(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】表面処理剤及び表面処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20221028BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20221028BHJP
【FI】
H01L21/304 647A
H01L21/30 569E
(21)【出願番号】P 2018169610
(22)【出願日】2018-09-11
【審査請求日】2021-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】並木 拓海
(72)【発明者】
【氏名】内田 江美
(72)【発明者】
【氏名】菅原 まい
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-192879(JP,A)
【文献】特開2017-063179(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリル化剤(A)と、分子内にアミド骨格を有する化合物(C)と、
含窒素複素環化合物又はその塩(B1)(ただし、前記シリル化剤(A)に該当するもの及び前記化合物(C)に該当するものを除く)と、溶剤(S)(ただし、前記化合物(C)に該当するものを除く)とを含有
し、
前記化合物(C)が下記一般式(c1)で表される化合物であり、
前記化合物(C)の含有量が、表面処理剤全量に対して、20質量%以下であり、
前記含窒素複素環化合物が、含窒素5員環骨格を含む縮合多環又は含窒素5員環を含み、且つ芳香族性を有する化合物である、
表面処理剤。
【化1】
[式中、Rc
1
及びRc
2
は、それぞれ独立に、水素原子、又は置換基を有していてもよい炭化水素基を表し、Rc
3
は、水素原子、含窒素基又は有機基を表す。]
【請求項2】
請求項
1に記載の表面処理剤を用いて、被処理体の表面処理を行う、表面処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理剤及び表面処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの高集積化及び微小化の傾向が高まり、基板上の無機パターンの微細化及び高アスペクト比化が進んでいる。しかし、その一方で、いわゆるパターン倒れの問題が生じるようになっている。このパターン倒れは、基板上に多数の無機パターンを並列させて形成する際、隣接するパターン同士がもたれ合うように近接し、場合によってはパターンが基部から折損したり、剥離したりする現象のことである。このようなパターン倒れが生じると、製品の歩留まり及び信頼性の低下を引き起こすことになる。
【0003】
このパターン倒れは、パターン形成後の洗浄処理において、洗浄液が乾燥する際、その洗浄液の表面張力により発生することが分かっている。つまり、乾燥過程で洗浄液が除去される際に、パターン間に洗浄液の表面張力に基づく応力が作用し、パターン倒れが生じることになる。
【0004】
このような背景から、特許文献1や特許文献2にあるような保護膜形成用薬液の適用が提案されている。これらの文献に記載の薬液によれば、凹凸パターンの表面を撥水化することができ、結果としてパターン倒れが抑制できるとされている。
【0005】
また、パターン倒れとは異なるが、エッチングマスクとなる樹脂パターンと基板との密着性を向上させて現像液による樹脂パターンの一部損失を防止するために、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)等のシリル化剤を用いて基板の表面を撥水化(シリル化)することが行われている(例えば、特許文献3の[発明の背景]を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-66785号公報
【文献】特開2012-033873号公報
【文献】特表平11-511900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
半導体基板等の被処理体の表面を撥水化処理する表面処理剤は、品質が安定し、使用性に優れていることが求められる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、品質の安定した表面処理剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の構成を採用した。
【0009】
本発明の第1の態様は、シリル化剤(A)と、分子内にアミド骨格を有する化合物(C)と、を含有する、表面処理剤である。
【0010】
本発明の第2の態様は、上記表面処理剤を用いて、被処理体の表面処理を行う、表面処理方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、品質の安定した表面処理剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(表面処理剤)
本実施形態の表面処理剤は、シリル化剤(A)と、分子内にアミド骨格を有する化合物(C)と、を含有する。
表面処理の対象となる「被処理体」としては、半導体デバイス作製のために使用される基板が例示され、例えば、ケイ素(Si)基板、窒化ケイ素(SiN)基板、シリコン酸化膜(Ox)基板、タングステン(W)基板、コバルト(Co)基板、窒化チタン(TiN)基板、窒化タンタル(TaN)基板、ゲルマニウム(Ge)基板、シリコンゲルマニウム(SiGe)基板、アルミニウム(Al)基板、ニッケル(Ni)基板、ルテニウム(Ru)基板、銅(Cu)基板等が挙げられる。
「基板の表面」とは、基板自体の表面のほか、基板上に設けられた無機パターンの表面、並びにパターン化されていない無機層の表面が挙げられる。
ケイ素(Si)基板を例にとって説明すると、自然酸化膜、熱酸化膜及び気相合成膜(CVD膜など)等の酸化ケイ素膜が表面に形成されたものであってもよく、前記酸化ケイ素膜にパターンが形成されたものであってもよい。
【0013】
本実施形態における被処理体は、表面にパターンが設けられたものであってもよい。
前記パターンの形状は、特に限定されず、例えば半導体製造工程で一般的に形成されるパターン形状とすることができる。パターン形状は、ラインパターンであってもよく、ホールパターンであってもよく、複数のピラーを含むパターンであってもよい。パターン形状は、好ましくは、複数のピラーを含むパターンである。ピラーの形状は、特に限定されないが、例えば、円柱形状、多角柱形状(四角柱形状など)等が挙げられる。
【0014】
<シリル化剤(A)>
シリル化剤(A)(以下「(A)成分」ともいう)は、被処理体(例えば、半導体基板)の表面をシリル化し、被処理体(例えば、半導体基板)の表面の撥水性を高くするための成分である。
本実施形態における(A)成分としては、特に限定されず、従来公知のあらゆるシリル化剤を用いることができる。(A)成分としては、例えば、下記の(A1)~(A3)成分が挙げられる。
(A1)成分:ケイ素原子に結合する疎水性基を有するアルコキシモノシラン化合物
(A2)成分:ケイ素原子に結合する疎水性基と、ケイ素原子に結合する脱離基とを有する化合物
(A3)成分:環状シラザン化合物
【0015】
≪(A1)成分≫
(A1)成分は、ケイ素原子に結合する疎水性基を有するアルコキシモノシラン化合物である。
ケイ素原子に結合する疎水性基を有するアルコキシモノシラン化合物は、ケイ素原子を1つ有し、上記ケイ素原子に結合する少なくとも1つの疎水性基を有し、かつ上記ケイ素原子に結合する少なくとも1つのアルコキシ基を有する化合物を意味する。
シリル化剤(A)として、ケイ素原子に結合する疎水性基を有するアルコキシモノシラン化合物を用いることにより、疎水性基を有するアルコキシモノシラン化合物を被処理体の表面に結合させることができる。アルコキシモノシラン化合物が被処理体に結合することにより、被処理体表面にアルコキシモノシラン化合物に由来する単分子膜が形成され得る。かかる単分子膜は、被処理体の有する表面の面方向にシロキサン結合のネットワークが形成されている自己組織化単分子膜(self-assembled monolayer;SAM)であることが好ましい。単分子膜、及び自己組織化単分子膜については詳細に後述する。
【0016】
上記アルコキシモノシラン化合物が有する上記疎水性基としては、疎水性向上の観点から、炭素原子数3以上20以下の鎖状脂肪族炭化水素基であることが好ましく、炭素原子数6以上18以下の鎖状脂肪族炭化水素基であることがより好ましく、炭素原子数7以上12以下の鎖状脂肪族炭化水素基であることが更に好ましく、炭素原子数8以上11以下の鎖状脂肪族炭化水素基であることが特に好ましく、炭素原子数8以上10以下の鎖状脂肪族炭化水素基であることが最も好ましい。
上記鎖状脂肪族炭化水素基は、水素原子の一部又は全部がハロゲン原子(フッ素原子等)により置換されていてもよく、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよいが、水素原子の一部又は全部がフッ素原子により置換されていてもよい直鎖状の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。
【0017】
上記アルコキシモノシラン化合物が有するアルコキシ基は、一般式RO-(Rはアルキル基を示す。)で表され、該Rで表されるアルキル基としては、好ましくは直鎖又は分岐のアルキル基であり、より好ましくは直鎖のアルキル基である。また、該Rで表されるアルキル基の炭素原子数は、特に限定されないが、特に加水分解、縮合時の制御の観点から、好ましくは1以上10以下、より好ましくは1以上5以下、更に好ましくは1又は2である。アルコキシモノシラン化合物が有するアルコキシ基としては、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、sec-ブトキシ基、及びt-ブトキシ基等が挙げられる。
【0018】
上記アルコキシモノシラン化合物としては、下記式(1)で表される化合物であることが好ましい。
R1
nSiX4-n ・・・(1)
[上記一般式中、R1は、各々独立に1価の有機基であり、R1のうちの少なくとも1つは、水素原子の一部又は全部がフッ素原子により置換されていてもよい、炭素原子数3以上20以下の鎖状脂肪族炭化水素基であり、Xはアルコキシ基であり、nは1以上3以下の整数である。]
R1に係る1価の有機基としては、アルキル基、芳香族炭化水素基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基等が挙げられる。
【0019】
以下、R1が、水素原子の一部又は全部がフッ素原子により置換されていてもよい、炭素原子数3以上20以下の鎖状脂肪族炭化水素基以外の有機基である場合について説明する。
上記アルキル基としては、炭素原子数1以上20以下(好ましくは炭素原子数1以上8以下)の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、及びイソプロピル基がより好ましい。
上記芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、アンスリル基、及びフェナンスレニル基が好ましく、フェニル基、及びナフチル基がより好ましく、フェニル基が特に好ましい。
上記モノアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基に含まれるアルキル基は、鎖中に窒素原子、酸素原子又はカルボニル基を含んでいてもよく、直鎖アルキル基であっても分岐鎖アルキル基であってもよい。モノアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基に含まれるアルキル基の炭素原子数は特に限定されず、1以上20以下が好ましく、1以上10以下がより好ましく、1以上6以下が特に好ましい。
【0020】
次に、R1が水素原子の一部又は全部がフッ素原子により置換されていてもよい、炭素原子数3以上20以下の鎖状脂肪族炭化水素基である場合について説明する。
かかる鎖状脂肪族炭化水素基の炭素原子数は、前述の通り、炭素原子数6以上18以下がより好ましく、7以上12以下が更に好ましく、8以上11以下が特に好ましく、8以上10以下が最も好ましい。
かかる鎖状脂肪族炭化水素基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよく、直鎖状が好ましい。
上記の、水素原子の一部又は全部がフッ素原子により置換されていてもよい、鎖状脂肪族炭化水素基の好適な例としては、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、及びn-オクタデシル基等の直鎖アルキル基と、これらの直鎖アルキル基上の水素原子がフッ素置換されたフッ素化直鎖アルキル基とが挙げられる。
【0021】
Xとしては、炭素原子数1以上5以下のアルコキシ基が好ましい。Xの具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、t-ブトキシ基等のアルコキシ基が挙げられる。
これらの中では、特に加水分解、縮合時の制御の観点から、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基又はブトキシ基が好ましい。
また、上記アルコキシモノシラン化合物が、トリアルコキシモノシラン化合物であることが好ましい。
【0022】
上記に例示したアルコキシモノシラン化合物は、単独又は2種以上を混合して使用することができる。
このようなアルコキシモノシラン化合物の具体例としては、プロピルトリメトキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-オクチルトリメトキシシラン、n-ドデシルトリメトキシシラン、n-オクタデシルトリメトキシシラン等が挙げられ、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-オクチルトリメトキシシラン、n-ドデシルトリメトキシシラン又はn-オクタデシルトリメトキシシランが好ましく、n-オクチルトリメトキシシラン、n-ドデシルトリメトキシシラン又はn-オクタデシルトリメトキシシランがより好ましい。
【0023】
上述したアルコキシモノシラン化合物を用いることにより、被処理体表面に単分子膜を形成し得る。被処理体表面に、疎水性基を有するアルコキシモノシラン化合物に由来する単分子膜が形成されると、被処理体表面の疎水性が高度に向上し得る。
特に高度な疎水性向上の観点からは、単分子膜において、被処理体の有する表面の面方向にシロキサン結合のネットワークが形成されていることが好ましい。かかる単分子膜は、所謂自己組織化単分子膜である。自己組織化単分子膜においては、アルコキシモノシラン化合物に由来する残基が密に含まれ、当該残基同士がシロキサン結合により結合しているため、単分子膜が被処理体表面に強固に結合し得る。その結果、特に高度な疎水性が発現し得る。
かかる自己組織化単分子膜は、前述の通り、トリアルコキシモノシラン化合物及び/又はジアルコキシモノシラン化合物をシリル化剤(A)として用いることにより形成できる。
【0024】
上記単分子膜が形成されていることは、例えば、膜厚変化、接触角変化、X線光電子分光(XPS)により確認することができる。
なお、上記疎水性の単分子膜の膜厚としては、例えば、20nm以下とすることができ、好ましくは10nm以下、より好ましくは5nm以下、更に好ましくは3nm以下とすることができる。下限値としては本発明の効果を損なわない限り特に制限はないが、例えば、0.1nm以上であり、典型的には0.5nm以上である。
【0025】
≪(A2)成分≫
(A2)成分は、ケイ素原子に結合する疎水性基と、ケイ素原子に結合する脱離基とを有する化合物である。(A2)成分としては、例えば、以下の一般式(2)で表される化合物が挙げられる。
【0026】
【化1】
[上記一般式(2)中、R
4、R
5及びR
6は、それぞれ独立に水素原子、含窒素基又は有機基を表し、R
4、R
5及びR
6に含まれる炭素原子の合計の個数は1個以上である。LGは脱離基を表す。]
【0027】
この一般式(2)で表される化合物は、その構造中に含まれる脱離基を脱離させながら、被処理体の表面にある官能基(典型的には-OH基、-NH2基等)と反応し、化学的結合を生成し得る。
この脱離基としては、例えば、一般式(2)におけるケイ素原子に結合する窒素原子を有する含窒素基やハロゲン基、一般式(2)におけるケイ素原子に結合する酸素原子を有するアシルオキシ基やスルホキシ基若しくはそれらの誘導体、水素原子、アジド基が例示される。
【0028】
上記一般式(2)で表される置換基を有する化合物として、より具体的には、下記一般式(3)~(6)で表される化合物を用いることができる。
【0029】
【化2】
[上記一般式(3)中、R
4、R
5及びR
6は、上記一般式(2)と同様であり、R
7及びR
8は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アセチル基、又はヘテロシクロアルキル基を表す。R
7及びR
8は、互いに結合して窒素原子を含む環構造を形成してもよく、当該環構造を構成する環構成原子は、窒素原子以外のヘテロ原子を含んでいても良い。]
【0030】
【化3】
[上記一般式(4)中、R
4、R
5及びR
6は、上記一般式(2)と同様であり、R
9は、水素原子、メチル基、トリメチルシリル基、又はジメチルシリル基を表し、R
10、R
11及びR
12は、それぞれ独立に水素原子又は有機基を表し、R
10、R
11及びR
12に含まれる炭素原子の合計の個数は1個以上である。]
【0031】
【化4】
[上記一般式(5)中、R
4、R
5及びR
6は、上記一般式(2)と同様であり、Xは、O、CHR
14、CHOR
14、CR
14R
14、又はNR
15を表し、R
13及びR
14はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、トリアルキルシリル基、トリアルキルシロキシ基、アルコキシ基、フェニル基、フェニルエチル基、又はアセチル基を表し、R
15は、水素原子、アルキル基、又はトリアルキルシリル基を表す。]
【0032】
【化5】
[上記一般式(6)中、R
4、R
5及びR
6は、上記一般式(2)と同様であり、R
9は、上記一般式(4)と同様であり、R
16は、水素原子、アルキル基、又はトリアルキルシリルアミノ基を表す。]
【0033】
なお、一般式(3)~(6)におけるアルキル基及びシクロアルキル基は、当該アルキル基及びシクロアルキル基を構成する炭素原子に結合する水素原子の一部又は全部がフッ素原子により置換されていてもよい。
【0034】
上記一般式(3)で表される化合物としては、N,N-ジメチルアミノトリメチルシラン(TMSDMA)、N,N-ジメチルアミノジメチルシラン、N,N-ジメチルアミノモノメチルシラン、N,N-ジエチルアミノトリメチルシラン、t-ブチルアミノトリメチルシラン、アリルアミノトリメチルシラン、トリメチルシリルアセタミド、N,N-ジメチルアミノジメチルビニルシラン、N,N-ジメチルアミノジメチルプロピルシラン、N,N-ジメチルアミノジメチルオクチルシラン、N,N-ジメチルアミノジメチルフェニルエチルシラン、N,N-ジメチルアミノジメチルフェニルシラン、N,N-ジメチルアミノジメチル-t-ブチルシラン、N,N-ジメチルアミノトリエチルシラン、トリメチルシラナミン、モノメチルシリルイミダゾール、ジメチルシリルイミダゾール、トリメチルシリルイミダゾール、モノメチルシリルトリアゾール、ジメチルシリルトリアゾール、トリメチルシリルトリアゾール、N-(トリメチルシリル)ジメチルアミン、トリメチルシリルモルフォリン等が挙げられる。
【0035】
上記一般式(4)で表される化合物としては、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、N-メチルヘキサメチルジシラザン、1,1,3,3-テトラメチルジシラザン、1,3-ジメチルジシラザン、1,2-ジ-N-オクチルテトラメチルジシラザン、1,2-ジビニルテトラメチルジシラザン、ヘプタメチルジシラザン、ノナメチルトリシラザン、トリス(ジメチルシリル)アミン、トリス(トリメチルシリル)アミン、ペンタメチルエチルジシラザン、ペンタメチルビニルジシラザン、ペンタメチルプロピルジシラザン、ペンタメチルフェニルエチルジシラザン、ペンタメチル-t-ブチルジシラザン、ペンタメチルフェニルジシラザン、トリメチルトリエチルジシラザン等が挙げられる。
【0036】
上記一般式(5)で表されるシリル化剤としては、トリメチルシリルアセテート、ジメチルシリルアセテート、モノメチルシリルアセテート、トリメチルシリルプロピオネート、トリメチルシリルブチレート、トリメチルシリルオキシ-3-ペンテン-2-オン等が挙げられる。
【0037】
上記一般式(6)で表されるシリル化剤としては、ビス(トリメチルシリル)尿素、N-トリメチルシリルアセトアミド、N-メチル-N-トリメチルシリルトリフルオロアセトアミド等が挙げられる。
【0038】
また、上記一般式(4)で表される化合物の中でも、R4及び/又はR10として水素原子を有する化合物も好ましい一例である。
このような化合物を用いた場合、化合物が被処理体に展開された後に、分子間でのネットワークを形成しやすくなると考えられる。
このような寄与もあり、いったん被処理体の表面に結合した後は、仮に加熱工程に付されても除去されづらくなる傾向がある。
【0039】
また、上記一般式(3)で表される化合物の中でも、R5として含窒素基を有し、ケイ素原子に対し2つの窒素原子が結合した、以下の一般式(3-a)で表されるシラザン化合物を用いることも好ましい。
このような化合物を用いた場合、化合物中に含まれる2つの窒素原子のそれぞれが、被処理体の表面上の官能基に対して化学的結合を形成しうる。すなわち、1のケイ素原子の結合手の2つが被処理体に結合をすることが可能となり、シリル化剤(A)と被処理体との間でより堅固な結合が形成できる。
更に、このように堅固な結合の形成が可能となることにより、いったん被処理体の表面に結合した後は、仮に加熱工程に付されても除去されづらくなる傾向がある。
また、以下定義するように、一般式(3-a)中のR4及びR6は、一般式(3)のR5と同様に含窒素基であってもよく、用途に応じて、シリル化剤と被処理体との相互作用を増強してもよい。
【0040】
【化6】
[上記一般式(3-a)中、R
4及びR
6は、それぞれ独立に水素原子、含窒素基又は有機基を表し、R
4及びR
6に含まれる炭素原子の合計の個数は1個以上である。R
7、R
8、R
17、R
18はそれぞれ水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アセチル基、又はヘテロシクロアルキル基を表す。R
7及びR
8又はR
17及びR
18は互いに結合して窒素原子を含む環構造を形成してもよく、当該環構造を構成する環構成原子は、窒素原子以外のヘテロ原子を含んでいてもよい。]
【0041】
また、ケイ素原子に結合している置換基に注目すれば、その置換基に含まれる炭素原子数の大きな、所謂バルキーな(嵩高な)置換基がケイ素原子に結合しているシリル化剤を使用することが好ましい。表面処理剤がそのようなシリル化剤を含有することにより、その表面処理剤により処理を受けた被処理体の表面の疎水性を大きくすることができる。
【0042】
このため、上記一般式(2)中、R4、R5及びR6に含まれる炭素原子の合計の個数が3個以上であることが好ましい。中でも、シリル化反応において十分な反応性を得るという観点から、上記一般式(2)中、R4、R5及びR6は、いずれか1つが炭素原子数2個以上の有機基(以下、この段落において、「特定有機基」と呼ぶ。)であり、残りの2つがそれぞれ独立してメチル基又はエチル基であることがより好ましい。特定有機基としては、分枝及び/又は置換基を有してもよい炭素原子数2以上20以下のアルキル基、置換基を有していてもよいビニル基、置換基を有していてもよいアリール基等が例示される。特定有機基の炭素原子数は、2以上12以下がより好ましく、2以上10以下が更に好ましく、2以上8以下が特に好ましい。
【0043】
このような観点からは、上記例示した一般式(2)で表される置換基を有するシリル化剤の中でも、N,N-ジメチルアミノジメチルビニルシラン、N,N-ジメチルアミノジメチルプロピルシラン、N,N-ジメチルアミノジメチルオクチルシラン、N,N-ジメチルアミノジメチルフェニルエチルシラン、N,N-ジメチルアミノジメチルフェニルシラン、N,N-ジメチルアミノジメチル-t-ブチルシラン、N,N-ジメチルアミノトリエチルシラン、N,N-ジメチルアミノトリメチルシラン(TMSDMA)等が好ましく例示される。
【0044】
≪(A3)成分≫
(A3)成分は、環状シラザン化合物である。
環状シラザン化合物としては、2,2,5,5-テトラメチル-2,5-ジシラ-1-アザシクロペンタン、2,2,6,6-テトラメチル-2,6-ジシラ-1-アザシクロヘキサン等の環状ジシラザン化合物;2,2,4,4,6,6-ヘキサメチルシクロトリシラザン、2,4,6-トリメチル-2,4,6-トリビニルシクロトリシラザン等の環状トリシラザン化合物;2,2,4,4,6,6,8,8-オクタメチルシクロテトラシラザン等の環状テトラシラザン化合物;等が挙げられる。
このような環状シラザン化合物の中でも、1のケイ素原子に対して、2以上の含窒素基が結合した部分構造を有する化合物を好適に用いることできる。この場合、前述の一般式(3-a)と同様に、シリル化剤と被処理体間でより堅固な結合が形成することができ、いったん被処理体上で結合した後は、仮に加熱工程に付されても除去されづらくなる傾向がある。
【0045】
≪その他のシリル化剤≫
(A)成分は、上記の(A1)~(A3)成分以外のシリル化剤を用いてもよい。その他のシリル化剤としては、例えば、以下の一般式(7)、(8)又は(9)で表される化合物が挙げられる。
【0046】
【化7】
[上記一般式(7)中、R
19及びR
20は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、トリアルキルシリル基を表し、R
19及びR
20の少なくとも1つは、トリアルキルシリル基を表し、またR
21は水素原子の一部又は全部がフッ素原子により置換されていてもよい、炭素原子数1以上10以下の脂肪族炭化水素基を表す。]
【0047】
【化8】
[上記一般式(8)中、R
22はトリアルキルシリル基を表し、R
23及びR
24は、それぞれ独立に水素原子又は有機基を表す。]
【0048】
【化9】
[上記一般式(9)中、R
4、R
5及びR
6は、上記一般式(2)と同様であり、R
25は、単結合又は有機基を表し、R
26は、存在しないか、存在する場合、-SiR
27R
28R
29を表す。R
27、R
28及びR
29は、それぞれ独立に水素原子、含窒素基又は有機基を表す。]
【0049】
上記式(7)で表される化合物としては、ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド、トリメチルシリルメチルアセトアミド、ビストリメチルシリルアセトアミド等が挙げられ、上記式(8)で表される化合物としては、2-トリメチルシロキシペンタ-2-エン-4-オン等が挙げられる。上記式(9)で表される化合物としては、1,2-ビス(ジメチルクロロシリル)エタン、t-ブチルジメチルクロロシラン等が挙げられる。
【0050】
表面処理剤が含有する(A)成分は、上記に例示したシリル化剤を、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
上記の中でも、(A)成分としては、(A2)成分が好ましく、入手容易性や取扱い性の高さ等の観点から、一般式(3)で表される化合物、及び一般式(4)で表される化合物がより好ましい。
【0052】
本実施形態の表面処理剤に含まれる(A)成分の含有量としては、本発明の効果を損なわない限り特に制限はないが、(A)成分の含有量の下限値としては、表面処理剤全量に対して、0.001質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましく、0.5質量%以上が特に好ましく、1.0質量%以上が最も好ましい。
(A)成分の含有量が下限値以上であれば、被処理体の表面の撥水性をより向上させることができる。
【0053】
上記表面処理剤における(A)成分の含有量の上限値としては、30質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。
(A)成分の含有量が上限値以下であれば、取扱い性に一段と優れる表面処理剤を得やすくなる。
【0054】
<分子内にアミド骨格を有する化合物(C)>
分子内にアミド骨格を有する化合物(C)(以下「(C)成分」ともいう)は、表面処理剤の使用安定性を維持するための成分である。
本実施形態における(C)成分としては、特に限定されず、分子内にアミド骨格を有する限り、従来公知のあらゆる化合物を用いることができる(但し、上記(A)成分に該当するものは除く)。
(C)成分としては、例えば、下記一般式(c1)で表される化合物が挙げられる。
【0055】
【化10】
[式中、Rc
1及びRc
2は、それぞれ独立に、水素原子、又は置換基を有していてもよい炭化水素基を表し、Rc
3は、水素原子、含窒素基又は有機基を表す。]
【0056】
前記一般式(c1)中、Rc1及びRc2は、それぞれ独立に、水素原子、又は置換基を有していてもよい炭化水素基を表す。
Rc1及びRc2における炭化水素基は、炭素数1~20であることが好ましく、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。
該脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基であってもよく、不飽和脂肪族炭化水素基であってもよい。脂肪族炭化水素基としては、直鎖状もしくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、又は、構造中に環を含む脂肪族炭化水素基等が挙げられる。
直鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素数が1~10であることが好ましく、炭素数1~5がより好ましく、炭素数1~3がさらに好ましい。分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素数3~10であることが好ましく、3~5がより好ましい。
直鎖状もしくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基などの直鎖状アルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,1-ジエチルプロピル基、2,2-ジメチルブチル基などの分岐鎖状アルキル基;ビニル基、プロペニル基(アリル基)、2-ブテニル基などの直鎖状アルケニル基:1-メチルビニル基、2-メチルビニル基、1-メチルプロペニル基、2-メチルプロペニル基などの分岐鎖状アルケニル基;エチニル基、プロパルギル基、3-ペンチニル基などの直鎖状アルキニル基;1-メチルプロパルギル基などの分岐鎖状アルキニル基が挙げられる。
【0057】
Rc1及びRc2における直鎖状もしくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。該置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボニル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0058】
Rc1及びRc2における構造中に環を含む脂肪族炭化水素基としては、脂環式炭化水素基(脂肪族炭化水素環から水素原子1個を除いた基)、脂肪族炭化水素環の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基等が挙げられる。前記アルキレン基の炭素数は、1~4であることが好ましい。前記脂肪族炭化水素環は、炭素数が3~10であることが好ましく、3~6であることがより好ましい。
【0059】
前記脂肪族炭化水素環は、多環であってもよく、単環であってもよい。
単環の脂肪族炭化水素環としては、炭素数3~6のものが好ましく、具体的にはシクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。
多環の脂肪族炭化水素環としては、炭素数7~10のものが好ましく、具体的にはアダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン等の架橋環系の多環式骨格を有するポリシクロアルカン等が挙げられる。
【0060】
Rc1及びRc2における環状の脂肪族炭化水素基は、置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。該置換基としては、ヒドロキシ基、カルボニル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。前記置換基におけるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基としては、炭素数1~5のものが好ましく、炭素数1~3がより好ましい。
【0061】
Rc1及びRc2における炭化水素基が芳香族炭化水素基となる場合、該芳香族炭化水素基は、芳香環を少なくとも1つ有する炭化水素基である。この芳香環は、4n+2個のπ電子をもつ環状共役系であれば特に限定されず、単環式でも多環式でもよい。芳香環の炭素数は5~20であることが好ましく、5~18がより好ましく、6~16がさらに好ましい。
芳香環として具体的には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン等の芳香族炭化水素環;前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。芳香族複素環として具体的には、ピロリジン環、ピリジン環、チオフェン環等が挙げられる。
Rc1及びRc2における芳香族炭化水素基として具体的には、前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環から水素原子を1つ除いた基(アリール基またはヘテロアリール基);2以上の芳香環を含む芳香族化合物(たとえばビフェニル、フルオレン等)から水素原子を1つ除いた基;前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(たとえば、ベンジル基、フェネチル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基、1-ナフチルエチル基、2-ナフチルエチル基等のアリールアルキル基など)等が挙げられる。前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環に結合するアルキレン基の炭素数は、1~4であることが好ましく、1~2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
【0062】
Rc1及びRc2における芳香族炭化水素基は、置換基を有してもよいし、有していなくてもよい。該置換基としては、ヒドロキシ基、カルボニル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。前記置換基におけるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基としては、炭素数1~5のものが好ましく、炭素数1~3がより好ましい。
【0063】
中でも、Rc1及びRc2における炭化水素基は、脂肪族炭化水素基が好ましく、アルキル基がより好ましく、炭素数1~5のアルキル基がさらに好ましい。
Rc1及びRc2は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基が好ましく、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基がより好ましく、メチル基又はエチル基がさらに好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0064】
一般式(c1)中、Rc3は、水素原子、含窒素基又は有機基を表す。
Rc3における有機基は、炭素数1~20であることが好ましい。該有機基としては、置換基を有していてもよい炭化水素基、及び下記一般式(rc3-1)等が挙げられる。
【0065】
【化11】
[式中、Rc
31は、アルキレン基を表し、Rc
32は、水素原子、又は置換基を有していてもよい炭化水素基を表す。*は、一般式(c1)中のカルボニル基の炭素原子に結合する結合手を表す。]
【0066】
Rc3における置換基を有していてもよい炭化水素基としては、前記Rc1及びRc2における置換基を有していてもよい炭化水素基として挙げたものと同様のものが挙げられる。
中でも、Rc3における炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基が好ましく、直鎖状もしくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基がより好ましい。直鎖状もしくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の具体例としては、前記Rc1及びRc2において挙げたものと同様のものが挙げられる。Rc3における直鎖状もしくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、炭素数1~5のアルキル基又は炭素数2~5のアルケニル基が好ましく、炭素数1~3のアルキル基又は炭素数2~3のアルケニル基がより好ましい。
【0067】
前記一般式(rc3-1)中、Rc31は、アルキレン基を表す。Rc31におけるアルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。該直鎖状アルキレン基は、炭素数1~5が好ましく、炭素数1~3がより好ましい。該分岐鎖状アルキレン基は、炭素数2~5が好ましく、炭素数2~3がより好ましい。中でも、Rc31は、エチレン基又はメチレン基が好ましく、メチレン基がより好ましい。
【0068】
前記一般式(rc3-1)中、Rc32は、水素原子又は置換基を有していてもよい炭化水素基を表す。この置換基を有していてもよい炭化水素基としては、前記Rc1及びRc2における置換基を有していてもよい炭化水素基として挙げたものと同様のものが挙げられる。
中でも、Rc32における炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基が好ましく、直鎖状もしくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基がより好ましい。直鎖状もしくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の具体例としては、前記Rc1及びRc2において挙げたものと同様のものが挙げられる。Rc3における直鎖状もしくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、炭素数1~5のアルキル基が好ましく、炭素数1~3のアルキル基がより好ましい。
Rc32は、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基が好ましく、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基がより好ましく、メチル基又はエチル基がさらに好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0069】
Rc3における含窒素基としては、典型的には以下の式(rc3-2)で表される基が挙げられる。
【0070】
【化12】
[式中、Rc
33及びRc
34は、それぞれ独立に、水素原子、又は置換基を有していてもよい炭化水素基を表す。なお、Rc
33及びRc
34は、互いに結合して窒素原子を含む環構造を形成してもよく、当該環構造を構成する環構成原子は、窒素原子以外のヘテロ原子を含んでいても良い。*は、一般式(c1)中のカルボニル基の炭素原子に結合する結合手を表す。]
【0071】
前記一般式(rc3-2)中、Rc33及びRc34は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよい炭化水素基を表す。この置換基を有していてもよい炭化水素基としては、前記Rc1及びRc2における置換基を有していてもよい炭化水素基として挙げたものと同様のものが挙げられる。
中でも、Rc33及びRc34における炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基が好ましく、直鎖状もしくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基がより好ましい。直鎖状もしくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の具体例としては、前記Rc1及びRc2において挙げたものと同様のものが挙げられる。Rc33及びRc34における直鎖状もしくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、炭素数1~5のアルキル基が好ましく、炭素数1~3のアルキル基がより好ましい。
Rc33及びRc34は、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基が好ましく、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基がより好ましく、メチル基又はエチル基がさらに好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0072】
(C)成分の具体例としては、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド類;アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアセトアミドなどのアセトアミド類;N-メチルプロピオンアミド、N,N-ジメチルプロピオンアミド、N,N,2-トリメチルプロピオンアミド、N-エチル,N,2-ジメチルプロピオンアミド、N,N-ジエチル-2-メチルプロピオンアミド、N,N,2-トリメチル-2-ヒドロキシプロピオンアミド、N-エチル-N,2-ジメチル-2-ヒドロキシプロピオンアミド、N,N-ジエチル-2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオンアミドなどのプロピオンアミド類;アクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミドなどのアクリルアミド類;N,N,N’,N’-テトラメチルウレア、N,N,N’,N’-テトラエチルウレアなどのウレア類;等が挙げられる。
【0073】
(C)成分としては、前記一般式(c1)で表される化合物が好ましい。前記一般式(c1)中のRc3は、置換基を有していてもよい炭化水素基、前記一般式(rc3-1)で表される基又は前記一般式(rc3-2)で表される基であることが好ましく、一般式(rc3-2)で表される基であることがより好ましい。
【0074】
(C)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0075】
本実施形態の表面処理剤に含まれる(C)成分の含有量としては、本発明の効果を損なわない限り特に制限はないが、(C)成分の含有量の下限値としては、表面処理剤全量に対して、0.001質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上がさらに好ましく、0.5質量%以上が特に好ましく、1.0質量%以上が最も好ましい。
(C)成分の含有量が上記好ましい下限値以上であれば、表面処理剤の品質をより安定に維持することができる。
【0076】
本実施形態の表面処理剤における(C)成分の含有量の上限値は、特に限定されないが、該(C)成分が溶剤として一般的に用いられるものである場合(例えば、ホルムアミド類、アセトアミド類、プロピオンアミド類、ウレア類など)、99.9質量%以下とすることができる。この場合、(C)成分の含有量は、99質量%以下が好ましく、98質量%以下がより好ましく、96質量%以下がさらに好ましい。
本実施形態の表面処理剤が、後述の(S)成分を含む場合、(C)成分の含有量の上限値は、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましく、8質量%以下が特に好ましい。
(C)成分の含有量が上記好ましい上限値以下であれば、他の成分とのバランスがとりやすくなる。
【0077】
<任意成分>
本実施形態の表面処理剤は、上記(A)成分及び(C)成分に加えて、任意の成分を含有していてもよい。かかる任意成分としては、例えば、溶剤(S)、含窒素塩基性化合物又はその塩(B)、前述したシリル化剤(A)には該当しない界面活性剤や消泡剤、水等が挙げられる。
【0078】
≪溶剤(S)≫
本実施形態の表面処理剤は、溶剤(S)(以下「(S)成分」ともいう)を含有することが好ましい。(S)成分は、各成分を溶解・混合し、均一な溶液とするために用いられる。(S)成分は、各成分を溶解・混合できるものであればよく、表面処理剤の溶剤として一般的に用いられるものを特に制限なく使用することができる(但し、上記(C)成分に該当するものを除く)。
【0079】
(S)成分としては、例えば、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン、n-ウンデカン、n-ドデカン、n-トリデカン、n-テトラデカン、n-ペンタデカン、n-ヘキサデカン、n-ヘプタデカン、n-オクタデカン、n-ノナデカン、n-イコサン等の直鎖状飽和脂肪族炭化水素類;2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、2,2-ジメチルブタン、2,3-ジメチルブタン、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、2,3-ジメチルペンタン、2,4-ジメチルペンタン、2,2,3-トリメチルペンタン、2,2,4-トリメチルペンタン、3,4-ジエチルヘキサン、2,6-ジメチルオクタン、3,3-ジメチルオクタン、3,5-ジメチルオクタン、4,4-ジメチルオクタン、3-エチル-3-メチルヘプタン、2-メチルノナン、3-メチルノナン、4-メチルノナン、5-メチルノナン、2-メチルウンデカン、3-メチルウンデカン、2,2,4,6,6-ペンタメチルヘプタン、2,2,4,4,6,8,8-ヘプタメチルノナン等の分岐鎖状飽和脂肪族炭化水素類;デカリン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、1,2-ジメチルシクロヘキサン、1,3-ジメチルシクロヘキサン、1,4-ジメチルシクロヘキサン、プロピルシクロヘキサン、イソプロピルシクロヘキサン、1,2-メチルエチルシクロヘキサン、1,3-メチルエチルシクロヘキサン、1,4-メチルエチルシクロヘキサン、1,2,3-トリメチルシクロヘキサン、1,2,4-トリメチルシクロヘキサン、1,3,5-トリメチルシクロヘキサン等の環状飽和脂肪族炭化水素類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ビス(2-ヒドロキシエチル)スルホン、テトラメチレンスルホン等のスルホン類;N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-プロピル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシメチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン等のラクタム類;1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジエチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジイソプロピル-2-イミダゾリジノン等のイミダゾリジノン類;ジメチルグリコール、ジメチルジグリコール、ジメチルトリグリコール、メチルエチルジグリコール、ジエチルグリコール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の他のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネート、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n-ペンチル、酢酸n-ヘキシル、酢酸n-ヘプチル、酢酸n-オクチル、蟻酸n-ペンチル、酢酸イソペンチル、プロピオン酸n-ブチル、酪酸エチル、酪酸n-プロピル、酪酸イソプロピル、酪酸n-ブチル、n-オクタン酸メチル、デカン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n-プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-オキソブタン酸エチル、アジピン酸ジメチル、プロピレングリコールジアセテート、炭酸プロピレン等の他のエステル類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン等のケトン類;β-プロピロラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-ペンチロラクトン等のラクトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、1,3,5-トリメチルベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素類;p-メンタン、ジフェニルメンタン、リモネン、テルピネン、ボルナン、ノルボルナン、ピナン等のテルペン類;などが挙げられる。
【0080】
(S)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0081】
本実施形態の表面処理剤が(S)成分を含有する場合、(S)成分の含有量は、表面処理剤全量に対して、50~99.9質量%であることが好ましく、70~98質量%であることがより好ましく、80~96質量%であることがさらに好ましい。
【0082】
≪含窒素塩基性化合物又はその塩(B)≫
本実施形態の表面処理剤は、上述した(A)成分及び(C)成分に加えて、さらに含窒素塩基性化合物又はその塩(B)(以下、「(B)成分」ともいう)を含有していることが好ましい。
ここで、含窒素塩基性化合物とは、その化学構造中に塩基として作用し得る窒素原子を含む化合物である(但し、上記(A)成分又は(C)成分に該当するものを除く)。
(B)成分の典型的な例としては、含窒素複素環構造を有する化合物又はその塩(B1)(以下「(B1)成分」ともいう)、一般式(B-2)で表される化合物又はその塩(B2)(以下「(B2)成分」ともいう)、フェノキシ基を有するアミン化合物又はその塩(B3)(以下「(B3)成分」ともいう)等が挙げられる。
【0083】
・含窒素複素環化合物又はその塩(B1)
本実施形態の表面処理剤が(B1)成分をさらに含むことにより、シリル化剤(A)による被処理体に対するシリル化反応が(B1)成分の触媒作用によって促進される。その結果、(B1)成分を含まない場合と同様の表面処理時間とした場合には、被処理体の表面をより高度に撥水化することができ、(B1)成分を含まない場合と同程度に撥水化する場合には、被処理体の表面処理時間を短縮することができる。
【0084】
(B1)成分は、環構造中に窒素原子を含む化合物又はその塩であれば特に限定されない。(B1)成分は、環構造中に、酸素原子、硫黄原子等の窒素原子以外のヘテロ原子を含んでいてもよい。
含窒素複素環化合物の塩としては、含窒素複素環化合物の無機酸(塩酸、硫酸、硝酸等)の塩、ハロゲン塩等が挙げられる。
【0085】
(B1)成分は、芳香性を有する含窒素複素環化合物又はその塩であることが好ましい。(B1)成分が、芳香性を有する含窒素複素環化合物又はその塩を含むことにより、表面処理剤で処理された被処理体の表面の撥水性をより高めることができる。
また、このように(B1)成分として芳香性を有する含窒素複素環化合物又はその塩を用いる場合、複素環を構成する窒素原子の有する非共有電子対が、芳香環の環外に配向している態様が好ましい。このようにすることで、(B1)成分として適切にシリル化剤(A)に作用することができ、本発明の効果を安定的にもたらすことができる。
【0086】
(B1)成分は、2以上の複数の環が単結合、又は2価以上の多価の連結基により結合した化合物又はその塩であってもよい。この場合、連結基により結合される2以上の複数の環は、少なくとも1つの含窒素複素環を含んでいればよい。
多価の連結基の中では、環同士の立体障害が小さい点から2価の連結基が好ましい。2価の連結基の具体例としては、炭素原子数1~6のアルキレン基、-CO-、-CS-、-O-、-S-、-NH-、-N=N-、-CO-O-、-CO-NH-、-CO-S-、-CS-O-、-CS-S-、-CO-NH-CO-、-NH-CO-NH-、-SO-、-SO2-等が挙げられる。
2以上の複数の環が多価の連結基により結合した化合物に含まれる環の数は、均一な表面処理剤を調製し易い点から、4以下が好ましく、3以下がより好ましく、2がさらに好ましい。なお、例えばナフタレン環のような縮合環については、環の数を2とする。
【0087】
(B1)成分は、複数の環が縮合した化合物又はその塩であってもよい。この場合、縮合環を構成する環のうちの少なくとも1つの環が含窒素複素環であればよい。
複数の環が縮合した(B1)成分に含まれる環の数は、均一な表面処理剤を調製し易い点から、4以下が好ましく、3以下が好ましく、2がさらに好ましい。
【0088】
(B1)成分は、含窒素5員環、又は含窒素5員環骨格を含む縮合多環を含むことが好ましい。
【0089】
含窒素複素環化合物の好適な例としては、例えば、ピリジン、ピリダジン、ピラジン、ピリミジン、トリアジン、テトラジン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、キノリン、イソキノリン、シンノリン、フタラジン、キノキサリン、キナゾリン、インドール、インダゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイソチアゾール、ベンゾオキサジアゾール、ベンゾチアジアゾール、サッカリン、ピロリジン、ピペリジンが挙げられる。
これらの中では、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、インドール、インダゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイソチアゾール、ベンゾオキサジアゾール、ベンゾチアジアゾール、サッカリンが好ましく、ピロール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、ベンゾトリアゾールがより好ましい。
含窒素複素環化合物の塩としては、上記化合物の塩酸塩等が挙げられる。
【0090】
(B1)成分としては、置換基を有する上記の含窒素複素環化合物又はその塩も好ましく用いられる。
含窒素複素環化合物又はその塩が有してもよい置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン化アルキル基、脂肪族アシル基、ハロゲン化脂肪族アシル基、アリールカルボニル基、カルボキシアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、アルキルチオ基、アミノ基、アルキル基を含むモノアルキルアミノ基、アルキル基を含むジアルキルアミノ基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。
含窒素複素環化合物又はその塩は、含窒素複素環上に複数の置換基を有していてもよい。置換基の数が複数である場合、複数の置換基は同一であっても異なっていてもよい。
これらの置換基が、脂肪族炭化水素環、芳香族炭化水素環等を含む場合、これらの環はさらに、含窒素複素環化合物又はその塩が有していてもよい置換基と同様の置換基を有していてもよい。
【0091】
置換基としてのアルキル基の炭素原子数は、1~6が好ましく、1~4がより好ましく、1又は2がさらに好ましい。炭素原子数1~6のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基が挙げられる。これらの中では、メチル基、エチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0092】
置換基としてのシクロアルキル基の炭素原子数は、3~8が好ましく、3~7がより好ましく、4~6がさらに好ましい。炭素原子数3~8のシクロアルキル基の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基が挙げられる。
【0093】
置換基としてのアルコキシ基の炭素原子数は、1~6が好ましい、1~4がより好ましく、1又は2がさらに好ましい。炭素原子数1~6のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基が挙げられる。これらの中では、メトキシ基、エトキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。
【0094】
置換基としてのシクロアルキルオキシ基の炭素原子数は、3~8が好ましく、3~7がより好ましく、4~6がさらに好ましい。炭素原子数3~8のシクロアルキルオキシ基の具体例としては、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基が挙げられる。
【0095】
置換基としてのアリール基の炭素原子数は、6~20が好ましく、6~12がより好ましい。炭素原子数6~20のアリール基の具体例としては、フェニル基、α-ナフチル基、β-ナフチル基、ビフェニル-4-イル基、ビフェニル-3-イル基、ビフェニル-2-イル基、アントラセン-1-イル基、アントラセン-2-イル基、アントラセン-9-イル基、フェナントレン-1-イル基、フェナントレン-2-イル基、フェナントレン-3-イル基、フェナントレン-4-イル基、フェナントレン-9-イル基が挙げられる。これらの中では、フェニル基、α-ナフチル基、β-ナフチル基、ビフェニル-4-イル基、ビフェニル-3-イル基、ビフェニル-2-イル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
【0096】
置換基としてのアラルキル基の炭素原子数は、7~20が好ましく、7~12がより好ましい。炭素原子数7~20のアラルキル基の具体例としては、ベンジル基、フェネチル基、3-フェニル-n-プロピル基、4-フェニル-n-ブチル基、α-ナフチルメチル基、β-ナフチルメチル基、2-(α-ナフチル)エチル基、2-(β-ナフチル)エチル基が挙げられる。これらの基の中では、ベンジル基、フェネチル基が好ましく、ベンジル基がより好ましい。
【0097】
置換基としてのハロゲン化アルキル基に含まれるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。置換基としてのハロゲン化アルキル基の炭素原子数は、1~6が好ましく、1~4がより好ましく、1又は2がさらに好ましい。炭素原子数1~6のハロゲン化アルキル基の具体例としては、クロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、1,1-ジフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基が挙げられる。
【0098】
置換基としての脂肪族アシル基の炭素原子数は、2~7が好ましく、2~5がより好ましく、2又は3がさらに好ましい。炭素原子数2~7の脂肪族アシル基の具体例としては、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基が挙げられる。これらの中では、アセチル基、プロパノイル基が好ましく、アセチル基がより好ましい。
【0099】
置換基としてのハロゲン化脂肪族アシル基に含まれるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。置換基としてのハロゲン化脂肪族アシル基の炭素原子数は、2~7が好ましく、2~5がより好ましく、1又は2がさらに好ましい。炭素原子数2~7のハロゲン化脂肪族アシル基の具体例としては、クロロアセチル基、ジクロロアセチル基、トリクロロアセチル基、フルオロアセチル基、ジフルオロアセチル基、トリフルオロアセチル基、ペンタフルオロプロピオニル基が挙げられる。
【0100】
置換基としてのアリールカルボニル基の炭素原子数は、7~20が好ましく、7~13がより好ましい。炭素原子数7~20のアリールカルボニル基の具体例としては、ベンゾイル基、α-ナフトイル基、及びβ-ナフトイル基が挙げられる。
【0101】
置換基としてのカルボキシアルキル基の炭素原子数は、2~7が好ましく、2~5がより好ましく、2又は3がさらに好ましい。炭素原子数2~7のカルボキシアルキル基の具体例としては、カルボキシメチル基、2-カルボキシエチル基、3-カルボキシ-n-プロピル基、4-カルボキシ-n-ブチル基、5-カルボキシ-n-ペンチル基、6-カルボキシ-n-ヘキシル基が挙げられる。これらの中では、カルボキシメチル基が好ましい。
【0102】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。これらの中では、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が好ましく、塩素原子、臭素原子がより好ましい。
【0103】
置換基としてのアルキルチオ基の炭素原子数は、1~6が好ましく、1~4がより好ましく、1又は2がさらに好ましい。炭素原子数1~6のアルキルチオ基の具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、n-ブチルチオ基、イソブチルチオ基、sec-ブチルチオ基、tert-ブチルチオ基、n-ペンチルチオ基、n-ヘキシルチオ基が挙げられる。これらの中では、メチルチオ基、エチルチオ基が好ましく、メチルチオ基がより好ましい。
【0104】
アルキル基を含むモノアルキルアミノ基、アルキル基を含むジアルキルアミノ基に含まれるアルキル基の具体例は、上記の置換基としてのアルキル基の具体例と同様である。
アルキル基を含むモノアルキルアミノ基としては、エチルアミノ基、メチルアミノ基が好ましく、メチルアミノ基がより好ましい。
ジアルキルアミノ基としては、ジエチルアミノ基、ジメチルアミノ基が好ましく、ジメチルアミノ基がより好ましい。
【0105】
(B1)成分としては、上記の中でも、ピロール、イミダゾール、トリアゾール、アルキル基又はアリール基を有していてもよいテトラゾール、ベンゾトリアゾールがより好ましい。(B1)成分の好適な具体例としては、例えば、下式の化合物が挙げられる。
【0106】
【0107】
(B1)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0108】
・一般式(B-2)で表される化合物又はその塩(B2)
本実施形態の表面処理剤は、下記一般式(B-2)で表される化合物又はその塩(B2)を含有していてもよい。
【0109】
【化14】
[式(B-2)中、Rはそれぞれ独立に、水素原子、水酸基又は有機基を表す。]
【0110】
式(B-2)中、Rにおける有機基としては、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアリール基又は置換基を有してもよいアラルキル基等が挙げられる。該置換基としては、該置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、アルコキシ基等が挙げられる。
【0111】
式(B-2)中、Rの有機基におけるアルキル基は、直鎖状でも、分岐鎖状であってもよい。前記直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基としては、炭素原子数1~40の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、該アルキル基の炭素原子数は6~20がより好ましい。
【0112】
式(B-2)中、Rの有機基におけるシクロアルキル基は、炭素原子数3~20が好ましく、炭素原子数5~15がより好ましい。
【0113】
式(B-2)中、Rの有機基におけるアリール基は、炭素原子数6~20が好ましく、炭素原子数6~10がより好ましい。具体的には、フェニル基及びナフチル基等が挙げられる。
【0114】
式(B-2)中、Rの有機基におけるアラルキル基は、炭素原子数7~20が好ましく、炭素原子数7~11がより好ましい。具体的には、ベンジル基等が挙げられる。
【0115】
また、(B2)成分は、上記一般式(B-2)で表される化合物の塩であってもよい。上記化合物の塩としては、無機酸(塩酸、硫酸、硝酸等)塩、ハロゲン塩、水酸化物塩等が挙げられる。
【0116】
一般式(B-2)で表される化合物の具体例としては、アンモニア;ヒドロキシルアミン;エチルアミン、n-プロピルアミン、n-ブチルアミン、1-エチルブチルアミン、1,3-ジアミノプロパン、シクロヘキシルアミン等の第1級アミン;ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、ジ-n-ブチルアミン、4,4’-ジアミノジフェニルアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、N-(2-アミノエチル)エタノールアミン等の第2級アミン;ジメチルエチルアミン、ジエチルメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリイソプロピルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン等の第3級アミン;N,N-ジブチルアニリン、N,N-ジヘキシルアニリン、2,6-ジイソプロピルアニリン、2,4,6-トリ(t-ブチル)アニリン等の芳香族アミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、プロパノールアミン等のアルカノールアミンなどが挙げられる。
【0117】
一般式(B-2)で表される化合物の塩の具体例としては、上記化合物の塩酸塩等が挙げられる。
【0118】
(B2)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0119】
・フェノキシ基を有するアミン化合物又はその塩(B3)
(B3)成分は、アミン化合物が含んでいるアルキル基の窒素原子と反対側の末端にフェノキシ基を備えた化合物である。フェノキシ基は、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、カルボン酸エステル基、スルホン酸エステル基、アリール基、アラルキル基、アシロキシ基、アリールオキシ基等の置換基を有していてもよい。
【0120】
(B3)成分は、フェノキシ基と窒素原子との間に、少なくとも1つのオキシアルキレン鎖を有していることがより好ましい。1分子中のオキシアルキレン鎖の数は、好ましくは3~9個、更に好ましくは4~6個である。オキシアルキレン鎖の中でも-CH2CH2O-が特に好ましい。
【0121】
具体例としては、2-[2-{2―(2,2―ジメトキシ-フェノキシエトキシ)エチル}-ビス-(2-メトキシエチル)]-アミン等が挙げられる。
【0122】
フェノキシ基を有するアミン化合物は、例えば、フェノキシ基を有する1級又は2級アミンとハロアルキルエーテルとを加熱して反応させ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及びテトラアルキルアンモニウム等の強塩基の水溶液を添加した後、酢酸エチル及びクロロホルム等の有機溶剤で抽出することにより得られる。また、フェノキシ基を有するアミン化合物は、1級又は2級アミンと、末端にフェノキシ基を有するハロアルキルエーテルとを加熱して反応させ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及びテトラアルキルアンモニウム等の強塩基の水溶液を添加した後、酢酸エチル及びクロロホルム等の有機溶剤で抽出することによって得ることもできる。
【0123】
(B3)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0124】
本実施形態の表面処理剤における(B)成分としては、その他の含窒素塩基性化合物を用いてもよい。その他の含窒素塩基性化合物としては、例えば、グアニジン化合物又はその塩等が挙げられる。
【0125】
本実施形態の表面処理剤における(B)成分としては、上記の中でも(B1)成分を含むことが好ましい。
【0126】
本実施形態の表面処理剤が、(B)成分を含む場合、(B)成分の含有量は、表面処理剤全量に対して、0.001~20質量%であることが好ましく、0.01~10質量%であることがより好ましく、0.03~5質量%であることがさらに好ましく、0.05~3質量%であることが特に好ましい。
【0127】
(B)成分の含有量が、上記好ましい下限値以上であれば、被処理体の表面撥水性をより向上させることができる。
(B)成分の含有量が、上記好ましい上限値以下であれば、他の成分とのバランスがとりやすくなる。
【0128】
表面処理剤が(B)成分を含有する場合、(B)成分の種類(例えば、(B1)成分など)によっては、析出物を生じることがある。しかしながら、本実施形態の表面処理剤は、上記(C)成分を含有するため、析出物の発生を抑制することができる。そのため、本実施形態の表面処理剤の好ましい例としては、(A)成分、(C)成分、及び(B)成分を含有するもの;及び(A)成分、(C)成分、(B)成分、及び(S)成分を含有するもの等が挙げられる。
【0129】
以上説明した本実施形態の表面処理剤によれば、(C)成分を含有するため、表面処理剤の使用安定性が向上する。そのため、仮に表面処理剤が(B)成分等の添加物を含有する場合であっても、析出物の発生を抑制し、良好な品質を維持することができる。
【0130】
(表面処理方法)
本実施形態に係る表面処理方法は、上記表面処理剤を用いて、被処理体の表面処理を行う表面処理方法である。
【0131】
本実施形態に係る表面処理方法は、被処理体の表面を撥水化(シリル化)するものである。表面処理の目的の代表的な例としては、(1)被処理体である基板の表面を撥水化し、フォトレジストからなる樹脂パターンと基板との密着性を向上させること、及び(2)被処理体に備えられる無機パターンの表面を撥水化し、洗浄中におけるパターン倒れを防止すること、が挙げられる。
【0132】
被処理体の表面に表面処理剤を付与する方法としては、スプレー法、スピンコート法、浸漬法等が例示される。表面処理時間は特に限定されず、例えば、1~60秒間が例示される。表面処理後には、被処理体の表面における水の接触角が40~120度となることが好ましく、60~100度となることがより好ましい。
【0133】
被処理体の表面処理に用いられる装置としては、被処理体に対して表面処理剤を付与し得る装置であれば特に限定されない。このような装置としては、被処理体に対して、スプレー法、スピンコート法、浸漬法等により表面処理剤を付与し得る装置が例示される。
【0134】
表面処理の対象となる被処理体としては、半導体デバイスの製造に使用される基板が例示される。また、被処理体の表面としては、基板自体の表面のほか、基板上に設けられた無機パターンの表面、パターン化されていない無機層の表面等が例示される。
【0135】
基板上に設けられた無機パターンとしては、フォトレジスト法により基板に存在する無機層の表面にエッチングマスクを作製し、その後、エッチング処理することにより形成された無機パターンが例示される。無機層としては、基板自体のほか、基板を構成する元素の酸化物からなる層、基板の表面に形成した窒化珪素、窒化チタン、タングステン等の無機物からなる層等が例示される。このような無機層としては、特に限定されないが、半導体デバイスの製造過程において形成される無機層が例示される。
【0136】
以上説明した本実施形態の表面処理方法によれば、上記実施形態の表面処理剤を用いて被処理体の表面処理を行うため、不純物(析出物)等の残留を抑制しながら、被処理体の表面を高度に撥水化(シリル化)することができる。
【0137】
[任意工程]
本実施形態に係る表面処理方法は、洗浄工程、リンス工程、乾燥工程等の工程を含んでいてもよい。
【0138】
≪洗浄工程≫
洗浄工程は、被処理体の表面を予め洗浄する工程である。
洗浄方法は、特に限定されず、例えば、半導体基板の洗浄方法として、公知のRCA洗浄法等が挙げられる。このRCA洗浄法では、まず、半導体基板を過酸化水素と水酸化アンモニウムのSC-1溶液に浸漬して、半導体基板から微粒子及び有機物を除去する。次いで、半導体基板をフッ酸水溶液に浸漬して、基板表面の自然酸化膜を除去する。その後、半導体基板を、過酸化水素と希塩酸のSC-2溶液の酸性溶液に浸漬して、SC-1溶液で不溶のアルカリイオンや金属不純物を除去する。
【0139】
≪リンス工程≫
リンス工程は、撥水化(シリル化)された被処理体の表面をリンス液でリンスする工程である。
【0140】
リンス工程では、撥水化(シリル化)された被処理体の表面を、後述するリンス液でリンスする。リンスの方法は、特に限定されず、半導体製造工程において、基板の洗浄に一般的に用いられる方法を採用することができる。そのような方法としては、例えば、被処理体をリンス液に浸漬する方法、被処理体にリンス液の蒸気を接触させる方法、被処理体をスピンさせながらリンス液を被処理体に供給する方法等が挙げられる。中でも、リンス方法としては、被処理体をスピンさせながらリンス液を被処理体に供給する方法が好ましい。前記方法において、スピンの回転速度としては、例えば、100rpm以上5000rpm以下が例示される。
【0141】
・リンス液
リンス工程に用いるリンス液としては、特に限定されず、半導体基板のリンス工程に一般的に用いられるものを使用することができる。リンス液としては、例えば、有機溶媒を含有するものが挙げられる。有機溶媒としては、炭化水素類、エステル類、エーテル類、ケトン類、含ハロゲン溶媒、スルホキシド系溶媒、アルコール類、多価アルコールの誘導体、含窒素化合物溶媒等が挙げられる。
リンス液は、前記有機溶媒に代えて、又は有機溶媒とともに水を含有していてもよい。
リンス液は、公知の添加物等を含有していてもよい。公知の添加剤としては例えば、フッ素系界面活性剤やシリコーン系界面活性剤が挙げられる。
【0142】
フッ素系界面活性剤として、具体例には、BM-1000、BM-1100(いずれもBMケミー社製)、メガファックF142D、メガファックF172、メガファックF173、メガファックF183(いずれもDIC社製)、フロラードFC-135、フロラードFC-170C、フロラードFC-430、フロラードFC-431(いずれも住友スリーエム社製)、サーフロンS-112、サーフロンS-113、サーフロンS-131、サーフロンS-141、サーフロンS-145(いずれも旭硝子社製)、SH-28PA、SH-190、SH-193、SZ-6032、SF-8428(いずれも東レシリコーン社製)等の市販のフッ素系界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0143】
シリコーン系界面活性剤として、具体例には、未変性シリコーン系界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤、ポリエステル変性シリコーン系界面活性剤、アルキル変性シリコーン系界面活性剤、アラルキル変性シリコーン系界面活性剤、及び反応性シリコーン系界面活性剤等を好ましく用いることができる。
シリコーン系界面活性剤としては、市販のシリコーン系界面活性剤を用いることができる。市販のシリコーン系界面活性剤の具体例としては、ペインタッドM(東レ・ダウコーニング社製)、トピカK1000、トピカK2000、トピカK5000(いずれも高千穂産業社製)、XL-121(ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤、クラリアント社製)、BYK-310(ポリエステル変性シリコーン系界面活性剤、ビックケミー社製)等が挙げられる。
【0144】
≪乾燥工程≫
乾燥工程は、被処理体を乾燥させる工程である。乾燥工程を行うことにより、リンス工程後に被処理体に残留するリンス液を効率よく除去することができる。
【0145】
被処理体の乾燥方法は、特に限定されず、スピン乾燥、加熱乾燥、温風乾燥、真空乾燥等の公知の方法を用いることができる。例えば、不活性ガス(窒素ガスなど)ブロー下でのスピン乾燥が好適に例示される。
【実施例】
【0146】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0147】
<表面処理剤の調製>
(実施例1~6、比較例1)
表1に示す各成分を混合して、各例の表面処理剤を調製した。
【0148】
【0149】
表1中、各略号はそれぞれ以下の意味を有する。[ ]内の数値は配合量(質量%)である。
【0150】
(A)-1:ヘキサメチルジシラザン(HMDS)
【0151】
(C)-1:N,N-ジメチルアセトアミド
(C)-2:N,N-ジメチルアセトアセトアミド
(C)-3:N,N,N’,N’-テトラメチルウレア
(C)-4:N,N-ジメチルプロピオンアミド
(C)-5:N,N-ジメチルアクリルアミド
【0152】
(B)-1:5-ベンジル-1H-テトラゾール
(S)-1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
(S)-2:炭酸プロピレン
【0153】
[品質の評価]
実施例1~6、及び比較例1に示す表面処理剤を調製し、目視にて、表面処理剤中の析出物の有無を確認し、以下の評価基準で評価した。その結果を表2に示す。
評価基準
〇:析出物なし
×:析出物あり
【0154】
<被処理体の表面処理方法>
被処理体には、窒化ケイ素基板(SiN)を用いた。前記窒化ケイ素基板を個片化して測定用のチップを作製し、このチップを濃度1質量%のフッ酸水溶液に25℃で1分間浸漬した。続いて、このチップについて、純水で1分間洗浄した。水洗後のチップを窒素気流下にて乾燥させ、この乾燥後のチップをSC1処理した。続いて、このSC1処理後のチップを純水で1分間洗浄した。続いて、水洗後のチップを窒素気流下にて乾燥させた。この乾燥後のチップを上記実施例1~6、比較例1に示す表面処理剤に室温で20秒間浸漬することで表面処理した。その後、表面処理後のチップをイソプロピルアルコールに室温で1分間浸漬し、最後に窒素気流下にて乾燥させた。
【0155】
[接触角の評価]
上記<被処理体の表面処理方法>により、表面処理された被処理体の表面に純水液滴(2.0μL)を滴下し、滴下10秒後における接触角を測定した。接触角の測定結果を表2に示す。なお、表面処理前の各被処理体について同様に接触角を測定した結果は、いずれも14.0°であった。
【0156】
【0157】
表2から分かるように、実施例1~6の表面処理剤では析出物が確認されず、撥水性能も良好であった。一方、比較例1の表面処理剤では、析出物が確認された。
以上より、本発明を適用した実施例の表面処理剤によれば、良好な品質を維持しつつ、被処理体の表面を高度に撥水化(シリル化)できること、が確認できる。