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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】光コネクタおよび光コネクタ接続構造
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/32 20060101AFI20221031BHJP
   G02B 6/40 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
G02B6/32
G02B6/40
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019521342
(86)(22)【出願日】2018-06-01
(86)【国際出願番号】 JP2018021146
(87)【国際公開番号】W WO2018221717
(87)【国際公開日】2018-12-06
【審査請求日】2021-02-22
(31)【優先権主張番号】P 2017109955
(32)【優先日】2017-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 秀一
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 健吾
(72)【発明者】
【氏名】末松 克輝
(72)【発明者】
【氏名】椎野 雅人
【審査官】奥村 政人
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-215388(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0097957(US,A1)
【文献】米国特許第06587618(US,B2)
【文献】特開平01-079629(JP,A)
【文献】特開2016-166929(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0341909(US,A1)
【文献】特開2016-061942(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0026882(US,A1)
【文献】米国特許第08675284(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/24- 6/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アレイ状に配列された複数の光ファイバと、
前記複数の光ファイバに対応する複数のレンズが形成された第1主面と、前記第1主面に対向し、前記複数のレンズが対応する前記複数の光ファイバと光学的に結合するように前記複数の光ファイバの端面と接合された第2主面とを有するレンズアレイプレートと、
を備え、
前記複数の光ファイバの端面および前記第2主面の少なくとも一方は、それぞれの前記光ファイバの光軸に垂直な平面に対して傾斜し
前記複数の光ファイバの前記端面は、対応する前記レンズの略後側焦点に配置され、前記複数の光ファイバ端面から光軸方向に出射し、前記レンズの凸面で反射した反射光が、前記レンズの凸面の曲率により集光され、焦点を結ぶ点から前記光ファイバの光軸の方向にずれ、前記レンズの凸面の先端部と前記焦点を結ぶ点との間の距離をLx1、前記光ファイバの端面と前記焦点を結ぶ点との距離をLx2としたとき、Lx2≧3Lx1である
光コネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載の光コネクタにおいて、前記複数の光ファイバの端面および前記第2主面の、前記平面に対する傾斜角度は、少なくとも3度である
ことを特徴とする光コネクタ。
【請求項3】
請求項1乃至の何れか一項に記載の光コネクタにおいて、
前記複数のレンズは、そのレンズの光軸が対応する前記光ファイバの光軸に対してずれた状態で配置されている
ことを特徴とする光コネクタ。
【請求項4】
請求項に記載の光コネクタにおいて、
前記複数のレンズのそれぞれの光軸は、対応する前記光ファイバの光軸と垂直な方向にずれている
ことを特徴とする光コネクタ。
【請求項5】
請求項に記載の光コネクタにおいて、
前記レンズの光軸の前記光ファイバの光軸に対するずれ幅は、少なくとも5μmである
ことを特徴とする光コネクタ。
【請求項6】
請求項に記載の光コネクタにおいて、
前記複数のレンズのそれぞれの光軸は、対応する前記光ファイバの光軸に対して傾斜している
ことを特徴とする光コネクタ。
【請求項7】
請求項に記載の光コネクタにおいて、
前記レンズの光軸の前記光ファイバの光軸に対する傾斜角度は、少なくとも2度である
ことを特徴とする光コネクタ。
【請求項8】
請求項に記載の光コネクタにおいて、
前記レンズの光軸の前記光ファイバの光軸に対する傾斜角度は、少なくとも6度である
ことを特徴とする光コネクタ。
【請求項9】
請求項1または2に記載の光コネクタにおいて、
前記複数の光ファイバおよび前記複数のレンズは、1260nmから1565nmの範囲の波長を有する光を伝送するように構成されている
ことを特徴とする光コネクタ。
【請求項10】
請求項に記載の光コネクタを2つ備え、
一方の前記光コネクタの前記複数のレンズと、他方の前記光コネクタの前記複数のレンズとは、対応する前記レンズ同士が対向配置され、
前記一方の前記光コネクタにおける前記レンズの光軸の前記光ファイバの光軸に対するずれの方向は、前記他方の前記光コネクタにおける前記レンズの光軸の前記光ファイバの光軸に対するずれの方向と反対である、
ことを特徴とする光コネクタ接続構造。
【請求項11】
請求項に記載の光コネクタを2つ備え、
一方の前記光コネクタの前記複数のレンズと、他方の前記光コネクタの前記複数のレンズとは、対応する前記レンズ同士が対向配置され、
前記一方の前記光コネクタにおける前記レンズの光軸の前記光ファイバの光軸に対する傾きの方向は、前記他方の前記光コネクタにおける前記レンズの光軸の前記光ファイバの光軸に対する傾きの方向と反対である、
ことを特徴とする光コネクタ接続構造。
【請求項12】
請求項に記載の光コネクタを2つ備え、
一方の前記光コネクタの前記複数のレンズと、他方の前記光コネクタの前記複数のレンズとは、対応する前記レンズ同士が対向配置され、
2つの前記光コネクタは、対向配置された一対の前記レンズ毎の、前記レンズアレイプレート内の光路長が互いに等しくなるように構成されている
ことを特徴とする光コネクタ接続構造。
【請求項13】
請求項10または11に記載の光コネクタ接続構造において、
2つの前記光コネクタは、対向配置された一対の前記レンズ毎の、前記レンズアレイプレート内の光路長が互いに等しくなるように構成されている
ことを特徴とする光コネクタ接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光コネクタおよび光コネクタ同士を接続した光コネクタ接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
データセンタ内における光ファイバを用いた光配線の構築にあたっては、データ通信量の増大による大規模化等に対処するため、多心の光コネクタを用いることが一般的になっている。また、長距離伝送、大容量伝送の要求が高まっており、光配線を構築する光ファイバとして、これらの要求を満たしうるシングルモード(SM)の光ファイバが利用されるようになってきている。
【0003】
多心の光コネクタにおいて、光ファイバを接続する方式としては、フィジカル・コンタクト(PC)方式とレンズ方式とが知られている。PC方式では、接続すべき光ファイバアレイにおける光ファイバの先端同士を押圧力により互いに突き合わせて物理的に接触させることにより、光ファイバを物理的に接続する。一方、レンズ方式では、光ファイバアレイの各光ファイバに対応したレンズを有するレンズアレイが光コネクタに設けられており、レンズアレイが設けられた光コネクタを対向させて固定することにより、レンズを介して光ファイバを光学的に接続する。
【0004】
近年、光コネクタに対する更なる多心化およびシングルモード化の要求により、レンズ方式の多心コネクタが注目されている。例えば、特許文献1には、レンズ方式の多心コネクタの接続構造として、多心光ファイバから成る2つの光コネクタを、光コネクタ用レンズアレイを介して接合した光コネクタ接続構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-107277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、次世代光伝送技術として、400ギガビット・イーサネット(登録商標)の光伝送システムの研究が進められている。この光伝送システムでは、-45dB以下の反射減衰量を満たす光コネクタが必要とされる。上述したシングルモードの多心光ファイバをPC方式で接続する光コネクタ接続構造であれば、上述の反射減衰量の仕様を満足することは可能と考えられる。
【0007】
しかしながら、従来のシングルモードの多心光ファイバをレンズ方式で接続する光コネクタ接続構造では、400ギガビット・イーサネット(登録商標)の光伝送システムで要求される反射減衰量の仕様を満足することは困難である。以下、この点について図を用いて詳細に説明する。
【0008】
図28は、本願発明者らが本願に先立って検討したレンズ方式の光コネクタの構成を模式的に示す図である。同図には、シングルモードの多心光ファイバをレンズ方式で接続するための光コネクタ90において、複数のレンズ94が表面に形成されたレンズアレイプレート93と複数の光ファイバ98を収容したフェルール92とが接合される部分の構造が模式的に示されている。
【0009】
図28に示されるように、光ファイバ98内を伝搬し、光ファイバ98の端面198からレンズ94に向かって出射した光の一部は、接着剤99を介して接合された光ファイバ98の端面198とレンズアレイプレート93のレンズ背面193との界面において、反射する。この界面での反射光は、略100%の割合で光ファイバ98に結合するため、この界面での反射減衰量は大きくなる。
【0010】
光コネクタ90において、光ファイバ98を構成する石英ガラス(屈折率n=1.45)とレンズアレイプレート93を構成する樹脂材料(屈折率n=1.48~1.67)は屈折率が互いに異なるため、フレネル損が大きくなる傾向がある。
例えば、光ファイバ98とレンズアレイプレート93との界面をフラット界面とし、屈折率が最適な接着剤99を用いたとしても、レンズアレイプレート93がシクロオレフィンポリマー(屈折率n=1.51)の場合で反射減衰率は約-35dB、レンズアレイプレート93がポリエーテルイミド(屈折率n=1.66)の場合で反射減衰率は約-25dB、レンズアレイプレート93がポリメチルメタクリレート(屈折率n=1.49)の場合で反射減衰率は約-40dBとなり、400ギガビット・イーサネット(登録商標)の光伝送システムで要求される仕様を満足することはできない。
【0011】
また、図28に示されるように、レンズアレイプレート93内を伝搬する光の一部は、レンズ94の凸面194と空気との界面において反射し、その反射光の一部が光ファイバ98に結合する。この界面での反射光が光ファイバ98へ結合する割合は、上述した光ファイバ98とレンズアレイプレート93との界面での反射光が光ファイバ98へ結合する割合に比べて小さいが、光コネクタ90における反射減衰量を悪化させる一因となる。
【0012】
また、上記に加えて、シングルモードファイバ(SMF:Single Mode Fiber)はコアが小さいため、低損失な接続のためには、コアとレンズ光軸の位置決めに高い精度が要求される。位置決め精度は1.5ミクロン以下が望ましい。
【0013】
以上説明したように、従来のレンズ方式の光コネクタ接続構造では、400ギガビット・イーサネット(登録商標)の光伝送システムで要求される反射減衰量の仕様を満足することは困難である。
【0014】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、レンズ方式の光コネクタ接続構造における反射減衰量を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の代表的な実施の形態に係る光コネクタは、アレイ状に配列された複数の光ファイバと、前記複数の光ファイバに対応する複数のレンズが形成された第1主面と、前記第1主面に対向し、前記複数のレンズが対応する前記複数の光ファイバと光学的に結合するように前記複数の光ファイバの端面と接合された第2主面41とを有するレンズアレイプレートとを備え、前記複数の光ファイバの端面および前記第2主面の少なくとも一方は、それぞれの前記光ファイバの光軸に垂直な平面に対して傾斜していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る光コネクタによれば、レンズ方式の光コネクタ接続構造における反射減衰量を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施の形態1に係る光コネクタの外観を示す斜視図である。
図2】実施の形態1に係る光コネクタの構成を示す分解斜視図である。
図3】実施の形態1に係る光コネクタにおける光ファイバとレンズアレイプレートとの接合部分を模式的に示す図である。
図4】実施の形態1に係る光コネクタにおけるレンズと光ファイバの端面の位置関係を説明するための図である。
図5A】実施の形態1に係る光コネクタにおける光ファイバとレンズアレイプレートの接合方法の一例を示す図である。
図5B】実施の形態1に係る光コネクタにおける光ファイバとレンズアレイプレートの接合方法の一例を示す図である。
図5C】実施の形態1に係る光コネクタにおける光ファイバとレンズアレイプレートの接合方法の一例を示す図である。
図6A】実施の形態1に係る光コネクタにおける光ファイバとレンズアレイプレートの接合方法の別の一例を示す図である。
図6B】実施の形態1に係る光コネクタにおける光ファイバとレンズアレイプレートの接合方法の別の一例を示す図である。
図6C】実施の形態1に係る光コネクタにおける光ファイバとレンズアレイプレートの接合方法の別の一例を示す図である。
図6D】実施の形態1に係る光コネクタにおける光ファイバとレンズアレイプレートの接合方法の別の一例を示す図である。
図7図6A図6Dに示す接合方法で用いる光ファイバの別の一例を示す図である。
図8】実施の形態1に係る光コネクタを用いた光コネクタ接続構造を示す図である。
図9図8に示す光コネクタ接続構造における2つの光コネクタの接続部分の拡大図である。
図10】実施の形態1に係る2つの光コネクタ間にスペーサを配置した光コネクタ接続構造を示す図である。
図11】レンズアレイプレートの一部をスペーサとして機能させた光コネクタ接続構造を示す図である。
図12】MPOコネクタのコネクタハウジングに収容された態様で実施の形態1に係る2つの光コネクタが接続された場合の光コネクタ接続構造を示す斜視図である。
図13】実施の形態2に係る光コネクタの構成を示す図である。
図14】実施の形態2に係る光コネクタにおける光の伝搬を説明するための図である。
図15】実施の形態2に係る光コネクタを用いた光コネクタ接続構造を示す図である。
図16】実施の形態2に係る光コネクタ接続構造における光の伝搬を説明するための図である。
図17】実施の形態2に係る光コネクタ接続構造におけるレンズアレイプレート内の光路長を説明するための図である。
図18】実施の形態3に係る光コネクタを用いた光コネクタ接続構造を示す図である。
図19】実施の形態3に係る光コネクタにおける光の伝搬を説明するための図である。
図20】実施の形態3に係る光コネクタを用いた光コネクタ接続構造を示す図である。
図21】実施の形態3に係る光コネクタ接続構造における光の伝搬を説明するための図である。
図22】実施の形態3に係る光コネクタ接続構造におけるレンズアレイプレート内の光路長を説明するための図である。
図23】実施の形態3に係る光コネクタのレンズアレイプレートの別の一例を示す図である。
図24】レンズアレイプレートとフェルールを一体化した光コネクタの構成を示す図である。
図25】レンズアレイプレートとフェルールの接続面を階段状に形成した光コネクタの構成を示す図である。
図26】本発明の別の実施の形態に係る光コネクタにおける光ファイバとレンズアレイプレートとの接合部分を模式的に示す図である。
図27図26に示される光コネクタで用いる光ファイバの一例を示す図である。
図28】本願発明者らが本願に先立って検討したレンズ方式の光コネクタの構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
【0019】
〔1〕本発明の代表的な実施の形態に係る光コネクタ(10,10A,10B,10Bx,10C,10D)は、アレイ状に配列された複数の光ファイバ(18)と、前記複数の光ファイバに対応する複数のレンズ(44,44A,44B,44Bx)が形成された第1主面(40,40A,40B,40C,40D,40Bx)と、前記第1主面に対向し、前記複数のレンズが対応する前記複数の光ファイバと光学的に結合するように前記複数の光ファイバの端面(180)と接合された第2主面(41,41A,41B,48Bx,41D,41Bx)とを有するレンズアレイプレート(14,14A,14B,14C,14D,14Bx)とを備え、前記複数の光ファイバの端面および前記第2主面の少なくとも一方は、それぞれの前記光ファイバの光軸(181)に垂直な平面(182)に対して傾斜していることを特徴とする。
【0020】
〔2〕上記光コネクタにおいて、前記複数の光ファイバの端面および前記第2主面の、前記平面(182)に対する傾斜角度(θ)は、少なくとも3度であってもよい。
【0021】
〔3〕上記光コネクタにおいて、前記複数の光ファイバの前記端面は、対応する前記レンズの略後側焦点(F)に配置される。
【0022】
〔4〕上記光コネクタ(10A,10B)において、前記複数のレンズ(44A,44B)は、そのレンズの光軸(440A,440B)が対応する前記光ファイバの光軸(181)に対してずれた状態で配置されていてもよい。
【0023】
〔5〕上記光コネクタ(10A)において、前記複数のレンズ(44A)のそれぞれの光軸(440A)は、対応する前記光ファイバの光軸(181)と垂直な方向にずれていてもよい。
【0024】
〔6〕上記光コネクタにおいて、前記レンズの光軸の前記光ファイバの光軸に対するずれ幅は、少なくとも5μmであってもよい。
【0025】
〔7〕上記光コネクタにおいて、前記レンズの光軸の前記光ファイバの光軸に対する傾斜角度は、少なくとも6度であってもよい。
【0026】
〔8〕上記光コネクタにおいて、前記複数の光ファイバおよび前記複数のレンズは、1260nmから1565nmの範囲の波長を有する光を伝送するように構成されていてもよい。
【0027】
〔9〕上記光コネクタにおいて、前記複数のレンズ(44B,44Bx)のそれぞれの光軸(440B,440Bx)は、対応する前記光ファイバの光軸(181)に対して傾斜していてもよい。
【0028】
〔10〕上記光コネクタにおいて、前記レンズの光軸の前記光ファイバの光軸に対する傾斜角度(φ)は、少なくとも6度であってもよい。
【0029】
〔11〕本発明に係る光コネクタ接続構造(100A)は、上記光コネクタ(10A)を2つ備え、一方の前記光コネクタの前記複数のレンズと他方の前記光コネクタの前記複数のレンズとは、対応する前記レンズ同士が対向配置され、前記一方の前記光コネクタにおける前記レンズの光軸の前記光ファイバの光軸に対するずれの方向は、前記他方の前記光コネクタにおける前記レンズの光軸の前記光ファイバの光軸に対するずれの方向と反対であることを特徴とする。
【0030】
〔12〕本発明に係る光コネクタ接続構造(100B)は、上記光コネクタ(10B)を2つ備え、一方の前記光コネクタの前記複数のレンズと、他方の前記光コネクタの前記複数のレンズとは、対応する前記レンズ同士が対向配置され、前記一方の前記光コネクタにおける前記レンズの光軸の前記光ファイバの光軸に対する傾きの方向は、前記他方の前記光コネクタにおける前記レンズの光軸の前記光ファイバの光軸に対する傾きの方向と反対であることを特徴とする。
【0031】
〔13〕本発明に係る光コネクタ接続構造(100)は、上記光コネクタ(10)を2つ備え、一方の前記光コネクタの前記複数のレンズと、他方の前記光コネクタの前記複数のレンズとは、対応する前記レンズ同士が対向配置され、前記2つの光コネクタは、対向配置された一対の前記レンズ毎の、前記レンズアレイプレート内の光路長が互いに等しくなるように構成されていることを特徴とする。
【0032】
〔14〕上記光コネクタ接続構造(100A,100B)において、2つの前記光コネクタ(10A,10B)は、対向配置された一対の前記レンズ毎の、前記レンズアレイプレート内の光路長が互いに等しくなるように構成されていてもよい。
【0033】
2.実施の形態の具体例
以下、本発明の実施の形態の具体例について図を参照して説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係や各要素の比率などは、現実と異なる場合がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0034】
≪実施の形態1≫
図1は、本発明の実施の形態1に係る光コネクタの外観を示す斜視図である。図2は、本発明の実施の形態1に係る光コネクタの構成を示す分解斜視図である。
【0035】
図1,2に示すように、実施の形態1に係る光コネクタ10は、当該光コネクタ10に固定された複数の光ファイバを、接続先の他の光コネクタに固定された複数の光ファイバにそれぞれ接続するための多心光コネクタである。
具体的に、光コネクタ10は、複数の光ファイバ18と、フェルール12と、レンズアレイプレート14と、一対のガイドピン16とを有している。
【0036】
光ファイバ18は、コア184とクラッド185を有する石英系の光ファイバである。例えば、光コネクタ10では、所定数の光ファイバ18を平行に並べて紫外線硬化樹脂等の樹脂からなる被覆22で一体的に被覆した光ファイバテープ心線20を用い、その光ファイバテープ心線20が複数積層されてフェルール12に固定されている。
光ファイバ18は、例えば、シングルモードファイバである。
【0037】
フェルール12は、アレイ状に配列された複数の光ファイバ18を整列して収容するコネクタ本体部である。フェルール12は、一般的な樹脂フェルールに用いられる、樹脂を含むベース材と、ベース材とは異なる材料からなる固形材であるフィラーとの混合材から構成されている。フェルール12は、混合材を成形加工することにより形成されている。なお、フェルール12の成形方法は、特に限定されるものではないが、例えば、トランスファー成形法、射出成形法等を用いることができる。
【0038】
フェルール12に用いられるベース材は、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂の少なくとも一方を含んでいる。フェルール12のベース材に用いられる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリフェニレンスルフィド(polyphenylenesulfide、PPS)、液晶ポリマー(liquid crystal polymer、LCP)、ポリエーテルスルホン(polyethersulfone、PES)、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンポリマー(COP)等を用いてよい。また、フェルール12のベース材に用いられる熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等を用いてよい。
【0039】
フェルール12に用いられるフィラーとしては、例えば、石英ガラス、石英結晶を所定の形状に加工した固形材を用いてよい。フェルール12のフィラーは、フェルール12の線膨張係数を低下させるためにベース材に配合されている。
【0040】
図1,2に示されるように、フェルール12は、フェルール本体部24と、鍔部26とを有している。
【0041】
フェルール本体部24は、光コネクタ10の接続端側に設けられ、鍔部26は光コネクタ10の接続端と反対側に設けられている。なお、以下の説明では、光コネクタ10の接続端側を光コネクタ10の「前」と、光コネクタ10の接続端と反対側を光コネクタ10の「後」と称する。
【0042】
フェルール12は、多心光コネクタ用のフェルールである。具体的には、フェルール12は、MT(Mechanically Transferable)フェルールであり、例えば、国際電気標準会議によるIEC 61754-5、日本工業規格によるJIS C 5981等の規格に適合又は準拠している。
【0043】
鍔部26には、複数の光ファイバ18をフェルール12内に導入するための光ファイバ導入口28が形成されている。光ファイバ導入口28は、光コネクタ10の前後方向に貫通するように鍔部26に形成されている。
【0044】
フェルール本体部24には、鍔部26の光ファイバ導入口28に接続する中空部30が形成されている。また、フェルール本体部24の上面には、中空部30に接続する開口部32が形成されている。開口部32は、光ファイバ18をフェルール12に固定するとともに、光ファイバ18の端面をレンズアレイプレート14に接合する接着剤19を導入するための穴である。
【0045】
フェルール本体部24は、光コネクタ10の前方側に接続側端面34を有している。詳細は後述するが、接続側端面34は、光コネクタ10の前後方向に垂直な平面に対して傾斜している。フェルール本体部24の接続側端面34には、複数の光ファイバ18がその光ファイバの光軸に沿って挿入される複数の光ファイバ挿入孔36が形成されている。複数の光ファイバ挿入孔36は、それぞれ光コネクタ10の前後方向に沿って形成されている。複数の光ファイバ挿入孔36の一端は、それぞれ接続側端面34に開口している。複数の光ファイバ挿入孔36の他端は、それぞれ中空部30に接続するように開口している。
【0046】
複数の光ファイバ挿入孔36は、アレイ状に配列されている。例えば、光コネクタ10の幅方向に沿って平行に並んだ所定の本数の光ファイバ挿入孔36の列が、光コネクタ10の上下方向に平行に複数段形成されている。図2では、一例として、12本の光ファイバ挿入孔36の列が5段形成されている場合が示されている。なお、複数の光ファイバ挿入孔36の配列の態様、複数の光ファイバ挿入孔36の総本数、1列当たりの光ファイバ挿入孔36の本数及び光ファイバ挿入孔36の列の段数は、複数の光ファイバ18の本数等に応じて適宜設定することができる。また、光ファイバ挿入孔36の孔径及びピッチも、光ファイバ18の外径及びピッチに応じて適宜設定することができる。また、光ファイバ挿入孔36の段数は、複数段である必要はなく、1段であってもよい。
【0047】
なお、各光ファイバ18は、その外径(コアおよびクラッドから成るガラス部分の外径)が80~126μmである。光コネクタ10において、光ファイバ18の外径が80μmの場合には例えばピッチは125μm又は250μmであり、光ファイバ18の外径が125μmの場合には例えばピッチは250μmである。なお、ピッチはこれに限定されず、光ファイバ18の外径以上に設定すればよい。
【0048】
上述のように構成されたフェルール12において、鍔部26の光ファイバ導入口28からフェルール本体部24の中空部30内に、複数の光ファイバテープ心線20の先端部が導入されている。複数の光ファイバテープ心線20は、光コネクタ10の上下方向に積層されている。複数の光ファイバテープ心線20は、光コネクタ10の後端においてブーツ等により覆われて保持されることにより保護されていてもよい。中空部30内に導入された複数の光ファイバテープ心線20の先端部では、それぞれ被覆22が除去されており、光ファイバ18の端面180が露出している。
【0049】
フェルール本体部24に形成された複数の光ファイバ挿入孔36のそれぞれには、光ファイバ18が挿入されて固定されている。同一の列の複数の光ファイバ挿入孔36に挿入されて固定された複数の光ファイバ18は、同一の光ファイバテープ心線20に含まれるものになっている。
【0050】
光ファイバ18は、フェルール本体部24の上面の開口部32から導入された接着剤19により、光ファイバ挿入孔36に接着されて固定されている。中空部30内に導入された複数の光ファイバテープ心線20の端部も、開口部32から導入された接着剤19によりフェルール本体部24に接着されて固定されている。また、後述するレンズアレイプレート14も、接着剤19により、フェルール本体部24の接続側端面34に接着されて固定されている。
【0051】
接着剤19の屈折率は、光ファイバ18(コア)の屈折率とレンズアレイプレート14の屈折率との間の値であることが好ましい。また、接着剤19は、硬化後に、伝送対象の波長帯の光に対して透明となる材料であることが好ましい。
【0052】
例えば、接着剤19として、エポキシ樹脂系接着剤やアクリル樹脂系接着剤を用いることができる。なお、光ファイバ挿入孔36に挿入されて固定された光ファイバ18は、樹脂被覆で覆われている状態であってもよいし、樹脂被覆が除去された状態であってもよい。
【0053】
光ファイバ挿入孔36に固定された光ファイバ18の端面は、フェルール本体部24の接続側端面34とともに研磨されて接続側端面34と揃えられている。
【0054】
このようにして、フェルール12は、複数の光ファイバ18がアレイ状に配列されるように複数の光ファイバ18を収容する。複数の光ファイバ18を収容したフェルール12においては、複数の光ファイバ18を含むファイバアレイが構成されている。
【0055】
また、光コネクタ10の幅方向において、フェルール本体部24の複数の光ファイバ挿入孔36及び中空部30の両側における両側端部には、それぞれガイドピン16が挿入される一対のガイドピン挿入孔38が形成されている。一対のガイドピン挿入孔38は、それぞれ光コネクタ10の前後方向に沿って形成されている。
【0056】
フェルール本体部24の接続側端面34には、レンズアレイプレート14が取り付けられている。レンズアレイプレート14は、フェルール12に収容された複数の光ファイバ18に対応する複数のレンズ44を含むレンズアレイである。
【0057】
レンズアレイプレート14は、例えばシクロオレフィンポリマー(COP)やポリエーテルイミド(PEI)等の樹脂材料、またはガラスから構成されている。なお、上記樹脂材料は、フィラーを含有していてもよい。なお、レンズアレイプレート14は、伝送対象の光が伝搬可能な材料であればよく、透明でなくてもよい。
【0058】
レンズアレイプレート14は、複数の光ファイバ18に対応する複数のレンズ44を含むレンズアレイ部42が形成された第1主面としてのレンズ側端面40と、レンズ側端面40に対向する第2主面としてのレンズ背面41とを有する。
【0059】
レンズ側端面40は、レンズアレイプレート14における光コネクタ10の前方の面であって、2つの光コネクタ10を接続する際に、接続先の他の光コネクタ10と対面配置される面である。より具体的には、レンズ側端面40は、接続先の他の光コネクタ10のレンズアレイプレート14のレンズ側端面40と互いに対向して配置される。
【0060】
レンズアレイ部42には、フェルール本体部24の接続側端面34に並ぶ複数の光ファイバ18に対応してアレイ状に配列された複数のレンズ44が形成されている。
【0061】
複数のレンズ44は、それぞれ、レンズ側端面40の凸の曲面を有し、光コネクタ10の前後方向に沿った方向が光軸となるように形成されている。なお、各レンズ44は、球面レンズであってもよいし、非球面レンズであってもよい。
【0062】
レンズ背面41は、レンズアレイプレート14における光コネクタ10の後方の面であって、接着剤19によってフェルール12の接続側端面34と接合される面である。具体的には、レンズ背面41は、後述するように、光コネクタ10の前後方向に垂直な平面に対して傾斜した面であって、各レンズ44が対応する光ファイバ18と光学的に結合するように、フェルール本体部24の接続側端面34と接合されている。
なお、レンズアレイプレート14と光ファイバ18との接合部分の詳細については、後述する。
【0063】
このように、レンズアレイプレート14のレンズ背面41をフェルール12の接続側端面34に接合することにより、複数のレンズ44は、そのレンズ44に向けて対応する光ファイバ18から出射された光を、平行光にコリメートして接続の相手方の光コネクタに向けて出射するコリメートレンズとして機能することができる。また、複数のレンズ44は、そのレンズ44に向けて接続の相手方の光コネクタから入射した平行光を、対応する光ファイバ18の端面に集光してその光ファイバ18に入射させる集光レンズとしても機能することができる。
【0064】
光コネクタ10の幅方向において、レンズアレイプレート14のレンズアレイ部42の両側における両側端部には、それぞれガイドピン16が挿入される一対のガイドピン挿入孔46が形成されている。一対のガイドピン挿入孔46は、それぞれ光コネクタ10の前後方向に沿って形成されている。一対のガイドピン挿入孔46は、フェルール本体部24の一対のガイドピン挿入孔38に対応して形成されている。
【0065】
レンズアレイプレート14は、一対のガイドピン16により、すなわちフェルール12に対して位置決めされた状態で、接着剤19により、フェルール12の接続側端面34に接着されて固定されている。ガイドピン挿入孔46、38に挿入されたガイドピン16は、接続の相手方の光コネクタに同様に挿入して接続するために、レンズアレイプレート14から光コネクタ10の前方に突出した部分を有している。
【0066】
以上により、フェルール12に収容されて固定された複数の光ファイバ18を有する光コネクタ10が実現される。
【0067】
次に、レンズアレイプレート14と光ファイバ18との接合部分について詳細に説明する。
【0068】
図3は、実施の形態1に係る光コネクタ10における光ファイバ18とレンズアレイプレート14との接合部分を模式的に示す図である。同図では、一例として、フェルール12に固定された複数の光ファイバ18のうち、一つの光ファイバ18を代表的に図示している。
【0069】
同図に示されるように、レンズアレイプレート14のレンズ背面41は、フェルール12(フェルール本体部24)の接続側端面34および各光ファイバ18の端面180と、接着剤19を介して接合されている。なお、図示はしていないが、接着剤19は、フェルール12の光ファイバ挿入孔36の内壁と光ファイバ18との隙間にも充填されている。
【0070】
図3に示されるように、複数の光ファイバ18とレンズアレイプレート14との接合面は、各光ファイバ18の光軸181に対して垂直ではない。すなわち、複数の光ファイバ18とレンズアレイプレート14との接合面は、各光ファイバ18の光軸181に垂直な平面182に対して傾斜している。
【0071】
ここで、複数の光ファイバ18とレンズアレイプレート14との接合面とは、接着剤19を介して互いに接合された、各光ファイバ18の端面180およびレンズアレイプレート14のレンズ背面41を言う。
【0072】
すなわち、複数の光ファイバ18のそれぞれの端面180は、その光ファイバ18の光軸181に垂直な平面182に対して傾斜し、レンズ背面41は、平面182に対して傾斜している。ここで、平面182に対する光ファイバ18の端面180の傾斜角度と、平面182に対するレンズ背面41の傾斜角度は互いに等しい。
【0073】
平面182に対する光ファイバ18の端面180の傾斜角度(平面182に対するレンズ背面41の傾斜角度)をθ〔度(°)〕としたとき、0°<θ<90°であり、好ましくは、θ≧3°である。
【0074】
具体例を挙げるとすれば、レンズアレイプレート14と光ファイバ18との接合面での反射光が光ファイバ18に結合する割合、すなわちレンズアレイプレート14と光ファイバ18との接合面における反射減衰量を-45dB以下とするためには、レンズアレイプレート14をCOP(屈折率n=1.51)で構成した場合はθ≧3°、レンズアレイプレート14をPEI(屈折率n=1.66)で構成した場合はθ≧6°とすることが好ましい。また、レンズアレイプレート14の材料によらず、θ=8°としてもよい。
【0075】
次に、レンズ44と光ファイバ18の端面180の位置関係について説明する。
図4は、実施の形態1に係る光コネクタ10におけるレンズ44と光ファイバ18の端面180の位置関係を説明するための図である。
図4に示すように、複数の光ファイバ18のそれぞれの端面180は対応するレンズ44の略後側焦点Fに位置し、レンズ44の凸面47での反射光が焦点を結ぶ点FXから当該光ファイバ18の光軸181の方向にずれている(デフォーカス)。例えば、各光ファイバ18の端面180は、対応するレンズ44の反射光が焦点を結ぶ点FXよりも、光コネクタ10のはるか後方に位置している。好ましくは、レンズ44の凸面47の先端部(以下、「レンズ頂点」とも称する。)Oとレンズ44の反射光が焦点を結ぶ点FXとの間の距離をLx1、光ファイバ18の端面180とレンズ44の反射光が焦点を結ぶ点FXとの距離をLx2としたとき、Lx2≧3Lx1である。
【0076】
これによれば、光ファイバ18の受光面である端面180がレンズ44の後側焦点Fから離れているので、レンズ44の凸面47での反射光が光ファイバ18に結合する割合を減らすことができる。
【0077】
なお、実施の形態1に係る光コネクタ10において、レンズ44に反射防止(AR:anti-reflective)コーティングを施した場合、反射減衰量を-45dB以下にすることが可能である。しかしながら、光コネクタ10は、用途によっては、例えばOバンドからCバンドまで(1260nmから1565nmまで)の光通信波長帯に対応した構成とすることが好ましい。
【0078】
次に、実施の形態1に係る光コネクタ10における光ファイバ18とレンズアレイプレート14との接合方法について説明する。ここでは、光ファイバ18とレンズアレイプレート14とを接合する方法として、2つの方法を例示する。
【0079】
図5A~5Cは、実施の形態1に係る光コネクタ10における光ファイバ18とレンズアレイプレート14の接合方法の一例を示す図である。
【0080】
先ず、図5Aに示すように、複数の光ファイバ挿入孔36が形成されたフェルール12を用意し、そのフェルール12の各光ファイバ挿入孔36に光ファイバ18をそれぞれ挿入して固定する(ステップS11)。例えば、各光ファイバ挿入孔36に光ファイバ18をそれぞれ挿入した状態で、各光ファイバ挿入孔36と光ファイバ18との隙間に接着剤19を流し込むことにより、固定する。
【0081】
次に、図5Bに示すように、光ファイバ18が固定されたフェルール12の一方の端面を研磨する(ステップS12)。具体的には、フェルール12の接続側端面34が光ファイバ18の光軸181に対して非垂直となるように、公知の研磨技術により、フェルール12を研磨する。このとき、光ファイバ18の光軸181に垂直な平面182に対するフェルール12の接続側端面34の傾斜角度θは、上述したように、レンズアレイプレート14を構成する材料に応じて適切な値に設定すればよい。
【0082】
次に、図5Cに示すように、フェルール12と同様にレンズ背面41を斜めに研磨したレンズアレイプレート14を用意し、レンズアレイプレート14のレンズ背面41とフェルール12の接続側端面34とを接着剤19によって接合する(ステップS13)。このとき、フェルール12に接着固定された各光ファイバ18の端面180と対応するレンズ44とが対向するように、フェルール12とレンズアレイプレート14とを接合する。
【0083】
以上の処理ステップにより、実施の形態1に係る光コネクタ10における光ファイバ18とレンズアレイプレート14との接合部分を実現することができる。
【0084】
図6A~6Dは、実施の形態1に係る光コネクタ10における光ファイバ18とレンズアレイプレート14の接合方法の別の一例を示す図である。
先ず、図6Aに示すように、複数の光ファイバ挿入孔36が形成されたフェルール12を用意し、公知の研磨技術により、そのフェルール12の一方の端面を研磨する(ステップS21)。研磨の方法は、上述したステップS12と同様である。
【0085】
次に、図6Bに示すように、フェルール12と同様にレンズ背面41を斜めに研磨したレンズアレイプレート14を用意し、レンズアレイプレート14のレンズ背面41とフェルール12の接続側端面34とを接着剤19によって接合する(ステップS22)。このとき、フェルール12の光ファイバ挿入孔36と対応するレンズ44とが対向するように、フェルール12とレンズアレイプレート14とを接合する。
【0086】
次に、図6Cに示すように、フェルール12と同様に、一方の端面180を斜めに研磨した複数の光ファイバ18を用意し、それらの光ファイバ18をフェルール12の対応する光ファイバ挿入孔36にそれぞれ挿入する(ステップS23)。
【0087】
次に、図6Dに示すように、接着剤19によって、各光ファイバ18をレンズアレイプレート14のレンズ背面41に接着固定する(ステップS24)。
【0088】
以上の処理ステップにより、実施の形態1に係る光コネクタ10における光ファイバ18とレンズアレイプレート14との接合部分を実現することができる。
【0089】
なお、上述した後者の接合方法(図6A~6D)では、図7に示すように、例えばレーザークリーバー(またはレーザーカッター)を用いて一端を溶融によって切断した光ファイバ18を用いてもよい。光ファイバ18の切断面(端面180)は、溶融時の熱により、丸まった形状となる。なお、上記レーザークリーバーのレーザーは、一般的に、COレーザーや紫外線レーザーなどの光ファイバの吸収波長のレーザーである。
ここで、光ファイバ18の端面180は、コア184の中心に接する面である。
【0090】
次に、実施の形態1に係る光コネクタ10を用いた光コネクタ接続構造について説明する。
図8は、実施の形態1に係る光コネクタ10を用いた光コネクタ接続構造を示す図である。図9は、図8に示す光コネクタ接続構造の2つの光コネクタの接合部分を拡大した図である。図8、9では、2つの光コネクタ10の一方を光コネクタ10aと表記し、他方を光コネクタ10bと表記している。
図8,9に示すように、光コネクタ接続構造100において、2つの光コネクタ10a,10bは、一方の光コネクタ10aの複数のレンズ44と、他方の光コネクタ10bの複数のレンズ44とが対向して配置される。
【0091】
図9に示すように、光コネクタ接続構造100において、2つの光コネクタ10a,10bは、一方の光コネクタ10aのレンズ44のレンズ頂点と他方の光コネクタ10bのレンズ44のレンズ頂点との間のレンズ端間距離L0が適切な値となるように、互いに離間して配置されている。例えば、光コネクタ接続構造100において、2つの光コネクタ10a,10bは、レンズ端間距離L0がレンズ44の前側焦点距離の2倍となるように、互いに離間して配置されている。
【0092】
また、光コネクタ接続構造100において、対向配置された一対のレンズ44A(以下、「レンズ対400」とも表記する。)毎のレンズアレイプレート14内の光路長が互いに等しくなるように、2つの光コネクタ10a,10bが配置されている。
【0093】
例えば、図9に示すように、レンズ対400_1の光コネクタ10aにおけるレンズアレイプレート14内の光路長をLa1、レンズ対400_1の光コネクタ10bにおけるレンズアレイプレート14内の光路長をLb1、レンズ対400_n(nは1以上の整数)の光コネクタ10aにおけるレンズアレイプレート14内の光路長をLan、レンズ対400_nの光コネクタ10bにおけるレンズアレイプレート14内の光路長をLbnとした場合、レンズ対400_1の2つのレンズアレイプレート14内における光路長の合計(La1+Lb1)と、レンズ対400_nの2つのレンズアレイプレート14内における光路長の合計(Lan+Lbn)は、(La1+Lb1)=(Lan+Lbn)の関係を満たす。
【0094】
光コネクタ接続構造100において、2つの光コネクタ10は、上述したレンズ端間距離L0を保った状態で固定される。この場合、図10に示すように、一方の光コネクタ10と他方の光コネクタ10との間にスペーサ200を配置してもよい。
【0095】
ここで、スペーサ200は、図10に示すように光コネクタ10のレンズアレイプレート14と別体で構成されていてもよいし、レンズアレイプレート14と一体に構成されていてもよい。例えば、図11に示すように、レンズアレイプレート14のレンズ側端面40にレンズ44より光コネクタ10の前方に突出した突出部45を形成し、2つの光コネクタ10の突出部45同士を対面配置して固定することで、レンズアレイプレート14にスペーサとしての機能を持たせてもよい。
【0096】
上述した実施の形態1に係る光コネクタ接続構造100によれば、図8に示すように、一方の光コネクタ10において、光ファイバ18から出射された光が平行光500にコリメートされて他方の光コネクタ10に向けて出射され、他方の光コネクタ10において、一方の光コネクタ10から入射した平行光500が対応する光ファイバ18の端面に集光してその光ファイバ18に入射する。
【0097】
ここで、光コネクタ接続構造100は、2つの光コネクタ10がそれぞれMPO(Multifiber Push-On)コネクタ等のコネクタハウジングに収容された態様で接続された構成を有していてもよい。以下、MPOコネクタのコネクタハウジングに収容された態様で2つの光コネクタ10が接続される場合について詳細に説明する。
【0098】
図12は、MPOコネクタのコネクタハウジングに収容された態様で実施の形態1に係る2つの光コネクタが接続された場合の光コネクタ接続構造を示す斜視図である。
同図に示される光コネクタ接続構造100MFにおいて、2つの光コネクタ10のうち、一方の雄型の光コネクタ10Mと表記し、他方の雌型の光コネクタ10Fと表記している。ここで、MPOコネクタは、例えば、国際電気標準会議によるIEC 61754-7、日本工業規格によるJIS C 5964-7、JIS C 5982等の規格に適合又は準拠している。
【0099】
図12に示す光コネクタ接続構造100MFにおいて、雄型の光コネクタ10M及びこれに接続された光ファイバテープ心線20の端部は、MPOコネクタのコネクタハウジング50に収容されている。コネクタハウジング50は、ハウジング本体部52と、ハウジング本体部52外周にハウジング本体部52に対して摺動可能に設けられた筒部54と、ハウジング本体部52の後端部に連結されたブーツ部56とを有している。
【0100】
ハウジング本体部52は、光コネクタ10Mを収容して保持している。ハウジング本体部52の接続側となる前端部には、光コネクタ10Mのレンズアレイプレート14及びフェルール本体部24の一部が突出している。ハウジング本体部52及びブーツ部56内には、コイルスプリング等の弾性体を含む不図示の付勢機構が設けられており、この付勢機構により、光コネクタ10Mが前方に付勢されている。
【0101】
ブーツ部56には、光コネクタ10Mに固定された複数の光ファイバ18を含む複数の光ファイバテープ心線20が収容されている。複数の光ファイバテープ心線20は、ケーブル、コード等に内蔵されていてもよい。
【0102】
雌型の光コネクタ10Fについても、上記雄型の光コネクタ10Mと同様に、MPOコネクタのコネクタハウジング50に収容されている。
【0103】
それぞれコネクタハウジング50に収容された光コネクタ10M、10Fは、アダプタ58を介して接続される。
【0104】
アダプタ58には、ハウジング挿入孔60が貫通するように形成されている。ハウジング挿入孔60は、ハウジング本体部52の前端部を両端側からそれぞれ挿入可能になっている。
【0105】
ハウジング挿入孔60の一端側部分には、雄型の光コネクタ10Mを収容するハウジング本体部52に形成された突起部であるキー62に対応する凹部64が形成されている。ハウジング挿入孔60の他端側部分には、雌型の光コネクタ10Fを収容するハウジング本体部52に形成された突起部であるキー62に対応する凹部64が形成されている。これにより、ハウジング挿入孔60には、その一端側から雄型の光コネクタ10Mを収容するハウジング本体部52の前端部が挿入され、その他端側から雌型の光コネクタ10Fを収容するハウジング本体部52が挿入されるようになっている。なお、図12では、雄型の光コネクタ10Mを収容するハウジング本体部52についてのみキー62を示し、ハウジング挿入孔60の他端側部分についてのみ凹部64を示している。
【0106】
また、ハウジング挿入孔60の一端側部分には、雄型の光コネクタ10Mを収容するハウジング本体部52に着脱可能に引っかかってそのハウジング本体部52を固定するフック部66が形成されている。ハウジング挿入孔60の他端側部分には、雌型の光コネクタ10Fを収容するハウジング本体部52に着脱可能に引っかかってそのハウジング本体部52を固定するフック部66が形成されている。これらのフック部66により、ハウジング挿入孔60に一端側から挿入された雄型の光コネクタ10Mを収容するハウジング本体部52及び雌型の光コネクタ10Fを収容するハウジング本体部52が着脱可能にアダプタ58に固定される。なお、図12では、ハウジング挿入孔60の他端側部分についてのみフック部66を示している。
【0107】
光コネクタ10M、10Fの接続に際しては、ハウジング挿入孔60の一端側及び他端側から、それぞれ光コネクタ10M、10Fを収容するハウジング本体部52、52がハウジング挿入孔60に挿入される。すると、上記のようにそれぞれのハウジング本体部52が、アダプタ58に着脱可能に固定される。これとともに、ハウジング挿入孔60内において、雄型の光コネクタ10Mの一対のガイドピン16、16が、それぞれ雌型の光コネクタ10Fのガイドピン挿入孔38、46に挿入されて、精密に位置決めされて、固定される。
【0108】
例えば、図11で示したように、レンズアレイプレート14がスペーサと一体になった形状の場合、ハウジング挿入孔60内において、光コネクタ10Mと光コネクタ10Fとが互いに突き合わされて、それらのレンズアレイプレート14の突出部45が互いに接触する。
【0109】
光コネクタ10M、10Fは、それぞれ上述のように付勢機構により前方に付勢されている。このため、光コネクタ10M、10Fのレンズアレイプレート14の突出部45は、互いに密着して接触する。
【0110】
以上により、MPOコネクタのコネクタハウジング50に収容された光コネクタ10Mと光コネクタ10Fとが、アダプタ58を介して接続される。
【0111】
上述した光コネクタ接続構造100MFでは、光コネクタ10M,10Fのレンズ面同士が非接触のレンズ方式であるので、PC方式に比べて光コネクタ10M,10Fの押圧力は、光ファイバ18の心数に依らず一定にでき、また必要最小限の大きさでよい。また、光コネクタ接続構造100MFでは、構造的にレンズが必要となるので、MTフェルールとレンズの長手方向の寸法がPC方式に比べて大きくなる。
【0112】
また、光コネクタ接続構造100MFでは、通常のMPOコネクタと押圧力が等しくなるように、コネクタハウジングに用いるばねの長さもしくはばね定数を調整すればよい。更に、光コネクタ接続構造100MFでは、フェルール12としてのMTフェルールとレンズアレイプレート14を合計した長手寸法が所望値(もしくは、従来通り)となるように、MTフェルールを短くしてもよい。
【0113】
以上、実施の形態1に係る光コネクタ10では、アレイ状に配列された複数の光ファイバ18の端面180と、各光ファイバ18に対応する複数のレンズ44が形成されたレンズアレイプレート14のレンズ背面41との接合面が、それぞれの光ファイバ18の光軸に対して垂直ではない。すなわち、各光ファイバ18の端面180およびレンズアレイプレート14のレンズ背面41が各光ファイバ18の光軸181に垂直な平面182に対して傾斜しているので、各端面180およびレンズ背面41での反射した光の主軸は、光ファイバ18の光軸181に対して傾く。これにより、各端面180およびレンズ背面41で反射した光が光ファイバ18に結合する割合を低減することができる。
【0114】
したがって、実施の形態1に係る光コネクタ10を用いた光コネクタ接続構造100によれば、従来の光コネクタを用いたレンズ方式の光コネクタ接続構造に比べて、光伝送時の反射減衰量を低減することが可能となる。
【0115】
また、実施の形態1に係る光コネクタ10では、複数の光ファイバ18の端面180は、対応するレンズ44の略後側焦点Fに配置されている。すなわち、光ファイバ18のそれぞれの端面180は対応するレンズ44で反射された光が集光される点FXから当該光ファイバ18の光軸181方向にずれているので、レンズ44の凸面47で反射した光が光ファイバ18に結合する割合を減らすことができる。例えば、レンズ44の凸面47で反射した光は約15dB減衰して光ファイバ18に結合する。例えばレンズ44の凸面47での反射を-12dBとした場合、光ファイバ18に結合する割合は、約-27dBとなる。
【0116】
また、実施の形態1に係る光コネクタ10において、レンズアレイプレート14におけるレンズ44の凸面47に反射防止コーティングを施すことにより、反射減衰量を更に減らすことが可能となる。例えば、レンズ44の凸面47に多層反射防止コーティングを施した場合、例えば1310nmを中心とした±40nmの帯域でレンズ44の凸面47での反射を-40dB以下に、レンズ44の凸面47で反射した光の光ファイバ18への結合分を-55dB以下とすることが可能となる。
【0117】
なお、実施の形態1に係る光コネクタ10では、フェルール12とレンズアレイプレート14の線膨張係数に差がある場合、温度変化によりフェルール12に固定された各光ファイバ18の光軸とレンズ44の光軸との間にずれが生じるため、温度変化によって光コネクタ10の反射減衰量が変動するおそれがある。
【0118】
そこで、光コネクタ10において、フェルール12とレンズアレイプレート14の線膨張係数差が小さくなるように、フェルール12およびレンズアレイプレート14の材料を選択することが望ましい。例えば、フェルール12とレンズアレイプレート14の線膨張係数差が20ppm/℃以下となるように、フェルール12のベース材(例えば、ポリフェニレンスルフィド(PPS))に混合するフィラー(例えば、石英ガラス)の混合量を調整する(例えば減らす)ことが好ましい。
【0119】
または、光コネクタ10において、フェルール12とレンズアレイプレート14を同一の材料で形成してもよい。上記材料としては、シクロオレフィンポリマー(COP,線膨張係数:70ppm/℃)やポリエーテルイミド(PEI,線膨張係数:56ppm/℃)、ポリカーボネート(PC,線膨張係数:70ppm/℃)等を例示することができる。
【0120】
≪実施の形態2≫
図13は、実施の形態2に係る光コネクタ10Aの構成を示す図である。同図には、実施の形態2に係る光コネクタ10Aにおける光ファイバ18とレンズアレイプレート14Aとの接合部分が模式的に示されている。なお、図13には、一例として、フェルール12に固定された複数の光ファイバ18のうち一つの光ファイバ18と、それに対応する一つのレンズ44Aとが代表的に図示されている。
【0121】
実施の形態2に係る光コネクタ10Aは、複数のレンズ44Aのぞれぞれの光軸440Aが対応する光ファイバ18の光軸180Aに対してずれている点において、実施の形態1に係る光コネクタ10と相違し、その他の点においては、実施の形態1に係る光コネクタ10と同様である。
【0122】
具体的に、光コネクタ10Aにおいて、レンズアレイプレート14Aのレンズ側端面40に形成された各レンズ44Aの光軸440Aは、対応する光ファイバ18の光軸181と垂直な方向にずれている(オフセットしている)。
【0123】
レンズ44の光軸440Aの光ファイバ18の光軸181に対する垂直方向のずれ幅(オフセット長)をLoffとしたとき、Loff≧5μmであることが好ましい。
【0124】
図14は、実施の形態2に係る光コネクタ10Aにおける光の伝搬を説明するための図である。
図14に示されるように、光コネクタ10Aでは、レンズ44Aの光軸440Aが光ファイバ18の光軸181に対してオフセットしているので、光ファイバ18からレンズアレイプレート14Aに入射した光の一部がレンズ44Aの凸面47Aで反射した場合、その反射光の主軸421は、反射する前の光の主軸420に対して傾く。これにより、レンズ44Aの凸面47Aでの反射光が光ファイバ18に結合する割合を低減することが可能となる。
【0125】
次に、実施の形態2に係る光コネクタ10Aを用いた光コネクタ接続構造について説明する。
図15は、実施の形態2に係る光コネクタ10Aを用いた光コネクタ接続構造を示す図である。なお、図15には、一例として、フェルール12に固定された複数の光ファイバ18のうち一つの光ファイバ18と、それに対応する一つのレンズ44Aとが代表的に図示されている。
【0126】
図15に示すように、光コネクタ接続構造100Aにおいて、2つの光コネクタ10Aは、一方の光コネクタ10Aの複数のレンズ44Aと、他方の光コネクタ10Aの複数のレンズ44Aとが対向して配置される。
【0127】
光コネクタ接続構造100Aにおいて、2つの光コネクタ10Aは、実施の形態1に係る光コネクタ接続構造100と同様に、一方の光コネクタ10Aのレンズ44Aのレンズ頂点と他方の光コネクタ10Aのレンズ44Aのレンズ頂点との間のレンズ端間距離L0が適切な値となるように、互いに離間して配置されている。
【0128】
また、光コネクタ接続構造100Aにおいて、2つの光コネクタ10Aは、一方の光コネクタ10Aにおけるレンズ44Aの光軸440Aの光ファイバ18の光軸181に対するずれの方向が、他方の光コネクタ10Aにおけるレンズ44Aの光軸440Aの光ファイバ18の光軸181に対するずれの方向と反対となるように、対向して配置されている。
【0129】
例えば、図15に示すように、2つの光コネクタ10Aの対応する光ファイバ18の光軸181を一致させて配置したとき、一方の光コネクタ10Aのレンズ44Aは、共通の光ファイバ18の光軸18Aに対してZ軸の正方向にオフセット長Loffだけずれて配置され、他方の光コネクタ10Aのレンズ44Aは、共通の光ファイバ18の光軸18Aに対してZ軸の負方向にオフセット長Loffだけずれて配置される。
【0130】
図16は、実施の形態2に係る光コネクタ接続構造100Aにおける光の伝搬を説明するための図である。
図16に示されるように、光コネクタ接続構造100Aでは、2つの光コネクタ10Aのそれぞれのレンズ44Aが光ファイバ18の光軸181に対して互いに反対の方向にオフセットした状態で対向配置されるので、一方の光コネクタ10Aから光ファイバ18の光軸181に対して斜めに出射した光を、他方の光コネクタ10Aのレンズ44Aに適切に入射させることが可能となる。これにより、光コネクタ10Aにおいてレンズ44Aの光軸440Aが光ファイバ18の光軸181に対してオフセットしていることに起因して発生し得る光の伝送損失を補償することが可能となる。
【0131】
また、光コネクタ接続構造100Aでは、オフセット長Loffが大きいほど2つの光コネクタ10Aのレンズ端間距離L0を小さくすることにより、光の伝送損失を低減することが可能となる。したがって、光コネクタ接続構造100Aでは、オフセット長Loffに応じてレンズ端間距離L0を適宜調整すればよい。
【0132】
以上、実施の形態2に係る光コネクタ10Aによれば、各レンズ44Aの光軸440Aは、対応する光ファイバ18の光軸181と垂直な方向にずれているので、レンズ44Aの凸面47Aでの反射光が光ファイバ18に結合する割合を低減することが可能となる。これにより、光伝送時の反射減衰量を低減することが可能となる。
【0133】
例えば、レンズ44の凸面47に反射防止コーティングを施したとしても、光コネクタ10に入射される光が1260nmから1565nmの波長帯(OバンドからCバンドまで)と広帯域である場合には、反射防止コーティングの波長依存性に基づく反射防止性能の低下の影響を受け、反射減衰量が-25dB程度となってしまい、-45dB以下の反射を全波長帯域で得るのが困難になるおそれがある。しかしながら、実施の形態2に係る光コネクタ10Aによれば、上述のように反射防止コーティングの反射防止性能が低下する場合であっても、-45dB以下の反射減衰量を実現することが可能となる。
【0134】
また、実施の形態2に係る光コネクタ10Aを用いた光コネクタ接続構造100Aでは、一方の光コネクタ10Aにおけるレンズ44Aの光軸440Aの光ファイバ18の光軸181に対するずれの方向が、他方の光コネクタ10Aにおけるレンズ44Aの光軸440Aの光ファイバ18の光軸181に対するずれの方向と反対となるように、2つの光コネクタ10Aが対向配置されている。これによれば、上述したように、レンズ44Aの光軸440Aが光ファイバ18の光軸181に対してオフセットしていることに起因して発生し得る光の伝送損失を補償することが可能となる。
【0135】
また、図17に示すように、光コネクタ接続構造100Aは、実施の形態1に係る光コネクタ接続構造100と同様に、レンズ対400A_1~400A_n毎のレンズアレイプレート14A内の光路長が互いに等しくなるように構成されていてもよい。すなわち、図17において、(La1+Lb1)=(Lan+Lbn)となるように、光コネクタ接続構造100Aを構成してもよい。
【0136】
これによれば、レンズ対400A_1~400A_nに基づく各光伝送路間の伝送特性の相対的な誤差を減らすことができるので、光コネクタ接続構造100Aにおいて、各光伝送路間で均一な反射減衰量を実現することが可能となる。
【0137】
≪実施の形態3≫
図18は、実施の形態3に係る光コネクタ10Bの構成を示す図である。同図には、実施の形態3に係る光コネクタ10Bにおける光ファイバ18とレンズアレイプレート14Bとの接合部分が模式的に示されている。なお、図18には、一例として、フェルール12に固定された複数の光ファイバ18のうち一つの光ファイバ18と、それに対応する一つのレンズ44Aとが代表的に図示されている。
【0138】
実施の形態3に係る光コネクタ10Bは、複数のレンズ44Bのぞれぞれの光軸440Bが対応する光ファイバ18の光軸180Bに対してずれている点において、実施の形態1に係る光コネクタ10と相違し、その他の点においては、実施の形態1に係る光コネクタ10と同様である。
【0139】
具体的に、光コネクタ10Bにおいて、レンズアレイプレート14Bのレンズ側端面40に形成された各レンズ44Bの光軸440Bは、対応する光ファイバ18の光軸181に対して傾斜している(チルトしている)。
【0140】
各レンズ44Bの光軸440Bの光ファイバ18の光軸181に対する傾斜角度をφ〔度(°)〕としたとき、0°<φ<90°であり、好ましくは、φ≧2°、更に好ましくは6°である。
【0141】
図19は、実施の形態3に係る光コネクタ10Bにおける光の伝搬を説明するための図である。
図19に示されるように、光コネクタ10Bでは、レンズ44Bの光軸440Bが光ファイバ18の光軸181に対してチルトしているので、光ファイバ18からレンズアレイプレート14Bに入射した光の一部がレンズ44Bの凸面47Bで反射した場合、その反射光の主軸422は、反射する前の光の主軸420に対して傾く。これにより、レンズ44Bの凸面47Bでの反射光が光ファイバ18に結合する割合を低減することが可能となる。
【0142】
次に、実施の形態3に係る光コネクタ10Bを用いた光コネクタ接続構造について説明する。
図20は、実施の形態3に係る光コネクタ10Bを用いた光コネクタ接続構造を示す図である。なお、図20には、一例として、フェルール12に固定された複数の光ファイバ18のうち一つの光ファイバ18と、それに対応する一つのレンズ44Aとが代表的に図示されている。
【0143】
図20に示すように、光コネクタ接続構造100Bにおいて、2つの光コネクタ10Bは、一方の光コネクタ10Bの複数のレンズ44Bと、他方の光コネクタ10Bの複数のレンズ44Bとが対向して配置される。
【0144】
光コネクタ接続構造100Bにおいて、2つの光コネクタ10Bは、実施の形態1に係る光コネクタ接続構造100と同様に、一方の光コネクタ10Bのレンズ44Bのレンズ頂点と他方の光コネクタ10Bのレンズ44Bのレンズ頂点との間のレンズ端間距離L0が適切な値となるように、互いに離間して配置されている。
【0145】
また、光コネクタ接続構造100Bにおいて、2つの光コネクタ10Bは、一方の光コネクタ10Bにおけるレンズ44Bの光軸440Bの光ファイバ18の光軸181に対する傾きの方向が、他方の光コネクタ10Bにおけるレンズ44Bの光軸440Bの光ファイバ18の光軸181に対する傾きの方向と反対となるように、対向して配置されている。
【0146】
例えば、図20に示すように、2つの光コネクタ10Bを対向配置した場合、一方の光コネクタ10Bのレンズ44Bは、そのレンズ44Bの光軸440Bが共通の光ファイバ18の光軸181に対してZ軸の正方向に傾斜角度φだけ傾くように配置され、他方の光コネクタ10Bのレンズ44AB、そのレンズ44Bの光軸440Bが共通の光ファイバ18の光軸181に対してZ軸の負方向に傾斜角度φだけ傾くように配置される。
【0147】
図21は、実施の形態3に係る光コネクタ接続構造100Bにおける光の伝搬を説明するための図である。
図21に示されるように、光コネクタ接続構造100Bでは、2つの光コネクタ10Bのそれぞれのレンズ44Bの光軸440Bが光ファイバ18の光軸181に対して互いに反対の方向にチルトした状態で対向配置されるので、一方の光コネクタ10Bから光ファイバ18の光軸181に対して斜めに出射した光を、他方の光コネクタ10Bのレンズ44Bに適切に入射させることが可能となる。これにより、光コネクタ10Bにおいてレンズ44Bの光軸440Bが光ファイバ18の光軸181に対してオフセットしていることに起因して発生し得る光の伝送損失を補償することが可能となる。
【0148】
また、光コネクタ接続構造100Bにおいて、オフセットが大きいほど光の伝送損失が最小となる2つの光コネクタ10Bのレンズ端間距離L0は小さくなる。したがって、光コネクタ接続構造100Bでは、オフセットに応じてレンズ端間距離L0を適宜調整すればよい。
【0149】
また、光コネクタ接続構造100Bにおいて、傾斜角度φが大きいほど光の伝送損失が最小となる2つの光コネクタ10Bのレンズ端間距離L0は大きくなる。したがって、光コネクタ接続構造100Bでは、傾斜角度φに応じてレンズ端間距離L0を適宜調整すればよい。
【0150】
以上、実施の形態3に係る光コネクタ10Bによれば、各レンズ44Bは、そのレンズ44Bの光軸440Bが対応する光ファイバ18の光軸181に対して傾斜して配置されているので、レンズ44Bの凸面47Bでの反射光が光ファイバ18に結合する割合を低減することが可能となる。これにより、光伝送時の反射減衰量を低減することが可能となる。
【0151】
また、実施の形態3に係る光コネクタ10Bを用いた光コネクタ接続構造100Bでは、一方の光コネクタ10Bにおけるレンズ44Bの光軸440Bの光ファイバ18の光軸181に対する傾斜の方向が、他方の光コネクタ10Bにおけるレンズ44Bの光軸440Bの光ファイバ18の光軸181に対する傾斜の方向と反対となるように、2つの光コネクタ10Bが対向配置されている。これによれば、上述したように、レンズ44Bの光軸440Bが光ファイバ18の光軸181に対してチルトしていることに起因して発生し得る光の伝送損失を補償することが可能となる。
【0152】
また、図22に示すように、光コネクタ接続構造100Bは、実施の形態1に係る光コネクタ接続構造100と同様に、レンズ対400B_1~400B_n毎のレンズアレイプレート14B内の光路長が互いに等しくなるように構成されていてもよい。すなわち、図22において、(La1+Lb1)=(Lan+Lbn)となるように、光コネクタ接続構造100Aを構成してもよい。
これによれば、レンズ対400_1~400_nに基づく各光伝送路間の伝送特性の相対的な誤差を減らすことができるので、光コネクタ接続構造100Bにおいて、各光伝送路間で均一な反射減衰量を実現することが可能となる。
【0153】
なお、上記実施の形態3では、レンズ側端面40が光ファイバ18の光軸18Bに対して垂直であり、且つレンズ背面41が光ファイバ18の光軸18Bに対して非垂直であるレンズアレイプレート14Bを用いる場合を例示したが、光軸440Bが光ファイバ18の光軸181に対して傾斜したレンズ44Bを有していれば、レンズアレイプレートの形状は特に限定されない。
【0154】
例えば、図23に示す光コネクタ10Bxのように、レンズ44Bxが形成されたレンズ側端面40Bxとレンズ背面41Bxとが平行なレンズアレイプレート14Bxを用意し、レンズアレイプレート14Bxのレンズ背面41Bxを接着剤19によってフェルール12の接続側端面34に接合してもよい。これによれば、レンズ44Bxの形成が容易となる。ただし、この場合、ガイドピン挿入孔46をレンズ側端面40Bxに対して傾斜させて形成する必要がある。
【0155】
≪実施の形態の拡張≫
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0156】
例えば、上記実施の形態では、フェルール12がレンズアレイプレート14,14A,14Bとは別個の部品として構成されている場合を例示したが、フェルール12は、レンズアレイプレート14,14A,14Bと一体的に形成されていてもよい。
例えば、図24に示す光コネクタ10Cのように、フェルールと同一の材料で一体的に形成したレンズアレイプレート14Cに開口部48を形成する。開口部48は、その内壁面48A,48Bが、光ファイバ18の光軸181に垂直な平面182に対して傾斜するように形成される(傾斜角度θ≧5°)。そして、光ファイバ挿入孔36に光ファイバ18を挿入し、光ファイバ18の端面180を開口部48の内壁面48Bに接触させた状態で、開口部48に接着剤19を充填する。
【0157】
光コネクタ10Cによれば、上述した光コネクタ10,10A,10Bと同様の作用および効果が期待できる。
【0158】
また、上記実施の形態では、図9等に示すように、対向配置された一対のレンズ44毎のレンズアレイプレート14内の光路長が互いに等しくなるように、2つの光コネクタ10が配置される場合を例示したが、これに限られない。例えば、図25に示す2つの光コネクタ10Dから成る光コネクタ接続構造100Dのように、各レンズ44のレンズアレイプレート14D内の光路長L3が互いに等しくなるように、レンズアレイプレート14のレンズ背面41Dおよびフェルール12Dの接続側端面34Dを階段状に形成してもよい。
【0159】
また、上記実施の形態では、複数の光ファイバ18が複数の光ファイバテープ心線20の積層体として実現される場合を例示したが、これに限定されるものではなく、単心の光ファイバ心線を複数用いてもよい。また、複数の光ファイバ18は、ケーブル、コード等に内蔵されたものであってもよい。
【0160】
また、上記実施の形態では、光ファイバ18の端面180と、第2主面としてのレンズアレイプレート14のレンズ背面41とが、それぞれの光ファイバ18の光軸181に垂直な平面182に対して傾斜している場合を例示したが、これに限られない。
【0161】
例えば、図26に示す光コネクタ10Eのように、第2主面としてのレンズアレイプレート14のレンズ背面41が光ファイバ18の光軸181に垂直な平面182に対して傾斜し、光ファイバ18Eの端面180Eが平面182と平行であってもよい。あるいは、光ファイバ18Eの端面180Eが平面182に対して傾斜し、第2主面としてのレンズアレイプレート14のレンズ背面41が平面182と平行であってもよい。すなわち、光ファイバ18の端面180および第2主面としてのレンズアレイプレート14のレンズ背面41の少なくとも一方が、それぞれの光ファイバ18の光軸181に垂直な平面182に対して傾斜していればよい。
この場合、光ファイバアレイとレンズアレイプレートの接着に用いる接着剤18の屈折率は、界面を傾斜させない側の媒体(光ファイバまたはレンズアレイプレート)の屈折率に整合していることが好ましい。
【0162】
なお、図26に示す光コネクタ10Eの場合、上述と同様に、レーザークリーバーを用いて一端を溶融によって切断した光ファイバを用いてもよい。すなわち、図27に示すように、光コネクタ10Eの光ファイバ18Eの切断面(端面180E)は、溶融時の熱により、丸まった形状であってもよい。
【符号の説明】
【0163】
100,100A,100B,100D,100MF…光コネクタ接続構造、10,10A,10B,10BX,10C,10D,10M,10F,10a,10b…光コネクタ、12…フェルール、14,14A,14B,14C,14D…レンズアレイプレート、18…光ファイバ、19…接着剤、24…フェルール本体部、34,34D…接続側端面、36…光ファイバ挿入孔、38…ガイドピン挿入孔、40…レンズ側端面、41,41A,41B,41D,41X,…レンズ背面、44,44A,44B…レンズ、45…突出部、46…ガイドピン挿入孔、47,47A,47B…凸面、48…開口部、48A,48B…内壁面、180…光ファイバ18の端面、181…光ファイバ18の光軸、182…光軸181に垂直な平面、θ,φ…傾斜角度、400_1~400_n…レンズ対、200…スペーサ、L0…レンズ端間距離、La1,Lb1,Lan,Lab…光路長、F…後側焦点、FX…反射光が焦点を結ぶ点。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28