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特許7166245樹脂組成物、電子部品用接着剤、半導体装置、および電子部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】樹脂組成物、電子部品用接着剤、半導体装置、および電子部品
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/66 20060101AFI20221028BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20221028BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20221028BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20221028BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20221028BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20221028BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20221028BHJP
   H01L 21/52 20060101ALI20221028BHJP
【FI】
C08G59/66
C08L63/00 C
C08K3/34
C08K3/26
C08K3/36
C09J163/00
C09J11/04
H01L21/52 E
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019507653
(86)(22)【出願日】2018-03-19
(86)【国際出願番号】 JP2018010708
(87)【国際公開番号】W WO2018173991
(87)【国際公開日】2018-09-27
【審査請求日】2020-11-10
(31)【優先権主張番号】P 2017058284
(32)【優先日】2017-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591252862
【氏名又は名称】ナミックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148219
【弁理士】
【氏名又は名称】渡會 祐介
(72)【発明者】
【氏名】阿部 信幸
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-169275(JP,A)
【文献】特開2014-173007(JP,A)
【文献】特開平07-242798(JP,A)
【文献】特開昭61-162516(JP,A)
【文献】特開昭55-102624(JP,A)
【文献】特開昭55-071763(JP,A)
【文献】特開昭53-133243(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0032938(US,A1)
【文献】国際公開第2017/043405(WO,A1)
【文献】国際公開第00/046317(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00-59/72
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C09J 1/00-5/10、9/00-201/10
H01L 21/52、21/58
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、
(B)一般式(1):
【化5】
(式中、R 、およびR は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基、またはフェニル基であり、nは、0~10の整数である)で表されるチオール化合物、
一般式(4):
【化6】
(式中、R 、R 、R およびR は、それぞれ独立して、水素またはC 2n SH(nは2~6)であり、かつR 、R 、R およびR の少なくとも1つは、C 2n SH(nは2~6)である)で表されるチオール化合物、および
分子中にエステル結合を有さず、分子内にスルフィド結合を2つ以上有する3官能以上のポリチオール化合物
からなる群より選択されるものを含み、エステル結合を有しないチオール系硬化剤、および
(C)タルク
を含み、
(C)成分が、樹脂組成物100質量部に対して、5~20質量部であることを特徴とする、電子部品用樹脂組成物。
但し、(B)成分が、下記式で示される構造を基本骨格とするオリゴマー:
【化7】
および1,3-ジメルカプトプロパンを除く。
【請求項2】
さらに、(D)炭酸カルシウムおよび/またはシリカを含み、(C)成分と(D)成分との合計が、樹脂組成物100質量部に対して、5~40質量部である、請求項1記載の電子部品用樹脂組成物。
【請求項3】
樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度(Tg)が、25℃~50℃である、請求項1または2記載の電子部品用樹脂組成物。
【請求項4】
(B)成分が、化学式(3)で表されるチオール化合物および一般式(4)で表される分子中にエステル結合を有しないチオール化合物からなる群より選択されるものを含む、請求項1~のいずれか1項記載の電子部品用樹脂組成物。
【化8】
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項記載の電子部品用樹脂組成物を含む、電子部品用接着剤。
【請求項6】
(A)エポキシ樹脂、
(B)一般式(1):
【化9】
(式中、R 、およびR は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基、またはフェニル基であり、nは、0~10の整数である)で表されるチオール化合物、
一般式(4):
【化10】
(式中、R 、R 、R およびR は、それぞれ独立して、水素またはC 2n SH(nは2~6)であり、かつR 、R 、R およびR の少なくとも1つは、C 2n SH(nは2~6)である)で表されるチオール化合物、および
分子中にエステル結合を有さず、分子内にスルフィド結合を2つ以上有する3官能以上のポリチオール化合物
からなる群より選択されるものを含み、エステル結合を有しないチオール系硬化剤、および
(C)タルク
を含み、
(C)成分が、樹脂組成物100質量部に対して、5~20質量部であることを特徴とする、電子部品用樹脂組成物の硬化物。
但し、(B)成分が、下記式で示される構造を基本骨格とするオリゴマー:
【化11】
および1,3-ジメルカプトプロパンを除く。
【請求項7】
請求項記載の硬化物を含む、半導体装置。
【請求項8】
請求項記載の硬化物、または記載の半導体装置を含む、電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、半導体装置、および電子部品に関する。特に、電子部品用接着剤に適した樹脂組成物、この樹脂組成物の硬化物を含む半導体装置、および電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、使用されている携帯端末等には、電子部品が内蔵されている。この携帯端末等には、耐落下衝撃性が要求される用途が、多くある。
【0003】
耐落下衝撃性の向上を目的として、エポキシ樹脂とその硬化剤を含有する熱硬化性エポキシ樹脂組成物において、マイクロシリコーンゲルビーズを含有することを特徴とする熱硬化性エポキシ樹脂組成物(特許文献1)が、報告されている。
【0004】
しかしながら、このマイクロシリコーンゲルビーズを含有することを特徴とする熱硬化性エポキシ樹脂組成物は、樹脂の粘弾性特性による改善であり、低温短時間で硬化しない、熱膨張係数が大きいという問題がある。このため、電子部品(例えば、ボイスコイルモーター(VCM、カメラのピント合わせ等に使用される)用接着剤や、バイブレーションモジュール向け用接着剤としての使用には、適さない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記のような問題点に鑑みてなされたものであって、短時間での硬化が可能であり、硬化後の耐落下衝撃性に優れる樹脂組成物、この樹脂組成物の硬化物を含む半導体装置、および電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討を行い、(A)エポキシ樹脂、(B)チオール系硬化剤、および特定量の(C)タルクを含む樹脂組成物が、短時間での硬化が可能であり、硬化後の耐落下衝撃性に優れることを見出した。
【0008】
本発明は、以下の構成を有することによって上記問題を解決した樹脂組成物、電子部品用接着剤、半導体装置、および電子部品に関する。
〔1〕(A)エポキシ樹脂、
(B)チオール系硬化剤、および
(C)タルク
を含み、
(C)成分が、樹脂組成物100質量部に対して、5~20質量部であることを特徴とする、樹脂組成物。
〔2〕さらに、(D)炭酸カルシウムおよび/またはシリカを含む、上記〔1〕記載の樹脂組成物。
〔3〕(C)成分と(D)成分との合計が、樹脂組成物100質量部に対して、5~40質量部である、上記〔2〕記載の樹脂組成物。
〔4〕樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度(Tg)が、25℃~50℃である、上記〔1〕~〔3〕のいずれか記載の樹脂組成物。
〔5〕(B)成分が、分子中にエステル結合を有しないチオール化合物を含む、上記〔1〕~〔4〕のいずれか記載の樹脂組成物。
〔6〕上記〔1〕~〔5〕のいずれか記載の樹脂組成物を含む、電子部品用接着剤。
〔7〕(A)エポキシ樹脂、
(B)チオール系硬化剤、および
(C)タルク
を含み、
(C)成分が、樹脂組成物100質量部に対して、5~20質量部であることを特徴とする、樹脂組成物の硬化物。
〔8〕上記〔7〕記載の硬化物を含む、半導体装置。
〔9〕上記〔7〕記載の硬化物、または上記〔8〕記載の半導体装置を含む、電子部品。
【発明の効果】
【0009】
本発明〔1〕によれば、短時間での硬化が可能であり、硬化後の耐落下衝撃性に優れる樹脂組成物を提供することができる。
【0010】
本発明〔7〕によれば、短時間での硬化が可能であり、硬化後の耐落下衝撃性に優れる樹脂組成物の硬化物を提供することができる。
【0011】
本発明〔8〕によれば、短時間での硬化が可能であり、硬化後の耐落下衝撃性に優れる樹脂組成物の硬化物を含む信頼性の高い半導体装置を提供することができる。本発明〔9〕によれば、短時間での硬化が可能であり、硬化後の耐落下衝撃性に優れる樹脂組成物の硬化物を含む信頼性の高い電子部品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔樹脂組成物〕
本発明の樹脂組成物は、
(A)エポキシ樹脂、
(B)チオール系硬化剤、および
(C)タルク
を含み、
(C)成分が、樹脂組成物100質量部に対して、5~20質量部であることを特徴とする。
【0013】
(A)成分であるエポキシ樹脂は、樹脂組成物に、硬化性、耐熱性、接着性等を付与する。(A)成分としては、シロキサン変性エポキシ樹脂、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂、液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂、液状ナフタレン型エポキシ樹脂、液状水添ビスフェノール型エポキシ樹脂、液状脂環式エポキシ樹脂、液状アルコールエーテル型エポキシ樹脂、液状環状脂肪族型エポキシ樹脂、液状フルオレン型エポキシ樹脂、液状シロキサン系エポキシ樹脂等が、挙げられる。(A)成分としては、柔軟な骨格を有するエポキシ樹脂が好ましい。柔軟な骨格を有するエポキシ樹脂としては、例えば、シロキサン変性エポキシ樹脂が、挙げられる。ビスフェノール骨格を有するエポキシ樹脂(例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂)を使用する場合には、組み合わせる(B)成分が柔軟な骨格を有するチオール系硬化剤であると、好ましい。(A)成分、(B)成分の少なくとも一方が、柔軟な骨格を有することにより、樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度(Tg)を、25℃~50℃にすることができる。より具体的には、〔1〕(A)成分としてベンゼン環を含まないエポキシ樹脂を使用し、(B)成分として環状構造を有するチオール系硬化剤を使用する、〔2〕(A)成分としてベンゼン環を含むエポキシ樹脂を使用し、(B)成分として環状構造を有しないチオール系硬化剤を使用する、ことにより、樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度(Tg)を、25℃~50℃にすることができる。(A)成分として、ベンゼン環を含むエポキシ樹脂とベンゼン環を含まないエポキシ樹脂を併用したときには、その併用度合いに応じて、(B)成分を適宜選択すればよい。同様に、(B)成分として、環状構造を有するチオール硬化剤と環状構造を有しないチオール硬化剤とを併用したときには、その併用度合いに応じて、(A)成分を適宜選択すればよい。樹脂組成物の硬化物のTgが、25℃未満であると、シェア強度が低くなりやすく、50℃を超えると、シェア強度は高くなるが、ピール強度が低下しやすい。(A)成分の市販品としては、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製シロキサン変性エポキシ樹脂(品名:TSL9906)、新日鐵化学製ビスフェノールA型エポキシ樹脂(品名:YD-128)、新日鐵化学製ビスフェノールF型エポキシ樹脂(品名:YDF8170)、DIC製ナフタレン型エポキシ樹脂(品名:HP4032D)、三菱化学製アミノフェノール型エポキシ樹脂(グレード:JER630、JER630LSD)等が挙げられる。(A)成分は、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0014】
(B)成分であるチオール系硬化剤は、樹脂組成物に、低温短時間硬化性を付与する。(B)成分としては、耐湿性の観点から、一般式(1):
【0015】
【化1】
【0016】
(式中、R、およびRは、それぞれ独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基、またはフェニル基であり、nは、0~10の整数である)で表されるチオール化合物が好ましく、化学式(2)または化学式(3):
【0017】
【化2】
【0018】
【化3】
【0019】
で表され、含窒素複素環化合物の4つの各窒素原子に、官能基である(-CH-CH―SH)または(-CH-CH-CH―SH)が結合した多官能の含窒素複素環化合物が、より好ましい。
【0020】
また、(B)成分は分子中にエステル結合を有しない他のチオール化合物であってもよい。この化合物は、一般式(4):
【0021】
【化4】
【0022】
(式中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素またはC2nSH(nは2~6)であり、かつR、R、RおよびRの少なくとも1つは、CnH2nSH(nは2~6)である)で表される。一般式(4)のチオール化合物は、硬化性の観点から、nが2~4であることが好ましく、硬化物物性と硬化速度のバランスの観点から、nが3であるメルカプトプロピル基であることが好ましい。また、一般式(4)のチオール化合物は、メルカプトアルキル基の数が、単一でも異なるものの混合物であってもよい。一般式(4)のチオール化合物としては、硬化性の観点からがメルカプトプロピル基が2~4個のものが好ましく、硬化物物性と硬化速度のバランスの観点から、メルカプトプロピル基が3個のものが最も好ましい。このチオール化合物は、これ自身が十分に柔軟な骨格を持っているので、硬化物の弾性率を低くしたい場合に有効である。このチオール化合物を加えることにより、硬化物の弾性率をコントロールできるので、硬化後の接着強度(特に、ピール強度)を高くできる。式(4)で表される化合物の例には、ペンタエリスリトールトリプロパンチオール(商品名:PEPT、SC有機化学株式会社製)に加え、トリメチロールプロパンジプロパンチオール等が、含まれる。これらのうち、ペンタエリスリトールトリプロパンチオールが、特に好ましい。分子中にエステル結合を有しない他のチオール化合物としては、分子内にスルフィド結合を2つ以上有する3官能以上のポリチオール化合物を使用することもできる。このようなチオール化合物としては、例えば、1,2,3-トリス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス(2-メルカプトエチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス(3-メルカプトプロピルチオ)プロパン、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、テトラキス(メルカプトメチルチオメチル)メタン、テトラキス(2-メルカプトエチルチオメチル)メタン、テトラキス(3-メルカプトプロピルチオメチル)メタン、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,1,2,2-テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、1,1,5,5-テトラキス(メルカプトメチルチオ)-3-チアペンタン、1,1,6,6-テトラキス(メルカプトメチルチオ)-3,4-ジチアヘキサン、2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エタンチオール、3-メルカプトメチルチオ-1,7-ジメルカプト-2,6-ジチアヘプタン、3,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,9-ジメルカプト-2,5,8-トリチアノナン、3-メルカプトメチルチオ-1,6-ジメルカプト-2,5-ジチアヘキサン、1,1,9,9-テトラキス(メルカプトメチルチオ)-5-(3,3-ビス(メルカプトメチルチオ)-1-チアプロピル)3,7-ジチアノナン、トリス(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)メタン、トリス(4,4-ビス(メルカプトメチルチオ)-2-チアブチル)メタン、テトラキス(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)メタン、テトラキス(4,4-ビス(メルカプトメチルチオ)-2-チアブチル)メタン、3,5,9,11-テトラキス(メルカプトメチルチオ)-1,13-ジメルカプト-2,6,8,12-テトラチアトリデカン、3,5,9,11,15,17-ヘキサキス(メルカプトメチルチオ)-1,19-ジメルカプト-2,6,8,12,14,18-ヘキサチアノナデカン、9-(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)-3,5,13,15-テトラキス(メルカプトメチルチオ)-1,17-ジメルカプト-2,6,8,10,12,16-ヘキサチアヘプタデカン、3,4,8,9-テトラキス(メルカプトメチルチオ)-1,11-ジメルカプト-2,5,7,10-テトラチアウンデカン、3,4,8,9,13,14-ヘキサキス(メルカプトメチルチオ)-1,16-ジメルカプト-2,5,7,10,12,15-ヘキサチアヘキサデカン、8-[ビス(メルカプトメチルチオ)メチル]-3,4,12,13-テトラキス(メルカプトメチルチオ)-1,15-ジメルカプト-2,5,7,9,11,14-ヘキサチアペンタデカン、4,6-ビス[3,5-ビス(メルカプトメチルチオ)-7-メルカプト-2,6-ジチアヘプチルチオ]-1,3-ジチアン、4-[3,5-ビス(メルカプトメチルチオ)-7‐メルカプト-2,6-ジチアヘプチルチオ]-6-メルカプトメチルチオ-1,3-ジチアン、1,1-ビス[4-(6-メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアニルチオ]-1,3-ビス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1-[4-(6-メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアニルチオ]-3-[2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル]-7,9-ビス(メルカプトメチルチオ)-2,4,6,10-テトラチアウンデカン、1,5-ビス[4-(6-メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアニルチオ]-3-[2-(1,3-ジチエタニル)]メチル-2,4-ジチアペンタン、3-[2-(1,3-ジチエタニル)]メチル-7,9-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,11-ジメルカプト-2,4,6,10-テトラチアウンデカン、9-[2-(1,3-ジチエタニル)]メチル-3,5,13,15-テトラキス(メルカプトメチルチオ)-1,17-ジメルカプト-2,6,8,10,12,16-ヘキサチアヘプタデカン、3-[2-(1,3-ジチエタニル)]メチル-7,9,13,15-テトラキス(メルカプトメチルチオ)-1,17-ジメルカプト-2,4,6,10,12,16-ヘキサチアヘプタデカン、3,7-ビス[2-(1,3-ジチエタニル)]メチル-1,9-ジメルカプト-2,4,6,8-テトラチアノナン等の脂肪族ポリチオール化合物;4,6-ビス{3-[2-(1,3-ジチエタニル)]メチル-5-メルカプト-2,4-ジチアペンチルチオ}-1,3-ジチアン、4,6-ビス[4-(6-メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアニルチオ]-6-[4-(6‐メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアニルチオ]-1,3-ジチアン、4-[3,4,8,9‐テトラキス(メルカプトメチルチオ)-11-メルカプト-2,5,7,10-テトラチアウンデシル]-5-メルカプトメチルチオ-1,3-ジチオラン、4,5-ビス[3,4-ビス(メルカプトメチルチオ)-6-メルカプト-2,5-ジチアヘキシルチオ]-1,3-ジチオラン、4-[3,4-ビス(メルカプトメチルチオ)-6-メルカプト-2,5-ジチアヘキシルチオ]-5-メルカプトメチルチオ-1,3-ジチオラン、4-[3-ビス(メルカプトメチルチオ)メチル-5,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-8-メルカプト-2,4,7-トリチアオクチル]-5-メルカプトメチルチオ-1,3-ジチオラン、2-{ビス[3,4-ビス(メルカプトメチルチオ)-6-メルカプト-2,5-ジチアヘキシルチオ]メチル}-1,3-ジチエタン、2-[3,4-ビス(メルカプトメチルチオ)-6-メルカプト-2,5-ジチアヘキシルチオ]メルカプトメチルチオメチル-1,3-ジチエタン、2-[3,4,8,9-テトラキス(メルカプトメチルチオ)-11-メルカプト-2,5,7,10-テトラチアウンデシルチオ]メルカプトメチルチオメチル-1,3-ジチエタン、2-[3-ビス(メルカプトメチルチオ)メチル-5,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-8-メルカプト-2,4,7-トリチアオクチル]メルカプトメチルチオメチル-1,3-ジチエタン、4,5-ビス{1-[2-(1,3-ジチエタニル)]-3-メルカプト-2-チアプロピルチオ}-1,3-ジチオラン、4-{1-[2-(1,3-ジチエタニル)]-3-メルカプト-2-チアプロピルチオ}-5-[1,2-ビス(メルカプトメチルチオ)-4-メルカプト-3-チアブチルチオ]-1,3-ジチオラン、2-{ビス[4-(5-メルカプトメチルチオ-1,3-ジチオラニル)チオ]メチル}-1,3-ジチエタン、4-[4-(5-メルカプトメチルチオ-1,3-ジチオラニル)チオ]-5-{1-[2-(1,3-ジチエタニル)]-3-メルカプト-2-チアプロピルチオ}-1,3-ジチオラン等の環式構造を有するポリチオール化合物が、挙げられる。
【0023】
エステル結合を有さないチオール系硬化剤は、疎水性のため、疎水性のタルクとの濡れ性がよく、密着性に優れるため、好ましい。なお、従来のチオール系硬化剤(例えば、SC有機化学製ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)(商品名:PEMP)、SC有機化学製トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)(商品名:TMMP)、昭和電工製ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)(商品名:カレンズMT PE1)等)は、いずれもエステル結合を含み、このエステル結合が加水分解し易いため、耐湿性に劣る場合がある。これに対して、エステル結合を含有していない(B)成分は、耐湿性試験後の強度低下が抑制される。(B)成分中でエステル結合を有する化合物の割合は、(B)成分100質量部中、50質量部以下であることが、好ましい。(B)成分の市販品としては、四国化成工業製チオールグリコールウリル誘導体(商品名:TS-G(化学式(2)に相当、チオール当量:100g/eq)、C3 TS-G(化学式(3)に相当、チオール当量:114g/eq))や、SC有機化学製チオール化合物ペンタエリスリトールトリプロパンチオール(品名:PEPT(一般式(4)においてメルカプトプロピル基が3個のものに相当、チオール当量:124g/eq))が、挙げられる。なお、酸無水物系、アミン系であると、低温硬化が難しく、また、これらの系では、ガラス転移温度(Tg)が高くなる(おおよそ60℃以上)ため、ピール強度が低くなってしまう。(B)成分は、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0024】
(C)成分であるタルクは、樹脂組成物に、耐熱性、低熱膨張性、耐衝撃性を付与する。タルクは、ケイ酸塩鉱物に属する鉱物であり、形状は、板状で、アスペクト比が高く、層状構造を有している。鉱物は、特定の方向に割れる性質(劈開性)を有しており、タルクの場合、層間で劈開が起こる。このため、硬化物の破壊は、以下のように起こる。と考えられる。
【0025】
硬化物を落下させ、強制的に破壊する試験終了後の硬化物の破面を観察すると、タルクが5質量部未満と少ない系では、破面が比較的フラットになっており、樹脂の脆性破壊が多いことがわかる。脆性破壊は。破壊が一気に進行した場合に見られるモードであることから、衝撃エネルギーを吸収できない、と考えられる。一方、本発明に係る樹脂組成物の硬化物は、耐落下衝撃性が良好であり、硬化物の破面を観察したところ、破面が非常に粗くなっている。これは、タルクが衝撃を吸収した際に層間で劈開し、この部分が、破壊の進行方向を分岐させ、破壊経路が長くなり、衝撃エネルギーを吸収できたため、耐落下衝撃性が向上した、と推測することができる。なお、本発明ではタルクを使用するため、(B)成分にエステル結合を含まないものを使用することが、好ましい。(B)成分にエステル結合を含む樹脂組成物の硬化物は、エステル結合が加水分解することにより、親水部が発生し、疎水性であるタルクとの密着性が低下しやすくなるからである。本発明において、耐落下衝撃性は、後述の実施例に記載する〈耐落下衝撃性の測定〉における落下高さが、450mm以上であることが好ましく、600mm以上であることがより好ましい。
【0026】
(C)成分であるタルク粉末の形状は、板状、扁平状であると、好ましい。タルク粉末のアスペクト比は、5以上20以下であることが、好ましい。アスペクト比が5未満だと、上述の破壊経路が短くなり、衝撃エネルギーを充分に吸収できないため、耐落下衝撃性が劣る可能性がある。アスペクト比が20を超えると、樹脂組成物中に(C)成分を均一に分散させることが困難になるおそれがある。アスペクト比は、樹脂組成物の硬化物を500~600℃で加熱し、有機物が熱分解した硬化物の残部(灰分)を、走査型電子顕微鏡(SEM)にてタルク粉末50個を観察した際の長径の平均値と、厚さの平均値との比から求めることができる。タルク粉末の平均粒径(面方向の長さ)は、特に限定されないが、1~15μmであることが、樹脂組成物中への(C)成分の分散性、および樹脂組成物の低粘度化の観点から好ましく、1~10μmであることがより好ましい。1μm未満であると、樹脂組成物の粘度が上昇して、樹脂組成物の作業性が悪化するおそれがある。15μm超だと、樹脂組成物中に(C)成分を均一に分散させることが困難になるおそれがある。ここで、(C)成分の平均粒径は、レーザー回折法によって測定した体積基準のメジアン径をいう。他成分の平均粒径も、同様に測定する。市販品としては、松村産業製タルク(品名:5000PJ)等が、挙げられる。(C)成分は、単独でも2種以上を併用してもよい。なお、タルクと同じケイ酸塩鉱物である、〔1〕モンモリロナイトは、不純物濃度が高いため、電子材料として適さない、膨潤しやすい、〔2〕カオリナイトは、不純物濃度が高い、表面の状態が、親水性部と、反対側が疎水性部(シリケート)からなり、親水性部は、樹脂との濡れが悪くなる、〔3〕マイカは、タルクと似た構造(3層:疎水・親水・疎水)であるが、タルクが疎水性部同士の界面から劈開するのに対し、マイカは劈開が親水性層・疎水性層の界面から起こりやすい。このため親水部が界面に現れ樹脂との濡れ性が悪くなる。
【0027】
(A)成分は、樹脂組成物100質量部に対して、10~70質量部であると、樹脂組成物の粘度の観点から好ましい。
【0028】
(B)成分のチオール当量は、(A)成分のエポキシ1当量に対して、0.5~2.5当量であると好ましく、0.6~1.8当量であるとより好ましい。(B)成分のチオール当量は、(B)成分の分子量を1分子中のチオール基の数で割った数になる。(B)成分のチオール当量と(A)成分のエポキシ当量を上述の範囲内にすることにより、硬化後の樹脂組成物の硬度不足および靭性不足を防ぐことが可能となる。
【0029】
(C)成分は、樹脂組成物100質量部に対して、5~20質量部であり、好ましくは5~15質量部である。(C)成分が、5質量部未満であると、耐落下衝撃性が低下してしまう。また、耐落下衝撃性の観点からは、(C)成分は15質量部であれば効果があり、15質量部超であってもその効果は変わらないが、(C)成分が多くなるにつれ樹脂組成物の粘度が高くなる、経時変化に伴いチクソ性(揺変指数)が変化しやすくなる、といった問題が起こり、作業性が悪化し、実用性に乏しくなる。これは、(C)の形状が、板状や扁平状であることが原因である。このため、(C)成分は20質量部以下であり、好ましくは15質量以下である。
【0030】
樹脂組成物は、さらに、(D)炭酸カルシウムおよび/またはシリカを含むと、耐落下衝撃性向上の観点から、好ましい。粒子形状・特性の異なるフィラーを混練すると、単独でフィラーを分散するより、分散性が向上する場合がある。炭酸カルシウムおよび/またはシリカを併用することにより、樹脂組成物中のフィラーの分散状態が、タルク単独より均一になり、耐落下衝撃性が向上しやすくなる、と考えられる。耐湿性の観点から、(D)成分は、炭酸カルシウムであることが好ましい。なお、(D)成分として、炭酸カルシウムを含むときは、シリカを含む場合に比べ、耐湿試験(温度:85℃、湿度:85%、100時間)後のシェア強度が、著しく高くなる。これは、炭酸カルシウムが親水性であるため、(B)成分にエステル結合を含まないときの樹脂組成物の硬化物には、親水部が発生しないので、シェア強度試験時に、硬化物内に凝集破壊の起点ができやすいためである、と考えられる。これに対し、シリカは、炭酸カルシウムに比べて疎水性のため、樹脂との濡れ性が良好であり、シェア強度試験時に、被着体と硬化物との間で界面剥離が生じやすく、耐湿試験後のシェア強度が低くなる、と考えられる。市販の炭酸カルシウム粉末としては、宇部マテリアルズ製炭酸カルシウム粉末(品名:CS4ND)が、挙げられる。
【0031】
シリカ粉末としては、コロイダルシリカ、疎水性シリカ、微細シリカ、ナノシリカ等が、挙げられる。なお、シリカの添加により、硬化後の樹脂組成物の吸湿試験後のシェア強度が低下する場合があるので、注意を要する。
【0032】
(D)成分の平均粒径は、特に限定されないが、0.1~15μmであることが、樹脂組成物中への(D)成分の分散性、および樹脂組成物の低粘度化の観点から、好ましい。0.1μm未満だと、樹脂組成物の粘度が上昇して、樹脂組成物の作業性が悪化するおそれがある。15μm超だと、樹脂組成物中に(D)成分を均一に分散させることが困難になるおそれがある。市販の炭酸カルシウム粉末としては、(宇部マテリアルズ)製炭酸カルシウム粉末(品名:CS4ND、平均粒径:12μm)が、挙げられる。市販のシリカ粉末(シリカフィラー)としては、アドマテックス製シリカ(製品名:SO-E2、平均粒径:0.5μm)、龍森製シリカ(製品名:MP-8FS、平均粒径:0.7μm)、DENKA製シリカ(品名:FB-5D、平均粒径:5μm)等が挙げられる。(D)成分は、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0033】
(C)成分と(D)成分との合計は、樹脂組成物100質量部に対して、5~40質量部であると、好ましい。(C)成分と(D)成分との合計が、5質量部未満だと、本発明の範囲外となり、硬化物の耐落下衝撃性が劣る。40質量部を超えると、樹脂組成物の粘度が高くなりやすく、硬化物のピール強度、耐落下衝撃性が低下し易くなる。
【0034】
樹脂組成物には、硬化促進剤の他、本発明の目的を損なわない範囲で、更に必要に応じ、安定化剤、(C)成分や(D)成分以外のフィラー(例えば、アルミナ)、安定化剤(例えば、有機酸、ホウ酸エステル、金属キレート)、カーボンブラック、チタンブラック、シランカップリング剤、イオントラップ剤、レベリング剤、酸化防止剤、消泡剤、搖変剤、その他の添加剤等を配合させることができる。また、樹脂組成物に、粘度調整剤、難燃剤、または溶剤等を配合させてもよい。
【0035】
硬化促進剤としては、潜在性硬化剤が好ましい。潜在性硬化促進剤とは、室温では不活性の状態で、加熱することにより活性化して、硬化促進剤として機能する化合物であり、例えば、常温で固体のイミダゾール化合物;アミン化合物とエポキシ化合物との反応生成物(アミン-エポキシアダクト系)等の固体分散型アミンアダクト系潜在性硬化促進剤;アミン化合物とイソシアネート化合物または尿素化合物との反応生成物(尿素型アダクト系)等が、挙げられる。硬化促進剤は、(B)成分と組み合わせて、樹脂組成物を低温速硬化させることが、できる。
【0036】
樹脂組成物は、例えば、(A)成分~(C)成分およびその他添加剤等を同時にまたは別々に、必要により加熱処理を加えながら、撹拌、溶融、混合、分散させることにより得ることができる。これらの混合、撹拌、分散等の装置としては、特に限定されるものではないが、撹拌、加熱装置を備えたライカイ機、ヘンシェルミキサー、3本ロールミル、ボールミル、プラネタリーミキサー、ビーズミル等を使用することができる。また、これら装置を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0037】
このようにして得られた樹脂組成物は、熱硬化性である。樹脂組成物の熱硬化は、60~90℃で、30~120分が好ましい。
【0038】
上述のように、ピール強度の観点からは樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度(Tg)は、25℃~50℃であると、好ましい。ただし、高ピール強度を求められない用途もあるので、本発明の範囲は、このTgに限られない。
【0039】
〔樹脂組成物の硬化物〕
本発明の樹脂組成物の硬化物は、(A)エポキシ樹脂、
(B)チオール系硬化剤、および
(C)タルク
を含み、
(C)成分が、樹脂組成物100質量部に対して、5~20質量部であることを特徴とする。
【0040】
(A)成分、(B)成分、(C)成分については、上述のとおりであり、(D)成分やその他の成分を加えてよいことも、上述のとおりである。
【0041】
〔半導体装置、電子部品〕
本発明の半導体装置は、上述の樹脂組成物の硬化物を含むため、耐落下衝撃性に優れ、信頼性の高いものである。
【0042】
本発明の電子部品は、上述の硬化物、または上述の半導体装置を含むため、耐落下衝撃性に優れ、信頼性の高いものである。
【実施例
【0043】
以下、本発明について、実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例において、部、%はことわりのない限り、質量部、質量%を示す。
【0044】
(A)成分のシロキサン骨格エポキシ樹脂には、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製シロキサン骨格エポキシ樹脂(品名:TSL9906、エポキシ当量:181g/eq)を、
(A)成分のビスフェノールF型エポキシ樹脂には、新日鉄住金化学製ビスフェノールF型エポキシ樹脂(品名:YDF8170、エポキシ当量:158g/eq)を、
(B)成分のチオール1(C3 TS-G)には、四国化成工業製グリコールウリル誘導体(品名:C3 TS-G、チオール当量:114g/eq)を、
(B)成分のチオール2(PEMP)には、SC有機化学製ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)(商品名:PEMP、チオール当量:128g/eq)を、
(B)成分のチオール3(PEPT)には、SC有機化学製ペンタエリスリトールトリプロパンチオール(商品名:PEPT、チオール当量:124g/eq)を、
(B’)成分の酸無水物には、日立化成製酸無水物(品名:HN5500、酸無水当量:168g/eq)を、
(B’)成分のアミンには、日本化薬製アミン(品名:カヤハードAA、アミン当量:64g/eq)を、
(C)成分のタルクには、松村産業製タルク(品名:5000PJ、平均粒径:4μm)を、
(C’)成分のマイカには、ヤマグチマイカ製マイカ(品名:SJ-005、平均粒径:5μm)を、
(C’)成分の硫酸バリウムには、堺化学製硫酸バリウム(品名:H、平均粒径:8μm)を、
(D)成分の炭酸カルシウムには、宇部マテリアルズ製炭酸カルシウム(品名:CS4ND、平均粒径:12μm)を、シリカには、アドマテックス製シリカ(品名:SO-E2、平均粒径:0.5μm)を、
その他成分の硬化促進剤(ノバキュア)には、旭化成イーマテリアルズ製潜在性硬化剤(品名:HXA9322HP、2/3(質量比)が、ビスフェノールA型/F型混合エポキシ樹脂(エポキシ当量:180g/eq)の潜在性硬化剤、エポキシ当量:180×3/2g/eq)を、
使用した。
【0045】
〔実施例1~12、比較例1~8〕
表1~3に示す配合で、原料を混合した後、室温で3本ロールミルを用いて分散し、実施例1~12、比較例1~8の樹脂組成物を作製した。
【0046】
〈シェア強度の測定〉
《シェア強度の測定に用いた部材》
・部材1:SUS基板
・部品2:アルミナチップ サイズ3mm×1.5mm×0.5mm
【0047】
《シェア強度の測定方法》
(i)SUS基板の上に、調製した樹脂組成物(試料)を接着剤として塗布した。塗布サイズは、3mm×1.5mm×0.06mmとした。
(ii)塗布した試料の上にアルミナチップを載置して、試験片とした。
(iii)試験片を、80℃に加熱したオーブンに投入し、試料を30分間加熱硬化させた。
ただし、比較例7は、150℃60分間、加熱硬化させた。比較例8は、150℃120分間加熱硬化させた。
(iv)試料を加熱硬化させた後、オーブンから試験片を取り出し、万能型ボンドテスター(Dage社製)を用いて、室温で、シェア強度を測定した。
また、吸湿試験後のシェア強度は、試験片を、温度85℃、湿度(RH)85%にて100時間放置した後、室温でシェア強度を測定した。表1~3に、結果を示す。
【0048】
〈ピール強度の測定〉
《ピール強度の測定に用いた部材》
・部材1:SUS基板
・部品2:SUSリボン、サイズ:5mm×15mm×0.02mm
【0049】
《ピール強度の測定方法》
(i)SUS基板の上に調製した樹脂組成物(試料)を接着剤として塗布した。塗布サイズは、幅:5mm×長さ:15mm×厚さ:0.1mmとした。
(ii)塗布した試料の上に、SUSリボンを載置して、試験片とした。
(iii)試験片を、80℃に加熱したオーブンに投入し、試料を30分間加熱硬化させた。
ただし、比較例7は、150℃60分間加熱硬化させた。比較例8は、150℃120分間加熱硬化させた。
(iv)試料を加熱硬化させた後、オーブンから試験片を取り出し、室温で引張圧縮試験機(ミネベア社製)を用いてピール強度を測定した。ピール強度は1N/mm以上であることが好ましく、5N/mm以上であることがより好ましい。表1~3に、結果を示す。
【0050】
〈耐落下衝撃性の測定〉
《耐落下衝撃試験の測定に用いた部材》
・部材1:SUS基板
・部品2:Niコートブロック、サイズ:幅:9mm×長さ:9mm×厚さ:4mm
【0051】
《耐落下衝撃試験の測定方法》
(i)SUS基板の上に、調製した樹脂組成物(試料)を接着剤として塗布した。塗布サイズは、幅:9mm×長さ:9mm×厚さ:0.3mmとした。
(ii)塗布した試料の上に、Niコートブロックを載置して、試験片とした。
(iii)試験片を、80℃に加熱したオーブンに投入し、試料を30分間加熱硬化させた。
ただし、比較例7は、150℃60分間加熱硬化させた。比較例8は、150℃120分間加熱硬化させた。
(iv)試料を加熱硬化させた後、オーブンから試験片を取り出し、室温で落下衝撃試験機(日立テクノロジー&サービス社製)を用いて、NiコートブロックがSUS板から剥離する高さを、落下高さとした。落下高さは、200mmから始め、500mmまでは100mm毎に高さを上げていき、500mm以上は50mmずつ高さを上げて、試験を行った。なお、落下回数は、各高さで5回行い、剥離しなければ、次の高さで試験を行った。試験は、2サンプルで行った(N=2)。耐落下衝撃性は、450mm以上であることが好ましい。表1~3に、結果を示す。なお、表には、2サンプルの平均値の3桁目を四捨五入した数値を記載している。
【0052】
〈ガラス転移温度(Tg)の測定〉
作製した樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)を、動的粘弾性測定(DMA)を用いて、測定した。表面に離型剤を施したガラス板に、加熱硬化後の膜厚が250±100μmとなるように、樹脂組成物を塗布して塗膜を形成し、80℃で30分間加熱硬化させた。室温でこの塗膜をガラス板から剥がした後、カッターで所定寸法(5mm×40mm)に切り取った。なお、切り口はサンドペーパーで、滑らかに仕上げた。この塗膜を、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製DMS6100を用いて、測定を行った(昇温速度:3℃/min、測定範囲:-40~220℃)。tanδのピーク温度を読み取り、Tgとした。表1~3に、結果を示す。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】
【0056】
表1~3からわかるように、(A)~(C)成分を含む樹脂組成物を用いた実施例1~12のすべてで、シェア強度、耐落下衝撃性が、良好であった。さらに、実施例1~9,11,12では、ピール強度が、高かった。なお、表1には、記載していないが、実施例5の耐湿試験(温度:85℃、湿度:85%、100時間)後のシェア強度は、100Nであり、実施例7のシェア強度は、30Nであり、実施例5の方が、高かった。また、(B)成分としてエステル結合を有するチオール化合物のみを使用した実施例12の耐湿試験後のシェア強度が、10Nであったのに対し、実施例1の耐湿試験後のシェア強度は60Nであり、実施例11の耐湿試験後のシェア強度は50Nであり、耐湿試験後にも、シェア強度が高かった。これに対して、(C)成分が少なすぎる比較例1は、耐落下衝撃性が悪かった。(C)成分が多すぎる比較例2は、揺変指数の経時変化率が大きすぎて実用性に乏しいと判断し、評価を行わなかった(表には記載してないが、24時間後の揺変指数の変化率が、50%であった)。(C)成分の代わりに、マイカを使用した比較例3は、ピール強度が低く、耐落下衝撃性も悪かった。(C)成分の代わりに、硫酸バリウムを使用した比較例4、(C)成分を使用せずに、(D)炭酸カルシウムを使用した比較例5は、耐落下衝撃性が悪かった。(C)成分を使用せずに、(D)シリカを使用した比較例6、(B)成分の代わりに、酸無水物を使用した比較例7、(B)成分の代わりに、アミンを使用した比較例8は、ピール強度が低く、硬化温度が高く、内部応力が大きい影響のためであるか耐落下衝撃性も悪かった。
【0057】
本発明の樹脂組成物は、短時間での硬化が可能であり、硬化後の耐落下衝撃性に優れ、非常に有用である。また、この樹脂組成物の硬化物を含む半導体装置、電子部品は、耐落下衝撃性に優れ、高信頼性である。