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  • 特許-導波管の加工方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】導波管の加工方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 27/06 20060101AFI20221031BHJP
   B23D 21/00 20060101ALI20221031BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20221031BHJP
   B28D 1/24 20060101ALN20221031BHJP
【FI】
B24B27/06 J
B23D21/00 D
B23Q11/00 A
B28D1/24
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019007481
(22)【出願日】2019-01-21
(65)【公開番号】P2020116654
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】村田 洋介
【審査官】大光 太朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-129791(JP,A)
【文献】特表2005-529984(JP,A)
【文献】特開2015-188963(JP,A)
【文献】特開平03-251329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 27/06
B23D 21/00
B23Q 11/00
B28D 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
砥粒が結合材で固定された環状の切削ブレードを用いて、内側に中空部を有する筒状の導波管を所定の長さに切断する導波管の加工方法であって、
該導波管の該中空部に、該切削ブレードの切れ味を整える効果のあるフィラーが添加された樹脂を充填する樹脂充填ステップと、
該樹脂が充填された該導波管に回転させた該切削ブレードを切り込ませて該導波管を該樹脂ごと切断する切断ステップと、
切断された該導波管に充填されている該樹脂を取り除く樹脂除去ステップと、を含むことを特徴とする導波管の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空構造の導波管を加工する際に用いられる導波管の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波の伝送には、例えば、導電性の材料で中空に形成された筒状の導波管が用いられる。この導波管の内側の領域は、通常、空気で満たされている。つまり、筒状に構成された外部導体の内側に誘電体を介して内部導体が配置される同軸ケーブルとは異なり、導波管の内側の領域に内部導体が存在しない。
【0003】
よって、この導波管を用いれば、内部導体の抵抗に起因して同軸ケーブルでは適切に伝送できないような大電力のマイクロ波を適切に伝送できるようになる。また、この導波管を用いれば、内部導体と外部導体との間の誘電体において大きな損失が発生するような高い周波数のマイクロ波を低損失に伝送できるようになる。
【0004】
ところで、所定の長さの導波管を短い複数の導波管へと分割する際には、ダイヤモンド等の砥粒を金属等の結合材で固定した環状の切削ブレード(例えば、特許文献1参照)が使用される。切削ブレードを高速に回転させて導波管の切断予定位置に切り込ませることで、任意の長さの短い導波管を切り出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-129623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、導波管は中空に構成されているので、その剛性は必ずしも高くない。よって、高速に回転させた切削ブレードを導波管にそのまま切り込ませると、切削ブレードから加わる力によって導波管が撓んだり振動したりして、ひび割れや欠け等の不良が発生し易くなる。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ひび割れや欠け等の不良が発生し難い導波管の加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、砥粒が結合材で固定された環状の切削ブレードを用いて、内側に中空部を有する筒状の導波管を所定の長さに切断する導波管の加工方法であって、該導波管の該中空部に、該切削ブレードの切れ味を整える効果のあるフィラーが添加された樹脂を充填する樹脂充填ステップと、該樹脂が充填された該導波管に回転させた該切削ブレードを切り込ませて該導波管を該樹脂ごと切断する切断ステップと、切断された該導波管に充填されている該樹脂を取り除く樹脂除去ステップと、を含む導波管の加工方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様に係る導波管の加工方法では、導波管の中空部に樹脂を充填した後に、回転させた切削ブレードを切り込ませて導波管を樹脂ごと切断するので、中空部に充填される樹脂によって導波管が変形し難くなり、切削ブレードを切り込ませる際の導波管の撓みや振動が抑制される。すなわち、本発明の一態様に係る導波管の加工方法によれば、導波管の撓みや振動に起因するひび割れや欠け等の不良も発生し難くなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1(A)は、円筒状に構成された導波管の外観を示す斜視図であり、図1(B)は、樹脂充填ステップにおいて円筒状の導波管に樹脂が充填される様子を示す斜視図であり、図1(C)は、樹脂が充填された円筒状の導波管を示す斜視図である。
図2図2(A)は、切断ステップにおいて導波管が切断される様子を示す側面図であり、図2(B)は、図2(A)に示される状態を別の方向から見た側面図である。
図3図3(A)は、角筒状に構成された導波管の外観を示す斜視図であり、図3(B)は、樹脂充填ステップにおいて角筒状の導波管に樹脂が充填される様子を示す斜視図であり、図3(C)は、樹脂が充填された角筒状の導波管を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。本実施形態に係る導波管の加工方法は、樹脂充填ステップ(図1(B)及び図1(C)参照)、切断ステップ(図2(A)及び図2(B)参照)、及び樹脂除去ステップを含む。
【0012】
樹脂充填ステップでは、筒状の導波管に樹脂を充填する。切断ステップでは、樹脂が充填された導波管に回転させた切削ブレードを切り込ませて導波管を樹脂ごと切断する。樹脂除去ステップでは、切断された導波管に充填されている樹脂を取り除く。以下、本実施形態に係る導波管の加工方法について詳述する。
【0013】
図1(A)は、本実施形態で使用される導波管1の外観を示す斜視図である。図1(A)に示すように、導波管1は、導電性の材料を用いて円筒状に形成されており、内側に円柱状の中空部(空間)1aを有している。この導波管1を構成する導電性の材料は、例えば、銅やアルミニウム等の金属である。ただし、導電性の材料に特段の制限はなく、導電性が付与されたセラミックス等が使用されても良い。
【0014】
導波管1の肉厚は、この導波管1の全体に亘って概ね均一である。すなわち、円柱状の中空部1aは、円筒状の導波管1に対して概ね同心状に配置されている。この導波管1の外径(直径)a1は、例えば、3mm~7mm程度、代表的には5mmであり、導波管1の内径(直径)a2は、例えば、1mm~5mm程度、代表的には、3mmである。
【0015】
なお、この導波管1の肉厚は、(外径a1-内径a2)/2で表される。よって、例えば、外径a1が5mmで内径a2が3mmの場合、肉厚は1mmとなる。導波管1の長さ(円筒状の高さに相当する長さ)は、少なくとも、この導波管1を切断して複数の短い導波管が得られる程度に長い。
【0016】
本実施形態に係る導波管の加工方法では、まず、この導波管1の中空部1aに樹脂を充填する樹脂充填ステップを行う。図1(B)は、樹脂充填ステップにおいて導波管1に樹脂3が充填される様子を示す斜視図であり、図1(C)は、樹脂3が充填された導波管1を示す斜視図である。
【0017】
図1(B)に示すように、本実施形態に係る樹脂充填ステップでは、円柱状に形成された樹脂(樹脂材)3を導波管1の中空部1aに挿入する。その結果、図1(C)に示すように、導波管1の中空部1aには、樹脂3が充填される。樹脂3の外径a3は、導波管1の内径と同じ、又は導波管1の内径より僅かに小さく、例えば、1mm~5mm程度、代表的には、3mmである。
【0018】
樹脂3の長さは、導波管1の長さと同程度、又はそれ以上とすることが望ましい。これにより、導波管1の長さ方向の全体に亘って中空部1aに樹脂3を充填できる。ただし、樹脂3の長さは、導波管1より僅かに短くても構わない。
【0019】
なお、樹脂3には、後の切断ステップで使用される切削ブレードの切れ味を整える効果(ドレス効果)のあるフィラー等が添加されても良い。この場合には、導波管1を切断する間の切削ブレードの切削性能を維持して、ひび割れや欠け等の不良が発生する可能性を更に低く抑えることができる。
【0020】
また、本実施形態に係る樹脂充填ステップでは、導波管1の中空部1aの形状に対応する円柱状の樹脂3を導波管1の中空部1aに挿入しているが、液状の材料を中空部1aに導入して硬化させる方法で導波管1の中空部1aに樹脂を充填することもできる。この場合には、液状の材料として、例えば、熱硬化型の樹脂や光硬化型の樹脂等を用いると良い。
【0021】
樹脂充填ステップの後には、樹脂3が充填された導波管1を樹脂3ごと切断する切断ステップを行う。図2(A)は、切断ステップにおいて導波管1が切断される様子を示す側面図であり、図2(B)は、図2(A)に示される状態を別の方向から見た側面図である。この切断ステップは、例えば、図2(A)及び図2(B)に示す切削装置2を用いて行われる。
【0022】
切削装置2は、導波管1を保持するためのチャックテーブル4を備えている。チャックテーブル4は、例えば、ステンレスに代表される金属材料でなる円筒状の枠体(不図示)と、多孔質材料でなり枠体の上部に配置される保持板(不図示)と、を含む。枠体は、モータ等の回転駆動源(不図示)に連結されている。チャックテーブル4は、この回転駆動源の生じる力によって、保持板の上面に対して概ね垂直(鉛直方向に概ね平行)な回転軸の周りに回転する。
【0023】
また、枠体は、加工送り機構(不図示)に支持されている。チャックテーブル4は、この加工送り機構によって、保持板の上面に対して概ね平行な加工送り方向に移動する。更に、保持板の下面側は、枠体の内部に設けられた流路(不図示)等を介して吸引源に接続されている。
【0024】
チャックテーブル4の上方には、切削ユニット6が配置されている。切削ユニット6は、保持板の上面に対して概ね平行な回転軸となるスピンドル8を備えている。スピンドル8の一端側には、ダイヤモンド等の砥粒が金属等の結合材で固定されてなる環状の切削ブレード10が装着されている。
【0025】
スピンドル8の他端側には、モータ等の回転駆動源(不図示)が連結されており、スピンドル8の一端側に装着された切削ブレード10は、この回転駆動源の生じる力によって回転する。また、スピンドル8は、昇降機構(不図示)と割り出し送り機構(不図示)とに支持されている。切削ユニット6は、この昇降機構によって、保持板の上面に対して概ね垂直な鉛直方向に移動し、割り出し送り機構によって、鉛直方向及び加工送り方向に対して概ね垂直な割り出し送り方向に移動する。
【0026】
切断ステップでは、まず、導波管1をチャックテーブル4で保持する。具体的には、図2(A)及び図2(B)に示すように、保持板の上面を覆う大きさの粘着テープ11の粘着面側に導波管1を貼り付ける。そして、この粘着テープ11の非粘着面を保持板の上面に接触させて、保持板に吸引源の負圧を作用させる。これにより、導波管1は、粘着テープ11を介してチャックテーブル4に保持される。
【0027】
なお、粘着テープ11の導波管1に隣接する位置には、粘着テープ11に対する導波管1の位置を規定するような板状の部材を貼付すると良い。これにより、加工時の導波管1の位置のずれを防止できるようになる。板状の部材としては、例えば、切削ブレード10による導波管1の加工を阻害しないカーボン製の部材等を用いる。
【0028】
導波管1をチャックテーブル4で保持した後には、回転させた切削ブレード10を切り込ませてこの導波管1を切断する。具体的には、まず、チャックテーブル4の向き(回転軸の周りの向き)を回転駆動源で調整し、導波管1の長さ方向とチャックテーブル4の加工送り方向とを概ね垂直にする。
【0029】
次に、チャックテーブル4と切削ユニット6との相対的な位置を加工送り機構と割り出し送り機構とで調整し、導波管1の切断予定位置から加工送り方向に離れた所定の位置に切削ブレード10を位置付ける。また、切削ユニットの高さを昇降機構で調整し、切削ブレード10の下端を、粘着テープ11の上面(粘着面)より低く、チャックテーブル4の上面より高い位置に位置付ける。
【0030】
その後、切削ブレード10を回転させながら、チャックテーブル4を加工送り方向に移動させる。これにより、図2(A)及び図2(B)に示すように、回転させた切削ブレード10を切断予定位置に切り込ませて、導波管1を樹脂3ごと切断できる。上述した板状の部材を粘着テープ11に貼付している場合には、この板状の部材も併せて切断される。
【0031】
なお、本実施形態では、所望の長さの短い導波管を導波管1から切り出せるように、導波管1の端から距離lの位置に第1番目の切断予定位置を設定している。導波管1から切り出される短い導波管の長さは、例えば、1mm~10mm、代表的には5mmである。上述の動作を繰り返し、導波管1に設定されている全ての切断予定位置に沿って導波管1が切断されると、切断ステップは終了する。
【0032】
本実施形態に係る導波管の加工方法では、上述のように、導波管1の中空部1aに樹脂3が充填されている。この樹脂3によって導波管1は補強され、変形し難くなっているので、切削ブレード10を導波管1に切り込ませて樹脂3ごと切断すれば、ひび割れや欠け等の不良の原因となる導波管1の撓みや振動を抑制しながら、導波管1を切断できる。
【0033】
切断ステップの後には、切断された短い導波管に充填されている樹脂を取り除く樹脂除去ステップを行う。具体的には、例えば、切断後の導波管の内径a2よりも細い棒状の部材で、この導波管の中空部から樹脂を押し出す。これにより、切断された短い導波管に充填されている樹脂を取り除くことができる。なお、導波管から樹脂を取り除く方法に特段の制限はない。例えば、熱で樹脂を溶融させることによって導波管から樹脂を取り除くこともできる。
【0034】
以上のように、本実施形態に係る導波管の加工方法では、導波管1の中空部1aに樹脂3を充填した後に、回転させた切削ブレード10を切り込ませて導波管1を樹脂3ごと切断するので、中空部1aに充填される樹脂3によって導波管1が変形し難くなり、切削ブレード10を切り込ませる際の導波管1の撓みや振動が抑制される。すなわち、本実施形態に係る導波管の加工方法によれば、導波管1の撓みや振動に起因するひび割れや欠け等の不良も発生し難くなる。
【0035】
なお、本発明は、上述した実施形態の記載に制限されず種々変更して実施可能である。例えば、上述した実施形態では、円筒状の導波管1を加工する場合を例示しているが、角筒状の導波管も同様の方法で加工できる。図3(A)は、角筒状に構成された導波管5の外観を示す斜視図であり、図3(B)は、樹脂充填ステップにおいて角筒状の導波管5に樹脂7が充填される様子を示す斜視図であり、図3(C)は、樹脂7が充填された角筒状の導波管5を示す斜視図である。
【0036】
図3(A)に示すように、変形例に係る導波管5は、角筒状に形成されており、内側に角柱状の中空部(空間)5aを有している。導波管5の肉厚は、この導波管5の全体に亘って概ね均一である。また、導波管5の長さ方向(角筒状の高さ方向に相当する方向)に垂直な方向の断面は、長方形である。
【0037】
導波管5の断面を構成する外側の長方形の第1辺の長さb1は、例えば、3mm~7mm程度、代表的には6mmであり、導波管5の断面を構成する外側の長方形の第2辺の長さc1は、例えば、3mm~7mm程度、代表的には4mmである。
【0038】
また、導波管5の断面を構成する内側の長方形の第1辺の長さb2は、例えば、1mm~5mm程度、代表的には4mmであり、導波管5の断面を構成する内側の長方形の第2辺の長さc2は、例えば、1mm~5mm程度、代表的には2mmである。なお、この導波管5の肉厚は、(長さb1-長さb2)/2、又は(長さc1-長さc2)/2で表される。
【0039】
図3(B)及び図3(C)に示すように、この導波管5に充填される樹脂7は、中空部5aに対応する角柱状に形成されている。すなわち、樹脂7の断面を構成する長方形の第1辺の長さb3は、例えば、1mm~5mm程度、代表的には4mmであり、樹脂7の断面を構成する長方形の第2辺の長さc3は、例えば、1mm~5mm程度、代表的には2mmである。
【0040】
この樹脂7を用いることで、上述した実施形態と同様の手順で角筒状の導波管5を適切に加工できるようになる。もちろん、液状の材料を中空部5aに導入して硬化させる方法で導波管5の中空部5aに樹脂を充填することもできる。なお、角筒状の導波管5を加工する際には、導波管5の位置を規定するような板状の部材を用いなくとも、導波管5の位置はずれ難い。
【0041】
その他、上述した実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0042】
1、5 導波管
1a、5a 中空部
3、7 樹脂
11 粘着テープ
2 切削装置
4 チャックテーブル
6 切削ユニット
8 スピンドル
10 切削ブレード
図1
図2
図3