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特許7166964π線最適化を使用するコンピュータ断層撮影投影の幾何学的整合、被検体動き補正および強度正規化
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】π線最適化を使用するコンピュータ断層撮影投影の幾何学的整合、被検体動き補正および強度正規化
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/046 20180101AFI20221031BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
G01N23/046
A61B6/03 350Z
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019045391
(22)【出願日】2019-03-13
(65)【公開番号】P2019164132
(43)【公開日】2019-09-26
【審査請求日】2021-12-23
(31)【優先権主張番号】15/926,621
(32)【優先日】2018-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501233536
【氏名又は名称】エフ イー アイ カンパニ
【氏名又は名称原語表記】FEI COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー エム.キングストン
(72)【発明者】
【氏名】オラフ デルガード-フリードリヒス
(72)【発明者】
【氏名】グレン アール.マイヤー
(72)【発明者】
【氏名】シェーン ジェイ.ラザム
(72)【発明者】
【氏名】エードリアン ピー.シェパード
(72)【発明者】
【氏名】トロン ケイ.ヴァルスロ
(72)【発明者】
【氏名】ぺテル シュトレレク
【審査官】越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-062159(JP,A)
【文献】特開2009-112627(JP,A)
【文献】特開2007-078469(JP,A)
【文献】特開2005-037193(JP,A)
【文献】特開2007-014783(JP,A)
【文献】特開2004-045212(JP,A)
【文献】特開2007-085835(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00 - G01N 23/2276
A61B 6/00 - A61B 6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の複数の投影であって、前記複数の投影の各投影が軌道に基づいて前記被検体の周囲の異なる位置で取得される、複数の投影を取得することと、
それぞれのπ線に基づいて前記複数の投影から対向する投影対を決定することと、
各対向する投影対についてのそれぞれのπ線データ間の不一致量を決定することであって、前記π線のデータは、少なくとも部分的に、検出器データに基づく、ことと、
各対向する投影対についてのそれぞれのπ線に関連する検出器データの差を最小化することによって各対向する投影対を整合させることであって、各対向する投影対について、対向する投影対の間の検出器データの差が最小化されるまで、対向する投影の1つまたは両方を平行移動させてそのπ線画素を整合させること、ズーミングすることによって投影を変えること、または、正されたスキャン軌道として不整合を表し、前記π線データを前記不整合に応じてシフトさせること、を含む
方法。
【請求項2】
各対向する投影対についての前記それぞれのπ線データ間の不一致量を決定することが、各対向する投影対のそれぞれの投影に関連するπ線検出器データ間の差を決定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
各対向する投影対の両方の投影に関連する前記π線の検出器データが、検出器の画素からのデータまたは前記検出器の2つ以上の隣接する画素から補間されたデータに基づく、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記π線が、同じ経路で前記被検体を通って横切り、かつ各対向する投影対の両方の投影の線源位置を横切る、前記対向する投影対のそれぞれの両方の投影に関連する放射線経路である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記検出器データが、生の強度データである、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記検出器データが、1つ以上の前処理工程を経ている生の強度データである、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記1つ以上の前処理工程が、明視野又は暗視野の補正を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記不一致量が、前記対向する投影対間の不整合、線源強度の変動、またはそれらの組み合わせに起因する、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記軌道が、螺旋および二重螺旋のうちの1つから選択される、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
X線を提供するための線源と、
被検体を通過または被検体の周囲を通過した後のX線を検出するための検出器と、
前記線源および前記検出器を制御するために結合された制御器であって、前記制御器によって実行されたときに、前記制御器に、
被検体の複数の投影であって、前記複数の投影の各投影が軌道に基づいて前記被検体の周囲の異なる位置で取得される、複数の投影を取得させ、
それぞれのπ線に基づいて前記複数の投影から対向する投影対を決定させ、かつ
各対向する投影対についてのそれぞれのπ線データ間の不一致量を決定させ、前記π線のデータは、少なくとも部分的に、検出器データに基づき、
各対向する投影対についてのそれぞれのπ線に関連する検出器データの差を最小化することによって各対向する投影対を整合させ、各対向する投影対について、対向する投影対の間の検出器データの差が最小化されるまで、対向する投影の1つまたは両方を平行移動させてそのπ線画素を整合させるコード、ズーミングすることによって投影を変えるコード、または、正されたスキャン軌道として不整合を表し、前記π線データを前記不整合に応じてシフトさせるコードをさらに含む制御器と、を備える、コンピュータ断層撮影システム。
【請求項11】
前記制御器に、各対向する投影対に対する前記それぞれのπ線データ間の不一致量を決定させる前記コードが、実行されたときに、前記制御器に、各対向する投影対の各投影に関連するπ線検出器データ間の差を決定させるコードをさらに含む、請求項10に記載のコンピュータ断層撮影システム。
【請求項12】
各対向する投影対の両方の投影に関連する前記π線の検出器データが、前記検出器の画素からのデータまたは前記検出器の2つ以上の隣接する画素から補間されたデータに基づく、請求項10又は11に記載のコンピュータ断層撮影システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、コンピュータ断層撮影、より具体的には、コンピュータ断層撮影で幾何学的整合、被検体の動き補正および強度の正規化を得るためにπ線一貫性を最適化することを対象とする。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ断層撮影(CT)は、被検体を検査するためのX線および電子ビームなどの様々な物質を使用して、被検体の内部構造のデータを得る。CTベースのシステムは、従来、被検体、X線源および検出器を互いに動かし(例えば、回転させ)て、被検体周りの多くの角度でデータを得る。次いで、スキャンデータは、被検体内の領域の再構成を得るためにアルゴリズムで操作することができる。再構成の分解能は、線源、被検体および検出器などの様々な構成要素間の距離に影響され得る。例えば、線源と被検体との間の大きな距離は、従来は、コーン・ビームCT配置で得られたデータの分解能を低下させる。加えて、再構成の質は、スキャン中に生じるシステム構成要素の時間に依存する変化によって影響され得る。例えば、被検体および/または線源-検出器の移動は、正確に予測通りではなく、不整合が生じ得る。さらに、時間で変わる線源強度はまた、得られたデータに影響を及ぼし得る。
【0003】
不整合は、再構成の質に影響を及ぼし得る。そのような時間に依存する不整合および線源強度変化を緩和するために多くの試みが実施されてきたが、これらの試みは高い計算オーバーヘッドまたは極めて正確な機構を必要とする。このため、そのような時間に依存する不整合および線源強度変化に対処する従来の解決策に勝る方法が望まれる。より一般的には、本方法は、ゼロでない反対の放射線差の値に現れるはずの理想的な実験結果からのいずれの形態の偏差の取得後推定にも適用することができる。
【発明の概要】
【0004】
本明細書では、π線最適化を使用するコンピュータ断層撮影投影の幾何学的整合、被検体の動き補正および強度の正規化のための方法および装置が開示される。例示的な方法は、被検体の複数の投影であって、そのそれぞれが軌道に基づいて被検体周りの異なる位置で取得される複数の投影を取得することと、それぞれのπ線に基づいて複数の投影から対向する投影対を決定することと、各対向する投影対についてのそれぞれのπ線データ間の不一致量を決定することとを、少なくとも含み、当該π線データは、少なくとも部分的に、測定された強度データに基づく。
【0005】
CTシステムは、X線を提供する線源と、被検体を通過した後のX線を検出する検出器と、線源および検出器を制御するために結合された制御器とを備え、当該制御器は、制御器によって実行された場合、制御器に、被検体の複数の投影であって、そのそれぞれが軌道に基づいて被検体周りの異なる位置で取得される複数の投影を取得させ、それぞれのπ線に基づいて当該複数の投影から対向する投影対を決定させ、かつ、各対向する投影対についてのそれぞれのπ線データ間の不一致量を決定させるコードを、さらに備え、当該π線データは、少なくとも部分的に、減衰データに基づく。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本開示の実施形態によるCTシステムの例示的概略図である。
図2A】本開示の実施形態によるCTスキャンの例である。
図2B】本開示の実施形態によるCTスキャンの例である。
図3A】本開示の実施形態によるCTスキャン投影の例示的平面図である。
図3B】本開示の実施形態によるCTスキャン投影の例示的平面図である。
図3C】本開示の実施形態によるCTスキャン投影の例示的平面図である。
図3D】本開示の実施形態によるCTスキャン投影の例示的平面図である。
図4】本開示の実施形態による2つのπ線投影の例示的組み合わせである。
図5A】本開示の実施形態による1対の投影を例示する。
図5B】本開示の実施形態による1対の投影を例示する。
図5C】本開示の実施形態による1対の投影を例示する。
図6】本明細書に開示された実施形態によるπ線に基づいたCTスキャンの投影を整合させる例示的な方法である。
図7】本開示の実施形態によるCTシステムの一機能ブロックダイヤグラムの例である。
【0007】
同じ参照番号は、図面のいくつかの図全体にわたって、対応する部分を指す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施形態は、マイクロメートルスケールまたはナノメートルスケールの小さな物体(いずれの形状でもよいが、しばしば、円筒形状である)に対する円形または螺旋形のスキャン軌道を使用するコンピュータ断層撮影のための断層画像撮像装置に関連して以下に説明される。いくつかの実施形態では、π線を、システムの時間に依存する不整合および他の経時変化を補正するために使用して、もう少しで互いに対向する投影対などの投影を整合させることができ、また、静的な不整合を補正するための技法と組み合わせてもよい。そのような時間に依存する不整合、および不一致な線源輝度などの他の経時変化は、一般に、対向する投影に関連するデータの不一致と呼ばれることがある。しかしながら、本明細書に記載の方法は一般に、コーンビームシステムおよびパラレルビームシステムの両方を含む広範囲の異なる断層撮影の方法および装置に適用可能であり、特定の装置タイプ、ビームタイプ、対象物タイプ、長さスケール、またはスキャン軌道に限定されないことを理解すべきである。
【0009】
本出願および特許請求の範囲において使用されるように、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数形も含む。加えて、用語「含む(includes)」は、「含む(comprises)」の意味である。さらに、用語「結合された」は、結合されたアイテム間の中間要素の存在を排除するものではない。
【0010】
本明細書に記載のシステム、装置、および方法は多少なりとも制限的なものとして解釈されるべきではない。むしろ、本開示は、単独で、ならびに種々の互いの組み合わせおよび部分的な組み合わせで、種々の開示された実施形態の全ての新規性および非自明性を有する特徴および態様を対象とする。開示されたシステム、方法、および装置は、任意の特定の態様または特徴またはそれらの組み合わせに限定されず、開示されたシステム、方法および装置は、任意の1つ以上の特定の利点が存在する、または問題が解決されることも必要としない。いずれの動作理論も説明を容易にするためであるが、開示されたシステム、方法、および装置は、そのような動作理論に限定されない。
【0011】
開示された方法のいくつかの動作は、便宜上、特定の順番で記載されているが、以下に記載される具体的な言葉によって特定の順序が要求されない限り、この説明方法が並び替えを包含することを理解されるものとする。例えば、順に記載される動作は、いくつかの場合では、並び替えまたは同時に実行されてもよい。さらに、単純化のために、添付の図面は、開示されたシステム、方法、および装置が、他のシステム、方法、および装置と共に使用することができる様々な方法を示さないことがある。加えて、説明は、開示された方法を説明するために、「生成する」および「提供する」等の用語を使用することがある。これらの用語は、実行される実際の操作の高レベルの抽象化である。これらの用語に対応する実際の動作は、特定の実施に応じて、様々であり、当業者には容易に認識できる。
【0012】
いくつかの例では、値、手順、または装置は、「最低」、「最良」、「最小」などと呼ばれる。そのような記載は、多くの使用されている機能的選択肢の中からの選択が可能であり、そのような選択が他の選択よりも優れている、より小さい、または他の選択肢である必要はないことを示すことを意図していることが理解されよう。加えて、選択された値は、数値的または他の近似的手段によって得られてもよく、理論的に正しい/値に対する近似値にすぎなくてもよい。
【0013】
ミクロンおよび/またはナノメートルスケールでデータを取得するために使用され得る実験室ベースのCTシステムは、様々な被検体を画像化するために使用される。被検体は、生物学的なもの、鉱物、結晶などであり得、結果として生じる画像は、内部構造の再構成であり得る。一般に、CTシステムは、間に被検体が配置されたX線源および検出器を備える。CT源は、広角円錐体全体にわたって均等に放射線を放出することができ(広角円錐体型CTはコーン・ビーム断層撮影法と呼ばれることがある)、そのようなコーン・ビーム断層撮影法の効率は被検体に入射するコーン角が大きくなるにつれて増大する。これは、線源と被検体との間の小さな距離を用いて得られ得る。述べたように、これらのCTシステムは、線源および検出器に対して被検体を動かすか、または被検体に対して線源および検出器を同時に動かす。いくつかの実施形態では、線源および検出器に対する被検体の相対移動は、被検体または線源-検出器対のいずれかの回転を含み得る。例えば、被検体は、線源と検出器との間の空間の軸上で回転、すなわちスピンさせることができる。CTシステムは、スキャン中に時間に依存する不整合、および/または投影から投影への様々な構成要素の機能の不一致を経験することがあり、これは、例えば、再構成の質を不必要に劣化させ得る。
【0014】
ある範囲の影響が、X線源点、被検体、および検出器の望まれない相対運動を引き起こし、その結果、断層撮影装置の不整合が生じる可能性がある。CTシステムのいくつかの構成要素は、データ取得中に変動して(例えば、X線源点のドリフト、電動位置決めステージの不正確さ、および構成要素の熱膨張)、いくつかの例を提供することがあり、このことは、不整合誤差をもたらす。加えて、線源強度および/または線源のスペクトル組成での時間的または空間的変動もまた、不一致なデータを生じさせることがある。不一致なデータは、通常、例えば、再構成された画像のグレー値に人為的な空間的変動を導入することによって、画質を低下させる。整合の問題と不一致なデータの問題の両方が、CTシステムの画像および再構成を劣化させ得る。本明細書で使用される場合、不一致は、不整合、不一致なデータ、またはその両方を説明するために使用されることがあり、本明細書で開示される技法は、それら自体または組み合わせて、両方に関する問題に対処する。
【0015】
電動位置決めに関連する誤差は、場合によっては深刻な問題を引き起こす可能性がある。標準的な機械的ステージは、マイクロおよびナノCTシステムに要求される完全な三次元位置決め精度を提供することができない場合がある。高負荷で大きな移動距離を可能にするステージを有することが従来から望ましい。しかしながら、そのようなステージは十分に正確ではないことがあり、そして反復可能なおよび反復不可能な運動誤差(例えば、バックラッシュ)を示すことがある。したがって、マイクロCT画像再構成における不整合を補正することは、通常、不可欠である。本開示は、最小の仮定に基づき、比較的小さい計算オーバーヘッドで、静的誤差と時間に依存する誤差の両方を識別し補正するための技法を説明する。以前の技法と比較して、開示された手法は、特に空間充填軌道などの等方性の高いスキャン軌道から取得されたデータに適用されたときに、著しくより頑強で効率的になり、このことは、等方性の高い軌道ほど可能な位置および角度の空間により広く分布されるπ線を有するためであり得る。
【0016】
加えて、線源強度および/または線源のスペクトル組成の時間的または空間的変動による矛盾するデータに関連する誤差は、再構成の形成に問題を引き起こすことがある。例えば、光源強度および/またはスペクトル組成の差は、例えば、異なる減衰データをもたらすことがあり、対向する投影間の整合性が悪くなることがある。
【0017】
スキャン軌道は、円形、螺旋形、二重螺旋形、または空間充填のいずれであっても、線源点が被検体のほぼ反対側にある複数の投影対を有する傾向がある。従来、スキャン軌道は、被検体の基準フレーム内の座標系によって定義することができ、その場合、軌道は座標系内の点光源の動きによって定義される。正しく整合されたデータは、より高品質の再構成画像に導き得る。この改善は、例えば、実際のまたは推定されたスキャン軌道の対称性の向上、被検体全体にわたるかまたはより多くの数の視野角からの倍率変動の低下に寄与し得る。しかしながら、反対方向に整合された投影が、例えば、上述のような静的および/または時間に依存した不整合のために、軌道のモデルに基づいて推測/所望された位置にない場合は、その結果得られる再構成の質は、ゴースト端、像ぶれのスミアリング/ストリーキング、「二重端」などの望ましい質よりも劣ることがある。これらの不整合は、ボクセルのサイズおよび相対的な不整合が同様のスケールであるため、マイクロCTおよびナノCTにとってより重大な結果になる傾向がある。ソフトウェアベースの整合後データ取得(「事後」)およびデータ取得前のシステムの物理的整合などの様々な整合技法が長年にわたって開発されてきたが、そのような既知の技法は不完全な補正を提供するか、または長い時間および/または大きなキャッシュオーバーヘッドを必要とする。このため、計算集約度の低い整合技法が望まれる。
【0018】
1つの解決策は、再構成プロセスの前に、同じ経路で被検体を通って横切るがそれぞれ反対方向に横切り、それによって冗長な情報を提供する、放射線の対を利用して断層撮影装置の時間に依存する不整合を測定し、補正する高精度の事後技法を含む。本明細書で使用されるとき、「放射線(ray)」および「放射線(rays)」は、線源から検出器までの経路に沿って被検体を横切る媒体(例えば、X線または電子)を含む。各放射線は、検出器上のピクセルに衝突することができ、関連する放射線の強度レベルが記録される。強度レベルは、放射線が被検体を通って横切りながら受けた減衰の量、または被検体の位相特性による屈折/回折の量を示している。検出器を横切って記録された強度レベルは、次いで、二次元投影画像に寄与することができるか、またはそれを提供することができる。被検体を通過する各放射線の測定強度は、同等であるが妨げられていない放射線、例えば被検体を取り除いて取得された「明視野」投影からの強度値と比較することができ、この比較は、放射線の減衰または放射線の位相変化に関連する指標を提供する。同じ経路を横切る対向する放射線は、π線と呼ばれることがあり、各π線は、被検体を通る経路でだけでなく、1対または複数対の投影の各投影の線源位置を横切ることになる。π線を定義する別の方法は、同じ経路で被検体を通って横切る2つの対向する投影の線源と対向する投影のそれぞれの線源位置との間の直線であろう。加えて、対応する放射線の検出器データは、被検体から同じ減衰を受けるために等しくなるはずである。
【0019】
この技法は、システムの整合を達成し、電動被検体位置決めの誤差を補正し、そして線源束の経時変動、例えば、X線束の変動を補償することができる。なぜなら、これらの要因の各々が2つの検出器のデータ点を不均等にするからである。上記を達成するために、モデル化されたスキャン軌道または実際のスキャン軌道のどちらかを制御するパラメータは、識別された各π線に対応する一対のデータ点の間で最大の一貫性を達成するように変えられる。運動誤差を補償するために、線源点または検出器位置を投影ごとにシフトすることができ、一方、線束の変動は投影ごとに画像強度を変えることによって補償することができる。本明細書で論じられるπ線技法は、他の技術と比較して、より計算効率がよく、単一のプロセスで強度の変動と共に静的および時間に依存する不整合を解決することができる。この技法の変形例は、エピポーラ整合性条件と組み合わせることによって、または投影の冗長サブセットが一次データ取得の前または後に取得される、別個の「基準スキャン」の使用によって、不十分なπ線を有する不完全なスキャン軌道に潜在的に適用できる。さらに、この方法は、不整合または変動を補正するための他の既存の技法と組み合わせてもよく、その際、これらの方法は順次(一方の方法が他方の推定値を精緻化する)、一緒に、または、各方法が異なる態様を補正できるようにすることによって、組み合わせられている。
【0020】
また、この技法は、低い計算オーバーヘッドを得るために、生の収集されたデータを使用して、任意の不整合および/または不一致が存在するかどうかを決定することができ、かつ、必要に応じて、不整合/不一致を補正することができる。いくつかの実施形態では、生データは、未処理の検出器データ、または明視野または暗視野に対するなどの、わずかに補正された検出器データであり得る。π線を決定し、関連するπ線の生データを比較することができる。一般に、π線は実(連続)空間で計算することができ、検出器上の特定のピクセルと完全に一致しないことがある。この場合、検出器画素値のいくらかの補間が必要となるであろう。不整合/不一致が存在しない場合は、各π線に対応する2つのデータ点(「π線データ」)は、両方の放射線が方向に無関係に同じ経路で被検体を通って横切り、その結果、同じ減衰が生じるので、同一であるべきである。しかしながら、対向する投影間に不整合/不一致がある場合は、π線データは異なり得る。不整合および/または不一致を補正するために、各π線対の投影に対する対向する対を成す投影の一方または両方を平行移動、回転またはズーミングして差を最小にすることができる。代替的に、実際のまたはモデル化されたスキャン軌道は、例えば、スキャン中に得られた各投影に対応する線源点をシフトすることによって、不整合/不一致を表すように補正してもよい。いくつかの実施形態では、各スキャンは、多数のπ線対の投影をもたらすことができ、不整合は、各π線対について同時にまたは反復して補正することができる。一般的に、検出器でのこの補間の結果としてと、サブボクセルの精度に対する最小値を識別する最適化法を使用して計算された目的関数を補間することが可能であることとの両方によって、サブピクセル(またはサブボクセル)精度を得ることができることを認識すべきである。
【0021】
本明細書における議論は主に被検体の完全なスキャンを含むが、本開示はそのように限定されるとみなされるべきではない。本開示は、視野が被検体のほんの一部である関心領域(ROI)のスキャンにも適用可能であることに留意すべきである。ROIスキャニングでは、強度補正は、強度変動を推定するために明視野値と比較することができる減衰されていない放射線がないので、特に有用である。この場合、「被検体」という単語が使用されている場合は、「被検体内の関心サブ体積」に置き換える必要がある。
【0022】
図1は、本開示の一実施形態によるCTシステム100の例示的概略図である。CTシステム100は、被検体の投影を取得し、それに応じてCT画像および/または再構成を提供する、ために使用することができる。CTシステム100は、線源102、ステージ108、および検出器106を少なくとも含むことができる。いくつかの実施形態では、線源102、ステージ108、および検出器106は、それらの動作を制御し、少なくとも検出器106からのデータを受け取る制御電子機器(図示せず)に結合されてよい。CTシステム100は、被検体104の投影(例えば、X線減衰データ)を取得することができ、その後、このデータを使用して、被検体104の所望の領域および/または体積の再構成を取得することができる。いくつかの実施形態では、π線を使用して、CTシステム100の時間に依存する不整合および/または線源の変動を補正することができる。一般に、用語「不一致(inconsistensy)」、「不一致(inconsistensies)」、および「不一致なデータ」は、本明細書では、光源強度およびスペクトル組成を含む、時間依存的な位置ずれおよび時間依存的な光源変動の両方を集合的に指すために使用され得る。しかしながら、そのような用語は、1つまたは他のタイプの時間に依存する問題を指すこともある。不一致の補正は、事後的に、しかし再構成プロセスの前に実行されてよい。いくつかの実施形態では、補正は、不一致を補正するために生のまたはわずかに補正された投影データを使用することができる。従来、スキャンデータは、欠陥画素、非線形な検出器応答、ビームハードニング、暗視野、明視野および/または線形化を補正するために様々な前処理工程を経ることがある。このため、本明細書に開示されるπ線ベースの補正、例えばπ線差最小化は、データが画像再構成のために渡される前に、取得されたデータの前処理内の任意の段階で行われ得る。
【0023】
線源102は、高い円錐角で線源102から外向きに照射する円錐形のX線110を供給することができる。本明細書で使用されるとき、「高円錐角」は、線源102に対する法線から参照される角度を定義する。この定義に基づくと、円錐角が低いと法線から参照された角度が小さくなるはずである。一般に、高い円錐角はより大きな円錐を画定し、低い円錐角はより小さな円錐を画定する。加えて、任意の投影を得るために使用される円錐角は、線源102、被検体104、および検出器106の間の相対距離によって影響を受ける可能性がある。これらの相対距離は、一般に、スキャンの解像度、さらには視野(FOV)に影響を及ぼし得る。述べたように、一般に、これらの距離が小さいほど、被検体104を通過して検出器106に入射するX線束が増加するため、より高い分解能のスキャンを得ることができる。
【0024】
検出器106は、被検体104を透過したX線を受光するように配置することができる。検出器106は、X線が照射されると可視光を発生するシンチレータと、シンチレータの背後に取り付けられシンチレータによって発生されたシンチレーションの空間的配置の二次元画像を表す画像データを発生するCCDまたはアモルファスシリコンフラットパネルセンサとを含む。その結果、対象を透過したX線についての二次元画像またはX線強度のマップが得られる。結果として生じるマップまたはX線強度は、例えば、投影と呼ばれることがある。理解されるように、これらの画像の各々は、被検体104を透過して検出器106に送られるX線の方向に沿って投影されたときの、被検体104の外部構造および内部構造の両方の特徴を示す。
【0025】
ステージ108は被検体104を支持する。いくつかの実施形態では、ステージ108は、時計回り、反時計回り、またはその両方(図1に示すθ)のいずれかで回転することができ、さらに、図1に示すように、Z方向に示すような上下の平行移動をすることができる。しかしながら、いくつかの実施形態では、ステージ108は、線源102および検出器106が同時に被検体の周りを回転し、また、+/-Z方向に平行移動する間、固定されたままでもよい。被検体104と線源103/検出器106対との相対移動は、投影(例えば、画像データ)を取得するときに使用される軌道を画定することができる。いくつかの実施形態では、軌跡は二次元であり得るが、他の実施形態では、軌跡は三次元であり得る。例えば、2D軌道は、同一平面内での被検体104の周りの円軌道(例えば、部分的または全体的な回転)を含むことができ、3D軌道は、被検体104の周りに実行される螺旋軌道または二重螺旋軌道を含むことができる。空間充填(SF)軌道もまた、被検体104の投影を得るために使用することができ、3D軌道と考えることができる。SF軌道は、被検体104の表面の周りに配置された収集点の配列を形成することができ、これについては以下でさらに詳細に説明する。
【0026】
所望の角度(例えば、被検体104の周りの視点)からの被検体104の投影を得るために、CTシステム100によって軌道が実行される。軌道は、どの構成要素が実際に動いているかにかかわらず、線源102および検出器106が被検体104の周囲を通る経路および/または収集場所として定義することができる。CTシステム100は、所望の軌道に沿って移動しながら、連続的、半連続的、または周期的を含む様々な速度で画像を撮ることができる。次いで、画像を組み合わせ/操作して、任意の所望の平面に沿って被検体104のスライスの再構成を得ることができる。
【0027】
投影は、X線110による被検体104のX線画像である。X線110は線源102から放射され、被検体104を透過して検出器106に衝突する。X線110は、例えば、扇型形状または円錐型形状で放射することができる。個々のX線110は、被検体104を横切る各X線110が検出器106の異なる画素または検出器106上の隙間位置に衝突するように、線源102から検出器106まで異なる経路または線路を通る。ここで、隙間位置は、2つ以上の画素間に生じる。検出器データ(例えば、生の強度データ)は、次いで、被検体104によるX線の減衰のため、または被検体の位相の性質のために、検出器106上で被検体104の影となることができる。このため、検出器データは、各X線または放射線によって被検体104の減衰情報を提供することができる。被検体104の反対側から撮られる投影の場合、互いに整合し、かつ線源102と整合するX線(例えば、放射線)が存在し得る。互いに一直線に整合する放射線は、同じ経路だが反対方向に被検体を通って横切ってもよい。上述のように、これらのタイプのX線は、互いに180°離れている(例えば、πラジアンの角度で離れている)ので、π線と呼ばれる。π線は、同じ線路で被検体を通って横切ると同時に、述べたように、両側で線源と整合する。CTシステム100は、投影を実行するときに、軌道をモデル化し、そのモデルに基づいてどの投影が対向すべきかを決定し、さらに検出器106のどの画素がπ線減衰データを含むはずかを決定することができる。いくつかの実施形態では、π線は、単一の画素に衝突しなくてもよいが、画素間(例えば、隙間位置)で検出器106が受光することができる。そのような実施形態では、衝突点の近傍にある画素の画素データを、補間または平均化してπ線画素データを提供することができる。
【0028】
π線が同じ経路または線路で被検体を通って横切ることで、それらのπ線は同一の投影データ(例えば、画素データまたは減衰データ)を有するべきである。しかしながら、π線に関連する画素データが異なる(例えば、同一ではない)場合、投影(例えば、π線投影)は互いにずれている可能性があると判断され得る。この不整合は、例えば、線源102のドリフト、不一致なステージ108の移動、不一致な検出器106の移動などの、CTシステム構成要素の時間に依存する動きのせいである、あるいは、さらに幾何学的誤差または線源102の強度/スペクトル成分の補正されていないシフトのせいである可能性がある。加えて、対向する投影が、不整合および/または線源の不一致のせいで不一致である場合、データからの再構成は損なわれるか、または不可能である可能性がある。一般に、CT再構成は、完全またはほぼ完全な幾何学的モデルに依存することがあり、動きに不完全さ(例えば、不整合、または線源の不一致)がある場合、CTデータは本質的に不一致なものとなり得、信頼できる再構成を生成するのは困難または不可能であり得る。例えば、2~3例を挙げると、不一致な対向する投影からの再構成は、ぼけ、スミアリング/ストリーキング、および「ダブルエッジ」の形で劣化する可能性がある。π線は、不整合/不一致を補正し、投影および再構成からの劣化を緩和するか、または取り除くために使用することができる。例えば、CTシステム100が、一対の対向する投影からのπ線が異なると判断した場合、システム100は、この一対の対向する投影の一方または両方の投影をシフトしてπ線データの差を最小にすることができる。いくつかの実施形態では、軌道モデルは、不整合をなくすように調整することができる。例えば、軌道モデルをパラメータ化して、いずれの時間に依存する不一致/不整合もなしに投影がどこで得られたはずかを明らかにし、次いで、このモデルをπ線の不一致/不整合および関連する最小化に基づいてシフトすることができる。他の実施形態では、対向する投影をシフト、回転、またはズーミングしてπ線を整合させることができる。どちらの場合も、不整合を補正することは、一般に、各π線の端部に検出器106の異なる画素を配置し、よって、比較される値、したがって全体のπ線の一貫性が変化する。
【0029】
一般に、各投影は、通常、線源点が被検体のやや反対側にある他の多数の投影と対になる。一方の投影の線源位置は他方の投影の視野内にあるので、十分に対向する一対の投影は、共通だが対向する1つの放射線経路(例えば、π線)を含む。いくつかの例では、対向する投影対のそれぞれに対して、少なくともそれらの2つの投影を整合させるために使用することができる1つのπ線だけが存在することができる。軌道のモデルに基づくπ線に関連する生またはほぼ生の画素データは、いくつかの仮定を使用して投影を整合させるために使用することができる。一般的に、開示された技術は、特に、既知の方法との比較によって、いくつかの仮定を使用して、生またはほぼ生の画素データから不整合を決定することができる。また、整合は投影ごとに調整できるため、投影間で発生する可能性のある時間に依存する不整合を補正しまたは取り除くことができる。さらに、他のいくつかの方法に必要な試行的再構成は、生またはほぼ生の投影データが補正に使用されるので、不整合を補正するために必要とされないことがある。π線ベースの整合は任意の種類の軌道に適用可能であるが、いくつかの軌道は他の軌道よりもより容易にまたは効果的に補正することができる。例えば、SF軌道は螺旋軌道よりも容易にまたは効果的に補正することができ、これはSF軌道の面積レイアウトおよび対応するπ線方向および位置の広い分布に起因し得る。
【0030】
図2Aおよび図2Bは、それぞれ、本開示の実施形態によるCTスキャン201および203の一例である。CTスキャン201および203スキャン(または略してスキャン)は、例えば、システム100によって実行することができ、異なるスキャン軌道に基づいて被検体204の投影を得るために実行される。例えば、スキャン201は、被検体204の投影を得るためにスキャン軌道214Aを使用し、一方、スキャン203は、被検体204の投影を取得するためにスキャン軌道214Bおよび/または214Cを使用する。3つの異なるスキャン軌道のみが開示されているが、任意の所与のCTスキャンによって実施されるスキャン軌道は本開示の限定的な態様ではなく、すべての可能なスキャン軌道が本明細書で企図される。スキャンの図は縮尺通りではなく、スキャン点間またはスキャン線間のすべての距離が本明細書で企図されることに留意されたい。スキャン201および203で得られた投影データは、例えば、被検体204の断層像および再構成を形成するために使用することができ、CTスキャン201および203によって得られた対向する投影は、関連するπ線を使用して不整合を補正するために使用することができる。一般的に、各投影は、それらが共通だが対向する放射線経路を有する(例えば、それらは1つのπ線を介してリンクされる)という意味で多数の他の投影に対して「対向」するので、多数の対向する投影が存在することができることに留意すべきである。放射線が完全なオポジション(すなわち、180度離れた「π」ラジアン)にある間は、対向する投影は、一方の線源点が他方の視野内にあるように十分に対向している必要があるだけであることにも留意すべきである。いくつかの実施形態では、決定された対向する投影は、実施された軌道のモデルに基づくことができる。
【0031】
スキャン軌道214Aは、螺旋または二重螺旋のスキャン軌道でよく、スキャン201によって実施される。スキャン軌道214Aは、線源102と検出器106などの線源と検出器の対に対して被検体204を垂直方向に回転させかつ平行移動させることができる。例えば、被検体204は、Z方向(例えば、垂直方向)に回転および平行移動を提供するステージ上に載置されてもよい。いくつかの実施形態では、線源および検出器はまた、線源が回転している間に、ときどき、動的に動かされてもよい。他の実施形態では、線源および検出器は静止していてよい。θ(例えば、回転)方向およびZ方向の両方における移動は、連続的、半連続的、または周期的に実行されてよく、投影データも同様に取得されてよい。スキャン軌道214Aは、螺旋経路で被検体204を一周する線に沿って得られた投影データをもたらすことができ、これは、被検体が静止している座標フレーム内の線源軌道と呼ばれることがある。このため、スキャン軌道214Aの経路に沿って被検体204の周囲に複数の対向する投影が得られ、対向する投影の各対は関連するπ線を有することになる。次に、これらのπ線を使用して、例えば、被検体204、線源および検出器の相対運動の不正確さによる対向する投影間の不整合を、対向する投影対それぞれのπ線データの一貫性を最適化することによって補正することができる。π線データの不一致は、一貫性の量の正確な評価ではないことがあるが、π線の一貫性の最適化は不整合を低減または取り除くことができ、これは、被検体204の改善された画像をもたらすことができる。他の実施形態では、個々のπ線の一貫性が明示的に使用されなくてもよいが、代わりに、複数の対向する投影からの全π線の平均の一貫性が、十分に滑らかな関数(例えば、全π線にわたって平均された不整合)を提供することができ、これは、すべての投影に関連する不整合を同時に補正するために最適化することができる。別の実施形態では、各投影は、その投影に関連する複数のπ線の一貫性を最大にすることによって別々に整合(補正)されてよく、この整合は、すべての投影にわたって反復し、その後、何度も繰り返すことによって改善される。次いで、不整合は、π線を整合させること(例えば、対向する投影の1つまたは両方を平行移動させてそのπ線画素を整合させること)、ズーミング(すなわち、倍率を変更すること)によって投影を変えること、または、不整合を、π線画素(π線画素データ)をそれに応じてシフトさせることもできる修正されたスキャン軌道として表すことのいずれかによって、低減させるかまたは取り除くことができる。いくつかの実施形態では、スキャン軌道の推定値は、不整合および/または不一致をなくすために修正することができる。
【0032】
スキャン203は、スキャン軌道214Bまたは214Cのいずれかに基づいて取得することができ、両方とも空間充填タイプのスキャン軌道の一例である。スキャン軌道214Bおよび214Cは、被検体204の周りに間隔を置いて配置されたドットの配列として図示されている。ドットは投影が得られる位置を表す。2つのスキャン軌道214Bおよび214Cは互いの変形形態であり、必ずしも異なっている必要はない。例えば、スキャン軌道214Cは、214Bのゆがんだバージョンとして特徴付けられてもよい。もちろん、アレイの他の特徴付けおよびレイアウトも可能であり、本明細書で企図されている。スキャン軌道214Bおよび214Cは、それらが図示されたアレイを形成し、かつ、軌道214Aなどの被検体204の周りの連続線に沿ってではなく被検体204の表面領域にわたって投影を得るので、空間充填軌道と呼ぶことができる。対向する投影対に関して、スキャン軌道214Bおよび214Cは、スキャン軌道の面積レイアウトのために、より多数の対向する投影をもたらすことができる。このため、スキャン軌道214Aを使用して得られるものよりも多数の、少なくとも1本のπ線を有する対向する投影対が存在する可能性があり、これは、非常に多くの投影に関するものよりもより均一な(例えば、より等方性である)π線の分布のせいである可能性がある。
【0033】
図3Aおよび図3Bは、それぞれ、本開示の一実施形態によるCTスキャン投影305および307の例示的な平面図である。CTスキャン投影305および307は、例えば単一のCTスキャン中にシステム100によって取得することができる。投影305および307は、例えば、螺旋状、二重螺旋状、およびSFなどの図2で論じたスキャン軌道のうちのいずれかを使用して得ることができる。しかしながら、投影305および307を得るために任意のスキャン軌道を実施することができる。CTスキャン投影305および307は両方とも、線源302から被検体304を横切り、検出器306に衝突するX線110A、110Bを使用して被検体304から得ることができる。X線110A、110Bは、平行、円錐形、または扇形であってよく、これはいくつかの実施形態では検出器の配置に依存することがある。被検体に入射するX線の形状は、本開示の限定されない態様である。CTスキャン305および307の個々のX線は、個々の経路またはトレースに沿って、線源302から被検体304を通って伝播し、検出器306に衝突することができる。
【0034】
投影305および307は、被検体304の反対側から得ることができ、例えば、それらは、対向する投影のそれぞれについて関連するπ線およびπ線データを有する対向する投影であってよく、これらは、π線投影と呼ばれてもよい。システム100は、実施されたスキャン軌道のモデル(例えば空間充填タイプまたは線形タイプの軌道)に基づいて、投影305および307がπ線投影(対向する投影)であること(例えば、同じ経路で被検体304を通って横切り、他方の投影の光源302の位置の仮想空間を通過する、各投影からの少なくとも1つの放射線が存在すること)を判断することができる。しかしながら、ステージ、線源、または検出器の不正確な移動のために、図3Cに示されるように、π線投影は不整合になる可能性がある。例示する目的のみのために、投影305からの中央のX線トレース312Aおよび投影307からのX線トレース312Bは予想されるπ線であってよい。図3Cに示されるように、2つのX線トレース312Aおよび312Bによって示されるように、組み合わされた投影309は、同じ経路で被検体304を通って横切らず、他方の投影の線源302にも入射しない。オフセットの量は、回転のオフセットによるものであり得、説明のために誇張されている。
【0035】
不整合に加えて、関連するπ線データは、線源の変動/強度および/またはスペクトル組成の不一致のせいで不一致であり得る。この不一致は不整合として現れないことがあるが、不一致はπ線画素データに差を生じさせる可能性があり、これも開示された技術により補正することができる。
【0036】
2つの投影305および307の整合の後、図3Dの組み合わされた投影311によって示されるように、π線312Aおよび312Bは整合される。2つの投影は、投影305および307の一方または両方を平行移動、回転またはズーミングすることによって、またはモデル化スキャン軌道を修正することによって(例えば、線源位置をシフトすることによって)整合させることができる。整合の量は、不整合の量および/またはπ線データ間の不一致の量によって決定することができ、これは実施される補正手段にも影響を及ぼし得る。不整合が大きい場合(例えば、5つの検出器ピクセルより大きい誤差の場合)、整合は、線源位置および投影をシフトすることによって補正することができる。線源と検出器の両方の移動は、「モデル化されたスキャン軌道の修正」と呼ばれることがある。図3Dに示すように、右側の検出器306は、投影も正確に線源位置ではなくシフトされていたことを示すために点線の輪郭で描かれている。不整合の量が少ない(例えば、約5画素未満である)場合、整合は投影のみをシフトすること(例えば、検出器シフト)によって補正することができる。
【0037】
図4は、本開示の実施形態による、2つのπ線投影の例示的な組み合わせ413である。組み合わせ413は、所望のスキャン軌道を実施するCTスキャン中に得られた一対のπ線投影を含む。いくつかの実施形態では、スキャン軌道は、回転およびZ平行移動を含む螺旋状または二重螺旋状の軌道でよい。このため、一対のπ線投影を、被検体404を参照して異なる高さ位置から、得ることができる。もちろん、他のスキャン軌道も実施することができる。2つの投影の高さは異なっていてもよいが、それでも、π線412などの関連するπ線が存在することができる。しかしながら、2つの投影は異なるZ位置で得られるので、投影データは完全に重ならないことがあるが、少なくともπ線412データを共有することができ、これはまた、線源点が正確に180°離れていない任意のπ線投影対にとっても一般に当てはまる。もちろん、被検体404の追加の特徴が両方の投影からの投影データに含まれてもよい。
【0038】
第1の投影はX線410Aを含み、対向する投影はX線410Bを含むことができる。図4に示すように、π線412は、同じ経路で被検体を通って横切り、各投影にたいして線源位置を通過する。CTシステムは、実施された軌道のモデルに基づいて、検出器406のどの画素または画素の近傍が各投影のπ線データに関連付けられているかを知るであろう。投影が整合している場合、X線は同じ経路で被検体404を通って横切り、それによって同じ減衰を受けるので、画素の投影データは等しくなるべきである。しかしながら、投影が不整合な場合、画素データは異なり、不整合を示す。
【0039】
次いで、CTシステムは、画素データの差を最小化するまたは取り除くために、少なくとも1つの投影を、どのように平行移動、回転および/またはズーミングするかを決定し、それによって2つの投影を整合させることができる。あるいは、このシステムは、モデル化された線源軌道における摂動を可能にすることができる。
【0040】
図5A図5Cは、本開示の実施形態による、一対の投影515および517を示す。図5Aおよび図5Bに示すように、投影515および517は、単一のCTスキャンから得られてよく、いくつかの実施形態では、π線投影でよい。投影515および517は、例えば、空間充填軌道を使用して得ることができる。π線投影515および517は、図5Cに示されるような量だけ不整合であり得る。不整合520は、例えば、投影515および517のCTスキャン中に生じる時間に依存する不整合によるものであり得る。加えて、π線投影515および517は、それぞれのπ線画素データの一貫性に影響を与える線源強度および/またはスペクトル成分変動の影響を受ける可能性がある。
【0041】
投影515は、被検体504の部分画像516Aに示された特徴518およびπ線512Aを含む。部分画像516Aは、線源502によって生成され、被検体504を通って横切った後に検出器506に衝突するX線510Aによって、形成されている。部分画像516Aは、生またはほぼ生の画素データから形成されることがある。ほぼ生の画素データは、例えば、明視野または暗視野について補正された生画素データであり得るが、上述のように前処理されてもよい。投影517は、特徴518およびπ線512Bも含む部分画像516Bをもたらし得る。
【0042】
図5Cは、投影515および517を重ね合わせることによる不整合520を示す。図示のように、不整合520は回転成分、倍率成分および平行移動成分を含み得る。π線512A、512Bに関連する点または画素512は、軌道のモデルにより、π線に対応すると判断される。π線512A、512Bの画素値の差を使用してこの差を最小にすることができ、これは、不整合520が低減されまたは取り除かれ、および/または不整合520の最良の近似が識別されるという結果をもたらしもする。このため、投影515および517を整合させることができ、結果として生じる再構成の品質を改善することができる。
【0043】
いくつかの実施形態では、不整合/不一致の量は、実施された補正に影響を及ぼし得る。例えば、不整合520が小さい(例えば、5画素程度)場合、投影は妥当な近似値まで互いに重なり合うことができる。しかしながら、不整合520が大きい(例えば、約5画素より大きい)場合、不整合は幾何学的変換によって補正することができない。この例では、視野角も理想的な軌道に対して変化している可能性があり、したがって、515または517のいずれかの投影は理想的な投影とは異なる可能性がある。π線データが線源変動による不一致を含む場合、補正行動は、例えば、一方または両方の投影をズームミングすることを含み得る。
【0044】
図6は、本明細書に開示された実施形態による、π線に基づいてCTスキャンの投影を整合させるための例示的な方法621である。方法621は、CTシステム100などのCTシステムによって実行することができる。方法621は、被検体の複数の投影を取得することを含むプロセスブロック623で開始することができ、複数の投影の各投影は、軌道に基づいて被検体の周囲の異なる位置で取得される。軌道は、例えば、円形、螺旋形、二重螺旋形、または空間充填であり得る。投影は、被検体を横切り、検出器に衝突する各X線についての減衰データをもたらすことができる。検出器の画素はX線と関連していることがあり、そのうちのいくつかは被検体を横切り、その結果、減衰データ(例えば、画像データ)をもたらす。
【0045】
プロセスブロック623の後に、それぞれのπ線に基づいて複数の投影から対向する投影対を決定することを含むプロセスブロック625が続くことができる。プロセスブロック625は、いくつかの実施形態では、関連するπ線に基づいて対向する投影の全セットのサブセットを決定することを含むことができ、対向する投影のすべてを決定することができるとは限らない。一般に、各スキャンは、多数の対向する投影(例えば、複数のπ線投影)をもたらすことができる。
【0046】
プロセスブロック625の後には、軌道のモデルに基づいてπ線に対応する画素データを決定することを含むプロセスブロック627が続くことができる。システムは、軌道のモデルに基づいて、どの画素が対向する投影対のπ線に対応するかを決定することができる。加えて、方法621は、どの画素が複数のπ線投影のそれぞれのπ線に対応するかを決定することができる。本開示は、1つまたはすべての画素データを決定することに限定されず、いくつかの実施形態では、π線投影のサブセットおよび関連する画素データを決定することができることに留意されたい。説明はデータが画素に関連することができると述べているが、π線の放射線が直接画素上にではなく画素間で検出器に衝突する場合には画素データが隣接画素から補間される必要があり可能性もある。プロセスブロック627はプロセスブロック625のサブセットであってよい。
【0047】
プロセスブロック627の後に、対向する投影の各対についてそれぞれのπ線データ間の不一致の量を決定することを含むプロセスブロック629が続くことができ、ここで、この不一致は対向する投影(例えば、π線投影)が不整合であること、または線源の不一致が発生したことのどちらかを示す。いくつかの実施形態では、不一致は、各対向する投影対のそれぞれの投影についてのπ線データに関連する減衰データに基づいて判断することができる。例えば、投影対の各投影についてのπ線に関連する画素データを比較して、それらが異なるかどうか、また異なる場合はどれだけ異なるかを判断することができる。システムは、差異の存在に基づいて、回転、倍率および平行移動の不整合の量を含むことがある不整合が投影に存在すると判断することができる。不整合の量はπ線の不一致(例えば、π線の画素データの差)からは決定されないことがあるが、不一致の低減または排除は、不整合の低減または取り除きをもたらすことができる。さらに、方法621は、複数のπ線投影のうちの各π線投影についてブロック627を繰り返して、複数のπ線投影のそれぞれについての関連する不整合を決定することができる。
【0048】
プロセスブロック629の後に、対向する投影対それぞれについてのそれぞれのπ線に関連する検出器データの差を最小にすることによって対向する投影対それぞれを整合させることを含むプロセスブロック631が続くことができる。いくつかの実施形態では、不整合および/または不一致を示すすべての識別されたπ線投影(例えば、複数のπ線投影)は、同時または反復的に整合されて、スキャンの多くの(おそらく100,000より多い)π線からの総検出器データ差を最小にすることができる。
【0049】
図7は、本開示の一実施形態によるCTシステム700の一例の機能ブロック図である。CTシステム700は、CTシステム100の一例となることができ、被検体のCTスキャンを取得し、被検体の様々なスライスおよび体積の再構成を提供するために使用することができる。CTシステム700は、制御器720、メモリ522、ステージ724、プログラム726、検出器728、および線源730を少なくとも含むことができる。一般に、CTシステム700は、本明細書に記載されるように被検体のスキャンを実行することができる。
【0050】
制御器720は、マイクロ制御器、CPU、1つまたは複数のコンピューティングコアなどであってよい。制御器720は、CTシステム700の複数の態様を制御することができ、CTシステム700の様々な他の構成要素に結合して、それらからデータを受信し、それらに制御信号を提供するようにすることができる。例えば、制御器720は、プログラム726に格納されたコードを実行して、CTシステム700に所望の軌道を使用してCTスキャンを実行させ、軌道のモデルに基づいてπ線投影を決定させることができる。さらに、システム700は、π線についての関連する画素データに基づいて、もしあれば、π線投影間の不一致量を決定し、不一致を補正するためにいずれの差も最小化することができる。加えて、検出器728によって取得されたスキャンデータは、制御器720に提供することができる。それに応じて、制御器720は、データにアルゴリズムを実行してCTスキャン、投影などを提供することができる。述べたように、アルゴリズムはプログラム726の一部であってよい。
【0051】
メモリ722は、データおよび命令を保持するように結合された揮発性または不揮発性メモリであってよい。メモリ722の一部であってよいプログラム726は、ステージ、線源、および検出器を制御するなどの、CTシステム700のさまざまな役割を実行するための動作命令およびコードを、他のさまざまな補助構成要素とともに備えることができる。
【0052】
ステージ724は、制御器720によって提供された制御信号に応答して被検体を支持し、その移動を提供することができる。制御信号は、メモリ722および/またはプログラム726に格納されているステージ制御命令を実行している間に、制御器720が生成することができる。例えば、ステージ制御は、例えば、螺旋、二重螺旋、または空間充填パターンなどの所望の軌道に従ってステージを移動させることができる。
【0053】
検出器728は、被検体を通過したX線を検出し、かつ、それらの強度を記録することができる。X線の強度は、被検体を通過することからの減衰のせいで低減される可能性がある。減衰量は、被検体を画像化するためおよび再構成を生成するために使用されるデータとなることができる。画像データまたはスキャンデータは、処理のために制御器720に提供されてよく、または後の処理のためにメモリ722に記憶されてもよい。加えて、検出器728は、制御器720からの制御信号に応答して動かされてもよい。
【0054】
線源730は、被検体にX線を供給し、制御装置720によって制御されることができる。例えば、線源730は、制御器720からの制御信号に応答して、所望の強度でX線を発生させることができ、また被検体に対してある方向に移動することができる。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7