(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】基板洗浄部材および基板洗浄装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20221028BHJP
B08B 1/04 20060101ALI20221028BHJP
B08B 3/02 20060101ALI20221028BHJP
B08B 7/04 20060101ALI20221028BHJP
【FI】
H01L21/304 644G
H01L21/304 644C
H01L21/304 644E
B08B1/04
B08B3/02 B
B08B7/04 A
(21)【出願番号】P 2018193312
(22)【出願日】2018-10-12
【審査請求日】2021-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】230112025
【氏名又は名称】小林 英了
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【氏名又は名称】大野 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100106840
【氏名又は名称】森田 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【氏名又は名称】松野 知紘
(74)【代理人】
【識別番号】100174137
【氏名又は名称】酒谷 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100184181
【氏名又は名称】野本 裕史
(72)【発明者】
【氏名】石橋 知淳
【審査官】安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-283952(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0000652(US,A1)
【文献】特開2011-181644(JP,A)
【文献】特開2007-272236(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B08B 1/00 -13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を支持する基板支持機構と、
前記基板の第1面のベベルおよび/またはエッジに接触しながら回転することにより、前記第1面を洗浄するロール型の第1洗浄部材と、
前記第1洗浄部材と対向して配置され、前記基板の第2面のベベルおよび/またはエッジに接触しながら回転することにより、前記第2面を洗浄するロール型の第2洗浄部材と、
前記基板のエッジおよび前記第1洗浄部材に向かう方向で、前記基板の第1面に洗浄液を供給する第1ノズルと、
前記基板のエッジおよび前記第2洗浄部材に向かう方向で、前記基板の第2面に洗浄液を供給する第2ノズルと、を備え、
前記第1洗浄部材
および第2洗浄部材の回転軸は、前記基板と平行であり、
前記第1洗浄部材
および第2洗浄部材は、
複数の大径部および小径部を有
し、
前記第1洗浄部材の大径部に対向して前記第2洗浄部材の小径部が位置し、かつ、前記第1洗浄部材の小径部に対向して前記第2洗浄部材の大径部が位置し、前記第1洗浄部材と前記第2洗浄部材は互いに非接触に回転し、
前記第1洗浄部材および前記第2洗浄部材の長手方向に沿って大径部と小径部が交互に配置されており、前記大径部と前記小径部が交互に配置されることによって周方向に複数の溝が形成され、それぞれの溝は前記大径部によって隣接する溝と隔てられ、独立した形状になっており、
前記第1ノズルからの洗浄液は、前記第1洗浄部材の溝を流れ、前記基板の外周方向に排出され、
前記第2ノズルからの洗浄液は、前記第2洗浄部材の溝を流れ、前記基板の外周方向に排出される、基板洗浄装置。
【請求項2】
前記基板支持機構は、前記基板を保持して回転させる、請求項1に記載の基板洗浄装置。
【請求項3】
前記第1洗浄部材の回転方向は、前記基板と接触する位置において前記基板の中心からエッジに向かう方向である、請求項1
または2に記載の基板洗浄装置。
【請求項4】
前記基板の洗浄時に、前記第1洗浄部材を、前記基板の接線方向、半径方向および/または鉛直方向に揺動させるアクチュエータを備える、請求項1乃至
3のいずれかに記載の基板洗浄装置。
【請求項5】
前記基板は多角形であり、
前記基板支持機構は、前記基板の辺に沿う方向に基板を移動させ、前記第1洗浄部材が基板の辺に沿ったベベルおよび/またはエッジに接触する、請求項1乃至
4のいずれかに記載の基板洗浄装置。
【請求項6】
前記基板は多角形であり、
前記第1洗浄部材を基板の辺に沿う方向に移動させる移動機構を含む、請求項1乃至
4のいずれかに記載の基板洗浄装置。
【請求項7】
基板を洗浄する基板洗浄部材であって、
基板の第1面のベベルおよび/またはエッジに接触しながら回転することにより、前記基板の第1面を洗浄するように構成され、
複数の大径部および小径部を有する第1洗浄部材と、
前記第1洗浄部材と対向して配置され、基板の第2面のベベルおよび/またはエッジに接触しながら回転することにより、前記基板の第2面を洗浄するように構成され、
複数の大径部および小径部を有する第2洗浄部材と、を備え、
前記第1洗浄部材および前記第2洗浄部材の回転軸は、前記基板と平行であり、
前記第1洗浄部材の大径部に対向して前記第2洗浄部材の小径部が位置し、かつ、前記第1洗浄部材の小径部に対向して前記第2洗浄部材の大径部が位置し、前記第1洗浄部材と前記第2洗浄部材は互いに非接触に回転するように構成され
、
前記第1洗浄部材および前記第2洗浄部材の長手方向に沿って大径部と小径部が交互に配置されており、前記大径部と前記小径部が交互に配置されることによって周方向に複数の溝が形成され、それぞれの溝は前記大径部によって隣接する溝と隔てられ、独立した形状になっており、
前記基板のエッジおよび前記第1洗浄部材に向かう方向で第1ノズルから前記基板の第1面に供給される洗浄液は、前記第1洗浄部材の溝を流れ、前記基板の外周方向に排出され、
前記基板のエッジおよび前記第2洗浄部材に向かう方向で第2ノズルから前記基板の第2面に供給される洗浄液は、前記第2洗浄部材の溝を流れ、前記基板の外周方向に排出される、基板洗浄部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板洗浄部材および基板洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1,2には基板洗浄装置が開示されている。しかしながら、これらの基板洗浄装置は必ずしも洗浄力が十分とはいえない。また、スループットの観点から限られた時間内に洗浄を行ううえで洗浄処理を短時間で完了させたい場合もあるが、基板の種類やプロセス等によっては、基板上の部分的な汚れを洗浄しにくい等といった理由により洗浄を効率的に進めるうえでも制約があることがあった。
【0003】
さらにまた、基板の微細化のさらなる進展や、基板端部までより有効に最終製品に活用したいといった要請から、エッジ部付近のパーティクル等の除去性能向上の要請がよりクローズアップされてきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3933670号公報
【文献】米国特許第7166183号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、洗浄力が高い基板洗浄部材および基板洗浄装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、基板を支持する基板支持機構と、前記基板の第1面のベベルおよび/またはエッジに接触しながら回転することにより、前記第1面を洗浄するロール型の第1洗浄部材と、を備え、前記第1洗浄部材の回転軸は、前記基板と平行であり、
前記第1洗浄部材は、大径部および小径部を有する、基板洗浄装置が提供される。
【0007】
前記基板支持機構は、前記基板を保持して回転させるのが望ましい。
【0008】
基板洗浄装置は、前記第1洗浄部材と対向して配置され、前記基板の第2面のベベルおよび/またはエッジに接触しながら回転することにより、前記第2面を洗浄するロール型の第2洗浄部材を備え、前記第2洗浄部材の回転軸は、前記基板と平行であり、前記第2洗浄部材は、大径部および小径部を有し、前記第1洗浄部材の大径部に対向して前記第2洗浄部材の小径部が位置し、かつ、前記第1洗浄部材の小径部に対向して前記第2洗浄部材の大径部が位置し、前記第1洗浄部材と前記第2洗浄部材は互いに非接触に回転するのが望ましい。
【0009】
前記第1洗浄部材の回転方向は、前記基板と接触する位置において前記基板の中心からエッジに向かう方向であるのが望ましい。
【0010】
基板洗浄装置は、前記基板の第1面に対して、前記基板のエッジに向かう方向に液体を供給する第1ノズルを備えるのが望ましい。
【0011】
前記基板の洗浄時に、前記第1洗浄部材を、前記基板の接線方向、半径方向および/または鉛直方向に揺動させるアクチュエータを備えるのが望ましい。
【0012】
前記基板は多角形であり、
前記基板支持機構は、前記基板の辺に沿う方向に基板を移動させ、前記第1洗浄部材が基板の辺に沿ったベベルおよび/またはエッジに接触するのが望ましい。
【0013】
前記基板は多角形であり、前記第1洗浄部材を基板の辺に沿う方向に移動させる移動機構を含んでもよい。
【0014】
本発明の別の態様によれば、基板を洗浄する基板洗浄部材であって、基板のベベルおよび/またはエッジに接触しながら回転することにより、前記基板を洗浄するように構成され、その回転軸は前記基板と平行であり、大径部および小径部を有する、基板洗浄部材が提供される。
【0015】
基板洗浄部材は、複数の前記大径部を有するのが望ましい。
【0016】
本発明の別の態様によれば、基板を洗浄する基板洗浄部材であって、基板の第1面のベベルおよび/またはエッジに接触しながら回転することにより、前記基板の第1面を洗浄するように構成され、大径部および小径部を有する第1洗浄部材と、前記第1洗浄部材と対向して配置され、基板の第2面のベベルおよび/またはエッジに接触しながら回転することにより、前記基板の第2面を洗浄するように構成され、大径部および小径部を有する第2洗浄部材と、を備え、前記第1洗浄部材および前記第2洗浄部材の回転軸は、前記基板と平行であり、前記第1洗浄部材の大径部に対向して前記第2洗浄部材の小径部が位置し、かつ、前記第1洗浄部材の小径部に対向して前記第2洗浄部材の大径部が位置し、前記第1洗浄部材と前記第2洗浄部材は互いに非接触に回転するように構成される、基板洗浄部材が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の基板洗浄部材および基板洗浄装置によれば、基板の洗浄力が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】一実施形態に係る基板洗浄装置の概略構成を模式的に示す上面図。
【
図5】基板Wとロール型洗浄部材2a,2bが接触する部分の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0020】
本実施形態では、主に基板(ウエハ)Wの周縁部の洗浄を目的とする。洗浄対象となる基板Wとしては、円形基板だけでなく四角形の基板でもよい。また、当該基板は、金属フィーチャを有する多重層でもよく、膜質の異なるさまざまなシリコン酸化膜が形成された基板でもよい。また、基板は半導体基板に限定されず、プラズマ表示用基板、液晶表示用基板、有機EL表示用基板、フォトマスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、など、任意の基板が含まれる。さらに、基板の形状にも特に制限はなく、典型的には円形ではあるが、四角形など多角形であってもよい。また、本明細書において、
図1に示すように、基板端部において断面が曲率を有する部分Bを「ベベル」と呼び、デバイスが形成される領域Dよりベベル側の領域Eを「エッジ」と呼ぶ。また、ベベルおよびエッジを併せて「周縁部」と呼ぶ。
【0021】
図2は、一実施形態に係る基板洗浄装置の概略構成を模式的に示す上面図である。基板洗浄装置は、スピンドル1と、ロール型洗浄部材2a,2bと、モータ3a,3bと、洗浄液ノズル4a,4bと、リンス液ノズル5a,5bと、アクチュエータ6とを備えている(なお、洗浄液ノズル4bおよびリンス液ノズル5bは基板Wの下方にあるため
図2に現れない)。
【0022】
スピンドル1は基板支持機構の例であり、表面を上にして基板Wの周縁部を保持する。さらに、本実施形態におけるスピンドル1は、基板Wを水平面内で回転させる。より具体的には、スピンドル1の上部に設けたコマの外周側面に形成した把持溝内に基板Wの周縁部を位置させて内方に押し付け、コマを回転(自転)させることにより基板Wが回転する。ここで、「コマ」は基板を把持するための「把持部」と言い換えられる。また、「スピンドル」は「ローラー」と言い換えることもできる。
【0023】
なお、スピンドル1によらず、基板Wの下面を吸着して回転させるスピンチャックを適用するなど、他の手法によって基板Wを保持して回転させてもよい。
【0024】
ロール型洗浄部材2aは基板Wの上面を洗浄し、ロール型洗浄部材2bは基板Wの下面を洗浄する。典型的には、基板Wの上面はデバイスパターンの形成されたデバイス面であり、基板Wの下面はデバイスパターンの形成されていない非デバイス面である。非デバイス面は裏面と呼び変えることもできる。
【0025】
より詳しくは、ロール型洗浄部材2aは、基板Wの上面の周縁部に接触しながら回転することにより、上面を洗浄する。ロール型洗浄部材2bは、ロール型洗浄部材2aと対向して、すなわち、ロール型洗浄部材2aの下方に配置される。そして、ロール型洗浄部材2bは、基板Wの下面の周縁部に接触しながら回転することにより、下面を洗浄する。なお、ロール型洗浄部材2a,2bは基板Wの周縁部(すなわち、基板Wのエッジおよびベベルの両方)に接触するのが望ましいが、エッジおよびベベル一方のみに接触してもよい。
【0026】
ロール型洗浄部材2aは軸31aを介してモータ3aに接続される。モータ3aの回転によってロール型洗浄部材2aが回転する。ロール型洗浄部材2aの回転方向は、基板Wと接触する位置において、基板Wの中心からエッジに向かう方向である(矢印Bから見て、反時計回り)。
【0027】
また、アクチュエータ6により、ロール型洗浄部材2aは基板Wの接線方向(すなわち、ロール型洗浄部材2aの長手(軸)方向)、半径方向および/または鉛直方向に移動可能である。洗浄中にロール型洗浄部材2aが基板Wの接線方向、半径方向および鉛直方向に移動(揺動)することで、洗浄力が向上する。移動(揺動)方向は、接線方向、半径方向および鉛直方向の1方向あるいは任意の組み合わせの2方向であってもよい。また、半径方向の位置はレシピで任意に設定可能としてもよい。
【0028】
また、アクチュエータ6により、ロール型洗浄部材2aは基板Wの半径方向に移動可能である。基板Wの洗浄を行わない待機時は、ロール型洗浄部材2aは基板Wが配置される位置から外周方向に離れた位置にある。この位置を「退避位置」と呼ぶ。そして、基板Wの洗浄を行う時は、ロール型洗浄部材2aは退避位置から基板Wの中心方向に向かって移動し、基板Wと接触する。この位置を「洗浄位置」と呼ぶ。洗浄が完了すると、ロール型洗浄部材2aは退避位置に向かって基板Wの外周方向に移動する。
【0029】
以上、ロール型洗浄部材2aについて主に説明したが、ロール型洗浄部材2bも同様である。なお、ロール型洗浄部材2a,2bは、一体となって(あるいは同期して)基板Wの半径方向に移動してもよいし、互いに独立して移動してもよい。また、ロール型洗浄部材2a,2bは、一体となって(あるいは同期して)基板Wの接線方向に移動してもよい。また、ロール型洗浄部材2a,2bは上下方向(基板Wと垂直方向)に移動可能であってもよい。
【0030】
洗浄液ノズル4aおよびリンス液ノズル5aは基板Wの上方に配置される。そして、基板Wの洗浄時に、洗浄液ノズル4aは薬液や純水などの洗浄液を基板Wの上面に供給し、リンス液ノズル5aは純水などのリンス液を基板Wの上面に供給する。洗浄液ノズル4aおよびリンス液ノズル5aによる液体(洗浄液およびリンス液)の供給方向は基板Wの中心から外側に向かう方向であるのが望ましい。基板W上に着液して汚染された液体が長く基板Wに留まるのを防止するためである。
【0031】
洗浄液ノズル4bおよびリンス液ノズル5bは、基板Wの下方に配置され、基板Wの洗浄時に基板Wの下面に液体を供給する。その他は洗浄液ノズル4aおよびリンス液ノズル5aと同様である。
【0032】
以上説明した基板洗浄装置において、スピンドル1によって基板Wが回転した状態で、洗浄液ノズル4a,4bがそれぞれ基板Wの上面および下面に洗浄液を供給しつつ、ロール型洗浄部材2a,2bがそれぞれ基板Wの上面および下面に接触して回転することで、基板Wの上面および下面が物理的に接触洗浄される。
【0033】
図3は、ロール型洗浄部材2aの正面図(
図2の矢印Aから見た図)である。図示のように、ロール型洗浄部材2aは、大径部21aと小径部22aが交互に重ねられ、凹凸が形成されていている。ロール型洗浄部材2aは周方向に複数の溝23aが形成された円筒形状と考えることもできる。あるいは、ロール型洗浄部材2aは長手方向(軸方向)に凹凸が形成されていると考えることもできる。溝23aはロール型洗浄部材2aの回転軸に垂直な面内で閉じた環となっている。そして、各溝23aは、大径部21aによって隣接する溝23aとは隔てられ、独立している。なお、
図3では、大径部21aと小径部22aが矩形で描かれているが、大径部21aに基板洗浄時に基板Wと接触する角部211aが形成される形状であればよく、例えば台形形状であってもよい。図示を省略するが、ロール型洗浄部材2bも同様、大径部21bと小径部22bが交互に重ねられた形状である。
【0034】
図4は、基板洗浄装置の側面図(
図2の矢印Bから見た図)である。また、
図5は、基板Wとロール型洗浄部材2a,2bが接触する部分の拡大図(
図4の矢印Cから見た図)である。
図4および
図5に示すように、ロール型洗浄部材2a,2bの間に基板Wの周縁を噛み込ませている。具体的には、
図5に示すように、ロール型洗浄部材2a,2bの長手方向の長さはほぼ等しい。そして、ロール型洗浄部材2aの大径部21aと、ロール型洗浄部材2bの大径部21bとが互い違いになっている。さらに具体的には、ロール型洗浄部材2aの大径部21aに対向してロール型洗浄部材2bの小径部22bが位置し、ロール型洗浄部材2aの小径部22aに対向してロール型洗浄部材2bの大径部21bが位置する。これにより、ロール型洗浄部材2aの大径部21aとロール型洗浄部材2bの小径部22bとが噛み合い、ロール型洗浄部材2aの小径部22aとロール型洗浄部材2bの大径部21bとが噛み合い、互いに干渉されず(接触せず)に回転する構成となっている。
【0035】
このような構成により、ロール型洗浄部材2a,2bが互いに接触することによる発塵を抑えられる。また、基板Wの回転作用もあり、ロール型洗浄部材2a,2bにおける大径部21a,21bの角部211aが多数基板Wに接触するため、パーティクル除去性能が高くなる。
すなわち、
図3ではロール型洗浄部材2aに角部211aが5か所あり、基板Wが1回転する間に基板Wの周縁部が角部211aに対する接触、離反を5回繰り返すことになる。ロール型洗浄部材2aによるパーティクル除去メカニズムにおいては、ロール型洗浄部材2aの角部211aが基板Wに接触して拭う際の物理力が大きな効果をもたらしていると考えられており、しかもパーティクルに対する物理力を周期的に繰り返し与えることができるので、高いパーティクル除去性能が得られる。
【0036】
ここで、ロール型洗浄部材2a,2bを揺動させることでパーティクル除去性能が向上する。例えば、上述したアクチュエータ6により、ロール型洗浄部材2a,2bを基板Wの接線方向および/または半径方向に対してわずかに揺動させてもよい。
【0037】
また、液体を供給して洗浄する際、洗浄液ノズル4a,4bおよびリンス液ノズル5a,5bは、基板Wのエッジに向かう方向に洗浄液を供給する。そして、ロール型洗浄部材2a,2bは、ロール型洗浄部材2a,2bが基板Wに接触する位置における回転方向が、基板Wのエッジに向かう方向になるように回転する。すなわち、液体がロール型洗浄部材2a,2bの回転に巻き込まれる方向に洗浄液を供給する。これにより、基板とロール型洗浄部材2a,2bの間に新鮮な液体をスムーズに供給することができる。液体は、ロール型洗浄部材2a,2bにおける大径部21a,21bの側面212aを壁として溝23a,23bを流れ、基板Wの外周方向に排出される。また、各溝23a,23bが独立しているため、洗浄によって汚染された洗浄液が隣接する溝23a,23bに流れ込むこともない。これにより、基板と角部211aの接触部において十分な洗浄液を供給することができ、洗浄液による洗浄力が向上するとともに、パーティクル排出性も向上する。
【0038】
洗浄液ノズル4a,4bおよびリンス液ノズル5a,5bは、基板W上でなくとも基板Wとロール型洗浄部材2a,2bとが接触する(交差する)部分や接触部の近傍へ液体を供給してもよい。あるいは、液体を、基板W上、接触部および接触部の近傍の2以上に供給してもよい。いずれにしても基板Wに供給された洗浄液およびリンス液が基板Wの外側に排出される方向であるのが望ましい。
【0039】
また、
図4および
図5に示すように、ロール型洗浄部材2a,2bは回転機構であり回転軸となる、基板Wと平行に延びる芯24a,24bを有しており、芯24a,24bの内部へ液体を供給してもよい(いわゆる、「インナーリンス」)。供給された液体は、ロール型洗浄部材2a,2bの回転による遠心力によって、芯24a,24bの内部からロール型洗浄部材2a,2bの表面(洗浄面)側に移動し、基板Wに供給される。また、前述の洗浄液ノズル4a,4bおよびリンス液ノズル5a,5bからの外部供給と、インナーリンスとを組み合わされてもよい。なお、ロール型洗浄部材2a,2bは基板洗浄装置で使用する前に予め芯24a,24bと組み合わされていても、あるいは一体化されていてもよい。あるいは、ロール型洗浄部材2a,2bは芯24a,24bが挿入される孔のみ有し、基板洗浄装置が有する芯24a,24bを差し込んで使用するようにしてもよい。
【0040】
このように、本実施形態では、ロール型洗浄部材2a,2bが大径部21a,21bおよび小径部22a,22bを有する。そのため、大径部21a,21bの角部211aが基板Wに繰り返し接触することによって物理的な洗浄力が増し、かつ、側面212aが壁となって洗浄液を保持することによって洗浄液による洗浄効果が増すことなり、洗浄力が向上する。
【0041】
また、ロール型洗浄部材2a,2bの芯24a,24bの中心は、基板Wの厚み方向の中心からそれぞれ距離D1,D2離れている。距離D1,D2は互いに等しくてもよいし、異なっていてもよい。距離D1,D2はレシピで任意に設定可能としてもよい。また、洗浄中に距離D1,D2が変化するよう、ロール型洗浄部材2a,2bを鉛直方向に移動(揺動)してもよい。パーティクルの付着状況などに応じて洗浄箇所を調整可能となる。
【0042】
なお、ロール型洗浄部材2a,2bとしては、典型的にはPVAスポンジ製が用いられるが、より洗浄力を高くすべく、その表面に微細な砥粒、フッ素系樹脂粒子、触媒粒子などを含有していてもよい。また、基板Wを水平方向ではなく鉛直方向に保持して洗浄を行ってもよい。また、必ずしも基板Wの上下にロール型洗浄部材2a,2bを設ける必要もなく、基板洗浄装置は、基板Wの上面を洗浄するロール型洗浄部材2aのみを備えていてもよく、この場合、距離D1は0でもよい。あるいは、基板洗浄装置は、基板Wの下面を洗浄するロール型洗浄部材2bのみを備えていてもよく、この場合、距離D2は0でもよい。
【0043】
なお、上述した実施形態は円形基板を対象としているが、ロール型洗浄部材2a、2bは多角形(例えば四角形)の基板の洗浄にも適用できる。すなわち、
図6に示すように、基板支持機構における基板支持移動機構が、四角形の基板を水平姿勢で一方の辺に沿って移動させながら、ロール型洗浄部材2a、2bを移動方向に沿うように接触させることで、四角形の基板の周縁部を洗浄するようにしてもよい。あるいは、
図7に示すように、基板を固定し、ロール型洗浄部材2a、2bを辺に沿って動かしてもよい。
【0044】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうることである。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲とすべきである。
【符号の説明】
【0045】
1 スピンドル
2a,2b ロール型洗浄部材
21a,21b 大径部
211a 角部
212a 側面
22a,22b 小径部
23a,23b 溝
24a,24b 芯
3a,3b モータ
4a,4b 洗浄液ノズル
5a,5b リンス液ノズル
6 アクチュエータ