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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】無人搬送車
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20221028BHJP
   A01B 69/00 20060101ALI20221028BHJP
【FI】
G05D1/02 E
A01B69/00 A
A01B69/00 303L
A01B69/00 303G
G05D1/02 N
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2017194736
(22)【出願日】2017-10-05
(65)【公開番号】P2019067317
(43)【公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-09-18
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度~26年度農林水産省、施設園芸における高度環境制御技術の開発委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000148357
【氏名又は名称】株式会社前川製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】熊沢 四郎
(72)【発明者】
【氏名】柏原 直哉
(72)【発明者】
【氏名】田中 基雅
(72)【発明者】
【氏名】山下 智輝
(72)【発明者】
【氏名】高橋 幹人
【審査官】牧 初
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-095735(JP,A)
【文献】特開平09-325815(JP,A)
【文献】特開2015-111335(JP,A)
【文献】特開2016-218736(JP,A)
【文献】特開昭60-160413(JP,A)
【文献】特開2001-022442(JP,A)
【文献】特開2016-212697(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/00- 1/12
A01B 69/00-69/08
B62D 1/00- 1/28
B62D 6/00- 6/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
進行方向に沿う第1ラインと該第1ラインに交差する第2ラインとを含む誘導ラインに沿って移動可能な無人搬送車であって、
車両本体と、
前記車両本体に回転自在に取り付けられた少なくとも2つの車輪と、
少なくとも2つの前記車輪に回転力を付与する少なくとも1つの駆動部と、
前記車両本体の前部下方の走行路面を撮像した第1画像を取得する第1撮像装置と、前記車両本体の後部下方の走行路面を撮像した第2画像を取得する第2撮像装置とを含む撮像装置と、
前記第1画像内に含まれる前記第1ラインに基づき前記第1ラインに沿うように前記車両本体を誘導するように前記駆動部を制御する制御部と、
前記車両本体の下部に搭載され、前記第1ラインと前記第2ラインとの交点に配置されたマークを検出して前記制御部に検出信号を送信する検出部と、
を備え、
前記少なくとも2つの車輪は、任意の水平方向に方向転換可能な左右一対のキャスターである一対の後輪と、駆動力が付与される左右一対の前輪とを含み、
前記第1撮像装置の少なくとも一部は、前記前輪の車軸よりも前方に配置され、
前記第2撮像装置の少なくとも一部は、前記一対の後輪の間に配置され、
前記検出部の少なくとも一部は、平面視において前記前輪の前記車軸と重なるように配置され、
前記制御部は、前記検出信号に基づき前記第1ラインに沿う状態から前記第2ラインに沿うように前記車両本体を旋回させる旋回動作を開始するように前記駆動部を制御するとともに、前記旋回動作の旋回中心よりも前部に配置された前記第1撮像装置と、前記車両本体の前後方向の中心に対して前記旋回中心とは反対側となる前記車両本体の後部に配置された前記第2撮像装置のうち、前記第2撮像装置で取得された前記第2画像内の少なくとも一部の領域である判定領域内に前記第2ラインが含まれるとの判断結果に基づいて前記旋回動作を終了するように前記駆動部を制御するように構成される
ことを特徴とする無人搬送車。
【請求項2】
前記制御部は、前記第2画像に含まれる前記第2ラインの少なくとも一部が前記第2画像内で前記車両本体の前後方向に沿う第2画像の中央線に重なる場合に前記旋回が完了したと判断するように構成される
ことを特徴とする請求項1に記載の無人搬送車。
【請求項3】
前記制御部は、前記旋回動作の旋回中心が、前記第1ラインと前記第2ラインとの交点に重なるようにして前記旋回動作を行うように前記駆動部を制御するように構成される
ことを特徴とする請求項1または2に記載の無人搬送車。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1画像内に前記誘導ラインが含まれない場合には前記第2画像内に前記誘導ラインが含まれるか否かを判断し、前記第2画像内に前記誘導ラインが含まれると判断した場合は該第2画像内の前記誘導ラインの傾きに応じて前記車両本体を誘導するように前記駆動部を制御するように構成される
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の無人搬送車。
【請求項5】
前記制御部は、前記第2画像内の前記誘導ラインの傾きと、予め設定された前記第1撮像装置と前記第2撮像装置との距離とに基づき前記第1撮像装置で撮像されるであろう前記第1画像内における前記誘導ラインの位置を予測し、当該予測された位置に基づき前記車両本体を誘導するように前記駆動部を制御するように構成される
ことを特徴とする請求項4に記載の無人搬送車。
【請求項6】
前記駆動部は、少なくとも2つの前記車輪に各々独立に駆動力を付与するように構成され、
前記制御部は、少なくとも2つの前記車輪を各々逆向きに回転させて前記旋回動作を行うように前記駆動部を制御するように構成される
ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の無人搬送車。
【請求項7】
前記第2撮像装置の一部は、前記後輪の車軸よりも後方に配置されたことを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の無人搬送車。
【請求項8】
前記無人搬送車は、農業用無人搬送車を含む
ことを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の無人搬送車。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか一項に記載の無人搬送車と、
前記無人搬送車の進行方向に沿う前記第1ラインと該第1ラインに交差する前記第2ラインとを含む前記誘導ラインと、
前記第1ラインと前記第2ラインとの交点に配置された前記マークと、
を備えたことを特徴とする無人搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無人搬送車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工業製品を生産する工場や物流倉庫において、重量物の搬送に用いられる無人搬送車(Automated Guided Vehicle:AGV)が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、所定の走行ルートに沿って走行する無軌道型の無人搬送車であって、上記走行ルートに沿って規則的に配設された複数の光学的マークを撮像する撮像手段と、上記撮像手段により撮像された画像に含まれる各光学的マーク及び基準となる光学的マーク間の位置関係に基づいて現在の車体の走行位置を検出する走行位置検出手段と、上記基準となる光学的マークに対して位置関係が定められた光学的マークに基づいて車体の走行制御を行う走行制御手段とを備えた無人搬送車が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-210416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、農園や施設園芸農場等(以下、農園等)を作業ステージとする農業分野においても、重量物の搬送機会が多いため無人搬送車の使用が望まれるが、以下の理由により未だ十分に普及しているとは言い難い。即ち、農園等では単位面積あたりの収穫量を増やすために多数の栽培ベンチが並べて配置されることが多く(例えば、1ha規模の農園等では一日あたりの延べ走行距離が数kmに及ぶこともあり得る)、上記の工業分野等で一般的な磁気テープ等の高価な誘導ラインを全経路に付設することは高コストで好ましくない。
この点、上記特許文献1に記載の無人搬送車は、磁気テープによらない光学誘導方式を採用するが、主にクリーンルーム等の施設内で用いることを前提にしており、床面に配置された通気孔を複数の光学的マークとして検出するように構成されている。従って、通気口等の規則的に配置された光学的な目印がない農園等で用いるには適しているとはいえない。また、特許文献1には、無人搬送車の位置検出について記載されているが、該無人搬送車の旋回時の誘導方法等に関しては何ら開示されていない。
【0006】
上記問題に鑑み、本発明の少なくとも一実施形態は、広範囲に亘って走行可能な無人搬送車を低コストで実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る無人搬送車は、
進行方向に沿う第1ラインと該第1ラインに交差する第2ラインとを含む誘導ラインに沿って移動可能な無人搬送車であって、
車両本体と、
前記車両本体に回転自在に取り付けられた少なくとも2つの車輪と、
少なくとも2つの前記車輪に回転力を付与する少なくとも1つの駆動部と、
少なくとも前記車両本体の前部下方の走行路面を撮像した第1画像と、前記車両本体の後部下方の走行路面を撮像した第2画像とを取得するための少なくとも1つの撮像装置と、
前記第1画像内に含まれる前記第1ラインに基づき前記第1ラインに沿うように前記車両本体を誘導するように前記駆動部を制御する制御部と、
前記車両本体の下部に搭載され、前記第1ラインと前記第2ラインとの交点に配置されたマークを検出して前記制御部に検出信号を送信する検出部と、
を備え、
前記制御部は、前記検出信号に基づき前記第1ラインに沿う状態から前記第2ラインに沿うように前記車両本体を旋回させる旋回動作を開始するように前記駆動部を制御するとともに、前記第2画像内の少なくとも一部の領域である判定領域内に前記第2ラインが含まれるとの判断結果に基づいて前記旋回動作を終了するように前記駆動部を制御するように構成される。
【0008】
上記(1)の構成によれば、車両本体の少なくとも前部下方の走行路面を撮像した第1画像に基づき、光学誘導方式を用いて車両本体を誘導することができる。これにより、磁気テープ等の高価なインフラ設備を必要とせず、光学的に取得した画像内で識別可能な誘導ラインを、例えば、安価なテープや塗料等で描くという簡易な構成で誘導走行を実現できるため、広範囲に亘って走行可能な無人搬送車を低コストで実現することができる。
また、走行路面が滑りやすい場合、例えば、エンコーダ等を用いて車輪の回転数から車両本体の位置や向き、姿勢を把握する構成では滑りの影響で誤差が生じるため精度が低くなるが、上記(1)の構成によれば、走行路面への落下物や雨、露等に起因して車輪に滑りが生じた場合であっても、第1ラインと第2ラインとの交点に配置されたマークを検出部で検出することで旋回動作を開始することができる。また、旋回動作の完了は第2画像内の第2ラインの有無によってリアルタイムに且つ確実に把握することができるので、車両本体が完全に旋回し切ったか否かを確実に判断することができる。さらに、旋回不足や過剰旋回を可能な限り抑制して旋回開始から旋回完了までに要する収束時間を短縮することができるため、無駄な動作を排除して円滑な誘導走行を実現することができる。
なお、本明細書において、車両本体の「前部/後部」とは、車両本体のうち該車両本体の前後方向の中心よりも進行方向のそれぞれ前方側/後方側の部分をいうものとする。
また、「第1ライン」及び「第2ライン」は、車両本体に対して前後方向及びこれに交差する左右方向にそれぞれ延在するラインを指すものとし、撮像装置によって取得された画像内にあっては、画面上方を進行方向とした場合の上下に沿うラインを第1ライン、これに交差する左右方向のラインを第2ラインと称するものとする。
また、「第2ラインに沿う」方向は、予め設定された目標位置に到達するために適した左右何れかの方向であればよい。
【0009】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載の構成において、
前記少なくとも1つの撮像装置は、
前記旋回動作の旋回中心よりも前部に配置されて前記第1画像を取得する第1撮像装置と、
前記旋回中心よりも前記車両本体の後部に配置されて前記第2画像を取得する第2撮像装置と、を含んでもよい。
【0010】
上記(2)の構成によれば、第1画像と第2画像とをそれぞれ別個の撮像装置で撮像することができる。これにより、各画像を、例えば走行路面の真上から撮像して取得することができる。つまり、車両本体の前部下方及び後部下方の走行路面の画像を影等の影響を抑えて近距離から鮮明に撮像することができるので、第1画像及び第2画像の画質を向上させることができる。よって、誘導ラインに沿った誘導走行の信頼性や安定性を向上させることができる。
さらに、第2撮像装置を設けたことにより、例えば、第2画像内に含まれる誘導ラインに沿って車両本体を誘導するように制御部を構成すれば、後退時には進行方向(後退方向)において前部下方の画像に相当する第2画像に基づいて車両本体を誘導することができる。
【0011】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)に記載の構成において、
前記制御部は、前記第1撮像装置及び前記第2撮像装置のうち、前記旋回中心からより離れた位置に配置された撮像装置で取得された画像内に含まれる前記第2ラインに基づき前記旋回動作の終了を判断するように構成されてもよい。
【0012】
上記(3)の構成によれば、制御部が、旋回中心からより離れた位置に配置された撮像装置で取得した画像に基づき、旋回動作が終了したか否かを判断することにより、旋回中心に近い位置に配置された撮像装置で取得した画像に基づいて旋回終了を判断する場合に比べて、旋回終了の判断に関する判定精度を向上させることができる。従って、旋回終了後における車両本体の向きを、その後の進行方向である第2ラインにより高精度に合致させることができるため、誘導走行の信頼性の向上を図ることができる。
【0013】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れか一つに記載の構成において、
前記制御部は、前記第2画像に含まれる前記第2ラインの少なくとも一部が前記第2画像内で前記車両本体の前後方向に沿う第2画像の中央線に重なる場合に前記旋回動作の終了を判断するように構成されてもよい。
【0014】
上記(4)の構成によれば、旋回後の進行方向をより一層第2ラインに合致させることができるので、旋回精度の向上を図ることができる。さらに、例えば、第2ラインの幅方向の中央線と第2画像の中央線とが重なる場合に旋回完了と判断するように制御部を構成した場合は、より一層旋回精度を向上させることができる。
【0015】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れか一つに記載の構成において、
前記制御部は、前記旋回動作の旋回中心が、前記第1ラインと前記第2ラインとの交点に重なるようにして前記旋回動作を行うように前記駆動部を制御するように構成されてもよい。
【0016】
上記(5)の構成によれば、旋回中心が第1ラインと第2ラインとの交点に重なるようにして車両本体が旋回動作を行うため、第1ラインから第2ラインへと進行方向が大きく変更される右左折ポイントにおいて、誘導ラインに確実に沿うようにして車両本体を旋回させることができる。従って、例えば多数の栽培ベンチが並べて配置された狭い通路であっても、無人搬送車の誘導走行を正確に実現することができる。
【0017】
(6)幾つかの実施形態では、上記(2)乃至(5)の何れか一つに記載の構成において、
前記制御部は、前記第1画像内に前記誘導ラインが含まれない場合には前記第2画像内に前記誘導ラインが含まれるか否かを判断し、前記第2画像内に前記誘導ラインが含まれると判断した場合は該第2画像内の前記誘導ラインの傾きに応じて前記車両本体を誘導するように前記駆動部を制御するように構成されてもよい。
【0018】
前進走行時の指標とされる走行路面上の誘導ラインは、落下物や付着等の影響により、その一部が隠れたり掠れたりして撮像装置による読み取りが困難な場合があり得る。
この点、上記(6)の構成によれば、車両本体の前部下方の第1画像内で誘導ラインを読み取ることが困難な場合でも、車両本体の後部下方の第2画像内で誘導ラインを読み取ることができる場合には、該第2撮像装置によって得られた第2画像内の誘導ラインの傾きに応じて、無人搬送車を誘導ラインに沿って停止させずに継続して誘導することができる。従って、無人搬送車の稼働率を向上させて作業効率の向上を図ることができる。また、他の複雑な構成を必要とすることがなく、簡易な構成で車両本体を適切に誘導することができる。
【0019】
(7)幾つかの実施形態では、上記(6)の構成において、
前記制御部は、前記第2画像内における前記誘導ラインの傾きと、予め設定された前記第1撮像装置と前記第2撮像装置との距離とに基づき前記第1撮像装置で撮像されるであろう前記第1画像内における前記誘導ラインの位置を予測し、当該予測された位置に基づき前記車両本体を誘導するように前記駆動部を制御するように構成されてもよい。
【0020】
上記(7)の構成によれば、車両本体の前部に配置した第1撮像装置で撮像した第1画像内に誘導ラインが含まれない場合であっても、車両本体の後部に配置した第2撮像装置で撮像した第2画像内に誘導ラインが含まれる場合には、この第2画像内における誘導ラインの傾きと、予め設定された第1撮像装置及び第2撮像装置間の距離とに基づき、無人搬送車を停止させずに継続して誘導ラインに沿って誘導することができる。従って、無人搬送車の稼働率を向上させて作業効率の向上を図ることができる。また、他の複雑な構成を必要とすることがなく、簡易な構成で車両本体を適切に誘導することができる。
【0021】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(7)の何れか一つに記載の構成において、
前記駆動部は、少なくとも2つの前記車輪に各々独立に駆動力を付与するように構成され、
前記制御部は、少なくとも2つの前記車輪を各々逆向きに回転させて前記旋回動作を行うように前記駆動部を制御するように構成されてもよい。
【0022】
上記(8)の構成によれば、旋回の内側に位置する左右何れか一方の車輪が旋回前の回転方向に対して逆回転することで、2つの車輪をそれぞれ逆向きに回転させて超信地旋回を行うことができる。従って、最小旋回半径を可能な限り小さく抑えることができるため、小回り容易な無人搬送車を実現することができる。
【0023】
(9)幾つかの実施形態では、上記(2)乃至(8)の何れか一つに記載の構成において、
前記車輪は、任意の水平方向に方向転換可能な後輪と、駆動力が付与される左右一対の前輪とを含み、
前記撮像装置は、少なくともその一部が前記前輪の車軸よりも前方に配置された前記第1撮像装置と、少なくともその一部が前記後輪の車軸よりも後方に配置された前記第2撮像装置との少なくとも何れか一方を含んでもよい。
【0024】
上記(9)の構成によれば、第1撮像装置と第2撮像装置との距離を大きく確保して両撮像装置間のスペースのレイアウトの自由度を向上させることができる。
また、上記(6)又は(7)の構成を採用した場合に、さらに、上記(9)のように構成することにより、第1撮像装置と第2撮像装置との距離を大きく確保できるので、例えば、第1画像内に第1ラインが含まれない状態での走行がある程度の範囲(第1撮像装置と第2撮像装置との間の距離未満)続いたとしても、第2撮像装置から取得した第2画像内の第1ラインに基づき、該第1ラインに沿うようにして無人搬送車を確実に誘導することができる。
【0025】
(10)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(9)の何れか一つに記載の構成において、前記無人搬送車は、農業用無人搬送車を含んでもよい。
【0026】
上記(10)の構成によれば、農園又は施設園芸農場のハウス内等を走行可能な農業用の無人搬送車を得ることができる。従って、無人搬送車を農業用に用いて作業者の負担軽減及び生産効率の向上との両立を図ることができる。
【0027】
(11)本発明の少なくとも一実施形態に係る無人搬送システムは、
上記(1)乃至(10)の何れか一つに記載の無人搬送車と、
前記無人搬送車の進行方向に沿う前記第1ラインと該第1ラインに交差する前記第2ラインとを含む前記誘導ラインと、
前記第1ラインと前記第2ラインとの交点に配置された前記マークと、
を備える。
【0028】
上記(11)の構成によれば、磁気テープ等の高価なインフラ設備を必要とせず、光学誘導方式を用いて車両本体を誘導可能な無人搬送システムを低コストで実現することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の幾つかの実施形態によれば、広範囲に亘って走行可能な無人搬送車を低コストで実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】一実施形態に係る無人搬送システムの概略構成を示す図である。
図2】一実施形態に係る無人搬送車の外観を示す概略斜視図である。
図3】一実施形態に係る無人搬送車における制御系の構成を示すブロック図である。
図4】一実施形態に係る無人搬送車による誘導走行を概略的に示す図である。
図5】一実施形態に係る無人搬送車による処理を示すフローチャートである。
図6】一実施形態に係る無人搬送車による旋回動作を示す概略図であり、(a)は旋回位置に到達した状態、(b)は旋回中、(c)は旋回終了の状態を示す。
図7】一実施形態における第2画像を示す概略図であり、(a)は旋回中、(b)は第2画像内に誘導ラインが表示された状態、(c)は第2画像内の中央線に誘導ラインが重ねて表示される状態を示す。
図8】他の実施形態に係る無人搬送車による処理を示すフローチャートである。
図9】一実施形態における第1画像及び第2画像を示す概略図である。
図10】一実施形態における第2画像内の誘導ラインの傾きから第1画像内の誘導ラインを推定する様子を示す概念図である。
図11】一実施形態に係る無人搬送車の下部構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0032】
図1は、一実施形態に係る無人搬送システムの概略構成を示す図である。図2は、一実施形態に係る無人搬送車の外観を示す概略斜視図である。図3は、一実施形態に係る無人搬送車における制御系の構成を示すブロック図である。図4は、一実施形態に係る無人搬送車による誘導走行を概略的に示す図である。
図1に非限定的に示すように、一実施形態に係る無人搬送システム1は、無人搬送車10と、該無人搬送車10の進行方向に沿う第1ライン8Aと該第1ライン8Aに交差する第2ライン8Bとを含む誘導ライン8と、第1ライン8Aと第2ライン8Bとの交点Pに配置されたマーク7と、を備えている。
【0033】
まず、無人搬送車10の構成について説明する。
図1図4に示すように、本発明の少なくとも一実施形態に係る無人搬送車10は、進行方向に沿う第1ライン8Aと該第1ライン8Aに交差する第2ライン8Bとを含む誘導ライン8に沿って移動可能な無人搬送車10として構成され得る。
この無人搬送車10は、車両本体12と、該車両本体12に回転自在に取り付けられた少なくとも2つの車輪20と、少なくとも2つの車輪20に回転力を付与する少なくとも1つの駆動部24と、少なくとも車両本体12の前部下方の走行路面4(図1参照)を撮像した第1画像43(図4図9及び図10参照)及び車両本体12の後部下方の走行路面4を撮像した第2画像44(図7図9及び図10参照)を取得するための少なくとも1つの撮像装置40と、第1画像43内に含まれる第1ライン8Aに基づき第1ライン8Aに沿うように車両本体12を誘導するように駆動部24を制御するように構成された制御部70と、車両本体12の下部に搭載され、第1ライン8Aと第2ライン8Bとの交点Pに配置されたマーク7を検出して制御部70に検出信号を送信する検出部17と、を備えている。
【0034】
車両本体12は、例えば、図2に示すように、箱型(矩形)の筐体を含んでもよく、該車両本体12の上部には、搬送対象物を搭載可能な載置台14を配置してもよい。なお、載置台14は、例えば、平板状、椀状、盆型又は箱型等、搬送対象物の種類や形状等に応じて該搬送対象物を適切に搬送可能な形状を採用し得る。
【0035】
少なくとも2つの車輪20は、無人搬送車10が走行する走行路面4の路面状況に応じて、各々の直径、幅、トレッドの有無又はトレッドパターン等を採用し得る。各車輪20は、図示しない軸受部や衝撃吸収機構等を介して車両本体12に直接的に取り付けられてもよいし、図示しないベース等を介して車両本体12の下部に配置されてもよい。
【0036】
駆動部24は、上記車輪20に回転力を付与できるものであればよく、該駆動部24としては、例えば電動機又は内燃機関等、種々の動力源を採用し得る。幾つかの実施形態では、例えば、図3及び図4に示すように、駆動部24としてモータ(第1モータ24A及び第2モータ24B)を含んでもよい。
【0037】
撮像装置40は、車両本体12の下方を撮像可能に配置される。この撮像装置40は、例えば、レンズ46(図11参照)を通して入射した走行路面4からの反射光をCCD(charge-coupled device)又はCMOS(complementary metal oxide semiconductor)等のイメージセンサでデジタル画像に変換し、変換された画像データを制御部70に送信するように構成され得る。幾つかの実施形態において、撮像装置40は、レンズ46の下方に透明のレンズカバー45(図11参照)を備えていてもよい。
【0038】
幾つかの実施形態では、単一の撮像装置40により、該撮像装置40による撮像範囲を車両本体12の前部下方と後部下方とに切替可能に構成されていてもよい。撮像範囲の切替えは、レンズ46の向きを少なくとも車両本体12の前部下方と後部下方とに切替えられるようにして撮像装置40の取り付け角度を切り替える構成としてもよいし、撮像装置40自体を前後にスライドさせる等して撮像範囲を切り替える構成としてもよく、これらの切替えを行うためのアクチュエータを設けてもよい。
【0039】
幾つかの実施形態において、無人搬送車10は、例えば図3及び図4に非限定的に示すように、第1画像43と第2画像44とをそれぞれ撮像するための複数(例えば、第1撮像装置41及び第2撮像装置42の2つ)の撮像装置40を備えていてもよい。
【0040】
検出部17は、例えば、マーク7としてRFIDタグを用いた場合に該RFIDタグを検出可能なRFIDリーダー等のアンテナであってもよい。他の実施形態では、例えば、マーク7としてバーコードやQRコード(登録商標)を用いると共に、検出部17としてバーコードリーダーやQRコード(登録商標)リーダーを用いる構成としてもよい。
幾つかの実施形態において、検出部17は、車輪20、20の間に配置されていてもよく、例えば、図4に非限定的に示すように、平面視にて各車輪20,20を結ぶ車軸22上であって、各車輪20,20からの距離が概ね等しい位置(即ち、各車輪20,20を結ぶ線の中央)に配置されていてもよい。
【0041】
図3に非限定的に例示するように、制御部70は、例えば、コンピュータであり、各種処理を実行する演算部としてのCPU72、該CPU72が実行する各種プログラムの展開領域や演算領域等のワーク領域として機能するRAM(Random Access Memory)73、各プログラムやテーブル等のデータを記憶するための記憶部としてのROM(Read Only Memory)74の他、通信ネットワークに接続するための通信インターフェース(図示略)、及び外部記憶装置が装着されるアクセス部(図示略)等を備えていてもよい。これらは全て、バス75を介して電気的に接続される。ROM74には、例えば、撮像装置40により取得した画像に基づき無人搬送車10を誘導走行させるための誘導走行プログラム80等が格納されていてもよい。更に、制御部70は、例えば、キーボードやマウス等からなる入力部77及び各種データを表示する液晶表示装置等からなる表示部78等を備えた操作パネル76と、上述した撮像装置40、駆動部(モータ)24及び検出部17が接続されていてもよい。
【0042】
そして、本発明の少なくとも一実施形態における制御部70は、検出部17からの検出信号に基づいて、第1ライン8Aに沿う状態から第2ライン8Bに沿うように車両本体12を旋回させる旋回動作を開始するように駆動部24を制御するとともに、第2画像44内の少なくとも一部の領域である判定領域R内に第2ライン8Bが含まれるとの判断結果(例えば、図7(b)参照)に基づいて旋回動作を終了するように駆動部24を制御するように構成される。
【0043】
上記判定領域Rは、例えば、第1画像43又は第2画像44の表示領域のうち、無人搬送車10の進行方向(例えば、図4図7及び図9図10では図中の上方向)に沿って縦方向に表示される中央線Cを含み、該中央線Cから左右にそれぞれ所定の幅を有するように規定してもよい。所定の幅は、例えば、誘導ライン8の幅と同等にしてもよいし、表示領域の範囲内で任意に規定してもよい。
【0044】
具体的に、制御部70は、ROM74に格納された誘導走行プログラム80をCPU72が読み出してRAM73に展開し実行することにより、例えば、図5図7に例示するような誘導ライン8に沿う誘導走行を実現し得る。
【0045】
図5は、一実施形態に係る無人搬送車による処理を示すフローチャートである。図6は、一実施形態に係る無人搬送車による旋回動作を示す概略図であり、(a)は旋回位置に到達した状態、(b)は旋回中、(c)は旋回終了の状態を示す。図7は、一実施形態における第2画像を示す概略図であり、(a)は旋回中、(b)は第2画像内に誘導ラインが表示された状態、(c)は第2画像内の中央線に誘導ラインが重ねて表示される状態を示す。
以下、図1図7を参照して本発明の少なくとも一実施形態に係る無人搬送車10の誘導走行及び旋回動作について説明する。
【0046】
図5に非限定的に例示するように、制御部70は、例えば、操作パネル76の入力部77から誘導走行の開始指示に基づく誘導走行処理の開始に伴い、撮像装置40をONにして(ステップS1)第1画像43を取得する(ステップS2)。そして、第1画像43内に誘導ライン8(より詳細には第1ライン8A)が含まれる場合(例えば、図4の破線枠A参照)、該誘導ライン8に沿って無人搬送車10が移動するように、駆動部24に駆動信号を送信し、誘導走行を実行する(ステップS3)。第1画像43内の誘導ライン8に基づく誘導走行は、例えば、第1画像43の重心と該第1画像43内に含まれる誘導ライン8の重心とに基づき、それぞれの重心が重なる方向に駆動部24を駆動することで実現されてもよい。
なお、第1画像43内の誘導ライン8を識別するための処理や、識別した誘導ライン8の傾きに応じて無人搬送車10が誘導ライン8に沿って移動するように駆動部24を駆動するための処理については周知の技術を適用し得るため、ここでは詳述しない。
【0047】
誘導ライン8に基づく誘導走行を開始すると、CPU72は、第1ライン8Aと第2ライン8Bとの交点Pに設置したマーク7(例えば、RFIDタグ)を無人搬送車10の旋回中心位置に設置した検出部17(例えば、RFIDリーダー)で検出し、無人搬送車10の旋回中心32が旋回地点(例えば、第1ライン8Aと第2ライン8Bとの交点P)に到達したか否かの判断を行う(ステップS4)。CPU72は、旋回中心32が旋回地点に到達したと判断しない場合(ステップS4:NO)はステップS4の処理を繰り返し実行する。一方、例えば、図6(a)に例示するように、無人搬送車10の旋回中心32が旋回地点(例えば交点P)に到達したと判断した場合(ステップS4:YES)、CPU72は、旋回動作を開始する(ステップS5)。
【0048】
旋回動作の開始に伴い、CPU72は、撮像装置40を介して第2画像44を取得し(ステップS6)、該第2画像44内の判定領域R内に誘導ライン8(より詳細には第2ライン8B)が含まれるか否かを判断する(ステップS7)とともに、右回り又は左回りの所定の旋回方向に向けて無人搬送車10を旋回させるように駆動部24を駆動する制御を実行する。所定の旋回方向は、例えば、ROM74や外部記憶装置(図示略)等の記憶部に予め記憶された指定経路に基づいて決定されてもよいし、操作パネル76の入力部77から入力された指示に基づき決定されてもよい。
【0049】
ステップS7において、例えば、図6(b)及び図7(a)を参照して分かるように、第2画像44の判定領域R内に誘導ライン8が含まれない場合(ステップS7:NO)、CPU72は、ステップS7の処理を繰り返し実行する。一方、例えば、図6(c)、及び、図7(b)又は図7(c)を参照して分かるように、判定領域R内に誘導ライン8が含まれる場合(ステップS7:YES)、CPU72は、旋回動作を終了するように駆動部24を制御(ステップS8)し、続いて、該第2画像44内の誘導ライン8に沿って無人搬送車10が移動するように誘導走行を実行する(ステップS9)。より詳細には、CPU72は、旋回動作の終了に伴い、撮像装置40を介して取得する画像を第2画像44から第1画像43に切り替え、該第1画像43内に含まれる誘導ライン8に沿って移動する制御を実行する。
なお、本明細書では、説明のため便宜的に、旋回動作前に無人搬送車10を案内する誘導ライン8を第1ライン8A、該第1ライン8Aに交差する誘導ライン8を第2ライン8Bと規定しているが、旋回動作前に第2ライン8Bであった誘導ライン8が旋回動作完了後に無人搬送車10の進行方向(前後方向)に沿い、新たに第1ライン8Aとして扱われることは当業者には明らかであろう。
【0050】
上記の構成によれば、車両本体12の少なくとも前部下方の走行路面4を撮像した第1画像43に基づき、光学誘導方式を用いて車両本体12を誘導することができる。これにより、磁気テープ等の高価なインフラ設備を必要とせず、光学的に取得した画像内で識別可能な誘導ライン8を、例えば、安価なテープや塗料等で描くという簡易な構成で誘導走行を実現できるため、広範囲に亘って走行可能な無人搬送車10を低コストで実現することができる。
また、走行路面4が滑りやすい場合、例えば、エンコーダ等を用いて車輪の回転数から車両本体12の位置や向き、姿勢を把握する構成では滑りの影響で誤差が生じるため精度が低くなるが、上記の構成によれば、走行路面4への落下物や雨、露等に起因して車輪20に滑りが生じた場合であっても、第1ライン8Aと第2ライン8Bとの交点Pに配置されたマーク7(RFIDタグ)を検出部17(RFIDリーダー)で検出することで旋回動作を開始することができる。また、旋回動作の完了を第2画像44内の第2ライン8Bの有無によってリアルタイムに且つ確実に把握することができるので、車両本体12が完全に旋回し切ったか否かを確実に判断することができる。また、旋回不足や過剰旋回を可能な限り抑制して旋回開始から旋回完了までに要する収束時間を短縮することができるため、無駄な動作を排除して円滑な誘導走行を実現することができる。
なお、180度旋回(Uターン)する際には第2ライン8Bを認識した後も旋回を続け、第1ライン8Aを認識することで旋回動作を終了するように構成してもよい。
また、幾つかの実施形態では、例えば、図11に示すように、撮像装置40による撮像範囲を照らす照明装置50や、撮像装置40及び照明装置50の周囲を覆って外光を遮断する遮光部材60を車両本体12の下部に配置してもよい。
【0051】
幾つかの実施形態において、少なくとも1つの撮像装置40は、旋回動作の旋回中心32よりも前部に配置されて第1画像43を取得する第1撮像装置41と、旋回中心32よりも車両本体12の後部に配置されて第2画像44を取得する第2撮像装置42と、を含んでもよい(例えば、図4図6及び図9参照)。
【0052】
図8は、上記第1撮像装置41及び第2撮像装置42を備えた他の実施形態に係る無人搬送車による処理を示すフローチャートである。
図8に非限定的に例示するように、制御部70は、例えば、操作パネル76の入力部77から誘導走行の開始指示に基づく誘導走行処理の開始に伴い、第1撮像装置41をONにして(ステップS11)第1画像43を取得する(ステップS12)。そして、第1画像43内に誘導ライン8(より詳細には第1ライン8A)が含まれる場合(図4参照)、該誘導ライン8に沿って無人搬送車10が移動するように、駆動部24に駆動信号を送信し、誘導走行を実行する(ステップS13)。
【0053】
誘導ライン8に基づく誘導走行を開始すると、CPU72は、検出部17(RFIDリーダー)が第1ライン8Aと第2ライン8Bとの交点に設置されたマーク7(RFIDタグ)を検出することで送信される検出信号に基づき、無人搬送車10の旋回中心32が旋回地点(交点P)に到達したと判断を行う(ステップS14)。CPU72は、旋回中心32が旋回地点に到達したと判断しない場合(ステップS14:NO)はステップS14の処理を繰り返し実行する。一方、例えば、図6(a)に例示するように、無人搬送車10の旋回中心32が旋回地点(例えば交点P)に到達したと判断した場合(ステップS14:YES)、CPU72は、旋回動作を開始する(ステップS15)。
【0054】
旋回動作の開始に伴い、CPU72は、第2撮像装置42をONにして(ステップS16)、第2画像44を取得し(ステップS17)、該第2画像44内の判定領域R内に誘導ライン8(より詳細には第2ライン8B)が含まれるか否かを判断する(ステップS18)とともに、右回り又は左回りの所定の旋回方向に向けて無人搬送車10を旋回させるように駆動部24を駆動する制御を実行する。
【0055】
ステップS18において、例えば、図6(b)及び図7(a)を参照して分かるように、第2画像44の判定領域R内に誘導ライン8が含まれない場合(ステップS18:NO)、CPU72は、ステップS18の処理を繰り返し実行する。一方、例えば、図6(c)、及び、図7(b)又は図7(c)を参照して分かるように、判定領域R内に誘導ライン8が含まれる場合(ステップS18:YES)、CPU72は、旋回動作を終了するように駆動部24を制御し(ステップS19)、続いて、該第2画像44内の誘導ライン8に沿って無人搬送車10が移動するように誘導走行を実行する(ステップS20)。より詳細には、CPU72は、旋回動作の終了に伴い、撮像装置40を介して取得する画像を第2画像44から第1画像43に切り替え、該第1画像43内に含まれる誘導ライン8に沿って移動する制御を実行する。
【0056】
上記の構成によれば、第1画像43と第2画像44とをそれぞれ第1撮像装置41及び第2撮像装置42という別々の撮像装置40で撮像することができる。これにより、各画像43,44を、例えば走行路面4の真上から撮像して取得することができる。つまり、車両本体12の前部下方及び後部下方の走行路面4の画像を影等の影響を抑えて近距離から鮮明に撮像することができるので、第1画像43及び第2画像44の画質を向上させることができる。よって、誘導ライン8に沿った誘導走行の信頼性や安定性を向上させることができる。
さらに、第2撮像装置42を設けたことにより、例えば、第2画像44内に含まれる誘導ライン8に沿って車両本体12を誘導するように制御部70を構成すれば、後退時には進行方向(後退方向)において前部下方の画像に相当する第2画像44に基づいて車両本体12を誘導することができる。
なお、幾つかの実施形態では、第1撮像装置41及び第2撮像装置42に隣接して、各撮像装置41,42による撮像範囲を照らす照明装置50としての第1照明装置51及び第2照明装置52をそれぞれ配置してもよい(図3及び図11参照)。
【0057】
幾つかの実施形態において、制御部70は、第1撮像装置41及び第2撮像装置42のうち、旋回中心32からより離れた位置に配置された撮像装置40で取得された画像内に含まれる誘導ライン8(より詳細には第2ライン8B)に基づき旋回動作の終了を判断するように構成されてもよい。
例えば、図6に非限定的に例示するように、無人搬送車10の車両本体12に搭載された状態で、旋回中心32から第1撮像装置41のレンズまでの距離(D1)よりも旋回中心32から第2撮像装置42のレンズまでの距離(D2)が大きい場合(D1<D2:図6(b)参照)、制御部70は、第2撮像装置42から得られる第2画像44内の判定領域R内に誘導ライン8が含まれる場合に旋回動作の終了を判断する。一方、旋回中心32からレンズまでの距離が第2撮像装置42よりも第1撮像装置41の方が大きい場合(D1>D2)、制御部70は、第1撮像装置41により得られる第1画像43内の判定領域R内に誘導ライン8が含まれる場合に旋回動作の終了を判断する。
【0058】
このように、旋回中心32からより離れた位置に配置された撮像装置40で取得した画像内に含まれる誘導ライン8に基づき旋回終了を判断する構成によれば、制御部70が、旋回中心32に近い位置に配置された撮像装置40で取得した画像に基づいて旋回終了を判断する場合に比べて、旋回終了の判断に関する判定精度を向上させることができる。従って、旋回終了後における車両本体12の向きを、その後の進行方向である第2ライン8Bにより高精度に合致させることができるため、誘導走行の信頼性の向上を図ることができる。
【0059】
幾つかの実施形態において、制御部70は、第2画像44に含まれる第2ライン8Bの少なくとも一部が第2画像44内で車両本体12の前後方向に沿う第2画像44の中央線Cに重なる場合(例えば図7(c)参照)に旋回動作の終了を判断するように構成されてもよい。このように構成すれば、旋回後の進行方向をより一層第2ライン8Bに合致させることができるので、旋回精度の向上を図ることができる。さらに、例えば、第2ライン8Bの幅方向の中央線と第2画像44の中央線Cとが重なる場合に旋回完了と判断するように制御部70を構成した場合は、より一層旋回精度を向上させることができる。
【0060】
幾つかの実施形態では、上記旋回動作の旋回中心32が、第1ライン8Aと第2ライン8Bとの交点Pに重なるようにして旋回動作を行うように構成されてもよい。例えば、2つの車輪20,20を互いに逆向きに回転させて超信地旋回を行う場合、車幅方向において、駆動輪たる各車輪20の回転中心を結ぶ回転中心線の中間点が旋回中心32となるから、各車輪20,20の中間点の下方に交点Pが位置するようにして旋回動作を行ってもよい。
【0061】
上記の構成によれば、旋回動作の旋回中心32が第1ライン8Aと第2ライン8Bとの交点Pに重なるようにして車両本体12が旋回動作を行うため、第1ライン8Aから第2ライン8Bへと進行方向が大きく変更される右左折ポイントにおいて、誘導ライン8に確実に沿うようにして車両本体12を旋回させることができる。従って、例えば多数の集配ポイント6(図1参照)が並べて配置された狭い通路であっても、無人搬送車10の誘導走行を正確に実現することができる。
【0062】
図9は、一実施形態における第1画像及び第2画像を示す概略図である。
図9に非限定的に例示するように、幾つかの実施形態において、制御部70は、第1画像43内に誘導ライン8が含まれない場合には第2画像44内に誘導ライン8が含まれるか否かを判断し、第2画像44内に誘導ライン8が含まれると判断した場合は該第2画像44内の誘導ライン8の傾きに応じて車両本体12を誘導するように駆動部24を制御するように構成されてもよい。
【0063】
前進走行時の指標とされる走行路面4上の誘導ライン8(より詳細には第1ライン8A)は、例えば、落葉等の落下物や付着等の異物9の影響により、その一部が隠れたり掠れたりして撮像装置40による読み取りが困難な場合があり得る(例えば図9参照)。
この点、上記のように構成すれば、車両本体12の前部下方の第1画像43内で誘導ライン8を読み取ることが困難な場合でも、車両本体12の後部下方の第2画像44内で誘導ライン8を読み取ることができる場合には、該第2撮像装置42によって得られた第2画像44内の誘導ライン8の傾きに応じて、無人搬送車10を誘導ライン8に沿って停止させずに継続して誘導することができる。従って、無人搬送車10の稼働率を向上させて作業効率の向上を図ることができる。また、他の複雑な構成を必要とすることがなく、簡易な構成で車両本体12を適切に誘導することができる。
【0064】
図10は、一実施形態における第2画像内の誘導ラインの傾きから第1画像内の誘導ラインを推定する様子を示す概念図である。
図10に非限定的に例示するように、幾つかの実施形態において、制御部70は、第2画像44内における誘導ライン8の傾きと、予め設定された第1撮像装置41と第2撮像装置42との距離D3とに基づき、第1撮像装置41で撮像されるであろう第1画像43内における誘導ライン8の位置を予測し、当該予測された位置に基づき車両本体12を誘導するように駆動部24を制御するように構成されてもよい。
【0065】
このように構成すれば、車両本体12の前部に配置した第1撮像装置41で撮像した第1画像43内に誘導ライン8が含まれない場合であっても、車両本体12の後部に配置した第2撮像装置42で撮像した第2画像44内に誘導ライン8が含まれる場合には、この第2画像44内における誘導ライン8の傾きと、予め設定された第1撮像装置41及び第2撮像装置42間の距離とに基づき、無人搬送車10を停止させずに継続して誘導ライン8に沿って誘導することができる。従って、無人搬送車10の稼働率を向上させて作業効率の向上を図ることができる。また、他の複雑な構成を必要とすることがなく、簡易な構成で車両本体12を適切に誘導することができる。
【0066】
幾つかの実施形態において、駆動部24は、少なくとも2つの車輪20に各々独立に駆動力を付与するように構成され、制御部70は、少なくとも2つの車輪20を各々逆向きに回転させて旋回動作を行うように駆動部24を制御するように構成されてもよい。
具体的には、例えば、上述したステップS4又はステップS14において、旋回中心32が第1ライン8Aと第2ライン8Bとの交点Pに到達したと判断した場合(ステップS4:YES、又は、ステップS14:YES)、CPU72は、車輪20,20を各々逆向きに回転させて旋回動作を行うように駆動部24を制御する。
【0067】
上記の構成によれば、旋回の内側に位置する左右何れか一方の車輪20が旋回前の回転方向に対して逆回転することで、無人搬送車10が所謂超信地旋回を行うことができる。従って、最小旋回半径を可能な限り小さく抑えることができるため、小回り容易な無人搬送車10を実現することができる。
【0068】
幾つかの実施形態において、車輪20は、任意の水平方向に方向転換可能な後輪(例えばキャスタ26)と、駆動力が付与される左右一対の前輪(例えば車輪20)とを含み、撮像装置40は、少なくともその一部が前輪の車軸22よりも前方に配置された第1撮像装置41と、少なくともその一部が後輪の車軸22よりも後方に配置された第2撮像装置42との少なくとも何れか一方を含んでもよい(例えば、図9参照)。
【0069】
上記の構成によれば、第1撮像装置41と第2撮像装置42との距離を大きく確保して両撮像装置40間のスペースのレイアウトの自由度を向上させることができる。
また、第1画像43内に誘導ライン8が含まれない場合に第2画像44内の誘導ライン8の傾きに応じて車両本体12を誘導する構成を採用した場合に、さらに、上記のように構成することにより、第1撮像装置41と第2撮像装置42との距離を大きく確保できるので、例えば、第1画像43内に誘導ライン8が含まれない状態での走行がある程度の範囲(第1撮像装置41と第2撮像装置42との間の距離D3未満)続いたとしても、第2撮像装置42から取得した第2画像44内の誘導ライン8に基づき、該誘導ライン8に沿うようにして無人搬送車10を確実に誘導することができる。
【0070】
幾つかの実施形態において、無人搬送車10は、農業用無人搬送車を含んでもよい。
この場合、無人搬送車10は、例えば、多数の集配ポイント6が所定の間隔を隔てて並べて配置された走行路面4を、該走行路面4上に設置された誘導ライン8に沿って移動し、集荷場5と集配ポイント6との間で搬送対象物(被搬送物)を搬送し得るように構成されてもよい。すなわち、幾つかの実施形態における無人搬送車10は、例えば、農園や施設園芸農場等(農園等)において屋外やハウス内等を移動可能な自律走行型の搬送車両として構成され得る。この場合の集配ポイント6(図1参照)は、例えば、栽培ベンチや棚等であってもよい。
【0071】
上記の構成によれば、農園又は施設園芸農場のハウス内等を走行可能な農業用の無人搬送車10を得ることができる。従って、無人搬送車10を農業用に用いて作業者の負担軽減及び生産効率の向上との両立を図ることができる。また、例えば、通路の幅等に応じて車両本体12の大きさを設定することにより、比較的狭い通路で行うピッキングや収穫に伴う搬送作業を適切に補助して作業者の負担を大幅に軽減することができる。
【0072】
以上述べた構成によれば、広範囲に亘って走行可能な無人搬送車10を低コストで実現することができる。
なお、上述した幾つかの実施形態で説明した本発明を適用した無人搬送車10は、上述したような農園等以外の施設(例えば、コンクリート、アスファルト、木製等の平坦な整備面)で用いることも可能である。
【0073】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変更を加えた形態や、これらの形態を組み合わせた形態も含む。
【符号の説明】
【0074】
1 無人搬送システム
4 走行路面
5 集荷場
6 集配ポイント(棚/栽培ベンチ)
7 マーク(RFIDタグ)
8 誘導ライン
8A 第1ライン
8B 第2ライン
9 異物(落葉)
10 無人搬送車
12 車両本体
14 載置台
17 検出部(RFIDリーダー/アンテナ)
20 車輪(前輪/駆動輪)
22 車軸
24 駆動部(モータ)
24A 第1モータ
24B 第2モータ
26 キャスタ(後輪/従動輪)
32 旋回中心
40 撮像装置
41 第1撮像装置(前方カメラ)
42 第2撮像装置(後方カメラ)
43 第1画像
44 第2画像
45 レンズカバー
46 レンズ
50 照明装置
51 第1照明装置
52 第2照明装置
60 遮光部材
70 制御部
72 CPU
73 RAM
74 ROM
75 バス
76 操作パネル
77 入力部
78 表示部
80 誘導走行プログラム
C 中央線
P 交点
R 判定領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11