(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】CZ法により半導体材料の単結晶を溶融物から引上げるための装置およびこれを用いた方法
(51)【国際特許分類】
C30B 29/06 20060101AFI20221031BHJP
C30B 15/00 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
C30B29/06 502C
C30B15/00 Z
(21)【出願番号】P 2021519866
(86)(22)【出願日】2019-09-27
(86)【国際出願番号】 EP2019076286
(87)【国際公開番号】W WO2020074285
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-05-31
(31)【優先権主張番号】102018217509.8
(32)【優先日】2018-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】599119503
【氏名又は名称】ジルトロニック アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Siltronic AG
【住所又は居所原語表記】Einsteinstrasse 172,81677 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モルチャノフ,アレクサンダー
【審査官】山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-039798(JP,A)
【文献】特開2017-039628(JP,A)
【文献】特開2004-352581(JP,A)
【文献】特表2001-520168(JP,A)
【文献】特開2004-182580(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 29/06
C30B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CZ法により半導体材料の単結晶を溶融物から引上げるための装置であって、
前記溶融物を収容するための坩堝と、
前記坩堝の周りに配置された抵抗ヒータと、
前記溶融物と成長中の単結晶との間の相境界を観察するためのカメラシステムとを備え、
前記カメラシステムは光軸を有し、前記装置はさらに、
熱シールドを備え、前記熱シールドは下方端部の領域において直径が狭くなっている円錐台形状であり、前記坩堝の上方に配置されるとともに、前記成長中の単結晶を囲んでおり、前記装置はさらに、
粒子を捕捉するための環状要素を備え、前記環状要素は、前記熱シールドの内側面から内向きに突出しているとともに、内側端部に上向きのアレスタエッジを有しており、前記カメラシステムの前記光軸は、前記アレスタエッジと前記成長中の単結晶との間に延びており、
前記環状要素が取外し可能に前記熱シールドに接続され
、
前記熱シールドの前記下方端部から
10mm~100mmの距離において、前記環状要素は、前記熱シールドの内側面と同じ材質からなる、装置。
【請求項2】
前記アレスタエッジが前記熱シールドに対して傾斜して配置されている、請求項
1に記載の装置。
【請求項3】
請求項1
または請求項2に記載の装置において半導体材料の単結晶を引上げる方法であって、
前記坩堝に固体半導体材料を投入するステップと、
前記固体半導体材料の一部または全体の質量を溶融させるステップと、
前記坩堝にさらなる固体半導体材料をさらに投入するステップと、
坩堝内容物が完全に溶融するまで前記坩堝内容物を加熱するステップと、
CZ法によって前記単結晶を引上げるステップとを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CZ法により半導体材料の単結晶を溶融物から引上げるための装置および当該装置を用いた方法を提供する。当該装置は、溶融物を収容するための坩堝と、当該坩堝の周りに配置された抵抗ヒータと、当該溶融物と成長中の単結晶との間の相境界を観察するためのカメラシステムと、熱シールドとを備える。当該熱シールドは下方端部の領域において直径が狭くなっている円錐台形状であり、当該坩堝の上方に配置されるとともに、当該単結晶を囲んでいる。
【背景技術】
【0002】
従来技術/課題
EP2031100A1は、上述の特徴を有する装置と、当該装置が用いられるCZ法によって単結晶を製造する方法を開示している。
【0003】
US5919303は、シリコンを再投入する方法を開示しており、坩堝には、顆粒状の多結晶シリコンが再投入される。
【0004】
JP2001-3978Aは、酸化ケイ素(silicon oxide:SiO)の粒子が溶融物中に落下するのを阻止するための内側シリンダを付加的に備える熱シールドを開示している。このような粒子が成長中の単結晶に入り込むと転位を引起こし、この単結晶を意図された用途のために用いることができなくなるおそれがある。この熱シールドの不利点は、この熱シールドが溶融物と成長中の単結晶との間の相境界の明瞭な視界を妨げてしまうことである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、明細書冒頭で言及した特徴を有する装置を提案することであり、当該装置を用いることにより、如何なる不利益も伴うことなく、不要な粒子が溶融物に入り込むのを概ね阻止することができる。
【0006】
本発明の目的は、CZ法により半導体材料の単結晶を溶融物から引上げるための装置によって達成される。当該装置は、
当該溶融物を収容するための坩堝と、
当該坩堝の周りに配置される抵抗ヒータと、
当該溶融物と成長中の単結晶との間の相境界を観察するためのカメラシステムとを備え、当該カメラシステムは光軸を有し、当該装置はさらに、
熱シールドを備え、当該熱シールドは下方端部の領域において直径が狭くなっている円錐台形状であり、当該坩堝の上方に配置されるとともに、当該成長中の単結晶を囲んでおり、当該装置はさらに、
粒子を捕捉するための環状要素を特徴としており、当該環状要素は、当該熱シールドの内側面から内向きに突出しているとともに、内側端部に上向きのアレスタエッジ(arrester edge)を有しており、当該カメラシステムの当該光軸は、当該アレスタエッジと当該成長中の単結晶との間に延びている。
【0007】
半導体材料の結晶の単結晶成長を妨害または停止させる可能性のある粒子は、SiOの再昇華の際に生じるだけではなく、特に半導体材料の再投入の際にも、特に熱シールドから発生する研磨された材料の形状で生じる。本発明により、転位事象の頻度がより低くなること、および、粒子から生じて溶融物中に溶解する異物の濃度、特に炭素の濃度、がより低くなることが確実にされる。
【0008】
本発明の装置は、環状要素によって拡張される熱シールドを備える。環状要素は、当該環状要素がなければ坩堝内に落下するであろう粒子を捕捉する。環状要素は、熱シールドの内側面から内向きに(すなわち、成長中の単結晶の方向に)突出している。環状要素の断面積にはアレスタエッジ(閉じ込め用の囲い)が設けられており、当該アレスタエッジは環状要素の内側端部において上向きに突出している。粒子はアレスタエッジと熱シールドとの間に捕捉される。環状要素は成長中の単結晶に向かって突出しており、カメラシステムの光軸はアレスタエッジと成長中の単結晶との間に延びている。言い換えれば、光軸は熱シールド、環状要素またはそのアレスタエッジとは接しない。
【0009】
熱シールドは、全体的に、または少なくともその下方端部の領域において、直径が狭くなっている円錐台形状をなしている。
【0010】
環状要素と熱シールドの下方端部との間の距離を維持するように環状要素を熱シールドに固定することが好ましい。この距離は好ましくは10mm~100mmである。
【0011】
環状要素は、好ましくは、取外し可能に熱シールドに接続されており、好ましくは、熱シールドの内側面と同じ材料で構成されている。
【0012】
アレスタエッジは、環状要素の内側端部から上向きに、好ましくは2mm以上100mm以下の距離にわたって突出している。加えて、アレスタエッジは、好ましくは、外側に向かって傾斜している、すなわち、熱シールドに向かって傾斜している。
【0013】
本発明は加えて、本発明の装置において半導体材料の単結晶を引上げる方法も提供する。当該方法は、
当該坩堝に固体半導体材料を投入するステップと、
当該固体半導体材料の質量の一部または全体を溶融させるステップと、
当該坩堝にさらなる固体半導体材料をさらに投入するステップと、
坩堝内容物が完全に溶融するまで当該坩堝内容物を加熱するステップと、
CZ法によって当該単結晶を引上げるステップとを含む。
【0014】
半導体材料は、好ましくは、シリコン、ゲルマニウム、またはこれら2つの元素の混合物で構成されている。
【0015】
成長中の単結晶は、少なくとも200mm、好ましくは少なくとも300mmの直径を有する円筒状区域を含む。
【0016】
本発明の方法について上記で詳述した実施形態に関して特定された特徴は、本発明の装置に対応して適用することができる。逆に、本発明の装置について上記で詳述した実施形態に関して特定された特徴は、本発明の方法に対応して適用することができる。本発明の実施形態のこれらおよび他の特徴は、図の説明および添付の特許請求の範囲において明らかにされる。個々の特徴は、別個に、または組合わせて、本発明の実施形態として実装することができる。加えて、これら個々の特徴は、独立して保護可能な有利な実行例を説明し得る。
【0017】
以下、添付の図面を参照して本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】CZ法により半導体材料の単結晶を引上げるための、本発明の特徴を含む装置を示す図である。
【
図2】本発明の環状要素に接続された熱シールドの詳細を示す図である。
【
図3】CZ法により半導体材料の単結晶を引上げるための、本発明の特徴を含む装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に従った装置は、溶融物3を収容するための坩堝2が配置されている引上げチャンバ1と、溶融物3と成長中の単結晶5との間の相境界を観察するためのカメラシステム4とを備える。坩堝2は、昇降および旋回が可能なシャフト6によって支持される。坩堝2の周りに抵抗ヒータ7が配置されており、この抵抗ヒータ7によって固体半導体材料が溶融されて溶融物3が形成される。単結晶5は、引上げ機構8を介して溶融物から引上げられる。坩堝2の上方に、単結晶5を取囲む熱シールド9が配置されている。熱シールド9は、その下方端部の領域において直径が狭くなっている円錐台形状を成している。成長中の単結晶5と熱シールド9の内側面との間に、粒子を捕捉するための環状要素10が設けられている。環状要素10は熱シールド9に接続されている。環状要素10は、熱シールド9の内側面から内向き(成長中の単結晶の方向)に突出しており、その内側端部に上向きのアレスタエッジ11(
図2)を備える。アレスタエッジ11は、管を形成するように閉じられた壁によって形成されている。本発明に従うと、環状要素10およびそのアレスタエッジ11は、カメラシステム4の光軸12を遮らないように形成されており、これは、光軸12がアレスタエッジ11と成長中の単結晶5との間に延びていることを意味する。
【0020】
図3に従った装置は、
図1に従った装置とは異なり、その下方端部の領域のみ直径が狭く形成されている熱シールド9を備える。上記領域において円柱形状を有する。
【0021】
図2は、環状要素10および熱シールド9の詳細を断面で示す。図示の実施形態においては、環状要素10は熱シールド9の下方端部13から一定の距離が空けられており、アレスタエッジ11は熱シールド9に向かって傾斜している。
【0022】
例示的な実施形態の上記の説明は例としてみなされるべきである。このようになされた開示は、第一に、当業者が本発明および関連する利点を理解することを可能にするとともに、第二に、当業者の理解の範囲内で、記載された構造および方法についての明らかな変更例および変形例も包含する。したがって、このようなすべての変更例および変形例ならびに同等例は、添付の特許請求の保護範囲によって包含されるものとする。たとえば、装置はまた、溶融物に作用する磁場を発生させる1つ以上のコイルを備えてもよい。
【符号の説明】
【0023】
用いられる参照番号のリスト
1 引上げチャンバ、2 坩堝、3 溶融物、4 カメラシステム、5 単結晶、6 シャフト、7 抵抗ヒータ、8 引上げ機構、9 熱シールド、10、環状要素、11 アレスタエッジ、12 光軸、13 下方端部。