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特許7165529フランジ締結構造及びこれを用いた気相成長装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】フランジ締結構造及びこれを用いた気相成長装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/205 20060101AFI20221027BHJP
   C23C 16/44 20060101ALI20221027BHJP
   C23C 16/448 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
H01L21/205
C23C16/44 Z
C23C16/448
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018141207
(22)【出願日】2018-07-27
(65)【公開番号】P2020017694
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(73)【特許権者】
【識別番号】509054005
【氏名又は名称】大陽日酸CSE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】山口 晃
(72)【発明者】
【氏名】椎名 一成
(72)【発明者】
【氏名】島村 隼人
【審査官】長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-003700(JP,A)
【文献】実公昭48-015846(JP,Y1)
【文献】特開2010-150111(JP,A)
【文献】特開2015-209355(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0292088(US,A1)
【文献】特開2008-082441(JP,A)
【文献】特開平06-115918(JP,A)
【文献】特開2005-233210(JP,A)
【文献】特表2002-541332(JP,A)
【文献】特表2008-515175(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
C23C 16/44
C23C 16/448
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱した基板の表面に薄膜を形成する気相成長装置であって、反応炉に設けられ、前記基板に気相原料ガスを供給するフローチャンネルと、該フローチャンネルの上流側に、ボルトとナットとの締め付けによりフランジ締結された原料発生部とを備え、前記フローチャンネルと前記原料発生部とは、互いのフランジ同士の間に前記フランジよりも熱膨張率が大きい材料からなるバッファ材を挟持させた状態で、前記バッファ材よりも熱膨張率が小さく、かつ、前記フランジよりも熱膨張率が大きい材料からなるボルトを使用してフランジ締結され、
前記ボルトとナットとが締め付けられた状態で、前記ボルトの頭部及び前記ナットに係合可能な一対の係合部をコ字状のブラケットの両側部に有した締め付け保持具が着脱可能に設けられていることを特徴とする気相成長装置。
【請求項2】
前記フローチャンネル及び前記原料発生部は、石英ガラスからなることを特徴とする請
求項記載の気相成長装置。
【請求項3】
前記バッファ材は、アルミナ又はジルコニアからなることを特徴とする請求項1又は2記載の気相成長装置。
【請求項4】
前記ボルトは、窒化ケイ素からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記
載の気相成長装置。
【請求項5】
前記フローチャンネルは、前記気相原料ガスが流通可能な複数の流路を有し、該複数の
流路のうち、少なくとも一つの流路に前記原料発生部が接続されていることを特徴とする
請求項1乃至4のいずれか1項記載の気相成長装置。
【請求項6】
前記ボルトの実効長さと前記バッファ材の厚さとの比率を、3:1~4:1に設定する
ことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項記載の気相成長装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フランジ締結構造及びこれを用いた気相成長装置に関し、詳しくは、温度変化が大きい場合におけるフランジ締結構造及びこれを用いた気相成長装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種化合物半導体の薄膜を製造するための装置として、気相成長装置が知られている。気相成長装置としては、反応炉内に設けたサセプタ上に基板を載置し、該基板をサセプタを介して高温に加熱するとともに、塩化ガリウムやアンモニアなどの原料ガスを反応炉の上流部に設けたフローチャンネル(反応管)を通じて導入し、基板の上方で原料ガスを反応させて基板上に薄膜を形成するものが一般的に用いられている。また、原料ガスのうち、塩化ガリウムは、その性質上、原料として保存した場合の純度低下が懸念されることから、反応炉上流に設けた原料発生部で液化ガリウムに塩化水素ガスを接触させ、反応により塩化ガリウムを発生させている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-189429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、フローチャンネル及び原料発生部はどちらも構造が複雑であり、気密性も求められることから、気相成長装置の組立などに関する製作上の課題がある。その上、フローチャンネルの下流部は、反応生成物が付着したり、発生した塩化水素と反応して劣化したりするため、洗浄や交換などといったメンテナンスにかかる費用も高価になる。
【0005】
そこで本発明は、簡単な構造で流路の接続部における気密性の低下を防止できるフランジ締結構造及びこれを用いた気相成長装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
また、本発明の気相成長装置は、加熱した基板の表面に薄膜を形成する気相成長装置であって、反応炉に設けられ、前記基板に気相原料ガスを供給するフローチャンネルと、該フローチャンネルの上流側に、ボルトとナットとの締め付けによりフランジ締結された原料発生部とを備え、前記フローチャンネルと前記原料発生部とは、互いのフランジ同士の間に前記フランジよりも熱膨張率が大きい材料からなるバッファ材を挟持させた状態で、前記バッファ材よりも熱膨張率が小さく、かつ、前記フランジよりも熱膨張率が大きい材料からなるボルトを使用してフランジ締結され、前記ボルトの頭部及び前記ナットに係合可能な一対の係合部をコ字状のブラケットの両側部に有した締め付け保持具が着脱可能に設けられていることを特徴としている。
【0008】
さらに、前記フローチャンネル及び前記原料発生部は、石英ガラスからなり、前記バッ
ファ材は、アルミナ又はジルコニアからなり、前記ボルトは、窒化ケイ素からなることを
特徴としている。また、前記フローチャンネルは、前記気相原料ガスが流通可能な複数の
流路を有し、該複数の流路のうち、少なくとも一つの流路に前記原料発生部が接続されて
いることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、フランジ締結構造が、フランジ同士の間にフランジよりも熱膨張率が大きい材料からなるバッファ材を挟持させ、このバッファ材よりも熱膨張率が小さく、かつ、フランジよりも熱膨張率が大きい材料からなるボルトを使用してフランジ締結するので、簡単な構造でボルトの熱膨張量をバッファ材と両フランジとを併せた熱膨張量に等しく設定することができる。これにより、フランジ同士の間の気密性の低下を防止しつつ、気相成長装置におけるフローチャンネルの着脱の容易化を図ることができ、しいては気相成長装置の製作性やメンテナンス性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明のフランジ締結構造を採用した気相成長装置の一形態例を示す要部の断面図である。
図2】同じく要部の拡大断面図である。
図3図2のIII-III断面図である。
図4図2のIV-IV断面図である。
図5】同じく締め付け保持具を装着した状態を示す図である。
図6図5のVI-VI断面図である。
図7】締め付け保持具の変形例を示す図である。
図8図7のVIII-VIII断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1乃至図4は、本発明の気相成長装置の一形態例を示すものである。気相成長装置11は、図1に示すように、反応炉12を構成する筒状部材13の一端側(図1において左側)に原料ガスを供給するガス供給部14が設けられ、他端側(図1において右側)に基板15を載置するサセプタ16が設けられている。また、反応炉12には、原料ガスを基板15に供給する筒状のフローチャンネル17と、該フローチャンネル17の上流側にフランジ部18を介して接続した原料発生部19とが設けられている。フローチャンネル17や原料発生部19などの各部材は、主に耐熱性及び耐腐食性を有する材料、例えば石英ガラスで形成されている。
【0012】
ガス供給部14は、板状の接続部材14aに支持された第1の気相原料ガス供給管20と、第2の気相原料ガス供給管21と、パージガス供給管22とを有している。第1の気相原料ガス供給管20及びパージガス供給管22は、フランジ部18まで延在し、第2の気相原料ガス供給管21は、原料発生部19まで延在している。薄膜として窒化ガリウム膜を形成する場合、第1の気相原料ガス供給管20からは水素化物を含むアンモニアガス(NH)、第2の気相原料ガス供給管21からは塩素系ガスである塩化水素ガス(HCl)、パージガス供給管22からはパージガスとして、例えば、窒素、水素、アルゴンなどをそれぞれ供給する。
【0013】
原料発生部19は、容器19a内の原料と第2の気相原料ガス供給管21から供給された塩素系ガスとが反応することにより塩化物を生成する。例えば、窒化ガリウム膜を形成する場合には、原料としてガリウムが用いられる。原料発生部19で生成された塩化物は、ヒータなどの加熱手段23で炉内が加熱されることにより気体で維持され、塩化物供給管24を通じてフローチャンネル17に供給される。また、フローチャンネル17には第1の気相原料ガス供給管20を通じて気相原料ガスが、パージガス供給管22を通じてパージガスがそれぞれ供給される。これにより、気相原料ガス及び気体状の塩化物は、発熱手段(図示せず)で所定の温度、例えば、1100℃の温度まで加熱されて分解反応し、基板15の表面15aに窒化ガリウムの薄膜が形成される。また、基板15の表面15aを通過したガスは、反応炉12の下流側に設けられた排気口(図示せず)から排出される。
【0014】
フランジ部18は、図2乃至図4に示すように、第1の気相原料ガス供給管20、パージガス供給管22及び塩化物供給管24の各ノズル20a,22a,24aをフローチャンネル17に設けた流路17a,17b,17cにそれぞれ挿入して位置させ、互いに備えたフランジ25,26同士をバッファ材27を介して付き合わせた状態で、複数のボルト28とナット29との締め付けにより固定するフランジ締結構造である。
【0015】
また、フランジ部18を構成する各部材は、それぞれ異なった材料からなり、熱膨張率としては、「各フランジ25,26<ボルト28及びナット29<バッファ材27」となるように構成されている。具体的には、各フランジ25,26は、熱膨張率が5.5×10-7/℃の石英ガラスからなり、ボルト28及びナット29は、熱膨張率が2.6×10-6/℃の窒化ケイ素からなり、バッファ材27は、熱膨張率が7.2×10-6/℃のアルミナからなる。
【0016】
このような熱膨張率の下に、熱膨張量=熱膨張率×長さ×温度差なる関係式から、各部材の長さ(厚さ)を相対的に増減させて、温度変化が生じたときのボルト28の軸方向の伸び量と、各フランジ25,26及びバッファ材27の厚さの増加量の合計とがほぼ等しくなるように調整されている。具体的には、石英ガラスの熱膨張率は極端に小さいので無視すると、ボルト28の実効長さとバッファ材27の厚さとの比率は熱膨張率を相殺するように3:1と設定する。これは、例えば、各フランジ25,26及びバッファ材27の厚さを全て同じ厚さに設定することで実現される。これにより、バッファ材27にかかる面圧はほとんど変化せず、フランジ25,26同士の間の気密性が維持される。また、バッファ材27の材料には、熱膨張率が10.7×10-6/℃のジルコニアを採用することもできる。この場合、ボルト28の実効長さとバッファ材27の厚さとの比率は熱膨張率を相殺するように4:1と設定する。これは、例えば、各フランジ25,26の1枚の厚さとバッファ材27の厚さとの比率を1.5:1に設定することで実現される。
【0017】
ここで、温度変化や振動などに起因してボルト28が緩むことを防止するために、フランジ部18には、図5及び図6に示すように、ボルト28とナット29とを締め付けた状態で保持する締め付け保持具30が着脱可能に設けられている。締め付け保持具30は、耐腐食性のあるセラミックなどで形成され、略コ字状のブラケット30aの両側部にボルト28の頭部側面及びナット29の側面がそれぞれ係合可能な一対の係合部30b,30bを有している。この係合部30bは、一般的なスパナと同様にボルト28の頭部側面及びナット29の側面の二面幅に対応した寸法に設定されている。これにより、両フランジ25,26の縁部をブラケット30aで挟持するとともに、係合部30b,30bにボルト28の頭部及びナット29をそれぞれ係合すると、ボルト28とナット29との相対的な回転が規制されて締め付け状態が保持される。
【0018】
図7及び図8は、締め付け保持具の変形例を示している。本形態例に示す締め付け保持具31は、隣り合うナット29,29の側面にそれぞれ係合可能な一対の係合部31a,31aを有したナット側ブラケット31bと、このナット側ブラケット31bと同一形状からなり、隣り合うボルト28,28の頭部側面にそれぞれ係合可能な一対の係合部31c,31cを有したボルト側ブラケット31dとで構成されている。これにより、両ブラケット31b,31dの係合部31a,31cにボルト28の頭部及びナット29をそれぞれ係合すると、隣り合うボルト28,28同士及びナット29,29同士の回転が規制されて締め付け状態が保持される。
【0019】
このように、フランジ締結構造が、低熱膨張率の材料である石英ガラスからなるフランジ25,26同士の間にフランジ25,26よりも熱膨張率が大きい材料であるアルミナ又はジルコニアからなるバッファ材27を挟持させ、このバッファ材27よりも熱膨張率が小さく、かつ、フランジ25,26よりも熱膨張率が大きい材料である窒化ケイ素からなるボルト28を使用してフランジ締結するので、簡単な構造でボルト28の熱膨張量をバッファ材27と両フランジ25,26とを併せた熱膨張量に等しく設定することができる。これにより、フランジ25,26同士の間の気密性の低下を防止しつつ、気相成長装置11におけるフローチャンネル17の着脱の容易化を図ることができ、しいては気相成長装置11の製作性やメンテナンス性の向上を図ることができる。
【0020】
また、フローチャンネル17を構成する複数の流路17a,17b,17cのうちの一つである流路17cに塩化物供給管24を介して原料発生部19が接続されているので、原料発生部19で生成された気体状の塩化物を基板15に安定して届けることが可能となり、高品質で再現性も良好な薄膜を得ることができる。さらに、フランジ部18において、ボルト28の頭部あるいはナット29に係合可能な一対の係合部30b,31a,31cを有した締め付け保持具30,31が着脱可能に設けられているので、使用時の温度、例えば400℃以上の温度と、停止時の温度(常温)との間で昇温や降温を繰り返しても容易にボルト28が緩むことはなく、温度変化によらず良好な気密性を得ることができる。
【0021】
なお、本発明のフランジ締結構造は、気相成長装置に限定して適用されるものでなく、高温下や低温下で使用されるフランジ締結部を備えた他の装置にも適用できる。また、流体管の継手部以外の部位にも適用できる。さらに、締結用のボルト及びその締結部材は、熱膨張量差を均衡化できる材料であれば適宜に変更することができる。加えて、気相成長装置における炉内の構造や、各種の供給管、フローチャンネルの形状なども任意である。
【符号の説明】
【0022】
11…気相成長装置、12…反応炉、13…筒状部材、14…ガス供給部、14a…接続部材、15…基板、15a…表面、16…サセプタ、17…フローチャンネル、17a,17b,17c…流路、18…フランジ部、19…原料発生部、19a…容器、20…第1の気相原料ガス供給管、20a…ノズル、21…第2の気相原料ガス供給管、22…パージガス供給管、22a…ノズル、23…加熱手段、24…塩化物供給管、24a…ノズル、25,26…フランジ、27…バッファ材、28…ボルト、29…ナット、30…締め付け保持具、30a…ブラケット、30b…係合部、31…締め付け保持具、31a…係合部、31b…ナット側ブラケット、31c…係合部、31d…ボルト側ブラケット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8