(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】基板処理装置及び炉口閉塞ユニット及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/31 20060101AFI20221027BHJP
C23C 16/44 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
H01L21/31 B
C23C16/44 G
(21)【出願番号】P 2021502064
(86)(22)【出願日】2020-02-19
(86)【国際出願番号】 JP2020006416
(87)【国際公開番号】W WO2020171101
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2021-06-01
(31)【優先権主張番号】P 2019028224
(32)【優先日】2019-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】100083563
【氏名又は名称】三好 祥二
(72)【発明者】
【氏名】野上 孝志
(72)【発明者】
【氏名】山島 規裕
【審査官】長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-009008(JP,A)
【文献】特開平09-237782(JP,A)
【文献】特開平04-132216(JP,A)
【文献】特開2008-078428(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
C23C 16/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する反応室と、前記反応室の炉口部を閉塞する蓋体と、前記蓋体の下方に取付けられるベースと、前記蓋体と前記ベースをそれぞれ連結する様に設けられる連結部材と、を具備する基板処理装置に於いて、前記連結部材は、前記蓋体に取付けられた軸部と、該軸部を囲う様に設けられ前記蓋体を保持する弾性部材と、該弾性部材を囲う様に設けられ前記ベースに取付けられるキャップと、該キャップの下方に取付けられる固定ブロックと、該固定ブロックと前記軸部の間に設けられ
、弾性材料で構成される保持部材で保持され
、リニアブッシュ及びボールスプラインのうち少なくとも一方を設ける様に構成された移動ブロックと、を有する様に構成された基板処理装置。
【請求項2】
更に、前記蓋体と平行に保持されるキャップ受けと、基板が保持される基板保持具を有し、前記キャップ受け上に前記基板保持具を保持することが可能に構成される請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記弾性部材は前記キャップで保持され、前記弾性部材は前記蓋体を上方に付勢することが可能に構成される請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記移動ブロックは、前記軸部の直動を可能に構成される請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記移動ブロックは、前記ベースと前記蓋体との位置決めを行うことが可能に構成される
請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記保持部材と前記移動ブロックとが
前記固定ブロックの内部に設けられ、該固定ブロックが前記キャップに固定される様構成される請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記保持部材はゴム又はOリングで構成されている
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記蓋体が前記弾性部材により、前記反応室の下端に当接し、前記反応室の気密性が維持される様に構成される請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項9】
更に、前記基板が保持される基板保持具を有し、前記連結部材が、前記蓋体と前記ベースをそれぞれ連結することにより、前記基板保持具を前記反応室に対して平行に保持可能に構成された請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記蓋体と前記ベースの熱膨張の差に伴う前記連結部材の変位が前記保持部材により吸収される様に構成されている
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記ベースの傾斜に伴う前記軸部や前記移動ブロックの傾斜が前記保持部材により吸収される様に構成されている
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記連結部材が、前記蓋体と前記ベースをそれぞれ連結することにより、前記基板保持具を前記反応室から引出し可能に構成された
請求項9に記載の基板処理装置。
【請求項13】
更に、前記基板保持具を回転させるボート回転ユニットを有し、前記連結部材が、前記蓋体と前記ベースをそれぞれ連結することにより、前記キャップ受け上の前記基板保持具を回転可能に構成される請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項14】
基板を処理する反応室の炉口部を閉塞する蓋体と、前記蓋体の下方に取付けられるベースと、をそれぞれ連結する様に設けられる炉口閉塞ユニットであって、前記蓋体に取付けられた軸部と、該軸部を囲う様に設けられ前記蓋体を保持する弾性部材と、該弾性部材を囲う様に設けられ前記ベースに取付けられるキャップと、該キャップの下方に取付けられる固定ブロックと、該固定ブロックと前記軸部の間に設けられ
、弾性材料で構成される保持部材で保持され
、リニアブッシュ及びボールスプラインのうち少なくとも一方を設ける様に構成された移動ブロックと、を有する様に構成された炉口閉塞ユニット。
【請求項15】
基板を処理する反応室の炉口部を閉塞する蓋体と、前記蓋体と該蓋体の下方に取付けられるベースをそれぞれ連結する様に設けられ、前記蓋体に取付けられた軸部と、該軸部を囲う様に設けられ前記蓋体を保持する弾性部材と、該弾性部材を囲う様に設けられ前記ベースに取付けられるキャップと、該キャップの下方に取付けられる固定ブロックと、該固定ブロックと前記軸部の間に設けられ
、弾性材料で構成される保持部材で保持され
、リニアブッシュ及びボールスプラインのうち少なくとも一方を設ける様に構成された移動ブロックと、を有する様に構成された
炉口閉塞ユニットにより、前記反応室を閉塞に保持しつつ前記反応室に配置された前記基板を処理する工程を有する半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体ウェーハ等の基板を処理する基板処理装置、及び炉口閉塞ユニット、及び半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程に於ける基板処理を行う基板処理装置として、縦型基板処理装置がある。従来の縦型基板処理装置では、基板保持具等の重量や、反応室を気密に閉塞する際の移動機構の推力等により、移動機構に設けられるアームが撓む虞れがある。従来、アームに撓みが生じ、反応室の開口部とアーム及びベースの平行度が崩れた場合であっても、反応室内部の気密性が維持できる機構を有している。
【0003】
例えば、特許文献1には、ベース上に配置した複数の弾性部材により蓋体を保持することで、反応室の開口部とアーム及びベースの平行度が崩れた場合であっても、反応室内部の気密性を維持する構成が開示されている。
【0004】
然し乍ら、従来の位置決め機構は、蓋体の中央部に設けた円柱に対してベースを上下に摺動させる構成であり、熱膨張による位置変化には対応しきれていないことがある。これにより、閉塞動作に於ける摺動時は部材同士が擦れてパーティクルが発生する虞れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、炉口部を閉塞する際に蓋体を正確に位置決めできると共に、位置決め機構からのパーティクルの発生を抑制する構成を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、基板を処理する反応室と、前記反応室の炉口部を閉塞する蓋体と、前記蓋体の下方に取付けられるベースと、前記蓋体と前記ベースをそれぞれ連結する様に設けられる連結部材と、を具備する基板処理装置に於いて、前記連結部材は、前記蓋体に取付けられた軸部と、該軸部を囲う様に設けられ前記蓋体を保持する弾性部材と、該弾性部材を囲う様に設けられ前記ベースに取付けられるキャップと、該キャップの下方に取付けられる固定ブロックと、該固定ブロックと前記軸部の間に設けられる保持部材で保持された移動ブロックと、を有する構成に係るものである。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、炉口部を閉塞する際に蓋体との位置決めを行うことができ、位置決め機構からのパーティクルの発生を抑制することができるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施例に係る基板処理装置の斜視図である。
【
図2】本開示の実施例に係る基板処理装置の処理炉の縦断面図である。
【
図3】本開示の実施例に係る基板処理装置の炉口部を示す要部拡大図である。
【
図4】(A)は本開示の実施例に係る基板処理装置の炉口部で適用される連結部材を示す断面図であり、(B)は本開示の実施例に係る基板処理装置の炉口部で適用される連結部材の位置決め機構を示す断面図である。
【
図5】(A)は本開示の実施例に係る基板処理装置の炉口部で適用される連結部材の他の例を示す断面図であり、(B)は本開示の実施例に係る基板処理装置の炉口部で適用される連結部材の他の例の位置決め機構を示す断面図である。
【
図6】本開示の実施例に係る基板処理装置に於ける制御系を示すブロック図である。
【
図7】本開示の実施例に係る基板処理装置の炉口部で適用される連結部材のベースに対する蓋体の変位を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面を参照しつつ本開示の実施例を説明する。
図1~
図3は、基板処理装置の一例として、縦型の基板処理装置を示している。尚、該基板処理装置に於いて処理される基板は、一例としてシリコン等からなるウェーハ17が示されている。
【0011】
基板処理装置1は、筐体2を備え、該筐体2の正面壁3の下部にはメンテナンス可能な様に設けられた開口部としての正面メンテナンス口4が介設されている。該正面メンテナンス口4は正面メンテナンス扉5によって開閉される。
【0012】
筐体2の正面壁3にはポッド搬入搬出口6が筐体2の内外を連通する様に介設されている。ポッド搬入搬出口6はフロントシャッタ(図示せず)によって開閉され、ポッド搬入搬出口6の正面前方側にはロードポート7が設置されており、該ロードポート7は設置されたポッド8の位置合せをする様に構成されている。
【0013】
該ポッド8は密閉式の基板収容器であり、図示しない工程内搬送装置によってロードポート7上に搬入され、又、該ロードポート7上から搬出される様になっている。
【0014】
筐体2内の前後方向の略中央部には、ポッド棚9が設置されており、該ポッド棚9は複数段複数列にて複数個のポッド8を保管する様に構成されている。ポッド棚9には、後述するウェーハ搬送機構(以下、移載機ともいう)11の搬送対象となるポッド8が収納される移載棚12が設けられている。又、ロードポート7の上方には予備ポッド棚13が設けられ、予備的にポッド8を保管する様に構成されている。
【0015】
ロードポート7とポッド棚9との間には、ポッド搬送装置14が設置されている。ポッド搬送装置14は、ポッド8を保持したままCZ軸方向に昇降可能なポッドエレベータ15と、CX軸方向とCS軸方向の進退及び回転が可能なポッド搬送機構16とで構成されている。ポッド搬送装置14は、ポッドエレベータ15とポッド搬送機構16との協働により、ロードポート7、ポッド棚9、予備ポッド棚13との間でポッド8を搬送する様に構成されている。
【0016】
ポッド棚9の後方には、移載機11が設置されている。該移載機11は、ウェーハ17を水平方向に回転乃至直動可能なウェーハ搬送装置18、及びウェーハ搬送装置18を昇降させる為のウェーハ搬送装置エレベータ19とで構成されている。
【0017】
ウェーハ搬送装置18は、ウェーハ17を載置する所要枚数(図示では3枚)のウェーハ載置プレート(基板支持部)21を具備している。ウェーハ搬送装置18とウェーハ搬送装置エレベータ19との協働により、移載機11はボート(基板保持具)22に対してウェーハ17を装填及び払出しする様に構成されている。尚、移載機11の近傍には、ウェーハ17の円周方向の位置を整合させる基板整合装置としてのノッチ合せ装置(図示せず)が設置されている。
【0018】
筐体2の後側領域には、ボート22を収容して待機させる待機部23が構成され、待機部23の上方には縦型の処理炉24が設けられている。処理炉24はウェーハ17を処理する反応管25と、反応管25の下端に設けられた例えばステンレス製のインレットフランジ26とから構成され、処理炉24の内部に反応室27が画成される。インレットフランジ26は円筒形状であり、周面には反応室27内に各種処理ガスを供給する為の供給口28と、反応室27内を排気する為の排気口29が形成されている。又、インレットフランジ26上端と下端にそれぞれ上部フランジ31と下部フランジ32とが形成され、下部フランジ32の下端部は開口部(炉口部)となっている。
【0019】
該炉口部は炉口シャッタ(蓋開閉機構)33により開閉される様になっている。炉口シャッタ33は蓋部34を有し、蓋部34を待機位置と炉口位置との間で移動させることで、炉口部の開閉動作を行う。待機位置では、蓋部34はボート22等の他の部品と接触しない位置に退避し、炉口位置では、蓋部34は炉口部を気密に閉塞する様に構成されている。
【0020】
待機部23には、ボート22を反応室27に昇降させるボートエレベータ35が設置されている。
図3に示される様に、ボートエレベータ35の昇降台に連結された炉側アーム36上には、ベース37が水平に取付けられている。該ベース37には、中央部に円状に切欠かれた孔部37aが形成されている。尚、ボートエレベータ35と炉側アーム36とベース37とでボート22を反応室27に挿入、引出しする為の移動機構が構成される。
【0021】
ベース37上には蓋体としてのシールキャップ38が水平に取付けられている。シールキャップ38の下面には、下方に向って延出する円柱状の円柱部38aが形成されている。該円柱部38aの外径は、孔部37aの内径よりも小さくなっており、円柱部38aは所定の間隔を空けて同心に孔部37aに挿通されている。尚、円柱部38aと孔部37aとの間隔は、シールキャップ38がベース37に対して傾斜した際に、円柱部38aがベース37に接触しない程度の大きさとなっている。
【0022】
又、シールキャップ38上にはOリング39が設けられ、Oリング39を介して反応室27を気密に閉塞可能となっている。ベース37とシールキャップ38とは、後述する円周方向に所定間隔で設けられた複数の炉口閉塞ユニット(以後、連結部材ともいう)41(
図3中では1つのみ図示)を介して連結されている。
【0023】
シールキャップ38には、シールキャップ38に対して垂直な連結棒42が設けられている。連結棒42の上端にはキャップ受け43が被せられており、該キャップ受け43はボート22をシールキャップ38に対して平行に保持する。尚、本実施例では、連結棒42にキャップ受け43を設けているが、回転ユニットの回転軸にキャップ受け43を設け、ボート22とキャップ受け43とが一体に回転する様にしてもよい。
【0024】
ボート22は、複数枚(例えば50枚~175枚程度)のウェーハ17をその中心を揃えて水平姿勢で多段に保持する様に構成されている。
【0025】
ボートエレベータ35と対向した位置にはクリーンユニット44が配設されている。該クリーンユニット44は、清浄化した雰囲気若しくは不活性ガスであるクリーンエアを供給する様供給ファン及び防塵フィルタで構成されている。
【0026】
クリーンユニット44から吹出されたクリーンエアは、移載機11、ボート22等に流通された後に、ポッド棚9の上方に配設されたダクト45により吸込まれて、筐体2の外部に排気がなされるか、若しくはクリーンユニット44によって再び筐体2内に吹出される様に構成されている。
【0027】
次に、
図4(A)、
図4(B)に於いて、本開示の実施例に係る連結部材41の詳細について説明する。
【0028】
連結部材41は、閉塞維持機構46と、位置決め機構47とから構成されている。閉塞維持機構46は、円筒状のキャップとしてのスプリングキャップ48と、該スプリングキャップ48内を貫通する軸部としてのリニアシャフト49と、スプリングキャップ48内に嵌装され、リニアシャフト49を囲繞する弾性部材、例えばスプリング51とを有している。
【0029】
スプリングキャップ48の上端は開放され、スプリングキャップ48の下端には中心に向って延出するフランジ部が形成されている。即ち、スプリングキャップ48の下端には、スプリング51の径よりも小さく、リニアシャフト49の小径部49aの径よりも大きい孔が形成される。又、ベース37には、リニアシャフト49及びスプリング51が挿通可能な孔が形成され、スプリングキャップ48は下方から孔の縁部に固着されている。
【0030】
リニアシャフト49は、上端部に形成された大径部49bと、該大径部49bの下面より下方に延出する小径部49aと、大径部49bの上面より上方に突出する螺子部49cとを有しており、該螺子部49cを介してリニアシャフト49をシールキャップ38の下面に固着できる様になっている。
【0031】
スプリングキャップ48をベース37に固着し、リニアシャフト49をシールキャップ38に固着した際には、スプリング51はスプリングキャップ48下端のフランジ部とシールキャップ38の下面とに当接し、ベース37に対してシールキャップ38を上方に付勢する様になっている。スプリング51の付勢力により、シールキャップ38はベース37との間に所定の間隔を空けて保持される。
【0032】
又、位置決め機構47は、リニアシャフト49を軸心方向に摺動自在に保持する円筒状の移動ブロック52と、該移動ブロック52を保持する保持部材53と、該保持部材53を保持すると共に、孔54を介してスプリングキャップ48に螺子止される固定ブロックとしての固定ハウジング55とを具備している。
【0033】
移動ブロック52は、ボールや滑りを利用し、リニアシャフト49(小径部49a)の精密な直動を可能にする構成となっている。又、移動ブロック52には、例えばリニアブッシュ、或はボールスプラインが設けられる。一方で、リニアシャフト49の半径方向の位置ズレは、5μm~10μm程度しか許容できない構成となっている。尚、移動ブロック52の内径は、リニアシャフト49の大径部49bよりも小さくなっている。
【0034】
保持部材53は、例えば円筒状に形成されたゴム等の弾性材料で移動ブロック52を保持する構造となっている。又、固定ハウジング55は、内部に保持部材53及び移動ブロック52を設けると共に、上端に外周側に向って延出する外フランジ55aが形成され、下端に中心側に向って延出する内フランジ55bが形成されている。外フランジ55aの所定箇所、例えば4箇所に孔54が穿設され、孔54を介してスプリングキャップ48に対する固定ハウジング55の螺子止めが可能となっている。内フランジ55bの内径は、保持部材53の外径よりも小さく、リニアシャフト49の小径部49aの外径よりも大きくなっている。
【0035】
位置決め機構47を閉塞維持機構46に取付け、閉塞維持機構46をベース37及びシールキャップ38に取付けた際には、孔部37aと円柱部38aとが同心となる様ベース37に対してシールキャップ38が位置決めされる。又、移動ブロック52によりリニアシャフト49の半径方向の変位、即ちベース37に対するシールキャップ38の周方向の動きが規制される。
【0036】
シールキャップ38が垂直方向、即ちリニアシャフト49の軸心方向に変位した場合には、スプリング51を撓ませつつ、移動ブロック52を介してリニアシャフト49が摺動する。
【0037】
又、シールキャップ38が周方向、即ちリニアシャフト49の半径方向に変位した場合でも、移動ブロック52が保持部材53に保持されているので、リニアシャフト49の変位に伴う移動ブロック52の変位が保持部材53の弾性力で変位が吸収される。これにより、本実施例に於ける連結部材41は、リニアシャフト49が半径方向に数mm程度変位することを許容することができる。
【0038】
尚、保持部材53は、弾性力を有する弾性部材であり、移動ブロック52の変位を吸収できるフレキシブル性を有する部材であれば他の部材でもよい。例えば、
図5(A)、
図5(B)に示される様に、保持部材53として、Oリングを用いてもよい。
【0039】
Oリングを用いた場合も、Oリングの弾性変形により移動ブロック52の変位を吸収できるので、リニアシャフト49の半径方向の変位を数mm程度迄許容することができる。
【0040】
尚、
図5(A)、
図5(B)中では、Oリングにより移動ブロック52を上下2箇所で保持しているが、3箇所以上で保持してもよいのは言う迄もない。
【0041】
次に、基板処理装置1の作動について説明する。
【0042】
ポッド搬入搬出口6がフロントシャッタ(図示せず)によって開放されると、ポッド8が筐体2の内部へポッド搬入搬出口6を通して搬入され、ロードポート7上に供給される。ロードポート7上にポッド8が供給されると、ポッド搬入搬出口6がフロントシャッタにより閉塞される。
【0043】
ロードポート7上のポッド8は、ポッド搬送装置14によってポッド棚9又は予備ポッド棚13の指定された棚位置へ載置される。ポッド8は、ポッド棚9又は予備ポッド棚13で一時的に保管された後、ポッド搬送装置14によって移載棚12に移載されるか、若しくはロードポート7から直接移載棚12に移載される。この時、筐体2内にはクリーンエアが流通され、充満している。
【0044】
ポッド8が移載棚12に移載されると、ウェーハ17はポッド8からウェーハ搬送機構11によって取出され、ノッチ合せ装置(図示せず)に移送される。ノッチ合せ装置にてウェーハ17の位置を整合した後、ウェーハ搬送機構11はウェーハ17を待機部23へと搬入し、ボート22に装填(チャージング)する。
【0045】
ボート22にウェーハ17を受け渡したウェーハ搬送機構11は、ポッド8に戻り、次のウェーハ17をボート22に装填する。
【0046】
予め指定された枚数のウェーハ17がボート22に装填されると、炉口シャッタ33を待機位置へと移動させ、炉口シャッタ33により閉じられていた処理炉24の炉口部を開放する。続いて、ボート22はボートエレベータ35によって上昇され、反応室27に装入(ローディング)される。
【0047】
ローディング後は、シールキャップ38よって炉口部が気密に閉塞され、ウェーハ17に対して所定の基板処理が実行される。
【0048】
反応室27が所望の圧力(真空度)となる様に、排気口29を介してガス排気機構(図示せず)によって真空排気される。又、反応室27が所望の温度分布となる様に加熱部(ヒータ)56によって所定温度迄加熱される。
【0049】
ガス供給機構(図示せず)により、所定の流量に制御された処理ガスが供給口28を介して供給され、処理ガスが反応室27を流通する過程で、ウェーハ17の表面と接触し、この際に熱CVD反応によってウェーハ17の表面上に薄膜が成膜される。更に、反応後の処理ガスは、ガス排気機構により反応室27から排気される。
【0050】
予め設定された処理時間が経過すると、ガス供給機構により不活性ガス供給源(図示せず)から不活性ガスが供給され、反応室27内の雰囲気が不活性ガスに置換されると共に、反応室27の圧力が常圧に復帰される。
【0051】
ボートエレベータ35によりシールキャップ38を介してボート22が降下される。又、炉口シャッタ33を炉口位置へと移動させ、処理炉24の炉口部を閉塞する。
【0052】
処理後のウェーハ17の搬出については、上記説明と逆の手順で、ウェーハ17及びポッド8は筐体2の外部へ払出される。未処理のウェーハ17が、更にボート22に装填され、ウェーハ17のバッチ処理が繰返される。
【0053】
複数のウェーハ17を収納したポッド8をロードポート7、ポッド棚9、予備ポッド棚13、移載棚12との間で搬送する搬送機構、又、ボート22にポッド8内のウェーハ17を搬送したり、処理炉24にボート22を搬送したりする搬送機構、炉口シャッタ33を開閉させる駆動機構、処理炉24に処理ガス等を供給するガス供給機構、処理炉24内を排気するガス排気機構、処理炉24を所定温度に加熱するヒータ56、及びそれぞれの搬送機構、駆動機構、ガス供給機構、ガス排気機構、ヒータ56をそれぞれ制御する制御装置57について、
図6を参照して説明する。尚、ガス供給機構、ガス排気機構、処理炉24、ヒータ56とで基板処理機構を構成している。
【0054】
図6中、58はプロセス系コントローラとしてのプロセス制御部、59は搬送系コントローラとしての搬送制御部、61は主制御部を示している。プロセス制御部58は記憶部62を具備し、該記憶部62にはプロセスを実行する為に必要なプロセス実行プログラムが格納されている。搬送制御部59は記憶部63を具備し、該記憶部63にはウェーハ17の搬送処理を実行する為の搬送プログラムと、ポッド搬送装置14、ウェーハ搬送機構11、ボートエレベータ35の3つの搬送機構と、炉口シャッタ33の動作を制御する動作制御プログラムとが格納されている。主制御部61はデータ格納手段64を具備し、該データ格納手段64は、例えばHDD等の外部記憶装置からなる。尚、プロセス実行プログラム、搬送プログラム、動作制御プログラムは、データ格納手段64に格納されていてもよい。
【0055】
図6には、サブコントローラ65,66,67が例示されている。例えば65は処理炉24の加熱制御を行う第1サブコントローラ、66はバルブの開閉、流量制御器等の作動を制御して処理炉24への処理ガスの供給流量を制御する第2サブコントローラ、67は処理炉24からのガスの排気を制御し、或は処理炉24の圧力を制御する第3サブコントローラを示している。同様に、アクチュエータ56,68,69が例示されている。例えば56は第1サブコントローラ65によって制御されるヒータ(以下第1プロセスアクチュエータ)であり、68は第2サブコントローラ66によって制御される流量制御器(以下第2プロセスアクチュエータ)であり、69は第3サブコントローラ67によって制御される圧力制御バルブ(以下第3プロセスアクチュエータ)である。尚、各プロセスアクチュエータは図では1つずつしか示されていないが、複数設けられていても構わない。
【0056】
71,72,73は各プロセスアクチュエータの状態を検出し、それぞれ検出結果を第1サブコントローラ65、第2サブコントローラ66、第3サブコントローラ67にフィードバックするセンサを例示している。例えば、71は温度検出器(以下第1プロセスセンサ)、72は流量検出器(以下第2プロセスセンサ)、73は圧力センサ(以下第3プロセスセンサ)である。尚、各プロセスアクチュエータの状態を検出する検出器やセンサ類が、図では1つずつしか示されていないが、複数設けられていても構わない。
【0057】
搬送制御部59は各種搬送制御モジュールを制御し、該各種搬送制御モジュールは後述する動作アクチュエータを制御する第1動作制御部74、第2動作制御部75、第3動作制御部76、第4動作制御部77からなっている。
【0058】
ドライバとしての第1動作制御部74は、ポッド搬送装置14を駆動する駆動部であるサーボモータ(以下第1動作アクチュエータ)78を制御する。又、ドライバとしての第2動作制御部75は、移載機11を進退させ、昇降させ、回転させる駆動部であるサーボモータ(以下第2動作アクチュエータ)79を制御する。又、ドライバとしての第3動作制御部76は、ボートエレベータ35を駆動する駆動部であるサーボモータ(以下第3動作アクチュエータ)81を制御する。更に、ドライバとしての第4動作制御部77は、炉口シャッタ33の蓋部34を駆動する駆動部である電磁切換弁(以下第4動作アクチュエータ)82を制御している。
【0059】
各動作アクチュエータには、各動作アクチュエータの状態(例えば、限界地点にいるかどうか等の位置状態)を検出する状態検出センサ83,84,85,86が設けられている。各状態検出センサ83,84,85,86は、各動作アクチュエータの状態を検出し、検出結果を第1動作制御部74、第2動作制御部75、第3動作制御部76、第4動作制御部77にそれぞれフィードバックする機能を有している。各動作制御部74,75,76,77はメモリを有し、フィードバックされたデータ(検出結果)を一時的に保存することが可能である。尚、図では、各動作アクチュエータ78,79,81,82に1つの状態検出センサ83,84,85,86が設けられているが、本形態に限定されない。言う迄もなく、各動作アクチュエータに複数の状態検出センサを設けても構わない。
【0060】
第1動作制御部74はポッド8をロードポート7から移載棚12等に移載するポッド搬送装置14を駆動制御する。第2動作制御部75はポッド8からウェーハ17を取出し、ボート22に装填する移載機11を駆動制御する。第3動作制御部76はウェーハ17が装填されたボート22を処理炉24に搬入するボートエレベータ35を駆動制御する。第4動作制御部77は処理炉24の炉口部を開閉する炉口シャッタ33を駆動制御する。
【0061】
入力デバイス87はキーボード、マウス、操作パネル等を示し、モニタ88は設定画面等を含む操作画面である。操作部89はモニタ88から入力デバイス87を用いて各種指示を受付ける。例えば、モニタ88は、移載機11がポッド8とボート22の少なくとも一方に向かう搬送動作、移載機11がポッド8とボート22の少なくとも一方から離れる搬送動作に対して、それぞれ個別に設定される様構成される。
【0062】
第1サブコントローラ65、第2サブコントローラ66、第3サブコントローラ67にはプロセス制御部58から設定値の指示、或は処理シーケンスに従った指令信号が入力される。プロセス制御部58は温度検出器71、流量検出器72、圧力センサ73が検出した検出結果に基づき、第1サブコントローラ65、第2サブコントローラ66、第3サブコントローラ67を統括して制御する。
【0063】
プロセス制御部58は、主制御部61を介した操作部89からの指令により、基板処理を実行する。基板処理は、プロセス制御部58が記憶部62に格納されたプログラムに従って、他の制御系とは独立して実行される。従って、搬送制御部59、主制御部61に問題が発生しても、基板処理は中断されることなく完遂される。
【0064】
第1動作制御部74は、状態検出センサ83が検出した検出結果を基に第1動作アクチュエータ78を制御している。第2動作制御部75は、状態検出センサ84が検出した検出結果を基に第2動作アクチュエータ79を制御している。又、第3動作制御部76は、状態検出センサ85が検出した検出結果を基に第3動作アクチュエータ81を制御している。更に、第4動作制御部77は、状態検出センサ86が検出した検出結果を基に第4動作アクチュエータ82を制御する等、各動作制御部が各状態検出センサに対応する各動作アクチュエータを制御する。
【0065】
搬送制御部59は、操作部89からの指示によって搬送処理を実行する。ポッド8やウェーハ17は、搬送制御部59が記憶部63に格納された搬送プログラム、及び動作制御プログラムに従って、他の制御系とは独立して搬送される。
【0066】
データ格納手段64には、基板処理進行を統括するプログラム、処理内容、処理条件を設定する為の設定プログラム、処理炉24の加熱や処理ガスの供給及び排気等の設定条件が格納された基板処理の為のレシピ、通信プログラム、アラーム情報表示プログラム、パラメータ編集プログラム等の各種プログラムがファイルとして格納されている。
【0067】
通信プログラムはプロセス制御部58、搬送制御部59とLAN等の通信手段を介してデータの送受信を行うものである。又、アラーム情報表示プログラムは状態検出センサ83,84,85,86によって異常が検出された場合に、動作アクチュエータ78,79,81,82の異常原因、例えば停止した原因のアラーム情報をモニタ88に表示するものである。
【0068】
データ格納手段64は、データ格納領域を有している。該データ格納領域には、ウェーハ17の搬送に必要とされるパラメータが格納され、更に搬送機構に予め設定されている設定情報、状態検出センサ83,84,85,86によって検出された検出結果、及び処理状態等の情報が格納される。
【0069】
図7に示される様に、ウェーハ17の搬送工程に於いて、ボート22を反応室27内に挿入し、シールキャップ38で炉口部を閉塞した際には、ボート22やウェーハ17、シールキャップ38、ベース37等や、ボートエレベータ35の推力により、炉側アーム36に撓みが生じ、炉側アーム36が下方に傾斜する場合がある。
【0070】
又、ウェーハ17の成膜工程に於いては、ヒータ56により反応室27を加熱した際には、シールキャップ38の温度が反応室27内と同程度、即ち最大で200℃程度迄上昇する。一方で、ベース37の温度は室温と同程度に留まる。この為、
図7に示される様に、ベース37とシールキャップ38との間に温度差が生じ、シールキャップ38にのみ熱負荷により膨張が生じる(
図7中右方向)。
【0071】
本実施例では、弾性部材であるスプリング51を有する複数の連結部材41によりシールキャップ38がベース37に支持されると共に、位置決め機構47の移動ブロック52がフレキシブルな弾性部材である保持部材53に保持されているので、これら保持部材による弾性により連結部材41で発生する変位を吸収できる。
【0072】
又、シールキャップ38はスプリング51によりベース37に対して上方に付勢されるので、撓みにより炉側アーム36とベース37の平行度が崩れた場合であっても、シールキャップ38を下部フランジ32に当接させ続けることができ、反応室27の気密状態を維持することができる。更に、ベース37の傾斜に伴うリニアシャフト49や移動ブロック52の傾斜も保持部材53の弾性で吸収することができ、位置決め機構47の破損を防止することができる。
【0073】
又、シールキャップ38の熱膨張に伴い、連結部材41のリニアシャフト49や移動ブロック52に芯ズレを生じ、周方向或は径方向に変位した場合であっても、保持部材53の弾性により熱膨張の変位を吸収することができ、位置決め機構47の破損を防止することができる。
【0074】
又、保持部材53の弾性変形により数mm程度の位置ズレを許容可能としたことで、撓みや熱膨張による連結部材41の破損を防止する為、スプリングキャップ48に撓みや熱膨張によるリニアシャフト49の変位を許容する為の長孔等を設ける必要がない。従って、シールキャップ38の開閉時や熱膨張時にスプリングキャップ48とリニアシャフト49との間で摺動が生じることがなく、パーティクルの発生を抑制することができる。
【0075】
又、連結部材41は数mm程度の位置ズレを許容するので、キャップ受け43や連結棒42を回転させる為の回転駆動部を設けた場合であっても、リニアシャフト49の直径を150mm程度とした大型の位置決め機構47を必要としない。従って、小型の位置決め機構47を用いることができるので、製作コストの低減を図ることができる。
【0076】
又、スプリングキャップ48がベース37に固着され、リニアシャフト49がシールキャップ38に固着されているので、連結部材41を介してベース37とシールキャップ38とが連結されるだけで、ベース37に対してシールキャップ38の半径方向、周方向、軸心方向の位置決めができる。更に、連結部材41によりベース37に対するシールキャップ38の動きが規制され、シールキャップ38の回転を抑制できる。
【0077】
従って、ベース37に対するシールキャップ38の軸心方向の位置決めを行う為に、ベース37を円柱部38aに沿って摺動させる必要がなく、摺動に伴うパーティクルの発生を抑制することができる。
【0078】
又、シールキャップ38の熱膨張に伴い、円柱部38aも熱膨張するが、本実施例では、円柱部38aにベース37を摺動させて位置決めする必要がないので、円柱部38aと孔部37aとの間に所定の間隔が形成されていたとしても、位置決め精度が低下することがない。
【0079】
又、円柱部38aと孔部37aとの間に所定の間隔が形成されているので、炉側アーム36に撓みが生じベース37に対してシールキャップ38が傾斜したとしても、或はシールキャップ38に熱膨張が生じたとしても、円柱部38aがベース37と接触することがなく、パーティクルの発生を抑制することができる。更に、リニアシャフト49と移動ブロック52との間に辺摩耗を生じ、焼付き等が発生するのを防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本開示は、半導体製造装置だけではなく、LCD装置の様なガラス基板処理する装置等、他の基板処理装置にも適用できる。又、本開示は、基板に生成される薄膜の膜種は特に限定されない。例えば、窒化膜(SiN等)、酸化膜(SiO等)、金属酸化膜等、色々な膜種の薄膜を形成する処理にも適用できる。
【符号の説明】
【0081】
1 基板処理装置、17 ウェーハ、22 ボート、24 処理炉、27 反応室、35 ボートエレベータ、36 炉側アーム、37 ベース、38 シールキャップ、41 連結部材、46 閉塞維持機構、47 位置決め機構、48 スプリングキャップ、49 リニアシャフト、51 スプリング、52 移動ブロック、53 保持部材