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特許7165025フラクトオリゴ糖配合油脂およびその製造方法ならびにフラクトオリゴ糖配合油性菓子およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】フラクトオリゴ糖配合油脂およびその製造方法ならびにフラクトオリゴ糖配合油性菓子およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23D 9/007 20060101AFI20221026BHJP
   A23D 9/00 20060101ALI20221026BHJP
   A23G 1/36 20060101ALI20221026BHJP
   A23G 1/40 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
A23D9/007
A23D9/00 500
A23G1/36
A23G1/40
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018199181
(22)【出願日】2018-10-23
(65)【公開番号】P2020065466
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000006138
【氏名又は名称】株式会社明治
(74)【代理人】
【識別番号】100136319
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 宏修
(74)【代理人】
【識別番号】100148275
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142745
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 世子
(74)【代理人】
【識別番号】100143498
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 健
(72)【発明者】
【氏名】林 哲全
(72)【発明者】
【氏名】今井 拓
(72)【発明者】
【氏名】原田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】石田 晶子
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-061572(JP,A)
【文献】特開平09-065829(JP,A)
【文献】特開平05-192082(JP,A)
【文献】特開2018-153148(JP,A)
【文献】特開2012-210188(JP,A)
【文献】国際公開第2016/052721(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D
A23G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に非晶質フラクトオリゴ糖、油脂および乳化剤のみから成り、前記油脂に対する前記非晶質フラクトオリゴ糖の重量比が0.5以上2.5以下の範囲内であり、前記乳化剤の含有量が0.1重量%以上1.0重量%以下の範囲内である混合物を密閉系粉砕機で粉砕する、非晶質フラクトオリゴ糖配合油脂原料の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の非晶質フラクトオリゴ糖配合油脂原料の製造方法により製造される
非晶質フラクトオリゴ糖配合油脂原料
【請求項3】
請求項に記載の非晶質フラクトオリゴ糖配合油脂原料を油性菓子の生地またはその原料に混合して非晶質フラクトオリゴ糖配合油性菓子生地を調製する生地調製工程と、
前記非晶質フラクトオリゴ糖配合油性菓子生地を用いて非晶質フラクトオリゴ糖配合油性菓子を製造する油性菓子製造工程と
を備える、非晶質フラクトオリゴ糖配合油性菓子の製造方法。
【請求項4】
請求項に記載の非晶質フラクトオリゴ糖配合油性菓子の製造方法により製造される
非晶質フラクトオリゴ糖配合油性菓子。
【請求項5】
請求項に記載の非晶質フラクトオリゴ糖配合油脂原料を含有する、油性菓子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラクトオリゴ糖配合油脂およびその製造方法に関する。また、本発明は、フラクトオリゴ糖配合油性菓子およびその製造方法にも関する。さらに、本発明は、油性菓子、非晶質フラクトオリゴ糖配合油性菓子にも関する。
【背景技術】
【0002】
過去にフラクトオリゴ糖配合チョコレートが提案されている(例えば、国際公開第2016/052721号、特開平7-252156号公報等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2016/052721号
【文献】特開平7-252156号公報
【文献】特開平9-65829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のフラクトオリゴ糖配合チョコレートを通常の方法で大量生産する際、フラクトオリゴ糖に起因する高い吸湿性のため、チョコレート生地が増粘し、チョコレート生地の搬送や成形が困難になる。また、フラクトオリゴ糖を単純にチョコレート生地に配合しただけでは、その水分値が、「チョコレート類の表示に関する公正競争規約(以下「チョコレート規約」と略する)」に規定される3%以下の条件を満たすことができない。
【0005】
また、フラクトオリゴ糖の一成分であるケストースの結晶品を用いて製造したチョコレート(例えば、特開平9-65829号公報等参照)は、優れた製造適性や品質を有するが、その甘味はスッキリとしたものであった。消費者の多様な嗜好に対応するためには、異なる甘味のバランスを実現することが求められる。
【0006】
本発明の課題は、低吸湿性であるフラクトオリゴ糖配合油性菓子を大量に製造することができる方法等を提供することである。また、本発明の別の課題は、良好な甘味バランスおよび低吸湿性を兼ね備える油性菓子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1局面に係るフラクトオリゴ糖配合油脂の製造方法では、フラクトオリゴ糖が、少なくとも油脂および乳化剤と共に密閉系粉砕機で粉砕される。なお、このフラクトオリゴ糖は、非晶質体であることが好ましい。
【0008】
本願発明者等が「低吸湿性のフラクトオリゴ糖配合チョコレートの大量製造」を鋭意検討した結果、上述の通り、フラクトオリゴ糖を、少なくとも油脂および乳化剤と共に密閉系粉砕機で粉砕することにより得られるフラクトオリゴ糖配合油脂を油性菓子の生地またはその原料に混合することによって、それを実現することができることが明らかとなった。あくまでも推察に過ぎないが、この現象は、フラクトオリゴ糖が油脂でコーティングされるためではないかと考えられている。
【0009】
本発明の第2局面に係るフラクトオリゴ糖配合油脂は、フラクトオリゴ糖、油脂および乳化剤を含有する。
【0010】
本願発明者等が鋭意検討した結果、フラクトオリゴ糖配合油脂は、粉砕の際に粉砕効率を低下させることなく、フラクトオリゴ糖の吸湿を抑制することができることが明らかとなった。
【0011】
本発明の第3局面に係るフラクトオリゴ糖配合油脂は第2局面に係るフラクトオリゴ糖配合油脂であって、このフラクトオリゴ糖配合油脂では、油脂に対するフラクトオリゴ糖の重量比が0.5以上2.5以下の範囲内とされており、且つ、乳化剤の含有量が0.1重量%以上1.0重量%以下の範囲内とされている。
【0012】
本願発明者等が鋭意検討した結果、フラクトオリゴ糖配合油脂において油脂に対するフラクトオリゴ糖の重量比を上記範囲内とし、且つ、乳化剤の含有量を上記範囲内とすることにより、粉砕の際に粉砕効率を低下させることなく、フラクトオリゴ糖配合油脂の吸湿をさらに抑制することができることが明らかとなった。
【0013】
本発明の第4局面に係るフラクトオリゴ糖配合油脂は第2局面または第3局面に係るフラクトオリゴ糖配合油脂であって、このフラクトオリゴ糖配合油脂は、製造後に温度37℃、相対湿度50%の条件下において保存されたとき、製造時から27日経過時点においても5重量%以下の水分値を維持する。なお、ここにいう「水分値」は、「水分量」や「水分含量」等の用語と同義である。
【0014】
本発明の第5局面に係るフラクトオリゴ糖配合油性菓子の製造方法は、生地調製工程および油性菓子製造工程を備える。生地調製工程では、第1局面に係るフラクトオリゴ糖配合油脂の製造方法で得られたフラクトオリゴ糖配合油脂、または、第2局面から第4局面のいずれか一局面に係るフラクトオリゴ糖配合油脂が油性菓子の生地またはその原料に混合されてフラクトオリゴ糖配合油性菓子生地が調製される。油性菓子製造工程では、フラクトオリゴ糖配合油性菓子生地が用いられてフラクトオリゴ糖配合油性菓子が製造される。
【0015】
本願発明者等が「低吸湿性のフラクトオリゴ糖配合油性菓子の大量製造」を鋭意検討した結果、上述の通り、フラクトオリゴ糖配合油脂を油性菓子の生地またはその原料に混合することによって、それを実現することができることが明らかとなった。あくまでも推察に過ぎないが、この現象は、フラクトオリゴ糖が油脂でコーティングされるためではないかと考えられている。
【0016】
本発明の第6局面に係るフラクトオリゴ糖配合油性菓子は、製造後に温度23℃、相対湿度38%の環境下において未包装状態で保存されたとき、製造時から210日経過時点においても3重量%以下の水分値を維持する。
【0017】
このため、このフラクトオリゴ糖配合油性菓子は、低吸湿性を長期に亘って満足することができる。
【0018】
本発明の第7局面に係るフラクトオリゴ糖配合油性菓子は、第1局面に係るフラクトオリゴ糖配合油脂の製造方法で得られたフラクトオリゴ糖配合油脂、または、第2局面から第4局面のいずれか一局面に係るフラクトオリゴ糖配合油脂を含有する。
【0019】
このため、このフラクトオリゴ糖配合油性菓子は、低吸湿性を実現することができる。
【0020】
本発明の第8局面に係る非晶質フラクトオリゴ糖配合油性菓子は、水分値が2.5重量%以下である。この非晶質フラクトオリゴ糖配合油性菓子には、非晶質のフラクトオリゴ糖が配合されている。
【0021】
このため、この非晶質フラクトオリゴ糖配合油性菓子は、良好な甘味バランスを示す。また、この非晶質フラクトオリゴ糖配合油性菓子の水分値は、上述の通り、2.5重量%以下である。このため、この非晶質フラクトオリゴ糖配合油性菓子は、低吸湿性を示す。したがって、この非晶質フラクトオリゴ糖配合油性菓子は、良好な甘味バランスおよび低吸湿性を兼ね備えている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】温度37℃・相対湿度50%の環境下における実施例1~5に係るフラクトオリゴ糖配合ペースト中の水分値の時間変化を示すグラフ図である。
図2】実施例3~5に係るフラクトオリゴ糖配合ペーストの粒度分布である。
図3】温度37℃・相対湿度50%の環境下における実施例6~9に係るフラクトオリゴ糖配合ペースト中の水分値の時間変化を示すグラフ図である。
図4】温度37℃・相対湿度50%の環境下における実施例1~5に係るフラクトオリゴ糖配合ペースト中の粘度の時間変化を示すグラフ図である。
図5】温度37℃・相対湿度50%の環境下における実施例6~9に係るフラクトオリゴ糖配合ペースト中の粘度の時間変化を示すグラフ図である。
図6】温度13℃・相対湿度38%の環境下における実施例3に係るフラクトオリゴ糖配合ミルクチョコレートおよび参考例1に係るショ糖配合ミルクチョコレート中の水分値の時間変化を示すグラフ図である。
図7】温度20℃・相対湿度38%の環境下における実施例3に係るフラクトオリゴ糖配合ミルクチョコレートおよび参考例1に係るショ糖配合ミルクチョコレート中の水分値の時間変化を示すグラフ図である。
図8】温度23℃・相対湿度38%の環境下における実施例3に係るフラクトオリゴ糖配合ミルクチョコレートおよび参考例1に係るショ糖配合ミルクチョコレート中の水分値の時間変化を示すグラフ図である。
図9】温度20℃・相対湿度40%および温度30℃・相対湿度40%の環境下におけるフラクトオリゴ糖の水分値の時間変化を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
-フラクトオリゴ糖配合油脂の製造方法-
本発明の実施の形態に係るフラクトオリゴ糖配合油脂の製造方法は、原料準備工程および粉砕工程を含む。以下、これらの工程について詳述する。なお、これらの工程は、逐次的に実行されてもよいし、連続的に実行されてもよい。
【0024】
(1)原料準備工程
原料準備工程では、フラクトオリゴ糖配合油脂の原料として、少なくともフラクトオリゴ糖、油脂(源)および乳化剤が準備される。なお、ここで、油脂として、食用油脂が用いられてもよいし、カカオ成分(例えば、カカオマス、ココアバター等)等が用いられてもよい。また、フラクトオリゴ糖は、油脂に対して重量比で0.5以上2.5以下の範囲内で配合されることが好ましく、0.6以上1.5以下の範囲内で配合されることがより好ましい。また、別の表現では、フラクトオリゴ糖:油脂(重量比)は、35~70:65~30で配合されることが好ましく、40~60:60~40の範囲内で配合されることがより好ましい。なお、重量比をこの範囲内とすることにより、粉砕工程において粉砕効率を低下させることなく、フラクトオリゴ糖配合油脂の吸湿を抑制することができる。また、ここで、油脂中の水分値は0.2重量%以下であることが好ましい。また、乳化剤は、フラクトオリゴ糖配合油脂全量に対して0.1重量%以上1.0重量%以下の範囲内であることが好ましく、0.2重量%以上0.5重量%以下の範囲内であることがより好ましい。
【0025】
(2)粉砕工程
粉砕工程では、フラクトオリゴ糖が、少なくとも油脂および乳化剤と共に密閉系粉砕機で粉砕される。その結果、ペースト状のフラクトオリゴ糖配合油脂が得られる。
【0026】
なお、このペースト状のフラクトオリゴ糖配合油脂中の水分値は、フラクトオリゴ糖配合油性菓子の水分値を十分に低減させる観点から(フラクトオリゴ糖配合油性菓子がフラクトオリゴ糖配合チョコレートである場合、フラクトオリゴ糖配合チョコレートの水分値を、チョコレート規約に規定される3重量%以下とする観点から)その使用時において5重量%以下であることが好ましく、3重量%以下であることがより好ましく、2重量%以下であることがさらに好ましく、1重量%以下であることがさらにより好ましく、0.5重量%以下であることが特に好ましい。
【0027】
また、このフラクトオリゴ糖配合油脂は、製造後に温度37℃、相対湿度50%の条件下において保存されたとき、製造時から27日経過時点においても5重量%以下の水分値を維持することが好ましく、3重量%以下の水分値を維持することがより好ましく、2重量%以下の水分値を維持することがさらに好ましく、1重量%以下の水分値を維持することがさらにより好ましく、0.5重量%以下の水分値を維持することが特に好ましい。
【0028】
また、このフラクトオリゴ糖配合油脂は、製造後に温度37℃・相対湿度50%の条件下において保存されたとき、製造時から27日経過時点においても70000cps以下の粘度を維持することが好ましく、50000cps以下の粘度を維持することがより好ましく、30000cps以下の粘度を維持することがさらに好ましく、10000cps以下の粘度を維持することがさらに好ましく、5000cps以下の粘度を維持することが特に好ましい。
【0029】
さらに、このフラクトオリゴ糖配合油脂は、製造後に温度37℃・相対湿度50%の条件下において保存されたとき、製造時から60日経過時点においても70000cps以下の粘度を維持することが好ましく、50000cps以下の粘度を維持することがより好ましく、30000cps以下の粘度を維持することがさらに好ましく、10000cps以下の粘度を維持することがさらに好ましく、5000cps以下の粘度を維持することが特に好ましい。
【0030】
さらに、このフラクトオリゴ糖配合油脂は、製造後に「温度37℃・相対湿度50%」の条件下において保存されたとき、その粘度が安定していることが好ましい。
【0031】
ところで、密閉系粉砕機は、特に限定されないが、例えば、ボールミルである。また、密閉系粉砕機として、湿式の粉砕機を用いることが好ましい。原料が湿潤空気と接触するのを避けるためである。また、原料粉砕時に原料に過度の熱がかからないように、フラクトオリゴ糖の配合量や密閉式粉砕機の種類等に応じて、原料の投入量や、流量、回転数等を適宜調整することが好ましい。粉砕時において原料に過度の熱がかかると、フラクトオリゴ糖がラバー化して焦げたり、風味が変化したりするからである。
【0032】
-フラクトオリゴ糖配合油性菓子の製造方法-
本発明の実施の形態に係るフラクトオリゴ糖配合油性菓子の製造方法は、原料準備工程、生地調製工程および油性菓子製造工程を含む。以下、これらの工程について詳述する。なお、これらの工程は、逐次的に実行されてもよいし、連続的に実行されてもよい。また、ここで、油性菓子とは、例えば、チョコレート等である。ここにいう「チョコレート」は、「チョコレート類の表示に関する公正競争規約」(全国チョコレート業公正取引協議会)又は法規上の規定等により限定されるものではなく、食用油脂、糖類を主原料とし、必要によりカカオ成分(カカオマス、ココアパウダー、ココアバター等)、乳製品、香料、乳化剤等を加え、一般的なチョコレートの製造工程を経て製造されたものを指す。このチョコレートにはプレーンチョコレート、ミルクチョコレート、ホワイトチョコレート、ダークチョコレート、カラーチョコレート等が含まれる。
【0033】
(1)原料準備工程
原料準備工程では、少なくともフラクトオリゴ糖配合油脂および油性菓子生地が準備される。もちろん、この工程においてフラクトオリゴ糖配合油脂および油性菓子生地以外の原料が準備されてもかまわない。そして、ここで、フラクトオリゴ糖配合油脂は購入等されて入手されるか、上記フラクトオリゴ糖配合油脂の製造方法に従って調製される。また、油性菓子生地は、購入等されて入手されるか、通常の方法に従って調製される。なお、この油性菓子生地がチョコレート生地である場合、その原料としては、例えば、食用油脂、フラクトオリゴ糖以外の糖類、カカオ成分(例えば、カカオマス、ココアパウダー、ココアバター等)、乳製品(粉乳等)、香料、乳化剤等が挙げられる。
【0034】
(2)生地調製工程
生地調製工程では、フラクトオリゴ糖配合油脂が油性菓子の生地またはその原料に混合されてフラクトオリゴ糖配合油性菓子生地が調製される。
【0035】
(3)油性菓子製造工程
油性菓子製造工程では、フラクトオリゴ糖配合油性菓子生地が用いられてフラクトオリゴ糖配合油性菓子が製造される。なお、ここにいう製造には、成形等が含まれる。
【0036】
そして、上述の通りにして得られたフラクトオリゴ糖配合油性菓子は、製造後に温度23℃、相対湿度38%の条件下において未包装状態で保存されたとき、製造時から30日経過時点においても3重量%以下の水分値を維持することが好ましく、製造時から60日経過時点においても3重量%以下の水分値を維持することがより好ましく、製造時から90日経過時点においても3重量%以下の水分値を維持することがさらに好ましく、製造時から120日経過時点においても3重量%以下の水分値を維持することがさらに好ましく、製造時から150日経過時点においても3重量%以下の水分値を維持することがさらに好ましく、製造時から180日経過時点においても3重量%以下の水分値を維持することがさらに好ましく、製造時から210日経過時点においても3重量%以下の水分値を維持することが特に好ましい。
【0037】
<本実施の形態に係るフラクトオリゴ糖配合油脂およびその製造方法の特徴>
(1)
本実施の形態に係るフラクトオリゴ糖配合油脂は、フラクトオリゴ糖の吸湿を十分に抑制することができる。このため、このフラクトオリゴ糖配合油脂は、低吸湿性のフラクトオリゴ糖配合油性菓子の大量製造に貢献することができる。
【0038】
(2)
従来の摩砕方法であるレファイナーでは、フラクトオリゴ糖を含む粉体の表面積が増え、フラクトオリゴ糖の吸湿性が増す。このため、このレファイナーを利用した場合、油性菓子中の水分値やフラクトオリゴ糖配合量の順守が困難となる。一方、本実施の形態に係るフラクトオリゴ糖配合油脂の製造方法では、フラクトオリゴ糖が、少なくとも油脂および乳化剤と共に密閉系粉砕機で粉砕される。このため、このフラクトオリゴ糖配合油脂の製造方法では、油性菓子へのフラクトオリゴ糖の配合量の調整が容易となると共に、フラクトオリゴ糖の吸湿を十分に抑制することができる。
【0039】
<本実施の形態に係るフラクトオリゴ糖配合油性菓子の特徴>
(1)
本実施の形態に係るフラクトオリゴ糖配合油性菓子は、低い吸湿性を有する。このため、このフラクトオリゴ糖配合油性菓子は、良好な環境であれば長期保存が可能である。また、このフラクトオリゴ糖配合油脂菓子がフラクトオリゴ糖配合チョコレートである場合、このフラクトオリゴ糖配合チョコレートは、チョコレート規約に規定される水分値を長期に亘って維持することができる。また、このフラクトオリゴ糖配合油性菓子は、ザラつきが少なく、摂取者に対して良好な食感を与えることができる。
【0040】
(2)
本実施の形態に係るフラクトオリゴ糖配合油性菓子において、フラクトオリゴ糖として非晶質フラクトオリゴ糖を選択した場合、ケストースを選択したときよりも甘味バランスを良好なものとすることができる。
【0041】
<実施例・参考例>
以下、実施例および参考例を示して本発明をより詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されることはない。
【実施例1】
【0042】
1.フラクトオリゴ糖配合ペーストの調製
69.8重量部の非晶質フラクトオリゴ糖(明治フードマテリア製メイオリゴP)、29.9重量部のココアバター(水分値:0.16~0.17重量%)および0.3重量部のレシチンをミキサーで混合し(表1参照)、得られた混合物をボールミルで60分間粉砕して、フラクトオリゴ糖配合ペーストを調製した。なお、このフラクトオリゴ糖配合ペースト中の油分は30.2重量%であった(表2参照)。フラクトオリゴ糖配合ペースト中の油分は、日本国消費者庁Webページの「別添 栄養表示関係」(http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/pdf/foods_index_18_180119_0003.pdf)における「別添 栄養成分等の分析方法等」 2.脂質 (4)酸分解法に従って測定された。また、参考として、このフラクトオリゴ糖の温度20℃・相対湿度40%および温度30℃・相対湿度40%の環境下における水分値の時間変化を図9に示した。
【0043】
2.フラクトオリゴ糖配合ミルクチョコレートの調製
目的のフラクトオリゴ糖配合ミルクチョコレートにおいてフラクトオリゴ糖が14.5重量%を占めるように、上述の通りにして得られたフラクトオリゴ糖配合ペーストを、ミルクチョコレート生地(株式会社明治製)に混合した後、常法に従ってそのミルクチョコレート生地を成形して目的のフラクトオリゴ糖配合ミルクチョコレートを得た。
【0044】
3.混合物およびフラクトオリゴ糖配合ペーストの物性評価
(1)混合物の粉砕適性評価
上述の混合物を1時間粉砕したときの粉砕物の50%粒子径(メディアン径)D50を測定し、これを「1」~「5」の5段階で評価した。なお、D50の値が50μm以上のものに対して「1」を付し、D50の値が30μm以上50μm未満の範囲内に収まっているものに対して「2」を付し、D50の値が13μm以上30μm未満の範囲内に収まっているものに対して「3」を付し、D50の値が8μm以上13μm未満の範囲内に収まっているものに対して「4」を付し、D50の値が8μm未満のものに対して「5」を付した。すなわち、「1」に近い程、粉砕適性が低く、「5」に近い程、粉砕適性が高い評価となる。本実施例に係る混合物の評価は「4」であった(表3参照)。ところで、粉砕物の50%粒子径(メディアン径)D50は、株式会社島津製作所製レーザー解析式粒度分布測定器SALD-2200を用いて測定した。
【0045】
(2)フラクトオリゴ糖配合ペーストの吸湿性評価
上述の通りにして得られたフラクトオリゴ糖配合ペーストを「温度37℃・相対湿度50%」の環境下で27日間保存し、保存開始時点、1日経過時点、3日経過時点、14日経過時点および27日経過時点におけるフラクトオリゴ糖配合ペースト中の水分値を測定した。なお、水分値の測定は、日本国消費者庁Webページの「別添 栄養表示関係」(http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/pdf/foods_index_18_180119_0003.pdf)における「別添 栄養成分等の分析方法等」 5.炭水化物 イ 水分 (4)常圧加熱乾燥法に従って行った。
【0046】
温度37℃・相対湿度50%の環境下での結果を図1に示した。図1に示されるように、本実施例に係るフラクトオリゴ糖配合ペーストは、「温度37℃・相対湿度50%」の環境下において27日間に亘って十分な低吸湿性を示した。なお、ここで、十分な低吸湿性とは、フラクトオリゴ糖配合ペースト中の水分値が5重量%以下であることであることを意味する。そして、「27日経過時点のフラクトオリゴ糖配合ペースト中の水分値」から「保存開始時点(初期)のフラクトオリゴ糖配合ペースト中の水分値」を差し引いた値(すなわち水分変化量)を、同フラクトオリゴ糖配合ペースト中のフラクトオリゴ糖含量で除した値(以下この値を「水分変化量率」と称する。)を求め、これを「1」~「5」の5段階で評価した。ここでは、フラクトオリゴ糖含量あたりの水分変化量率が6%以上のものに対して「1」を付し、同水分変化量率が1%以上6%未満のものに対して「2」を付し、同水分変化量率が0.8%以上1%未満のものに対して「3」を付し、同水分変化量率が0.2%以上0.8%未満のものに対して「4」を付し、同水分変化量率が0.2%未満のものに対して「5」を付した。すなわち、「1」に近い程、吸湿性が高く、「5」に近い程、吸湿性が低い評価となる。本実施例に係るフラクトオリゴ糖配合ペーストの評価は「4」であった(表3参照)。
【0047】
(3)フラクトオリゴ糖配合ペーストの粘度変化
上述の通りにして得られたフラクトオリゴ糖配合ペーストを「温度37℃・相対湿度50%」の環境下で60日間保存し、保存開始時、1日経過時点、3日経過時点、14日経過時点、27日経過時点および60日経過時点におけるフラクトオリゴ糖配合ペーストの粘度を測定した。なお、粘度の測定は、B型粘度計を用いて行った。なお、この際、ローターとしてNo.6のローターを用い、その回転速度を4rpmに設定した。また、測定温度は、各々のペーストの保存温度帯とした。
【0048】
その結果を図4に示す。図4に示される通り、このフラクトオリゴ糖配合ペーストの粘度は、27日経過時点までは60000cps以下であってその挙動も安定していたが、60日経過時点では70000cps近くまで上昇した。
【0049】
(4)食感の官能評価
上述の通りにして得られたフラクトオリゴ糖配合ミルクチョコレートを、訓練された5名の専門パネルに食してもらって、その食感を「1」~「5」の5段階で評価してもらった。評価結果は、5名の専門パネルが協議して決定した。なお、口中でザラつきを強く感じるものに対して「1」を付し、口中でザラつきを感じるものに対して「2」を付し、口中でややザラつきを感じるものに対して「3」を付し、口中でやや滑らかな食感であるものに対して「4」を付し、口中で滑らかな食感であるものに対して「5」を付した。すなわち、「1」に近い程、ザラつき感が大きく、「5」に近い程、滑らか感が大きい評価となる。本実施例に係るフラクトオリゴ糖配合ミルクチョコレートの評価は「5」であった(表3参照)。
【0050】
(5)総合評価
上述の(1)、(2)および(4)の評価を「A」、「B」および「C」の3段階で評価した。なお、「A」は、(1)、(2)および(4)の評価が全て高評価であったことを意味し、「B」は、僅かに劣る評価項目があることを意味し、「C」は、比較的劣る評価項目があることが意味している。ただし、上記いずれの総合評価であっても、フラクトオリゴ糖配合ミルクチョコレートを商品として販売する上で全く問題はない。本実施例に係るフラクトオリゴ糖配合ミルクチョコレートの総合評価は「B」とした。
【実施例2】
【0051】
非晶質フラクトオリゴ糖の添加量を59.8重量部とし、ココアバターの添加量を39.9重量部とした(表1参照)以外は、実施例1に示される方法と同一の方法でフラクトオリゴ糖配合ペーストおよびフラクトオリゴ糖配合ミルクチョコレートを調製し、実施例1と同様にそれらの評価を行った。なお、このフラクトオリゴ糖配合ペースト中の油分は40.2重量%であった(表2参照)。
【0052】
評価結果は、表3、図1および図4に示される通りであった。図1に示されるように、本実施例に係るフラクトオリゴ糖配合ペーストは、「温度37℃・相対湿度50%」の環境下において27日間に亘って十分な低吸湿性を示した。また、このフラクトオリゴ糖配合ペーストの吸湿性の評価は「5」であった。また、粉砕適性および食感は、実施例1に係るフラクトオリゴ糖配合ペーストの粉砕適性と同等の評価であった。このため、総合評価は「A」とした。なお、フラクトオリゴ糖配合ペーストの粘度は、図4に示される通り、27日経過時点までは20000cps以下であってその挙動も安定していたが、60日経過時点では20000cpsを少し上回るまで上昇した。
【実施例3】
【0053】
非晶質フラクトオリゴ糖の添加量を49.9重量部とし、ココアバターの添加量を49.8重量部とした(表1参照)以外は、実施例1に示される方法と同一の方法でフラクトオリゴ糖配合ペーストおよびフラクトオリゴ糖配合ミルクチョコレートを調製し、実施例1と同様にそれらの評価を行った。なお、このフラクトオリゴ糖配合ペースト中の油分は50.1重量%であった(表2参照)。
【0054】
評価結果は、表3、図1および図4に示される通りであった。図1に示されるように、本実施例に係るフラクトオリゴ糖配合ペーストは、「温度37℃・相対湿度50%」の環境下において27日間に亘って十分な低吸湿性を示した。また、このフラクトオリゴ糖配合ペーストの吸湿性の評価は「5」であった。また、粉砕適性および食感は、実施例1に係るフラクトオリゴ糖配合ペーストの粉砕適性と同等の評価であった。このため、総合評価は「A」とした。なお、フラクトオリゴ糖配合ペーストの粘度は、図4に示される通り、60日経過時点まで10000cps以下であってその挙動も安定していた。
【0055】
また、本実施例では、上述の混合物を粉砕した後、株式会社島津製作所製レーザー解析式粒度分布測定器SALD-2200を用いてその粉砕物の粒度分布を測定した。その測定結果を図2に示す。この粉砕物の50%粒子径(メディアン径)D50は9.80μmであり、95%粒子径D95は33.1μmであった。
【0056】
さらに、上述の通りにして得られたフラクトオリゴ糖配合ミルクチョコレートを「温度13℃・相対湿度38%」、「温度20℃・相対湿度38%」および「温度23℃・相対湿度38%」それぞれの環境下で210日間保存し、保存開始時、1日経過時点、7日経過時点、30日経過時点、90日経過時点および210日経過時点におけるフラクトオリゴ糖配合ミルクチョコレート中の水分値を測定した。その結果を図6図7および図8に示した。なお、水分値の測定は、実施例1に記載の常圧加熱乾燥法に従って行った。本実施例に係るフラクトオリゴ糖配合ミルクチョコレートは、いずれの環境においても210日に亘って良好な低吸湿性を示した。ところで、このフラクトオリゴ糖配合ミルクチョコレートの「温度20℃・相対湿度70%」および「温度23℃・相対湿度70%」の比較的厳しい湿度環境下における吸湿性の時間変化を上述の方法と同様の方法で測定したところ、同フラクトオリゴ糖配合ミルクチョコレートは、7日間、3重量%以下の水分値を維持することができた。
【実施例4】
【0057】
非晶質フラクトオリゴ糖の添加量を39.9重量部とし、ココアバターの添加量を59.8重量部とした(表1参照)以外は、実施例1に示される方法と同一の方法でフラクトオリゴ糖配合ペーストおよびフラクトオリゴ糖配合ミルクチョコレートを調製し、実施例1と同様にそれらの評価を行った。なお、このフラクトオリゴ糖配合ペースト中の油分は60.1重量%であった(表2参照)。
【0058】
評価結果は、表3、図1および図4に示される通りであった。図1に示されるように、本実施例に係るフラクトオリゴ糖配合ペーストは、初期(すなち保存開始時)における水分値が極めて低く、「温度37℃・相対湿度50%」の環境下において27日間に亘ってその水分値を維持し、極めて低い吸湿性を示した。また、このフラクトオリゴ糖配合ペーストの吸湿性の評価は「5」であった。また、粉砕適性および食感は、実施例1に係るフラクトオリゴ糖配合ペーストの粉砕適性と同等の評価であった。このため、総合評価は「A」とした。なお、フラクトオリゴ糖配合ペーストの粘度は、図4に示される通り、60日経過時点まで5000cps以下であってその挙動も安定していた。
【0059】
また、本実施例では、上述の混合物を粉砕した後、株式会社島津製作所製レーザー解析式粒度分布測定器SALD-2200を用いてその粉砕物の粒度分布を測定した。その測定結果を図2に示す。この粉砕物の50%粒子径(メディアン径)D50は12.6μmであり、95%粒子径D95は44.9μmであった。
【実施例5】
【0060】
非晶質フラクトオリゴ糖の添加量を33.2重量部とし、ココアバターの添加量を66.5重量部とした(表1参照)以外は、実施例1に示される方法と同一の方法でフラクトオリゴ糖配合ペーストおよびフラクトオリゴ糖配合ミルクチョコレートを調製し、実施例1と同様にそれらの評価を行った。なお、このフラクトオリゴ糖配合ペースト中の油分は66.8重量%であった(表2参照)。
【0061】
評価結果は、表3、図1および図4に示される通りであった。図1に示されるように、本実施例に係るフラクトオリゴ糖配合ペーストは、初期(すなち保存開始時)における水分値が極めて低く、「温度37℃・相対湿度50%」の環境下において27日間に亘ってその水分値を維持し、極めて低い吸湿性を示した。また、このフラクトオリゴ糖配合ペーストの吸湿性の評価は「4」であった。また、粉砕適性および食感の評価は共に「3」であり、実施例1に係るフラクトオリゴ糖配合ペーストの粉砕適性および食感の評価よりも劣っていた。このため、総合評価は「B」とした。なお、フラクトオリゴ糖配合ペーストの粘度は、図4に示される通り、60日経過時点まで5000cps以下であってその挙動も安定していた。
【0062】
また、本実施例では、上述の混合物を粉砕した後、株式会社島津製作所製レーザー解析式粒度分布測定器SALD-2200を用いてその粉砕物の粒度分布を測定した。その測定結果を図2に示す。この粉砕物の50%粒子径(メディアン径)D50は14.9μmであり、95%粒子径D95は56.4μmであった。
【実施例6】
【0063】
非晶質フラクトオリゴ糖の添加量を35.6重量部とし、29.9重量部のココアバターを64.1重量部のカカオマスに置き換えた(表1参照)以外は、実施例1に示される方法と同一の方法でフラクトオリゴ糖配合ペーストおよびフラクトオリゴ糖配合ミルクチョコレートを調製し、実施例1と同様にそれらの評価を行った。なお、このフラクトオリゴ糖配合ペースト中の油分は36.1重量%であった(表2参照)。
【0064】
評価結果は、表3、図3および図5に示される通りであった。図3に示されるように、本実施例に係るフラクトオリゴ糖配合ペーストは、「温度37℃・相対湿度50%」の環境下において水分値の増加傾向が見られたものの、27日間に亘って十分な低吸湿性を示した。また、このフラクトオリゴ糖配合ペーストの吸湿性の評価は「2」であった。また、粉砕適性は、実施例1に係るフラクトオリゴ糖配合ペーストの粉砕適性と同等の評価であったが、食感の評価は「4」であって、実施例1に係るフラクトオリゴ糖配合ペーストの食感の評価よりも僅かに劣っていた。このため、総合評価は「C」とした。なお、フラクトオリゴ糖配合ペーストの粘度は、図5に示される通り、27日経過時点まで70000cps以下であってその挙動も安定していた。
【実施例7】
【0065】
非晶質フラクトオリゴ糖の添加量を49.9重量部とし、ココアバターの添加量を24.9重量部とし、さらに24.9重量部のカカオマスを加えた(表1参照)以外は、実施例1に示される方法と同一の方法でフラクトオリゴ糖配合ペーストおよびフラクトオリゴ糖配合ミルクチョコレートを調製し、実施例1と同様にそれらの評価を行った。なお、このフラクトオリゴ糖配合ペースト中の油分は39.2重量%であった(表2参照)。
【0066】
評価結果は、表3、図3および図5に示される通りであった。図3に示されるように、本実施例に係るフラクトオリゴ糖配合ペーストは、「温度37℃・相対湿度50%」の環境下において水分値の増加傾向が見られたものの、27日間に亘って十分な低吸湿性を示した。また、このフラクトオリゴ糖配合ペーストの吸湿性の評価は「2」であった。また、粉砕適性は、実施例1に係るフラクトオリゴ糖配合ペーストの粉砕適性と同等の評価であったが、食感の評価は「4」であって、実施例1に係るフラクトオリゴ糖配合ペーストの食感の評価よりも僅かに劣っていた。このため、総合評価は「C」とした。なお、フラクトオリゴ糖配合ペーストの粘度は、図5に示される通り、27日経過時点まで20000cps以下であってその挙動も安定していた。
【実施例8】
【0067】
非晶質フラクトオリゴ糖の添加量を27.0重量部とし、29.9重量部のココアバターを72.7重量部のカカオマスに置き換えた(表1参照)以外は、実施例1に示される方法と同一の方法でフラクトオリゴ糖配合ペーストおよびフラクトオリゴ糖配合ミルクチョコレートを調製し、実施例1と同様にそれらの評価を行った。なお、このフラクトオリゴ糖配合ペースト中の油分は40.9重量%であった(表2参照)。
【0068】
評価結果は、表3、図3および図5に示される通りであった。図3に示されるように、本実施例に係るフラクトオリゴ糖配合ペーストは、「温度37℃・相対湿度50%」の環境下において水分値の増加傾向が見られたものの、27日間に亘って十分な低吸湿性を示した。また、このフラクトオリゴ糖配合ペーストの吸湿性の評価は「2」であった。また、粉砕適性は、実施例1に係るフラクトオリゴ糖配合ペーストの粉砕適性と同等の評価であったが、食感の評価は「4」であって、実施例1に係るフラクトオリゴ糖配合ペーストの食感の評価よりも僅かに劣っていた。このため、総合評価は「C」とした。なお、フラクトオリゴ糖配合ペーストの粘度は、図5に示される通り、27日経過時点まで40000cps近辺を安定して推移していた。
【実施例9】
【0069】
非晶質フラクトオリゴ糖の添加量を21.7重量部とし、29.9重量部のココアバターを78.0重量部のカカオマスに置き換えた(表1参照)以外は、実施例1に示される方法と同一の方法でフラクトオリゴ糖配合ペーストおよびフラクトオリゴ糖配合ミルクチョコレートを調製し、実施例1と同様にそれらの評価を行った。なお、このフラクトオリゴ糖配合ペースト中の油分は43.9重量%であった(表2参照)。
【0070】
評価結果は、表3、図3および図5に示される通りであった。図3に示されるように、本実施例に係るフラクトオリゴ糖配合ペーストは、「温度37℃・相対湿度50%」の環境下において水分値の増加傾向が見られたものの、27日間に亘って十分な低吸湿性を示した。また、このフラクトオリゴ糖配合ペーストの吸湿性の評価は「2」であった。また、粉砕適性は、実施例1に係るフラクトオリゴ糖配合ペーストの粉砕適性と同等の評価であったが、食感の評価は「4」であって、実施例1に係るフラクトオリゴ糖配合ペーストの食感の評価よりも僅かに劣っていた。このため、総合評価は「C」とした。なお、フラクトオリゴ糖配合ペーストの粘度は、図5に示される通り、14日経過時点までは30000cps以下であってその挙動も安定していたが、27日経過時点では30000cpsを少し上回るまで上昇した。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
【表3】
【0074】
【表4】
【0075】
(参考例1)
実施例3に示される原料のフラクトオリゴ糖をショ糖に代え(配合割合は同一である。)その原料から常法(レファイナーによる精練工程及びコンチング工程を含む)に従って、通常のミルクチョコレートを調製した。
【0076】
上述の通りにして得られた通常のミルクチョコレートを「温度13℃・相対湿度38%」、「温度20℃・相対湿度38%」および「温度23℃・相対湿度38%」それぞれの環境下で210日間保存し、保存開始時、1日経過時点、7日経過時点、30日経過時点、90日経過時点および210日経過時点における通常のミルクチョコレート中の水分値を測定した。その結果を図6図7および図8に示した。なお、水分値の測定は、実施例1に記載の常圧加熱乾燥法に従って行った。本参考例に係る通常のミルクチョコレートは、いずれの環境においても210日に亘って良好な低吸湿性を示した。
【0077】
(参考例2)
特開平9-65829号公報の実施例1を参照して、結晶ケストース含有チョコレートを製造した。
【0078】
(検証例1)
実施例3で得られたフラクトオリゴ糖配合ミルクチョコレート、および、参考例2の結晶ケストース含有チョコレートを、訓練された5名の専門パネルに食してもらって、より甘味を強く感じる方を選択してもらった。その結果、5名全ての専門パネルが実施例3のフラクトオリゴ糖配合ミルクチョコレートを選択した。専門パネルの方々からの意見には、実施例3のフラクトオリゴ糖配合ミルクチョコレートの方が参考例2の結晶ケストース含有チョコレートよりも甘味バランスが優れている、とのコメントが含まれていた。
【0079】
<まとめ>
(1)
実施例1~9に係るフラクトオリゴ糖配合ペーストは、温度37℃・相対湿度50%の環境下において、いずれも27日間に亘って水分値5重量%を下回り、極めて良好な低吸湿性を示した(図1および図3参照)。
【0080】
(2)
図1および図3に示される結果から、フラクトオリゴ糖配合ペースト中の油分量が多くなる程、その吸湿性が低くなることが明らかとなった。
【0081】
(3)
油脂源としてココアバターを用いた実施例1~5に係るフラクトオリゴ糖配合ペーストの吸湿性は、油脂源としてカカオマスを用いた実施例6~9に係るフラクトオリゴ糖配合ペーストの吸湿性よりも安定していた。あくまでも推察に過ぎないが、これは、実施例6~9に係るフラクトオリゴ糖配合ペーストが、カカオマスに由来する水分の影響を受けたためであると思われる。したがって、フラクトオリゴ糖配合油性菓子に低吸湿性を求める場合、油脂源としてはカカオマスよりもココアバターの方が好ましい。
【0082】
(4)
「温度13℃・相対湿度38%」、「温度20℃・相対湿度38%」および「温度23℃・相対湿度38%」の比較的マイルドな環境の下では、フラクトオリゴ糖配合ミルクチョコレートは、通常のミルクチョコレートと同様、210日に亘って水分値3重量%を下回り、極めて良好な低吸湿性を示すと共に、チョコレート規約に規定される水分値の規定を長期間に亘って満足することができることが明らかとなった。
【0083】
(5)
フラクトオリゴ糖配合ペーストの製造において、メディアン径D50が13μm以下であり、且つ、95%粒子径D95が45μm以下となるまで原料を粉砕すれば、得られるフラクトオリゴ糖配合ペーストから調製されるフラクトオリゴ糖配合チョコレートの食感が滑らかになることが明らかとなった。
【0084】
(6)
フラクトオリゴ糖配合ペーストの製造において、粉砕適性は、油脂源の種類や配合量にはあまり依存しないことが明らかとなった。
【0085】
(7)
フラクトオリゴ糖配合ペーストは、「温度37℃・相対湿度50%」の環境下では、比較的安定的な粘度挙動を示すことが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明に係るフラクトオリゴ糖配合油性菓子の製造方法は、フラクトオリゴ糖配合チョコレートのみならず他の油性菓子の大量製造にも利用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9