(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】洗浄部材の着脱用治具
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20221026BHJP
B08B 13/00 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
H01L21/304 644Z
H01L21/304 644C
B08B13/00
(21)【出願番号】P 2019108375
(22)【出願日】2019-06-11
【審査請求日】2021-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】藤本 友章
(72)【発明者】
【氏名】末政 秀一
(72)【発明者】
【氏名】石橋 知淳
【審査官】平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-307479(JP,A)
【文献】特開2005-238011(JP,A)
【文献】特開2017-139283(JP,A)
【文献】米国特許第02507368(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0288978(US,A1)
【文献】米国特許第05979961(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B08B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物をスクラブ洗浄する本体部と、前記本体部を保持するホルダーと、を備え、前記ホルダーの両端部が、回転装置に対し着脱可能とされる洗浄部材の着脱用治具であって、
前記本体部と前記回転装置との隙間から露出する前記ホルダーの両端部を挟持可能な一対の治具本体と、
前記一対の治具本体を連結し、且つ、前記ホルダーの両端部を挟持する挟持状態と、当該挟持状態を解除する非挟持状態との間で、前記一対の治具本体の動きを連動させる連結機構と、を備える、ことを特徴とする洗浄部材の着脱用治具。
【請求項2】
前記一対の治具本体のぞれぞれは、一つの交点で交差し、且つ、当該交点を中心に開閉可能な挟持片を備え、
前記連結機構は、
前記挟持片の交点において、前記一対の治具本体同士を連結する連結軸と、
前記挟持片が前記ホルダーを挟持する第1端に対して前記交点を挟んだ反対側の第2端において、前記一対の治具本体同士を連結する一対の把持軸と、を備える、ことを特徴とする請求項1に記載の洗浄部材の着脱用治具。
【請求項3】
前記一対の把持軸同士を固定し、前記挟持状態を維持する固定部材を備える、ことを特徴とする請求項2に記載の洗浄部材の着脱用治具。
【請求項4】
前記一対の把持軸の少なくともいずれか一方の周面には、環状溝が形成され、
前記固定部材は、前記環状溝に係合している、ことを特徴とする
請求項3に記載の洗浄部材の着脱用治具。
【請求項5】
前記連結軸は、前記挟持片に対して相対回転可能に連結され、
前記一対の把持軸のそれぞれは、前記挟持片に対して相対回転不能に連結されている、ことを特徴とする請求項2~4のいずれか一項に記載の洗浄部材の着脱用治具。
【請求項6】
前記一対の治具本体の間隔を調整する間隔調整機構を備える、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の洗浄部材の着脱用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄部材の着脱用治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、基板をスクラブ洗浄する洗浄ブラシ(洗浄部材)を洗浄装置(回転装置)に対して着脱するための着脱用治具が開示されている。半導体製造装置などでは、基板を高い清浄度で洗浄することが要求されている。このため、洗浄ブラシを洗浄装置に装着する際には、ブラシ毛(本体部)に手が触れないようにし、ブラシ毛が汚れたり、折れ曲がったりしないようにする必要がある。
【0003】
このため、下記特許文献1に記載の洗浄ブラシの着脱用治具は、洗浄ブラシの両端部の支軸部に係合する係合部が一端面に開放して形成された一対の治具本体と、上記治具本体に形成された取り付け孔に着脱可能に挿入保持されて上記係合部の開放端を閉塞し上記係合部が上記支軸部から外れないよう上記治具本体を上記支軸部に保持する抜け止め部材と、一対の治具本体に両端部が連結されこれら治具本体の係合部が上記支軸部の軸方向に抜出するのを阻止する把持部材とを具備し、上記把持部材を把持して上記洗浄ブラシを上記洗浄装置に対して着脱することを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年の半導体製造装置は、洗浄部材と、当該洗浄部材の両端部が取り付けられる回転装置との隙間(クリアランス)が非常に少なく、手が入らないこともあり、本体部に手が触れないようにしつつ洗浄部材を回転装置に装着することが困難な場合がある。
洗浄部材と回転装置との隙間に手が入らないと、仮に、上記従来技術の着脱用治具を用いて洗浄部材を回転装置に装着したとしても、洗浄部材を保持する上記抜け止め部材を治具本体から引き抜くことができず、着脱用治具が洗浄部材から離脱できない虞がある。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、洗浄部材の周辺に十分な隙間がなくても、洗浄部材を直接手で持つことなく、回転装置に対して洗浄部材を容易に着脱できる洗浄部材の着脱用治具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る洗浄部材の着脱用治具は、対象物をスクラブ洗浄する本体部と、前記本体部を保持するホルダーと、を備え、前記ホルダーの両端部が、回転装置に対し着脱可能とされる洗浄部材の着脱用治具であって、前記本体部と前記回転装置との隙間から露出する前記ホルダーの両端部を挟持可能な一対の治具本体と、前記一対の治具本体を連結し、且つ、前記ホルダーの両端部を挟持する挟持状態と、当該挟持状態を解除する非挟持状態との間で、前記一対の治具本体の動きを連動させる連結機構と、を備える。
【0008】
上記洗浄部材の着脱用治具において、前記一対の治具本体のぞれぞれは、一つの交点で交差し、且つ、当該交点を中心に開閉可能な挟持片を備え、前記連結機構は、前記挟持片の交点において、前記一対の治具本体同士を連結する連結軸と、前記挟持片が前記ホルダーを挟持する第1端に対して前記交点を挟んだ反対側の第2端において、前記一対の治具本体同士を連結する一対の把持軸と、を備えてもよい。
上記洗浄部材の着脱用治具において、前記一対の把持軸同士を固定し、前記挟持状態を維持する固定部材を備えてもよい。
上記洗浄部材の着脱用治具において、前記一対の把持軸の少なくともいずれか一方の周面には、環状溝が形成され、前記固定部材は、前記環状溝に係合していてもよい。
上記洗浄部材の着脱用治具において、前記連結軸は、前記挟持片に対して相対回転可能に連結され、前記一対の把持軸のそれぞれは、前記挟持片に対して相対回転不能に連結されていてもよい。
上記洗浄部材の着脱用治具において、前記一対の治具本体の間隔を調整する間隔調整機構を備えてもよい。
【発明の効果】
【0009】
上記本発明の一態様によれば、洗浄部材の周辺に十分な隙間がなくても、洗浄部材を直接手で持つことなく、回転装置に対して洗浄部材を容易に着脱できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係る基板処理装置の全体構成を示す平面図である。
【
図2】一実施形態に係る基板洗浄装置の構成図である。
【
図3】一実施形態に係る洗浄部材の着脱用治具の正面図である。
【
図4】一実施形態に係る着脱用治具を正面左側から視た斜視図である。
【
図5】一実施形態に係る着脱用治具を背面右側から視た斜視図である。
【
図6】一実施形態に係る着脱用治具の分解斜視図である。
【
図7】一実施形態に係る回転装置に洗浄部材を装着する手順を示す説明図である。
【
図8】一実施形態に係る一実施形態の変形例に係る洗浄部材の着脱用治具の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。以下では、洗浄部材の着脱用治具の適用例として、基板を洗浄する洗浄部を有し、洗浄部材の着脱を要する基板処理装置を例示する。
【0012】
図1は、一実施形態に係る基板処理装置1の全体構成を示す平面図である。
図1に示す基板処理装置1は、シリコンウェハ等の基板Wの表面を平坦に研磨する化学機械研磨(CMP)装置である。この基板処理装置1は、矩形箱状のハウジング2を備える。ハウジング2は、平面視で略長方形に形成されている。
【0013】
ハウジング2は、その中央に長手方向に延在する基板搬送路3を備える。基板搬送路3の長手方向の一端部には、ロード/アンロード部10が配設されている。基板搬送路3の幅方向(平面視で長手方向と直交する方向)の一方側には、研磨部20が配設され、他方側には、洗浄部30が配設されている。基板搬送路3には、基板Wを搬送する基板搬送部40が設けられている。また、基板処理装置1は、ロード/アンロード部10、研磨部20、洗浄部30、及び基板搬送部40の動作を統括的に制御する制御部50(制御装置)を備える。
【0014】
ロード/アンロード部10は、基板Wを収容するフロントロード部11を備える。フロントロード部11は、ハウジング2の長手方向の一方側の側面に複数設けられている。複数のフロントロード部11は、ハウジング2の幅方向に配列されている。フロントロード部11は、例えば、オープンカセット、SMIF(Standard Manufacturing Interface)ポッド、またはFOUP(Front Opening Unified Pod)を搭載する。SMIF、FOUPは、内部に基板Wのカセットを収納し、隔壁で覆った密閉容器であり、外部空間とは独立した環境を保つことができる。
【0015】
また、ロード/アンロード部10は、フロントロード部11から基板Wを出し入れする2台の搬送ロボット12と、各搬送ロボット12をフロントロード部11の並びに沿って走行させる走行機構13と、を備える。各搬送ロボット12は、上下に2つのハンドを備えており、基板Wの処理前、処理後で使い分けている。例えば、フロントロード部11に基板Wを戻すときは上側のハンドを使用し、フロントロード部11から処理前の基板Wを取り出すときは下側のハンドを使用する。
【0016】
研磨部20は、基板Wの研磨(平坦化)を行う複数の基板研磨装置21(21A,21B,21C,21D)を備える。複数の基板研磨装置21は、基板搬送路3の長手方向に配列されている。基板研磨装置21は、研磨面を有する研磨パッド22を回転させる研磨テーブル23と、基板Wを保持しかつ基板Wを研磨テーブル23上の研磨パッド22に押圧しながら研磨するためのトップリング24と、研磨パッド22に研磨液やドレッシング液(例えば、純水)を供給するための研磨液供給ノズル25と、研磨パッド22の研磨面のドレッシングを行うためのドレッサ26と、液体(例えば純水)と気体(例えば窒素ガス)の混合流体または液体(例えば純水)を霧状にして研磨面に噴射するアトマイザ27と、を備える。
【0017】
基板研磨装置21は、研磨液供給ノズル25から研磨液を研磨パッド22上に供給しながら、トップリング24により基板Wを研磨パッド22に押し付け、さらにトップリング24と研磨テーブル23とを相対移動させることにより、基板Wを研磨してその表面を平坦にする。ドレッサ26は、研磨パッド22に接触する先端の回転部にダイヤモンド粒子やセラミック粒子などの硬質な粒子が固定され、当該回転部を回転しつつ揺動することにより、研磨パッド22の研磨面全体を均一にドレッシングし、平坦な研磨面を形成する。
アトマイザ27は、研磨パッド22の研磨面に残留する研磨屑や砥粒などを高圧の流体により洗い流すことで、研磨面の浄化と、機械的接触であるドレッサ26による研磨面の目立て作業、すなわち研磨面の再生を達成する。
【0018】
洗浄部30は、基板Wの洗浄を行う複数の基板洗浄装置31(31A,31B)と、洗浄した基板Wを乾燥させる基板乾燥装置32と、を備える。複数の基板洗浄装置31及び基板乾燥装置32は、基板搬送路3の長手方向に配列されている。基板洗浄装置31Aと基板洗浄装置31Bとの間には、第1搬送室33が設けられている。第1搬送室33には、基板搬送部40、基板洗浄装置31A、及び基板洗浄装置31Bの間で基板Wを搬送する搬送ロボット35が設けられている。また、基板洗浄装置31Bと基板乾燥装置32との間には、第2搬送室34が設けられている。第2搬送室34には、基板洗浄装置31Bと基板乾燥装置32との間で基板Wを搬送する搬送ロボット36が設けられている。
【0019】
基板洗浄装置31は、例えば、後述するロールスポンジ型の洗浄モジュールを備え、基板Wを洗浄する。なお、基板洗浄装置31A及び基板洗浄装置31Bは、同一のタイプであっても、異なるタイプの洗浄モジュールであってもよく、例えば、ペンシルスポンジ型の洗浄モジュールや2流体ジェット型の洗浄モジュールであってもよい。基板乾燥装置32は、例えば、ロタゴニ乾燥(IPA(Iso-Propyl Alcohol)乾燥)を行う乾燥モジュールを備える。乾燥後は、基板乾燥装置32とロード/アンロード部10との間の隔壁に設けられたシャッタ1aが開かれ、搬送ロボット12によって基板乾燥装置32から基板Wが取り出される。
【0020】
基板搬送部40は、リフター41と、第1リニアトランスポータ42と、第2リニアトランスポータ43と、スイングトランスポータ44と、を備える。基板搬送路3には、ロード/アンロード部10側から順番に第1搬送位置TP1、第2搬送位置TP2、第3搬送位置TP3、第4搬送位置TP4、第5搬送位置TP5、第6搬送位置TP6、第7搬送位置TP7が設定されている。
【0021】
リフター41は、第1搬送位置TP1で基板Wを上下に搬送する機構である。リフター41は、第1搬送位置TP1において、ロード/アンロード部10の搬送ロボット12から基板Wを受け取る。また、リフター41は、搬送ロボット12から受け取った基板Wを第1リニアトランスポータ42に受け渡す。第1搬送位置TP1とロード/アンロード部10との間の隔壁には、シャッタ1bが設けられており、基板Wの搬送時にはシャッタ1bが開かれて搬送ロボット12からリフター41に基板Wが受け渡される。
【0022】
第1リニアトランスポータ42は、第1搬送位置TP1、第2搬送位置TP2、第3搬送位置TP3、第4搬送位置TP4の間で基板Wを搬送する機構である。第1リニアトランスポータ42は、複数の搬送ハンド45(45A,45B,45C,45D)と、各搬送ハンド45を複数の高さで水平方向に移動させるリニアガイド機構46と、を備える。
搬送ハンド45Aは、リニアガイド機構46によって、第1搬送位置TP1から第4搬送位置TP4の間を移動する。この搬送ハンド45Aは、リフター41から基板Wを受け取り、それを第2リニアトランスポータ43に受け渡すためのパスハンドである。
【0023】
搬送ハンド45Bは、リニアガイド機構46によって、第1搬送位置TP1と第2搬送位置TP2との間を移動する。この搬送ハンド45Bは、第1搬送位置TP1でリフター41から基板Wを受け取り、第2搬送位置TP2で基板研磨装置21Aに基板Wを受け渡す。搬送ハンド45Bには、昇降駆動部が設けられており、基板Wを基板研磨装置21Aのトップリング24に受け渡すときは上昇し、トップリング24に基板Wを受け渡した後は下降する。なお、搬送ハンド45C及び搬送ハンド45Dにも、同様の昇降駆動部が設けられている。
【0024】
搬送ハンド45Cは、リニアガイド機構46によって、第1搬送位置TP1と第3搬送位置TP3との間を移動する。この搬送ハンド45Cは、第1搬送位置TP1でリフター41から基板Wを受け取り、第3搬送位置TP3で基板研磨装置21Bに基板Wを受け渡す。また、搬送ハンド45Cは、第2搬送位置TP2で基板研磨装置21Aのトップリング24から基板Wを受け取り、第3搬送位置TP3で基板研磨装置21Bに基板Wを受け渡すアクセスハンドとしても機能する。
【0025】
搬送ハンド45Dは、リニアガイド機構46によって、第2搬送位置TP2と第4搬送位置TP4との間を移動する。搬送ハンド45Dは、第2搬送位置TP2または第3搬送位置TP3で、基板研磨装置21Aまたは基板研磨装置21Bのトップリング24から基板Wを受け取り、第4搬送位置TP4でスイングトランスポータ44に基板Wを受け渡すためのアクセスハンドとして機能する。
【0026】
スイングトランスポータ44は、第4搬送位置TP4と第5搬送位置TP5との間を移動可能なハンドを有しており、第1リニアトランスポータ42から第2リニアトランスポータ43へ基板Wを受け渡す。また、スイングトランスポータ44は、研磨部20で研磨された基板Wを、洗浄部30に受け渡す。スイングトランスポータ44の側方には、基板Wの仮置き台47が設けられている。スイングトランスポータ44は、第4搬送位置TP4または第5搬送位置TP5で受け取った基板Wを上下反転して仮置き台47に載置する。仮置き台47に載置された基板Wは、洗浄部30の搬送ロボット35によって第1搬送室33に搬送される。
【0027】
第2リニアトランスポータ43は、第5搬送位置TP5、第6搬送位置TP6、第7搬送位置TP7の間で基板Wを搬送する機構である。第2リニアトランスポータ43は、複数の搬送ハンド48(48A,48B,48C)と、各搬送ハンド45を複数の高さで水平方向に移動させるリニアガイド機構49と、を備える。搬送ハンド48Aは、リニアガイド機構49によって、第5搬送位置TP5から第6搬送位置TP6の間を移動する。搬送ハンド45Aは、スイングトランスポータ44から基板Wを受け取り、それを基板研磨装置21Cに受け渡すアクセスハンドとして機能する。
【0028】
搬送ハンド48Bは、第6搬送位置TP6と第7搬送位置TP7との間を移動する。搬送ハンド48Bは、基板研磨装置21Cから基板Wを受け取り、それを基板研磨装置21Dに受け渡すためのアクセスハンドとして機能する。搬送ハンド48Cは、第7搬送位置TP7と第5搬送位置TP5との間を移動する。搬送ハンド48Cは、第6搬送位置TP6または第7搬送位置TP7で、基板研磨装置21Cまたは基板研磨装置21Dのトップリング24から基板Wを受け取り、第5搬送位置TP5でスイングトランスポータ44に基板Wを受け渡すためのアクセスハンドとして機能する。なお、説明は省略するが、搬送ハンド48の基板Wの受け渡し時の動作は、上述した第1リニアトランスポータ42の動作と同様である。
【0029】
図2は、一実施形態に係る基板洗浄装置31の構成図である。
図2に示す基板洗浄装置31は、基板Wをスクラブ洗浄する洗浄部材60と、洗浄部材60を回転させる回転装置70と、を備える。洗浄部材60及び回転装置70は、基板Wの上下に配置されている。基板Wの上方に配置された回転装置70Aは、アーム80に接続されて昇降及び水平移動が可能とされている。なお、基板Wの下方に配置された回転装置70Bは、図示しないベースなどに固定されている。
【0030】
洗浄部材60は、基板Wをスクラブ洗浄する本体部61と、本体部61を保持するホルダー62と、を備える。本体部61は、円筒状のスポンジ体であって、例えばPVA(ポリビニルアルコール)製スポンジあるいはウレタン製スポンジなどから形成されている。なお、本体部61は、周面にブラシ毛を有するブラシ体であっても構わない。
【0031】
ホルダー62は、本体部61を支える軸体であって、本体部61の内部に挿通して配置されている。ホルダー62は、例えば、PVC(ポリ塩化ビニル)やPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)などから形成されている。ホルダー62の両端部63は、本体部61の両端面よりも軸方向外側に延びている。
【0032】
ホルダー62の両端部63のうちの一方(一端部63A)には、軸部64Aと、フランジ部65Aと、が形成されている。ホルダー62の両端部63のうちの他方(他端部63B)には、軸部64Bが形成され、軸部64Bの周面には図示しないネジが形成され、ナット部65Bが螺合している。フランジ部65A及びナット部65Bは、本体部61の両端面と軸方向で対向している。
【0033】
回転装置70は、ホルダー62の両端部63が装着される一対の回転軸71を備える。一対の回転軸71のうちの一方は、従動軸71Aであり、ホルダー62の一端部63Aの軸部64Aに係合する。従動軸71Aは、スプリング74によって軸方向に移動可能とされている。具体的には、従動軸71Aは、軸受72を介して軸箱73に支持されており、軸箱73がスプリング74によって洗浄部材60に向かって軸方向に付勢されている。軸箱73及びスプリング74は、ハウジング75に対し軸方向に移動可能に収容されている。
【0034】
一対の回転軸71のうちの他方は、駆動軸71Bであり、ホルダー62の他端部63Bの軸部64Bに係合する。駆動軸71Bは、回転装置70の内部に収容された図示しないモーターの駆動によって回転する。駆動軸71Bは、円柱体の端面にマイナス(-)の凸部が形成された形状とされている。この駆動軸71Bを受ける軸部64Bは、後述する
図5に示すように、駆動軸71Bの凸部が挿入されるすり割り64B1と、駆動軸71Bの周面を囲って調心する円弧片64B2と、を有する。
【0035】
なお、従動軸71Aは、マイナス(-)の凸部に円柱体が立設した形状とされている。この従動軸71Aを受ける軸部64Aは、後述する
図4に示すように、従動軸71Aの凸部が挿入されるすり割り64A1と、従動軸71Aの円柱体が挿入されて調心する孔部64A2と、を有する。
【0036】
次に、上記構成の回転装置70に対し洗浄部材60を着脱する着脱用治具100の構成について説明する。
【0037】
図3は、一実施形態に係る洗浄部材60の着脱用治具100の正面図である。
図4は、一実施形態に係る着脱用治具100を正面左側から視た斜視図である。
図5は、一実施形態に係る着脱用治具100を背面右側から視た斜視図である。
図6は、一実施形態に係る着脱用治具100の分解斜視図である。
これらの図に示すように、洗浄部材60の着脱用治具100は、一対の治具本体110と、一対の治具本体110を連結する連結機構120と、を備える。
【0038】
一対の治具本体110は、上述した
図2に示すように、本体部61と回転装置70との隙間から露出するホルダー62の両端部63を挟持可能に構成されている。一対の治具本体110のぞれぞれは、
図4及び
図5に示すように、一つの交点Pで交差し、且つ、当該交点Pを中心に開閉可能な挟持片111(シザース)を備える。
【0039】
連結機構120は、挟持片111の交点Pにおいて、一対の治具本体110同士を連結する連結軸121と、挟持片111がホルダー62を挟持する第1端111A(ツメ)に対して交点Pを挟んだ反対側の第2端111Bにおいて、一対の治具本体110同士を連結する一対の把持軸122と、を備える。
【0040】
連結軸121は、
図6に示すように、挟持片111に対して相対回転可能に連結されている。具体的に、連結軸121の両端部には、円柱軸121aが形成され、円柱軸121aは、挟持片111の交点Pに形成された貫通孔112に挿入されている。円柱軸121aの先端には、孔部121bが形成され、孔部121bにネジ140がワッシャー141を挿通して螺合することで、連結軸121が挟持片111に対して相対回転可能に連結される。
【0041】
一方で、一対の把持軸122のそれぞれは、挟持片111に対して相対回転不能に連結されている。具体的に、把持軸122の両端部には、角柱軸122aが形成され、角柱軸122aは、挟持片111の第2端111Bに形成された角形溝114に係合している。角形溝114の底部には、挟持片111を軸方向に貫通する貫通孔113が形成されている。角柱軸122aの先端には、孔部122bが形成され、孔部122bにネジ142が螺合することで、把持軸122が挟持片111に対して相対回転不能に連結される。
【0042】
これにより、一対の治具本体110の動きを連動させることができる。すなわち、一対の把持軸122を互いに近接させれば、交点Pを中心に一対の治具本体110の挟持片111が閉じ、ホルダー62の両端部63を挟持する挟持状態となる。また、一対の把持軸122を互いに離間させれば、交点Pを中心に一対の治具本体110の挟持片111が開き、ホルダー62の両端部63の挟持状態を解除する非挟持状態となる。
【0043】
着脱用治具100は、一対の把持軸122同士を固定し、上記挟持状態を維持する固定部材130を備える。固定部材130は、
図6に示すように、孔部131と、フック部132と、を備える。孔部131には、一対の把持軸122のいずれか一方が挿入され、フック部132は、一対の把持軸122の他方に係合する。
【0044】
一対の把持軸122の少なくともいずれか一方(本実施形態では両方)の周面には、環状溝122cが形成され、固定部材130は、環状溝122cに係合している。具体的に、固定部材130には、孔部131に連通する一対の貫通孔133が径方向に形成され、貫通孔133に螺合するネジ143の先端が、環状溝122cに挿入されている。これにより、固定部材130は、把持軸122に沿う軸方向の移動が規制されつつ、把持軸122を中心に回動可能となる。
【0045】
一対の治具本体110の挟持片111の第1端111Aは、ホルダー62の両端部63の形状に応じた形状を有している。ホルダー62の一端部63Aを挟持する治具本体110Aの挟持片111は、
図4に示すように、フランジ部65Aの軸方向外側において軸部64Aの周面を挟持する円弧状の第1端111Aを備える。第1端111Aの下端は、軸部64Aを挟持した状態で、軸部64Aの直径以下の寸法で離間している。
【0046】
ホルダー62の他端部63Bを挟持する治具本体110Bの挟持片111は、
図5に示すように、軸部64Bではなくナット部65Bを挟持する円弧状の第1端111Aを備える。ナット部65Bは、ナットフランジ部65B1と、ナットフランジ部65B1の軸方向外側に配置されたナット回し部65B2と、を有する。ナット回し部65B2は、ナットフランジ部65B1よりも小径で、周面が平行に切り欠かれたフラット部65B3を有し、フラット部65B3にレンチやスパナが係合可能とされている。
【0047】
治具本体110Bの挟持片111の第1端111Aには、
図4に示すように、周壁115と、底壁116とが形成されている。
図5に示すように、周壁115は、ナットフランジ部65B1の周面を挟持する。また、底壁116は、ナットフランジ部65B1と軸方向で対向すると共に、その内周面がナット回し部65B2のフラット部65B3以外の周面を挟持する。なお、第1端111Aの下端は、ナット部65Bを挟持した状態で、ナットフランジ部65B1の直径以下且つナット回し部65B2の周面の直径以下の寸法で離間している。
【0048】
続いて、上記構成の着脱用治具100を用いて、回転装置70に洗浄部材60を装着する手順について説明する。
【0049】
図7は、一実施形態に係る回転装置70に洗浄部材60を装着する手順を示す説明図である。なお、
図7に示す回転装置70は、基板Wの下方に配置された回転装置70Bであるが、基板Wの上方に配置された回転装置70Aにおいても、回転装置70Aに対し洗浄部材60を水平方向に挿入する以外は、以下の手順と同様である。
先ず、
図7(a)に示すように、洗浄部材60のホルダー62の両端部63を、着脱用治具100で挟持する。
【0050】
具体的には、
図4に示す固定部材130を回動させてロックを解除し、一対の把持軸122を互いに離間させ、一対の治具本体110の挟持片111を開く。次に、挟持片111の第1端111Aの間に、洗浄部材60のホルダー62の両端部63を配置し、一対の把持軸122を互いに近接させ、一対の治具本体110の挟持片111を閉じる。その後、固定部材130を回動させてフック部132を把持軸122に係合させることで、洗浄部材60の挟持状態を維持する。
【0051】
次に、
図7(b)に示すように、回転装置70Bに対し洗浄部材60を鉛直方向に挿入したら、ホルダー62の一端部63Aを、回転装置70の従動軸71Aに軸方向に押し付ける。このとき、着脱用治具100(洗浄部材60)の角度を調整し、ホルダー62の一端部63Aを、回転装置70の従動軸71Aに係合させる。この押し付けによって、従動軸71Aが軸方向にスプリングバックし、洗浄部材60の他端部63B側に、回転装置70との隙間が形成される。
【0052】
最後に、
図7(c)に示すように、上述した隙間を利用し、洗浄部材60の他端部63Bを、回転装置70の駆動軸71Bに係合させる。このとき、着脱用治具100(洗浄部材60)の角度を調整し、ホルダー62の他端部63Bを、回転装置70の駆動軸71Bに係合させる。
以上のように、回転装置70に洗浄部材60を装着したら、
図4に示す固定部材130を回動させてロックを解除し、一対の把持軸122を互いに離間させ、一対の治具本体110の挟持片111を開き、洗浄部材60から着脱用治具100を離脱させる。これにより、回転装置70に対する洗浄部材60の装着が完了する。
【0053】
このように、上述した本実施形態によれば、基板Wをスクラブ洗浄する本体部61と、本体部61を保持するホルダー62と、を備え、ホルダー62の両端部63が、回転装置70に対し着脱可能とされる洗浄部材60の着脱用治具100であって、本体部61と回転装置70との隙間から露出するホルダー62の両端部63を挟持可能な一対の治具本体110と、一対の治具本体110を連結し、且つ、ホルダー62の両端部63を挟持する挟持状態と、当該挟持状態を解除する非挟持状態との間で、一対の治具本体110の動きを連動させる連結機構120と、を備える、という構成を採用することによって、洗浄部材60の周辺に十分な隙間がなくても、洗浄部材60を直接手で持つことなく、回転装置70に対して洗浄部材60を容易に着脱できる。
【0054】
また、本実施形態では、
図4及び
図5に示すように、一対の治具本体110のぞれぞれは、一つの交点Pで交差し、且つ、当該交点Pを中心に開閉可能な挟持片111を備え、連結機構120は、挟持片111の交点Pにおいて、一対の治具本体110同士を連結する連結軸121と、挟持片111がホルダー62を挟持する第1端111Aに対して交点Pを挟んだ反対側の第2端111Bにおいて、一対の治具本体110同士を連結する一対の把持軸122と、を備えているので、洗浄部材60と回転装置70との隙間に手が入らない場合であっても、当該隙間の外側から一対の把持軸122を操作し、それぞれの挟持片111を開閉できる。
【0055】
また、本実施形態では、一対の把持軸122同士を固定し、挟持状態を維持する固定部材130を備える。この構成によれば、一対の治具本体110の挟持状態を維持できるため、例えば、上述した回転装置70に対し洗浄部材60を装着する際に着脱用治具100(洗浄部材60)の角度を調整する作業が容易になる。
【0056】
また、本実施形態では、
図6に示すように、一対の把持軸122の少なくともいずれか一方の周面には、環状溝122cが形成され、固定部材130は、環状溝122cに係合している。この構成によれば、固定部材130の把持軸122に沿う軸方向の移動が規制されるので、着脱用治具100を傾けた際などに固定部材130が移動したりせず、洗浄部材60の着脱の作業性が向上する。
【0057】
また、本実施形態では、連結軸121は、挟持片111に対して相対回転可能に連結され、一対の把持軸122のそれぞれは、挟持片111に対して相対回転不能に連結されている。この構成によれば、連結軸121によって挟持片111を開閉可能に連結させつつも、一対の把持軸122が挟持片111に対して回転しなくなるので、着脱用治具100のハンドリング性能が向上する。
【0058】
以上、本発明の好ましい実施形態を記載し説明してきたが、これらは本発明の例示的なものであり、限定するものとして考慮されるべきではないことを理解すべきである。追加、省略、置換、およびその他の変更は、本発明の範囲から逸脱することなく行うことができる。従って、本発明は、前述の説明によって限定されていると見なされるべきではなく、特許請求の範囲によって制限されている。
【0059】
例えば、以下の
図8に示すような構成を採用してもよい。
【0060】
図8は、一実施形態の変形例に係る洗浄部材60の着脱用治具100の正面図である。
図8に示す着脱用治具100は、一対の治具本体110の間隔を調整する間隔調整機構150を備える。間隔調整機構150は、連結機構120の連結軸121及び一対の把持軸122の双方を、軸方向に伸縮させるテレスコピック構造を採用している。
【0061】
連結軸121及び一対の把持軸122のそれぞれは、軸方向において2本の軸に分割され、一方の軸に孔部151が形成され、他方の軸にロッド152が形成され、孔部151及びロッド152が互いに軸方向にスライド可能に係合している。孔部151には、径方向外側から止めネジ153が挿入され、止めネジ153を介してロッド152を締めることによって、軸の長さ、つまり一対の治具本体110の間隔を調整できる。この構成によれば、長さの異なる洗浄部材60の着脱に対しても、連結軸121及び一対の把持軸122を長いものに取り換えることなく、この着脱用治具100を使用できる。
【符号の説明】
【0062】
1 基板処理装置
31 基板洗浄装置
60 洗浄部材
61 本体部
62 ホルダー
63 両端部
70 回転装置
100 着脱用治具
110 治具本体
111 挟持片
111A 第1端
111B 第2端
120 連結機構
121 連結軸
122 把持軸
122c 環状溝
130 固定部材
150 間隔調整機構
P 交点