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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】シールドフラットケーブル
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/08 20060101AFI20221031BHJP
【FI】
H01B7/08
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020072914
(22)【出願日】2020-04-15
(65)【公開番号】P2021170463
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2021-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】杉本 薫
(72)【発明者】
【氏名】中村 優斗
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-097882(JP,A)
【文献】特開2017-033837(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅方向に間隔をおいて並列配置され、1本または2本以上の通信用導体を含む複数本の導体を有するフラットケーブルと、
前記フラットケーブルの両面に長手方向に沿って配設される1対の絶縁被覆部と
を有するシールドフラットケーブルであって、
前記1対の絶縁被覆部のうちの少なくとも一方の絶縁被覆部の内面側部分に、導体材料からなるグランド面を有し、
前記グランド面と、前記1本または2本以上の通信用導体が位置する前記フラットケーブルの表面部分は、内部空間が形成されるように離隔配置され
前記絶縁被覆部と前記フラットケーブルの間であって、かつ、前記1本または2本以上の通信用導体の配設領域の両側にそれぞれ隣接して位置する1対の導体から、前記フラットケーブルの幅方向外側の両端部にそれぞれ位置する導体までの領域である1対の外側領域がそれぞれ被覆される、1対の第1スペーサ層を有し、
前記内部空間は、前記1対の第1スペーサ層によって挟まれる領域に形成されることを特徴とする、シールドフラットケーブル。
【請求項2】
前記内部空間は、前記長手方向に沿って形成される、請求項1に記載のシールドフラットケーブル。
【請求項3】
前記グランド面の幅は、前記フラットケーブルの、少なくとも前記1本または2本以上の通信用導体の配設領域の幅以上である、請求項1または2に記載のシールドフラットケーブル。
【請求項4】
前記フラットケーブルを構成する前記複数本の導体は、2本以上の通信用導体を含み、
前記絶縁被覆部と前記フラットケーブルの間であって、かつ、前記2本以上の通信用導体同士の間に対応する前記フラットケーブルの表面位置に、第2スペーサ層をさらに有する、請求項1からのいずれか1項に記載のシールドフラットケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低誘電率であって、全長にわたって特性インピーダンスの値が安定していて薄型化が図れるとともに、屈曲性にも優れたシールドフラットケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
シールドフラットケーブルは、AV機器やOA機器、より具体的には液晶テレビなどのデジタル機器の発達および普及に伴い、通信回路における高速伝送ケーブルとして用いられている。
【0003】
シールドフラットケーブルとしては、例えば特許文献1に、導体上に発泡プラスチック絶縁層を具えた絶縁線心の複数本とアース線を平行に配列し、この上下より片面に導電層を有する発泡プラスチック体で、上記導電層を内側にしてサンドイッチ状に一体化してなる、シールド型多心フラットケーブルが記載されている。特許文献1のシールド型多心フラットケーブルでは、誘電率の低い発泡プラスチック絶縁層を設けることで、微弱な電気信号の伝送ロスが少なくなることで、高速で伝送を行える利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平08-064037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年では、有線通信による高速伝送の手段として、差動伝送が用いられている。差動伝送は、二本の信号線(通信用導体)を用いて互いに逆相の電流を流すことで、信号線間の電位差によってデータを伝送する方法である。差動伝送は、二本の信号線に同じノイズが加わったとしても、信号線間の電位差に影響を及ぼさないため、外部からのノイズがあっても誤動作が起こり難い利点を有する。また、二本の信号線に互いに逆向きに電流が流れることで、電流によって生じる磁束が打ち消されるため、信号の高調波によるEMIノイズを低減する利点も有する。
【0006】
他方で、差動伝送による伝送速度を高める場合、信号の立ち上がりや立ち下がりに要する時間を短くするため、電圧の振幅を小さくすることが望ましい。しかし、電圧の振幅を小さくする場合には、電気信号の伝送ロスをより少なくする必要があり、そのためにはシールドフラットケーブルの誘電率をより低くし、かつケーブルの全体としての特性インピーダンスを設定値に沿った適正な値にすることが望まれる。
【0007】
これに関し、特許文献1に記載されるシールドフラットケーブルは、発泡プラスチック絶縁層や発泡プラスチック体に形成される気泡の大きさや、気泡の量にばらつきが生じやすい。そのため、誘電率を低減することや、特性インピーダンスを設定値に沿った適正な値にすることについて、さらなる改善の余地がある。
【0008】
また、特許文献1のシールドフラットケーブルでは、発泡プラスチック絶縁層の発泡度を高めることで誘電率を小さくし、それにより信号伝送特性の改善を図っているが、発泡プラスチック絶縁層の発泡度が高いものほど、発泡プラスチック絶縁層が劣化しやすく、屈曲時などにおける破損も起こりやすい。そのため、シールドフラットケーブルへの破損を起こり難くする点においても、改善の余地がある。
【0009】
本発明の目的は、低誘電率であって、全長にわたって特性インピーダンスの値が安定していて薄型化が図れるとともに、屈曲性にも優れたシールドフラットケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上述した課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、絶縁被覆部の内面側部分に設けられる導体材料からなるグランド面と、通信用導体を含むフラットケーブルの表面部分を、内部空間が形成されるように離隔配置することで、内部空間に外気からなるガス層が形成されるため、低い誘電率と設定値に沿った適正な特性インピーダンスが得られるとともに、フラットケーブルを屈曲させた場合であっても、内部空間が容易に変形することで、屈曲時などに破損が起こり難くなることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の要旨構成は、以下のとおりである。
(1)幅方向に間隔をおいて並列配置され、1本または2本以上の通信用導体を含む複数本の導体を有するフラットケーブルと、前記フラットケーブルの両面に長手方向に沿って配設される1対の絶縁被覆部とを有するシールドフラットケーブルであって、前記1対の絶縁被覆部のうちの少なくとも一方の絶縁被覆部の内面側部分に、導体材料からなるグランド面を有し、前記グランド面と、前記1本または2本以上の通信用導体が位置する前記フラットケーブルの表面部分は、内部空間が形成されるように離隔配置されることを特徴とする、シールドフラットケーブル。
(2)前記内部空間は、前記長手方向に沿って形成される、上記(1)に記載のシールドフラットケーブル。
(3)前記絶縁被覆部と前記フラットケーブルの間であって、かつ、前記1本または2本以上の通信用導体の配設領域の両側にそれぞれ隣接して位置する1対の導体から、前記フラットケーブルの幅方向外側の両端部にそれぞれ位置する導体までの領域である1対の外側領域に、それぞれ第1スペーサ層を有する、上記(1)または(2)に記載のシールドフラットケーブル。
(4)前記グランド面の幅は、前記フラットケーブルの、少なくとも前記1本または2本以上の通信用導体の配設領域の幅以上である、上記(1)、(2)または(3)に記載のシールドフラットケーブル。
(5)前記フラットケーブルを構成する前記複数本の導体は、2本以上の通信用導体を含み、前記絶縁被覆部と前記フラットケーブルの間であって、かつ、前記2本以上の通信用導体同士の間に対応する前記フラットケーブルの表面位置に、第2スペーサ層をさらに有する、上記(1)から(4)のいずれか1項に記載のシールドフラットケーブル。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、低誘電率であって、全長にわたって特性インピーダンスの値が安定していて薄型化が図れるとともに、屈曲性にも優れたシールドフラットケーブルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明に従う第1実施形態のシールドフラットケーブルの構造の一例を示した図であって、図1(a)が平面図、図1(b)が図1(a)のI-I断面図である。
図2図2(a)、(b)、(c)は、本発明に従う第1実施形態のシールドフラットケーブルの構造の種々の変形例を示した図であって、フラットケーブルの長手方向に対して垂直に切断したときの断面図である。
図3図3は、本発明に従う第2実施形態のシールドフラットケーブルの構造の一例を示した図であって、フラットケーブルの長手方向に対して垂直に切断したときの断面図である。
図4図4は、本発明に従う第3実施形態のシールドフラットケーブルの構造の一例を示した図であって、フラットケーブルの長手方向に対して垂直に切断したときの断面図である。
図5図5は、本発明に従う第4実施形態のシールドフラットケーブルの構造の一例を示した図であって、フラットケーブルの長手方向に対して垂直に切断したときの断面図である。
図6図6は、本発明に従う第5実施形態のシールドフラットケーブルの構造の一例を示した図であって、フラットケーブルの長手方向に対して垂直に切断したときの断面図である。
図7図7は、本発明に従う第6実施形態のシールドフラットケーブルの構造の一例を示した図であって、フラットケーブルの長手方向に対して垂直に切断したときの断面図である。
図8図8は、本発明に従う第7実施形態のシールドフラットケーブルの構造の一例を示した図であって、図8(a)が平面図、図8(b)が図8(a)のII-II断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の好ましい実施形態について、以下で説明する。
【0015】
本発明のシールドフラットケーブル1は、幅方向Wに間隔Pをおいて並列配置され、1本または2本以上の通信用導体22を含む複数本の導体21を有するフラットケーブル2と、フラットケーブル2の両面に長手方向Xに沿って配設される1対の絶縁被覆部3、3’とを有するものである。ここで、1対の絶縁被覆部3、3’のうちの少なくとも一方の絶縁被覆部3(3’)の内面側部分3a(3a’)に、導体材料からなるグランド面4a(4a’)を有する。また、グランド面4a(4a’)と、1本または2本以上の通信用導体22が位置するフラットケーブル2の表面部分24a(24a’)は、内部空間5(5’)が形成されるように離隔配置される。
【0016】
このように、シールドフラットケーブル1は、絶縁被覆部3(3’)の内面側部分3a(3a’)に設けられる導体材料からなるグランド面4a(4a’)と、通信用導体22を含むフラットケーブル2の表面部分24a(24a’)とを、内部空間5(5’)が形成されるように離隔配置することで、内部空間5(5’)には空気などの外気が侵入することにより、内部空間5(5’)に外気によって構成されるガス層が形成される。それにより、フラットケーブル2の通信用導体22の近傍の部分に、内部空間5(5’)に形成されるガス層が隣接する。ここで、空気は、比誘電率が1.0であるため、1.9~2.4の比誘電率を有している発泡プラスチックと比べて、比誘電率が大幅に低い。また、空気以外のガスも、大多数が1.0前後の比誘電率を有しており、発泡プラスチックと比べて比誘電率が大幅に低い。加えて、フラットケーブル2のうち通信用導体22の近傍に、ガス層が形成された内部空間5(5’)のみが隣接するようになることで、発泡プラスチックのような特性インピーダンスの異なる相の混在がなくなるため、特性インピーダンスの値をより安定させることができる。さらに、シールドフラットケーブル1が、グランド面4a(4a’)とフラットケーブル2の表面部分24a(24a’)とを、内部空間5(5’)が形成されるように離隔配置することにより、シールドフラットケーブル1を屈曲させた場合であっても、内部空間5(5’)が容易に変形することで、破損が起こり難くなる。したがって、低誘電率であって、全長にわたって特性インピーダンスの値が安定していて薄型化が図れるとともに、屈曲性にも優れたシールドフラットケーブル1を提供することができる。
【0017】
内部空間5(5’)で形成されるガス層を構成するガスとしては、空気のほか、窒素(N)ガス、酸素(O)ガス、二酸化炭素(CO)ガス、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガスなどを挙げることができ、特に限定されない。
【0018】
<第1実施形態>
図1は、本発明に従う第1実施形態のシールドフラットケーブルの構造の一例を示した図であって、図1(a)が平面図、図1(b)が図1(a)のI-I断面図である。また、図2(a)、(b)、(c)は、本発明に従う第1実施形態のシールドフラットケーブルの構造の種々の変形例を示した図であって、フラットケーブル2の長手方向Xに対して垂直に切断したときの断面図である。なお、図1(b)は、第1実施形態のシールドフラットケーブルの断面構造を拡大して示すため、図1(a)のI-I断面を90°だけ回転させた状態で示す。
【0019】
本発明に従う第1実施形態に係るシールドフラットケーブル1は、フラットケーブル2と、絶縁被覆部3、3’とを有する。また、このシールドフラットケーブル1は、グランド面4a、4a’を有する導体層4、4’を備え、グランド面4a、4a’とフラットケーブル2の表面部分24a、24a’との間に、内部空間5、5’が形成されるものである。
【0020】
(フラットケーブル)
フラットケーブル2は、幅方向Wに間隔Pをおいて並列配置され、1本または2本以上の通信用導体22を含む複数本の導体21を有するように構成される。これにより、導体21はフラットな形状に配置されるため、幅方向Wに沿った平面を備えたフラットケーブル2を構成することができる。
【0021】
フラットケーブル2に含まれる導体21としては、1本または2本以上の通信用導体22を含むことが好ましく、2本以上の通信用導体22を含むことがより好ましい。また、通信用導体22は、2本以上が並列配置されている箇所が、フラットケーブル2内に複数箇所に分散して存在していてもよい。特に、隣り合う2本以上の通信用導体22が並列配置されていることで、これらの通信用導体22における電気的ノイズを平準化させることができるため、差動伝送に好適なシールドフラットケーブル1を得ることができる。
【0022】
通信用導体22は、フラットケーブル2の長手方向Xに沿って配置される。ここで、通信用導体22は、フラットケーブル2の中で、1ヶ所に纏められていてもよく、複数箇所に分散していてもよい。特に、通信用導体22を複数箇所に分散させることで、後述する内部空間5(5’)を、幅方向Wについて複数形成することができる。
【0023】
本実施形態のシールドフラットケーブルでは、導体21として、通信用導体22以外の導体23も備えていてもよい。通信用導体22以外の導体23が配設される領域(外側領域)に、後述する第1スペーサ層6、6’を配設することで、内部空間5、5’の空間形状を維持することができ、それにより特性インピーダンスの値を安定させることができる。特に、シールドフラットケーブル1を屈曲状態で使用したとしても、屈曲時に加わる応力を分散させて、内部空間5、5’の空間形状を維持しやすくすることができる。なお、通信用導体22以外の導体23は、他の用途、例えば信号用導体などとして用いられていてもよく、また、通電させなくてもよい。
【0024】
導体21の材質としては、特に限定されず、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金などを挙げることができる。また、導体21の断面形状についても、特に限定されず、例えば、フラットケーブル2の長手方向Xに対して垂直に切断したときの断面形状として、正方形、長方形、円形、楕円形などの種々の形状を挙げることができる。
【0025】
導体21は、例えば図1(a)に記載されるように、コネクタ90を介して、通信機器などと接続されることが好ましい。
【0026】
フラットケーブルを構成する複数本の導体21は、互いに電気絶縁するため、通常は、プラスチック絶縁層24で被覆されており、それによりフラットケーブル2が構成されている。これにより、フラットケーブル2は、断面高さが低くなるように複数本の導体21が並列配置して一体的に纏められているため、シールドフラットケーブル1を形成する際の取り扱いを容易にすることができる。
【0027】
プラスチック絶縁層24の厚さは、例えば0.018mm~0.090mmの範囲にすることができる。本実施形態では、プラスチック絶縁層24の外側に、より誘電率の低いガスが入り込んでいる内部空間5、5’が存在するため、プラスチック絶縁層24の厚さは薄いことが好ましい。
【0028】
プラスチック絶縁層24の材質としては、特に限定されないが、可撓性を有し、かつ発泡のないプラスチックによって形成されることが好ましい。これにより、シールドフラットケーブル1が曲げられたとしても、プラスチック絶縁層24が曲げ変形に容易に追随することができる。また、発泡プラスチックのように、プラスチックに形成される気泡の大きさや、気泡の量が、誘電率や特性インピーダンスにばらつきを生じさせることがないため、シールドフラットケーブル1の内部における誘電率や特性インピーダンスの分布を安定にすることができる。したがって、シールドフラットケーブル1の特性インピーダンスを、設定値に沿った適正な値にすることができる。
【0029】
(絶縁被覆部)
絶縁被覆部3、3’は、フラットケーブル2の両面に長手方向Xに沿って配設される、1対の被覆である。
【0030】
ここで、絶縁被覆部3、3’は、フラットケーブル2の少なくとも両面に、後述する第1スペーサ層6A(6A’)や導体層4(4’)、内部空間5(5’)を挟んで被覆するように構成されることが好ましい。これにより、シールドフラットケーブル1の内容物が、外部の衝撃などから保護されるため、フラットケーブル2に含まれるプラスチック絶縁層24の厚さを薄くすることができる。その結果、誘電率の低い外気からなるガスが入り込んだ内部空間5、5’の近くに、導体21を位置させることができる。
【0031】
絶縁被覆部3、3’は、図2(a)および図2(b)に示すように、フラットケーブル2の両面および側端面の両方を被覆するように配設されることが好ましい。より具体的には、図2(a)のシールドフラットケーブル1Aに示すように、絶縁被覆部3A(3A’)と後述する第1スペーサ層6A(6A’)の両方について、フラットケーブル2の両面および側端面の両方を被覆するように配設してもよい。また、図2(b)のシールドフラットケーブル1Bに示すように、絶縁被覆部3A(3A’)について、フラットケーブル2の両面および側端面の両方を被覆するように配設するとともに、第1スペーサ層6、6’については、フラットケーブル2の両面のみを被覆するように配設してもよい。他方で、図2(c)のシールドフラットケーブル1Cに示すように、絶縁被覆部3、3’を、フラットケーブル2の両面のみを被覆するように配設してもよい。
【0032】
(導体層)
導体層4(4’)は、1対の絶縁被覆部3、3’のうちの少なくとも一方の絶縁被覆部3(3’)の内面側部分3a(3a’)に設けられ、導体材料からなるグランド面4a(4a’)を有する。これにより、グランド面4a(4a’)にある電荷を、導体層4(4’)を通して接地させることができるため、通信用導体22などの導体21に生じる電気的ノイズを低減させて、信号伝送特性をより一層改善させることができる。
【0033】
本実施形態では、導体層4、4’は、1対の絶縁被覆部3、3’のうちの両方の絶縁被覆部3、3’の内面側部分3a、3a’にそれぞれ設けられており、導体材料からなるグランド面4a、4a’をそれぞれ有する。以下、図1(a)、(b)に基づいて説明する。
【0034】
シールドフラットケーブル1の幅方向Wに沿った、導体層4、4’のグランド面4a、4a’の幅は、フラットケーブル2の、少なくとも1本または2本以上の通信用導体22の配設領域の幅以上であることが好ましい。また、導体層4、4’のグランド面4a、4a’は、通信用導体22が配設される範囲によって区画される幅方向Wの領域である、配設領域Hを含むように構成されることが好ましい。このようにグランド面4a、4a’を構成することで、特に通信用導体22に生じる電気的ノイズを低減させることができる。
【0035】
導体層4、4’は、通信用導体22に生じる電気的ノイズをより確実に低減させる観点から、フラットケーブル2の長手方向Xの全長にわたって設けられることが好ましい。また、シールドフラットケーブル1の着脱を容易にする観点から、導体層4、4’は、図1(a)に記載されるコネクタ90を介して接地されることが好ましい。
【0036】
導体層4、4’の材質は、導電性を高める観点から、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等が好ましいが、これらには限定されない。また、導体層4、4’を形成する方法は、絶縁被覆部3、3’の内面側部分3a、3a’に導体層4、4’を形成できればよく、特に限定されない。その一例として、銅箔やアルミ箔などの金属箔を貼り合わせる方法や、無電解めっきや電解めっき等の湿式めっき法や、蒸着等の乾式めっき法など、種々の形成方法が挙げられる。
【0037】
(内部空間)
内部空間5、5’は、グランド面4a、4a’とフラットケーブル2の表面部分24a、24a’との離隔配置によって形成される空間である。この内部空間5、5’は、シールドフラットケーブル1の外部と繋がるように構成され、空気などの外気が侵入可能に構成される。この内部空間5、5’は、グランド面4a、4a’と、1本または2本以上の通信用導体22が位置するフラットケーブル2の表面部分24a、24a’とが離隔されるように配置することで形成される。これにより、比誘電率が低く、特性インピーダンスの異なる相の混在がない空気などの外気が、内部空間5、5’に入り込む。そのため、通信用導体22の近傍において低い誘電率を有し、かつ設定値に沿った適正な特性インピーダンスを有する、シールドフラットケーブル1を得ることができる。
【0038】
この内部空間5、5’は、フラットケーブル2の長手方向Xに沿って形成されることが好ましい。これにより、通信用導体22を通る電流は、誘電率の低い空気によって囲まれた領域内を流れることになるため、シールドフラットケーブル1の信号伝送特性をより高めることができる。
【0039】
内部空間5、5’を形成する手段は、特に限定されないが、フラットケーブル2と絶縁被覆部3、3’との間に形成される、第1スペーサ層6、6’によることが好ましい。
【0040】
ここで、第1スペーサ層6、6’は、絶縁被覆部3、3’とフラットケーブル2の間であって、かつ、通信用導体22の配設領域Hから幅方向Wに沿った両側に、それぞれ隣接して位置する1対の導体21から、フラットケーブル2の幅方向(シールドフラットケーブルの幅方向W)について外側にある両方の端部Tにそれぞれ位置する導体21aまでの領域である、1対の外側領域Gに有することが好ましい。これにより、第1スペーサ層6、6’によって挟まれる領域に内部空間5、5’が形成されるとともに、この内部空間5、5’では第1スペーサ層6、6’の厚さに応じた空気の層が形成される。そのため、内部空間5、5’の形状維持力を高めることができるとともに、シールドフラットケーブル1の特性インピーダンスの値を安定にすることができる。
【0041】
第1スペーサ層6、6’は、両方の端部Tを含むように構成されることが好ましい。特に、通信用導体22がフラットケーブル2の中で複数箇所に分散している場合には、通信用導体22が設けられた箇所ごとに内部空間5、5’が区画されるように、第1スペーサ層6、6’を有することも好ましい。通信用導体22が設けられた箇所ごとに、第1スペーサ層6、6’を用いて内部空間5、5’を区画するように構成することで、内部空間5、5’の形状維持力をより一層高めることができる。
【0042】
また、第1スペーサ層6、6’は、導体層4、4’との間で空隙を生じないものであることが好ましい。これにより、第1スペーサ層6、6’と導体層4、4’との空隙における応力の集中を起こり難くすることができ、それによりシールドフラットケーブル1を破損し難くすることができる。
【0043】
第1スペーサ層6、6’の厚さは、シールドフラットケーブル1において所望とされる特性インピーダンスの大きさに応じて設定することができる。例えば、所望とされる特性インピーダンスが大きい場合は、第1スペーサ層6、6’の厚さを厚く設定することが好ましい。本発明のシールドフラットケーブル1では、内部空間5、5’に保持される空気の誘電率が1.0と小さいため、所望とされる特性インピーダンスが大きい場合であっても、シールドフラットケーブル1の厚さを小さくすることが可能である。そのため、本発明のシールドフラットケーブル1によることで、より高い屈曲性をもたらすことができる。
【0044】
第1スペーサ層6、6’の材質は、特に限定されないが、シールドフラットケーブル1に屈曲性を与える観点では、可撓性を有する材料であることが好ましい。
【0045】
内部空間5(5’)および第1スペーサ層6、6’を形成する方法は、特に限定されない。その方法の一例として、接着剤層73(73’)を用いて絶縁被覆部3(3’)に導体層4(4’)を固定した後、接着剤層72(72’)を用いて絶縁被覆部3(3’)に第1スペーサ層6(6’)を固定し、次いで、接着剤層71(71’)を用いてフラットケーブル2に第1スペーサ層6(6’)を固定することで、内部空間5(5’)を形成する方法が挙げられるが、異なる方法であってもよい。
【0046】
<第2実施形態>
図3は、本発明に従う第2実施形態のシールドフラットケーブル1Dの構造の一例を示した図であって、フラットケーブル2の長手方向Xに対して垂直に切断したときの断面図である。以下の説明において、上記第1実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付してその説明を省略または簡略にし、主に相違点について説明する。
【0047】
本実施形態では、導体層4は、1対の絶縁被覆部3、3´のうちの一方の絶縁被覆部3(図3で示す下側の絶縁被覆部3)の内面側部分3aに設けられており、導体材料からなるグランド面4aを有する。また、内部空間5は、この導体層4のグランド面4aと、フラットケーブル2の表面部分24aとを離隔配置することで形成される。すなわち、本実施形態では、内部空間5は、シールドフラットケーブル1Dの一方の面のみに形成される。このとき、他方の面には、フラットケーブル2の表面部分24a’に接着剤層71D’を介して絶縁被覆部3’が形成される。これにより、シールドフラットケーブル1Dについて、より一層の薄型化を図ることができる。
【0048】
<第3実施形態>
図4は、本発明に従う第3実施形態のシールドフラットケーブル1Eの構造の一例を示した図であって、フラットケーブル2の長手方向Xに対して垂直に切断したときの断面図である。以下の説明において、上記第1実施形態または上記第2実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付してその説明を省略または簡略にし、主に相違点について説明する。
【0049】
本実施形態では、フラットケーブル2を構成する複数本の導体21は、2本以上の通信用導体22を含んで構成され、絶縁被覆部3、3’とフラットケーブル2の間であって、かつ、2本以上の通信用導体22同士の間に対応するフラットケーブル2の表面位置に、第2スペーサ層8、8’を有する。ここで、2本以上の通信用導体22に対応するフラットケーブル2の表面位置は、絶縁被覆部3、3’のそれぞれの側について、内部空間5E、5E’を挟んで導体層4、4’のグランド面4a、4a’に対向するように構成される。これにより、シールドフラットケーブル1Eが屈曲した場合であっても、第2スペーサ層8、8’によって応力が分散される。そのため、シールドフラットケーブル1Eの座屈などによる、誘電率の大小に影響する、内部空間5の空間容積の変化を抑えることができる。
【0050】
ここで、第2スペーサ層8、8’を設けたときの、導体層4、4’を備えた絶縁被覆部3、3’の変形による、内部空間5の空間容積の変化について検証する。導体層4、4’を備えた絶縁被覆部3、3’の変形は、撓みによって起こると考えられる。そのため、第2スペーサ層8、8’を設けた供試材と、第2スペーサ層8、8’を設けない供試材を想定し、シールドフラットケーブルの、内部空間を挟んだ両側部分(第1スペーサ層6、6’が位置する部分)を下方から支持した状態で、内部空間5E、5E’が位置する通信導体の配設領域である供試材の幅方向中央部分に対して、上方から下向きに、単位長さ当り10N/mmの荷重を均等に掛けたときの最大撓みδmaxを、それぞれ理論計算により求めた。なお、各供試材としては、フラットケーブル2の長手方向Xに沿った長さ寸法が1000mm、幅方向Wに沿った幅寸法が1.0mmであるものを想定した。また、各供試材は、導体21の幅がそれぞれ0.3mm、導体21の間の距離が0.6mm、導体21の厚みがそれぞれ0.035mm、絶縁被覆部3、3’の厚みがそれぞれ0.08mm、導体層4、4’である銅箔の厚さが0.035mm、シールド間距離(導体21と導体層4、4’との間の距離)が0.28mmであり、かつ、シールドフラットケーブル1の全体の厚みが0.44mmであるものとした。
【0051】
このうち、第2スペーサ層8、8’を設けないときの最大撓みWmaxは、供試材の幅方向Wの両端の2ヶ所、すなわち、幅方向Wに沿った1.0mmの大きさのうち、0mmおよび1.0mmの位置の2ヶ所を支持しながら、上述の荷重を掛けたときの最大撓みδmaxの大きさを求めた。このときの最大撓みδmaxは、0.281μmと求められた。
【0052】
また、第2スペーサ層8、8’を設けたときの最大撓みδmaxは、供試材の幅方向Wの両端と中央位置の3ヶ所、すなわち、幅方向Wに沿った1.0mmの大きさのうち、0mm、0.5mmおよび1.0mmの位置の3ヶ所を支持しながら、上述の荷重を掛けたときの最大撓みWmaxの大きさを求めた。このときの最大撓みδmaxは、0.018μmと求められた。
【0053】
このことから、幅方向Wの中央位置に第2スペーサ層8、8’を設けることで、導体層4、4’を備えた絶縁被覆部3、3’の最大撓みδmaxが、第2スペーサ層8、8’を設けない場合の6%ほどにまで小さくなることがわかる。そのため、シールドフラットケーブルに曲げ応力が作用したとしても、屈曲時における内部空間の形状変化が抑制され、外気である空気が侵入する内部空間の空間容積を維持できるため、特性インピーダンスの値を安定にすることができる。
【0054】
第2スペーサ層8、8’の材質は、低誘電材料であることが好ましく、その一例として低誘電フィルムを挙げることができる。第2スペーサ層8、8’を低誘電材料によって構成することで、第2スペーサ層8、8’に電荷が蓄積され難くなるため、シールドフラットケーブル1において所望の信号伝送特性を得易くすることができる。
【0055】
第2スペーサ層8、8’を形成する方法は、特に限定されない。その方法の一例として、接着剤層75(75’)を用いてフラットケーブル2に第2スペーサ層8(8’)を固定した後、接着剤層74(74’)を用いて第2スペーサ層8(8’)を絶縁被覆部3(3’)に固定する方法が挙げられるが、異なる方法であってもよい。
【0056】
<第4実施形態>
図5は、本発明に従う第4実施形態のシールドフラットケーブル1Fの構造の一例を示した図であって、フラットケーブル2の長手方向Xに対して垂直に切断したときの断面図である。以下の説明において、上記第1実施形態から上記第3実施形態のうち少なくともいずれかと同一の構成要素には同一の符号を付してその説明を省略または簡略にし、主に相違点について説明する。
【0057】
本実施形態のシールドフラットケーブル1Fでは、幅方向Wに沿った、導体層4F、4F’のグランド面4a、4a’の幅は、フラットケーブル2の幅と等しくなるように構成される。このとき、導体層4F、4F’のグランド面4a、4a’は、配設領域Hに加えて、外側領域Gも覆うように構成される。また、第1スペーサ層6、6’は、導体層4F、4F’のグランド面4a、4a’と重なるように形成される。このように導体層4F、4F’を構成することで、導体層4F、4F’の幅方向Wの端部が、絶縁被覆部3、3’の表面で段差を生じなくなるため、シールドフラットケーブル1Fを屈曲させた際に、応力の集中を起こり難くすることができる。
【0058】
<第5実施形態>
図6は、本発明に従う第5実施形態のシールドフラットケーブル1Gの構造の一例を示した図であって、フラットケーブル2の長手方向Xに対して垂直に切断したときの断面図である。以下の説明において、上記第1実施形態から上記第4実施形態のうち少なくともいずれかと同一の構成要素には同一の符号を付してその説明を省略または簡略にし、主に相違点について説明する。
【0059】
本実施形態のシールドフラットケーブル1Gでは、幅方向Wに沿った、導体層4G、4G’のグランド面4a、4a’の幅は、フラットケーブル2の幅と等しくなるように構成される。それとともに、フラットケーブル2を構成する複数本の導体21は、2本以上の通信用導体22を含んで構成され、絶縁被覆部3、3’とフラットケーブル2の間であって、かつ、2本以上の通信用導体22同士の間に対応するフラットケーブル2の表面位置に、第2スペーサ層8、8’を有する。ここで、2本以上の通信用導体22に対応するフラットケーブル2の表面位置は、絶縁被覆部3、3’のそれぞれの側について、内部空間5G、5G’を挟んで導体層4G、4G’のグランド面4a、4a’に対向するように構成される。
【0060】
これにより、シールドフラットケーブル1Gを屈曲させた際に、導体層4G、4G’の幅方向Wの端部が、絶縁被覆部3、3’の表面で段差を生じなくなるため、応力の集中を起こり難くすることができる。それとともに、シールドフラットケーブル1Gの座屈による内部空間5の空間容積の変化を抑えることができる。したがって、本実施形態のシールドフラットケーブル1Gによることで、屈曲により強いシールドフラットケーブル1Gを得ることができる。
【0061】
<第6実施形態>
図7は、本発明に従う第6実施形態のシールドフラットケーブル1Hの構造の一例を示した図であって、フラットケーブル2の長手方向Xに対して垂直に切断したときの断面図である。以下の説明において、上記第1実施形態から上記第5実施形態のうち少なくともいずれかと同一の構成要素には同一の符号を付してその説明を省略または簡略にし、主に相違点について説明する。
【0062】
本実施形態のシールドフラットケーブル1Hでは、内部空間5、5’を形成する手段として、フラットケーブル2と絶縁被覆部3、3’との間に形成される、厚みのある接着剤層71H、71’Hを用いる。
【0063】
ここで、接着剤層71H、71H´は、上述の第1スペーサ層6、6’の代わりに用いることができ、第1スペーサ層6、6’を用いたときと同様の構成にすることができる。
【0064】
また、接着剤層71H、71H´には、所望の厚さのものを得易くするため、接着剤層71H、71H´の厚さと略等しい直径を有する粒状の材料を、スペーサとして用いてもよい。
【0065】
<第7実施形態>
図8は、本発明に従う第7実施形態のシールドフラットケーブルの構造の一例を示した図であって、図8(a)が平面図、図8(b)が図8(a)のII-II断面図である。なお、図8(b)は、第1実施形態のシールドフラットケーブルの断面構造を拡大して示すため、図8(a)のII-II断面を90°だけ回転させた状態で示す。以下の説明において、上記第1実施形態から上記第6実施形態のうち少なくともいずれかと同一の構成要素には同一の符号を付してその説明を省略または簡略にし、主に相違点について説明する。
【0066】
本実施形態のシールドフラットケーブル1Iでは、通信用導体22の配設領域Hと、両方の端部Tとの間にあるそれぞれの外側領域Gに、スリット91を有する。これにより、シールドフラットケーブル1Iの曲げ剛性を有効に低下させることができるため、シールドフラットケーブル1Iの屈曲性をより高めることができる。
【0067】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の概念および特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【実施例
【0068】
以下に、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0069】
(本発明例1)
本発明例1のシールドフラットケーブルとして、図1に示す構造を有するシールドフラットケーブル1を構成した。より具体的には、幅方向Wの大きさが0.3mm、厚さ0.035mmの銅からなる導体21を10本用い、これらを幅方向Wに0.6mmの間隔Pをおいて並列に配置した。次いで、導体21の厚さ方向の両面に、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなる厚さ0.09mmのプラスチック絶縁層24を形成して、フラットケーブル2を形成した。
【0070】
このフラットケーブル2のうち、中央付近の隣接する2本を通信用導体22として選定し、絶縁被覆部3、3’に、通信用導体22に対応する位置を中心にして、フラットケーブル2の長手方向Xの全長にわたって、幅2.4mmの銅からなる導体層4、4’をそれぞれ設けた。次いで、この導体層4、4’と幅方向に沿って隣接し、かつフラットケーブル2の端部Tにそれぞれ位置する導体21aまで覆うように、特性インピーダンスが100Ωとなるような厚さの第1スペーサ層6、6’を、絶縁被覆部3、3’の内面側にそれぞれ設けた。そして、これらの導体層4、4’と第1スペーサ層6、6’を設けた絶縁被覆部3、3’を、フラットケーブル2の両面に設け、シールドフラットケーブル1を構成した。得られたシールドフラットケーブル1は、グランド面4a、4a’とフラットケーブル2の表面部分24a、24a’が離隔配置されており、その離隔配置された部分に内部空間5、5’が形成された。このとき、内部空間5、5’は、シールドフラットケーブル1の外部と繋がっているため、空気(比誘電率=1)が入り込んだ状態となる。その結果、本発明例1のシールドフラットケーブル1の厚さは、0.44mmとなった。
【0071】
(比較例1)
シールドフラットケーブル1に第1スペーサ層6、6’および内部空間5、5’を設ける代わりに、オレフィン樹脂(比誘電率=2)からなるスペーサを設けた。すなわち、絶縁被覆部3、3’に導体層4、4’をそれぞれ設け、その上に、フラットケーブル2の両面の全面を覆うように、特性インピーダンスが100Ωとなるような厚さのスペーサを、絶縁被覆部3、3’にそれぞれ設けた。そして、これらのスペーサを設けた絶縁被覆部3、3’を、フラットケーブル2の両面に設け、シールドフラットケーブル1を構成した。その結果、比較例1のシールドフラットケーブルの厚さは、0.64mmとなった。
【0072】
(比較例2)
シールドフラットケーブル1に第1スペーサ層6、6’および内部空間5、5’を設ける代わりに、ポリエチレンテレフタレート(PET(比誘電率=3)からなるスペーサを設けた。すなわち、絶縁被覆部3、3’に導体層4、4’をそれぞれ設け、その上に、フラットケーブル2の両面の全面を覆うように、特性インピーダンスが100Ωとなるような厚さのスペーサを、絶縁被覆部3、3’にそれぞれ設けた。そして、これらのスペーサを設けた絶縁被覆部3、3’を、フラットケーブル2の両面に設け、シールドフラットケーブル1を構成した。その結果、比較例2のシールドフラットケーブルの厚さは、1.16mmとなった。
【0073】
(厚さに関する評価結果)
これらの結果から、本発明例1のシールドフラットケーブル1は、特性インピーダンスが100Ωとなるときのシールドフラットケーブル1の厚さは、比較例1、2のシールドフラットケーブルに比べて厚さを小さくできることが分かった。
【0074】
上記結果より、本発明例1のシールドフラットケーブル1は、低い誘電率および設定値に沿った適正なインピーダンスを有しながらも、薄型であることが分かった。また、本発明例1のシールドフラットケーブル1は、フラットケーブルを屈曲させた場合であっても、内部空間が容易に変形するものであるため、屈曲性にも優れたものである。
【符号の説明】
【0075】
1、1A~1I シールドフラットケーブル
2 フラットケーブル
21 導体
22 通信用導体
23 通信用導体以外の導体
24 プラスチック絶縁層
24a、24a’ 通信用導体が位置するフラットケーブルの表面部分
3、3A、3B、3’、3A’、3B’ 絶縁被覆部
3a、3a’ 絶縁被覆部の内面側部分
4、4F、4’、4F’ 導体層
4a、4a’ グランド面
5、5E~5G、5’、5E’~5G’ 内部空間
6、6’、6A、6A’ 第1スペーサ層
71~75、71’~75’、71D、71H、71H’、72G、73G、72G’,73G’ 接着剤層
8、8’ 第2スペーサ層
90 コネクタ
91 スリット
H 配設領域
G 外側領域
P 導体の間隔
W シールドフラットケーブルの幅方向
X フラットケーブルの長手方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8