(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】中間部材、ポンプ、及びポンプのメンテナンス方法
(51)【国際特許分類】
F04D 29/22 20060101AFI20221028BHJP
F04D 29/62 20060101ALI20221028BHJP
【FI】
F04D29/22 C
F04D29/22 H
F04D29/62 A
(21)【出願番号】P 2017081941
(22)【出願日】2017-04-18
【審査請求日】2019-11-29
【審判番号】
【審判請求日】2021-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】筒井 栄治
(72)【発明者】
【氏名】許 書毓
(72)【発明者】
【氏名】蓬田 両健
【合議体】
【審判長】佐々木 芳枝
【審判官】田合 弘幸
【審判官】関口 哲生
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-14931(JP,A)
【文献】特開昭63-259194(JP,A)
【文献】実開平2-141694(JP,U)
【文献】特公昭32-811(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 1/00-13/16
F04D 17/00-19/02
F04D 21/00-25/16
F04D 29/00-35/00
F04B 39/00
F04B 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、
前記回転軸の回転トルクにより回転するように構成された羽根車と、を有するポンプであって、
前記回転軸の外縁部と前記回転軸が通過する開口部を画定する前記羽根車の内縁部との間に
配置可能であり、前記回転軸の回転トルクを前記羽根車に伝達するための
複数の中間部材を有し、
前記
複数の中間部材
の各々は、前記回転軸が挿入されるように構成される孔を画定する内周部と、前記羽根車の内縁部と接触するように構成される外周部と、を有し、
前記内周部の形状は
、十字形
状又はスプライン形状であり、
前記複数の中間部材の各々の内周部の形状は互いに異なり、
前記外周部の形状は、前記羽根車の開口部の形状に対応する形状であり、
前記回転軸の軸方向における前記中間部材の厚さが、前記羽根車の主板の厚さ以下であ
り、
前記複数の中間部材のいずれか一つが、前記回転軸の外縁部の形状に対応する内周部の形状を有し、前記回転軸の外縁部と前記羽根車の内縁部との間に設けられる、ポンプ。
【請求項2】
請求項
1に記載されたポンプにおいて、
前記
複数の中間部材の前記外周部の形状は、非円形である、ポンプ。
【請求項3】
請求項
1又は2に記載されたポンプにおいて、
複数の前記羽根車と、
前記羽根車の軸方向端面に直接又は間接的に接触し、前記羽根車間の距離を維持するように構成されたスリーブと、を有する、ポンプ。
【請求項4】
回転軸と、前記回転軸の回転トルクにより回転するように構成された第1羽根車と、を
有するポンプ
において、前記第1羽根車を交換する場合の前記ポンプをメンテナンスする方法において、
前記第1羽根車
と第1中間部材を前記回転軸から取り外す工程と、
前記回転軸の外縁部と
前記第1羽根車とは異なる第2羽根車の内縁部との間に
前記第1中間部材と異なる第2中間部材を設け
て、前記第2羽根車を前記回転軸に取り付ける工程と、を有し、
前記
第2中間部材の内周部の形状は、前記回転軸の外縁部の形状に対応し且つ十字形状
、又はスプライン形状であり、
前記
第2中間部材の外周部の形状は、前記第2羽根車の内縁部の形状に対応し、
前記回転軸の軸方向における前記
第2中間部材の厚さが、前記第2羽根車の主板の厚さ以下である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中間部材、ポンプ、及びポンプのメンテナンス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ケーシングと、回転軸と、羽根車とを備えるポンプが知られている。回転軸はケーシング内に延在し、回転軸の端部近傍に羽根車が取り付けられる。ポンプが直動式の場合は、回転軸はモータ等の原動機の主軸(モータ軸)であり、ポンプが直結式の場合は、回転軸は原動機の主軸に軸継手を介して接続されたポンプ軸である。このようなポンプでは、羽根車の内径部の断面形状が、回転軸の端部近傍の断面形状と一致するように構成される。これにより、回転軸が羽根車と係合し、原動機の回転トルクが回転軸を介して羽根車に伝達される。なお、円筒状部材を介して羽根車を回転軸に取り付けたポンプも知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2010/0008796号
【文献】中国実用新案登録第204041532号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年市場に流通しているポンプは、生産国、使用国に応じて回転軸の端部の断面形状が異なる場合がある。このため、回転軸にどのような羽根車でも取り付けられるわけではないので、回転軸の端部の断面形状に応じて複数種類の羽根車を製造する必要があり、羽根車の製造コストの増加の原因となっていた。また、羽根車が損傷して羽根車を交換する場合に備えて、回転軸の端部形状毎に異なる複数種類の羽根車を在庫として保管する必要があり、在庫管理が複雑になっていた。
【0005】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものである。その目的の一つは、任意の断面形状を有する回転軸に対して、羽根車を取り付けることができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1形態によれば、ポンプの回転軸の外縁部と前記回転軸が通過する開口部を画定する羽根車の内縁部との間に設けられ、前記回転軸の回転トルクを前記羽根車に伝達するための中間部材が提供される。この中間部材は、前記回転軸が挿入されるように構成される孔を画定する内周部と、前記羽根車の内縁部と接触するように構成される外周部と、を有する。前記内周部の形状は、前記回転軸の外縁部の形状に対応し且つ非円形である。前記外周部の形状は、前記羽根車の開口部の形状に対応する形状である。
【0007】
本発明の第2形態によれば、第1形態の中間部材において、前記外周部の形状は、非円形である。
【0008】
本発明の第3形態によれば、第1形態の中間部材において、前記外周部の形状は、円形であり、前記外周部は、軸方向に沿って拡径又は縮径するテーパ面を有する。
【0009】
本発明の第4形態によれば、第1形態から第3形態のいずれかの中間部材において、軸方向における厚さが、前記羽根車の主板の厚さ以下である。
【0010】
本発明の第5形態によれば、回転軸と、前記回転軸の回転トルクにより回転するように構成された羽根車と、を有するポンプが提供される。このポンプは、前記回転軸の外縁部と前記回転軸が通過する開口部を画定する前記羽根車の内縁部との間に設けられ、前記回転軸の回転トルクを前記羽根車に伝達するための中間部材を有する。前記中間部材は、前記回転軸が挿入されるように構成される孔を画定する内周部と、前記羽根車の内縁部と接触するように構成される外周部と、を有する。前記内周部の形状は、前記回転軸の外縁部の形状に対応し且つ非円形であり、前記外周部の形状は、前記羽根車の開口部の形状に対応する形状である。
【0011】
本発明の第6形態によれば、第5形態のポンプにおいて、前記中間部材の前記外周部の形状は、非円形である。
【0012】
本発明の第7形態によれば、第5形態のポンプにおいて、前記中間部材の前記外周部の形状は、円形であり、前記中間部材の前記外周部は、前記回転軸の軸方向に沿って拡径又は縮径するテーパ面を有する。
【0013】
本発明の第8形態によれば、第5形態から第7形態のいずれかのポンプにおいて、複数の前記羽根車と、前記羽根車の軸方向端面に直接又は間接的に接触し、前記羽根車間の距離を維持するように構成されたスリーブと、を有する。
【0014】
本発明の第9形態によれば、第5形態から第8形態のいずれかのポンプにおいて、前記回転軸の軸方向における前記中間部材の厚さが、前記羽根車の主板の厚さ以下である。
【0015】
本発明の第10形態によれば、回転軸と、前記回転軸の回転トルクにより回転するように構成された第1羽根車と、を有するポンプをメンテナンスする方法が提供される。この方法は、前記第1羽根車を前記回転軸から取り外す工程と、前記第1羽根車とは異なる第2羽根車を前記回転軸に取り付ける工程と、前記回転軸の外縁部と前記第2羽根車の内縁部との間に中間部材を設ける工程と、を有する。前記中間部材の内周部の形状は、前記回転軸の外縁部の形状に対応し、前記中間部材の外周部の形状は、前記第2羽根車の内縁部の形状に対応する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態に係るポンプの概略縦断面図である。
【
図4A】羽根車の回転軸への取り付けに用いる中間部材の一例の平面図である。
【
図4B】羽根車の回転軸への取り付けに用いる中間部材の一例の平面図である。
【
図4C】羽根車の回転軸への取り付けに用いる中間部材の一例の平面図である。
【
図5】他の実施形態に係る羽根車の取り付け箇所の拡大断面図である。
【
図6】他の実施形態に係る羽根車の取り付け箇所の拡大断面図である。
【
図7A】羽根車の回転軸への取り付けに用いる中間部材の一例の斜視図である。
【
図7B】羽根車の回転軸への取り付けに用いる中間部材の一例の斜視図である。
【
図7C】羽根車の回転軸への取り付けに用いる中間部材の一例の斜視図である。
【
図8】他の実施形態に係るポンプの回転軸と羽根車の取り付け箇所の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下で説明する図面において、同一の又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。な
お、以下の実施形態では遠心式の多段ポンプが説明されるが、これに限らず、本発明は羽根車が取り付けられた回転軸を有するあらゆるポンプに適用することができる。
【0018】
図1は、本実施形態に係るポンプの概略縦断面図である。図示のように、本実施形態のポンプ10は、複数の羽根車を有する多段ポンプである。
図1に示すように、ポンプ10は、外側ケーシング11と、中間ケーシング12と、回転軸30と、羽根車40と、を有する。外側ケーシング11の内部には、複数の中間ケーシング12が収容される。回転軸30は、中間ケーシング12内部を延在し、複数の羽根車40が取り付けられる。
【0019】
ポンプ10は、さらに、中間ケーシング12の上部に設けられた上部ケーシング14と、中間ケーシング12の下部に設けられた下部ケーシング13と、を有する。上部ケーシング14と外側ケーシング11は、それらの上端部が開放されており、この開放端部がケーシングカバー15により密封される。下部ケーシング13は、吸込口13aと吐出口13bとを有する。
【0020】
中間ケーシング12の各々の内部には、回転軸30に固定された羽根車40が収容される。なお、本実施形態のポンプ10に設けられる羽根車40は、金属板をプレス加工することによって製造されたものであるが、これに限らず、後述するように鋳造等により製造された羽根車40を使用することもできる。中間ケーシング12の各々は、中間ケーシング12内を流れる流体の流路を形成する戻し羽根17を有する。中間ケーシング12と外側ケーシング11との間には、ポンプ10が吸い込んだ流体を吐出口13bに導く環状流路18が形成される。
【0021】
ケーシングカバー15の上方にはモータ(図示せず)を支持するためのモータ台20が設けられる。モータ台20の内部には、モータ軸と回転軸30とを結合するためのカップリング19が設けられる。したがって、本実施形態のポンプ10は、モータ軸と回転軸30とがカップリング19を介して接続される、いわゆる直結式のポンプである。しかしながら、これに限らず、本実施形態のポンプ10として、モータ等の原動機の主軸を回転軸30として用いる、いわゆる直動式のポンプを採用することもできる。この場合は、ポンプ10に原動機が設けられ、原動機の主軸(回転軸30)に羽根車40が取り付けられる。
【0022】
回転軸30は、モータ台20内部のカップリング19から中間ケーシング12の内部に延在する。このため、ケーシングカバー15には、回転軸30が貫通するための孔15aが設けられる。ケーシングカバー15の孔15aからモータ台20に向かって流体が漏洩することが防止するために、ケーシングカバー15と回転軸30との間にメカニカルシール16が設けられる。
【0023】
次に、
図1に示すポンプ10の運転時の流体の流れについて説明する。ポンプ10を運転すると、下部ケーシング13の吸込口13aから液体が吸い込まれ、回転軸30の回転に伴って回転する羽根車40により昇圧される。昇圧された液体は、戻し羽根17により形成される戻し流路を通って次段の羽根車40の吸込部に導かれる。液体は各段の羽根車40により昇圧されて、上部ケーシング14を通過し、その後、環状流路18を通って下部ケーシング13の吐出口13bから外部に吐出される。
【0024】
次に、本実施形態に係るポンプ10の、羽根車40の取り付け構造について詳細に説明する。
図2は、羽根車40の取り付け箇所の拡大断面図である。
図3は、羽根車40の平面図である。
図4Aから
図4Cは、羽根車40の回転軸30への取り付けに用いる中間部材の一例の平面図である。なお、
図2においては、説明の便宜上、
図1に示したポンプ10の複数の羽根車40のうち、下部ケーシング13側の2つの羽根車40のみ示されてい
る。
【0025】
回転軸30の羽根車40が取り付けられる部分は、その断面形状が非円形である。具体的には、回転軸30は4つの突起部31aが形成された外縁部31を有する。なお、4つの突起部31aは、回転軸30の周方向に等間隔に設けられ、
図2においては、4つの突起部31aのうち2つが示されている。上述したように、ポンプ10の回転軸30の外縁部31の形状は、生産国及び使用国等によって異なる。したがって、
図2に示す回転軸30の外縁部31の形状は一例であり、非円形の任意の断面形状であり得る。なお、本明細書において「外縁部31の形状」とは、回転軸30を軸方向に直交する面で切断したときの外縁部31の断面形状をいう。
【0026】
図2及び
図3に示すように、羽根車40は、主板41と、側板42と、翼43と、を有する。主板41は、
図2に示すように羽根車40が回転軸30に取り付けられた状態で、側板42よりもモータ台20(
図1参照)側に位置する。側板42は、主板41と対向するように設けられ、流体を吸い込む入口開口42aを有する。翼43は、主板41と側板42との間に周方向に複数配列される。
図3に示すように、羽根車40の主板41は、回転軸30が通過する開口部44aを画定する内縁部44を有する。図示のように、本実施形態における開口部44aの形状は、円形の両端を平行にカットした形状(以下、両切り形状という)である。なお、これに限らず、開口部44aは任意の形状であり得る。
【0027】
図2に示すように、ポンプ10は、回転軸30の外縁部31と羽根車40の内縁部44との間に中間部材50を有する。中間部材50は、回転軸30の回転トルクを羽根車に伝達するように構成される。
図4Aに示すように、中間部材50は、略平板状である。中間部材50は、
図2に示すように、軸方向の厚さが羽根車40の主板41の厚さ以下に形成される。また、中間部材50は、回転軸30が挿入される孔51を有する。この孔51の形状を画定する内周部52の形状(
図4Aに示す内周部52が縁取る形状)は、回転軸30の外縁部31の形状に対応する。具体的には、本実施形態では、内周部52の形状は回転軸30の外縁部31の形状に略一致し、回転軸30が回転したときに、回転軸30の外縁部31が中間部材50の内周部52に係合する。これにより、回転軸30の回転トルクが中間部材50に伝達される。なお、回転軸30の外縁部31の形状に対応する中間部材50の内周部52の形状としては、回転軸30と中間部材50とが係合して、回転軸30の回転トルクを中間部材50に伝達することができる任意の形状を含む。
図4Aに示す例では、中間部材50の内周部52の形状は、略十字型であるが、例えば、
図4Bに示すように
図4Aよりも大きな十字型、
図4Cに示すようなスプライン型等、回転軸30の外縁部31の形状に応じた任意の形状であり得る。
【0028】
中間部材50の外周部53の形状(
図4Aに示す外周部53が縁取る形状)は、羽根車40の開口部44aの形状に対応する。具体的には、本実施形態では、外周部53の形状は羽根車40の開口部44aの形状に略一致し、回転軸30が回転したときに、中間部材50の外周部53が羽根車40の内縁部44に係合する。これにより、回転軸30の回転トルクが、中間部材50を介して羽根車40に伝達される。なお、羽根車40の開口部44aの形状に対応する中間部材50の外周部53の形状としては、中間部材50と羽根車40とが係合して、回転軸30の回転トルクを、中間部材50を介して羽根車40に伝達することができる任意の形状を含む。
図4Aから
図4Cに示す例では、中間部材50の外周部53の形状は、羽根車40の開口部44aの形状に対応した両切り形状であるが、これに限らず、使用する羽根車40の開口部44aの形状に応じた任意の形状であり得る。
【0029】
図2に示すように、回転軸30には、複数の座金61が設けられる。座金61は、回転軸30が通過する開口を有する円板である。座金61は、羽根車40の主板41を挟み込むように設けられる。これにより、羽根車40と中間部材50との軸方向の位置関係を固
定することができる。また、回転軸30には、複数の円筒状のスリーブ33が取り付けられる。スリーブ33は、羽根車40の間に設けられ、羽根車40間の距離を維持するように構成される。本実施形態では、スリーブ33は、座金61を介して羽根車40の軸方向端面(即ち、主板41)に間接的に接触するように構成される。回転軸30の端部には、ナット62が設けられる。これにより、羽根車40、中間部材50、座金61、及びスリーブ33が回転軸30に対して軸方向に固定される。
【0030】
以上で説明したように、本実施形態のポンプ10は、羽根車40と回転軸30との間に中間部材50が設けられる。したがって、羽根車40の開口部44aに対応する形状を有する外周部53と、回転軸30の外縁部31の形状に対応する内周部52とを有する様々な種類の中間部材50を用意しておくことにより、どのような形状を有する回転軸30に対しても、羽根車40を回転軸30に取り付けることができる。言い換えれば、回転軸30の外縁部31の形状に応じて、複数パターンの開口部44aの形状を有する羽根車40を製造する必要が無い。また、中間部材50の内周部52の形状が非円形であるので、回転軸30の回転トルクを容易に中間部材50に伝達することができる。
【0031】
また、本実施形態では、中間部材50の厚さが羽根車40の主板41の厚さ以下に形成される。これにより、平板状の座金61を羽根車40と直接接触させて、スリーブ33及び座金61で羽根車40を軸方向に固定することができる。言い換えれば、中間部材50の厚さが羽根車40の主板41の厚さよりも厚い場合は、座金61が羽根車40と接触して羽根車40を軸方向に固定するために、座金61の端面に凹凸を形成するなど、座金61を特別な形状にすればよい。
【0032】
なお、
図2に示す例では、座金61を用いて羽根車40と中間部材50との軸方向の位置関係を固定しているが、これに限らず、スリーブ33に座金61の機能を持たせてもよい。
図5は、他の実施形態に係る羽根車40の取り付け箇所の拡大断面図である。
図5に示すように、このポンプ10は、
図2に示したスリーブ33及び座金61に代えて、スリーブ36を備えている。スリーブ36は、その端部に拡径したフランジ部36aを有する。フランジ部36aは、羽根車40の端面(即ち主板41)と中間部材50との両方と接触するように構成される。これにより、スリーブ36は、羽根車40と中間部材50とを軸方向に固定することができる。
【0033】
次に、
図1に示したポンプ10に鋳造により製造された羽根車40を用いた例について説明する。
図6は、他の実施形態に係るポンプ10の回転軸30と羽根車40の取り付け箇所の拡大断面図である。また、
図7Aから
図7Cは、羽根車40の回転軸30への取り付けに用いる中間部材の一例の斜視図である。
図6に示す例では、ポンプ10は、単段ポンプであり、鋳物の羽根車40を有する。回転軸30の羽根車40が取り付けられる部分は、その断面形状が非円形である。具体的には、回転軸30は1つの突起部31aが形成された外縁部31を有する。
【0034】
羽根車40は、
図2及び
図3に示したプレス加工により製造された羽根車40と同様に、主板41と、側板42と、翼43と、入口開口42aと、を有する。また、
図6に示す羽根車40の主板41は、回転軸30が通過する開口部を画定する内縁部44を有する。
図6に示す羽根車40の開口部の形状は、両切り形状である。なお、これに限らず、開口部44aは任意の形状であり得る。
【0035】
図7Aから
図7Cに示すように、
図6に示すポンプ10が備える中間部材50は、略筒状である。
図7Aに示すように、中間部材50は、回転軸30が挿入される孔51を有する。この孔51の形状を画定する内周部52の形状(
図7Aに示す内周部52が縁取る形状)は、回転軸30の外縁部31の形状に対応する。具体的には、本実施形態では、内周
部52の形状は回転軸30の外縁部31の形状に略一致し、回転軸30が回転したときに、回転軸30の外縁部31が中間部材50の内周部52に係合する。これにより、回転軸30の回転トルクが中間部材50に伝達される。なお、回転軸30の外縁部31の形状に対応する中間部材50の内周部52の形状としては、回転軸30と中間部材50とが係合して、回転軸30の回転トルクを中間部材50に伝達することができる任意の形状を含む。
図7Aに示す例では、中間部材50の内周部52の形状は、キー溝形状であるが、例えば、
図7Bに示すように
図7Aよりも小さなキー溝形状、
図7Cに示すような十字型等、回転軸30の外縁部31の形状に応じた任意の形状であり得る。
【0036】
また、中間部材50の外周部53の形状(
図7Aに示す外周部53が縁取る形状)は、羽根車40の開口部の形状(内縁部44が縁取る形状)に対応する。具体的には、本実施形態では、外周部53の形状は羽根車40の開口部の形状に略一致し、回転軸30が回転したときに、中間部材50の外周部53が羽根車40の内縁部44に係合する。これにより、回転軸30の回転トルクが、中間部材50を介して羽根車40に伝達される。なお、羽根車40の開口部44aの形状に対応する中間部材50の外周部53の形状としては、中間部材50と羽根車40とが係合して、回転軸30の回転トルクを、中間部材50を介して羽根車40に伝達することができる任意の形状を含む。
図7Aから
図7Cに示す例では、中間部材50の外周部53の形状は、羽根車40の開口部の形状に対応した両切り形状であるが、これに限らず、使用する羽根車40の開口部の形状に応じた任意の形状であり得る。
【0037】
図6に示すように、回転軸30は小径部32aと大径部32bとを有し、小径部32aと大径部32bとの間に段部32cを有する。羽根車40は、羽根車40の端面が段部32cに当接するように回転軸30の小径部32aに取り付けられる。この状態で、回転軸30の端部にナット62が設けられる。これにより、羽根車40及び中間部材50が回転軸30に固定される。
【0038】
以上で説明したように、
図6に示すポンプ10には、羽根車40と回転軸30との間に中間部材50が設けられる。したがって、羽根車40が鋳物である場合でも、様々な種類の中間部材50を用意しておくことにより、どのような形状を有する回転軸30に対しても、羽根車40を回転軸30に取り付けることができる。言い換えれば、回転軸30の外縁部31の形状に応じて、複数パターンの開口部の形状を有する羽根車40を製造する必要が無い。また、中間部材50の内周部52の形状が非円形であるので、回転軸30の回転トルクを容易に中間部材50に伝達することができる。
【0039】
次に、さらに他の実施形態に係る羽根車40の取り付け構造について説明する。
図8は、他の実施形態に係る羽根車40の取り付け箇所の拡大断面図である。また、
図9は、
図8に示した中間部材50の斜視図である。
図9に示すように、
図8に示すポンプ10が備える中間部材50は、略筒状である。
図9に示すように、中間部材50は、回転軸30が挿入される孔51を有する。この孔51の形状を画定する内周部52の形状(
図9に示す内周部52が縁取る形状)は、回転軸30の外縁部31の形状に対応する。具体的には、本実施形態では、内周部52の形状は回転軸30の外縁部31の形状に略一致し、回転軸30が回転したときに、回転軸30の外縁部31が中間部材50の内周部52に係合する。これにより、回転軸30の回転トルクが中間部材50に伝達される。なお、回転軸30の外縁部31の形状に対応する中間部材50の内周部52の形状としては、回転軸30と中間部材50とが係合して、回転軸30の回転トルクを中間部材50に伝達することができる任意の形状を含む。
図9に示す例では、中間部材50の内周部52の形状は十字型であるが、これに限らず回転軸30の外縁部31の形状に応じた任意の形状であり得る。
【0040】
また、中間部材50の外周部53の形状(
図9に示す外周部53が縁取る形状)は、羽
根車40の開口部の形状(内縁部44が縁取る形状)に対応する。具体的には、本実施形態では、外周部53の形状は円形であり、羽根車40の開口部の形状に略一致する。また、中間部材50は、
図9に示すように、その外径が軸方向に沿って拡大又は縮小するように形成される。言い換えれば、中間部材50の外周部53は、軸方向に沿って拡径又は縮径するテーパ面を有する。
【0041】
図8に示す例では、2つの羽根車40が回転軸30に取り付けられている。回転軸30には、ナット63が取り付けられ、ナット63の端部が中間部材50の端部に当接する。中間部材50は、その外径が下流側(図中上側)に向かって徐々に拡大するように回転軸30に取り付けられる。羽根車40の内縁部44は、その断面が円形であり、下流側(図中上側)に向かって徐々に拡大するように形成される。したがって、羽根車40を回転軸30に取り付けたとき、羽根車40の内縁部44が中間部材50の外周部53に嵌合し、羽根車40と中間部材50との間の摩擦力により、羽根車40が中間部材50に対して固定される。これにより、回転軸30の回転トルクが、中間部材50を介して羽根車40に伝達される。羽根車40の下側の端面と、ナット63の上側の端面との間にはスリーブ33が設けられ、羽根車40間の距離を維持する。
【0042】
以上で説明したように、本実施形態のポンプ10は、羽根車40と回転軸30との間に中間部材50が設けられる。したがって、羽根車40の開口部に対応する形状を有する外周部53と、回転軸30の外縁部31の形状に対応する内周部52とを有する様々な種類の中間部材50を用意しておくことにより、どのような形状を有する回転軸30に対しても、羽根車40を回転軸30に取り付けることができる。言い換えれば、回転軸30の外縁部31の形状に応じて、複数パターンの開口部44aの形状を有する羽根車40を製造する必要が無い。また、中間部材50の内周部52の形状が非円形であるので、回転軸30の回転トルクを容易に中間部材50に伝達することができる。さらに、中間部材50の外周部53がテーパ面を有するので、摩擦力によって羽根車40を中間部材50に対して固定することができる。なお、中間部材50は、外周部53及び内周部52上に軸方向に延びるスリット等を有さず、完全な筒状に形成されている。このため、羽根車40を中間部材50に取り付けたときに羽根車40から中間部材50に圧縮力が加わっても、中間部材50の内径の大きさは一定である。このため、
図8のポンプ10においては、ナット63及びスリーブ33を回転軸30から取り外せば、中間部材50は、回転軸30上を軸方向に沿って移動可能に構成される。このため、羽根車40を中間部材50に取り付けた状態でも、羽根車40と共に中間部材50を軸方向に移動させることができるので、羽根車及び中間部材50の軸方向位置を容易に調整することができる。
【0043】
次に、
図2、
図5、
図6、及び
図8に示した羽根車40の取り付け構造を有するポンプ10において、羽根車40を交換する場合のメンテナンス手順について説明する。まず、必要に応じて、ナット62、ナット63、スリーブ33、スリーブ36、座金61等を回転軸30から取り外す。これにより、羽根車40(以下、第1羽根車という)を回転軸30から取り外すことができる。続いて、第1羽根車40と中間部材50を回転軸30から取り外し、第1羽根車40とは異なる羽根車40(以下、第2羽根車という)を回転軸30に取り付ける。このとき、回転軸30の外縁部31に対応する内周部52と、第2羽根車40の内縁部44に対応する外周部53を有する中間部材50を予め準備しておき、この中間部材50を回転軸30と第2羽根車40との間に設ける。これにより、回転軸30の回転トルクが第2羽根車40に適切に伝達されるように、第2羽根車40を回転軸30に取り付けることができる。
【0044】
このように、例えば第1羽根車40が破損した場合、及びポンプ10の仕様変更がある場合等、第1羽根車40から第2羽根車40に変更する場合において、様々な種類の中間部材50を用意しておくことにより、どのような形状を有する回転軸30に対しても、第
2羽根車40を回転軸30に取り付けることができる。また、中間部材50を設けることで、羽根車40の内縁部44の形状に関わらず、羽根車40を回転軸30に取り付けることができるので、例えば羽根車40の内縁部44の形状を統一することもできる。それにより、羽根車40の製造コストを低減することができる。また、羽根車40の種類も低減することができるので、羽根車40の在庫管理が容易になる。
【0045】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上述した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲及び明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、又は省略が可能である。
【符号の説明】
【0046】
10…ポンプ
30…回転軸
31…外縁部
33…スリーブ
36…スリーブ
40…羽根車
40…第1羽根車
40…第2羽根車
44…内縁部
50…中間部材
51…孔
52…内周部
53…外周部