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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】偽造防止印刷物
(51)【国際特許分類】
   B41M 3/14 20060101AFI20221026BHJP
【FI】
B41M3/14
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021171738
(22)【出願日】2021-10-20
【審査請求日】2022-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】303017679
【氏名又は名称】独立行政法人 国立印刷局
(72)【発明者】
【氏名】木内 正人
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-089971(JP,A)
【文献】特開2019-202438(JP,A)
【文献】特許第6394975(JP,B2)
【文献】特許第4635160(JP,B2)
【文献】特許第3544536(JP,B2)
【文献】特開2013-248833(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上の少なくとも一部に、第1の画線領域及び第2の画線領域を少なくとも有するユニットが複数配置された印刷模様を有し、
前記ユニットは、第1の方向に沿って隣接する複数の前記ユニットにおいて同一線上に形成された前記第1の画線領域と、前記第1の方向に沿って、前記第1の画線領域と異なる位相で、かつ、隣接する複数の前記ユニットにおいて同一線上に形成された前記第2の画線領域を有し、
前記第1の画線領域は、前記基材とは異なる色で、かつ、複写機によって再生される潜像要素によって潜像模様が形成され、
前記第2の画線領域は、前記基材と異なる色で、かつ、複写機によって再生されないカモフラージュ要素によって形成され、
前記ユニットの配置がレンガ積み状配置であることを特徴とする偽造防止印刷物。
【請求項2】
前記ユニットにおいて形成された前記潜像要素と前記カモフラージュ要素を合計した面積率は、前記印刷模様内において同一の面積率で形成されたことを特徴とする請求項1記載の偽造防止印刷物。
【請求項3】
複数の前記ユニットにおける前記潜像要素及び前記カモフラージュ要素の合計面積率は、5%から40%の範囲内であることを特徴とする請求項1又は2に記載の偽造防止印刷物。
【請求項4】
前記潜像要素は、赤外線吸収性色素を含む色材で形成され、
前記カモフラージュ要素は、赤外線吸収性色素を含まない色材で形成されたことを特徴とする請求項1から3記載の偽造防止印刷物。
【請求項5】
前記潜像要素は、第1の色材で形成され、
前記カモフラージュ要素は、前記第1の色材と色相が同じであり、かつ、前記第1の色材より明度が高い第2の色材で形成され、
前記印刷模様内における前記第1の色材と前記第2の色材を加味した明度が一定となるように形成されたことを特徴とする請求項1記載の偽造防止印刷物。
【請求項6】
前記潜像要素は、各々の前記第1の画線領域において面積率が変化して形成されたことで、連続階調を有する前記潜像模様が形成されたことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の偽造防止印刷物。
【請求項7】
前記ユニットにさらに設けた第3の画線領域又は前記第2の画線領域の一部に、
前記基材と異なる色で、かつ、複写機によって再生されない可視要素によって可視模様が形成されたことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の偽造防止印刷物。
【請求項8】
前記可視要素は、赤外線吸収色素を含まない色材で形成されたことを特徴とする請求項7記載の偽造防止印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀行券、有価証券、各種証明書、重要書類等の偽造、改ざんの防止が求められる印刷物において、モノクロ複写機又はカラー複写機により複写した場合に、容易に真偽判別することができる偽造防止印刷物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
銀行券、有価証券、各種証明書、重要書類等のセキュリティ印刷物において、偽造、改ざん防止策は重要な要素である。これらの印刷物の偽造、改ざん防止策には、印刷物に対して何らかの手段と作用を加えることで、目視では認識することができない潜像が出現する方法があり、代表的な例としてコピー防止画線等がある。
【0003】
コピー防止画線に関して、これまで数多くの出願がなされており、本出願人は、印刷物上に形成された可視画像と、複写機で複写した際に出現する潜像模様がチェンジする効果を有し、かつ、複写物に出現する潜像模様を写真画像のような連続階調画像とすることができる偽造防止用印刷物を出願している(例えば、特許文献1参照)。この印刷物は、連続階調を有する潜像模様を潜像画線の大小(太細)により形成し、当該潜像画線と濃度を反転させたカモフラージュ画線を複写機で再現されない大きさの画線で形成することで、印刷物を視認しても潜像模様は確認されないが、複写機で複写した場合にカモフラージュ画線が消失し、連続階調を有する潜像模様が出現するものである。
【0004】
また、本出願人は、第1の方向に沿って、中心を境に対向するように配置された第1の画線及び第2の画線と、第1の方向と直交する第2の方向に沿って、中心を境に対向するように配置された第3の画線及び第4の画線とを有する画線要素が、一定のピッチで複数マトリクス状に配置されており、各々の画線要素における第1の画線と第2の画線、第3の画線と第4の画線は、ネガポジの関係にあり、第1の画線又は第2の画線により第1の不可視画像が形成され、第3の画線又は第4の画線により第2の不可視画像が形成されることを特徴とする偽造防止用印刷物を出願している(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、本出願人は、高解像度なハードコピーにおける偽造防止策として、1つの第1の領域と、第1の領域に隣接する1つの第2の領域とが複数組配置され、各々の第2の領域の周囲が、複数の第1の領域に囲まれ、第1の領域は、第2の領域より面積が大きく、第2の領域は赤外線吸収色素を含むブラックインキを用いて構成された第2aの領域と赤外線吸収色素を含まないインキを用いて構成された黒色系である第2bの領域とを有し、各々の第2の領域における第2aの領域と第2bの領域との比率に応じて、複数の第2の領域における第2aの領域により階調画像が形成されていることを特徴とする網点印刷物を出願している(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
また、本出願人は、複写機で再現される第1の要素を低明度(濃色)で形成し、複写機で再現されない第2の要素を高明度(淡色)で形成し、特定の領域における第1の要素と第2の要素とを合計した明度が一定になるように形成した偽造防止印刷物を出願している(例えば、特許文献4参照)。
【0007】
さらに、本出願人は、複数の手段により真偽判別することが可能な偽造防止印刷物として、
潜像模様のポジ画像を形成する複写機で再生される第1の要素と潜像模様のネガ画像を形成する複写機で再生されない第2の要素を異なる位相に形成し、第1の要素と第2の要素を合計した濃度が同一であり、第1の要素が形成された位置にレンチキュラーレンズの中心を重ねると、潜像模様が視認され、かつ、複写機で複写した場合に、潜像模様が出現する偽造防止印刷物を出願している(例えば、特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第6394975号公報
【文献】特許第4635160号公報
【文献】特許第3544536号公報
【文献】特開2019-202438号公報
【文献】特開2020-89971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1の印刷物は、連続階調を有する潜像模様を形成することで、複写物を加工する行為に対して極めて高い複合要素セキュリティ効果を有しているが、潜像模様を形成する潜像画線及びカモフラージュ画線を「線」と「点」で構成していることから、潜像模様の視認性が複写機に搭載されたバンドパス・フィルタ等の画像処理性能に左右され、カモフラージュ画線が完全に消失しない場合があった。
【0010】
また、特許文献2の印刷物は、通常の観察において可視画像を設けることが可能で豊かなデザイン性と、簡易な判別具における潜像の高い視認性を有し、低コストで製造できるという優れた効果があるものの、ハードコピーにおける偽造防止策としては不十分であった。
【0011】
また、特許文献3の印刷物は、高解像度なハードコピーにおける偽造防止策として優れた効果があるものの、特定の波長において吸収する又は発光する色材、例えば、赤外線吸収色素の有無を判別するという特殊性から、判別具が光学系機械部品又は特定の電磁波を受信する機械部品で構成した特殊な装置となるため、簡易な判別ができないという問題があった。
【0012】
特許文献4の印刷物は、複写物に視認される画像を複雑な連続階調を有する画像とすることができることから、身分証明書のように顔画像を含むセキュリティ印刷物を提供できる。
また、特許文献5の印刷物は、限られた印刷面積の中で複数の偽造防止策が共有でき、ユーザーの使用環境や立場に応じた真偽判別手段が選択できる偽造防止印刷物であり、オフセット印刷をはじめとする商業印刷又はデジタル印刷を用いて印刷することが可能である。しかしながら、特許文献4及び特許文献5の技術は、偽造防止印刷物に連続階調画像、細画線や文字を潜像模様として埋め込み、出力解像度が低いプリンタにて印刷物を作成した場合、得られた印刷物について真偽判別(複写機で複写することによる潜像画像の出現、レンチキュラーレンズを重ねることによる潜像画像の出現、赤外視による潜像画像の発現時による真偽判別)する際に画像分解能の低さによる画像品質の「荒れ」が生じ、顔画像のディティールを実物のように表現したり、細画線、文字等を高い画像品質で表現したりすることが困難であった。
【0013】
本発明は、これらの課題の解決を目的とするものであり、限られた印刷面積において複数の偽造防止技術を共有するとともに、複数の真偽判別手段が選択できる印刷物であり、複雑な潜像画像(連続階調、細画線、文字等)が施されていても、印刷用プリンタの出力解像度に関係なく、得られる印刷物及び印刷物の真偽判別時に出現する潜像画像が、「荒れ」のない高い画像品質を有する偽造防止印刷物である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の偽造防止印刷物は、基材上の少なくとも一部に、第1の画線領域及び第2の画線領域を少なくとも有するユニットが複数配置された印刷模様を有し、ユニットは、第1の方向に沿って隣接する複数のユニットにおいて同一線上に形成された第1の画線領域と、第1の方向に沿って、第1の画線領域と異なる位相で、かつ、隣接する複数のユニットにおいて同一線上に形成された第2の画線領域を有し、第1の画線領域は、基材とは異なる色で、かつ、複写機によって再生される潜像要素によって潜像模様が形成され、第2の画線領域は、基材と異なる色で、かつ、複写機によって再生されないカモフラージュ要素によって形成され、ユニットの配置が規則的なレンガ積み状配置であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の偽造防止印刷物は、ユニットにおいて形成された潜像要素とカモフラージュ要素を合計した面積率は、印刷模様内において同一の面積率で形成されたことを特徴とする。
【0016】
また、本発明の偽造防止印刷物は、複数のユニットにおける潜像要素及びカモフラージュ要素の合計面積率は、5%から40%の範囲内であることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の偽造防止印刷物は、潜像要素が赤外線吸収性色素を含む色材で形成され、カモフラージュ要素が赤外線吸収性色素を含まない色材で形成されたことを特徴とする。
【0018】
また、本発明の偽造防止印刷物は、潜像要素が第1の色材で形成され、カモフラージュ要素が第1の色材と色相が同じであり、かつ、第1の色材より明度が高い第2の色材で形成され、印刷模様内における第1の色材と第2の色材を加味した明度が一定となるように形成されたことを特徴とする。
【0019】
また、本発明の偽造防止印刷物は、潜像要素が各々の第1の画線領域において面積率が変化して形成されたことで、連続階調を有する潜像模様が形成されたことを特徴とする。
【0020】
また、本発明の偽造防止印刷物は、ユニットにさらに設けた第3の画線領域又は第2の画線領域の一部に基材と異なる色で、かつ、複写機によって再生されない可視要素によって可視模様が形成されたことを特徴とする。
【0021】
また、本発明の偽造防止印刷物は、可視要素は赤外線吸収色素を含まない色材で形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明の偽造防止印刷物によれば、限られた印刷面積において複数の偽造防止技術を共有するとともに、複数の真偽判別手段が選択できる印刷物であり、複雑な潜像画像(連続階調、細画線、文字等)が施されていても、印刷用プリンタの出力解像度に関係なく、得られる印刷物及び印刷物の真偽判別時に出現する潜像画像が、「荒れ」のない高い画像品質を得ることができる。
【0023】
また、本発明の偽造防止印刷物によれば、潜像画像(連続階調、細画線、文字等)のディティールを実物のように表現できることから、確実な真偽判別を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明における偽造防止印刷物の一例を示す図。
図2】カラー複写機等によって複写された複写物を示す図。
図3】印刷物に判別具を所定の位置に重ね合わせた状態を示す図。
図4】印刷物を赤外線光下で観察した状態を示す図。
図5】印刷模様の一画線の構成における部分的な拡大図。
図6】印刷模様に可視模様を施す場合のユニット構成の一例を示す。
図7】印刷物において潜像模様の基となる不可視画像を示す図。
図8】ユニットの縦寸法と横の寸法との比が1:1の正方形において、不可視画像を構成している連続階調を潜像模様とする課程を示す図。
図9】ユニットの縦寸法と横の寸法との比が1:2の正方形において、不可視画像を構成している連続階調を潜像模様とする課程を示す図。
図10】不可視画像の一部分を拡大した図。
図11】不可視画像の一部分を拡大した図。
図12】ユニット中心間の距離の違いを示す図。
図13】本発明におけるユニットのレンガ積み状配置のフローの一例を示す図。
図14】本発明におけるユニットのレンガ積み状配置の理由を説明する図。
図15】本発明を判読性が求められる「文字」で示す図。
図16】それぞれのユニットの領域にある画線面積率の平均化を示す図。
図17】本発明の複合要素セキュリティ機能を有する印刷模様を示す図。
図18】赤外線視された印刷模様を示す図。
図19】第2の実施の形態の構成を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明するが、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他の様々な実施の形態が含まれる。
【0026】
図1は、本発明の対象とする偽造防止印刷物(1)(以下「印刷物」という。)と、その印刷模様(2)の例である。図1では、旅券冊子を例として、表紙と裏表紙の間に複数の記録用のページがとじ部により一体化されており、所有者の顔画像(11)と、複合要素セキュリティ機能を有する印刷模様(2)に可視模様(8)が形成されたものである。なお、図1に示した旅券冊子は一例であり、必ずしも同じようなデザイン(配置)である必要はない。
本発明の複合要素セキュリティ機能とは、少なくとも第1の真偽判別技術と第2の真偽判別技術を同一の印刷面上に備えたものであり、さらには、第3の真偽判別技術を含む3種類の真偽判別技術を同一印刷面上に形成できる機能である。
【0027】
ここで、それぞれの真偽判別方法について説明する。 第1の真偽判別方法は、カラー複写機あるいはモノクロ複写機(以下「複写機」という。)を用いるものであり、図2は、複合要素セキュリティ機能を備えた印刷物(1)を、複写機によって複写した複写物(12)が示されたものである。図2に示すように、複写物(12)において複写された印刷模様(3)に潜像模様(7)が可視化されている。可視化された潜像模様(7)と、所有者の顔画像(11)とを参照し、人物の一致を確認することで容易な真偽判別を可能にしている。
【0028】
第2の真偽判別方法は、透明性を有するフィルタに複数の直線が万線状に一方向に沿って形成された万線フィルタ又はレンチキュラーレンズ等の判別具(4)を用いるものであり、図3は、複合要素セキュリティ機能を備えた印刷物(1)において、判別具(4)を所定の位置に重ね合わせた状態が示されたものである。図3に示すように、印刷物(1)上の判別具(4)が重なった部分において潜像模様(7)が可視化されている。可視化された潜像模様(7)と、所有者の顔画像(11)とを参照し、人物の一致を確認することで容易な真偽判別を可能にしている。
【0029】
第3の真偽判別方法は、赤外線視するカメラ(又は光学式スキャナ)を搭載した画像入力・表示装置(IRビューアとも呼ばれる。)等を用いるものであり、図4は、複合要素セキュリティ機能を備えた印刷物(1)を、該画像入力・表示装置によって赤外線視した画像(5)が示されたものである。図4に示すように、赤外線視した画像(5)において、赤外線視した印刷模様(6)に潜像模様(7)が可視化されている。可視化された潜像模様(7)と、所有者の顔画像(11)とを参照し、人物の一致を確認することで容易な真偽判別を可能にしいる。
【0030】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態では、第1の真偽判別方法、第2の真偽判別方法及び第3の真偽判別方法の3種類の真偽判別方法により真偽判別可能な印刷物を例にして説明する。
【0031】
(ユニット)
図5(a)に、印刷物(1)に対する印刷模様(2)の一画線の構成における部分的な拡大図を示す。図5(a)の画線構成は、ユニットと称する最小単位であり、縦の寸法(Sv)及び横の寸法(Sh)は、例えば、423μmというように1mm以下の大きさである。また、画像解像度は、例えば、600dpiとし、縦横20ピクセルとなっている。
【0032】
次に、ユニットの構成について説明する。ユニットは、少なくとも第1の画線領域(A)と、第2の画線領域(B)で形成される。本実施の形態では、図5(a)に示すように、第1の画線領域(A)及び第2の画線領域(B)は、ユニット横方向を長手方向とし、寸法(Sh)を最大幅とする長方形である。また、図5(a)に示すように、本実施の形態では、第1の画線領域(A)は、ユニットの中央に配置され、複写機により再生される潜像要素(13)が形成される。そして、第1の画線領域(A)を上下に挟持するように第2の画線領域(B)が配置され、第2の画線領域(B)には、複写機により再生されないカモフラージュ要素(14)が形成される。
【0033】
上記において、第1の画線領域(A)を第2の画線領域(B)が上下で挟持するように配置される例で説明したが、第1の画線領域(A)と第2の画線領域(B)とが異なる位相で形成されていればこの構成に限定されない。例えば、ユニットを上下に分割し、上段に第1の画線領域(A)が形成され、下段に第2の画線領域(B)が形成されてもよいし、その逆の構成でもよい。また、ユニットを左右に分割し、右に第1の画線領域(A)が形成され、左に第2の画線領域(B)が形成されてもよいし、その逆の構成でもよい。これらの構成により、第1の画線領域(A)と第2の画線領域(B)を横方向又は縦方向に交互に配置(異なる位相に配置)することができる。さらに、上記において、ユニットは長方形であると説明したが、第1の画線領域(A)及び第2の画線領域(B)が交互に配置さる構成であれば、正方形や菱形、六角形等の多角形であってもよい。なお、第1の画線領域(A)と第2の画線領域(B)とを異なる位相で形成する目的は、第2の真偽判別方法に関するものであり、詳細は後述する。
【0034】
なお、ユニットを構成する第1の画線領域(A)と第2の画線領域(B)の面積比は、第1の画線領域(A)の面積:第2の画線領域(B)の面積が1:3から1:5程度となるように構成されるとよいが、1:4の面積比の構成が第1の画線領域(A)の潜像要素(13)を第2の画線領域(B)のカモフラージュ要素(14)がカモフラージュする上で、最も好ましい。
【0035】
また、図5において、第1の画線領域(A)及び第2の画線領域(B)は、説明の都合上、一定濃度で示しているが、実際には、第1の画線領域(A)に形成される潜像要素(13)が、連続階調を有する潜像模様(7)の構成(濃淡)によって面積率が増減されて形成されている。また、第2の画線領域(B)に形成されるカモフラージュ要素(14)も、第1の画線領域(A)に形成される潜像要素(13)の面積率の変化に伴い、面積率が変化して形成されている。
【0036】
(ユニット配列)
図1に示された印刷物(1)の印刷模様(2)は、図5(a)に示されたユニットが縦ステップ数と横ステップ数をもって、図5(b)に示すように、レンガ積み状で規則的に隙間なく配置される。ステップ数とは、印刷模様(2)上で繰り返されるユニットの数のことを指し、ステップ数には何ら制限はなく、このステップ数は可視模様(8)及び潜像模様(7)の画像分解能と比例している。また、図5(b)に示すように、第1の画線領域(A)及び第2の画線領域(B)は、横一直線状に連結されている。そして、第1の画線領域(A)と、第2の画線領域(B)とが横方向に並ぶことによって、第1の画線領域(A)群から成る平行万線と、第2の画線領域(B)群から成る平行万線とが形成される。
【0037】
なお、図5(a)に示す中心線(L1)は、判別具(4)に関係し、説明上、図示するものである。図3に示すように、線位相変調(Line phase modulation)によって、潜像模様(7)を施していることから、判別具(4)として、例えばレンチキュラーレンズの万線状の中心を第1の画線領域(A)の中心線(L1)に重ねると、第1の画線領域(A)に備わる画線のみが拡大表示され、これにより、第1の画線領域(A)に構成された潜像模様(7)が可視化される。
【0038】
(色材)
次に、第1の実施の形態において、第1の画線領域(A)及び第2の画線領域(B)に形成される色材について説明する。第1の実施の形態では、第3の真偽判別方法として、印刷物(1)を赤外線視し、可視化された潜像模様(7)により真偽判別を可能にするものである。そのため、潜像模様(7)を構成しているユニットの第1の画線領域(A)に相当する部分には、少なくとも赤外線吸収性色素を含む色材で形成され、第2の画線領域(B)は、赤外線吸収性色素を含まない色材で構成される。例えば、第1の真偽判別方法(複写機による複写)と第3の真偽判別方法(赤外線視)を両立させるために、第1の画線領域(A)に相当する部分は、赤外線吸収性色素(例えば、カーボン)を含むブラックの色材で潜像要素(13)が形成され、第2の画線領域(B)に相当する部分は、赤外線吸収性色素を含まない色材であるシアン、マゼンタ及びイエローの減法混色によって混合されたインキを用いてカモフラージュ要素(14)が形成される。
【0039】
このとき、第1の画線領域(A)と第2の画線領域(B)は、ユニット内の領域においてモノクロ階調の濃淡反転の関係にある。このモノクロ階調の濃淡反転の関係とは、例えば、一方が黒のとき、他方は白、一方がグレー色のとき、他方はグレー色である。このような第1の画線領域(A)と第2の画線領域(B)が存在することで、通常の可視条件下では、肉眼視において画線面積率20%程度の一様なグレーとして視認される。しかし、この印刷物(1)を複写機により複写した場合、第2の画線領域(B)に形成されたカモフラージュ要素(14)は消失し、第1の画線領域(A)に形成された潜像要素(13)による潜像模様(7)が出現するため、モノクロの潜像模様(7)を確認することができる。
【0040】
なお、上記において、ユニットの第1の画線領域(A)に、赤外線吸収性色素を含むブラックの色材で潜像要素(13)が形成されると説明したが、赤外線吸収性色素を含むブラック以外に、第1の画線領域(A)において部分的に赤外線吸収性色素を含まないシアン、マゼンタ、イエローの色材を用いて複写機で再生される潜像要素(13)を構成してもよいし、ユニットによっては、第1の画線領域(A)には赤外線吸収性色素を含まないシアン、マゼンタ、イエローの色材のみで潜像要素(13)を構成してもよい。
【0041】
このとき、第1の画線領域(A)と第2の画線領域(B)は、ユニット内の領域における色彩の補色の関係にある。有彩色において、補色は色相環で正反対に位置する関係の色の組み合わせであり、この色彩の補色の関係とは、例えば、一方が赤のとき、他方は緑、一方が青のとき、他方は橙色である。これらを本発明に適用したものであり、このような第1の画線領域(A)と第2の画線領域(B)が存在することで、通常の可視条件下では、肉眼視において画線面積率20%程度の一様なグレーとして視認される。しかし、この印刷物を複写機により複写した場合、第2の画線領域(B)に形成された色材によるカモフラージュ要素(14)は消失し、第1の画線領域(A)に形成された潜像要素(13)による潜像模様(7)が出現するため、カラーの潜像模様(7)を確認することができる。
【0042】
(可視模様)
第1の実施の形態は、図1に示すように、複合要素セキュリティ機能を有する印刷模様(2)に可視模様(8)が形成された例であり、可視模様(8)について説明する。しかしながら、可視模様(8)は本発明の必須要件ではなく、可視模様(8)がない構成も本発明の範囲に含まれる。
【0043】
まず、印刷物(1)に可視模様(8)を形成する構成例を以下に説明する。一つ目の例としては、図6(a)に示すように、ユニットにおいて、第1の画線領域(A)と第2の画線領域(B)とは領域の異なる第3の画線領域(C)を有するものであり、第3の画線領域(C)に可視模様(8)を構成する可視要素(15)を配置する。この例では、第3の画線領域(C)は、第1の画線領域(A)と第2の画線領域(B)とは異なる位相で、かつ、隣接する複数のユニットにおいて同一線上に形成される。二つ目の例としては、図6(b)に示すように、第2の画線領域(B)内の部分的な領域に可視模様(8)を構成する可視要素(15)を配置するものであり、第2の画線領域(B)において、カモフラージュ要素(14)と可視要素(15)が存在する構成である。上記二つの例において、可視要素(15)は赤外線吸収性色素を含まない色材であるシアン、マゼンタ及びイエローの減法混色によって混合されたインキを用いて複写機で再生されない網点等で構成される。
【0044】
この構成により、通常の可視条件下では、肉眼視において可視模様(8)が視認される。しかし、この印刷物(1)を複写機により複写した場合、第2の画線領域(B)に形成された色材によるカモフラージュ要素(14)及び可視要素(15)は消失し、第1の画線領域(A)に形成された潜像要素(13)による潜像模様(7)が出現するため、潜像模様(7)を確認することができる。
【0045】
なお、これまでの説明において、印刷物(1)を構成する色材は、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックに限定されるものではなく、他の色材であってもよいが、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックを用いる構成は、各色の合成によって表現できる色の範囲が広いことから望ましい。
【0046】
図7は、印刷物(1)において潜像模様(7)の基となる不可視画像(9)を示すものである。不可視画像(9)は、例えば、8bitのグレースケール画像で写真階調を有している。
【0047】
また、図8は、図7の不可視画像(9)を構成している連続階調を潜像模様(7)とする過程を示すものであり、図8は、ユニットの縦の寸法(Sv)と横の寸法(Sh)との比が1:1の正方形の例である。図8(a)は、図7の不可視画像(9)のグレースケール画像を0%~100%の画線面積率で客観的に目視できる濃淡で表し、かつ、縦の寸法(Sv)及び横の寸法(Sh)によるユニットが6つ横方向に並んだ状態となった模式図である。
図8(b)は、図8(a)の縦の寸法(Sv)及び横の寸法(Sh)によるユニットにおいて、画線面積率の値が平均化されたものであり、左から0%、20%、40%、60%、80%、100%としている。
【0048】
図8(c)は、図5に示されたユニットの画線構成に従い、第1の画線領域(A)のみに図8(b)で示された画線面積率の値が設定されたものである。図8(d)は、第2の画線領域(B)において、第1の画線領域(A)の濃淡が反転して画線面積率の値が設定されたものである。ただし、完全に反転された値ではなく、縦の寸法(Sv)及び横の寸法(Sh)によるユニット内において、平均でほぼ20%の画線面積率の値となるように調整されたものであり、左から25%、20%、15%、10%、5%、0%としている。これにより、ユニットが規則的に配置された状態において、全体が画線面積率20%のグレーの状態となっている。また、図8(e)は、印刷物(1)に付与される最終的な画線構成が設定されたものである。
【0049】
図9は、本発明における図7の不可視画像(9)を構成している連続階調を潜像模様(7)とする過程を示すものであり、図9は、ユニットの縦の寸法(Sv)と横の寸法(Sh)との比が1:2の長方形の例である。図9(a)は、図8(a)と同様に、図7の不可視画像(9)のグレースケール画像を0%~100%の画線面積率で客観的に目視できる濃淡で表し、かつ、縦の寸法(Sv)及び横の寸法(Sh)によるユニットが3つ横方向に並んだ状態となった模式図である。図9(b)は、図9(a)の縦の寸法(Sv)及び横の寸法(Sh)によるユニットにおいて、画線面積率の値が平均化されたものであり、左から10%、50%、90%としている。
【0050】
図9(c)は、図5に示されたユニットの画線構成に従い、第1の画線領域(A)のみに図9(b)で示された画線面積率の値が設定されたものである。図9(d)は、第2の画線領域(B)において、第1の画線領域(A)の濃淡が反転した画線面積率の値が設定されたものである。ただし、完全に反転された値ではなく、縦の寸法(Sv)及び横の寸法(Sh)によるユニット内において、平均でほぼ20%の画線面積率の値となるように調整されたものであり、左から23%、13%、3%としている。これにより、ユニットが規則的に配置された状態において、全体が画線面積率20%のグレーの状態となっている。また、図9(e)は、印刷物(1)に付与される最終的な画線構成が設定されたものである。このとき、第1の画線領域(A)に不可視画像(9)のポジ画像を、第2の画線領域(B)には不可視画像(9)のネガ画像を配置してもよいが、これに限定されない。
【0051】
図8では、ユニットの縦の寸法(Sv)と横の寸法(Sh)との比が1:1の正方形の例を用いて説明し、図9では、ユニットの縦横比が1:2の長方形の例を用いて説明したが、ユニットの縦横比は任意の比率にすることができる。なお、複写物(12)における潜像模様(7)の発現性、レンチキュラーレンズを配置した際に出現する潜像模様(7)の発現性及び赤外線視して出現する潜像模様(7)の発現性を高めるには、ユニットの縦横比は1:2がより望ましい。その理由としては、図8(e)と図9(e)の第1の画線領域(A)に形成される画線の比較により分かるように、ユニットの縦横比が1:2のほうが、第1の画線領域(A)に形成される潜像要素(13)を構成する領域が多く確保されるためである。
【0052】
(画線構成)
ここで、第1の画線領域(A)及び第2の画線領域(B)における画線構成について説明する。図9(e)に示すように、第1の画線領域(A)に相当する部分には、潜像要素(13)が赤外線吸収性色素(例えば、カーボン)を含むブラックにより、複写機で再生されるベタの塗りつぶしで形成され、第2の画線領域(B)に相当する部分には、カモフラージュ要素(14)が赤外線吸収性色素を含まない色材であるシアン、マゼンタ及びイエローの減法混色によって混合されたインキを用いて、複写機で再生されない大きさの網点で構成されている。しかしながら、潜像要素(13)はベタ画線に限定されず、複写機で再生される大きさを有すれば直線や曲線等であってもよい。また、カモフラージュ要素(14)は網点に限定されず、画線、分断線、点線、画素、星、四角等の特殊な形状、記号、数字、文字等であってもよい。印刷物(1)を複写する際、潜像模様(13)が再現され、カモフラージュ要素(14)が再現されないように配置されれば上記構成に限定されない。なお、印刷物(1)に可視模様(8)が形成される場合、可視要素(15)についても印刷物(1)を複写する際に、可視要素(15)が再現されない大きさの網点等で配置さればよく、画線、分断線、点線、画素、星・四角等の特殊な形状、記号、数字、文字等を適宜選択できる。
【0053】
(画線面積率)
本発明における画線面積率について説明する。本発明において、複数のユニットにおける潜像要素(13)及びカモフラージュ要素(14)の合計面積率は、5%から40%の範囲内が望ましく、図8(d)において説明したように、例えば、20%というように低く設定することが望ましい。通常、複写機における入出力の明度の関係、即ち原本の濃度と複写物の濃度は一律に比例関係になく、原本の濃度が50%より低い段階では、例えば、原本の地色や細かなノイズを再現しないように複写物の濃度はより低く、原本の濃度が50%より高い段階では、シャープネス処理のため、複写物の濃度はより高く設定されている。本発明の印刷物は、このような複写機の入出力の濃度特性を利用して不可視模様の全体の濃度、即ち画線面積率を5~40%、望ましくは、例えば20%というように低く設定している。
【0054】
(比較1)
次に、図10(a)は、図7に示す不可視画像(9)の一部分を拡大したものであり、比較のために従来技術の構成を説明する図である。図8で示したように、ユニットの縦横比が1:1の正方形の例であり、各ユニットはマトリックス状に配置されている。次に、図10(b)は、図10(a)のマトリックス状に配置されたユニットごとに、図7の不可視画像(9)の画線面積率の値が平均化された画像(10)である。本実施の形態では、縦の寸法(Sv)及び横の寸法(Sh)がそれぞれ10ピクセルとなっている。不可視画像(9)の画像分解能は、縦の寸法(Sv)及び横の寸法(Sh)のピクセル数によって決まる。
【0055】
(比較2)
図11(a)は、図10(a)と同様に、図7の不可視画像(9)の一部分を拡大したものであり、比較のために従来技術の構成を説明する図である。図9で示したように、ユニットの縦横比が1:2の長方形の例であり、各ユニットがマトリックス状に配置されている。
次に、図11(b)は、図11(a)のマトリックス状に配置されたユニットごとに、縦の寸法(Sv)及び横の寸法(Sh)によるユニットにおいて、図7の不可視画像(9)の画線面積率の値が平均化された画像(10’)である。本実施の形態では、縦の寸法(Sv)が10ピクセル、横の寸法(Sh)が20ピクセルとなっている。
【0056】
本発明において、潜像模様(7)の発現性を高めるには、前述のとおり、ユニットの縦横比は、1:2とすることが望ましい。しかしながら、図10(b)に示された平均化された画像(10)と、図11(b)に示された平均化された画像(10’)を比較すると、図11(b)に示されたマトリックス状に配置されたユニットごとに平均化された画像(10’)は荒れが目立つ画像となっている。
【0057】
ここで、荒れの原因について説明する。荒れの原因は、図12に示すような、ユニットの縦横比に関わるユニット中心間の距離に起因するものである。図12(a)に示すように、ユニットの縦横比が略1:1の場合、ユニット中心間の距離(d1)とユニット中心間の距離(d2)が略等しくなる。しかし、図12(b)に示すように、ユニットの縦横比が略1:2の場合、ユニット中心間の距離(d2)に対して、ユニット中心間の距離(d1)が大きくなり、水平方向の分解能が極端に低くなることから、平均化された画像(10)よりも平均化された画像(10’)は荒れて見える。
【0058】
そこで、本発明は、図12(c)に示すように、ユニットの長辺方向でもある横の寸法(Sh)の約半分の距離でレンガ積み状に配置することで、ユニット中心間の距離(d3)とユニット中心間の距離(d4)が略等しくなり、画像の荒れが解消されるものである。なお、ここでいう、レンガ積み状配置のユニット中心間の距離(d)は、1つのユニットに対して、複数隣接するユニットとの中心間距離のうち、短いほうを指す。具体的には、図12(c)に示すように、1つのユニットに対し、ユニットの縦方向(Sv)を共有して隣接するユニットとの中心間距離ではなく、ユニットの横方向(Sh)を共有して隣接するユニットとの中心間距離(d3、d4)を指す。本発明のレンガ積み状配置により、マトリックス状に配置されたユニットよりも、ユニット中心間の距離を短くできることから、水平方向の分解能を高めることが可能になる。
【0059】
(ユニットの配置フロー)
ユニットをレンガ積み状に配置するフローの一例を図13に示す。図13に示すとおり、処理(f1)においてユニットごとの領域始点座標を「(h[0],v[0])」、領域の横ピクセル数を「Sh」、領域の縦ピクセル数を「Sv」と定義したとき、I(1からhまで増分は1)、J(1からvまで増分は2)とし、処理(f2)に示された変数を増分することで、ユニットがレンガ積み状に配置できる。なお、上記のユニットのレンガ積み状配置フローは一例であり、レンガ積み状に配置される構成であればよく、例えば、縦方向(Sv)に配列されたユニットの位置を半ピッチずらした構成で説明したが、マトリックス状に配列された場合と比較してユニット中心間の距離を短くできる構成であればこれに限定されない。
【0060】
次に、図14(a)は、図10(a)及び図11(a)と同じく、図7の不可視画像(9)の一部分を拡大したものであり、図13に示すフローによって、ユニットの縦の寸法(Sv)と横の寸法(Sh)との比が1:2の長方形であり、それぞれのユニットがレンガ積み状に配置されたものである。図14(b)は、縦の寸法(Sv)及び横の寸法(Sh)によるユニットにおいて、図7の不可視画像(9)の画線面積率の値が平均化された画像(10”)である。なお、図11と同じく縦の寸法(Sv)が10ピクセル、横の寸法(Sh)が20ピクセルとなっている。本発明によれば、図12(c)で説明したとおり、ユニットの縦の寸法(Sv)と横の寸法(Sh)との比が1:2の長方形であっても、ユニットがレンガ積み状に配置され、ユニット中心間の距離が等しくなることから、本発明における図14(b)は、比較として図11b)に示すような画像の荒れが目立たず、画像品質が向上する。
【0061】
(構成例)
本発明について、構成及び効果をより分かりやすく説明するため、判読性が求められる「文字」を例に説明する。不可視画像(9)として、平仮名の「あ」の画像を用いた場合に、図15(a)は、ユニットをマトリックス状に配置したもの、図15(b)は、ユニットをレンガ積み状に配置したものである。次に、図15(a)及び図15(b)において、それぞれのユニットの領域にある画線面積率を平均化したものを図16(a)及び図16(b)に示す。図16(a)に示すとおり、ユニットがマトリックス状に配置されている場合、それぞれのユニットの画線面積率が平均化された画像(10’)は、文字のディティールが不明瞭である。一方で、図16(b)に示すとおり、ユニットがレンガ積み状に配置されている場合、それぞれのユニットの画線面積率が平均化された画像(10”)は、文字のディティールが明瞭となり判読性が高まっている。つまり、ユニットをレンガ積み状としたことで、画像品質が高まる。
【0062】
図17は、前述した画線設定に基づいて構成された印刷模様(2)と同様に画線設定したものである。第1の画線領域(A)に相当する部分は、赤外線吸収性色素を含むブラックの色材で印刷された万線パターンであり、第2の画線領域(B)に相当する部分は、高精細、かつ、赤外線吸収性色素を含まないシアン、マゼンタ及びイエローの色材で印刷された網点パターンで形成される。図17(a)に示すユニットがマトリックス状に配置されている印刷模様(2’)と、図17(b)に示すユニットがレンガ積み状に配置されている印刷模様(2”)を目視した場合、第1の画線領域(A)及び第2の画線領域(B)は、明るいグレー色として視認されている。
【0063】
(効果)
図18は、第3の真偽判別方法である赤外線視するカメラ(又は光学式スキャナ)を搭載した画像入力・表示装置(IRビューアとも呼ばれる。)等を用いて表示された印刷模様(6’、6”)である。赤外線吸収性色素を含む第1の画線領域(A)に相当する部分の画線はそのままに、赤外線吸収性色素を含まない領域に相当する部分の画線が不可視となる。これにより、第1の画線領域(A)に構成された潜像模様(7)が可視化される。
【0064】
図18(a)に示すように、ユニットがマトリックス状に配置されている印刷物(1)を赤外線視した印刷模様(6’)と、図18(b)に示すように、ユニットがレンガ積み状に配置されている印刷物(1)を赤外線視した印刷模様(6”)とを比較すると、図18(a)に示す印刷模様(6’)は、文字のディティールが不明瞭であるが、図18(b)に示す印刷模様(6”)は、文字のディティールが明瞭となり判読性が高まっている。なお、上記では、第3の真偽判別方法である赤外線視による潜像模様の可視化について説明したが、第1の真偽判別方法であるカラー複写機等での複写や、第2の真偽判別方法である万線フィルタ又はレンチキュラーレンズ等の判別具(4)を用いても、出現する潜像模様(ここでは平仮名の「あ」)のディティールが明瞭となり、判読性が高まる。
【0065】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態では、第1の真偽判別方法及び第2の真偽判別方法の2種類の真偽判別方法により真偽判別可能な印刷物(1)を例にして、説明する。第2の実施の形態において、第1の実施の形態と同じ点については省略し、異なる点を説明する。
【0066】
第2の実施の形態では、印刷物(1)に用いる色材が第1の実施の形態と異なる。第2の実施の形態において、ユニットを構成している第1の画線領域(A)は、低明度(濃色)の第1の色材により、複写時に再生される潜像要素(13)で形成され、第2の画線領域(B)は、第1の色材と色相が同じで、かつ、第1の色材よりも高明度(淡色)の第2の色材により、複写時に再生されないカモフラージュ要素(14)が形成される。例えば、第1の画線領域(A)に相当する部分は、潜像要素(13)が濃い青色インキにより、複写機で再生される大きさ又は濃さ(ベタの塗りつぶしなど)で形成され、第2の画線領域(B)に相当する部分には、カモフラージュ要素(14)が淡い青色インキを用いて複写機で再生されない大きさ又は濃さの網点で構成されるような場合である。なお、潜像要素(13)はベタ画線に限定されず、複写機で再生される大きさ又は濃さを有すれば直線や曲線等であってもよい。また、カモフラージュ要素(14)は、複写機で再生されない大きさ又は濃さを有すれば網点に限定されず、画線、分断線、点線、画素、星・四角等の特殊な形状、記号、数字、文字等であってもよい。つまり、印刷物(1)を複写する際、潜像模様(13)が再現され、カモフラージュ要素(14)が再現されないように配置されれば上記構成に限定されない。なお、印刷物(1)に可視模様(8)が形成される場合、可視要素(15)についても印刷物(1)を複写する際に、可視要素(15)が再現されない大きさ又は濃さで配置されればよく、画線、網点、分断線、点線、画素、星・四角等の特殊な形状、記号、数字、文字等を適宜選択できる。
【0067】
次に、第1の画線領域(A)に形成した第1の色材による潜像要素(13)を第2の画線領域(B)に形成した第2の色材によるカモフラージュ要素(14)にて、肉眼で不可視とする構成について、図19を用いて説明する。第2の実施の形態においても第1の実施の形態と同様に、潜像要素(13)の階調の濃淡に合わせてカモフラージュ要素(14)の面積率が変化する。これについて、図19を用いて説明すると、例えば、図19(a)及び(b)の左から示すように、第1の画線領域(A)に低明度(濃色)の第1の色材により面積率5%の潜像要素(13)が形成された場合、第2の画線領域(B)には、高明度(淡色)の第2の色材により面積率約45%のカモフラージュ要素(14)が形成される。また、第1の画線領域(A)に低明度(濃色)の第1の色材により面積率10%の潜像要素(13)が形成された場合、第2の画線領域(B)には高明度(淡色)の第2の色材により面積率約35%のカモフラージュ要素(14)が形成される。また、同様に、第1の画線領域(A)に低明度(濃色)の第1の色材により15%の潜像要素(13)が形成された場合、第2の画線領域(B)には高明度(淡色)の第2の色材により面積率約15%のカモフラージュ要素(14)が形成される。また、第1の画線領域(A)に低明度(濃色)の第1の色材により面積率20%の潜像要素(13)が形成された場合、第2の画線領域(B)には面積率0%としてカモフラージュ要素(14)は配置されない状態となる。
【0068】
この配置は、複写前の印刷物において、低明度(濃色)のインキにより印刷された潜像要素(13)を高明度(淡色)のインキによるカモフラージュ要素(14)で肉眼で不可視とするための構成であり、特定の領域内における潜像要素(13)とカモフラージュ要素(14)とが加味された明度が一定となるように、潜像要素(13)に合わせてカモフラージュ要素(14)の面積率及び明度を変化させて形成される。なお、特定の領域内とは、潜像要素(13)とカモフラージュ要素(14) とを含む単位面積率当たりの領域をいう。また、明度が一定とは、特定の領域を視認した時に、潜像要素(13)とカモフラージュ要素(14)が区別して視認することができず、見掛け上、等色として視認できる状態をいう。これにより、不可視画像(9)が連続階調を有する場合でも、全体の明度を同一に保つことで、印刷模様(2)内に形成された潜像模様(7)を可視化されない状態として形成することができる。
【0069】
なお、面積率は、上記で示した数値に限定されず、複写防止効果に応じて適時設定されればよい。また、第2のインキの明度についても、複写機で再生されない明度に設定すればよい。また、第1の色材及び第2の色材の色についても限定はない。さらに、第1の実施の形態と同様に、潜像要素(13)とカモフラージュ要素(14)に加えて、可視要素(15)を形成することができる。このとき、可視要素(15)は、カモフラージュ要素(14)と同様に、高明度(淡色)な第2の色材で形成されてもよいが、複写機で再現されないよう構成されれば色材は限定されない。
【0070】
(効果)
第2の実施の形態の効果として、この印刷物(1)を第1の真偽判別方法として複写機で複写した場合を例に説明する。図2に示すように、印刷物(1)の複写物(12)における複写された印刷模様(3)は、潜像要素(13)の幅を増減させていることで形成された潜像模様(3)が可視化される。これは、図2に示すように、カモフラージュ要素(14)及び可視要素(15)が複写物(12)では消失し、特定の領域内において一定の明度で観察された状態が保たれなくなり、潜像模様(7)の濃淡を表現している潜像要素(13)の濃度差がそのまま再現され、複写された印刷模様(3)となって可視化される。なお、上記では、第1の真偽判別方法である複写機等で複写することによる潜像模様(7)の可視化について説明したが、第2の真偽判別方法である万線フィルタ又はレンチキュラーレンズ等の判別具(4)を用いても、出現する潜像模様が明瞭となり、画像品質が高まる。
【符号の説明】
【0071】
1 印刷物
2、2’、2” 印刷模様
3 複写された印刷模様
4 判別具
5 赤外線視した画像
6、6’、6” 赤外線視した印刷模様
7 潜像模様
8 可視模様
9 不可視画像
10、10’、10” 平均化された画像
11 顔画像
12 複写物
13 潜像要素
14 カモフラージュ要素
15 可視要素
A 第1の画線領域
B 第2の画線領域
C 第3の画線領域
【要約】
【課題】複数の偽造防止技術が施された印刷物であり、印刷用プリンタの出力解像度に関係なく、高い画像品質の印刷物及び潜像画像が得られる偽造防止印刷物を提供する。
【解決手段】基材上に、第1の画線領域及び第2の画線領域を少なくとも有するユニットが複数配置された印刷模様を有し、ユニットは、第1の方向に沿って隣接する複数のユニットにおいて同一線上に形成された第1の画線領域と、第1の方向に沿って、第1の画線領域と異なる位相で、かつ、隣接する複数のユニットにおいて同一線上に形成された第2の画線領域を有し、第1の画線領域は、基材とは異なる色で、かつ、複写機によって再生される潜像要素によって潜像模様が形成され、第2の画線領域は、基材と異なる色で、かつ、複写機によって再生されないカモフラージュ要素によって形成され、ユニットの配置がレンガ積み状配置である偽造防止印刷物である。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19