置から
図12(b)に示す下降位置までの間で、支持壁134の案内レール134aに沿って昇降板135をZ軸方向に昇降させると共に任意の位置で停止させる。Y軸可動板137の上面には、トレー9の上記一対の被係合凹所に係合する一対の係合突起137aが形成されている。Y軸送り手段は、たとえばエアシリンダまたは電動シリンダから構成され、
図12(a)および
図12(b)に二点鎖線で示す前進位置と、
図12(a)および
図12(b)に実線で示す後退位置との間で、昇降板135の案内レール135aに沿ってY軸可動板137をY軸方向に移動させる。
【0042】
そして、搬送手段123においては、往路ベルトコンベアー121の無端ベルト127の上面よりも若干下方にY軸可動板137の上面を位置づけると共に、Y軸可動板137を前進位置に位置づけることにより、往路ベルトコンベアー121で搬送されているトレー9にストッパー片138を接触させ、往路ベルトコンベアー121の終点(図示の実施形態ではウエーハ剥離ユニット8に対面する位置でもある。)でトレー9を停止させることができる。また、トレー9を停止させた状態で昇降板135を上昇させることにより、トレー9の下面を無端ベルト127の上面から離間させ、Y軸可動板137の上面にトレー9を搭載することができる。Y軸可動板137にトレー9を搭載すると、トレー9の被係合凹所にY軸可動板137の係合突起137aが係合して、Y軸可動板137におけるトレー9の位置ずれが防止される。さらに、トレー9を搭載したY軸可動板137を後退位置に位置づけ、次いで復路ベルトコンベアー122の無端ベルト127の上面よりも若干上方にY軸可動板137の上面が位置するまで昇降板135を下降させ、次いでY軸可動板137を前進位置に位置づけ、そして昇降板135を若干下降させることにより、Y軸可動板137から復路ベルトコンベアー122の無端ベルト127にトレー9を移し替えることができる。このようにして、搬送手段123は、往路ベルトコンベアー121の終点から復路ベルトコンベアー122の始点にトレー9を搬送する。
【0043】
図示の実施形態では
図9に示すとおり、ベルトコンベアーユニット10は、更に、往路ベルトコンベアー121の始点側のトレーストッパー129で停止されたトレー9とインゴット研削ユニット4との間でインゴットを移し替える第一の移し替え手段141と、往路ベルトコンベアー121の終点側のトレーストッパー129で停止されたトレー9とレーザー照射ユニット6との間でインゴットを移し替える第二の移し替え手段142と、搬送手段123で停止されたトレー9とウエーハ剥離ユニット8との間でインゴットを移し替えると共にインゴットから剥離されたウエーハをウエーハ剥離ユニット8からトレー9に移し替える第三の移し替え手段143とを備える。
【0044】
第二の移し替え手段142の構成および第三の移し替え手段143の構成は第一の移し替え手段141の構成と同一でよいことから、以下、第一の移し替え手段141の構成について説明し、第二の移し替え手段142の構成および第三の移し替え手段143の構成についての説明を省略する。第一の移し替え手段141は、多関節アーム144と、多関節アーム144を駆動する駆動源(図示していない。)と、多関節アーム144の先端に装着された吸着片145とを含む。エアー駆動源または電動駆動源からなる駆動源は、多関節アーム144を駆動して、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向のそれぞれの方向において任意の位置に吸着片145を位置づけると共に、吸着片145を上下反転させるようになっている。片面に複数の吸引孔(図示していない。)が形成されている吸着片145は吸引手段(図示していない。)に接続されており、第一の移し替え手段141においては、吸引手段で吸着片145に吸引力を生成することにより、吸着片145でインゴットを吸引保持するようになっている。また、第一の移し替え手段141においては、駆動源で多関節アーム144を駆動させることにより、トレーストッパー129で停止されたトレー9とインゴット研削ユニット4との間で、吸着片145で吸着したインゴットを移し替える。
【0045】
図13を参照してインゴットストッカー11について説明する。図示の実施形態のインゴットストッカー11は、インゴットを支持したトレー9が載置される載置テーブル146と、載置テーブル146に配設されインゴットを支持したトレー9を送りだす第一の無端ベルト148と、第一の無端ベルト148に連結され駆動力を伝達する駆動力伝達部150と、載置テーブル146を上下に複数配設するラック152と、から少なくとも構成される。
【0046】
図13に示すとおり、矩形状の載置テーブル146の上面にはY軸方向に延びる長方形状開口154が形成されており、また載置テーブル146には複数のローラー(図示していない。)が回転自在に装着されている。載置テーブル146の複数のローラーには第一の無端ベルト148が巻き掛けられており、第一の無端ベルト148の上面は長方形状開口154から露出している。また、載置テーブル146にはX軸方向に延びる円筒形状の駆動力伝達部150が回転自在に装着されている。駆動力伝達部150の一端部は載置テーブル146のY軸方向一端側の側面から突出しており、駆動力伝達部150の他端部は、第一の無端ベルト148が巻き掛けられているローラーに連結されている。図示の実施形態のラック152は、X軸方向に間隔をおいて配置された一対の側面板156と、側面板156間に上下方向に間隔をおいて配置された4個の棚板158とを含み、各棚板158に載置テーブル146が配設されている。そして、インゴットストッカー11においては、駆動力伝達部150が回転されると第一の無端ベルト148が回転し、載置テーブル146の上面に載置されたトレー9を第一の無端ベルト148によってY軸方向に送りだすようになっている。なお、載置テーブル146のローラーが円筒部材から構成されていて駆動力伝達部150を兼ねていてもよい。
【0047】
図1および
図14を参照してインゴット受渡ユニット12について説明する。
図1に示すとおり、インゴット受渡ユニット12は、ベルトコンベアーユニット10とインゴットストッカー11との間に配置されている。また、
図14に示すとおり、図示の実施形態のインゴット受渡ユニット12は、載置テーブル146からインゴットを支持したトレー9を受け取る受取テーブル160と、受取テーブル160に配設されインゴットを支持したトレー9をベルトコンベアーユニット10に受け渡す第二の無端ベルト162と、第二の無端ベルト162を駆動するモータ164と、第二の無端ベルト162に連結され駆動力をインゴットストッカー11の駆動力伝達部150に伝達するクラッチ部166と、上下に複数配設された載置テーブル146に受取テーブル160を位置づけるエレベータ168と、から少なくとも構成される。
【0048】
図14に示すとおり、矩形状の受取テーブル160の上面にはX軸方向に間隔をおいてY軸方向に延びる一対の長方形状開口170が形成されており、また受取テーブル160には複数のローラー(図示していない。)が回転自在に装着されている。受取テーブル160の複数のローラーには第二の無端ベルト162が巻き掛けられており、第二の無端ベルト162の上面は長方形状開口170から露出している。また、受取テーブル160のY軸方向一端側にはX軸方向に延びる円筒形状の駆動力伝達部172が回転自在に装着されている。駆動力伝達部172の一端部は受取テーブル160の側面から突出しており、駆動力伝達部172の他端部は、第二の無端ベルト162が巻き掛けられているローラーに連結されている。モータ164は受取テーブル160のY軸方向他端側の側面に装着されており、モータ164の回転軸(図示していない。)は第二の無端ベルト162が巻き掛けられているローラーに連結されている。なお、受取テーブル160のローラーが円筒部材から構成されていて駆動力伝達部172を兼ねていてもよい。
【0049】
図14を参照して説明を続けると、クラッチ部166は、受取テーブル160に固定されたシリンダチューブ174aおよびX軸方向に進退自在にシリンダチューブ174aに装着されたピストンロッド174bを有するエアシリンダ174と、エアシリンダ174のピストンロッド174bの先端に固定されたブラケット片176と、Y軸方向に間隔をおいてブラケット片176に回転自在に装着された一対のテーパーピン178と、一対のテーパーピン178に巻き掛けられた無端状の伝達ベルト180とを有する。また、エレベータ168は、基板182と、基板182のX軸方向一端部からZ軸方向に延びる支持板184と、支持板184に昇降自在に支持された昇降板186と、昇降板186を昇降させる昇降手段188とを備える。昇降板186の上面には受取テーブル160が配設されている。昇降手段188は、昇降板186に連結されZ軸方向に延びるボールねじ(図示していない。)と、このボールねじを回転させるモータ190とを有し、支持板184の案内レール184aに沿って昇降板186をZ軸方向に昇降させると共に任意の位置で停止させるようになっている。
【0050】
図15を参照して説明すると、インゴット受渡ユニット12においては、エレベータ168の昇降板186を昇降させ、インゴットストッカー11の任意の載置テーブル146の上面と受取テーブル160の上面とが一致する位置で昇降板186を停止させた後、クラッチ部166のエアシリンダ174のピストンロッド174bを
図15に示す伸長位置から縮退位置に移動させる。そうすると、クラッチ部166の一対のテーパーピン178の一方がインゴットストッカー11の駆動力伝達部150に挿入されて回転伝達可能に連結されると共に、一対のテーパーピン178の他方がインゴット受渡ユニット12の駆動力伝達部172に挿入されて回転伝達可能に連結される。この状態で、モータ164が回転すると、第二の無端ベルト162が回転すると共に、インゴット受渡ユニット12の駆動力伝達部172と一対のテーパーピン178と伝達ベルト180とインゴットストッカー11の駆動力伝達部150とが回転することによって、インゴットストッカー11の第一の無端ベルト148が回転することになる。これによって、インゴットストッカー11の載置テーブル146の上面に載置されたトレー9が第一の無端ベルト148によってY軸方向に送りだされ、インゴット受渡ユニット12の受取テーブル160に受け渡される。
【0051】
また、インゴット受渡ユニット12は、受取テーブル160でトレー9を受け取った後、モータ164の回転を停止させ、かつクラッチ部166のエアシリンダ174のピストンロッド174bを縮退位置から伸長位置に移動させることにより、一対のテーパーピン178の一方とインゴットストッカー11の駆動力伝達部150との連結を解除すると共に、一対のテーパーピン178の他方とインゴット受渡ユニット12の駆動力伝達部172との連結を解除する。そして、インゴット受渡ユニット12は、エレベータ168で昇降板186を適宜昇降させることにより、トレー9を載置した受取テーブル160の上面とベルトコンベアーユニット10の往路ベルトコンベアー121の無端ベルト127の上面とを一致させた後、モータ164を回転させる。これによって、第二の無端ベルト162が回転して、受取テーブル160の上面に載置されたトレー9がベルトコンベアーユニット10の往路ベルトコンベアー121に受け渡される。このようにして、インゴット受渡ユニット12は、インゴットストッカー11に収容されたトレー9に支持されたインゴットをベルトコンベアーユニット10に受け渡すようになっている。
【0052】
なお、インゴットストッカー11の駆動力伝達部150、インゴット受渡ユニット12の駆動力伝達部172およびクラッチ部166については、上述の実施形態に限定されず、たとえば
図16に示すような他の実施形態であってもよい。
図16に示す他の実施形態においては、上述のクラッチ部166の一対のテーパーピン178に代えて、受取テーブル160のローラーに連結された回転軸192と駆動マグネット部材194とがブラケット片176に回転自在に装着されている。また、載置テーブル146のローラーには、駆動力伝達部としての従動マグネット部材196が装着されている。
【0053】
そして、
図16に示す他の実施形態においては、インゴットストッカー11の任意の載置テーブル146の上面と受取テーブル160の上面とが一致する位置に昇降板186を移動させた後、駆動マグネット部材194および従動マグネット部材196から構成されるマグネットカップリングを介して、載置テーブル146の第一の無端ベルト148にモータ164の回転が伝達されるようになっている。なお、上記マグネットカップリングは非接触でよい(駆動マグネット部材194と従動マグネット部材196との間に間隙を設けることができる)ことから、
図16に示す他の実施形態においては、ブラケット片176をX軸方向に移動させるためのエアシリンダ174は不要である。
【0054】
図1および
図9を参照して説明すると、図示の実施形態のウエーハ生成装置2は、剥離されたウエーハを収容するカセット198が複数収容されたカセットストッカー200と、トレー9のウエーハ支持部118に支持されたウエーハをカセットストッカー200に収容されたカセット198に収容する収容手段202と、を更に備える。
【0055】
図1に示すとおり、カセットストッカー200は、X軸方向に4列かつZ軸方向に4段の計16個のカセット収容部204を有する。各カセット収容部204には、ウエーハ剥離ユニット8においてインゴットから剥離されたウエーハを収容するカセット198が収容される。カセット198は、上下方向に間隔をおいて複数枚(たとえば25枚)のウエーハを収容可能になっている。また、カセットストッカー200においては、各カセット収容部204がY軸方向において貫通しており、
図1においてY軸方向手前側から各カセット収容部204にカセット198を収容可能であり、かつ
図1においてY軸方向奥側からカセット収容部204内のカセット198にウエーハを収容可能となっている。
【0056】
図9に示すとおり、収容手段202は、インゴット受渡ユニット12およびカセットストッカー200に隣接して配置されている。収容手段202は、支持壁206と、X軸方向に移動自在に支持壁206に支持されたX軸可動部材208と、X軸可動部材208をX軸方向に移動させるX軸送り手段210と、X軸可動部材208に昇降自在に支持された昇降ブロック212と、昇降ブロック212を昇降させる昇降手段214と、昇降ブロック212に支持された多関節アーム216と、多関節アーム216の先端に上下反転自在に装着された保持片218と、多関節アーム216を駆動させる駆動源(図示していない。)とを備える。
【0057】
図9を参照して説明を続けると、支持壁206に支持されているX軸送り手段210は、ナット部220aがX軸可動部材208に固定されX軸方向に延びるボールねじ220と、ボールねじ220を回転させるモータ222とを有し、支持壁206の案内レール206aに沿ってX軸可動部材208をX軸方向に移動させる。X軸可動部材208に支持されている昇降手段214は、昇降ブロック212に連結されZ軸方向に延びるボールねじ224と、ボールねじ224を回転させるモータ226とを有し、X軸可動部材208の案内レール208aに沿って昇降ブロック212を昇降させる。エアー駆動源または電動駆動源からなる駆動源は、多関節アーム216を駆動して、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向のそれぞれの方向において任意の位置に保持片218を位置づけると共に保持片218を上下反転させる。片面に複数の吸引孔(図示していない。)が形成されている保持片218は吸引手段(図示していない。)に接続されている。
【0058】
そして、収容手段202においては、保持片218の吸引孔を下に向け、吸引手段で保持片218に吸引力を生成することにより、トレー9のウエーハ支持部118に支持されたウエーハを保持片218で吸引保持することができ、かつ保持片218で保持したウエーハをカセットストッカー200に収容されたカセット198に収容することができるようになっている。
【0059】
図17(a)ないし(c)には、ウエーハ生成装置2によって加工が施され得るインゴット230が示されている。図示のインゴット230は、六方晶単結晶SiCから全体として円柱形状に形成されており、円形状の第一の面232と、第一の面232と反対側の円形状の第二の面234と、第一の面232および第二の面234の間に位置する周面236と、第一の面232から第二の面234に至るc軸(<0001>方向)と、c軸に直交するc面({0001}面)とを有する。
【0060】
図示のインゴット230においては、第一の面232の垂線238に対してc軸が傾いており、c面と第一の面232とでオフ角α(たとえばα=1、3、6度)が形成されている。オフ角αが形成される方向を
図17(a)ないし(c)に矢印Aで示す。また、インゴット230の周面236には、結晶方位を示す矩形状の第一のオリエンテーションフラット240および第二のオリエンテーションフラット242が形成されている。第一のオリエンテーションフラット240は、オフ角αが形成される方向Aに平行であり、第二のオリエンテーションフラット242は、オフ角αが形成される方向Aに直交している。
図17(b)に示すとおり、上方からみて、第二のオリエンテーションフラット242の長さL2は、第一のオリエンテーションフラット240の長さL1よりも短い(L2<L1)。
【0061】
なお、ウエーハ生成装置2によって加工が施され得るインゴットは、上記インゴット230に限定されず、たとえば、第一の面の垂線に対してc軸が傾いておらず、c面と第一の面とのオフ角が0度である(すなわち、第一の面の垂線とc軸とが一致している)単結晶SiCインゴットでもよく、あるいはSi(シリコン)やGaN(窒化ガリウム)等の単結晶SiC以外の素材から形成されているインゴットでもよい。
【0062】
上述したとおりのウエーハ生成装置2によってインゴット230からウエーハを生成する際は、まず、インゴット230をインゴットストッカー11に収容するインゴット収容工程を実施する。図示の実施形態のインゴット収容工程では、まず、4個のインゴット230を準備し、
図1に示すとおり、4個のインゴット230を4個のトレー9のインゴット支持部117に支持させる。次いで、インゴット230を支持した各トレー9をインゴットストッカー11の各載置テーブル146に載置して収容する。
【0063】
インゴット収容工程を実施した後、インゴットストッカー11からレーザー照射ユニット6にインゴット230を搬送する第一の搬送工程をインゴット受渡ユニット12およびベルトコンベアーユニット10で実施する。インゴット230は、通常、後述の剥離層形成工程におけるレーザー光線の入射を妨げない程度に端面(第一の面232および第二の面234)が平坦化されていることから、図示の実施形態では、第一の搬送工程においてインゴットストッカー11からレーザー照射ユニット6にインゴット230を搬送する例を説明するが、インゴット230の端面が剥離層形成工程におけるレーザー光線の入射を妨げない程度に平坦化されていない場合には、第一の搬送工程においてインゴットストッカー11からインゴット研削ユニット4にインゴット230を搬送してもよい。
【0064】
第一の搬送工程では、まず、インゴット受渡ユニット12のエレベータ168の昇降板186を昇降させ、インゴットストッカー11の任意の位置(たとえば最上段)の載置テーブル146の上面と受取テーブル160の上面とが一致する位置に昇降板186を位置づける。次いで、クラッチ部166のエアシリンダ174を作動させ、クラッチ部166の一対のテーパーピン178の一方をインゴットストッカー11の駆動力伝達部150に挿入すると共に、一対のテーパーピン178の他方をインゴット受渡ユニット12の駆動力伝達部172に挿入する。次いで、インゴット受渡ユニット12のモータ164を回転させ、第二の無端ベルト162と共に第一の無端ベルト148を回転させる。これによって、載置テーブル146に載置されたトレー9を第一の無端ベルト148によってY軸方向に送りだし、インゴット受渡ユニット12の受取テーブル160に受け渡す。
【0065】
受取テーブル160にトレー9を受け渡した後、モータ164の回転を停止させる。また、エアシリンダ174のピストンロッド174bを縮退位置から伸長位置に移動させることにより、一対のテーパーピン178の一方とインゴットストッカー11の駆動力伝達部150との連結を解除すると共に、一対のテーパーピン178の他方とインゴット受渡ユニット12の駆動力伝達部172との連結を解除する。次いで、エレベータ168の昇降板186を移動させることにより、トレー9を載置した受取テーブル160の上面とベルトコンベアーユニット10の往路ベルトコンベアー121の無端ベルト127の上面とを一致させる。次いで、モータ164を回転させることによって、第二の無端ベルト162を回転させて、受取テーブル160の上面に載置されたトレー9を往路ベルトコンベアー121に受け渡す。
【0066】
トレー9を往路ベルトコンベアー121に受け渡した後、レーザー照射ユニット6に対面する位置まで往路ベルトコンベアー121でトレー9を搬送する。この際、インゴット研削ユニット4に対面する位置に配置されたトレーストッパー129の昇降板131を通過位置に位置づけると共に、レーザー照射ユニット6に対面する位置に配置されたトレーストッパー129の昇降板131を停止位置に位置づける。これによって、往路ベルトコンベアー121でY1方向に搬送されているトレー9を、インゴット研削ユニット4に対面する位置に配置されたトレーストッパー129の上方を通過させると共に、レーザー照射ユニット6に対面する位置のトレーストッパー129で停止させることができる。
【0067】
次いで、停止させたトレー9の下面を無端ベルト127の上面から離間させるため、トレーストッパー129の昇降板131を離間位置に上昇させる。次いで、第二の移し替え手段142の多関節アーム144を駆動させ、吸着片145をインゴット230の上面(図示の実施形態では第一の面232)に密着させる。次いで、吸着片145に接続された吸引手段を作動させて吸着片145に吸引力を生成し、インゴット230を吸着片145で吸引保持する。次いで、多関節アーム144で吸着片145を移動させ、
図18に示すとおり、吸着片145で吸引保持したインゴット230の下面(図示の実施形態では第二の面234)をレーザー照射ユニット6の第二の保持テーブル60の上面に接触させる。この際、第二の保持テーブル60は、インゴットを着脱するためのインゴット着脱位置(
図4に示す位置)に位置づけられている。
【0068】
また、
図18を参照することによって理解されるとおり、図示の実施形態の円形状の吸着チャック66の周縁には、インゴット230の第一のオリエンテーションフラット240に対応する第一の直線部66aと、第二のオリエンテーションフラット242に対応する第二の直線部66bとが形成されており、第一のオリエンテーションフラット240および第二のオリエンテーションフラット242が形成されたインゴット230を吸着チャック66によって所定の吸引力で吸引保持することができるようになっている。そして、吸着片145に接続された吸引手段を停止させ、吸着片145の吸引力を解除し、第二の保持テーブル60の上面にインゴット230を載せる。このようにして、インゴットストッカー11からレーザー照射ユニット6にインゴット230を搬送する第一の搬送工程を実施する。なお、図示は省略するが、インゴット研削ユニット4の第一の保持テーブル14の吸着チャック22およびウエーハ剥離ユニット8の第三の保持テーブル80の吸着チャック86にも、第一のオリエンテーションフラット240に対応する第一の直線部と、第二のオリエンテーションフラット242に対応する第二の直線部とが形成されている。
【0069】
第一の搬送工程を実施した後、第二の保持テーブル60でインゴット230を保持すると共に、第二の保持テーブル60に保持されたインゴット230の上面から生成すべきウエーハの厚みに相当する深さに、インゴット230に対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を位置づけて、レーザー光線をインゴット230に照射し剥離層を形成する剥離層形成工程をレーザー照射ユニット6で実施する。
【0070】
剥離層形成工程では、まず、第二の保持テーブル60の上面に吸引力を生成し、第二の保持テーブル60でインゴット230を吸引保持する。次いで、X軸送り手段で第二の保持テーブル60をX軸方向に移動させると共にY軸送り手段でY軸可動部材をY軸方向に移動させ、アライメント手段76の下方にインゴット230を位置づける。次いで、インゴット230の上方からアライメント手段76でインゴット230を撮像する。次いで、アライメント手段76で撮像したインゴット230の画像に基づいて、第二の保持テーブル用モータおよびX軸送り手段で第二の保持テーブル60を回転および移動させると共に、Y軸送り手段でY軸可動部材を移動させることにより、インゴット230の向きを所定の向きに調整すると共にインゴット230と集光器74とのXY平面における位置を調整する。インゴット230の向きを所定の向きに調整する際は、
図19(a)に示すとおり、第二のオリエンテーションフラット242をX軸方向に整合させることによって、オフ角αが形成される方向Aと直交する方向をX軸方向に整合させると共に、オフ角αが形成される方向AをY軸方向に整合させる。
【0071】
次いで、集光点位置調整手段で集光器74を昇降させ、
図19(b)に示すとおり、インゴット230の第一の面232から、生成すべきウエーハの厚みに相当する深さに集光点FPを位置づける。次いで、オフ角αが形成される方向Aと直交する方向に整合しているX軸方向にX軸送り手段で第二の保持テーブル60を移動させながら、インゴット230に対して透過性を有する波長のパルスレーザー光線LBを集光器74からインゴット230に照射する。そうすると、
図20(a)および
図20(b)に示すとおり、パルスレーザー光線LBの照射によりSiCがSi(シリコン)とC(炭素)とに分離し次に照射されるパルスレーザー光線LBが前に形成されたCに吸収されて連鎖的にSiCがSiとCとに分離すると共に、SiCがSiとCとに分離した部分246からc面に沿って等方的に延びるクラック248が生成される。
【0072】
次いで、Y軸送り手段でY軸可動部材を移動させることにより、オフ角αが形成される方向Aに整合しているY軸方向に、クラック248の幅を超えない範囲で所定インデックス量Liだけインゴット230に対して相対的に集光点FPをインデックス送りする。そして、パルスレーザー光線LBの照射とインデックス送りとを交互に繰り返すことにより、オフ角αが形成される方向Aと直交する方向に連続的に延びる分離部分246を、オフ角αが形成される方向Aに所定インデックス量Liの間隔をおいて複数形成すると共に、分離部分246からc面に沿って等方的に延びるクラック248を順次生成して、オフ角αが形成される方向Aにおいて隣接するクラック248とクラック248とが上下方向にみて重なるようにする。これによって、インゴット230の上面から生成すべきウエーハの厚みに相当する深さに、分離部分246およびクラック248からなる、インゴット230からウエーハを剥離するための強度が低下した剥離層250を形成することができる。剥離層250を形成した後、第二の保持テーブル60をインゴット着脱位置に位置づけると共に第二の保持テーブル60の吸引力を解除する。なお、剥離層形成工程は、たとえば以下の加工条件で実施することができる。
パルスレーザー光線の波長 :1064nm
繰り返し周波数 :80kHz
平均出力 :3.2W
パルス幅 :4ns
集光点の直径 :3μm
集光レンズの開口数(NA) :0.43
集光点のZ軸方向位置 :インゴットの上面から300μm
第二の保持テーブルの送り速度 :120~260mm/s
インデックス量 :250~400μm
【0073】
剥離層形成工程を実施した後、剥離層250が形成されたインゴット230をレーザー照射ユニット6からウエーハ剥離ユニット8に搬送する第二の搬送工程をベルトコンベアーユニット10で実施する。第二の搬送工程では、まず、第二の移し替え手段142の多関節アーム144を駆動させ、第二の保持テーブル60上のインゴット230の第一の面232に吸着片145を密着させ、インゴット230を吸着片145で吸引保持する。次いで、多関節アーム144で吸着片145を移動させ、吸着片145で吸引保持したインゴット230の第二の面234をトレー9のインゴット支持部117に接触させる。次いで、吸着片145の吸引力を解除し、トレー9のインゴット支持部117にインゴット230を支持させる。次いで、トレーストッパー129の昇降板131を離間位置から通過位置まで下降させることにより、往路ベルトコンベアー121の無端ベルト127にトレー9を載せる。
【0074】
トレー9を往路ベルトコンベアー121に載せた後、ウエーハ剥離ユニット8に対面する位置(図示の実施形態では往路ベルトコンベアー121の終点)まで往路ベルトコンベアー121でトレー9を搬送する。この際、搬送手段123のY軸可動板137の上面が往路ベルトコンベアー121の無端ベルト127の上面よりも低く、かつストッパー片138が往路ベルトコンベアー121で搬送されているトレー9に接触する高さに昇降板135を位置づけると共に、Y軸可動板137を前進位置に位置づける。これによって、往路ベルトコンベアー121でY1方向に搬送されているトレー9にストッパー片138を接触させ、ウエーハ剥離ユニット8に対面する位置でトレー9を停止させることができる。
【0075】
次いで、搬送手段123の昇降板135を上昇させ、停止させたトレー9をY軸可動板137の上面に搭載すると共に、トレー9の下面を無端ベルト127の上面から離間させる。次いで、第三の移し替え手段143の多関節アーム144を駆動させ、吸着片145をインゴット230の第一の面232に密着させ、インゴット230を吸着片145で吸引保持する。次いで、多関節アーム144で吸着片145を移動させ、吸着片145で吸引保持したインゴット230の第二の面234をウエーハ剥離ユニット8の第三の保持テーブル80の上面に接触させる。この際、第三の保持テーブル80はインゴット着脱位置(
図6に示す位置)に位置づけられている。そして、吸着片145の吸引力を解除し、第三の保持テーブル80の上面にインゴット230を載せる。このようにして、レーザー照射ユニット6からウエーハ剥離ユニット8にインゴット230を搬送する第二の搬送工程を実施する。
【0076】
第二の搬送工程を実施した後、剥離層250が形成されたインゴット230を第三の保持テーブル80で保持すると共に、第三の保持テーブル80に保持されたインゴット230の上面を保持し剥離層250からウエーハを剥離するウエーハ剥離工程をウエーハ剥離ユニット8で実施する。
【0077】
ウエーハ剥離工程では、まず、第三の保持テーブル80でインゴット230を吸引保持する。次いで、
図21(a)に示すとおり、液槽体94の下方のウエーハ剥離位置に第三の保持テーブル80を位置づける。次いで、アーム移動手段でアーム92を下降させ、
図21(b)に示すとおり、第三の保持テーブル80の上面に液槽体94のスカート壁98の下端を密着させる。
【0078】
次いで、
図7に示すとおり、エアシリンダ108のピストンロッド108bを移動させ、インゴット230の第一の面232に吸着片112の下面を密着させる。次いで、吸着片112の下面に吸引力を生成し、インゴット230を第一の面232側から吸着片112で吸引保持する。次いで、液体供給部100に接続された液体供給手段を作動させ、超音波振動生成部材110が浸漬するまで液体供給部100から液体収容空間104に液体106(たとえば水)を供給する。次いで、超音波振動生成部材110を作動させ、インゴット230に超音波振動を付与することにより、剥離層250を刺激してクラック248を伸長させ剥離層250の強度を更に低下させる。
【0079】
次いで、吸着片112でインゴット230を吸引保持した状態で、アーム移動手段でアーム92を上昇させることにより、
図22に示すとおり、剥離層250を起点としてインゴット230から生成すべきウエーハ252を剥離することができる。また、アーム92を上昇させた際には、液体106が液体収容空間104から排出され、基台84に形成された排水口(図示していない。)を通ってウエーハ剥離ユニット8の外部へと液体106が排出される。インゴット230からウエーハ252を剥離した後、第三の保持テーブル80をインゴット着脱位置に位置づけると共に、第三の保持テーブル80の吸引力を解除する。なお、インゴット230に超音波振動を付与する際は、インゴット230の上面と吸着片112の下面との間に間隙(たとえば2~3mm)を設けてもよい。また、剥離層250を起点としてインゴット230からウエーハ252を剥離する際は、第三の移し替え手段143の吸着片145でインゴット230の上面を吸引保持した上で、吸着片145を上昇させることにより、インゴット230からウエーハ252を剥離してもよい。
【0080】
ウエーハ剥離工程を実施した後、インゴット230から剥離したウエーハ252をウエーハ剥離ユニット8からカセットストッカー200のカセット198に搬送して収容する第三の搬送工程をベルトコンベアーユニット10、インゴット受渡ユニット12および収容手段202で実施する。第三の搬送工程では、まず、第三の移し替え手段143の多関節アーム144を駆動させ、ウエーハ剥離手段82の吸着片112に吸着されているウエーハ252の剥離面252aに第三の移し替え手段143の吸着片145を密着させ、吸着片145でウエーハ252を吸引保持する。次いで、ウエーハ剥離手段82の吸着片112の吸引力を解除し、ウエーハ剥離手段82の吸着片112から第三の移し替え手段143の吸着片145にウエーハ252を受け渡す。次いで、多関節アーム144で吸着片145を移動させ、吸着片145で吸引保持したウエーハ252をトレー9のウエーハ支持部118に接触させる。次いで、吸着片145の吸引力を解除し、トレー9のウエーハ支持部118にウエーハ252を支持させる。
【0081】
また、第三の搬送工程において、ウエーハ252を搬送すると共に、ウエーハ252が剥離されたインゴット230をウエーハ剥離ユニット8からインゴット研削ユニット4に搬送すべく、多関節アーム144を駆動させ、第三の保持テーブル80上のインゴット230の剥離面230aに吸着片145を密着させ、インゴット230を吸着片145で吸引保持する。次いで、多関節アーム144で吸着片145を移動させ、吸着片145で吸引保持したインゴット230をトレー9のインゴット支持部117に搬送して支持させる。次いで、トレー9を搭載している搬送手段123のY軸可動板137を後退位置に位置づける。次いで、昇降板135を下降させ、復路ベルトコンベアー122の無端ベルト127の上面よりも若干上方にY軸可動板137の上面を位置づける。次いで、Y軸可動板137を前進位置に位置づけると共に、昇降板135を下降させることにより、復路ベルトコンベアー122の無端ベルト127にトレー9を載せる。
【0082】
トレー9を復路ベルトコンベアー122に載せた後、復路ベルトコンベアー122の終点まで復路ベルトコンベアー122でトレー9を搬送する。この際、インゴット受渡ユニット12のエレベータ168で受取テーブル160の上面を復路ベルトコンベアー122の無端ベルト127の上面に一致させると共に、第二の無端ベルト162の上面側がY2方向に進行するようにモータ164で第二の無端ベルト162を回転させる。これによって、復路ベルトコンベアー122でY2方向に搬送されているトレー9を受取テーブル160の上面に載せる。
【0083】
受取テーブル160にトレー9を載せた後、モータ164の回転を停止させると共に、エレベータ168の昇降板186を移動させ、トレー9を載置した受取テーブル160の上面とベルトコンベアーユニット10の往路ベルトコンベアー121の無端ベルト127の上面とを一致させる。この際、昇降板186の移動を阻害しないようにするため、エアシリンダ174のピストンロッド174bは縮退位置に位置づけられている。次いで、収容手段202のX軸送り手段210および昇降手段214で昇降ブロック212を移動させると共に多関節アーム216を駆動させることにより、受取テーブル160上のトレー9に支持されたウエーハ252の上面に保持片218を密着させ、ウエーハ252を保持片218で吸引保持する。そして、X軸送り手段210、昇降手段214および多関節アーム216で保持片218を移動させることにより、保持片218で吸引保持したウエーハ252をトレー9から搬出して、カセットストッカー200のカセット198内に移動する。そして保持片218の吸引力を解除する。このようにして、インゴット230から剥離したウエーハ252をウエーハ剥離ユニット8からカセットストッカー200のカセット198に搬送して収容する。
【0084】
トレー9からウエーハ252を搬出した後、第二の無端ベルト162を回転させ、受取テーブル160の上面に載置されたトレー9を往路ベルトコンベアー121に受け渡し、往路ベルトコンベアー121でトレー9を搬送する。この際、インゴット研削ユニット4に対面する位置に配置されたトレーストッパー129の昇降板131を停止位置に位置づける。これによって、往路ベルトコンベアー121でY1方向に搬送されているトレー9を、インゴット研削ユニット4に対面する位置のトレーストッパー129で停止させることができる。
【0085】
次いで、停止させたトレー9の下面を無端ベルト127の上面から離間させるため、トレーストッパー129の昇降板131を離間位置に上昇させる。次いで、第一の移し替え手段141の多関節アーム144を駆動させ、吸着片145をインゴット230の剥離面230aに密着させ、インゴット230を吸着片145で吸引保持する。次いで、多関節アーム144で吸着片145を移動させ、インゴット着脱位置に位置づけられているインゴット研削ユニット4の第一の保持テーブル14の上面にインゴット230の第二の面234を接触させる。そして、吸着片145の吸引力を解除し、第一の保持テーブル14の上面にインゴット230を載せる。このようにして、ウエーハ252が剥離されたインゴット230をウエーハ剥離ユニット8からインゴット研削ユニット4に搬送する。
【0086】
第三の搬送工程を実施した後、ウエーハ252が剥離されたインゴット230を第一の保持テーブル14で保持すると共に、第一の保持テーブル14に保持されたインゴット230の剥離面230aを研削して平坦化するインゴット研削工程をインゴット研削ユニット4で実施する。
【0087】
図3を参照して説明すると、インゴット研削工程では、まず、第一の保持テーブル14の上面に吸引力を生成し、第一の保持テーブル14でインゴット230を吸引保持する。次いで、インゴット230を保持している第一の保持テーブル14を研削位置に位置づける。次いで、インゴット230を保持している第一の保持テーブル14を上方からみて反時計回りに所定の回転速度(たとえば300rpm)で回転させる。また、上方からみて反時計回りに所定の回転速度(たとえば6000rpm)でスピンドル36を回転させる。次いで、スピンドルハウジング30を下降させ、インゴット230の剥離面230aに研削砥石44を接触させる。その後、所定の研削送り速度(たとえば1.0μm/s)でスピンドルハウジング30を下降させる。これによって、ウエーハ252が剥離されたインゴット230の剥離面230aを研削して、剥離層形成工程におけるパルスレーザー光線LBの入射を妨げない程度にインゴット230の剥離面230aを平坦化することができる。インゴット230の剥離面230aを平坦化した後、インゴット230を保持している第一の保持テーブル14をインゴット着脱位置に位置づけると共に、第一の保持テーブル14の吸引力を解除する。
【0088】
インゴット研削工程を実施した後、剥離面230aが平坦化されたインゴット230をインゴット研削ユニット4からレーザー照射ユニット6に搬送する第四の搬送工程をベルトコンベアーユニット10で実施する。第四の搬送工程では、まず、第一の移し替え手段141の多関節アーム144を駆動させ、第一の保持テーブル14上のインゴット230の剥離面230aに吸着片145を密着させ、インゴット230を吸着片145で吸引保持する。次いで、多関節アーム144で吸着片145を移動させ、吸着片145で吸引保持したインゴット230の第二の面234をトレー9のインゴット支持部117に接触させる。次いで、吸着片145の吸引力を解除し、トレー9のインゴット支持部117にインゴット230を支持させる。次いで、トレーストッパー129の昇降板131を離間位置から通過位置まで下降させることにより、往路ベルトコンベアー121の無端ベルト127にトレー9を載せる。
【0089】
トレー9を往路ベルトコンベアー121に載せた後、レーザー照射ユニット6に対面する位置まで往路ベルトコンベアー121でトレー9を搬送する。この際、レーザー照射ユニット6に対面する位置に配置されたトレーストッパー129の昇降板131を停止位置に位置づけ、往路ベルトコンベアー121でY1方向に搬送されているトレー9を、レーザー照射ユニット6に対面する位置のトレーストッパー129で停止させる。次いで、停止させたトレー9の下面を無端ベルト127の上面から離間させるため、トレーストッパー129の昇降板131を離間位置に上昇させる。次いで、第二の移し替え手段142の多関節アーム144を駆動させ、吸着片145をインゴット230の剥離面230aに密着させ、インゴット230を吸着片145で吸引保持する。次いで、多関節アーム144で吸着片145を移動させ、吸着片145で吸引保持したインゴット230の第二の面234を、インゴット着脱位置に位置づけられているレーザー照射ユニット6の第二の保持テーブル60の上面に接触させる。そして、吸着片145の吸引力を解除し、第二の保持テーブル60の上面にインゴット230を載せる。このようにして、剥離面230aが平坦化されたインゴット230をインゴット研削ユニット4からレーザー照射ユニット6に搬送する第四の搬送工程を実施する。
【0090】
第四の搬送工程を実施した後、上述の剥離層形成工程をレーザー照射ユニット6で実施する。そして、剥離層形成工程と、ウエーハ剥離工程と、インゴット研削工程と、第二から第四までの搬送工程とを繰り返し実施することにより、インゴット230から生成可能な数量のウエーハ252を生成し、カセットストッカー200のカセット198にウエーハ252を収容する。
【0091】
以上、ウエーハ生成装置2においてインゴット230に対して実施する各工程を1個のインゴット230に着目して説明したが、ウエーハ生成装置2においては、インゴットストッカー11からレーザー照射ユニット6にインゴット230を搬送する第一の搬送工程を実施した後、適宜の間隔をおいて、第一の搬送工程を繰り返し実施すると共に、剥離層形成工程と、ウエーハ剥離工程と、インゴット研削工程と、第二から第四までの搬送工程とを並行して複数(図示の実施形態では4個)のインゴット230に対して繰り返し実施することにより、複数のインゴット230から生成可能な数量のウエーハ252を生成することができる。また、1個のインゴット230から生成するウエーハ252の数量が、たとえば100枚である場合は25枚収容可能な4個のカセット198にウエーハ252を収容するところ、トレー9を識別するIDをトレー9に付すと共に、トレー9のIDを読み取る読み取り手段をウエーハ生成装置2に設けることにより、生成したウエーハ252をインゴット230毎に分類してカセット198に収容することができる。
【0092】
上述したとおり、図示の実施形態におけるウエーハ生成装置2は、インゴット230を保持する第一の保持テーブル14と第一の保持テーブル14に保持されたインゴット230の上面を研削して平坦化する研削手段16とから少なくとも構成されるインゴット研削ユニット4と、インゴット230を保持する第二の保持テーブル60と第二の保持テーブル60に保持されたインゴット230の上面から生成すべきウエーハ252の厚みに相当する深さにインゴット230に対して透過性を有する波長のレーザー光線LBの集光点FPを位置づけてレーザー光線LBをインゴット230に照射し剥離層250を形成するレーザー照射手段62とから少なくとも構成されるレーザー照射ユニット6と、インゴット230を保持する第三の保持テーブル80と第三の保持テーブル80に保持されたインゴット230の上面を保持し剥離層250からウエーハ252を剥離するウエーハ剥離手段82とから少なくとも構成されるウエーハ剥離ユニット8と、インゴット230を支持するインゴット支持部117と剥離されたウエーハ252を支持するウエーハ支持部118とを備えたトレー9と、トレー9に支持されたインゴット230をインゴット研削ユニット4とレーザー照射ユニット6とウエーハ剥離ユニット8との間で搬送するベルトコンベアーユニット10と、トレー9に支持されたインゴット230を収容するインゴットストッカー11と、インゴットストッカー11に収容されたトレー9に支持されたインゴット230をベルトコンベアーユニット10に受け渡すインゴット受渡ユニット12と、から少なくとも構成されているので、インゴット230からウエーハ252を生成する一連の作業を自動的に行うことができ、生産効率が向上する。
【0093】
また、図示の実施形態のウエーハ生成装置2では、各ユニットが独立して構成されているので、素材、サイズ等のインゴットの条件やユーザーの要望等に応じて、各ユニットの数量変更が可能である。たとえば、ウエーハ生成装置2が各ユニットを複数台備えることにより、同じ工程を並行して実施し、単位時間当たりのウエーハ生成数量を増加させることができる。また、ウエーハ生成装置2では、比較的短い時間で工程を実施可能なユニットの台数よりも、工程を実施するのに比較的時間がかかるユニットの台数を多く備えることにより、工程の進行の停滞を抑制して生産効率を向上させることもできる。
【0094】
なお、図示の実施形態の剥離層形成工程では、レーザー光線LBの照射の際にオフ角αが形成される方向Aと直交する方向に集光点FPに対してインゴット230を相対的に移動させ、かつインデックス送りにおいてオフ角αが形成される方向Aにインゴット230に対して集光点FPを相対的に移動させる例を説明したが、レーザー光線LBの照射の際の集光点FPとインゴット230との相対的な移動方向はオフ角αが形成される方向Aと直交する方向でなくてもよく、また、インデックス送りにおける集光点FPとインゴット230との相対的な移動方向はオフ角αが形成される方向Aでなくてもよい。
【0095】
また、所望ならば、インゴット230から剥離したウエーハ252の剥離面252aを研削して平坦化するウエーハ研削ユニットを設け、ウエーハ252の剥離面252aをウエーハ研削ユニットで平坦化してからウエーハ252をカセット198に収容するようにしてもよい。さらに、インゴット研削ユニット4で研削したインゴット230や、ウエーハ研削ユニットで研削したウエーハ252を洗浄する洗浄ユニットを設けてもよい。
【符号の説明】
【0096】
2:ウエーハ生成装置
4:インゴット研削ユニット
6:レーザー照射ユニット
8:ウエーハ剥離ユニット
9:トレー
10:ベルトコンベアーユニット
11:インゴットストッカー
12:インゴット受渡ユニット
14:第一の保持テーブル
16:研削手段
60:第二の保持テーブル
62:レーザー照射手段
80:第三の保持テーブル
82:ウエーハ剥離手段
117:インゴット支持部
118:ウエーハ支持部
146:載置テーブル
148:第一の無端ベルト
150:駆動力伝達部
152:ラック
160:受取テーブル
162:第二の無端ベルト
164:モータ
166:クラッチ部
168:エレベータ
198:カセット
200:カセットストッカー
202:収容手段
230:インゴット
250:剥離層
252:ウエーハ