(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】リニアゲージ
(51)【国際特許分類】
G01B 5/016 20060101AFI20221026BHJP
G01B 5/02 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
G01B5/016
G01B5/02
(21)【出願番号】P 2019008429
(22)【出願日】2019-01-22
【審査請求日】2021-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 大
(72)【発明者】
【氏名】現王園 二郎
【審査官】信田 昌男
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-175758(JP,A)
【文献】特開平10-206141(JP,A)
【文献】特開2006-090945(JP,A)
【文献】特開2013-104721(JP,A)
【文献】特開2000-221024(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00ー5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物の表面変位を測定するリニアゲージであって、
被測定物の表面に接触させる測定子を先端に備えたシャフトと、
該シャフトの側面を囲繞して支持する支持面を有するケーシングと、
該支持面に配設され該シャフトの側面と該支持面との間にエアを介在させるエア噴出口と、
該ケーシングの下に配設され該シャフトの側面を囲繞するリング状に形成され該エア噴出口から噴出したエアを該シャフトの側面に沿って被測定物に向かって排気させる排気口と、
該排気口を囲繞し該シャフトの側面に水膜を形成する水膜形成手段と、を備え、
該排気口からエアの排気を可能にすると共に、該水膜形成手段により形成される水膜によって該シャフト及び該測定子に付着物が付着しないように保護するリニアゲージ。
【請求項2】
前記水膜形成手段は、前記排気口を囲繞する環状の水噴出口を備える水供給ノズルを備えた請求項1記載のリニアゲージ。
【請求項3】
前記水膜形成手段は、
前記シャフトを囲繞する環状管と、
該環状管の一方の位置から該環状管に水を供給する供給部と、
該環状管の中心を基準として該一方の位置に対称的な他方の位置で被測定物に向かって水を噴出する水噴出口と、を備え、
該供給部から該環状管に供給された水が該環状管を流れることで発生する該シャフトの軸心を軸とする周方向の力が該水噴出口で水が合流した際に残存することで、水が該シャフトの側面を覆い該被測定物に向かって流れ前記水膜を形成する請求項1記載のリニアゲージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定物の表面変位を測定するリニアゲージに関する。
【背景技術】
【0002】
チャックテーブルに保持された被加工物を研削水を供給しながら研削砥石で所定の厚みに研削する研削装置は、特許文献1に開示されているように、被加工物を保持するチャックテーブルの保持面の高さと、保持面が保持した被加工物の上面高さとを測定し、その高さ差を被加工物の厚みとして算出している。
【0003】
また、上記のような各面の高さ測定においてはリニアゲージを用い、先端に測定子を備えるシャフトを上下方向に直動させ、シャフトの高さ位置を検出器が検出することで高精度な高さ測定を可能にしている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-073785号公報
【文献】特開2015-175758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなリニアゲージは、シャフトの上下動作に負荷が掛からないようにするべく、シャフトの側面に向かってエアを噴出させ非接触でシャフトを支持するエア軸受けを備えている。このエア軸受けに使用されたエアがシャフトの側面に沿って被加工物に向かって排気されることで、研削水を供給しつつ研削加工を実施することで研削加工室に発生する研削屑を含む研削噴霧がリニアゲージ内に進入することを防いでいる。
【0006】
しかし、このエアの排気によりシャフトの周囲に渦流が発生し、研削噴霧が乾燥され、研削噴霧に含まれる研削屑がシャフトに固着し、シャフトが上下動できなくなるという問題がある。
よって、エア軸受けによってシャフトを非接触で支持しつつ上下方向に直動させて被測定物の上面高さを測定するリニアゲージにおいては、エア軸受けのエア排気を可能にするとともに、シャフトの側面に研削屑が固着してシャフトが上下動できなくなることがないようにするという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明は、被測定物の表面変位を測定するリニアゲージであって、被測定物の表面に接触させる測定子を先端に備えたシャフトと、該シャフトの側面を囲繞して支持する支持面を有するケーシングと、該支持面に配設され該シャフトの側面と該支持面との間にエアを介在させるエア噴出口と、該ケーシングの下に配設され該シャフトの側面を囲繞するリング状に形成され該エア噴出口から噴出したエアを該シャフトの側面に沿って被測定物に向かって排気させる排気口と、該排気口を囲繞し該シャフトの側面に水膜を形成する水膜形成手段と、を備え、該排気口からエアの排気を可能にすると共に、該水膜形成手段により形成される水膜によって該シャフト及び該測定子に付着物が付着しないように保護するリニアゲージである。
【0008】
前記水膜形成手段は、前記排気口を囲繞する環状の水噴出口を備える水供給ノズルを備えていると好ましい。
【0009】
前記水膜形成手段は、前記シャフトを囲繞する環状管と、該環状管の一方の位置から該環状管に水を供給する供給部と、該環状管の中心を基準として該一方の位置に対称的な他方の位置で被測定物に向かって水を噴出する水噴出口と、を備え、該供給部から該環状管に供給された水が該環状管を流れることで発生する該シャフトの軸心を軸とする周方向の力が該水噴出口で水が合流した際に残存することで、水が該シャフトの側面を覆い該被測定物に向かって流れ前記水膜を形成すると好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る被測定物の表面変位を測定するリニアゲージは、被測定物の表面に接触させる測定子を先端に備えたシャフトと、シャフトの側面を囲繞して支持する支持面を有するケーシングと、支持面に配設されシャフトの側面と支持面との間にエアを介在させるエア噴出口と、ケーシングの下に配設されシャフトの側面を囲繞するリング状に形成されエア噴出口から噴出したエアをシャフトの側面に沿って被測定物に向かって排気させる排気口と、排気口を囲繞しシャフトの側面に水膜を形成する水膜形成手段と、を備えているため、排気口からエアの排気を可能にすると共に、水膜形成手段により形成される水膜によってシャフト及び測定子を研削屑等の付着物が付着しないように保護することが可能となる。さらに排気口から排気されたエアと水膜形成手段から供給された水とが、測定子が接触する被測定物の表面から研削屑を排除するので、被測定物の表面の変位の測定誤差の発生を防ぐことができる。
【0011】
本発明に係るリニアゲージにおいて、水膜形成手段は、排気口を囲繞する環状の水噴出口を備える水供給ノズルを備えていることで、水膜の形成を容易に行うことが可能となる。
【0012】
本発明に係るリニアゲージにおいて、水膜形成手段は、シャフトを囲繞する環状管と、環状管の一方の位置から水を供給する供給部と、環状管の中心を基準として一方の位置に対称的な他方の位置で供給部の反対側に形成され被測定物に向かって水を噴出する水噴出口と、を備えることによって、供給部から環状管に供給された水が環状管を流れることで発生するシャフトの軸心を軸とする周方向の力が水噴出口で水が合流した際に残存することで、水がシャフトの側面を覆い被測定物に向かって流れて水膜を容易に形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図3】水膜形成手段の一例を説明するための断面図である。
【
図4】水膜形成手段の別例を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に示す本発明に係るリニアゲージ4は、例えば、半導体ウェーハ等の被加工物を研削する図示しない研削装置に配設されており、被測定物Wである半導体ウェーハ等の表面変位、即ち、研削加工が施されること等によって時間と共に変化する被測定物Wの表面Waの高さ位置を測定することができる。
【0015】
図1、2に示すリニアゲージ4は、例えば、被測定物Wの表面Waに接触させる測定子400を先端に備えた直動式のシャフト40と、シャフト40の側面40aを囲繞して支持する支持面41aを有するケーシング41と、支持面41aに配設されシャフト40の側面40aと支持面41aとの間にエアを介在させるエア噴出口42と、ケーシング41の下に配設されシャフト40の側面40aを囲繞するリング状に形成されエア噴出口42から噴出したエアをシャフト40の側面40aに沿って被測定物Wに向かって排気させる排気口43と、排気口43を囲繞しシャフト40の側面40aに水膜を形成する水膜形成手段44と、を備えている。
【0016】
シャフト40は、例えば、外形が円柱状に形成されており、その下端側に測定子400が取り外し可能に連結されている。本実施形態における測定子400は、その下端400cが、ダイヤモンド等からなり丸みを帯びた球面状に形成されている。
【0017】
図1に示すように、鉛直方向(Z軸方向)に延在するシャフト40の上端側は、例えば、矩形平板状の固定板490の下面側に固定ナット491によって連結している。
リニアゲージ4は、固定板490とZ軸方向において対向して固定板490と平行な平板状の支持板480を有している。シャフト40は、
図2に示すように、支持板480の円形穴480aを貫通しており、シャフト40の下端側及びシャフト40の下端側に連結された測定子400は、支持板480の下面から下方に突出している。
【0018】
リニアゲージ4は、例えば、ケーシング41が非接触で支持したシャフト40の軸方向(Z軸方向)を回転軸とする回転を規制する回転規制手段50を備えている。回転規制手段50は、1つのブロック形状の第1の磁石501と、第1の磁石501が有する磁界に反発する方向に磁界を方向付け第1の磁石501を挟んで均等な間隔で離間しシャフト40の軸方向と平行なZ軸方向に延在する少なくとも2本の第2の磁石502と、第1の磁石501に接続され第1の磁石501をZ軸方向に移動させるガイド棒503とにより構成されている。
【0019】
ガイド棒503の上端側は、固定板490に接続されており、シャフト40の延在方向と平行に延在している。ガイド棒503の下端側には、第1の磁石501が固定されている。2つの第2の磁石502は、第1の磁石501を挟んでケーシング41の側面に固定されている。そして、第1の磁石501と第2の磁石502とが反発することにより、第2の磁石502とガイド棒503との水平方向の距離が一定に保たれ、ガイド棒503の向きが変わってしまうことがない。したがって、向きが不変なガイド棒503が固定板490を介してシャフト40に連結されているため、シャフト40が円柱状に形成されていても、回転規制手段50によってシャフト40の回転方向の動きを規制することができる。
なお、シャフト40の形状は、円柱状に限られず、回転しない形状、すなわち円柱でない形状によって構成してもよい。したがって、多角柱でもよいし、楕円柱でもよい。また、一面のみが平らな面に形成され、他の面が曲面に形成された柱状でもよい。これに対応し、ケーシング41の支持面41aも、シャフト40の形状に合わせて形成されていればよい。そして、この場合には、回転規制手段50をリニアゲージ4が備えない構成となっていてもよい。
【0020】
ケーシング41は、支持板480の上面に配設された例えば直方体状の枠体410を有しており、枠体410の内部にシャフト40を挿通させてシャフト40の側面40aを非接触で支持できる構成となっている。シャフト40は、本実施形態においては円柱形状に形成されており、これに対応して、枠体410には、シャフト40を収容するための横断面円形状の収容孔41dが形成されている。
枠体410は、シャフト40の側面40aから均等な隙間を設けて離間して側面40aを囲繞する支持面41aと、シャフト40の側面40aを囲繞しシャフト40の側面40aを支持するエアを隙間に対して支持面41aから噴出させる複数のエア噴出口42と、コンプレッサー等からなるエア供給源60に接続されたエア流入口410cと、エア流入口410cと各エア噴出口42とを連通させる流路410dとを備えている。
【0021】
エア流入口410cには、継手410eを介して金属配管又は可撓性を有する樹脂チューブ等のエア供給管600の一端が連通しており、エア供給管600の他端側にはエア供給源60が接続されている。
【0022】
このように構成されるケーシング41では、エア供給源60からエア供給管600に供給されたエアを、各エア噴出口42からシャフト40の側面40aに対して垂直な方向に噴出させることで、シャフト40を隙間を介在させエアで囲繞して非接触の状態で支持することができる。
【0023】
支持板480上には、シャフト40をZ軸方向に直動させる直動駆動手段20が配設されている。
図1、2に示すように、直動駆動手段20は、例えば、ピストンシリンダであり、内部にピストン200を備え基端側(-Z方向側)に底のあるシリンダチューブ201と、シリンダチューブ201に挿入され下端がピストン200に取り付けられたピストンロッド202と、シリンダチューブ201の内部にエアを流入するためのエア流入口203a、203bとを少なくとも備えている。ピストンロッド202の上端側は、固定板490の下面に接触可能となっており、シリンダチューブ201の基端側は、支持板480の上面に固定されている。
【0024】
エア流入口203a、203bには、それぞれエア流路204a、204bが連通しており、エア流路204a、204bは例えばソレノイドバルブ603を介して選択的にエア供給源60に接続されている。
【0025】
直動駆動手段20によって被測定物Wの表面Waから離反する方向にシャフト40を上昇させるときは、ソレノイドバルブ603に通電がなされエア供給源60がエア流路204bに連通する状態になり、エア供給源60から供給されたエアがエア流入口203bに流入する。そして、シリンダチューブ201内に下方からエアを供給することにより、シリンダチューブ201の内部においてピストン200を上昇させる。そして、固定板490の下面にピストンロッド202を接触させてからさらにピストンロッド202を上昇させて固定板490を上昇させることにより、固定板490に連結されたシャフト40を上昇させる。
【0026】
一方、直動駆動手段20によってシャフト40を被測定物Wの表面Waに接近させる方向に下降させるときは、ソレノイドバルブ603に通電がなされエア供給源60がエア流路204aに連通する状態になり、エア供給源60がエア流入口203aに所定のエアを流入しシリンダチューブ201内に上方からエアを供給し、また、エア流入口203bから所定のエアを流出させる。その結果、ピストンロッド202の上端が固定板490の下面に接触した状態で規制された速度でピストンロッド202が下降していくことで、シャフト40及びシャフト40に連結される固定板490の自重によってシャフト40が下降する速度が制限される。そして、測定子400の下端400cが被測定物Wの表面Waに接触するまでシャフト40を下降させる。
【0027】
図1、2に示すように、固定板490の下面の一角には、高さ位置読み取り手段25が配設されている。高さ位置読み取り手段25は、固定板490の下面にその上端が固定されておりシャフト40の延在方向(Z軸方向)と平行に-Z方向に向かって延在するスケール250と、スケール250の目盛り250aを読み取る読み取り部251と、読み取り部251が固定される支持柱252とを備えている。支持柱252は、支持板480の側面に固定されており+Z方向に向かって延在している。読み取り部251は、支持柱252の側面に固定されているとともに、スケール250の側面にZ軸方向に等間隔に形成された目盛り250aに対面している。読み取り部251は、例えば、スケール250の目盛り250aの反射光を読み取る光学式のものであり、読み取ったスケール250の目盛り250aの値をシャフト40の測定子400の下端400cの高さ位置に変換して測定することで、被測定物Wの表面Waの高さ位置を読み取ることができる。
【0028】
図2、3に示すように、支持板480の下面には、例えば外形が略円柱状の水供給ノズル441が、その上部に形成されたネジ部441a等によって着脱可能に装着されている。水供給ノズル441の中央には厚み方向(Z軸方向)にシャフト40を貫通させるための横断面円形状の貫通孔441bが形成されており、該貫通孔441bの下端側が、ケーシング41の下に配設されシャフト40の側面40aを囲繞するリング状に形成されエア噴出口42から噴出したエアをシャフト40の側面40aに沿って被測定物Wに向かって排気させる排気口43となる。
貫通孔441bと支持板480の円形穴480aとケーシング41の円形状の収容孔41dとは中心が略合致しており、本実施形態においては例えばその直径が同径となっている。
【0029】
図2、3に示す水膜形成手段44(以下、実施形態1の水膜形成手段44とする。)は、排気口43を囲繞する環状の水噴出口441cを備える上記水供給ノズル441を備えている。
例えば、水供給ノズル441の側面には水供給口441dが形成されており、該水供給口441dは、水供給ノズル441内部において水噴出口441cに連通している。水噴出口441cは、
図2、3に示す例においては、水供給ノズル441の下端側に向けて縮径する筒状に形成されており水供給口441dから水噴出口441cに移動した水が水供給ノズル441の中央に向く流れとなりつつ下降するようになっているが、これに限定されるものではない。
【0030】
水供給口441dには、水供給パイプ460が一端が接続されており、水供給パイプ460の他端側にはポンプ等から構成され水(例えば、純水)を供給可能な水供給源461が連通している。
【0031】
以下に上記リニアゲージ4により被測定物Wの表面Waの変位を測定する場合の、リニアゲージ4の動作について、
図2及び
図3を用いて説明する。
図2、3において、被測定物Wは、図示しない研削装置のチャックテーブル10(
図3には不図示)に吸引保持されており、研削水が供給されつつ回転する研削砥石によって薄化されている。即ち、被測定物Wは、チャックテーブル10の図示しない吸引源に連通しポーラス部材等からなる保持面10aに表面Waを上側に向けて吸引保持されており、チャックテーブル10の回転に伴ってZ軸方向の軸心周りに回転している。
【0032】
図2に示すように、リニアゲージ4は、支持台11上に取り付けられており、被測定物Wの上方に位置づけられている。被測定物Wの研削加工中においては、リニアゲージ4を用いて被測定物Wの表面Waの変位を測定して被測定物Wの厚みの変化を監視する。
直動駆動手段20が、シャフト40を被測定物Wに接近する-Z方向に下降させる。具体的には、
図2に示すエア供給源60がエア流入口203aに所定量のエアを流入させてシリンダチューブ201内にエアを供給することにより、規制された速度でシリンダチューブ201の内部においてピストン200を下方向(-Z方向)に移動させる。これにより、固定板490及びシャフト40の自重による下降速度を制限しながら測定子400の下端400cが被測定物Wの表面Waに接触するまでシャフト40を下降させる。このように、直動駆動手段20が固定板490及びシャフト40の下降速度を制限することにより、測定子400の下端400cが被測定物Wに接触する時の衝撃を小さくすることができる。
【0033】
この際、エア供給源60からエア流入口410cにエアを供給し、エア噴出口42からシャフト40の側面40aとケーシング41の支持面41aとの間にエアを噴出させ介在させることにより、ケーシング41でシャフト40の側面40aを非接触で支持しつつ、シャフト40をZ軸方向に垂直に下降させていくことができる。
【0034】
シャフト40の下降により被測定物Wの表面Waに測定子400が接触したら、測定子400の下端400cが被測定物Wの表面Waに接触したときのスケール250の目盛り250aを読み取り部251が読み取る。
その後、エア供給源60からエア流入口203aに流入させるエアの供給量を調整し、シャフト40が被測定物Wの厚みの変化、換言すれば被測定物Wの表面Waの変位に応じて自由に軸方向に動くことができるものとし、読み取り部251が変化する目盛り250aを順次読み取っていくことで、リニアゲージ4によって被測定物Wの表面Waの変位を順次測定していくことができる。
【0035】
リニアゲージ4で被測定物Wの表面Waの変位を測定している最中において、エア噴出口42からシャフト40の側面40aとケーシング41の支持面41aとの間に供給されたエアは、シャフト40の側面40aに沿ってケーシング41の収容孔41d内を下降していき、さらに、支持板480の円形穴480aを通過して水供給ノズル441に至る。
該エアは、水供給ノズル441内においてもシャフト40の側面40aに沿って貫通孔441b内を下降していき、環状の排気口43から被測定物Wに向かって排気される。
【0036】
リニアゲージ4で被測定物Wの表面Waの変位を測定している最中において、水供給源461から水が供給され、水供給口441dから該水が水供給ノズル441内部に流入していく。そして、排気口43を囲繞する環状の水噴出口441cから該水がシャフト40の側面40aに向けて噴出し、シャフト40の側面40aを水膜として覆いつつ被測定物Wに向かう下方に流れていく。その結果、排気口43からエアの排気がなされると共に、水膜形成手段44により形成される水膜によってシャフト40及び測定子400に付着物が付着しないように保護がなされる。即ち、研削屑を含む研削噴霧が水供給ノズル441から下方に突き出たシャフト40及び測定子400の周囲に舞っていても、シャフト40の側面40aや測定子400に接触することが水膜によって防がれ、また、乾燥して固着することも防がれる。
【0037】
本発明に係る被測定物Wの表面変位を測定するリニアゲージ4は、被測定物Wの表面Waに接触させる測定子400を先端に備えたシャフト40と、シャフト40の側面40aを囲繞して支持する支持面41aを有するケーシング41と、支持面41aに配設されシャフト40の側面40aと支持面41aとの間にエアを介在させるエア噴出口42と、ケーシング41の下に配設されシャフト40の側面40aを囲繞するリング状に形成されエア噴出口42から噴出したエアをシャフト40の側面40aに沿って被測定物Wに向かって排気させる排気口43と、排気口43を囲繞しシャフト40の側面40aに水膜を形成する水膜形成手段44と、を備えているため、排気口43からエアの排気を可能にすると共に、水膜形成手段44により形成される水膜によってシャフト40及び測定子400を研削屑等の付着物が付着しないように保護することが可能となる。さらに排気口43から排気されたエアと水膜形成手段44から供給された水とが、
図3に示すように測定子400が接触する被測定物Wの表面Waから研削屑を排除するように被測定物Wの表面Wa上を流れていくので、リニアゲージ4による被測定物Wの表面Waの変位の測定誤差の発生を防ぐことができる。
【0038】
本発明に係るリニアゲージ4において、水膜形成手段44は、排気口43を囲繞する環状の水噴出口441cを備える水供給ノズル441を備えていることで、水膜の形成を容易に行うことが可能となる。
【0039】
本発明に係るリニアゲージ4は、
図2、3に示す水膜形成手段44に代えて、
図4に示す水膜形成手段45を備えてもよい。
水膜形成手段45は、シャフト40を囲繞する環状管450と、環状管450の一方の位置450a(
図4においては+X方向側の位置)から水を供給する供給部451と、環状管450の中心を基準として一方の位置450aに対称的な他方の位置450b(
図4においては-X方向側の位置)で供給部451の反対側に形成され被測定物Wに向かって水を噴出する水噴出口452と、を備える。本実施形態においては、水膜形成手段45の上記各構成要素は、例えば、支持板480の下面に取り付けられた略円柱状の柱体459内に配設されている。
【0040】
柱体459の上面にはネジ部459aが形成されており、柱体459は支持板480の下面にネジ部459aによって着脱可能に装着されている。柱体459の中央には厚み方向(Z軸方向)にシャフト40を貫通させるための横断面円形状の貫通孔459bが形成されており、該貫通孔459bは例えば支持板480の円形穴480aと略同径の直径を備えており、円形穴480aと中心が合致した状態になっている。
【0041】
貫通孔459bの下端側が、ケーシング41の下に配設されシャフト40の側面40aを囲繞するリング状に形成されエア噴出口42から噴出したエアをシャフト40の側面40aに沿って被測定物Wに向かって排気させる排気口43となる。排気口43は、
図4に示す例においては、貫通孔459bよりも拡径されているがこれに限定されるものではない。
【0042】
供給部451は、例えば、柱体459の側面から柱体459の内部に水平に延びてからさらに下方に延びるように形成されており、柱体459の内部において環状管450の一方の位置450aに連通している。供給部451には、水供給パイプ460が一端が接続されており、水供給パイプ460の他端側にはポンプ等から構成され水(例えば、純水)を供給可能な水供給源461が連通している。
水噴出口452は、環状管450の他方の位置450bから柱体459の中心側に例えば直線状に延びており、排気口43に連通している。
【0043】
上記水膜形成手段45を備えるリニアゲージ4で被測定物Wの表面Waの変位を測定している最中において、
図2に示すエア噴出口42からシャフト40の側面40aとケーシング41の支持面41aとの間に供給されたエアは、シャフト40の側面40aに沿ってケーシング41の収容孔41d内を下降していき、さらに、支持板480の円形穴480aを通過して
図4に示す柱体459に至る。
該エアは、柱体459内においてもシャフト40の側面40aに沿って貫通孔459b内を下降していき、排気口43から被測定物Wに向かって排気される。
【0044】
図4に示す水膜形成手段45を備えるリニアゲージ4で被測定物Wの表面Waの変位を測定している最中において、水供給源461から水が供給され、供給部451から該水が柱体459内部に流入していく。供給部451から環状管450の一方の位置450aに供給された水は、二手に分かれて環状管450内を+Z方向から見てそれぞれ時計回り方向、反時計回り方向に流れていき、その結果、シャフト40のZ軸方向の軸心を軸とする周方向の力が二手に分かれた水にそれぞれ発生する。
【0045】
そして、該二手に分かれて環状管450内を流れていく水が、それぞれ水噴出口452に到達し合流した際に該周方向の力が残存することで、排気口43を通過しシャフト40の側面40aに移動した水が例えば螺旋状の流れを備える水膜となって側面40aを覆いまとわりつくようにして被測定物Wに向かって下降していく。その結果、環状の排気口43からエアの排気がなされると共に、水膜形成手段45により形成される水膜によってシャフト40及び測定子400は付着物が付着しないように保護される。即ち、研削屑を含む研削噴霧が柱体459から下方に突き出たシャフト40及び測定子400の周囲に舞っていても、シャフト40の側面40aや測定子400に接触することが水膜によって防がれ、また、乾燥して固着することも防がれる。
【0046】
上記のように、本発明に係るリニアゲージ4において、水膜形成手段45は、シャフト40を囲繞する環状管450と、環状管450の一方の位置450aから水を供給する供給部451と、環状管450の中心を基準として一方の位置450aに対称的な他方の位置450bで供給部451の反対側に形成され被測定物Wに向かって水を噴出する水噴出口452と、を備えることによって、供給部451から環状管450に供給された水が環状管450を流れることで発生するシャフト40の軸心を軸とする周方向の力が水噴出口452で水が合流した際に残存することで、水がシャフト40の側面40aを覆い被測定物Wに向かって流れて水膜を容易に形成することが可能となる。
【0047】
本発明に係るリニアゲージ4は上述の水膜形成手段44又は水膜形成手段45を備える例に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。また、添付図面に図示されているリニアゲージ4の各構成要素の外形等についても、これに限定されず、本発明の効果を発揮できる範囲内で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0048】
W:被測定物 Wa:被測定物の表面
4:リニアゲージ
40:シャフト 40a:シャフトの側面 400:測定子 400c:測定子の下端
41:ケーシング 410:枠体 41d:収容孔 41a:支持面 410c:エア流入口 410d:流路
42:エア噴出口
43:排気口
44:水膜形成手段
441:水供給ノズル 441a:ネジ部 441b:貫通孔 441c:水噴出口 441d:水供給口
46:水供給源 460:水供給パイプ
490:固定板 491:固定ナット
480:支持板 480a:円形穴
50:回転規制手段 501:第1の磁石 502:第2の磁石 503:ガイド棒
60:エア供給源 600:エア供給管 603:ソレノイドバルブ
20:直動駆動手段 200:ピストン 201:シリンダチューブ 202:ピストンロッド 203a、203b:エア流入口 204a、204b:エア流路
25:高さ位置読み取り手段 250:スケール 250a:目盛り 251:読み取り部 252:支持柱
11:支持台 10:チャックテーブル 10a:保持面
45:水膜形成手段 450:環状管 451:供給部 452:水噴出口 459:柱体