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特許7164434ポリアルキレンエーテル修飾ポリシロキサンを調製する方法及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】ポリアルキレンエーテル修飾ポリシロキサンを調製する方法及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C08G 77/46 20060101AFI20221025BHJP
   C08G 77/08 20060101ALI20221025BHJP
   C08G 77/38 20060101ALI20221025BHJP
   C08G 81/00 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
C08G77/46
C08G77/08
C08G77/38
C08G81/00
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2018541531
(86)(22)【出願日】2016-11-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-01-10
(86)【国際出願番号】 EP2016076340
(87)【国際公開番号】W WO2017076856
(87)【国際公開日】2017-05-11
【審査請求日】2019-10-29
(31)【優先権主張番号】15193233.2
(32)【優先日】2015-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エンゲルブレヒト,ロタール
(72)【発明者】
【氏名】ペーター,ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】ヘルナンド,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】アウシュラ,クレメンス
(72)【発明者】
【氏名】クニシュカ,ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】クランヴェットフォーゲル,ライナー
【審査官】前田 孝泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-001692(JP,A)
【文献】米国特許第02917480(US,A)
【文献】国際公開第2019/219452(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/219446(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第104452311(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 77/00- 77/62
C08G 65/00- 65/48
C08G 81/00- 81/02
C07F 7/02- 7/21
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1個のオリゴ又はポリアルキレンエーテル基を有するポリシロキサン(1)を調製する方法であって、触媒の存在下で、ケイ素原子に結合した少なくとも1個のC1~C6アルコキシ基を有するポリシロキサン(2)と、OH末端化オリゴ又はポリアルキレンエーテル(3)とをアルコキシ交換反応させることを含み、触媒がアルカンスルホン酸であり、ポリシロキサン(2)のケイ素原子に結合した少なくとも1個のC1~C6アルコキシ基とOH末端化オリゴ又はポリアルキレンエーテル(3)のOH末端基とが反応する、方法。
【請求項2】
OH末端化オリゴ又はポリアルキレンエーテル(3)が、以下の式(3a):
R-[O-A]k-OH (3a)
(式中、Aは、C2~C4アルカン-1,2-ジイルであり、kは、2から100の範囲内の数であり、Rは、1から20個のC原子を有する一価の炭化水素基である)
を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Rが、C 1 ~C 20 アルキル、C 2 ~C 20 アルケニル、又はC 2 ~C 20 アルキニルである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
OH末端化オリゴ又はポリアルキレンエーテル(3)及びポリシロキサン(2)が、オリゴ又はポリアルキレンエーテル(3)中のOH基とポリシロキサン(2)中のC1~C6アルコキシ基とのモル比が0.8:1から2:1の範囲内になるような割合で使用される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
反応が非プロトン性有機溶媒中で実施される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
非プロトン性有機溶媒が、芳香族炭化水素から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
反応がバルクにおいて溶媒の添加なしに実施される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
アルカンスルホン酸が、反応混合物の総重量を基準にして0.05から1wt%の量で使用される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
アルカンスルホン酸が、C1~C6アルカンスルホン酸である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
アルカンスルホン酸が、メタンスルホン酸である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
反応の間に形成されるC1~C6アルカノールが、反応の間に蒸留によって反応混合物から少なくとも部分的に除去される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
使用されるポリシロキサン(2)が、以下の特徴:
- ポリシロキサン(2)が、平均で5から30個のケイ素原子を有すること、
- ポリシロキサン(2)が、1から6個のC1~C6アルコキシ基を有し、それぞれのC 1 ~C 6 アルコキシ基が、ポリシロキサン(2)の異なるケイ素原子に結合していること、
- ポリシロキサン(2)が、2個の末端ケイ素原子のそれぞれにC1~C6アルコキシ基を有する線状ポリシロキサンであること、
- ポリシロキサン(2)が、ポリジメチルシロキサンであること、
- ポリシロキサン(2)のケイ素原子に結合した少なくとも1個のC1~C6アルコキシ基が、メトキシ及びエトキシから選択されること
のうち少なくとも1つを有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ポリシロキサン(2)が、2から6個のケイ素原子を有する線状又は環状ポリシロキサンと、式(R9O)mR10 4-mSi(式中、R9は、C1~C6アルキルであり、R10は、C1~C6アルキル、C3~C6シクロアルキル、フェニル、C2~C6アルケニル、又はC2~C6アルキニルであり、mは、2、3、又は4である)のC1~C6アルコキシシランとの反応によって提供される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ポリシロキサン(2)が、2から6個のケイ素原子を有する線状又は環状ポリシロキサンと、式(R 9 O) 2 R 10 2 Si(式中、R 9 は、C 1 ~C 6 アルキルであり、R 10 は、C 1 ~C 6 アルキル、C 3 ~C 6 シクロアルキル、フェニル、C 2 ~C 6 アルケニル、又はC 2 ~C 6 アルキニルである)のC 1 ~C 6 アルコキシシランとの反応によって提供される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
R9が、メチル又はエチルであり、R10が、メチルである、請求項13又は14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オリゴ及びポリアルキレンエーテル修飾ポリシロキサンを調製する方法、並びにコーティング材料配合物中の消泡剤として、湿潤剤として、及び添加剤としての、本方法に従って入手可能であるオリゴ又はポリアルキレンエーテル修飾ポリジメチルシロキサンの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
液体のポリマーベース組成物(液体系)、例えば塗料、印刷インク及びポリマーベース液体コーティング材料などの、例えば固体基材表面上の薄層における適用は、液体系が大きな表面張力を有する一方で、基材の表面張力が小さい場合に、しばしば問題となる。
【0003】
液体系は一般に、1つ以上のポリマー樹脂を含むだけでなく、1つ以上の溶媒又は希釈剤、及びさらに任意選択で、充填剤、顔料及び/又は添加剤も含む。エポキシ樹脂、2Kポリウレタン系、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、及び放射線硬化性バインダーなどの最新の合成バインダー系は、酸化乾燥性の脂肪酸又は油をベースとした従来のバインダーと比較して、比較的大きな固有表面張力をこれらに付与する組成及び分子構造を有する。結果として、この種の合成バインダー系をベースとした液体系を表面に塗布(適用)することは、しばしばアルキド樹脂又は類似の酸化乾燥性の油若しくは脂肪酸をベースとした従来のコーティング材料を塗布するよりも困難である。
【0004】
水性コーティング材料組成物は当然ながら特に大きな表面張力を有する。高度に緻密であり、均一に滑らかであり、審美的に魅力的である表面を得るには、流れ調整剤系をこのような組成物に添加しなければならない。これらの流れ調整補助剤は、組成物の表面張力を低減することによって作用して、基材の表面上における組成物の拡散(拡がり)を改善させ、硬化時に形成されるポリマーフィルムがより良好に流れることにより、滑らかな表面をもたらす。硬化時に形成されるポリマーフィルムの流れを促進するそれらの性質に起因して、これらの補助剤は、基材表面上の不純物又は外部から作用する不純物によって引き起こされるクレーターとして知られる欠陥の形成を低減する。
【0005】
液体系中で起こることが知られているさらなる現象は、泡立ち及び泡安定化である。これらの性質も、異なる界面張力と関係し、特に水性コーティング材料組成物などの水性系において生じる。液体中に存在するポリマーは気泡を含み、そのため液体組成物を処理するとき及び光学的に魅力的なコーティングを製造するときに問題がある。液体中に気体を含むことは、特にスプレー(噴霧)塗布において悪影響を及ぼすことが分かっている。
【0006】
表面改質の方法、特に疎水性基材を表面反応性分子の水性混合物により表面改質する方法においても、界面張力における差異が原因となる、望ましくない影響が生じ得る。したがって、疎水性基材の水性混合物による湿潤が不完全となり、結果として、基材の表面反応性分子による被覆は不均一となる。この影響を弱めるため、液体反応混合物には湿潤剤が添加される。
【0007】
前述の問題に対処する界面活性添加剤が多数市販されている。これらの添加剤は、例えばコーティング材料の流れ、レベリング(平滑化)、又は拡散を促進する効果を有し、欠陥の形成を低減し、消泡及び/若しくは脱気性を有し、又は湿潤剤として使用できる。
【0008】
前述の目的のために使用される既知の化合物は、有機的に修飾したポリシロキサンである。このクラスの化合物の特に重要な代表物は、オリゴ及びポリアルキレンエーテル修飾ポリシロキサンである。これらの化合物を用いれば、疎水性ポリシロキサン骨格上の親水性ポリアルキレンエーテル鎖の長さ及び組成を変えることにより、異なる性質を有する界面活性ポリマーを得ることが比較的容易となる。これらのポリマーは、様々な液体系において使用することができる。したがって、オリゴ及びポリアルキレンエーテル修飾ポリシロキサンは、工業的に重要なクラスの化合物であり、これらの化合物を極めて容易かつ経済的に利用できることが望ましい。
【0009】
先行技術において、オリゴ及びポリアルキレンエーテル修飾ポリシロキサンの様々な調製方法が記載されている。これらの方法は主として、対応するアリルエーテルのH-ポリシロキサンとのヒドロシリル化反応、又はH-ポリシロキサン若しくはクロロポリシロキサンのOH官能化オリゴ若しくはポリアルキレンエーテルとの縮合反応を伴う。他の方法では、アルコキシ官能化ポリシロキサンを、エステル交換反応とも呼ばれるアルコキシ交換反応の形で、OH官能化オリゴ又はポリアルキレンエーテルと反応させる。アルコキシ交換では、触媒の存在下で、ケイ素原子に結合したアルコキシ基が別のアルコキシ基に置換される。アルコキシ交換は、例えば、H. SteimannらによるZ. Chem. 1977, 17, 3, 89-92の総説に記載されている。
【0010】
EP 1739132 A2は、ポリオキシアルキレン基がプロパン-1,3-ジイル架橋を介してオルガノポリシロキサンの末端ケイ素原子に結合している、線状オルガノポリシロキサン-ポリオキシアルキレンコポリマーの調製を記載している。コポリマーは、白金触媒によるアリル化合物のヒドロシリル化によって調製される。
【0011】
EP 0542484 A1は、オルガノシリコン化合物、例えば末端不飽和基を有するポリシロキサンを調製する方法を記載している。これらの化合物の調製について提供されている1つの可能性は、エステル交換反応におけるケイ素原子に結合したアルコキシ官能基と不飽和アルカノイルとの反応である。様々なエステル交換反応触媒が言及されており、実施例で使用されたエステル交換反応触媒は、チタン酸テトライソプロピルである。
【0012】
US 3,133,111は、アルコキシ基を含むオルガノシリコン化合物をエステル交換反応させる方法、例えばアルコキシ官能化オルガノシロキサンとOH官能化ポリオキシアルキレンとの反応を記載している。エステル交換反応触媒として、有機酸の塩基との組み合わせが記載されている。
【0013】
先行技術の方法は、欠点を伴う。出発材料、特にアリルエーテルの調製は、不便かつ高価である。クロロシロキサンとOH末端化オリゴ又はポリアルキレンエーテルとの反応は、望ましくない塩の形成につながる。H-ポリシロキサンのOH末端化オリゴ又はポリアルキレンエーテルとの縮合においては、望ましくない水素ガスの放出がある。アルコキシ交換反応によるオリゴ又はポリアルキレンエーテル修飾ポリシロキサンの調製における空時収率は、不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】EP 1739132 A2
【文献】EP 0542484 A1
【文献】US 3,133,111
【非特許文献】
【0015】
【文献】H. Steimannら、Z. Chem. 1977, 17, 3, 89-92
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、オリゴ又はポリアルキレンエーテル官能化ポリシロキサンを調製する方法であって、これらの化合物が単純かつ経済的に、上記に記載された欠点なしに調製されることを可能にする方法を提供することが、本発明の目的である。ポリシロキサンは、特にポリマーベース液体系、特に合成バインダー系をベースとした液体系、例えばポリマーラテックスなど物理乾燥性の水性バインダー系のみならず、エポキシ樹脂、2Kポリウレタン系、ポリエステル樹脂、及びメラミン樹脂などの熱硬化性バインダー系、並びにまた放射線硬化性バインダーの添加剤としても好適であるべきである。
【0017】
驚くべきことに、アルカンスルホン酸の存在下で、ケイ素原子におけるアルコキシ交換反応が高速に進行することが見出された。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の基礎となる目的は、アルカンスルホン酸の存在下で、アルコキシ官能化ポリシロキサンをOH官能化オリゴ又はポリアルキレンエーテルと反応させる、オリゴ又はポリアルキレンエーテル修飾ポリシロキサンを調製する方法によって達成される。
【0019】
したがって、本発明は、少なくとも1個のオリゴ又はポリアルキレンエーテル基を有するポリシロキサン(1)を調製する方法であって、触媒の存在下で、(ポリシロキサン(2)の)ケイ素原子に結合した少なくとも1個のC1~C6アルコキシ基を有するポリシロキサン(2)と、OH末端化オリゴ又はポリアルキレンエーテル(3)とを反応させることを含み、触媒はアルカンスルホン酸である、方法に関する。
【0020】
本発明はさらに、コーティング材料配合物中の消泡剤、湿潤剤、及び添加剤として、特に流れ調整補助剤としての、本発明の方法によって入手可能であるポリジメチルシロキサン(1)の使用に関する。
【0021】
本発明の方法は、(ポリシロキサン(2)の)ケイ素原子に結合した少なくとも1個のC1~C6アルコキシ基を有するポリシロキサン(2)を使用する。ポリシロキサン(2)は好ましくは、ポリシロキサン(2)の1個のケイ素原子にそれぞれの場合に結合した、平均で1から6個、より具体的には1から4個、特に1又は2個のC1~C6アルコキシ基を有する。
【0022】
ここ及び下記において、アルキルは、例えば1から20個又は1から6個又は1から4個のC原子を有する飽和の、線状、又は分枝状の炭化水素基である。アルキルの例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、2-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、1,2-ジメチルプロピル、1,1-ジメチルプロピル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、n-ヘキシル、2-ヘキシル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、1,1-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,2,2-トリメチルプロピル、1-エチルブチル、2-エチルブチル、1-エチル-2-メチルプロピル、n-ヘプチル、2-ヘプチル、3-ヘプチル、2-エチルペンチル、1-プロピルブチル、n-オクチル、2-エチルヘキシル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、及びエイコシルが挙げられ、前述の基の異性体を含む。
【0023】
アルコキシは、酸素原子を介して結合した飽和の、線状、又は分枝状アルキル基であり、例えば1から6個又は1から4個のC原子を有する。アルコキシの例としては、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、2-ブトキシ、イソブトキシ、tert-ブトキシ、n-ペントキシ、及びn-ヘキソキシが挙げられ、言及したうち最後の2つの基の異性体を含む。
【0024】
ポリシロキサン(2)のケイ素原子に結合した少なくとも1個のC1~C6アルコキシ基は、好ましくはC1~C4アルコキシ基、より具体的には線状C1~C4アルコキシ基、特にメトキシ及びエトキシから選択される。
【0025】
1個より多くのC1~C6アルコキシ基がポリシロキサン(2)に結合している場合、C1~C6アルコキシ基は、好ましくはポリシロキサン(2)の異なるケイ素原子にそれぞれの場合に結合している。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の方法の1つの好ましい実施形態は、線状であり、かつ2個の末端ケイ素原子のうち少なくとも1個上に、それぞれの場合にC1~C6アルコキシ基、より具体的にはそれぞれの場合に線状C1~C4アルコキシ基、特にメトキシ基又はエトキシ基を有する、ポリシロキサン(2)を使用する。この実施形態では、好ましくは末端ケイ素原子の両方が、それぞれ1個のC1~C6アルコキシ基、より具体的にはそれぞれ1個の線状C1~C4アルコキシ基、特にメトキシ基又はエトキシ基を有する。
【0027】
好ましくは、本発明の方法では、平均で5から30個のケイ素原子、より具体的には6から20個のケイ素原子を有するポリシロキサン(2)が使用される。
【0028】
ポリシロキサン(2)は好ましくは、ポリジC1~C20アルキルシロキサン、より好ましくはポリジC1~C6アルキルシロキサンである。非常に好ましくは、ポリシロキサン(2)はポリジメチルシロキサンである。
【0029】
特に好ましくは、下記の式(2a)
【0030】
【化1】
【0031】
(式中、
R1及びR2は、互いに独立に、C1~C6アルコキシ、より具体的には線状C1~C4アルコキシ、特にメトキシ若しくはエトキシ、1から20個の炭素原子を有する線状若しくは分枝状アルキル基、2から20個の炭素原子を有する線状若しくは分枝状のモノ若しくはポリ不飽和アルケニル基、又はフェニル基であり、
基R1及びR2のうち少なくとも1個はC1~C6アルコキシであり、
R3、R4、R5、R6、R7、及びR8は、互いに独立に、1から20個の、より具体的には1から10個若しくは1から4個の炭素原子を有する線状若しくは分枝状アルキル基、2から20個、2から6個、若しくは2から4個の炭素原子を有する線状若しくは分枝状のモノ若しくはポリ不飽和アルケニル基、又はフェニル基であり、
nは、3から28の間、好ましくは3から16の間の数である)
のポリシロキサン(2)が本発明の方法において使用される。
【0032】
好ましい式(2a)のポリシロキサンは、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8が、それぞれ1から4個の炭素原子を有する線状又は分枝状アルキル基、より具体的にはメチルであり、R1及びR2がそれぞれC1~C6アルコキシ、より具体的には線状C1~C4アルコキシ、特にメトキシ又はエトキシである、式(2a)のポリシロキサンである。
【0033】
シクロアルキルは、例えば3から10個又は3から6個のC原子を有する飽和の環状炭化水素基である。シクロアルキルの例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、及びシクロヘキシルが挙げられる。
【0034】
アルケニルは、例えば1、2、又は3つの炭素-炭素二重結合を有し、かつ例えば2から20個のC原子又は2から6個のC原子を有する、不飽和の線状又は分枝状炭化水素基である。アルケニルの例としては、ビニル、アリル、イソプロペニル、ブテニル、n-ペンテニル、及びイソプレニルが挙げられる。
【0035】
アルキニルは、例えば1、2、又は3つの炭素-炭素三重結合を有し、かつ例えば2から20個のC原子又は2から6個のC原子を有する、不飽和の線状又は分枝状炭化水素基である。アルキニルの例としては、エチニル、プロパルギル、及びブチニルが挙げられる。
【0036】
アルキレン及びアルカンジイルは、例えば1から10個のC原子、より具体的には2から4個のC原子を有する線状又は分枝状の、二価の飽和炭化水素基を示し、例えばメチレン、1,2-エタンジイル、1,2-プロパンジイル、1,3-プロパンジイル、1,2-ブタンジイル、1,3-ブタンジイル、1,4-ブタンジイル、2-メチル-1,2-プロパンジイル、1,6-ヘキサンジイル、1,7-ヘプタンジイル、1,9-ノナンジイル、及び1,10-デカンジイルなどである。
【0037】
ポリシロキサン(2)は好ましくは、環状又は線状オリゴ及び/又はポリシロキサン、好ましくはオリゴ及び/又はポリジメチルシロキサンとC1~C6アルコキシシランとの反応を介して提供される。典型的には酸触媒で平衡化が生じる。平衡化に好ましい酸は、有機スルホン酸、より具体的には例えばp-トルエンスルホン酸などの芳香族スルホン酸、及びアルカンスルホン酸、より好ましくは例えばトリフルオロメタンスルホン酸などのハロゲン化アルカンスルホン酸である。さらに平衡化に好ましい酸は酸性イオン交換樹脂であり、例えばLewatit(登録商標)及びAmberlyst(登録商標)の商品である。
【0038】
ポリシロキサン(2)の調製で使用されるオリゴ及び/又はポリジメチルシロキサンの例としては、2から6個のケイ素原子を有する線状又は特に、環状ポリシロキサンが挙げられ、例えばオクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、及びこれらの混合物である。
【0039】
C1~C6アルコキシシランは好ましくは、式(R9O)mR10 4-mSi(式中、R9は、C1~C6アルキルであり、R10は、C1~C6アルキル、C3~C6シクロアルキル、フェニル、C2~C6アルケニル、又はC2~C6アルキニルであり、mは、1、2、3、又は4である)の化合物である。特に好ましくは、式(R9O)2R10 2SiのC1~C6アルコキシシランの使用である。R9は好ましくは、C1~C4アルキル、より具体的には線状C1~C4アルキル、特にメチル又はエチルである。R10は好ましくは、C1~C6アルキル、より具体的にはメチルである。C1~C6アルコキシシランの例としては、C1~C6アルコキシ-トリ-C1~C6アルキルシラン及びC1~C6アルコキシ-ジ-C1~C6アルキル-C2~C6アルケニルシラン、例えばメトキシトリメチルシラン、エトキシトリメチルシラン、n-プロポキシトリメチルシラン、メトキシジメチルエチルシラン、エトキシジメチルエチルシラン、n-プロポキシジメチルエチルシラン、メトキシジメチルビニルシラン、エトキシジメチルビニルシラン、n-プロポキシジメチルビニルシラン、ジ-C1~C6アルコキシ-ジ-C1~C6アルキルシラン、例えばジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、トリ-C1~C6アルコキシ-C1~C6アルキルシラン、例えばトリメトキシメチルシラン及びトリエトキシメチルシラン、及びさらにはテトラC1~C6アルコキシシラン、例えばテトラメトキシシラン及びテトラエトキシシラン、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0040】
平衡化に使用される酸の量は一般に、反応混合物中の酸の濃度が0.1から5g/kgの範囲内、より具体的には0.5から1g/kgの範囲内になるように選択される。
【0041】
平衡化は、不活性有機溶媒中で、例えば芳香族炭化水素中で実施され得る。より具体的には平衡化は、バルクで生じる。
【0042】
平衡化に必要な温度は一般に、20から120℃の範囲内に定められている。反応の持続時間は、当然ながら反応性及び反応温度に依存し、定型的な実験によって決定され得る。典型的には平衡化は、反応物質及び反応生成物の比が平衡になるまで実施される。平衡の確立を含む反応の進行は、特定のパラメーター、例えば粘度、固形分含有率などを標準的な方法で測定することによって決定され得る。
【0043】
本発明の方法では、ポリシロキサン(2)と、OH末端化オリゴ又はポリアルキレンエーテル(3)とを反応させる。本発明の方法で使用されるオリゴ及びポリアルキレンエーテル(3)は、2つの末端を有する線状構造を有する。オリゴ又はポリアルキレンエーテル(3)は、一方の末端又は両方の末端において、それぞれの場合にOH基で末端処理される。オリゴ又はポリアルキレンエーテルは好ましくは、2つの末端の一方だけがOH基で末端処理される。
【0044】
本発明の方法の1つの好ましい実施形態は、2つの末端の一方だけがOH基で末端処理されたオリゴ又はポリアルキレンエーテル(3)を使用する。この実施形態の好ましいオリゴ及びポリアルキレンエーテル(3)は、式(3a)
R-[O-A]k-OH (3a)
(式中、
Aは、C2~C4アルカン-1,2-ジイルであり、
kは、2から100の範囲内の数であり、
Rは、1から20個のC原子を有する一価の炭化水素基、より具体的にはC1~C20アルキル、C2~C20アルケニル、又はC2~C20アルキニルである)
のオリゴ及びポリアルキレンエーテル(3)である。
上記に示した式(3a)中、部分Aは、同一又は異なるものとして選択され得、例えば式(3a)の化合物はC2アルカン-1,2-ジイル及びC3アルカン-1,2-ジイルを含み得る。
【0045】
代替的実施形態では、この実施形態の好ましいオリゴ及びポリアルキレンエーテル(3)は、式(3b)
R-[O-E]r-[O-P]s-OH (3a)
(式中、
Eは、C2アルカン-1,2-ジイルであり、
Pは、C3アルカン-1,2-ジイルであり、
rは、0から100の範囲内の数であり、
sは、0から100の範囲内の数であり、
(r+s) は、2から100の範囲内の数であり、
Rは、1から20個のC原子を有する一価の炭化水素基、より具体的にはC1~C20アルキル、C2~C20アルケニル、又はC2~C20アルキニルである)
のオリゴ及びポリアルキレンエーテル(3)である。
【0046】
好ましいオリゴ及びポリアルキレンエーテル(3)は、C1~C6アルカンジイルオキシ単位、より具体的にはC2~C4アルカンジイルオキシ単位で構成される。特に好ましくは、オリゴ及びポリアルキレンエーテル(3)は、C2~C4アルカン-1,2-ジイルオキシ単位、非常に好ましくはエタン-1,2-ジイルオキシ及び/又はプロパン-1,2-ジイルオキシ単位で構成される。
【0047】
好ましいオリゴ及びポリアルキレンエーテル(3)は、オリゴ及びポリエチレングリコール、オリゴ及びポリプロピレングリコール、並びにエチレングリコール及びプロピレングリコールの単位を有するオリゴ及びポリアルキレングリコールである。2つの末端の一方が1から20個のC原子を有する一価の炭化水素基で、より具体的にはC1~C20アルキル、C2~C20アルケニル、又はC2~C20アルキニルで官能化された、オリゴ及びポリエチレングリコール、オリゴ及びポリプロピレングリコール、並びにエチレングリコール及びプロピレングリコールの単位を有するオリゴ及びポリアルキレングリコールが特に好ましい。特に好ましいオリゴ及びポリアルキレンエーテル(3)の例は、n-ブチルジエチレングリコール、メチルトリプロピレングリコール、n-ブチルポリプロピレングリコール、メチルポリエチレングリコール、n-ブチルポリプロピレングリコール、アリルポリエチレングリコール、アリルポリプロピレングリコール、エチレングリコール及びプロピレングリコールの単位を有するアリルポリエーテル、並びにこれらの混合物から選択される。
【0048】
本発明の方法で使用されるOH末端化オリゴ及びポリアルキレンエーテル(3)は好ましくは、100から3000g/molの範囲内、より好ましくは150から2000g/molの範囲内の重量平均分子量を有する。
【0049】
OH末端化オリゴ又はポリアルキレンエーテル(3)及びポリシロキサン(2)が使用される比率は好ましくは、オリゴ又はポリアルキレンエーテル(3)中のOH基とポリシロキサン(2)中のC1~C6アルコキシ基とのモル比が0.5:1から3:1の範囲内、より具体的には0.8:1から2:1の範囲内になるようなものである。
【0050】
1つの好ましい実施形態では、本発明の方法は有機溶媒中で実施される。好ましい有機溶媒は非プロトン性有機溶媒であり、好ましくは芳香族炭化水素、例えばトルエン、キシレン及びこれらの混合物などから選択される。
【0051】
1つの特に好ましい実施形態では、本発明の方法はバルクにおいて溶媒の添加なしに実施される。
【0052】
本発明の方法では、少なくとも1種のアルカンスルホン酸が触媒として使用される。触媒としては、原則として、当業者に公知の全てのアルカンスルホン酸を使用することが可能である。使用されるアルカンスルホン酸触媒は、好ましくは、少なくとも1種のC1~C6アルカンスルホン酸、より特には、少なくとも1種のC1~C4アルカンスルホン酸、例としては、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、n-プロパンスルホン酸、若しくはイソプロパンスルホン酸、又はこれらの混合物である。触媒としては、メタンスルホン酸が非常に好ましく使用される。
【0053】
使用されるアルカンスルホン酸の量はしばしば、反応混合物の総重量を基準にして、0.01から3wt%(重量%)、より具体的には0.05から1wt%である。
【0054】
本発明の方法はしばしば、100から200℃の範囲内、より具体的には120から180℃の範囲内の反応温度で実施される。
【0055】
本発明の方法はより具体的には、ポリシロキサン(2)とオリゴ又はポリアルキレンエーテル(3)との反応中に形成されるC1~C6アルカノールが、反応の間に、蒸留によって、反応混合物から少なくとも部分的に除去されるように実施される。
【0056】
触媒として使用されるアルカンスルホン酸の存在下でのポリシロキサン(2)とオリゴ又はポリアルキレンエーテル(3)との反応は、先行技術から原理的に既知の種類の反応容器中で実施され得る。これらは例えば、撹拌タンク、具体的には撹拌タンクカスケード(stirred tank cascade)を含む、緊密クリアランス撹拌機(close-clearance stirrer)を有する撹拌タンク、及びさらには任意選択で動的及び/又は静的混合エレメントを有し得る管型反応器などの反応装置である。反応装置は一般に、1つ以上の、反応物質を供給するための装置及び生成物を回収するための装置、及びさらには任意選択で反応の熱の供給及び除去の手段、及びさらには任意選択で圧力、温度、転化率などの反応パラメーターを制御及び/又は監視するための手段を有する。反応装置はバッチ式又は連続式で操作され得る。
【0057】
本発明の方法によって入手可能であるオリゴ及びポリアルキレンエーテル修飾ポリシロキサン(1)は、流れ調整補助剤、消泡剤、及び脱気剤として有利な性質を有する。これらは、ポリマーベース液体系、特に合成バインダー系をベースとした液体系、例えばポリマーラテックスなど物理乾燥性の水性バインダー系のみならず、エポキシ樹脂、2Kポリウレタン系、ポリエステル樹脂、及びメラミン樹脂などの熱硬化性バインダー系、並びにまた放射線硬化性バインダーの添加剤として有利に好適である。
【0058】
コーティング材料配合物中では、ポリシロキサン(1)、特に線状ポリジメチルシロキサン(1)は、コーティング組成物がコーティングするべき基材表面上で均一に拡散することを促進する添加剤として作用し、したがって添加剤を添加していない(unadditized)コーティング材料配合物よりも滑らかなコーティングをもたらす。さらに、ポリシロキサン(1)、特に線状ポリジメチルシロキサン(1)を含むコーティング材料配合物は、それらから製造されたコーティングに改善された泥よけ効果、特に疎水化効果を付与する。したがって、ポリシロキサン(1)、特に線状ポリジメチルシロキサン(1)は、コーティングの泥吸着性の低減、及び疎水化性落書き防止添加剤として好適である。
【0059】
ポリシロキサン(1)はさらに、湿潤剤、特に表面改質の方法で使用される液体組成物中の湿潤剤として有利に好適である。ポリシロキサン(1)は、疎水性基材の表面改質に使用される水性組成物中の湿潤剤として特に好適である。
【0060】
したがって、本発明の別の主題は、消泡剤としての、より具体的には水性系中、例えば水性コーティング材料配合物又は水性ポリマー分散体中の消泡剤としての、式(3b):
R-[O-A]k-O- (3b)
(式中、Aは、C2~C4アルカン-1,2-ジイルであり、kは、2から100の範囲内の数であり、Rは、1から20個のC原子を有する一価の炭化水素基、より具体的にはC1~C20アルキル、C2~C20アルケニル、又はC2~C20アルキニルである)
の基を2個の末端ケイ素原子のそれぞれに有する線状ポリジメチルシロキサン(1)の使用である。
【0061】
本発明の別の主題は、湿潤剤、特に表面改質の方法における湿潤剤としての、式(3b)の基を2個の末端ケイ素原子のそれぞれに有する線状ポリジメチルシロキサン(1)の使用である。
【0062】
本発明の別の主題は、コーティング材料配合物、特に少なくとも1つの有機バインダーを含む水性コーティング材料配合物中の添加剤として、及び特に消泡剤及び/又は流れ調整補助剤としての、式(3b)の基を2個の末端ケイ素原子のそれぞれに有する線状ポリジメチルシロキサン(1)の使用である。
【0063】
本発明の第1の実施形態では、有機バインダーは物理乾燥性バインダーであり、より具体的には、水性コーティング材料系、例えばレンガ塗料、内装塗料、コンクリート屋根板及び繊維セメントスラブなどのセメントで固められた基材のための塗料、木材塗料などの中に使用される水性ポリマーラテックスである。ポリマーラテックスは原理的にこの目的で使用されるポリマーラテックスのうち任意のものであり得、例えば、ビニルアセテート、エチレンポリマーラテックス、ポリスチレンラテックス、スチレン-アクリレートポリマーラテックス、直鎖アクリレートラテックス、スチレン-ブタジエンポリマーラテックス、ポリオレフィンラテックスなどである。対応するコーティング材料及び配合物のレシピの例は、M. Schwartz, R. Baumstark, Waterbased Acrylates for Decorative Coatings, Curt-Vincentz-Verlag, 2001に見出される。
【0064】
本発明のさらなる実施形態では、有機バインダーは、塗布後硬化するバインダーである。特に本明細書には、
- 有機バインダーとして熱硬化性バインダーを含む配合物、例えばエポキシ配合物、例えばエポキシ樹脂のアミン硬化剤との混合物、エポキシ-フェノール樹脂混合物、及びポリエステル-メラミン-エポキシ樹脂配合物、メラミン樹脂配合物、例えばアルキド-メラミン樹脂配合物、ポリエステル-メラミン樹脂配合物、イソシアネート硬化剤を有するポリエステル-メラミン樹脂配合物、及びアクリレート-メラミン樹脂配合物、及びさらにはフェノール樹脂配合物など、
- 2Kポリウレタン配合物、
- 2Kエポキシ配合物、
- 放射線硬化性組成物、並びに
- 酸化硬化性配合物
が含まれる。
【0065】
2Kポリウレタン配合物は、バインダーとして、少なくとも1つのポリオール成分、例えば少なくとも2個のヒドロキシル基を有する低分子量化合物、及びさらには1分子当たり平均で少なくとも2個のヒドロキシル基を有するオリゴマー又はポリマー物質、例えばポリアクリレートポリオール、ポリエーテルポリオール、又はポリエステルポリオールなど、並びに少なくとも1つのイソシアネート硬化剤、すなわち1分子当たり平均で少なくとも2個のNCO基を有するオリゴマー化合物、例えば上述のジイソシアネートのビウレット、アロファネート、又はシアヌレートなどを含む配合物として理解される。これらの2K配合物は硬化してポリウレタンネットワーク(網目構造)を形成する。
【0066】
2Kエポキシ配合物は、バインダーとして、少なくとも1つのエポキシ樹脂、例としてはビスフェノールAのジグリシジルエーテルをベースとした、又は環水素化したビスフェノールAのジグリシジルエーテルをベースとしたエポキシ樹脂、及び少なくとも1つのアミン硬化剤、すなわち少なくとも2個の第一級及び/又は第二級アミノ基を有する低分子量の又はオリゴマーの化合物を含む配合物として理解される。
【0067】
放射線硬化性組成物は、光又は化学線(actinic radiation)に曝されるとポリマー網目構造へと硬化する光重合性プレポリマーをベースとしたバインダーを含む配合物として理解される。光重合性プレポリマーは特に、平均で少なくとも2個のエチレン性不飽和基、より具体的にはアクリレート、メタクリレート、又はアリル基を有するオリゴマー、例えばウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、及びポリエステルアクリレートを含む。
【0068】
酸化硬化性配合物は、バインダーとして、酸素に曝されると固体のポリマーフィルムへと硬化するオリゴマー物質を含む配合物として理解される。このような物質の例は、不飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸のエステル、例えば不飽和脂肪酸をベースとしたアルキド樹脂である。
【0069】
線状ポリジメチルシロキサン(1)は通例、コーティング材料配合物中のポリジメチルシロキサン(1)の総量が、コーティング材料配合物の総重量を基準として、0.01から5wt%の範囲内、より具体的には0.1から3wt%の範囲内、特に0.2から2wt%の範囲内であるような量で使用される。
【0070】
本発明のバインダー及びポリジメチルシロキサン(1)に加え、コーティング材料配合物は、コーティング材料配合物中に通例存在する種類の1つ以上の構成成分を含み得る。これらの追加の構成成分の性質は、それ自身既知である意味(manner)において、所望される最終用途及び特定のバインダー系に依存する。
【0071】
さらなる構成成分は特に、着色剤、例えば染料及び顔料、充填剤、液体の溶媒及び希釈剤(反応性希釈剤として知られるものを含む)、並びにさらには従来の添加剤を含む。
【0072】
好適な着色剤は特に、有機及び無機の顔料である。有機顔料の例は、着色顔料及び真珠光沢顔料、例えばアゾ、ジスアゾ、ナフトール、ベンゾイミダゾロン、アゾ縮合物(azo condensation)、金属錯体、イソインドリノン、キノフタロン、及びジオキサジンの顔料、多環式顔料、例えばインジゴ、チオインジゴ、キナクリドン、フタロシアニン、ペリレン、ペリノン、アントラキノン、例えばアミノアントラキノン又はヒドロキシアントラキノン、アントラピリミジン、インダントロン、フラバントロン、ピラントロン、アンサントロン、イソビオラントロン、ジケトピロロピロール、及びさらにはカルバゾール、例えばカルバゾールバイオレットなどである。有機顔料のさらなる例は、次のモノグラフ:W. Herbst, K. Hunger "Industrielle Organische Pigmente", 2nd edition, 1995, VCH Verlagsgesellschaft, ISBN: 3-527-28744-2から得ることができる。無機顔料の例は、金属粉(金属フレーク)、例えばアルミニウム、及びさらには酸化アルミニウム、酸化鉄(III)、酸化クロム(III)、酸化チタン(IV)、酸化ジルコニウム(IV)、酸化亜鉛、硫化亜鉛、リン酸亜鉛、混合金属酸化物リン酸塩、硫化モリブデン、硫化カドミウム、グラファイト、バナジン酸ビスマスなどのバナジン酸塩、クロム酸鉛(IV)などのクロム酸塩、モリブデン酸鉛(IV)などのモリブデン酸塩、及びこれらの混合物である。
【0073】
好適な充填剤の例は、無機又は有機の微粒子材料、例えば炭酸カルシウム及びケイ酸カルシウム、並びにさらには例えばガラス繊維などの無機繊維材料などである。炭素繊維などの有機充填剤、並びに有機及び無機の充填剤の混合物、例えばガラス繊維及び炭素繊維の混合物、又は炭素繊維及び無機充填剤の混合物も用いられ得る。充填剤は、組成物の総重量を基準として1から75wt%の量で添加され得る。
【0074】
溶媒の特定の例は、例えば以下に列挙された溶媒L.1、L.2、L.3、L.4、L.5、及びL.6:
L.1 脂肪族及び脂環式アルコール、例えばメタノール、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、及びエチレングリコールモノブチルエーテル、
L.2 脂肪族モノカルボン酸及びジカルボン酸のアルキルエステル、例えばエチル、プロピル、ブチル、又はヘキシルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、及びエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、
L.3 脂肪族及び脂環式エーテル、例えばジエチルエーテル、ジブチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、エチルtert-ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、及びジオキサン、
L.4 脂肪族及び脂環式ケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトン、及びシクロヘキサノン、
L.5 脂肪族カルボン酸のN,N-ジアルキルアミド及びN-アルキルラクタム、例えばN,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、及びN-メチルピロリドン、
L.6 芳香族有機溶媒、例えばベンゼン、トルエン、又はキシレン、及びさらには前述した有機溶媒の混合物、
並びにさらには脂肪族及び脂環式炭化水素及び炭化水素混合物から選択される、有機溶媒である。
【0075】
反応性希釈剤の例は特に、モノエチレン性不飽和モノマー、特にアクリル酸の又はメタクリル酸のアルキル及びシクロアルキルエステル、及びさらには複素環式アクリレート及びメタクリレート、例えばテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート及び1,3-ジオキソラン-4-イルメチル(メタ)アクリレート、しかしさらにはジ-又はポリエチレン性不飽和モノマー、例えばアルキレングリコールジアクリレート及びジメタクリレート、例えば1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート及び1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、オリゴアルキレングリコールジアクリレート及びジメタクリレート、例えばジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、及びジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、及びペンタエリスリトールジ-及びトリ(メタ)アクリレートである。
【0076】
好適な従来の添加剤はさらに例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤/光安定剤、金属不活性化剤、帯電防止剤、補強剤、充填剤、かぶり防止(曇り止め)剤、噴射剤、殺生物剤、可塑剤、潤滑剤、乳化剤、レオロジー剤、触媒、光開始剤、接着制御剤、蛍光増白剤、難燃剤、防滴剤、及び成核剤、並びにこれらの混合物を含む。
【0077】
任意選択により使用される光安定剤/紫外線吸収剤、酸化防止剤、及び金属不活性化剤は好ましくは、高い移動安定性及び耐温度性を有する。これらは、例えば群a)からt)から選択される。群a)からg)及びi)の化合物は光安定剤/紫外線吸収剤を表し、j)からt)の化合物は安定化剤として作用する。
a)4,4-ジアリールブタジエン、
b)ケイ皮エステル、
c)ベンゾトリアゾール、
d)ヒドロキシベンゾフェノン、
e)ジフェニルシアンアクリレート(diphenyl cyanacrylates)、
f)オキサミド、
g)2-フェニル-1,3,5-トリアジン、
h)酸化防止剤、
i)ニッケル化合物、
j)立体障害アミン、
k)金属不活性化剤、
l)ホスファイト及びホスホナイト、
m)ヒドロキシルアミン、
n)ニトロン、
o)アミンオキシド、
p)ベンゾフラノン及びインドリノン、
q)チオ共力剤(thiosynergist)、
r)過酸化物破壊化合物、
s)ポリアミド安定剤、並びに
t)塩基性補助安定剤(basic costabilizer)。
【0078】
コーティング材料配合物のための好適な従来の添加剤の選択はコーティング材料配合物の特定の最終用途に依存し、個々の場合に当業者により決定され得る。
【0079】
基材上にコーティングを製造する目的でコーティング材料配合物を塗布することは、例えば噴霧、ナイフ塗布、展延、流し込み、浸漬、又はローリングなどの通例のあらゆる塗布技術によって行われ得る。例えば圧縮空気噴霧、無気噴霧、高速回転、静電噴霧塗布(ESTA)などの噴霧塗布技術を、任意選択により例えば高温空気噴霧などの高温噴霧塗布と共に用いることが好ましい。塗布は、コーティング材料及び任意選択により再処理を目的としたそのオーバースプレー(overspray)に対する変化又は損傷なしに、それが曝される短時間の熱負荷下で、好適な塗布粘度に到達するように、最高70から80℃の温度で実施され得る。例えば、高温噴霧は、コーティング材料がスプレーノズル中又はスプレーノズルの直前で非常に短時間だけ加熱されるように構成され得る。
【0080】
塗布のために使用される噴霧ブースは、例えば、オーバースプレーに好適な吸収媒体、例えばコーティング材料自体で動作される、任意選択で温度制御可能な(regularable)サーキュレーションで運転され得る。
【0081】
上記に記載された塗布技術は、当然ながら多層コーティング系の製造の一部としての追加のコーティングフィルム又はベースコートフィルムの製造でも用いられ得る。この場合、様々なコーティングのそれぞれを構築するために、異なるコーティング材料を使用することが可能である。ベースコートフィルムへの適用は好ましい。
【0082】
企図された基材は、下塗りされたもの(primed)及び下塗りされていないもの(unprimed)両方の、多数の材料に及ぶ。それらは例えば、金属、プラスチック、木材、セラミック、石、織物、繊維複合材料、革、ガラス、ガラス繊維、グラスウール、及び岩綿、鉱物で固められた及び樹脂で固められた建築材料、例えば石膏板及びセメントスラブ、又は屋根板である。
【0083】
いくつかの実施形態を以下に示す。
項1
少なくとも1個のオリゴ又はポリアルキレンエーテル基を有するポリシロキサン(1)を調製する方法であって、触媒の存在下で、ケイ素原子に結合した少なくとも1個のC 1 ~C 6 アルコキシ基を有するポリシロキサン(2)と、OH末端化オリゴ又はポリアルキレンエーテル(3)とを反応させることを含み、触媒がアルカンスルホン酸である、方法。
項2
OH末端化オリゴ又はポリアルキレンエーテル(3)が、以下の式(3a):
R-[O-A] k -OH (3a)
(式中、Aは、C 2 ~C 4 アルカン-1,2-ジイルであり、kは、2から100の範囲内の数であり、Rは、1から20個のC原子を有する一価の炭化水素基、より具体的にはC 1 ~C 20 アルキル、C 2 ~C 20 アルケニル、又はC 2 ~C 20 アルキニルである)
を有する、項1に記載の方法。
項3
OH末端化オリゴ又はポリアルキレンエーテル(3)及びポリシロキサン(2)が、オリゴ又はポリアルキレンエーテル(3)中のOH基とポリシロキサン(2)中のC 1 ~C 6 アルコキシ基とのモル比が0.8:1から2:1の範囲内になるような割合で使用される、項1又は2に記載の方法。
項4
反応が非プロトン性有機溶媒中で実施され、非プロトン性有機溶媒がより具体的には、芳香族炭化水素から選択される、項1から3のいずれか一項に記載の方法。
項5
反応がバルクにおいて溶媒の添加なしに実施される、項1から3のいずれか一項に記載の方法。
項6
アルカンスルホン酸が、反応混合物の総重量を基準にして0.05から1wt%の量で使用される、項1から5のいずれか一項に記載の方法。
項7
アルカンスルホン酸が、C 1 ~C 6 アルカンスルホン酸である、項1から6のいずれか一項に記載の方法。
項8
アルカンスルホン酸が、メタンスルホン酸である、項7に記載の方法。
項9
反応の間に形成されるC 1 ~C 6 アルカノールが、反応の間に蒸留によって反応混合物から少なくとも部分的に除去される、項1から8のいずれか一項に記載の方法。
項10
使用されるポリシロキサン(2)が、以下の特徴:
- ポリシロキサン(2)が、平均で5から30個のケイ素原子を有すること、
- ポリシロキサン(2)が、ポリシロキサン(2)の1個のケイ素原子にそれぞれの場合に結合した1から6個のC 1 ~C 6 アルコキシ基を有すること、
- ポリシロキサン(2)が、2個の末端ケイ素原子のそれぞれにC 1 ~C 6 アルコキシ基を有する線状ポリシロキサンであること、
- ポリシロキサン(2)が、ポリジメチルシロキサンであること、
- ポリシロキサン(2)のケイ素原子に結合した少なくとも1個のC 1 ~C 6 アルコキシ基が、メトキシ及びエトキシから選択されること
のうち少なくとも1つを有する、項1から9のいずれか一項に記載の方法。
項11
ポリシロキサン(2)が、2から6個のケイ素原子を有する線状又は環状ポリシロキサンと、式(R 9 O) m R 10 4-m Si(式中、R 9 は、C 1 ~C 6 アルキルであり、R 10 は、C 1 ~C 6 アルキル、C 3 ~C 6 シクロアルキル、フェニル、C 2 ~C 6 アルケニル、又はC 2 ~C 6 アルキニルであり、mは、1、2、3、又は4である)のC 1 ~C 6 アルコキシシラン、より具体的には式(R 9 O) 2 R 10 2 SiのC 1 ~C 6 アルコキシシランとの反応によって提供される、項1から10のいずれか一項に記載の方法。
項12
R 9 が、メチル又はエチルであり、R 10 が、メチルである、項11に記載の方法。
項13
消泡剤としての、式(3b):
R-[O-A] k -O- (3b)
(式中、Aは、C 2 ~C 4 アルカン-1,2-ジイルであり、kは、2から100の範囲内の数であり、Rは、1から20個のC原子を有する一価の炭化水素基、より具体的にはC 1 ~C 20 アルキル、C 2 ~C 20 アルケニル、又はC 2 ~C 20 アルキニルである)
の基を2個の末端ケイ素原子のそれぞれに有する線状ポリジメチルシロキサン(1)の使用。
項14
特に表面改質の方法における、湿潤剤としての、項13に記載の線状ポリジメチルシロキサン(1)の使用。
項15
少なくとも1つの有機バインダーを含むコーティング材料配合物中の、添加剤としての、より具体的には流れ調整補助剤としての、項13に記載の線状ポリジメチルシロキサン(1)の使用。
項16
消泡剤、湿潤剤、及び流れ調整補助剤からなる群から選択される添加剤としての、項1から12のいずれか一項に記載の方法によって得られるポリシロキサン(1)の使用。
本発明は以下の実施例によってより詳細に説明される。
【実施例
【0084】
分析
【0085】
動摩擦係数の決定
動摩擦係数(COF)は、「プル-メーター(Pull-Meter)」法(ASTM C-1028-96)によって、RAY-RAN Test Equipment Ltd製のCOF試験機を使用して決定する。
【0086】
グロス(光沢)及びヘーズ(曇価)の決定
光沢及び曇価は、BYK-Gardner製の「micro-Tri-gloss」を使用して決定した。
【0087】
ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)
ゲル透過クロマトグラフィーは、Agilent製の「1260 Infinity」を使用して実施した。2つのResiPoreカラム(300×7.5mm;3μm)を使用した。用いた溶出液は、40℃のオーブン温度のテトラヒドロフラン(1mL/分)であった。検出はRI検出器を使用して行われた。
【0088】
1H-NMR分光法
1H-NMRスペクトルは、Bruker製の400MHz NMR分光計を使用してCDCl3において記録した。
【0089】
使用した材料
オクタメチルシクロテトラシロキサン(97%、ABCR)
ジメチルジエトキシシラン(97%、ABCR)
トリフルオロメタンスルホン酸(98%、Sigma-Aldrich)
メタンスルホン酸(>99%、BASF SE)
トリ-n-ブチルアミン(>98.5%、Sigma-Aldrich)
酢酸エチル(>99.8%、Sigma-Aldrich)
トルエン(>99.8%、Sigma-Aldrich)
Clear PE Panels Form P 300-7C(PETシート、LAU GmbH)
【0090】
アルコキシ官能化シロキサンの調製
【0091】
シロキサン1の調製:CH3CH2O-Si(CH3)2-O-(Si(CH3)2-O)12-Si(CH3)2-OCH2CH3
オクタメチルシクロテトラシロキサン1246g、ジメチルジエトキシシラン278g、及びトリフルオロメタンスルホン酸1gを5Lの反応装置中で混合し、60℃で6時間撹拌した。混合物の固形分の増加量により決定した平衡到達(establishment)後、1.6gのトリ-n-ブチルアミンを添加することによって触媒を中和した。反応混合物を濾過し、減圧下でストリッピングを行うことにより、未反応の出発材料及び副生成物として形成された低分子量のオリゴマーを除去した。得られた生成物をNMR分光法によって分析した。この生成物は1295gのシロキサン1を含んでいた。
【0092】
シロキサン2の調製:CH3CH2O-Si(CH3)2-O-(Si(CH3)2-O)18-Si(CH3)2-OCH2CH3
オクタメチルシクロテトラシロキサン1088g、ジメチルジエトキシシラン136g、及びトリフルオロメタンスルホン酸1gを5Lの反応装置中で混合し、60℃で6時間撹拌した。混合物の固形分の増加量により決定した平衡到達後、1.6gのトリ-n-ブチルアミンを添加することによって触媒を中和した。反応混合物を濾過し、減圧下でストリッピングを行うことにより、未反応の出発材料及び副生成物として形成された低分子量のオリゴマーを除去した。得られた生成物をNMR分光法によって分析した。この生成物は1040gのシロキサン2を含んでいた。
【0093】
アルコキシ官能化シロキサンのアルコキシ交換
表1に示した量のシロキサン、ポリアルキレンエーテル、溶媒、及びメタンスルホン酸(CH3SO3H)を混合し、混合物を減圧下で撹拌しながら80℃で6時間加熱した。加熱の過程では、除去するエタノールを、蒸留によって反応混合物から連続的に除去した。反応の進行はゲル浸透クロマトグラフィーによって監視した。完全な転化後、固形分含有率が>98wt%になるまで減圧下で溶媒を除去した。得られた生成物は追加の精製なしでさらに使用した。
【0094】
アルコキシ交換に用いたポリアルキレンエーテルは、以下の通りである(重量平均分子量を括弧内に示す):
ポリエーテル 1: エチレングリコール及びプロピレングリコールの単位を有するポリエーテル(1000g/mol)
ポリエーテル 2: ポリプロピレングリコール(900g/mol)
ポリエーテル 3: エチレングリコール及びプロピレングリコールの単位を有するポリエーテル(1750g/mol)
ポリエーテル 4: エチレングリコール及びプロピレングリコールの単位を有するアリルポリエーテル(1520g/mol)
ポリエーテル 5: アリルポリエチレングリコール(460g/mol)
ポリエーテル 6: アリルポリプロピレングリコール(975g/mol)
ポリエーテル 7: アリルポリプロピレングリコール(1448g/mol)
ポリエーテル 8: エチレングリコール及びプロピレングリコールの単位を有するアリルポリエーテル(1520g/mol)
ポリエーテル 9: メチルポリエチレングリコール(500g/mol)
ポリエーテル 10: アリルポリエチレングリコール(460g/mol)
【0095】
【表1】
【0096】
使用実施例
流れ調整補助剤としての使用
使用した試験配合物は、希釈したJoncryl(登録商標)8052分散体(BASF SE)(9.24gの水、90.76gのJoncryl(登録商標)8052)であった。電動ミキサーを2500回転/分で2分間超使用して、希釈したJoncryl(登録商標)8052分散体の25g部分中に表2に示した量の実施例の化合物を組み込んだ。表2に示した重量%は、分散体の総重量を基準としている。配合物を、60μmのドクターブレードを使用して10mm/sの速度でPETシート上に塗布した。試料は、24時間乾燥させ、動摩擦係数並びに光沢及び曇価の測定を行った。表面構造及びクレーターは、目視により1から8の尺度(1=非常に良い、8=非常に悪い)で評価した。使用した標準物質は、市販のポリエーテル修飾ポリシロキサンEfka(登録商標)SL-3299(BASF SE)であった。
【0097】
【表2】
【0098】
消泡剤としての使用
使用した試験配合物は、希釈したAcronal(登録商標)LR9014分散体(BASF SE)(35gの水、85gのAcronal(登録商標)LR9014)であった。電動ミキサーを4500回転/分で3分間超撹拌して、表3に示した実施例の化合物を分散体中に組み込んだ。すべての使用実施例では、分散体中の実施例の化合物の濃度は、分散体の総重量を基準として0.42wt%であった。実施例の化合物が組み込まれた直後、比重瓶(ステンレス鋼、100cm3)を使用して配合物の密度を決定した。完全に脱気し、希釈したAcronal(登録商標)LR9014分散体の標準密度は、1.101g/cm3であった。
【0099】
適合性試験のため、分散体を、ドクターブレードを使用して10mm/sの速度でPETシート上に100μmのフィルム厚さで塗布した。完全に硬化したフィルムを検査した。
【0100】
保存安定性の評価のため、分散体を、45℃で14日保存後、電動ミキサーで4500回転/分で3分間撹拌し、比重瓶を使用してそれらの密度を測定した。
【0101】
フィルムは1から4の尺度(1=満足できるフィルムであって、特に目立ったクレーター又は斑点はない、2=満足できるフィルムであり、かすかに不均一であり、所々にクレーター又は斑点がある、3=非常に不均一な表面であり、大きな(massive)クレーター又は斑点がある、4=適合性がないため、フィルムが形成されない)で評価した。
【0102】
【表3】