(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】アクリル系ブロック共重合体ペレットの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 3/12 20060101AFI20221028BHJP
C08L 53/00 20060101ALI20221028BHJP
C08L 33/10 20060101ALI20221028BHJP
C08L 71/02 20060101ALI20221028BHJP
【FI】
C08J3/12 A CEY
C08L53/00
C08L33/10
C08L71/02
(21)【出願番号】P 2019035725
(22)【出願日】2019-02-28
【審査請求日】2021-09-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤井 真
(72)【発明者】
【氏名】小野 友裕
(72)【発明者】
【氏名】大島 啓志
(72)【発明者】
【氏名】加藤 丈明
【審査官】磯部 洋一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/094271(WO,A1)
【文献】特開2009-120665(JP,A)
【文献】特開2016-104830(JP,A)
【文献】特開2003-253005(JP,A)
【文献】国際公開第2019/239878(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00-3/28
C08K 3/00-13/00
C08L 1/00-101/14
B29B 7/00-15/06
C08F 251/00-297/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル酸アルキルエステル単位からなる少なくとも1つの重合体ブロック(a1)とメタクリル酸アルキルエステル単位からなる少なくとも1つの重合体ブロック(a2)とを有するアクリル系ブロック共重合体(A)の原料ペレットを、混合液(I)に接触させる工程と、ペレットに付着した混合液(I)の溶媒を除去する工程を含む、アクリル系ブロック共重合体(A)を含むペレット(D)の製造方法であって、
混合液(I)は、メタクリル樹脂粒子及びアニオン系界面活性剤を含むアクリルエマルジョン(B)並びに水溶性増粘剤(C)を含み、メタクリル樹脂粒子の濃度が0.10質量%以上2.0質量%以下、水溶性増粘剤(C)の濃度が0.0015質量%以上0.015質量%以下である、
アクリル系ブロック共重合体(A)を含むペレット(D)の製造方法。
【請求項2】
アクリルエマルジョン(B)に含まれるメタクリル樹脂粒子の数平均粒子径が0.05μm以上2.0μm以下である、請求項1に記載のアクリル系ブロック共重合体(A)を含むペレット(D)の製造方法。
【請求項3】
アクリルエマルジョン(B)に含まれるメタクリル樹脂粒子が、メタクリル酸メチル単位を85質量%以上含有するメタクリル樹脂粒子である、請求項1又は2に記載のアクリル系ブロック共重合体(A)を含むペレット(D)の製造方法。
【請求項4】
水溶性増粘剤(C)がポリエチレンオキサイドである、請求項1~3のいずれかに記載のアクリル系ブロック共重合体(A)を含むペレット(D)の製造方法。
【請求項5】
水溶性増粘剤(C)であるポリエチレンオキサイドの粘度平均分子量が100,000~8,000,000である、請求項4に記載のアクリル系ブロック共重合体(A)を含むペレット(D)の製造方法。
【請求項6】
混合液(I)
の中のメタクリル樹脂粒子のゼータ電位が-75mV以下である、請求項1~5のいずれかに記載のアクリル系ブロック共重合体(A)を含むペレット(D)の製造方法。
【請求項7】
アクリル系ブロック共重合体(A)が、アクリル酸アルキルエステル単位からなる重合体ブロック(a1)の両末端にそれぞれメタクリル酸アルキルエステル単位からなる重合体ブロック(a2)が結合した構造を分子内に少なくとも1つ有し、重量平均分子量が30,000~250,000であり、重合体ブロック(a2)の含有量が5~40質量%である請求項1~6のいずれかに記載のアクリル系ブロック共重合体(A)を含むペレット(D)の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膠着防止されたアクリル系ブロック共重合体ペレットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル酸エステル単位からなる重合体ブロック及びメタクリル酸エステル単位からなる重合体ブロックを有するアクリル系ブロック共重合体は、その特性から、粘接着剤、軟質材料、樹脂改質剤など種々の用途への使用が検討されている。このアクリル系ブロック共重合体は、射出成形、押出成形などの種々の成形方法などに使用するため、通常、粒状のペレットとして製造される。しかし、アクリル系ブロック共重合体は、通常軟質成分を含有しており、膠着しやすいことが問題である。
【0003】
膠着防止をするために、ペレットの表面にエチレンビスステアリン酸アミドなどの膠着防止剤を付着させる方法が考えられる。しかし、エチレンビスステアリン酸アミドを膠着防止剤として用いた場合には、得られる成形体の透明性が低下する場合、メヤニが発生する場合などがあり、問題である。
【0004】
この問題を解消する方法として、アクリル系ブロック共重合体に滑剤を添加する方法が検討されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献に記載される膠着防止方法では、十分に膠着防止できない場合があることが分かった。本発明の目的は、十分に膠着防止されたアクリル系ブロック共重合体のペレットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意検討を重ねてきた結果、特定のアクリルエマルジョンと水溶性増粘剤とを含む混合液に原料ペレットを接触させる工程を経て得られるアクリル系ブロック共重合体のペレットが、十分に膠着防止できることを見い出した。
【0008】
本発明によれば上記目的は、
[1]アクリル酸アルキルエステル単位からなる少なくとも1つの重合体ブロック(a1)とメタクリル酸アルキルエステル単位からなる少なくとも1つの重合体ブロック(a2)とを有するアクリル系ブロック共重合体(A)の原料ペレットを、混合液(I)に接触させる工程と、ペレットに付着した混合液(I)の溶媒を除去する工程を含む、アクリル系ブロック共重合体(A)を含むペレット(D)の製造方法であって、混合液(I)は、メタクリル樹脂粒子及びアニオン系界面活性剤を含むアクリルエマルジョン(B)並びに水溶性増粘剤(C)を含み、メタクリル樹脂粒子の濃度が0.10質量%以上2.0質量%以下、水溶性増粘剤(C)の濃度が0.0015質量%以上0.015質量%以下である、アクリル系ブロック共重合体(A)を含むペレット(D)の製造方法;
[2]アクリルエマルジョン(B)に含まれるメタクリル樹脂粒子の数平均粒子径が0.05μm以上2.0μm以下である、[1]に記載のアクリル系ブロック共重合体(A)を含むペレット(D)の製造方法;
[3]アクリルエマルジョン(B)に含まれるメタクリル樹脂粒子が、メタクリル酸メチル単位を85質量%以上含有するメタクリル樹脂粒子である、[1]又は[2]に記載のアクリル系ブロック共重合体(A)を含むペレット(D)の製造方法;
[4]水溶性増粘剤(C)がポリエチレンオキサイドである、[1]~[3]のいずれかに記載のアクリル系ブロック共重合体(A)を含むペレット(D)の製造方法;
[5]水溶性増粘剤(C)であるポリエチレンオキサイドの粘度平均分子量が100,000~8,000,000である、[4]に記載のアクリル系ブロック共重合体(A)を含むペレット(D)の製造方法;
[6]混合液(I)のゼータ電位が-75mV以下である、[1]~[5]のいずれかに記載のアクリル系ブロック共重合体(A)を含むペレット(D)の製造方法;
[7]アクリル系ブロック共重合体(A)が、アクリル酸アルキルエステル単位からなる重合体ブロック(a1)の両末端にそれぞれメタクリル酸アルキルエステル単位からなる重合体ブロック(a2)が結合した構造を分子内に少なくとも1つ有し、重量平均分子量が30,000~250,000であり、重合体ブロック(a2)の含有量が5~40質量%である[1]~[6]のいずれかに記載のアクリル系ブロック共重合体(A)を含むペレット(D)の製造方法;及び
[8][1]~[7]のいずれかの製造方法により作製されたアクリル系ブロック共重合体(A)を含むペレット(D);
を提供することにより達成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、十分に膠着防止できたアクリル系ブロック共重合体のペレットが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸エステル」は「メタクリル酸エステル」と「アクリル酸エステル」との総称であり、また「(メタ)アクリル」は「メタクリル」と「アクリル」との総称である。
【0011】
<アクリル系ブロック共重合体(A)>
本発明で用いる原料ペレットに含まれるアクリル系ブロック共重合体(A)は、アクリル酸アルキルエステル単位からなる少なくとも1つの重合体ブロック(a1)とメタクリル酸アルキルエステル単位からなる少なくとも1つの重合体ブロック(a2)とを有する。
【0012】
上記重合体ブロック(a1)の構成単位であるアクリル酸アルキルエステルとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸n-ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸n-オクチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸トリデシル、アクリル酸ステアリル等が挙げられる。
【0013】
上記アクリル酸アルキルエステルのアルキル基の主鎖炭素数が4以下の短鎖アルキル基である場合(例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸t-ブチルなど)には、上記アクリル系ブロック共重合体(A)の流動性、引張り強さが向上する傾向にある。上記アクリル酸アルキルエステルに含まれるアルキル基の主鎖炭素数が6以上の長鎖アルキル基である場合(例えば、アクリル酸n-ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸n-オクチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸トリデシル、アクリル酸ステアリルなど)には、上記アクリル系ブロック共重合体(A)の低温特性が向上する傾向にある。
【0014】
上記重合体ブロック(a1)の構成単位であるアクリル酸アルキルエステル単位は、1種単独で構成されていてもよいし、2種類以上から構成されてもよい。重合体ブロック(a1)中に含まれるアクリル酸アルキルエステル単位の割合は、重合体ブロック(a1)中60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。また、重合体ブロック(a1)はアクリル酸アルキルエステル単位100質量%であってもよい。
【0015】
上記重合体ブロック(a1)には、本発明の効果を損なわない範囲で、他の単量体単位を含有していてもよい。かかる単位を構成する他の単量体としては、例えば後述するメタクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル以外の、官能基を有さないメタクリル酸エステル、官能基を有するメタクリル酸エステル、アクリル酸アルキルエステル以外の官能基を有さないアクリル酸エステル、官能基を有するアクリル酸エステル、カルボキシル基を有するビニル系単量体、官能基を有するビニル系単量体、芳香族ビニル系単量体、共役ジエン系単量体、オレフィン系単量体、ラクトン系単量体等が挙げられる。これら単量体を用いる場合は、通常少量で使用されるが、重合体ブロック(a1)の形成に使用する単量体の全質量に対して、好ましくは40質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下の量で使用される。
【0016】
上記重合体ブロック(a1)のガラス転移温度は-100~30℃であることが好ましく、-80~20℃であることがより好ましく、-70~15℃であることがさらに好ましい。重合体ブロック(a1)のガラス転移温度が上記範囲内であると、低温領域でも柔軟性及び粘着剤としての特性に優れるアクリル系ブロック共重合体(A)を含むペレットが得られる。重合体ブロック(a1)のガラス転移温度が上記範囲内となり、入手が容易である点からは、上記アクリル酸アルキルエステルの中でも、アクリル酸プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸n-オクチルが好ましい。
【0017】
上記アクリル系ブロック共重合体(A)には、重合体ブロック(a1)が2つ以上含まれてもよいが、その場合、それら重合体ブロック(a1)は、同一であっても異なっていてもよい。
【0018】
上記重合体ブロック(a2)の構成単位であるメタクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸n-ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸n-オクチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸イソボルニル等が挙げられる。これらの中でも、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピルが好ましく、経済的に入手容易な点、得られる重合体ブロック(a2)が耐久性と耐候性に優れる点などから、メタクリル酸メチルがより好ましい。
【0019】
上記重合体ブロック(a2)の構成単位であるメタクリル酸アルキルエステル単位は、1種単独で構成されていてもよいし、2種類以上から構成されてもよい。重合体ブロック(a2)中に含まれるメタクリル酸アルキルエステル単位の割合は、重合体ブロック(a2)中60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。また、重合体ブロック(a2)はメタクリル酸アルキルエステル単位100質量%であってもよい。
【0020】
上記重合体ブロック(a2)には、本発明の効果を損なわない範囲で、他の単量体単位が含まれていてもよい。かかる他の単量体としては、例えばメタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル等のメタクリル酸アルキルエステル以外の、官能基を有さないメタクリル酸エステル;メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸エトキシエチル等のメタクリル酸アルコキシアルキルエステル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-アミノエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル等の、官能基を有するメタクリル酸エステル;前述したアクリル酸アルキルエステル;アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル等のアクリル酸アルキルエステル以外の官能基を有さないアクリル酸エステル;アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エトキシエチル等のアクリル酸アルコキシアルキルエステル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-アミノエチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル等の、官能基を有するアクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、(メタ)アクリルアミド等のカルボキシル基を有するビニル系単量体;(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン等の、官能基を有するビニル系単量体;スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、m-メチルスチレン等の芳香族ビニル系単量体;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン系単量体;エチレン、プロピレン、イソブテン、オクテン等のオレフィン系単量体;ε-カプロラクトン、バレロラクトン等のラクトン系単量体等が挙げられる。これら単量体を用いる場合は、通常少量で使用されるが、重合体ブロック(a2)の形成に使用する単量体の全質量に対して、好ましくは40質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下の量で使用される。
【0021】
上記重合体ブロック(a2)のガラス転移温度は50~150℃であることが好ましく、70~140℃であることがより好ましく、80~130℃であることがさらに好ましい。重合体ブロック(a2)のガラス転移温度が上記範囲内であると、ペレットへの加工がしやすく、かつペレットとして保存する際、高温下(例えば50℃)での膠着性が低減する傾向にある。
【0022】
上記アクリル系ブロック共重合体(A)には、重合体ブロック(a2)が2つ以上含まれてもよいが、その場合、それら重合体ブロック(a2)は、同一であっても異なっていてもよい。
【0023】
重合体ブロック(a2)の重量平均分子量は、特に限定されないが、1,000~50,000の範囲にあることが好ましく、4,000~20,000の範囲にあることがより好ましい。重合体ブロック(a2)の重量平均分子量が1,000より小さい場合には、得られるアクリル系ブロック共重合体(A)の凝集力が不足する場合がある。また、重合体ブロック(a2)の重量平均分子量が50,000より大きい場合には、得られるアクリル系ブロック共重合体(A)の溶融粘度が高くなり、アクリル系ブロック共重合体(A)の生産性や、得られるアクリル系ブロック共重合体(A)を含むペレットの成形性などに劣る場合がある。なお、本明細書において重量平均分子量(Mw)はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定された標準ポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。
【0024】
また、アクリル系ブロック共重合体(A)中の重合体ブロック(a2)と重合体ブロック(a1)とのガラス転移温度の差は、70℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。
【0025】
上記アクリル系ブロック共重合体(A)は、重合体ブロック(a2)を「a2」;重合体ブロック(a1)を「a1」;としたときに、一般式:
(a2-a1)n
(a2-a1)n-a2
a1-(a2-a1)n
(a2-a1)n-Z
(a1-a2)n-Z
(式中、nは1~30の整数、Zはカップリング部位(カップリング剤がポリマー末端と反応して化学結合を形成した後のカップリング部位)を表す)で表されるものであることが好ましい。また、上記nの値は、1~15であることが好ましく、1~8であることがより好ましく、1~4であることがさらに好ましい。
【0026】
これら構造の中でも、重合体ブロック(a1)の両末端にそれぞれ重合体ブロック(a2)が結合した構造が好ましい。
具体的には、下記一般式:
(a2-a1)n1
(a2-a1)n-a2
a1-(a2-a1)n1
(a2-a1)n1-Z
(a1-a2)n1-Z
(式中、nは1~30の整数、n1は2~30の整数、Zはカップリング部位(カップリング剤がポリマー末端と反応して化学結合を形成した後のカップリング部位)を表す)で表されるものであることが好ましい。上記n1の値は、2~15であることが好ましく、2~8であることがより好ましく、2~4であることがさらに好ましい。
【0027】
上記構造の中でも、(a2-a1)n、(a2-a1)n-a2、a1-(a2-a1)nで表される直鎖状のブロック共重合体がより好ましく、a2-a1で表されるジブロック共重合体及びa2-a1-a2で表されるトリブロック共重合体がさらに好ましい。
【0028】
上記アクリル系ブロック共重合体(A)の重合体ブロック(a2)の含有量は5~40質量%であることが好ましい。
重合体ブロック(a2)の含有量が5質量%未満であると、アクリル系ブロック共重合体(A)の流動性が高く液状であったり、アクリル系ブロック共重合体(A)からペレットを製造する際、例えばアンダーウォーターカッターなどでカットしてもペレット形状を維持することができない場合がある。重合体ブロック(a2)の含有量が40質量%を超えると、柔軟性に優れるアクリル系ブロック共重合体(A)を含むペレットが得られなくなる傾向がある。
【0029】
アクリル系ブロック共重合体(A)における重合体ブロック(a2)の含有量は、柔軟性に優れるペレットを得る観点からは、8~35質量%であることが好ましく、15~31質量%であることがより好ましい。
【0030】
後述するアクリルエマルジョン(B)に含まれるメタクリル樹脂との相容性、得られるアクリル系ブロック共重合体(A)を含むペレットの加工性の観点からは、上記アクリル系ブロック共重合体(A)の重量平均分子量は、30,000~250,000であることが好ましく、40,000~200,000であることがより好ましく、50,000~180,000であることがさらに好ましく、60,000~160,000であることがよりさらに好ましい。アクリル系ブロック共重合体(A)の重量平均分子量が30,000未満であると、アクリル系ブロック共重合体(A)の凝集力が不十分となり、得られる成形品又は粘着製品の耐久性に劣る場合がある。また、成形品又は粘着製品の表面にアクリル系ブロック共重合体(A)がブリードするなど不具合が生じる場合がある。一方、アクリル系ブロック共重合体(A)の重量平均分子量が250,000を超えると、溶融粘度が高くなりすぎ生産性、加工性に劣る場合がある。また、後述するアクリルエマルジョン(B)に含まれるメタクリル樹脂との相容性が低くなり、得られる成形品又は粘着製品の透明性が不十分であったり、得られる成形品又は粘着製品の物性にムラが生じたりする場合がある。
【0031】
上記アクリル系ブロック共重合体(A)では、分子量分布(Mw/Mn)が1.0~1.5であることが好ましい。アクリル系ブロック共重合体(A)の分子量分布が上記範囲にあることにより、成形時の金型汚染を抑制したり、粘着剤として使用した場合に凝集力が高いと同時に、被着体の汚染を抑制することができる。上記の観点から、分子量分布は1.0~1.4であることがより好ましく、1.0~1.3であることがさらに好ましい。なお、本明細書において数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定された標準ポリスチレン換算の数平均分子量及び重量平均分子量を意味する。
【0032】
アクリル系ブロック共重合体(A)の製造方法は特に制限されず、公知の方法に準じた製造方法により製造できる。一般に、分子量分布の狭いブロック共重合体を得る方法としては、構成単位であるモノマーをリビング重合する方法が採用される。このようなリビング重合の手法としては、例えば、有機希土類金属錯体を重合開始剤としてリビング重合する方法(例えば、特開平11-335432号公報を参照)、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤としアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩などの鉱酸塩の存在下でリビングアニオン重合する方法(例えば、特公平7-25859号公報を参照)、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤とし有機アルミニウム化合物の存在下でリビングアニオン重合する方法(例えば、特開平6-93060号公報を参照)、原子移動ラジカル重合方法(ATRP)(例えば、Macromol.Chem.Phys.,2000,201,p1108~1114を参照)などが挙げられる。
【0033】
上記製造方法のうち、有機アルミニウム化合物の存在下でリビングアニオン重合する方法は、重合途中の失活が少ないのでホモポリマーの混入が少なく、得られるブロック共重合体の透明性が高い。また、モノマーの重合転化率が高いので、ブロック共重合体中の残存モノマーが少なく、アクリル系ブロック共重合体(A)からなるペレットを作製する際、気泡の発生を抑制できる。さらに、メタクリル酸アルキルエステル単位からなる重合体ブロックの分子構造が高シンジオタクチックとなり、得られるアクリル系ブロック共重合体(A)を含むペレットの耐久性を高める効果がある。そして、比較的温和な温度条件下でリビングアニオン重合が可能なことから、工業的に生産する場合に、環境負荷(主に重合温度を制御するための冷凍機にかかる電力)が少なくて済む利点がある。以上の点から、アクリル系ブロック共重合体(A)は、有機アルミニウム化合物の存在下で有機アルカリ金属化合物を重合開始剤としてリビングアニオン重合する方法によって好ましく製造される。
【0034】
上記有機アルミニウム化合物の存在下でのリビングアニオン重合方法としては、例えば、有機リチウム化合物、及び下記一般式(1)
AlR1R2R3 (1)
(式(1)中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立して置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基又はN,N-二置換アミノ基を表すか、或いはR1が上記したいずれかの基であり、R2及びR3が一緒になって置換基を有していてもよいアリーレンジオキシ基を形成している。)で表される有機アルミニウム化合物の存在下に、必要に応じて、反応系内に、ジメチルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、12-クラウン-4などのエーテル化合物;トリエチルアミン、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N',N'',N''-ペンタメチルジエチレントリアミン、1,1,4,7,10,10-ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、ピリジン、2,2'-ジピリジルなどの含窒素化合物をさらに添加して、(メタ)アクリル酸エステルを重合させる方法を採用することができる。
【0035】
上記有機リチウム化合物としては、例えば、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、テトラメチレンジリチウムなどのアルキルリチウム又はアルキルジリチウム;フェニルリチウム、キシリルリチウムなどのアリールリチウム又はアリールジリチウム;ベンジルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとブチルリチウムの反応により生成するジリチウムなどのアラルキルリチウム又はアラルキルジリチウム;リチウムジイソプロピルアミドなどのリチウムアミド;メトキシリチウムなどのリチウムアルコキシドを挙げることができる。
【0036】
また、上記一般式(1)で表される有機アルミニウム化合物としては、重合のリビング性の高さや取扱いの容易さなどの点から、イソブチルビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)アルミニウム、イソブチルビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノキシ)アルミニウム、イソブチル〔2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノキシ)〕アルミニウムなどが好ましい。
【0037】
上記アクリル系ブロック共重合体(A)は、原料ペレットとして用いられる。アクリル系ブロック共重合体(A)からなる原料ペレットは、上記アクリル系ブロック共重合体(A)を、例えば溶融押出ししてストランドとし、アンダーウォーターカッター、センターホットカッター、ストランドカッターなどによりカットして、ペレットとすることにより製造できる。なお、上記原料ペレットは、後述するアクリルエマルジョン(B)と水溶性増粘剤(C)とを含有する混合液(I)に接触することができる限り、その形態については特に制限はないが、通常、略円柱状又は略球状(楕円体)の形態を有し、アクリル系ブロック共重合体(A)の原料ペレットの最大径は、2mm~8mmであることが好ましく、2mm~6mmであることがより好ましい。原料ペレットの最大径は、各形状に応じ、略円柱の場合は最大円柱高さ、略球状の場合は楕円体の最長辺を、市販の長さゲージによる測定により求めることができる。
【0038】
上記原料ペレット中に含まれるアクリル系ブロック共重合体(A)の含有量は、原料ペレット中、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
【0039】
さらに、上記原料ペレットを作製する際には、アクリル系ブロック共重合体(A)の特性が損なわれない範囲で、上記アクリル系ブロック共重合体(A)に加えて、必要に応じて配合する添加剤、例えば後述する粘着付与樹脂、可塑剤、軟化剤なども配合し、これら混合物から原料ペレットを作製してもよい。
【0040】
<アクリルエマルジョン(B)>
本発明で用いる混合液(I)は、アクリルエマルジョン(B)と水溶性増粘剤(C)を含有する。
【0041】
上記アクリルエマルジョン(B)には、メタクリル樹脂粒子が含まれる。かかるメタクリル樹脂粒子となるメタクリル樹脂は、メタクリル酸メチル単位を85質量%以上含有することが好ましく、88質量%以上含有することがより好ましく、90質量%以上含有することがさらに好ましく、また、メタクリル酸メチル単位は100質量%であってもよい。
【0042】
メタクリル酸メチル単位の含有量が上記範囲にあるメタクリル樹脂がアクリルエマルジョン(B)に含まれていることにより、アクリル系ブロック共重合体(A)の原料ペレットとの相容性が良くなり透明性に優れる傾向にある。
【0043】
また、上記メタクリル樹脂には、メタクリル酸メチル以外の他の単量体単位が含まれていてもよい。
かかる他の単量体単位を構成し得る他の単量体としては、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸n-ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸n-オクチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸イソボルニル等のメタクリル酸アルキルエステル(ただしメタクリル酸メチルを除く);アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸n-ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸n-オクチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸トリデシル、アクリル酸ステアリルなどのアクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の(メタ)アクリル酸エステル;スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物;ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン化合物;エチレン、プロピレンなどのオレフィン化合物;アクリル酸;メタクリル酸などが挙げられる。
【0044】
これら他の単量体の中でも、メタクリル酸アルキルエステル(メタクリル酸メチルを除く)、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸が好ましい。
他の単量体単位の含有量は、15質量%以下であることが好ましく、12質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。また、他の単量体単位の含有量は0質量%であってもよい。
【0045】
上記メタクリル樹脂が、メタクリル酸メチル共重合体である場合、共重合体の形態には特に制限はなく、例えばランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体、及び交互共重合体などが挙げられる。中でも、耐膠着性がより優れる点及び入手容易性の観点からは、メタクリル酸メチルランダム共重合体が好ましく、メタクリル酸メチル-メタクリル酸ランダム共重合体がより好ましい。
【0046】
また、上記メタクリル樹脂の立体規則性については特に制限はなく、イソタクチック、ヘテロタクチックあるいはシンジオタクチックであるものを用いることができる。
上記メタクリル樹脂の重量平均分子量は50,000~100,000であることが好ましい。重量平均分子量がこのような範囲にあることにより、アクリル系ブロック共重合体(A)との相容性が良好で、成形体、あるいは、溶剤型粘着剤とした場合に透明性が高い。また、アクリル系ブロック共重合体(A)との相容性と耐膠着性とのバランスの点から、重量平均分子量は60,000~95,000であることがより好ましく、70,000~90,000であることがさらに好ましい。
【0047】
上記メタクリル樹脂の製造方法は、特に限定されないが、例えば溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法などが挙げられる。また、メタクリル樹脂は、2種以上の異なる組成の重合体、異なる製造方法により得られた重合体の混合物であってもよい。重合時に用いられる開始剤としてはラジカル重合開始剤が好ましく、該ラジカル重合開始剤としては、例えばアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビスγ-ジメチルバレロニトリルなどのアゾ化合物;ベンゾイルパーオキサイド、クミルパーオキサイド、パーオキシネオデカノエート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t-ブチルクミルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイドなどの過酸化物が挙げられる。ラジカル重合開始剤は、メタクリル樹脂の製造に用いる全単量体100質量部に対して、通常、0.05~0.5質量部用いられる。重合は、通常50~140℃の温度で、通常2~20時間行われ、メタクリル樹脂の分子量を制御するために、連鎖移動剤を使用することができる。連鎖移動剤としては、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、イソプロピルメルカプタン、n-ブチルメルカプタン、t-ブチルメルカプタン、n-ヘキシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、エチルチオグリコエート、メルカプトエタノール、チオ-β-ナフトール、チオフェノール等が挙げられる。連鎖移動剤は、メタクリル樹脂の製造に用いる全単量体に対して、通常、0.005~0.5質量%の範囲で使用される。
【0048】
上記アクリルエマルジョン(B)に含まれるメタクリル樹脂粒子の数平均粒子径は、0.05μm以上2.0μm以下であることが好ましく、0.1μm以上1.0μm以下であることがより好ましく、0.15μm以上0.5μm以下であることがさらに好ましい。数平均粒子径がこのような範囲にあることにより、アクリル系ブロック共重合体(A)の原料ペレットへのメタクリル樹脂粒子の付着性が良好になり、また、アクリルエマルジョン(B)を安定して作製することができる。0.05μm以下では、付着性が劣る傾向にあり、また、2.0μm以上では沈殿が多くなる傾向にあり、エマルジョンの生産が困難となる場合がある。なお、アクリルエマルジョン(B)に含まれるメタクリル樹脂粒子の数平均粒子径は、レーザー回折式粒子径布測定装置を用いて求めた、数平均粒子径である。
【0049】
このようなメタクリル樹脂粒子は、例えば上述のようにして重合体を得た後に、必要に応じて該重合体を湿式凍結粉砕法などにより粉砕した後に、所望の数平均粒子径の範囲となるようにふるい等を用いて分級することにより製造できる。
【0050】
アクリルエマルジョン(B)に含まれるメタクリル樹脂粒子の濃度は、取扱い性、エマルジョンの安定性などを考慮して適宜設定できるが、10~70質量%であることが好ましい。
【0051】
アクリルエマルジョン(B)には、アニオン系界面活性剤が含まれる。アクリルエマルジョン(B)に含まれるアニオン系界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸塩、脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルファスルホ脂肪酸エステル塩、アルキルポリオキシエチレン硫酸塩、モノアルキルリン酸塩、アルギン酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸エステル-不飽和カルボン酸系共重合体の水溶性塩;スチレン-無水マレイン酸共重合体塩、マレイン化ポリブタジエン塩、ナフタレンスルホン酸塩、ポリアクリル酸塩などが挙げられる。これらの中でも、アニオン系界面活性剤としては、(メタ)アクリル酸エステル-不飽和カルボン酸系共重合体の水溶性塩が好ましく、(メタ)アクリル酸エステル-不飽和カルボン酸系共重合体の水溶性塩がより好ましい。
【0052】
上記アニオン系界面活性剤は1種単独で用いてもよく、又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
アクリルエマルジョン(B)でのアニオン系界面活性剤の濃度は1質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましい。
【0053】
アクリルエマルジョン(B)には、例えば、保護コロイドとして、例えばポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどの水溶性セルロース誘導体などがさらに含まれていてもよい。
【0054】
アクリルエマルジョン(B)の製造方法は特に制限がないが、例えば、以下のようにして製造することができる。
メタクリル樹脂をトルエン、キシレンなどの有機溶剤に溶解した溶液と水及びアニオン系界面活性剤とを撹拌装置に入れ、ホモミキサー等の撹拌機により、撹拌を室温~85℃で行い、メタクリル樹脂溶液が粒子状に分散した乳化液を得る。この乳化液は、必要に応じて高圧ホモジナイザーなどにより、メタクリル樹脂溶液の粒子をさらに微粒子化する処理を行ってもよい。得られた乳化液から減圧-加温条件下で有機溶剤を留去することにより、アクリルエマルジョン(B)が得られる。又は、有機溶剤を使用せず、オートクレーブ型撹拌装置中で、メタクリル樹脂、水及びアニオン系界面活剤を温度100℃~250℃条件下で撹拌を行い、メタクリル樹脂が粒子状に分散したアクリルエマルジョン(B)を得ることもできる。このアクリルエマルジョン(B)は、必要に応じて高圧ホモジナイザーなどにより、メタクリル樹脂粒子をさらに微粒子化する処理を行ってもよい。アクリルエマルジョン(B)の製造のための乳化方法は、ここに例示する乳化方法に限られず、例えば、反転乳化法、転相温度乳化法、D相乳化法、ゲル乳化法などの化学的乳化方法などその他の乳化方法を適用してもよい。
【0055】
<水溶性増粘剤(C)>
本発明で用いる混合液(I)には、水溶性増粘剤(C)が含まれる。
混合液(I)に水溶性増粘剤(C)が含まれることにより、アクリル系ブロック共重合体(A)からなる原料ペレットの表面に、メタクリル樹脂粒子等の膠着防止成分が適切な状態で付着できるようになり、膠着防止性能に優れるペレットが得られる。
【0056】
水溶性増粘剤(C)としては、例えば、ポリエチレンオキサイド、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコール、ポリプロピレンオキサイドなどが挙げられる。中でもアクリル系ブロック共重合体(A)の原料ペレットへのメタアクリル樹脂粒子の付着性向上の観点からは、ポリエチレンオキサイドが好ましい。
【0057】
水溶性増粘剤(C)となるポリエチレンオキサイドの粘度平均分子量(Mv)は、100,000~8,000,000であることが好ましく、500,000~1,500,000であることがより好ましい。水溶性増粘剤となるポリエチレンオキサイドの粘度平均分子量が上記範囲にあることにより、アクリル系ブロック共重合体(A)の原料ペレットへのメタクリル樹脂粒子の付着性を保持しつつ、混合液の粘度が適度に保たれる。分子量が100,000以下では、付着性が低下する傾向にあり、8,000,000以上では混合液の粘度が高くなるので混合液の除去が困難になる傾向にある。なお、粘度平均分子量(Mv)は、例えば、ポリマーの希釈溶液およびその溶媒を用いて、毛細管粘度計における流下時間を測定することから得られる分子量を用いることができる。
【0058】
後述する混合液(I)を作製するために用いる水溶性増粘剤(C)は、混合液(I)を作製する際に、そのままの状態で添加してもよいが、水溶性増粘剤(C)の水溶液とし、この状態でアクリルエマルジョン(B)と混合して混合液(I)としてもよい。アクリルエマルジョン(B)と混合する際に用いる水溶性増粘剤(C)の水溶液中の水溶性増粘剤(C)の濃度は、取扱い性などを考慮して適宜設定できるが、0.05~1質量%であることが好ましい。
【0059】
<混合液(I)>
混合液(I)は、上記アクリルエマルジョン(B)及び水溶性増粘剤(C)を混合することにより得られる。かかる混合をする際には、混合液(I)中のメタクリル樹脂粒子の濃度が0.10質量%以上2.0質量%以下となり、かつ水溶性増粘剤(C)の濃度が0.0015質量%以上0.015質量%以下となるように、混合をすればよい。このような混合液(I)を、アクリル系ブロック共重合体(A)の原料ペレットに接触させることにより、膠着防止性能に優れるペレットが得られる。
【0060】
アクリル系ブロック共重合体(A)の原料ペレットへのメタクリル樹脂粒子の付着性の観点からは、混合液(I)中のメタクリル樹脂粒子の濃度は、0.30質量%以上1.7質量%以下が好ましく、0.50質量%以上1.6質量%以下がより好ましい。混合液(I)の粘度及び、メタクリル樹脂粒子の付着性の点からは、混合液(I)中の水溶性増粘剤(C)の濃度は0.0020質量%以上0.010質量%以下が好ましく、0.0025質量%以上0.007質量%以下がより好ましい。
【0061】
混合液(I)には、アクリルエマルジョン(B)及び水溶性増粘剤(C)に加え、水等の溶媒、その他の添加剤が含まれていてもよい。
本発明で使用する混合液(I)のゼータ電位は-75mV以下であることが好ましく、-85mV以下であることがより好ましく、-100mV以下であることがさらに好ましい。混合液(I)のゼータ電位が-75mV以下であることにより、アクリル系ブロック共重合体(A)の原料ペレットへのメタクリル樹脂粒子の付着性が良好になる。なお、混合液(I)のゼータ電位は通常-150mV以上である。なお、混合液(I)のゼータ電位は、ゼータ電位・粒径・分子量測定システム「ELSZ-2000ZS」を用いて求めることができる。
【0062】
<アクリル系ブロック共重合体(A)を含むペレット(D)の製造方法>
本発明の製造方法では、アクリル系ブロック共重合体(A)の原料ペレットを、上記アクリルエマルジョン(B)と水溶性増粘剤(C)を含有する混合液(I)に接触させる工程を含む。
【0063】
アクリル系ブロック共重合体(A)の原料ペレットを混合液(I)に接触させる方法は特に制限はなく、例えば、アクリル系ブロック共重合体(A)の原料ペレットに混合液(I)を噴霧する方法、混合液(I)中に、アクリル系ブロック共重合体(A)の原料ペレットを投入して接触する方法などが挙げられる。
【0064】
混合液(I)を噴霧する方法としては、例えば、コンベアなどの移送装置上に原料ペレットを並べ、噴霧器内を通過させる際に混合液(I)を連続的に噴霧する方法などが挙げられる。
【0065】
混合液(I)中に、アクリル系ブロック共重合体(A)の原料ペレットを投入して接触する方法としては、例えば、撹拌機を備えた混合槽に混合液(I)及び原料ペレットを投入し、0℃~混合液(I)に含まれる溶媒の沸点以下の温度で、所定時間混合を行い、濾過等の方法で、ペレットと、混合液(I)を分離する方法が挙げられる。
【0066】
このような、混合液(I)との接触工程を経たペレットの表面には、混合液(I)が付着する。本発明の製造方法では、上記接触させる工程の後、このペレットの表面に付着した混合液(I)の溶媒を除去する工程を含む。溶媒を除去する方法については特に制限はなく、例えば、エアブロー、必要に応じて加温した空気を用いたエアブローなどを行うことにより、ペレット表面に付着した混合液(I)の溶媒を除去することができる。
【0067】
このようにして得られた本発明のアクリル系ブロック共重合体(A)を含むペレット(D)は、射出成形、押出成形、カレンダー成形等、通常熱可塑性樹脂で用いられる種々の成形法により、所望の形状に成形することができる。また、エラストマー材料、樹
脂、ゴム、アスファルト等の改質剤、制振剤、粘着剤のベースポリマー、樹脂改質剤の成分として用いることができる。
【実施例】
【0068】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はそれらにより何ら限定されない。なお、実施例及び比較例中の各種物性は以下の方法により測定又は評価した。
「重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)」
アクリル系ブロック共重合体の重量平均分子量、数平均分子量及び分子量分布は、ゲル・パーミエイション・クロマトグラフィー(以下GPCと略記する)によりポリスチレン換算分子量で求めた。詳細は以下のとおりである。
・装置:東ソー株式会社製GPC装置「HLC-8020」
・分離カラム:東ソー株式会社製の「TSKgel GMHXL」、「G4000HXL」及び「G5000HXL」を直列に連結
・溶離剤:テトラヒドロフラン
・溶離剤流量:1.0ml/分
・カラム温度:40℃
・検出方法:示差屈折率(RI)
【0069】
「各重合体ブロックの構成割合」
アクリル系ブロック共重合体における各重合体ブロックの構成割合及び各重合体ブロックの組成比は、1H-NMR(1H-核磁気共鳴)測定によって求めた。詳細は以下のとおりである。
・装置:日本電子株式会社製 核磁気共鳴装置「JNM-LA400」
・重溶媒:重水素化クロロホルム
【0070】
「アクリルエマルジョンに含まれるメタクリル樹脂粒子の数平均粒子径」
メタクリル樹脂粒子の平均粒子径はレーザー回折式粒子径布測定装置を用いて求めた。詳細は以下のとおりである。
・装置:マイクロトラック・ベル株式会社製 レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置「マイクロトラックMT3000II」
・測定溶媒:水
【0071】
「ゼータ電位」
混合液(I)のゼータ電位は電気泳動光散乱法(レーザードップラー法)を用いて求めた。詳細は以下のとおりである。
・装置:大塚電子株式会社製 ゼータ電位・粒径・分子量測定システム「ELSZ-2000ZS」
・測定溶媒:水
・測定濃度:0.1質量%
【0072】
「ペレットの膠着性評価」
1.ポリエチレン製のサンプル袋(縦240mm×横170mm×厚み0.08mm)に、アクリル系ブロック共重合体(A)の原料ペレット15gと、予め60℃に加熱した混合液(I)40gを仕込み、上下に軽く振りながら原料ペレットを混合液(I)に15秒間浸漬させる。
2.浸漬後、水切りネットを使用してペレットと混合液(I)に分ける。
3.水切りネットに残ったペレットに対して、ネットの上からエアーガンを使用してエアブローを行い、ペレット表面に付着した水気(水分)を飛ばす。
4.水気が無くなったペレットを、100mlのビーカーに移す際に、ペレットか解れた状態又は、塊で落ちてくるかを評価した。
AA:ペレットは完全に解れている
AB:ペレットは一部塊状である
BB:ペレットは一つの塊状である
【0073】
「メタクリル樹脂粒子の沈殿評価」
混合液(I)40gを、100mlのスクリュ管に入れ、スクリュ管ごと15秒間上下に激しく振り続け、24時間室温で静置させた後に、スクリュ管の底に沈殿物があるか目視で評価した。
A:沈殿なし
B:沈殿あり
【0074】
[製造例1][アクリル系ブロック共重合体(A1)]
(1)100Lの重合槽内部を窒素で置換した後、室温にて撹拌しながら、トルエン46.5kgと1,2-ジメトキシエタン1.08kgを加え、続いて、イソブチルビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシ)アルミニウム808.5mmolを含有するトルエン溶液1.60kgを加え、さらにsec-ブチルリチウム103.95mmolを含有するsec-ブチルリチウムのシクロヘキサン溶液0.06kgを加えた。
(2)続いて、これにメタクリル酸メチル1.08kgを加えた。反応液は当初、黄色に着色していたが、室温にて60分間撹拌後には無色となった。
(3)引き続き、重合液の内部温度を-30℃に冷却し、アクリル酸n-ブチル13.53kgを2時間かけて滴下し、滴下終了後-30℃にて5分間撹拌した。
(4)さらに、これにメタクリル酸メチル1.49kgを加え、一晩室温にて撹拌した。
(5)メタノ-ル0.50kgを添加して重合反応を停止した後、得られた反応液を495kgのメタノール中に注ぎ、液状沈殿物を析出させた。その後、液状沈殿物を回収し、乾燥させることにより、メタクリル酸メチル単位含有量(重合体ブロック(a2)の含有量)16.3質量%、重量平均分子量159,000、分子量分布1.10のアクリル系トリブロック共重合体(A1)14.8kgを得た。
(6)上記製造例1を10回繰り返し、アクリル系トリブロック共重合体(A)約150kgを得た。
(7)得られたアクリル系トリブロック共重合体(A1)を、KRUPP WERNER & PFLEIDERER製、ZSK-25二軸押出し機にてストランドカット方式によりペレット化した。
【0075】
[製造例2][アクリル系ブロック共重合体(A2)]
(1)3Lの三口フラスコに三方コックを付け内部を窒素で置換した後、室温にて撹拌しながら、トルエン1409gと1,2-ジメトキシエタン32.7gを加え、続いて、イソブチルビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシ)アルミニウム24.5mmolを含有するトルエン溶液48.6gを加え、さらにsec-ブチルリチウム4.35mmolを含有するsec-ブチルリチウムのシクロヘキサン溶液2.55gを加えた。
(2)続いて、これにメタクリル酸メチル43.5gを加えた。反応液は当初、黄色に着色していたが、室温にて60分間撹拌後には無色となった。
(3)引き続き、重合液の内部温度を-30℃に冷却し、アクリル酸n-ブチル360gを2時間かけて滴下し、滴下終了後-30℃にて5分間撹拌した。
(4)さらに、これにメタクリル酸メチル61.5gを加え、一晩室温にて撹拌した。
(5)メタノ-ル15gを添加して重合反応を停止した後、得られた反応液を15kgのメタノール中に注ぎ、液状沈殿物を析出させた。その後、液状沈殿物を回収し、乾燥させることにより、メタクリル酸メチル単位含有量(重合体ブロック(a2)の含有量)22.5質量%、重量平均分子量111,000、分子量分布1.09のアクリル系トリブロック共重合体(A2)450gを得た。
(6)得られたアクリル系トリブロック共重合体(A2)を、株式会社テクノベル製、KZW-15小型二軸押出し機にてストランドカット方式によりペレット化した。
【0076】
[製造例3][アクリル系ブロック共重合体(A3)]
(1)3Lの三口フラスコに三方コックを付け内部を窒素で置換した後、室温にて撹拌しながら、トルエン1302gと1,2-ジメトキシエタン65.1gを加え、続いて、イソブチルビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシ)アルミニウム60.3mmolを含有するトルエン溶液120.0gを加え、さらにsec-ブチルリチウム7.50mmolを含有するsec-ブチルリチウムのシクロヘキサン溶液4.34gを加えた。
(2)続いて、これにメタクリル酸メチル69.3gを加えた。反応液は当初、黄色に着色していたが、室温にて60分間撹拌後には無色となった。
(3)引き続き、重合液の内部温度を-30℃に冷却し、アクリル酸n-ブチル315gを2時間かけて滴下し、滴下終了後-30℃にて5分間撹拌した。
(4)さらに、これにメタクリル酸メチル65.9gを加え、一晩室温にて撹拌した。
(5)メタノ-ル20gを添加して重合反応を停止した後、得られた反応液を15kgのメタノール中に注ぎ、液状沈殿物を析出させた。その後、液状沈殿物を回収し、乾燥させることにより、メタクリル酸メチル単位含有量(重合体ブロック(a2)の含有量)30.3質量%、重量平均分子量61,000、分子量分布1.09のアクリル系トリブロック共重合体(A3)440gを得た。
(6)得られたアクリル系トリブロック共重合体(A3)を、株式会社テクノベル製、KZW-15小型二軸押出し機にてストランドカット方式によりペレット化した。
【0077】
[製造例4][アクリル系ブロック共重合体(A4)]
(1)3Lの三口フラスコに三方コックを付け内部を窒素で置換した後、室温にて撹拌しながら、トルエン1409gと1,2-ジメトキシエタン32.7gを加え、続いて、イソブチルビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシ)アルミニウム24.5mmolを含有するトルエン溶液48.6gを加え、さらにsec-ブチルリチウム2.55mmolを含有するsec-ブチルリチウムのシクロヘキサン溶液1.50gを加えた。
(2)続いて、これにメタクリル酸メチル22.7gを加えた。反応液は当初、黄色に着色していたが、室温にて60分間撹拌後には無色となった。
(3)引き続き、重合液の内部温度を-30℃に冷却し、アクリル酸n-ブチル434gを2時間かけて滴下し、滴下終了後-30℃にて5分間撹拌した。
(4)さらに、これにメタクリル酸メチル29.4gを加え、一晩室温にて撹拌した。
(5)メタノ-ル15gを添加して重合反応を停止した後、得られた反応液を15kgのメタノール中に注ぎ、液状沈殿物を析出させた。その後、液状沈殿物を回収し、乾燥させることにより、メタクリル酸メチル単位含有量(重合体ブロック(a2)の含有量)11.0質量%、重量平均分子量200,000、分子量分布1.11のアクリル系トリブロック共重合体(A4)440gを得た。
(6)得られたアクリル系トリブロック共重合体(A4)を、株式会社テクノベル製、KZW-15小型二軸押出し機にてストランドカット方式によりペレット化した。
【0078】
上記製造例1~4で得たアクリル系ブロック共重合体(A1)~(A4)のブロック構造、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)、重合体ブロック(a2)の含有量を表1に示す。
【0079】
【0080】
[製造例5][アクリルエマルジョン(B1)]
メタクリル樹脂(メタクリル酸メチル単位含有量:90質量%、重量平均分子量:85,000)30gをトルエン70gに溶解し、メタクリル樹脂溶液を得た。得られた溶液を73gの(メタ)アクリル酸エステル-不飽和カルボン酸系共重合体の水溶性塩(アニオン系界面活性剤)を含む水溶液と混合した後、ホモミキサーにより乳化してメタクリル樹脂溶液が微粒子状に分散した乳化液を得た。その後、得られた乳化液からトルエンを留去し、メタクリル樹脂粒子を含むアクリルエマルジョン(B1)を得た。アクリルエマルジョン(B1)の固形分濃度(TS)は36質量%であり、アクリルエマルジョン(B1)に含まれるメタクリル樹脂粒子の数平均粒子径は0.2μmであった。
【0081】
[製造例6][アクリルエマルジョン(B2)]
メタクリル樹脂(メタクリル酸メチル単位含有量:90質量%、重量平均分子量:85,000)30gをトルエン70gに溶解し、メタクリル樹脂溶液を得た。得られた溶液を120gの(メタ)アクリル酸エステル-不飽和カルボン酸系共重合体の水溶性塩(アニオン系界面活性剤)を含む水溶液と混合した後、ホモミキサーにより乳化してメタクリル樹脂溶液が微粒子状に分散した乳化液を得た。その後、得られた乳化液からトルエンを留去し、メタクリル樹脂粒子を含むアクリルエマルジョン(B2)を得た。アクリルエマルジョン(B2)のTSは23質量%であり、アクリルエマルジョン(B2)に含まれるメタクリル樹脂粒子の数平均粒子径は1.5μmであった。
【0082】
[製造例7][アクリルエマルジョン(B3)]
メタクリル樹脂(メタクリル酸メチル単位含有量:90質量%、重量平均分子量:85,000)30gをトルエン/メチルエチルケトン混合溶媒70gに溶解し、メタクリル樹脂溶液を得た。得られた溶液を50gのポリビニルアルコール(ノニオン系界面活性剤)の水溶液と混合した後、ホモミキサーにより乳化してメタクリル樹脂溶液が微粒子状に分散した乳化液を得た。その後、得られた乳化液からトルエンを留去し、メタクリル樹脂粒子を含むアクリルエマルジョン(B3)を得た。アクリルエマルジョン(B3)のTSは40質量%であり、アクリルエマルジョン(B3)に含まれるメタクリル樹脂粒子の数平均粒子径は1.7μmであった。
【0083】
[製造例8][アクリルエマルジョン(B4)]
メタクリル樹脂(メタクリル酸メチル単位含有量:90質量%、重量平均分子量:85,000)30gをトルエン70gに溶解し、メタクリル樹脂溶液を得た。得られた溶液を130gのステアリルトリメチルアンモニウムクロライド(カチオン系界面活性剤)の水溶液と混合した後、ホモミキサーにより乳化してメタクリル樹脂溶液が微粒子状に分散した乳化液を得た。その後、得られた乳化液からトルエンを留去し、メタクリル樹脂粒子を含むアクリルエマルジョン(B4)を得た。アクリルエマルジョン(B4)のTSは20質量%であり、アクリルエマルジョン(B4)に含まれるメタクリル樹脂粒子の数平均粒子径は0.7μmであった。
【0084】
上記製造例5~8で得たアクリルエマルジョン(B1)~(B4)の界面活性剤の種類、メタクリル樹脂の数平均粒子径、固形分濃度を表2に示す。
【0085】
【0086】
実施例及び比較例では、水溶性増粘剤として、以下のものを使用した。
・C1:水溶性増粘剤(ポリエチレンオキサイド) Mv=約100,000
・C2:水溶性増粘剤(ポリエチレンオキサイド) Mv=約600,000
・C3:水溶性増粘剤(ポリエチレンオキサイド) Mv=約7,000,000
【0087】
[実施例1]
水、メタクリル樹脂粒子及びアニオン系界面活性剤を含むアクリルエマルジョン、水溶性増粘剤を混合した混合液の合計質量が40gになるように、メタクリル樹脂粒子の濃度が0.6質量%及び、水溶性増粘剤(C2)の濃度が0.003質量%である混合液(I-1)を作製した。水溶性増粘剤の添加は、0.1質量%に調整した水溶液により行った。なお、使用した水溶性増粘剤は、Aldrich社から購入したものをそのまま使用した。アクリル系ブロック共重合体(A1)の原料ペレットと上述した混合液(I-1)を用いて、ペレットの膠着性を上記記載の方法で評価した。ペレットの膠着は発生せず「AA」であった。また、メタクリル樹脂粒子の沈殿を上記記載の方法で評価した。メタクリル樹脂粒子の沈殿は見られず分散性が良好であり「A」であった。評価結果を表3に記載した。
【0088】
[実施例2~9]
水、メタクリル樹脂粒子及びアニオン系界面活性剤を含むアクリルエマルジョン、水溶性増粘剤を混合した混合液の配合を、表3に記載の配合にそれぞれ変更する、又はアクリル系ブロック共重合体を変更する以外は実施例1と同様に、ペレットの膠着性評価、メタクリル樹脂粒子の沈殿評価を実施した。実施例3及び4では、アクリル系ブロック共重合体を(A2)又は(A3)に変更したところ、両者ともに膠着性評価は「AA」、メタクリル樹脂粒子の沈殿評価は「A」であった。実施例7では、低分子量タイプの水溶性増粘剤を使用ところ、膠着性評価が「AB」であった。実施例9では、アクリルエマルジョンに含まれるメタクリル樹脂粒子の数平均粒子径を大きくしたところ、膠着性評価は「AA」であった。評価結果を表3に記載した。
【0089】
[比較例1及び2]
水、メタクリル樹脂粒子及びアニオン系界面活性剤を含むアクリルエマルジョンからなる混合液の配合を、表3に記載の配合にそれぞれ変更する以外は実施例1と同様に、ペレットの膠着性評価、メタクリル樹脂粒子の沈殿評価を実施した。比較例1及び2において、メタクリル樹脂粒子からなるアクリルエマルジョンのみの混合液だけでは膠着性評価は「BB」であった。評価結果を表3に記載した。
【0090】
[比較例3]
水、メタクリル樹脂粒子及びアニオン系界面活性剤を含むアクリルエマルジョン、水溶性増粘剤を混合した混合液の配合を、表3に記載の配合に変更する以外は実施例1と同様に、ペレットの膠着性評価、メタクリル樹脂粒子の沈殿評価を実施した。評価結果を表3に記載した。
【0091】
[比較例4]
アニオン系界面活性剤の代わりにノニオン系界面活性剤を含むアクリルエマルジョン、水溶性増粘剤を混合した混合液を用いて、表3に記載の配合とする以外は実施例1と同様に、ペレットの膠着性評価、メタクリル樹脂粒子の沈殿評価を実施したところ、膠着性評価が「BB」であり、メタクリル樹脂粒子の沈殿は見られず「A」であった。評価結果を表3に記載した。
【0092】
[比較例5]
アニオン系界面活性剤の代わりにカチオン系界面活性剤を含むアクリルエマルジョン、水溶性増粘剤を混合した混合液を用いて、表3に記載の配合とする以外は実施例1と同様に、ペレットの膠着性評価、メタクリル樹脂粒子の沈殿評価を実施したところ、膠着性評価が「BB」であり、メタクリル樹脂粒子の沈殿は見られず「A」であった。評価結果を表3に記載した。
【0093】
【0094】
上記実施例1~9において示したように、メタクリル樹脂粒子及びアニオン系界面活性剤を含むアクリルエマルジョン、水溶性増粘剤を含有する混合液に、アクリル系ブロック共重合体の原料ペレットを接触させペレットに付着した混合液の溶媒を除去する、本発明の製造方法により作製されたペレットでは、膠着を抑制する効果が得られた。
【0095】
なお、実施例7のように水溶性増粘剤の分子量が低い場合は、ペレットの膠着防止性能がやや劣るため、粘度平均分子量は500,000以上が好ましい傾向にある。さらに、実施例9のようにメタクリル樹脂粒子の数平均粒子径が大きい場合は、メタクリル樹脂粒子の沈殿がみられたことから、保管安定性に劣るが、膠着防止性能は優れている。
【0096】
また、比較例4~5のようにノニオン系又はカチオン系の界面活性剤を含むメタクリル樹脂粒子からなるアクリルエマルジョンの場合は、ペレットの膠着防止性能が劣るため、アニオン系界面活性剤を用いる必要がある。
【0097】
一方、比較例1~3のように本発明の範囲外の配合においては、ペレットの膠着を抑制する効果が得られなかった。また混合液の中のメタクリル樹脂粒子のゼータ電位が-75mV以下であれば、アクリル系ブロック共重合体の原料ペレットへのメタクリル樹脂粒子の付着性が良くなる傾向である。