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特許7166314管理システム、管理装置、管理方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】管理システム、管理装置、管理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/04 20120101AFI20221028BHJP
   B65G 3/02 20060101ALI20221028BHJP
【FI】
G06Q50/04
B65G3/02 D
B65G3/02 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020131549
(22)【出願日】2020-08-03
(65)【公開番号】P2022028245
(43)【公開日】2022-02-16
【審査請求日】2021-07-16
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】弁理士法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】吉川 たかし
(72)【発明者】
【氏名】池川 直樹
(72)【発明者】
【氏名】栗野 琢士
(72)【発明者】
【氏名】高野瀬 康
(72)【発明者】
【氏名】高 大輔
(72)【発明者】
【氏名】海谷 絵未
【審査官】山崎 誠也
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-285693(JP,A)
【文献】特開2016-078999(JP,A)
【文献】特開2019-032165(JP,A)
【文献】特開2021-076519(JP,A)
【文献】国際公開第2017/038408(WO,A1)
【文献】特開2018-024493(JP,A)
【文献】特開2016-222335(JP,A)
【文献】特開2015-132575(JP,A)
【文献】特開2011-007698(JP,A)
【文献】ドローン水稲モニタリング,[online],2020年02月05日,[令和3年10月5日検索], インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20200205165827/https://dronerice.jp/2017/08/07/%E7%86%B1%E8%B5%A4%E5%A4%96%E8%A6%B3%E6%B8%AC/>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
B65G 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外で管理される、石炭及び/又は製鉄ダストの管理システムであって、
撮像部と、閾値情報取得部と、判定部とを備え、
前記撮像部は、前記石炭及び/又は製鉄ダストの複数のパイルの表層全体を撮像可能な位置から、前記複数のパイルの表層全体を見渡すことができる熱分布像を示す熱分布像情報を撮像するように構成され、
前記閾値情報取得部は、各前記パイルの表層が有する温度の閾値を示す閾値情報を取得するように構成され、
前記判定部は、前記熱分布像情報及び前記閾値情報に基づき、各前記パイルの発熱を判定した後、前記複数のパイルに対して対応の優先度を判定し、かつ各前記パイルに対する前記対応の方法を決定するように構成され、ここで、前記対応の方法は、前記パイルの切り崩し又は前記パイルの払い出しである、
管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の管理システムにおいて、
出力部をさらに備え、
前記出力部は、前記判定部による各前記パイルの発熱の判定結果を、前記パイルごとに表示するように構成される、
管理システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の管理システムにおいて、
前記撮像部は、熱分布計を有する飛行体である、
管理システム。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれかに記載の管理システムにおいて、
散水部をさらに備え、
前記判定部は、各前記パイルの発熱の判定結果に基づき、前記パイルごとに前記対応の方法としての前記パイルに対する散水の必要性を判定するように構成され、
前記散水部は、前記判定部による散水の必要性の判定の結果に基づき、散水するように構成される、
管理システム。
【請求項5】
屋外で管理される、石炭及び/又は製鉄ダストの管理装置であって、
熱分布像情報取得部と、閾値情報取得部と、判定部とを備え、
前記熱分布像情報取得部は、前記石炭及び/又は製鉄ダストの複数のパイルの表層全体を撮像可能な位置から撮像した、前記複数のパイルの表層全体を見渡すことができる熱分布像情報を取得するように構成され、
前記閾値情報取得部は、各前記パイルの表層が有する温度の閾値を示す閾値情報を取得するように構成され、
前記判定部は、前記熱分布像情報及び前記閾値情報に基づき、各前記パイルの発熱を判定した後、前記複数のパイルに対して対応の優先度を判定し、かつ各前記パイルに対する前記対応の方法を決定するように構成され、ここで、前記対応の方法は、前記パイルの切り崩し又は前記パイルの払い出しである、
管理装置。
【請求項6】
屋外で管理される、石炭及び/又は製鉄ダストの管理方法であって、
撮像工程と、閾値情報取得工程と、判定工程とを備え、
前記撮像工程は、前記石炭及び/又は製鉄ダストの複数のパイルの全体を撮像可能な位置から、前記複数のパイルの表層全体を見渡すことができる熱分布像を示す熱分布像情報を撮像し、
前記閾値情報取得工程は、各前記パイルの表層が有する温度の閾値を示す閾値情報を取得し、
前記判定工程は、前記熱分布像情報及び前記閾値情報に基づき、各前記パイルの発熱を判定した後、前記複数のパイルに対して対応の優先度を判定し、かつ各前記パイルに対する前記対応の方法を決定し、ここで、前記対応の方法は、前記パイルの切り崩し又は前記パイルの払い出しである、
管理方法。
【請求項7】
屋外で管理される、石炭及び/又は製鉄ダストの管理プログラムであって、
コンピュータを、熱分布像情報取得部、閾値情報取得部及び判定部として機能させ、
前記熱分布像情報取得部は、前記石炭及び/又は製鉄ダストの複数のパイルの表層全体を撮像可能な位置から、前記複数のパイルの表層全体を見渡すことができる熱分布像を示す熱分布像情報を取得するように構成され、
前記閾値情報取得部は、各前記パイルの表層が有する温度の閾値を示す閾値情報を取得するように構成され、
前記判定部は、前記熱分布像情報及び前記閾値情報に基づき、各前記パイルの発熱を判定した後、前記複数のパイルに対して対応の優先度を判定し、かつ各前記パイルに対する前記対応の方法を決定するように構成され、ここで、前記対応の方法は、前記パイルの切り崩し又は前記パイルの払い出しである、
管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管理システム、管理装置、管理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄所では製鉄原料として、また発電所では発電燃料として用いられる石炭は、パイルの状態でヤード内に保管される。ここで、石炭は空気中の酸素によって酸化して発熱する。そして、この酸化反応は温度が高いほど促進されて、最終的に発火するおそれがある。
【0003】
このような石炭パイルからの発火を防止するため、従来の石炭パイルの管理においては、パイルに熱電対等を挿入して温度を測定し、温度が高い場合にそのパイルに散水して冷却している。
【0004】
また、特許文献1には、移動式の散水機に赤外線温度計を設け、石炭パイルの表層の温度を走査しながら測定し、赤外線温度計の値が閾値を超えた箇所に散水機で散水する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平3-153829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
熱電対を用いる方法では、石炭パイルの設置の際に、作業者が石炭パイルを登り、通常、長さが2m程度の熱電対を石炭パイルに挿入する必要があるし、石炭を払い出す際には、この熱電対を回収する必要がある。また、実際に石炭パイルの温度を測定する際には、温度表示盤を現場に持ち出し、熱電対に接続して温度を測定する必要がある。さらに、熱電対では部分的な温度しか評価することができない。石炭パイルの発熱は、偶然、酸素の供給と蓄熱のバランスが取れた箇所が狭い範囲で起こることもある。このようにして発熱が狭い範囲で起こった場合、熱電対がその近傍にない場合、この発熱を感知することができない。熱電対を複数設けることもできるが、漏れなく発熱を感知することは難しいし、上述した挿入と回収の手間が増加する。
【0007】
また、特許文献1に示される方法では、石炭パイル全体を走査すれば全体の発熱の像を得ることはできるが、短時間に全体の発熱を把握することはできない。
【0008】
以上のような発熱は、硫化鉄を含む製鉄ダストでも生じ得る。
【0009】
本発明では上記事情に鑑み、石炭及び/又は製鉄ダストのパイルの熱分布を簡易に判定することができる管理システム、管理装置、管理方法及びプログラムを提供することとした。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、屋外で管理される、石炭及び/又は製鉄ダストの管理システムが提供される。この管理システムは、撮像部と、閾値情報取得部と、判定部とを備える。撮像部は、石炭及び/又は製鉄ダストのパイルの表層全体を撮像可能な位置から、パイルの表層の熱分布像を示す熱分布像情報を撮像するように構成される。閾値情報取得部は、パイルの表層が有する温度の閾値を示す閾値情報を取得するように構成される。判定部は、熱分布像情報及び閾値情報に基づき、パイルの発熱を判定するように構成される。
【0011】
具体的には、次に記載の各態様で提供されてもよい。
前記管理システムにおいて、出力部をさらに備え、前記出力部は、前記判定部による前記パイルの発熱の判定結果を、前記パイルごとに表示するように構成される、管理システム。
前記管理システムにおいて、前記撮像部は、熱分布計を有する飛行体である、管理システム。
前記管理システムにおいて、散水部をさらに備え、前記判定部は、前記パイルの発熱の判定結果に基づき、前記パイルごとに散水の必要性を判定するように構成され、前記散水部は、前記判定部による散水の必要性の判定の結果に基づき、散水するように構成される、管理システム。
屋外で管理される、石炭及び/又は製鉄ダストの管理装置であって、熱分布像情報取得部と、閾値情報取得部と、判定部とを備え、前記熱分布像情報取得部は、前記石炭及び/又は製鉄ダストのパイルの表層全体を撮像可能な位置から撮像した、前記パイルの表層の熱分布像を示す熱分布像情報を取得するように構成され、前記閾値情報取得部は、前記パイルの表層が有する温度の閾値を示す閾値情報を取得するように構成され、前記判定部は、前記熱分布像情報及び前記閾値情報に基づき、前記パイルの発熱を判定するように構成される、管理装置。
屋外で管理される、石炭及び/又は製鉄ダストの管理方法であって、撮像工程と、閾値情報取得工程と、判定工程とを備え、前記撮像工程は、前記石炭及び/又は製鉄ダストのパイルの全体を撮像可能な位置から、前記パイルの表層の熱分布像を示す熱分布像情報を撮像し、前記閾値情報取得部は、前記パイルの表層が有する温度の閾値を示す閾値情報を取得し、前記判定部は、前記熱分布像情報及び前記閾値情報に基づき、前記パイルの発熱を判定する、管理方法。
屋外で管理される、石炭及び/又は製鉄ダストの管理プログラムであって、コンピュータを、熱分布像情報取得部、閾値情報取得部及び判定部として機能させ、前記熱分布像情報取得部は、前記石炭及び/又は製鉄ダストのパイルの表層全体を撮像可能な位置から、前記パイルの表層の熱分布像を示す熱分布像情報を取得するように構成され、前記閾値情報取得部は、前記パイルの表層が有する温度の閾値を示す閾値情報を取得するように構成され、前記判定部は、前記熱分布像情報及び前記閾値情報に基づき、前記パイルの発熱を判定するように構成される、管理プログラム。
もちろん、この限りではない。
【0012】
本発明によれば、石炭及び/又は製鉄ダストのパイルの熱分布を簡易に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態に係る管理システムを示す概略図である。
図2】本実施形態に係る管理装置の機能構成を示す概略図である。
図3】本実施形態に係る出力装置に出力される画面の一例である。
図4】本実施形態に係る管理装置のハードウェア構成を示す概略図である。
図5】本実施形態に係る管理方法のフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
【0015】
ところで、本実施形態に登場するソフトウェアを実現するためのプログラムは、コンピュータが読み取り可能な非一時的な記録媒体として提供されてもよいし、外部のサーバからダウンロード可能に提供されてもよいし、外部のコンピュータで当該プログラムを起動させてクライアント端末でその機能を実現(いわゆるクラウドコンピューティング)するように提供されてもよい。
【0016】
また、本実施形態において「部」とは、例えば、広義の回路によって実施されるハードウェア資源と、これらのハードウェア資源によって具体的に実現されうるソフトウェアの情報処理とを合わせたものも含みうる。また、本実施形態においては様々な情報を取り扱うが、これら情報は、例えば電圧・電流を表す信号値の物理的な値、0又は1で構成される2進数のビット集合体としての信号値の高低、又は量子的な重ね合わせ(いわゆる量子ビット)によって表され、広義の回路上で通信・演算が実行されうる。
【0017】
また、広義の回路とは、回路(Circuit)、回路類(Circuitry)、プロセッサ(Processor)、及びメモリ(Memory)等を少なくとも適当に組み合わせることによって実現される回路である。すなわち、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等を含むものである。
【0018】
<管理システム>
本実施形態に係る管理システムは、屋外で管理される、石炭及び/又は製鉄ダストの管理システムである。具体的に、この管理システムは、撮像部と、閾値情報取得部と、判定部とを備える。撮像部は、石炭及び/又は製鉄ダストのパイルの表層全体を撮像可能な位置から、パイルの表層の熱分布像を示す熱分布像情報を撮像するように構成されるものである。また、閾値情報取得部は、パイルの表層が有する温度の閾値を示す閾値情報を取得するように構成されるものである。さらに、判定部は、熱分布像情報及び閾値情報に基づき、パイルの発熱を判定するように構成されるものである。
【0019】
また、必須の構成ではないが、本実施形態に係る管理システムは、熱分布像情報取得部、気象情報取得部と、水分量情報取得部、出力部、散水部、パイル切崩部及びパイル払出部のうち、1又は2以上を備えてもよい。なお、以下で説明する図1には、これら全てを備える管理システムについて主として説明する。
【0020】
〔管理システムの機能的構成〕
図1は、本実施形態に係る管理システムの概略図である。この管理システム1は、管理装置2と、撮像装置3と、出力装置4と、散水装置5とを備える。
【0021】
このうち、管理装置2は、管理システム1における石炭及び/又は製鉄ダストの管理のための情報処理を制御するものである。図2は、本実施形態に係る管理装置の機能構成を示す概略模式図である。この図2に示すように、本実施形態に係る管理装置2は、主として、熱分布像情報取得部21と、閾値情報取得部22と、判定部23とを備える。また、管理装置2は、気象情報取得部24と、水分量情報取得部25とを備える。なお、撮像装置3は、撮像部の一例であり、出力装置4は、出力部の一例であり、散水装置5は、散水部の一例であり、以下では特に区別せず説明する。
【0022】
〔管理システムの機能〕
以下、管理システム1の各部の機能について具体的に説明する。
【0023】
[熱分布像情報取得部]
熱分布像情報取得部21は、石炭及び/又は製鉄ダストのパイルPの表層全体を撮像可能な位置から撮像した、パイルPの表層の熱分布像を示す熱分布像情報を取得するように構成されるものである。
【0024】
すなわち、この熱分布像情報取得部21が取得する熱分布像情報は、パイルP全体の熱分布情報を見渡すことができる熱分布像である。この熱分布像においては、パイルPのいずれの箇所であっても、測定時に差異がない。すなわち、例えばパイルPのある箇所では14:00に測定したが、パイルPの別の箇所では14:05に測定したという時間的な差異がない。ただし、後述する撮像部が有するセンサ等の仕様によって時間的な幅があってもよい。例えば、14:00~14:02の2分間の間で得られた熱分布像であってもよいが、この場合には、パイルPのいずれの箇所においても、14:00~14:02の2分間の間で得られた熱分布像であるものとする。
【0025】
なお、ヤードY内には複数のパイルPが存在してもよいが、この場合、熱分布像情報は、一つの像でパイル一つのみの熱分布が写った像でもよいし、任意の(例えば、ヤード内の一定範囲の)複数のパイルの熱分布が写った像でもよいし、ヤードYの全てパイルPの熱分布が写った像でもよい。ヤードYの全てパイルPの熱分布が写った像以外の像を用いる場合、パイルPの発熱を比較する観点から、それぞれの像の撮像の時間に大きな時間間隔が開かないようにすることが好ましい。
【0026】
また、この熱分布像情報は、パイルPを上方から平面視したものであり、パイルの表層の各箇所の温度が含まれるものであれば特に限定されず、例えばサーモグラフィ等が挙げられる。
【0027】
[閾値情報取得部]
閾値情報取得部22は、パイルPの表層が有する温度の閾値を示す閾値情報を取得するように構成されるものである。
【0028】
温度の閾値は、その温度以上又はその温度を超えた場合に、発熱の度合いを上げるための基準となる閾値である。温度の閾値は、1つでもよいし、複数でもよい。具体的な例は後述する。
【0029】
温度の閾値は、石炭及び/又は製鉄ダストに含まれる水分量や、温度、湿度、設置される箇所等によっても異なる可能性があるため、例えばそれらを考慮して設定してもよい。なお、季節や気象によって閾値を変更しても、変更しなくてもよい。
【0030】
なお、閾値としては、その値を超えた場合に必ず発熱が起こるものである必要はなく、一定程度の可能性が生じる、高まるものであってもよい。また、閾値としては、安全係数を考慮したものであってもよい。
【0031】
[判定部]
判定部23は、熱分布像情報及び閾値情報に基づき、パイルPの発熱を判定するように構成されるものである。
【0032】
この判定部23は、例えば少なくとも熱分布像情報から、パイルPの表層の温度からパイルPの内部の各箇所の温度を見積って、その見積った温度について、予め設けた温度の閾値を超えるか否か又は閾値以上か否か判定を行うことができる。なお、パイルPの内部の温度の見積りにあたっては、パイルの立体形状(詳細は後述する)等にさらに基づいて見積もることが好ましい。より具体的に、見積りの方法としては、例えばパイルの立体形状と表面温度とからの熱解析等が挙げられる。または、この判定部23は、パイルPの各箇所の表層の温度について、予め設けた閾値を超えるか否か、又は閾値以上か否か判定を行うことができる。例えば、閾値を50℃のみに設定する場合、50℃未満の温度を感知した箇所を「安全」と判定し、50℃以上の温度を感知した箇所を「危険」と判定してもよい。また、閾値を40℃及び50℃に設定する場合、40℃未満の温度を感知した箇所を「安全」と判定し、40℃以上50℃未満の温度を感知した箇所を「注意」と判定し、50℃以上の温度を感知した箇所を「危険」と判定してもよい。
【0033】
判定部23は、パイルPの最も高い温度について温度の閾値を超えるか否か又は閾値以上か否か判定を行ってもよい。例えば、閾値を50℃のみに設定する場合、パイルPの全ての表層が50℃未満であるパイルPを「安全」と判定し、50℃以上の温度の箇所を有するパイルPを「危険」と判定してもよい。また、閾値を40℃及び50℃に設定する場合、パイルPの全ての表層が40℃未満であるパイルPを「安全」と判定し、パイルPが40℃以上の箇所を有するが全ての表層が50℃未満であるパイルPを「注意」と判定し、50℃以上の温度の箇所を有するパイルPを「危険」と判定してもよい。
【0034】
また、ヤードY内に複数のパイルPを設置する場合において、判定部23は、パイルPの最高温度やパイル中の閾値の温度を超える面積等に基づき、パイルPごとに対応の優先度を判定(例えば順位付け等)してもよい。
【0035】
判定部23は、このようにして優先度の高い順にパイルPをどのように対応するか決定してもよい。対応の方法としては、散水したり、パイルPを切り崩して放熱させたり、払出し(次工程の処理)を行ったりする等してもよい。なお、同じヤードY内のパイルPであっても、あるパイルPは散水するが、別のパイルPは払出しを行う等、複数の対応を組み合わせてもよい。
【0036】
管理システム1が、後述する散水部5を有する場合、判定部23は、パイルの発熱の判定結果に基づき、パイルごとに散水の必要性を判定することが好ましい。
【0037】
管理システム1が、後述するパイル切崩部(図示せず。)を有する場合、判定部23は、パイルの発熱の判定結果に基づき、パイルPごとにパイルPを切り崩して放熱する必要性を判定することが好ましい。
【0038】
管理システム1が、後述するパイル払出装置(図示せず。)を有する場合、判定部23は、パイルPの発熱の判定結果に基づき、払い出すパイルPの優先度を判定することが好ましい。
【0039】
なお、管理システム1が、後述する散水部5、パイル切崩部及びパイル払出装置のうち複数を有する場合(各部が複数存在する場合も含む)、判定部23は、パイルPごとに、それら各部における処理の必要性及びその処理の優先度を判定することが好ましい。
【0040】
管理システム1が、後述する気象情報取得部24を有する場合、判定部23は、気象情報取得部24にて取得した気象情報を用いて、パイルPの発熱を判定してもよい。
【0041】
気象情報として気温を用いる場合、例えば気温が低いときはパイルPが冷却されやすくなり、発熱しにくくなるため、パイルPの発熱の可能性を低下させるような補正をする。一方、例えば気温が高いときは日射による熱も吸収され、発熱しやすくなるため、パイルPの発熱の可能性を高めるような補正をする。
【0042】
気象情報として降水量を用いる場合、例えば降水量が多いときは雨によってパイルPが冷却されやすくなり、発熱しにくくなるため、パイルPの発熱の可能性を低下させるような補正をする。一方、例えば降水量が少ないときは雨によって冷却されないため、補正をしない。
【0043】
気象情報として風速を用いる場合、風速が低いときはパイルPの発熱に影響を与えにくいため、補正をしない。また、例えば風速が一定程度高いときにはパイルPへの酸素の供給が高まるため、パイルPの発熱の可能性を高めるような補正をする。さらに、例えば風速が高すぎる場合には風の温度によってパイルPの発熱を冷却するため、パイルPの発熱の可能性を低下させるような補正をする。
【0044】
また、管理システム1が、後述する水分量情報取得部25を有する場合、判定部23は、水分量情報取得部25にて取得した水分量情報を用いて、パイルPの発熱を判定してもよい。
【0045】
石炭及び/又は製鉄ダストのパイルPの水分量が多いと発熱しにくくなるため、例えばパイルPの発熱の可能性を低下させるような補正をする。なお、詳細は後述するが、ここで用いる水分量は、特に限定されず、パイルPの表層の水分量、パイルPの水分量の全体平均、パイルPより一部をサンプリングしたものの水分量のいずれであってもよい。
【0046】
[気象情報取得部]
気象情報取得部24は、ヤードY内の現在及び未来の予想される気象を示す気象情報を取得するように構成されるものである。
【0047】
なお、「現在」とは判定部23による判定の開始時点をいい、「未来」とは「現在」よりも後の時間をいう。
【0048】
気象情報としては、特に限定されないが、降水量、気温、風向、風速、湿度等のうち1又は2以上を用いることができる。気象情報としては、特に、降水量を用いることが好ましい。なお、これらの気象情報は、日本国気象庁をはじめとする各国気象庁や、気象予報会社から得ることができる。
【0049】
なお、パイルPが設置されるヤードYは、通常広大な面積を有することが多く、例えば端部とその反対側の端部とでは、風速等の気象情報が異なることもある。そこで、気象情報取得部24は、気象情報を、パイルPごとに取得してもよい。
【0050】
[水分量情報取得部]
水分量情報取得部25は、石炭及び/又は製鉄ダストに含まれる水分量を示す水分量情報を取得するように構成されるものである。
【0051】
水分量情報としては、特に限定されず、パイルPの表層の水分量、パイルPの水分量の全体平均、パイルPより一部をサンプリングしたものの水分量のいずれであってもよい。ただし、撮像部に、上述したパイルPの表層の熱分布像情報に加えて、水分量情報も測定できるようなセンサを設けることで熱分布像情報と一括して情報を得ることができる。このようなセンサを設ける場合には、パイルPの表層の水分量を用いる。
【0052】
なお、石炭及び/又は製鉄ダストの水分量の測定方法としては、特に限定されず、例えばマイクロ波式、赤外光式等の水分計、熱重量計、乾燥重量方式等によって測定することができる。
【0053】
パイルPの水分量情報は、上述したとおりパイルPによって異なることも多い。したがって、水分量情報取得部25は、水分量情報を、パイルPごとに取得することが好ましい。
【0054】
[撮像部]
撮像部3は、石炭及び/又は製鉄ダストのパイルの表層全体を撮像可能な位置から、パイルの表層の熱分布像を示す熱分布像情報を撮像するように構成されるものである。
【0055】
撮像部3は、具体的には、石炭及び/又は製鉄ダストのパイルの表層全体を撮像可能な位置を飛行することができるドローン等の飛行体や、パイルPの最大高さよりも高い位置まで伸長することができるリクレーマー等のブームに、撮像装置を取り付けて撮像する装置が挙げられる。
【0056】
ここで、石炭及び/又は製鉄ダストのパイルPは、高さが10mを超えるものもある。したがって、石炭及び/又は製鉄ダストのパイルPの表層全体を撮像可能な位置は、それよりも十分に高い位置になる。撮像部3の位置としては、特に限定されないが、例えばヤードYから20m以上200m以下高い位置であることが好ましい。具体的に、撮像部3の位置としては、例えば25m以上、30m以上、35m以上、40m以上、45m以上、50m以上、55m以上、60m以上、65m以上、70m以上、75m以上、80m以上、85m以上、90m以上、95m以上、100m以上、105m以上、110m以上、115m以上、120m以上、125m以上、130m以上、135m以上であってよく、また、195m以下、190m以下、185m以下、180m以下、175m以下、170m以下、165m以下、160m以下であってもよい。
【0057】
なお、撮像部3に、パイルPの表層の水分量を測定するセンサを設け、熱分布像情報とともに、水分量情報を測定し、水分量情報取得部25に取得させてもよい。
【0058】
撮像部3によって測定した熱分布像情報や水分量情報は、熱分布像情報取得部21や水分量情報取得部25とそれぞれ通信して送信してもよいし、撮像部3に記録媒体を付して熱分布像情報をそこに記録し、その記録媒体を介して、熱分布像情報取得部21や水分量情報取得部25に熱分布像情報や水分量情報を取得させてもよい。
【0059】
[出力部]
出力部4は、判定部によるパイルの発熱の判定結果を、パイルごとに表示するように構成されるものである。
【0060】
この出力部4は、例えば、閾値情報取得部22が取得する閾値を50℃のみに設定する場合、50℃未満の温度を感知した箇所を青色(「安全」を意味する。)に表示し、50℃以上の温度を感知した箇所を赤色(「危険」を意味する。)に表示してもよい。また、閾値を40℃及び50℃に設定する場合、40℃未満の温度を感知した箇所を青色(「安全」を意味する。)に表示し、40℃以上50℃未満の温度を感知した箇所を黄色(「注意」を意味する。)に表示し、50℃以上の温度を感知した箇所を赤色(「危険」を意味する。)に表示してもよい。
【0061】
また、出力部4は、パイルPの最も高い温度について温度の閾値を超えるか否か又は閾値以上か否か判定を行ってもよい。例えば、閾値を50℃のみに設定する場合、パイルPの全ての表層が50℃未満であるパイルPを青色(「安全」を意味する。)に表示し、50℃以上の温度の箇所を有するパイルPを赤色(「危険」を意味する。)に表示してもよい。また、閾値を40℃及び50℃に設定する場合、パイルPの全ての表層が40℃未満であるパイルPを青色(「安全」を意味する。)に表示し、パイルPが40℃以上の箇所を有するが全ての表層が50℃未満であるパイルPを黄色(「注意」を意味する。)に表示し、50℃以上の温度の箇所を有するパイルPを赤色(「危険」を意味する。)に表示してもよい。
【0062】
以下、本実施形態に係る管理システムによる出力の一例について説明する。図3は、本実施形態に係る出力装置4に出力される画面の一例である。この出力画面は、ヤード全体を上空から平面視した像の温度分布を、2つの閾値を設け、3つの温度帯を設けそれらの温度帯を色分けして示している。具体的に、この出力画面では、40℃未満(安全)、40℃以上50℃未満(注意)及び50℃以上(危険)の3つの温度帯を設けており、後者ほど、すなわち発熱温度が高いほど、濃く着色している。また、この出力画面においては、50℃以上の箇所を有するパイルには、「!!!!」マークを表示している。
【0063】
なお、この出力画面の右側には、本日の天気が示されている。出力画面には、このように本日の天気が示されていてもよいし、示されていなくてもよい。さらに、本日の天気以外の情報が示されていてもよいし、示されていなくてもよい。
【0064】
以上のようにして、パイルP全体、そしてヤードY全体の温度を一つの画面に表示して、発熱の発生を視覚的に認識できるよう表示することで、オペレータ等が素早く対応を検討でき、また、問題の見落としを抑制することもできる。
【0065】
[散水部]
散水部5は、判定部23による散水の必要性の判定の結果に基づき、散水するように構成されるものである。
【0066】
散水部5としては、パイルPに散水できるものであれば特に限定されないが、例えば移動式の散水車や、パイルPの裾等に設けた散水管等を用いることができる。
【0067】
[パイル切崩部]
図示しないが、パイル切崩部は、判定部23によるパイル切り崩しの必要性の判定の結果に基づき、パイルPごとにパイルPを崩してパイルPの放熱を促進するように構成されるものである。
【0068】
パイル切崩部は、パイルPを崩して平坦にすることにより、パイルP内部の潜熱を、外気と接触させて放熱する。
【0069】
パイル切崩部としては、特に限定されないが、例えばショベルカー、ユンボ等を用いることができる。
【0070】
[パイル払出部]
図示しないが、パイル払出部は、判定部23による払い出すパイルPの優先度の判定の結果に基づき、パイルPの払出しを行うように構成されるものである。
【0071】
具体的に、このパイル払出部は、例えば判定部23が発熱の可能性が高い順に順位付けしたパイルPについて、その順位付けどおりにパイルPの払出しを行う。
【0072】
なお、このようにして払出しされたパイルP中の石炭及び/又は製鉄ダストは、次の工程に付される。
【0073】
本実施形態に係る管理システム1によれば、石炭及び/又は製鉄ダストのパイルPの表層全体を撮像可能な位置から、パイルPの表層の熱分布像を示す熱分布像情報を撮像することにより、簡易にパイルPの表層全体の熱分布を得ることができるし、このような像は視覚的にも発熱の危険性を捉えやすい。しかも、このような熱分布であれば、温度測定の漏れなく、発熱を感知することができる。
【0074】
〔管理システムのハードウェア構成〕
図4は、本実施形態に係る管理装置2のハードウェア構成を示す概略図である。図4に示されるように、管理装置2は、通信部61と、記憶部62と、制御部63とを有し、これらの構成要素が管理装置2の内部において通信バス64を介して電気的に接続されている。以下、これらの構成要素についてさらに説明する。
【0075】
通信部61は、USB、IEEE1394、Thunderbolt、有線LANネットワーク通信等といった有線型の通信手段が好ましいが、無線LANネットワーク通信、3G/LTE/5G等のモバイル通信、Bluetooth(登録商標)通信等を必要に応じて含めることができる。すなわち、これら複数の通信手段の集合として実施することがより好ましい。これにより管理装置2と通信可能な他の機器との間で情報や命令のやりとりが実行される。
【0076】
記憶部62は、前述の記載により定義される様々な情報を記憶する。これは、例えばソリッドステートドライブ(Solid State Drive:SSD)等のストレージデバイスとして、または、プログラムの演算に係る一時的に必要な情報(引数、配列等)を記憶するランダムアクセスメモリ(Random Access Memory:RAM)等のメモリとして実施され得る。また、記憶部62は、これらの組合せであってもよい。また、記憶部62は、後述する制御部63が読み出し可能な各種のプログラムを記憶している。
【0077】
制御部63は、管理装置2に関連する全体動作の処理・制御を行う。この制御部63は、例えば中央処理装置(Central Processing Unit:CPU、図示せず。)である。制御部63は、記憶部62に記憶された所定のプログラムを読み出すことによって、管理装置2に係る種々の機能を実現するものである。すなわち、ソフトウェア(記憶部62に記憶されている。)による情報処理がハードウェア(制御部63)によって具体的に実現されることで、図4に示されるように、制御部63における各機能部として実行され得る。なお、図4においては、単一の制御部63として表記されているが、実際はこれに限るものではなく、機能ごとに複数の制御部63を有するように構成してもよく、また、単一の制御部と複数の制御部を組合せてもよい。
【0078】
<管理方法>
本実施形態に係る管理方法は、屋外で管理される、石炭及び/又は製鉄ダストの管理方法であって、撮像工程と、閾値情報取得工程と、判定工程とを備えるものである。撮像工程は、石炭及び/又は製鉄ダストのパイルの全体を撮像可能な位置から、パイルの表層の熱分布像を示す熱分布像情報を撮像する工程である。また、閾値情報取得部は、パイルの表層が有する温度の閾値を示す閾値情報を取得する工程である。さらに、判定部は、熱分布像情報及び閾値情報に基づき、パイルの発熱を判定する工程である。
【0079】
図5は、本実施形態に係る管理方法のフローチャート図である。図5に示すとおり、本実施形態に係る管理方法においては、パイルPを撮像する(撮像工程S1)とともに、閾値情報を取得して(閾値情報取得工程S2)、これらを入力情報として、パイルPの発熱を判定する(判定工程S3)。ここで、撮像工程S1及び閾値情報取得工程S2について、順序の先行は問わず、撮像工程S1が先であっても、閾値情報取得工程S2が先であってもよいし、撮像工程S1及び閾値情報取得工程S2を同時に行ってもよい。
【0080】
なお、本実施形態に係る管理方法においては、気象情報取得工程、水分量情報取得工程、撮像工程、出力工程、散水工程、パイル切崩工程及びパイル払出工程を設けてもよい。これらはそれぞれ、気象情報取得部、水分量情報取得部、撮像部、出力部、散水部、パイル切崩部及びパイル払出部の動作と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0081】
<管理プログラム>
本実施形態に係る管理プログラムは、屋外で管理される、石炭及び/又は製鉄ダストの管理プログラムであって、コンピュータを、熱分布像情報取得部、閾値情報取得部及び判定部として機能させるものである。熱分布像情報取得部、閾値情報取得部及び判定部については上述したので、ここでの説明は省略する。
【0082】
本発明は、以上の実施形態には何ら制限されず、適宜変更を加えて実施することができる。
【符号の説明】
【0083】
1 管理システム
2 管理装置
21 熱分布像情報取得部
22 閾値情報取得部
23 判定部
24 気象情報取得部
25 水分量情報取得部
3 撮像装置又は撮像部
4 出力装置又は出力部
5 散水装置又は散水部
61 通信部
62 記憶部
63 制御部
64 通信バス
Y ヤード
P パイル
図1
図2
図3
図4
図5