(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】切削装置
(51)【国際特許分類】
B24B 27/06 20060101AFI20221031BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20221031BHJP
B23Q 3/08 20060101ALI20221031BHJP
B23Q 11/10 20060101ALI20221031BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20221031BHJP
H01L 21/304 20060101ALN20221031BHJP
【FI】
B24B27/06 M
H01L21/78 N
H01L21/78 F
B23Q3/08 A
B23Q11/10 A
B24B41/06 Z
H01L21/304 622H
(21)【出願番号】P 2017237383
(22)【出願日】2017-12-12
【審査請求日】2020-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(72)【発明者】
【氏名】楊 云峰
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-109416(JP,A)
【文献】特開2010-110858(JP,A)
【文献】特開2015-109381(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0221505(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0352593(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B3/00-3/60
B24B21/00-51/00
B23Q3/00-3/154
B23Q3/16-3/18
B23Q11/00-13/00
H01L21/301;21/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のフレームの開口に張られたテープが被加工物に貼着されて形成されたフレームユニットを保持するチャックテーブル機構と、該チャックテーブル機構に保持された該フレームユニットに含まれる該被加工物に切削液を供給しながら、該被加工物を切削ブレードで切削する切削ユニットと、を含む切削装置であって、
該チャックテーブル機構は、
該テープを介して該被加工物を吸引保持する吸着面を有する吸着部と、該吸着部を囲繞する枠体と、該枠体を囲繞し該吸着面より低い高さに設置される環状シール部材と、を備えるチャックテーブル本体と、
該チャックテーブル本体の外周に設置され、該吸着面より低い高さで該フレームユニットの該フレームを保持するフレーム保持ユニットと、を備え、
該チャックテーブル機構に該フレームユニットが保持されると該テープが該環状シール部材の上面に接触し、
該環状シール部材は、該フレームユニットの裏面側に伝わる該切削液が該枠体に到達して該枠体と該フレームユニットの間から吸引されて該吸着部に到達することを抑制するとともに該枠体と該フレームユニットの間に該切削液が入り込むことを抑制
し、
該チャックテーブルの該枠体は、該枠体の上面に通じた通気孔を有さない
ことを特徴とする切削装置。
【請求項2】
該環状シール部材は、Oリング又は環状のチューブであることを特徴とする請求項1記載の切削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削予定ラインが設定された被加工物を切削加工する切削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デバイスチップの製造工程では、半導体ウェーハやパッケージ基板、セラミックス基板、ガラス基板等の基板の表面に複数の交差する切削予定ライン(ストリート)が設定され、切削予定ラインで区画された各領域にデバイスが設けられる。デバイスが設けられた基板を切削予定ラインに沿って切削すると、個々のデバイスチップが形成される。
【0003】
該基板の切削には、例えば、切削ブレードを備える切削装置が使用される。切削装置に基板等の被加工物を搬入する際には、環状のフレームの開口に張られたテープを予め被加工物に貼着してフレームユニットを形成する。フレームユニットの状態で基板を切削装置に搬入して基板を切削すると、形成された個々のデバイスチップはテープに支持される。
【0004】
切削装置は、基板等の被加工物を保持するチャックテーブル機構と、チャックテーブルに保持された被加工物を切削する切削ユニットと、を備える。切削ユニットには、砥粒が埋め込まれた切刃を含む円環状の切削ブレードが装着されている。
【0005】
チャックテーブル機構は、凹部を有する枠体と、該枠体の凹部を埋めるように配設され多孔質部材で形成された吸着部と、を備える本体を有し、該吸着部の上面がチャックテーブル機構の吸着面となる。チャックテーブル機構は、一端が吸引源に接続された吸引路を内部に有し、該吸引路の他端が吸着部に接続されている。また、チャックテーブル機構の上部の外周には、フレームユニットのフレームを挟持するクランプ等のフレーム保持ユニットが配設されている(特許文献1参照)。
【0006】
テープを介して被加工物を該吸着面上に載せ、クランプでフレームを挟持し、吸引源を作動させて吸着部を通じて基板を吸引すると、被加工物がチャックテーブル機構に保持される。切削ブレードを回転させながら、切削ブレードの下端が被加工物の下端より低い高さ位置となるように切削ブレードを下降させ、切削ブレードに向けてチャックテーブル機構を水平方向に移動させると、被加工物が切削される。
【0007】
切削ブレードにより被加工物を切削すると、被加工物から加工屑が生じて飛散する。また、加工により熱が生じる。そこで、チャックテーブル機構に保持された被加工物を切削ブレードで切削する際には、切削屑や熱を排除するために、切削ブレード及び被加工物に切削液が供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
切削加工中に切削ブレード及び被加工物に供給された切削液は、被加工物からテープ及びフレームを伝って外周側に流れて排出される。この際、切削液の一部はフレームユニットの裏面側に伝わり、被加工物を保持するチャックテーブル機構の枠体に到達する場合がある。
【0010】
枠体に到達した切削液は、枠体と、フレームユニットと、の間の隙間から吸引され、枠体の凹部に配設された吸着部に到達する。吸着部は接着材等により枠体に固定されるが、接着剤に切削液が接触すると接着剤の接着力が低下する場合があり、吸着部の剥離の原因ともなるため問題となる。
【0011】
また、枠体と、フレームユニットと、の間に切削液が入り込むと、切削加工の完了後にフレームユニットに切削液が付着したままフレームユニットがチャックテーブル機構から搬出される。その後、フレームユニットの搬送中に切削装置の内外で切削液がフレームユニットから脱落すると汚染の原因となる。
【0012】
本発明はかかる問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、チャックテーブル機構の吸着面への切削液の到達を抑制できる切削装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様によれば、環状のフレームの開口に張られたテープが被加工物に貼着されて形成されたフレームユニットを保持するチャックテーブル機構と、該チャックテーブル機構に保持された該フレームユニットに含まれる該被加工物に切削液を供給しながら、該被加工物を切削ブレードで切削する切削ユニットと、を含む切削装置であって、該チャックテーブル機構は、該テープを介して該被加工物を吸引保持する吸着面を有する吸着部と、該吸着部を囲繞する枠体と、該枠体を囲繞し該吸着面より低い高さに設置される環状シール部材と、を備えるチャックテーブル本体と、該チャックテーブル本体の外周に設置され、該吸着面より低い高さで該フレームユニットの該フレームを保持するフレーム保持ユニットと、を備え、該チャックテーブル機構に該フレームユニットが保持されると該テープが該環状シール部材の上面に接触し、該環状シール部材は、該フレームユニットの裏面側に伝わる該切削液が該枠体に到達して該枠体と該フレームユニットの間から吸引されて該吸着部に到達することを抑制するとともに該枠体と該フレームユニットの間に該切削液が入り込むことを抑制し、該チャックテーブルの該枠体は、該枠体の上面に通じた通気孔を有さないことを特徴とする切削装置が提供される。
【0014】
なお、本発明の一態様において、該環状シール部材は、Oリング又は環状のチューブでもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様に係る切削装置では、チャックテーブル機構はチャックテーブル本体の枠体を囲繞する環状シール部材を備える。そして、フレームユニットをチャックテーブル機構に保持させるとき、フレームユニットを構成するテープが該環状シール部材の上面に接触する。
【0016】
すると、切削加工中に切削液がフレームユニットの裏面側を伝っても、環状シール部材により切削液の移動が阻害されるため、該切削液がチャックテーブル機構の吸着面に到達しにくくなる。そのため、フレームユニットの裏面側に切削液が残留しにくくなり、切削液の脱落による汚染の発生が抑制される。また、吸着部への切削液の到達も抑制されるため、枠体からの吸着部の剥離も抑制される。
【0017】
したがって、本発明によりチャックテーブル機構の吸着面への切削液の到達を抑制できる切削装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】切削装置及び被加工物を模式的に示す斜視図である。
【
図2】チャックテーブル機構を模式的に示す平面図である。
【
図3】
図3(A)は、フレームユニットを保持するチャックテーブル機構を模式的に示す断面図であり、
図3(B)は、切削加工を模式的に示す断面図である。
【
図4】チャックテーブル機構を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。まず、本実施形態に係る切削装置と、該切削装置で切削加工される被加工物について
図1を用いて説明する。
図1は、切削装置及び被加工物を模式的に示す斜視図である。
【0020】
該被加工物3は、例えば、シリコン、SiC(シリコンカーバイド)、若しくは、その他の半導体等の材料、または、サファイア、ガラス、石英、セラミックス等の材料からなる基板である。または、該被加工物3は、デバイスが樹脂で覆われたパッケージ基板である。被加工物3には、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)等のデバイスが設けられている。被加工物3を切削装置2で切削しデバイス毎に分割すると、デバイスチップを形成できる。
【0021】
切削装置2で切削される被加工物3は、環状のフレーム5と、テープ7と、と一体となったフレームユニット1の状態で切削装置2に搬入される。テープ7は、一方の面が接着力を備える接着面である。フレーム5は、被加工物3の径よりも大きな径の開口を有し、フレーム5には該開口を塞ぐようにテープ7が張られている。フレームユニット1では、テープ7の接着面の外周部がフレーム5に接着している。
【0022】
環状のフレーム5の開口内では、テープ7の接着面に被加工物3が貼着されている。被加工物3が貼着される際、例えば、デバイスが形成された表面を上方に露出させた状態で被加工物3の裏面側がテープ7に貼着される。被加工物3が切削装置2で切削されて形成される個々のデバイスチップは、テープ7に支持される。
【0023】
切断装置2は、各構成を支持する装置基台4を備え、装置基台4の上面にフレームユニット1を吸引保持するチャックテーブル機構6と、被加工物3を切削加工する切削ユニット8と、を備える。切削装置2は、フレームユニット1をチャックテーブル機構6で吸引保持し、切削ユニット8により被加工物3を切削加工する。
【0024】
後述の
図2及び
図3(A)等に示す通り、チャックテーブル機構6は、上部に凹部を有する枠体44と、該枠体44の凹部を埋めるように配設され多孔質部材で形成された吸着部42と、を含む本体6aを備える。吸着部42の上面は、チャックテーブル機構6の吸着面42aとなる。
【0025】
チャックテーブル機構6は、一端が吸引源に接続された吸引路46(
図3(A)参照)を内部に有し、該吸引路46の他端が吸着部42に接続されている。また、チャックテーブル機構6の本体6aの外周には、フレームユニット1のフレーム5を挟持するクランプ48等のフレーム保持ユニットが配設されている。
【0026】
テープ7を介して被加工物3を該吸着面42a上に載せ、クランプ48でフレーム5を挟持し、吸引源を作動させて吸着部42を通じて被加工物3を吸引すると、被加工物3がチャックテーブル機構6に吸引保持される。該チャックテーブル機構6は、吸着面42aに垂直な方向に沿った軸の周りに回転可能である。
【0027】
装置基台4の上面の前部には、複数のフレームユニット1が収容可能なカセット14が載せられるカセット支持台12が配設されている。切削装置2は、図示しない搬入出機構を備える。該搬入出機構は、カセット14から切削加工を実施する前のフレームユニット1を引き出しチャックテーブル機構6の吸着面42a上に搬入し、また、切削加工が終了した後に該フレームユニット1をカセット14に収納する。
【0028】
装置基台4の上面の該カセット支持台12に隣接した位置には開口16が設けられており、該開口16の内部にはX軸移動デーブル18と、一端が該X軸移動テーブル18に取り付けられた防塵防滴カバー20と、が配設されている。X軸移動テーブル18は、図示しないX軸移動機構に接続されており、該X軸移動機構によりX軸方向に移動できる。X軸移動テーブル18上にはチャックテーブル機構6が配設されており、X軸移動テーブル18を移動させることでチャックテーブル機構6をX軸方向に移動できる。
【0029】
装置基台4の上面の後部には、開口16の上部に伸長する腕部を有する支持構造22が立設されている。支持構造22の上部に配された該腕部の前側面には、Y軸方向に平行な一対のY軸ガイドレール24と、Y軸ボールねじ28と、Y軸パルスモータ(不図示)と、が設けられており、Y軸ガイドレール24にはY軸移動プレート26がスライド可能に取り付けられている。
【0030】
Y軸移動プレート26の後面側には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、該Y軸ガイドレール24に平行な該Y軸ボールねじ28が螺合されている。Y軸ボールねじ28の一端部には、該Y軸パルスモータ(不図示)が連結されている。該Y軸パルスモータで該Y軸ボールねじ28を回転させると、Y軸移動プレート26はY軸ガイドレール24に沿ってY軸方向に移動する。
【0031】
Y軸移動プレート26の前面には、Z軸方向に伸長する一対のZ軸ガイドレール30と、それぞれのZ軸ガイドレール30にスライド可能に取り付けられたZ軸移動プレート32と、が配設されている。Z軸移動プレート32の裏面側(後面側)には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、Z軸ガイドレール30に平行なZ軸ボールねじ34が螺合されている。
【0032】
Z軸ボールねじ34の一端部には、Z軸パルスモータ36が連結されている。Z軸パルスモータ36でZ軸ボールねじ34を回転させれば、Z軸移動プレート32は、Z軸ガイドレール30に沿ってZ軸方向に移動する。Z軸移動プレート32の前面側下部には、切削ユニット8と、カメラユニット10と、が固定されている。Z軸移動プレート32をZ軸方向に移動させれば、切削ユニット8及びカメラユニット10をZ軸方向に移動できる。
【0033】
装置基台4の上面の開口16に隣接する位置には、切削加工が実施された後に被加工物3を洗浄する洗浄ユニット38が配設されている。洗浄ユニット38は、フレームユニット1を保持する洗浄テーブル40と、洗浄テーブル40に保持されたフレームユニット1に洗浄液を供給するノズルと、を備える。洗浄ユニット38は、洗浄テーブル40にフレームユニット1を保持した状態で、該洗浄テーブル40が高速で回転しながら該ノズルからフレームユニット1に洗浄液を供給することでフレームユニット1を洗浄する。
【0034】
切削ユニット8は、Y軸方向に沿ったスピンドル54(
図3(B)参照)と、スピンドル54の先端に装着された円環状の切削ブレード56と、を備える。該スピンドル54の基端側には、該スピンドル54をY軸方向の周りに回転させるスピンドルモータ(不図示)が接続されている。該スピンドルモータを作動させて該スピンドル54回転させると、切削ブレード56が回転する。
【0035】
円環状の切削ブレード56は外周部に切刃58(
図3(B)参照)を備える。切刃58は、例えば、砥粒と、砥粒が分散された結合材と、を含む。回転する切削ブレード56を所定の高さ位置に位置づけ、X軸移動テーブル18をX軸方向に移動させると、切削ブレード56により被加工物3が切削される。
【0036】
切削ブレード56により被加工物3を切削すると、被加工物3から切削屑が発生して飛散してしまう。また、切削により加工熱が生じて、被加工物3や切削ブレード56が高温となる。そこで、被加工物3の切削加工を実施する間、被加工物3や切削ブレード56には、切削液が供給される。切削ユニット8は、切削ブレード56の側方にノズル60(
図3(B)参照)を備えており、該ノズル60から被加工物3の上面及び切削ブレード56に切削液62(
図3(B)参照)が供給される。
【0037】
ノズル60から供給される切削液62は、例えば、純水である。該純水には、水溶性高分子等の添加物が添加されてもよい。切削液62は、被加工物3や切削ブレード56を冷却する機能を有する。また、切削加工により生じる切削屑等は、切削液62により流されて排除される。切削液62は、フレームユニット1の上面を伝ってフレームユニット1の外周側に流出する。
【0038】
切削加工を実施している間、チャックテーブル機構6は移動と停止を繰り返す。すると、フレームユニット1の上面側を流れる切削液62がフレームユニット1の下面側に回り込むことがあり、チャックテーブル機構6の枠体44に到達する場合がある。
【0039】
チャックテーブル機構6の枠体44に到達した切削液62は、枠体44と、フレームユニット1と、の間の隙間から吸引され、枠体44の凹部に配設された吸着部42に到達する。吸着部42は接着材等により枠体44に固定されるが、接着剤に切削液62が接触すると接着剤の接着力を低下させる場合があり、吸着部42の剥離の原因ともなるため問題となる。
【0040】
また、切削加工が実施された後、フレームユニット1は洗浄ユニット38の洗浄テーブル40に移され、洗浄液が被加工物3に供給されて被加工物3が洗浄される。被加工物3の洗浄時には該洗浄テーブル40が高速回転するため、フレームユニット1の裏面側の該保持テーブル40の外周側の部分に付着した液体が飛ばされて、該裏面側の該部分が乾燥される。その一方で、フレームユニット1の裏面側の該洗浄テーブル40に面する部分に付着した液体は飛散せずに該裏面側に残る。
【0041】
したがって、枠体44と、フレームユニット1と、の間に切削液62が入り込むと、切削加工の完了後にフレームユニット1に切削液62が付着したままフレームユニット1がチャックテーブル機構6から搬出される。その後、フレームユニット1の搬送中やカセット14に収容された状態で切削液62がフレームユニット1から脱落すると汚染の原因となる。
【0042】
そこで、本実施形態に係る切削装置2では、フレームユニット1の裏面側に伝わる切削液62の枠体44への到達を抑制するために、チャックテーブル機構6の枠体44の外周に環状シール部材が配設される。
図2は、チャックテーブル機構6を模式的に示す平面図であり、
図3(A)は、フレームユニット1を保持するチャックテーブル機構6を模式的に示す断面図である。
図3(A)に、チャックテーブル機構6の本体6aと、フレームユニット1と、の断面を示す。
【0043】
図2及び
図3(A)に示す通り、チャックテーブル機構6の本体6aは、枠体44を囲繞する環状シール部材50aを含む。環状シール部材50aは、枠体44の外径と同程度の内径を有する環状の弾性部材であり、例えば、Oリングや環状のチューブ等である。該環状シール部材50aは、例えば、チャックテーブル機構6の枠体44の外周程度の長さの外径8mm、内径5mmの樹脂製のチューブの両端を接続することで形成される。
【0044】
また、チャックテーブル機構6の該本体6aは、さらに環状シール部材50aを支持する環状シール部材支持部52を備えてもよく、該環状シール部材支持部52は、固定具52a等により枠体44の外周部に固定されてもよい。
【0045】
図3(A)に示す通り、環状シール部材50aは、環状シール部材支持部52によりチャックテーブル機構6の吸着面42aより低い高さに設置される。また、クランプ48(フレーム保持ユニット)は、該吸着面42aより低い高さで該フレームユニット1の該フレーム5を保持する機能を有する。
【0046】
チャックテーブル機構6にフレームユニット1を保持させる際は、まず、フレームユニット1をチャックテーブル機構6の吸着部42の吸着面42a上に載せる。そして、クランプ48によりフレーム5を挟持する。すると、該吸着面42aより低い高さで該フレーム5が保持される。その後、チャックテーブル機構6の図示しない吸引源を作動させると、吸引路46と、吸着部42と、を通じてフレームユニット1に負圧が作用し、被加工物3はテープ7を介してチャックテーブル機構6に吸引保持される。
【0047】
このとき、
図3(A)に示す通り、チャックテーブル機構6の本体6aの周辺では、環状シール部材50aの上端部がフレームユニット1のテープ7に密着する。ここで、クランプ48により該吸着面42aより低い高さで該フレーム5が保持されるため、環状シール部材50aと、該テープ7と、は強力に密着する。以下、環状シール部材50aの機能について説明する。
【0048】
図3(B)は、切削加工を模式的に示す断面図である。切削ユニット8により被加工物3の切削加工を実施するとき、スピンドル54を回転させることで切削ブレード56を回転させ、切刃58の下端が被加工物3の下端部に達する高さ位置となるように切削ユニット8を下降させる。次に、ノズル60から切削液62を切削ブレード56や被加工物3に供給しながら、X軸移動テーブル18をX軸方向に移動させる。すると、被加工物3が切削加工される。なお、該環状シール部材50aの上端が該保持面42aよりも低くなるように配設されているため、該切削ブレード56は該環状シール部材50aに接触しない。
【0049】
被加工物3に形成されたデバイス毎に被加工物3を切削加工するために、チャックテーブル機構6は、繰り返しX軸方向に沿って移動する。また、被加工物3の切削加工の方向を変えるために、チャックテーブル機構6は吸着面42aに垂直な軸の周りに回転する。
【0050】
切削ブレード56や被加工物3に供給された切削液62は、
図3(B)に示す通り、フレームユニット1外周に流れて排出される。切削加工時には、チャックテーブル機構6は断続的に移動し続けるため被加工物3の切削加工時に供給される切削液がフレームユニット1の裏面側に回り込む場合がある。さらに、切削液62が該裏面側を伝ってチャックテーブル機構6の本体6a側に進む場合がある。
【0051】
本実施形態に係る切削装置2では、環状シール部材50aがフレームユニット1のテープ7に密着するため、切削液62の移動が遮られて切削液62が吸着部42に到達しない。したがって、吸着部42を枠体44に固定する接着材等は切削液62の影響を受けにくく、吸着部42の剥離等が抑制される。
【0052】
また、切削液62は枠体44及びテープ7の間に進入しないため該間に残留せず、切削加工が終了しフレームユニット1をチャックテーブル機構6から搬出しても切削液62がテープ7の下面から飛散しない。そのため、切削装置2の内外が切削液62で汚染されることもない。
【0053】
次に、環状シール部材の変形例について説明する。
図4は、該変形例に係る環状シール部材が装着されたチャックテーブル機構6を模式的に示す断面図である。
図4に示す環状シール部材50bはゴム等の弾性体で形成されており、枠体44の外径よりも僅かに小さな内径を有する形状に形成される。
【0054】
環状シール部材50bを引き伸ばしながら枠体44の外周に該環状シール部材50bを嵌め込むと、チャックテーブル機構6に環状シール部材50bを装着できる。枠体44に取り付けられた環状シール部材50bは、弾性力で枠体44の外周に固定される。環状シール部材50bは、枠体44に弾性力を作用させる本体部と、該本体部の上方に向けて枠体44から離間する形状の突出部と、を含む。
【0055】
環状シール部材50bは、該突出部の先端がチャックテーブル機構6の保持面よりも低くなるように配設される。そのため、被加工物3を切削する際に切削ブレード56が該環状シール部材50bに接触しない。また、フレームユニット1がチャックテーブル機構6に吸引保持される際、フレームユニット1が引き下げられるようにフレーム5がクランプ48に把持されるため、テープ7は環状シール部材50bの該突出部と密着する。環状シール部材50bにより該テープ7と、該突出部と、の間が塞がれるため、被加工物3の切削加工時に切削液62がチャックテーブル機構6の本体6a側に進入しない。
【0056】
なお、弾性力で枠体44の外周に固定される環状シール部材40bを使用すると、環状シール部材支持部を省略できる場合がある。
【0057】
以上に示す通り、本実施形態に係る切削装置2では、チャックテーブル機構6の吸着面42aへの切削液62の到達を抑制され、吸着部42の剥離やフレームユニット1からの切削液62の脱落が抑制される。
【0058】
なお、上記実施形態では、環状シール部材40bが配設されたチャックテーブル機構6を備える切削装置2について説明したが、本発明の一態様はこれに限定されない。例えば、切削以外の方法で被加工物3を加工する加工装置が備えるチャックテーブル機構が環状シール部材を備えても良い。例えば、該加工装置は、研削装置、研磨装置、レーザ加工装置等でもよい。
【0059】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0060】
1 フレームユニット
3 被加工物
5 フレーム
7 テープ
2 切削装置
4 装置基台
6 チャックテーブル機構
6a 本体
8 切削ユニット
10 カメラユニット
12 カセット支持台
14 カセット
16 開口
18 X軸移動テーブル
20 防塵防滴カバー
22 支持構造
24 Y軸ガイドレール
26 Y軸移動プレート
28 Y軸ボールネジ
30 Z軸ガイドレール
32 Z軸移動プレート
34 Z軸ボールネジ
36 Z軸パルスモータ
38 洗浄ユニット
40 洗浄テーブル
42 吸着部
44 枠体
46 吸引路
48 クランプ
50a,50b 環状シール部材
52 環状シール部材支持部
52a 固定具
54 12 スピンドル
56 14 切削ブレード
58 切刃
60 ノズル
62 切削液