(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】発光素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 33/32 20100101AFI20221028BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20221028BHJP
【FI】
H01L33/32
H01L21/304 621D
H01L21/304 621Z
(21)【出願番号】P 2020112705
(22)【出願日】2020-06-30
【審査請求日】2021-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】村本 衛司
(72)【発明者】
【氏名】藤本 麻希
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/104063(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0239324(US,A1)
【文献】特表2014-522098(JP,A)
【文献】特開2003-332688(JP,A)
【文献】特開2004-006718(JP,A)
【文献】特開2009-231478(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0028362(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 - 33/64
H01S 5/00 - 5/50
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガリウム及び窒素を含む第1層と、ガリウム、アルミニウム及び窒素を含み、前記第1層上に形成された第1導電型の第2層と、前記第2層上に形成された活性層と、前記活性層上に形成された第2導電型の第3層と、を有する半導体構造体を準備する工程と、
前記第1層側から化学的機械的研磨を施すことにより、前記第1層を薄くする工程と、
前記第1層側からドライエッチングを施すことにより、前記第1層を除去するとともに、前記第2層を薄くする工程と、
を備え、
前記半導体構造体を準備する工程は、
基板上に前記第1層、前記第2層、前記活性層、及び前記第3層を成長させる工程と、
前記基板を前記第1層から除去する工程と、
を有し、
前記化学的機械的研磨を施す工程の前において、前記第1層の膜厚は前記第2層の膜厚より厚く、
前記ドライエッチングを施す工程における前記第1層のエッチングレートに対する前記第2層のエッチングレートの比の値は、前記化学的機械的研磨を施す工程における前記第1層の研磨レートに対する前記化学的機械的研磨によって前記第2層を研磨した場合の研磨レートの比の値よりも小さい発光素子の製造方法。
【請求項2】
前記第1層を薄くする工程の後の前記第1層の膜厚は、前記第1層を薄くする工程の前の前記第1層の膜厚の20%以下である請求項1に記載の発光素子の製造方法。
【請求項3】
前記ドライエッチングは、塩素を含むエッチングガスを用いた反応性イオンエッチングにより行う請求項1または2に記載の発光素子の製造方法。
【請求項4】
前記第1層は、GaNからなる請求項1~
3のいずれか1つに記載の発光素子の製造方法。
【請求項5】
前記第2層は、AlGaNからなる請求項1~
4のいずれか1つに記載の発光素子の製造方法。
【請求項6】
前記活性層からの光の発光ピーク波長は410nm以下である請求項1~
5のいずれか1つに記載の発光素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光素子を構成する半導体層は、例えばサファイア基板上にエピタキシャル成長によって形成される。特許文献1には、半導体層から基板を除去し、さらに基板から露出された半導体層の一部を除去することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体層の厚さを所望の厚さまで薄くする場合、歩留まりを向上させるためには、半導体層を高精度に所望の厚さまで薄くすることが求められる。
本発明の一実施形態は、歩留まりを向上できる発光素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態に係る発光素子の製造方法は、ガリウム及び窒素を含む第1層と、ガリウム、アルミニウム及び窒素を含み、前記第1層上に形成された第1導電型の第2層と、前記第2層上に形成された活性層と、前記活性層上に形成された第2導電型の第3層と、を有する半導体構造体を準備する工程と、前記第1層側から化学的機械的研磨を施すことにより、前記第1層を薄くする工程と、前記第1層側からドライエッチングを施すことにより、前記第1層を除去するとともに、前記第2層を薄くする工程と、を備える。前記化学的機械的研磨を施す工程の前において、前記第1層の膜厚は前記第2層の膜厚より厚い。前記ドライエッチングを施す工程における前記第1層のエッチングレートに対する前記第2層のエッチングレートの比の値は、前記化学的機械的研磨を施す工程における前記第1層の研磨レートに対する前記化学的機械的研磨によって前記第2層を研磨した場合の研磨レートの比の値よりも小さい。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一実施形態によれば、歩留まりを向上できる発光素子の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態に係る発光素子の製造方法を示す模式的断面図である。
【
図2】
図1における一つの発光素子が形成される予定の領域を示す拡大断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る発光素子の製造方法を示す模式的断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る発光素子の製造方法を示す模式的断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る発光素子の製造方法を示す模式的断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態における発光素子を示す断面図である。
【
図7A】横軸に半導体構造の径方向における位置をとり、縦軸に最大膜厚を100%とした膜厚比をとって、CMP前の半導体構造における膜厚分布を示すグラフである。
【
図7B】横軸に半導体構造の径方向における位置をとり、縦軸に膜厚比をとって、CMP後の半導体構造における膜厚分布を示すグラフである。
【
図7C】横軸に半導体構造の径方向における位置をとり、縦軸に膜厚比をとって、RIE後の半導体構造における膜厚分布を示すグラフである。
【
図8A】比較例1における発光素子の製造方法を示す模式的断面図である。
【
図8B】比較例2における発光素子の製造方法を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<実施形態>
以下、実施形態に係る発光素子の製造方法について説明する。
図1は、本実施形態に係る発光素子の製造方法を示す模式的断面図である。
図2は、
図1における一つの発光素子が形成される予定の領域を示す拡大断面図である。
図3は、本実施形態に係る発光素子の製造方法を示す模式的断面図である。
図4は、本実施形態に係る発光素子の製造方法を示す模式的断面図である。
図5は、本実施形態に係る発光素子の製造方法を示す模式的断面図である。
図6は、本実施形態における発光素子を示す断面図である。
【0009】
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。特に、
図1、
図3~
図5は、半導体構造体1の直径方向の長さを相対的に縮小し、厚み方向の長さを相対的に拡大した模式的な図面である。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。さらに、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0010】
(半導体構造体1を準備する工程)
先ず、半導体構造体1を準備する。
図1に示すように、半導体構造体1は、第1層20と、第1層20上に形成された第2層30と、第2層30上に形成された活性層40と、活性層40上に形成された第3層50と、を有する。
図1に示すように、基板10から第1層20に向かう矢印Dの向きを、半導体構造体1を準備する工程において「上」という。
【0011】
半導体構造体1は作製することによって準備してもよく、他者から購入することによって準備してもよい。本実施形態では、半導体構造体1を作製することによって準備する例を説明する。
半導体構造体1を準備する工程は、基板10上に第1層20、第2層30、活性層40、及び第3層50を成長させる工程と、基板10を第1層20から除去する工程とを有する。
【0012】
[基板10上に第1層20、第2層30、活性層40、及び第3層50を成長させる工程]
先ず、基板10を準備し、基板10上に第1層20、第2層30、活性層40、及び、第3層50を成長させる。
以下、この工程について詳細に説明する。
基板10は、例えば単結晶サファイアからなるウエハである。基板10の直径は、例えば約100mmである。なお、基板10は、シリコンからなる基板でもよい。
【0013】
次に、基板10上に、第1層20を例えばエピタキシャル成長させる。
第1層20は、ガリウム(Ga)及び窒素(N)を含む。第1層20は、例えば窒化ガリウム(GaN)を含む。また、第1層20は、ガリウム及び窒素の他にアルミニウム(Al)を含んでいてもよい。第1層20の膜厚ta1は、例えば5μm以上15μm以下とすることができる。第1層20の膜厚ta1は、例えば6.5μmである。
【0014】
次に、第1層20上に、第2層30を例えばエピタキシャル成長させる。
第2層30は、ガリウム、アルミニウム及び窒素を含む第1導電型の半導体材料からなる。例えば、第2層30は窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)を含むn型の半導体材料からなる。第2層30の一般式は、例えば、AlXGa1-XN(0<X<1)である。第2層30のアルミニウムの混晶比Xは、例えば、0.02以上0.1以下である。また、第2層30は、ガリウム、アルミニウム及び窒素の他にインジウム(In)を含んでいてもよい。
【0015】
第2層30の膜厚tb1は、第1層20の膜厚ta1よりも小さい。第2層30の膜厚tb1は、例えば1μm以上3μm以下とすることができる。第2層30の膜厚tb1は、例えば2.0μmである。
なお、第1層20と第2層30の間に、他の層が形成されてもよい。他の層は、例えば窒化アルミニウムを含む層などである。
【0016】
次に、第2層30上に活性層40を成長させ、活性層40上に第3層50を成長させる。第3層50は、第2導電型の半導体材料からなり、例えばp型の半導体材料からなる。
【0017】
次に、半導体構造体1上に配線積層体70を形成する。
図2に示すように、配線積層体70は、第2層30に接続される第2コンタクト73a及び第2配線層73と、第3層50に接続される第3電極75a及び第3配線層75と、これらの間を絶縁する第1絶縁膜71及び第2絶縁膜72とを含む。
【0018】
次に、支持基板91を準備し、支持基板91に接合層92を形成する。支持基板91は、例えばシリコンからなる基板である。接合層92を配線積層体70上に接合する。これにより、
図1、
図2に示すように、基板10、半導体構造体1、配線積層体70、接合層92、及び、支持基板91が積層される。
【0019】
[基板10を第1層20から除去する工程]
次に、基板10を第1層20から除去する。
基板10の除去は、例えば基板10を、例えばレーザーリフトオフ(Leaser Lift Off:LLO)によって第1層20から剥離することにより行う。基板10の除去によって、支持基板91に、第3層50、活性層40、第2層30、及び、第1層20が支持基板91側から順に積層された半導体構造体1が形成される。
【0020】
図3に示すように、基板10を除去した後の第1層20の下面には、剥離面21が基板10から露出する。剥離面21は、例えば、レーザーリフトオフに起因する熱によって半導体構造体1の一部が融解されて荒くなり、凹凸が形成される場合がある。
図3に示すように、第1層20は、例えば、端縁領域ES及び中央領域ISの膜厚が、中間領域MSの膜厚よりも薄い。端縁領域ESは、半導体構造体1のうち、半導体構造体1の端縁付近に位置する領域である。中央領域ISは、半導体構造体1のうち、半導体構造体1の中央部に位置する領域である。中間領域MSは、半導体構造体1のうち、端縁領域ESと中央領域ISとの間に位置する領域である。このように、基板10を除去した後における第1層20の膜厚にはばらつきが生じる。基板10の除去後における第1層20の膜厚ta2の平均値は、例えば5μm以上15μm以下である。基板10の除去後における第1層20の膜厚ta2の面内における平均値は、例えば6.5μmである。基板10の除去後における第2層30の膜厚tb2は、基板10の除去前における膜厚tb1と変わらず例えば2.0μmである。
【0021】
(化学的機械的研磨を施す工程)
次に、第1層20側から化学的機械的研磨(Chemical Mechanical Polishing:CMP)を施すことにより、第1層20を薄くする。
図3に示すように、CMPを施す工程の前において、第1層20の膜厚ta2は、第2層30の膜厚tb2より厚い。CMPは、第1層20の剥離面21側から行う。
【0022】
化学的機械的研磨においては、例えば、回転するキャリアの一端に半導体構造体1を固定する。そして、第1層20の剥離面21を回転する研磨パッドに押し当て、化学研磨剤を滴下しながら化学的作用と機械的研磨の複合作用によって剥離面21を研磨する。第1層20の剥離面21にCMPを施すことで第1層20に研磨面22を形成する。例えば、中間領域MSに対する押付力を端縁領域ES及び中央領域ISよりも強くして研磨することが好ましい。このような研磨により、膜厚が端縁領域ES及び中央領域ISよりも厚い中間領域MSの研磨を選択的に促進させ、
図4に示すように、研磨面22を平坦な面に近付けることができる。このように、第1層20の剥離面21に対してCMPを施すことにより、研磨面22を平坦化し、第1層20の膜厚をより均一とすることができる。
【0023】
一方で、同じ条件で化学的機械的研磨を行う場合、研磨される物質によって研磨レートが異なる。研磨レートとは、研磨によって単位時間あたりに除去される半導体層の厚みである。化学的機械的研磨による第1層20の研磨レートは、例えばP1である。これに対して、仮に、第1層20に対する化学的機械的研磨と同じ条件で第2層30を研磨する場合、第2層30に対する化学的機械的研磨による研磨レートP2は、研磨レートP1より大きい。すなわち、P2>P1である。例えば、研磨レートP2は研磨レートP1の1.5倍以上3倍以下である。
【0024】
図4に示すように、本実施形態における化学的機械的研磨を施す工程は、第1層20について一定の膜厚を残して終了し、第2層30は研磨しない。これにより、化学的機械的研磨によって形成された研磨面22には、第1層20のみが露出し、第2層30は露出しない。また、研磨面22が形成された第1層20の膜厚のばらつきは、剥離面21が形成された第1層20の膜厚のばらつきよりも小さい。
【0025】
化学的機械的研磨後の第1層20の膜厚ta3は、例えば0.3μm以上1μm以下である。第1層20の膜厚ta3は、例えば0.8μmである。第1層20の膜厚ta3とは、化学的機械的研磨後の第1層20の面内における平均の膜厚である。化学的機械的研磨後の第2層30の膜厚tb3は、化学的機械的研磨前と変わらず例えば2.0μmである。よって、化学的機械的研磨後において、第1層20の膜厚ta3は、第2層30の膜厚tb3よりも薄くなる。なお、本実施形態において、第1層20の膜厚ta3は、例えば以下のように求めることができる。例えば第1層20の直径が約100mmの場合、平面視で、第1層20の中心と、第1層20の中心から上下方向および左右方向に、8mm、16mm、24mm、32mm、38mm、44mm離れた点と、をそれぞれ測定する。そして、測定した合計25点における膜厚の平均値を第1層20の膜厚ta3の平均の膜厚とする。
また、第1層20を薄くする工程の後の第1層20の膜厚ta3は、第1層20を薄くする工程の前の第1層20の膜厚ta2の例えば20%以下にすることが好ましく、15%以下にすることがより好ましい。
【0026】
(ドライエッチングを施す工程)
次に、
図5に示すように、第1層20側からドライエッチングを施す。これにより、第1層20を除去するとともに、第2層30を薄くする。
ドライエッチングは、例えば反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching:RIE)である。ドライエッチングは、塩素(Cl)を含むエッチングガスを用いて行い、例えば、四塩化ケイ素ガスと塩素ガスの混合ガス(SiCl
4+Cl
2)を含んだエッチングガスを用いる。
【0027】
図4、
図5に示すように、ドライエッチングは、第1層20の研磨面22側から行う。研磨面22側から第1層20と第2層30の一部をドライエッチングで除去して、第1層20から第2層30を露出させる。換言すると、ドライエッチングを、第1層20と第2層30との界面Fを越えて行い、第2層30を露出させる。ドライエッチングにより、第2層30にエッチング面31が形成される。エッチング面31は、研磨面22の表面状態と同様になる傾向があり、例えば研磨面22が平坦であれば、エッチング面31も平坦になる。研磨面22が形成された第1層20の膜厚のばらつきを小さくすることで、ドライエッチング後における第2層30の膜厚をより均一に近付けることできる。ドライエッチング後における第2層30の膜厚tb4は、例えば1μm以上2.5μm以下である。ドライエッチング後における第2層30の膜厚tb4は、例えば1.5μmである。なお、第1層20は除去されるため、膜厚はゼロである。第2層30の膜厚tb4とは、ドライエッチング後の第2層30の面内における平均の膜厚である。なお、本実施形態において、第2層30の膜厚tb4は、例えば以下のように求めることができる。例えば第2層30の直径が約100mmの場合、平面視で、第2層30の中心と、第2層30の中心から上下方向および左右方向に、8mm、16mm、24mm、32mm、38mm、44mm離れた点と、をそれぞれ測定する。そして、測定した合計25点における膜厚の平均値を第2層30の膜厚tb4の平均の膜厚とする。
【0028】
ドライエッチングを施す工程における第1層20のエッチングレートを、E1とし、ドライエッチングを施す工程における第2層30のエッチングレートを、E2とする。エッチングレートとは、単位時間あたりのエッチングによって除去される厚みである。例えば、第1層20のエッチングレートE1は第2層30のエッチングレートE2と略等しい。ここで、第1層20のエッチングレートE1は第2層30のエッチングレートE2と略等しいとは、第1層20のエッチングレートE1と第2層30のエッチングレートE2との差が3%以下であることを意味する。
【0029】
本実施形態において、第1層20と第2層30に対する研磨レートとエッチングレートは、以下の関係を満たすように設定する。ドライエッチングを施す工程における第1層20のエッチングレートE1に対する第2層30のエッチングレートE2の比の値(E2/E1)は、化学的機械的研磨を施す工程における第1層20の研磨レートP1に対する化学的機械的研磨によって第2層30を研磨した場合の研磨レートP2の比の値(P2/P1)よりも小さくする。すなわち、各レートについて下記数式(1)を満たすように設定する。
(E2/E1)<(P2/P1)・・・(1)
【0030】
例えば、エッチングレートE1に対するエッチングレートE2の比の値(E2/E1)は1であり、研磨レートP1に対する研磨レートP2の比の値(P2/P1)は2である。
【0031】
次に、
図6に示すように、エッチング面31側からエッチングを施すことにより、第2層30、活性層40、及び第3層50を選択的に除去する。第2層30が残留した領域が半導体部Lとなる。半導体部Lは、第2層30と活性層40と第3層50が積層し、第2層30と第3層50から放出された電子と正孔が活性層40において結合することにより発光する領域である。また、半導体部Lにおける第2層30のエッチング面31を粗面化して、凹凸面31Rを形成する。
【0032】
次に、半導体部L以外の領域に、第1パッド76、第2パッド77、及び、保護膜80などを形成する。
図6に示すように、第1パッド76と第2パッド77は、半導体部Lと同様に外部に露出して設けられ、半導体部Lを挟んで離隔している。第1パッド76は、第3配線層75に接続され、第3配線層75を介して第3層50に電気的に接続されている。第2パッド77は、第2配線層73に接続され、第2配線層73を介して第2層30に電気的に接続されている。第1パッド76と第2パッド77は、外部から電圧が供給される。保護膜80は、凹凸面31Rとその周囲に形成され、発光素子100の表面を保護する。
その後、半導体部Lを含む領域ごとに個片化して複数の発光素子100を形成する。
【0033】
(発光素子)
以下に、本実施形態に係る製造方法によって製造された発光素子について説明する。
図6に示すように、発光素子100は、半導体部Lに形成された活性層40において発光する発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)である。発光素子100は、例えばn型の半導体からなる第2層30と、例えばp型の半導体からなる第3層50に、第2コンタクト73aと第3電極75aを介して順方向の電圧を印加することで、活性層40が発光する。活性層40からの光は、主に凹凸面31Rを介して取り出される。活性層40からの光は、例えば紫外光である。活性層40からの光の発光ピーク波長は、例えば、410nm以下である。活性層40からの光の発光ピーク波長は、例えば約320nm以上410nm以下である。活性層40において発光した光の一部は、薄化された第2層30を通過するときに第2層30によって吸収される。
【0034】
以下に、本実施形態の効果を説明する。
本実施形態に係る発光素子100の製造方法によれば、先ず、例えばサファイアからなる基板10上に、例えばGaNからなる第1層20を成長させ、その後、第1層20上に例えばAlGaNからなる第2層30を成長させている。これにより、例えば第1層20及び第2層30をAlGaNで成長させる場合に比べて、第2層30を良好な結晶性で成長させることができる。また、GaNからなる第1層20は、例えば波長が約365nmの紫外光を吸収しやすい。そのため、第2層30の形成後に第1層20を除去することにより、紫外光を発する発光素子100における光の取り出し効率を向上できる。
【0035】
また、本実施形態においては、
図3、4に示す工程において、剥離面21側から化学的機械的研磨を施すことにより、第1層20を薄くしている。これにより、第1層20を効率的に薄くしつつ、平坦な面に近い研磨面22が形成された第1層20を形成することができる。例えば、第1層20を薄くする工程の後の第1層20の膜厚ta3を、第1層20を薄くする工程の前の膜厚ta2の10%以下にすることで、化学的機械的研磨によって界面Fを超えずに第1層20を更に効率良く薄くできる。
【0036】
CMPを施す工程において、界面Fを超えないように行い、第2層30上に第1層20を残存させる。CMPを施す工程において、例えば、第2層30を研磨した場合の研磨レートP2が第1層20の研磨レートP1よりも大きい場合、CMPを界面Fを超えて行うと第2層30が部分的に過剰に研磨されるおそれがある。CMPを施す工程において、第2層30には到達させず、第1層20を残存させることで、第2層30が部分的に過剰に研磨されることを回避できる。
【0037】
図5に示すように、CMPの後に、RIE等のドライエッチングを施すことにより、研磨面22側から第1層20を除去するとともに第2層30を薄くしている。そして、ドライエッチングにより、エッチング前の研磨面22と略同様な表面状態であるエッチング面31を形成する。CMPを施すことにより剥離面21を平坦に近い研磨面22とし、その後、研磨面22にドライエッチングを施すことで研磨面22の表面状態に近いエッチング面31を形成する。これにより、膜厚のばらつきが小さく、より平坦な第2層30を精度よく形成することができる。また、第2層30を薄くすることにより、活性層40から出射する光が第2層30により吸収されることを抑制することができる。
【0038】
そして、第1層20及び第2層30に対する化学的機械的研磨及びドライエッチングにおいて、第1層20のエッチングレートE1に対する第2層30のエッチングレートE2の比の値(E2/E1)を、第1層20の研磨レートP1に対する第2層30を研磨した場合の研磨レートP2の比の値(P2/P1)よりも小さくする。これにより、CMPにおいては第1層20を効率的に除去し、ドライエッチングにおいては第2層30を精度よく加工することができる。
【0039】
以上のことから、本実施形態によれば、第1層20及び第2層30を高精度に加工することができるため歩留まりを向上することができる。
【0040】
<試験例>
以下に、本実施形態に係る発光素子の製造方法についての試験例を説明する。
先ず、実施形態において説明した方法により、基板10上に半導体構造体1を成長させ、基板10を除去した4つの試料を作製した。この試料においては、第1層20の膜厚ta2が6μm~7μm程度、第2層30の膜厚tb2が1μm~2μm程度、活性層40と第3層50とを合わせた膜厚が0.3μm~0.5μm程度である。
【0041】
図7Aは、横軸に半導体構造体1の径方向の位置をとり、縦軸に最大膜厚を100とした膜厚比をとって、CMP前の半導体構造体1における膜厚分布を示すグラフである。
図7Bは、横軸に半導体構造体1の径方向の位置をとり、縦軸に膜厚比をとって、CMP後の半導体構造体1における膜厚分布を示すグラフである。
図7Cは、横軸に半導体構造体1の径方向の位置をとり、縦軸に膜厚比をとって、RIE後の半導体構造体1における膜厚分布を示すグラフである。
図7A~7Cは、CMP前の半導体構造体1の最大膜厚を100として、測定した膜厚を百分率である膜厚比で表している。
図7A及び
図7Bは、積層した第1層20、第2層30、活性層40、及び、第3層50を合わせた膜厚分布を表している。
図7Cは、第2層30、活性層40、及び、第3層50を合わせた膜厚分布を表している。
【0042】
図7Aに示すように、基板10を除去した後の剥離面21が形成された第1層20は、膜厚にばらつきがあることがわかる。中間領域MSにおいて、膜厚は最大値となり、端縁領域ESの最端部において、膜厚が最小値となった。中間領域MSにおける最大の膜厚を100%としたとき、端縁領域ESの最端部における膜厚は90%程度であった。
【0043】
次に、化学的機械的研磨によって、第1層20の膜厚が加工前の第1層20の膜厚に対して7%~8%程度となるように研磨した。このとき、第1層20のうち膜厚が厚い部分は、研磨パッドを他の部分よりも強く押し付けた。これにより、
図7Bに示すように、研磨面22が形成された第1層20は、化学的機械的研磨を施す前に比べて膜厚のばらつきが小さくなっていることがわかる。また、研磨面22が形成された第1層20の膜厚は、剥離面21が形成された第1層20の中間領域MSにおける最大の膜厚を100%としたとき、最大の膜厚が39%程度であり、最小の膜厚が32%程度であった。
【0044】
次に、ドライエッチングによって、第1層20を除去し、第2層30の膜厚が加工前の第2層30の膜厚に対して75%程度となるようにエッチングした。ドライエッチングは、塩素(Cl)を含むエッチングガスを用いて行った。
図7Cに示すように、エッチング面31が形成された第2層30は、ドライエッチングを施す前と同様に、化学的機械的研磨を施す前に比べて膜厚のばらつきが小さくなっていることがわかる。また、エッチング面31が形成された第2層30の膜厚は、剥離面21が形成された第1層20の中間領域MSにおける最大の膜厚を100%としたとき、最大の膜厚が26%程度であり、最小の膜厚が21%程度であった。
【0045】
以上説明した試験例では、4つの試料において、エッチング面31が形成された第2層30の膜厚のばらつきを小さくした状態で加工することができた。化学的機械的研磨によって第1層20の膜厚のばらつきを小さくし、その後のドライエッチングによって第1層20を除去しつつ第2層30をエッチングすることで、第2層30の膜厚のばらつきを小さくできた。
【0046】
<比較例>
以下に、化学的機械的研磨のみによって第1層20を除去して第2層30を薄くした比較例1と、ドライエッチングのみによって第1層20を除去して第2層30を薄くした比較例2について説明する。
図8Aは、比較例1における発光素子の製造方法を示す模式的断面図である。
図8Bは、比較例2における発光素子の製造方法を示す模式的断面図である。
【0047】
比較例1においては、化学的機械的研磨のみによって第1層20を除去して第2層30を薄くする。この場合、化学的機械的研磨を第1層20と第2層30との界面Fを超えて行うことになる。化学的機械的研磨において、最初に第2層30が露出された部分では、例えば第1層20の研磨レートP1の2倍の研磨レートP2で第2層30が除去されることになる。一方、化学的機械的研磨において、最後に第2層30が露出された部分では、最初に露出された第2層30よりも研磨される時間が短いため、第2層30の除去量は少ない。そのため、化学的機械的研磨の工程において、部分的に第2層30が過剰に除去されやすく、化学的機械的研磨後の第2層30の膜厚にばらつきが生じやすい。
【0048】
図3に示すように、第1層20の膜厚のばらつきがある剥離面21に対して、化学的機械的研磨を施す場合、
図8Aに示すように、例えば処理前に端縁領域ESのうち最も膜厚が薄い最端部において、最初に第2層30が露出し、第2層30が過剰に除去される。そして、例えば処理前に中間領域MSのうち最も膜厚が厚い部分において、第2層30が最後に露出し、最初に露出された第2層30よりも除去量が少なくなる。したがって、化学的機械的研磨後において、第2層30の端縁領域ESと中間領域MSとで膜厚に差が生じる。したがって、比較例1においては、第2層30の膜厚にばらつきが生じやすいため、歩留まりが低下する可能性がある。
【0049】
また、化学的機械的研磨において中間領域MSに対する押付力を強くして第1層20の膜厚のばらつきを小さくする場合においても、第2層30に対して同時に化学的機械的研磨を施すことは難しい。そのため、第2層30の表面に対して化学的機械的研磨を施す時間にばらつきが生じ、第2層30の膜厚にばらつきが生じる。
【0050】
比較例2においては、ドライエッチングのみによって第1層20から第2層30までエッチングして、第2層30を薄くする。ドライエッチングによる加工では、ドライエッチングされる前の第1層20の膜厚分布を維持してエッチングされる傾向にある。そのため、
図3に示すような加工前の第1層20と同様な膜厚分布が、
図8Bに示すように、加工後のエッチング面39が形成された第2層30の膜厚分布に現れる。したがって、比較例2においては、第2層30を効率的に加工できず、第2層30の膜厚のばらつきを抑制することが難しい。
【0051】
これらの比較例1、2に対し、本実施形態に係る発光素子100の製造方法によれば、第1層20を効率的に除去できるとともに、第2層30を薄くする工程において第2層30の膜厚のばらつきを抑制することができる。このため、発光素子100を歩留まり良く製造することができる。
【符号の説明】
【0052】
1:半導体構造体
10:基板
20:第1層
21:剥離面
22:研磨面
30:第2層
31:エッチング面
31R:凹凸面
39:エッチング面
40:活性層
50:第3層
70:配線積層体
71:第1絶縁膜
72:第2絶縁膜
73:第2配線層
73a:第2コンタクト
75:第3配線層
75a:第3電極
76:第1パッド
77:第2パッド
80:保護膜
91:支持基板
92:接合層
100:発光素子
E1:エッチングレート
E2:エッチングレート
ES:端縁領域
F:界面
IS:中央領域
L:半導体部
MS:中間領域
P1:研磨レート
P2:研磨レート
ta1~ta4、tb1~tb4:膜厚