(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】組成物、膜、光学フィルタ及びその製造方法、固体撮像素子、赤外線センサ、カメラモジュール、並びに、化合物
(51)【国際特許分類】
C09B 67/20 20060101AFI20221031BHJP
C09B 57/00 20060101ALI20221031BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20221031BHJP
G02B 5/22 20060101ALI20221031BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
C09B67/20 F
C09B57/00 X
C08F2/44
G02B5/22
G03F7/004 505
(21)【出願番号】P 2021539188
(86)(22)【出願日】2020-07-21
(86)【国際出願番号】 JP2020028287
(87)【国際公開番号】W WO2021029195
(87)【国際公開日】2021-02-18
【審査請求日】2021-11-19
(31)【優先権主張番号】P 2019148563
(32)【優先日】2019-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鮫島 賢
(72)【発明者】
【氏名】松村 季彦
【審査官】黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0282303(US,A1)
【文献】国際公開第2017/104283(WO,A1)
【文献】特開2019-001947(JP,A)
【文献】国際公開第2018/100834(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0059475(US,A1)
【文献】特表2014-510804(JP,A)
【文献】国際公開第2020/009015(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/022135(WO,A1)
【文献】Siyi Wang et al.,N,N-Diarylanilionsquaraines and Their Application to Organic Photovoltaics,Chemistry of Materials,2011年,23巻,4789-4798頁
【文献】Minquan Tian et al.,Discovery of Novel Dyes with Absorption Maxima at 1.1μm,Journal of the American Chemical Society,米国,2003年,125巻,348-349頁(特に、Scheme1)
【文献】Daobin Yang et al.,A novel π-D1-A-D2 type low bandgap squaraine dye for efficient small molecular organic solar cells,Dyes and Pigments,2019年,163巻,564-572頁
【文献】Guo Chen et al.,The effect of processing solvent dependent film aggregation on the photovoltaic performance of squar,Organic Electronics,2017年,51巻,62-69頁
【文献】Louis E. McNamara et al.,Indolizine-Squaraines: NIR Fluorescent Materials with Molecularly Engineered Stokes Shifts,Chemistry-A European Journal,2017年,23巻,12494-12501頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 67/20
C09B 57/00
C08F 2/44
G02B 5/22
G03F 7/004
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される構造を有する色素と、
バインダー、及び、硬化性化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物とを含む
組成物。
【化1】
式(1)中、Aは下記式(1S)又は式(1C)で表される基を表し、Xはアリーレン基、ヘテロアリーレン基、又は、それらを2以上組み合わせた基を表し、R
1~R
6はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R
1~R
6のうちの2つ以上は互いに結合して環を形成してもよく、ただし、R
1~R
6のうちの少なくとも2つは互いに結合して環を形成しており、波線部分は、他の構造との結合位置を表す。
【化2】
式(1S)及び式(1C)中、*は、式(1)におけるXとの結合位置、又は、他の構造との結合位置を表す。
【請求項2】
Xが、下記式(Ar-1)~式(Ar-6)のいずれかで表される基である請求項1に記載の組成物。
【化3】
式(Ar-1)~式(Ar-6)中、Xa
1~Xa
9はそれぞれ独立に、硫黄原子、酸素原子又はNR
xaを表し、R
xaは水素原子又は置換基を表し、R
7~R
20はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R
11とR
12は互いに結合して環を形成してもよく、*は他の構造との結合位置を表す。
【請求項3】
Xが、下記式(Ar-7)~式(Ar-13)のいずれかで表される基である請求項1又は請求項2に記載の組成物。
【化4】
式(Ar-7)~式(Ar-13)中、R
21は、アルキル基、アリール基、-X
21-R
21a、又は、-X
21-L
21-Z
21-R
21aを表し、X
21は、-CO-、-CS-、-SO
2-、-CONH-、-CSNH-又は-COO-を表し、L
21は、アルキレン基又はアリーレン基を表し、Z
21は、-CONR
Z21a-、-CSNR
Z21a-、-OCONR
Z21a-、-NR
Z21aCONR
Z21b-、-NR
Z21aCSNR
Z21b-、-OCOO-又は-NR
Z21aSO
2-を表し、R
Z21a及びR
Z21bはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R
21aは、アルキル基又はアリール基を表し、R
22~R
33はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R
22とR
23、R
24とR
25、R
26とR
27、R
28とR
29は互いに結合して環を形成してもよく、*は他の構造との結合位置を表す。
【請求項4】
前記式(1)で表される構造を有する色素が、下記式(2)~式(6)のいずれかで表される色素である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の組成物。
【化5】
式(2)~式(6)中、Aは下記式(1S)又は式(1C)で表される基を表し、Xはアリーレン基、ヘテロアリーレン基、又は、それらを2以上組み合わせた基を表し、R
34~R
147はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R
72とR
73、R
82とR
83、R
84とR
85、R
94とR
95、R
96とR
97、R
108とR
109、R
110とR
111、R
122とR
123、R
124とR
125、R
134とR
135、R
136とR
137、R
146とR
147は互いに結合して環を形成してもよい。
【化6】
式(1S)及び式(1C)中、*は、式(2)~式(6)におけるXとの結合位置を表す。
【請求項5】
前記硬化性化合物を含み、かつ光重合開始剤を更に含む、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記バインダーとして、バインダーポリマーを含む請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の硬化性組成物からなる又は前記硬化性組成物を硬化してなる膜。
【請求項8】
請求項7に記載の膜を有する光学フィルタ。
【請求項9】
赤外線カットフィルタ又は赤外線透過フィルタである請求項8に記載の光学フィルタ。
【請求項10】
請求項7に記載の膜を有する固体撮像素子。
【請求項11】
請求項7に記載の膜を有する赤外線センサ。
【請求項12】
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の硬化性組成物を支持体上に適用して組成物層を形成する工程と、
前記組成物層をパターン状に露光する工程と、
未露光部を現像除去してパターンを形成する工程と、を含む
光学フィルタの製造方法。
【請求項13】
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の硬化性組成物を支持体上に適用して組成物層を形成し、硬化して層を形成する工程、
前記層上にフォトレジスト層を形成する工程、
露光及び現像することにより前記フォトレジスト層をパターニングしてレジストパターンを得る工程、並びに、
前記レジストパターンをエッチングマスクとして前記層をドライエッチングする工程を含む
光学フィルタの製造方法。
【請求項14】
固体撮像素子と、請求項9に記載の光学フィルタとを有するカメラモジュール。
【請求項15】
下記式(1-2)で表される構造を有する化合物。
【化7】
式(1-2)中、Aは下記式(1S)又は式(1C)で表される基を表し、X
A及びX及びX
Bはそれぞれ独立に、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、又は、それらを2以上組み合わせた基を表し、R
1A~R
6A及びR
1B~R
6Bはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R
1A~R
6A及びR
1B~R
6Bのうちの2つ以上は互いに結合して環を形成してもよく、ただし、R
1A~R
6Aのうちの少なくとも2つは互いに結合して環を形成しており、また、R
1B~R
6Bのうちの少なくとも2つは互いに結合して環を形成している。
【化8】
式(1S)及び式(1C)中、*は、式(1-2)におけるX
A若しくはX
Bとの結合位置を表す。
【請求項16】
X
A及びX
Bがそれぞれ独立に、式(Ar-1)~式(Ar-6)のいずれかで表される基である請求項15に記載の化合物
【化9】
式(Ar-1)~式(Ar-6)中、Xa
1~Xa
9はそれぞれ独立に、硫黄原子、酸素原子又はNR
xaを表し、R
xaは水素原子又は置換基を表し、R
7~R
20はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R
11とR
12は互いに結合して環を形成してもよく、*は他の構造との結合位置を表す。
【請求項17】
X
A及びX
Bがそれぞれ独立に、下記式(Ar-7)~式(Ar-13)のいずれかで表される基である請求項15又は請求項16に記載の化合物。
【化10】
式(Ar-7)~式(Ar-13)中、R
21は、アルキル基、アリール基、-X
21-R
21a、又は、-X
21-L
21-Z
21-R
21aを表し、X
21は、-CO-、-CS-、-SO
2-、-CONH-、-CSNH-又は-COO-を表し、L
21は、アルキレン基又はアリーレン基を表し、Z
21は、-CONR
Z21a-、-CSNR
Z21a-、-OCONR
Z21a-、-NR
Z21aCONR
Z21b-、-NR
Z21aCSNR
Z21b-、-OCOO-又は-NR
Z21aSO
2-を表し、R
Z21a及びR
Z21bはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R
21aは、アルキル基又はアリール基を表し、R
22~R
33はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R
22とR
23、R
24とR
25、R
26とR
27、R
28とR
29は互いに結合して環を形成してもよく、*は他の構造との結合位置を表す。
【請求項18】
前記式(1-2)で表される構造を有する色素が、下記式(2)~式(6)のいずれかで表される色素である請求項15~請求項17のいずれか1項に記載の化合物。
【化11】
式(2)~式(6)中、Aは下記式(1S)又は式(1C)で表される基を表し、Xはアリーレン基、ヘテロアリーレン基、又は、それらを2以上組み合わせた基を表し、R
34~R
147はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R
72とR
73、R
82とR
83、R
84とR
85、R
94とR
95、R
96とR
97、R
108とR
109、R
110とR
111、R
122とR
123、R
124とR
125、R
134とR
135、R
136とR
137、R
146とR
147は互いに結合して環を形成してもよい。
【化12】
式(1S)及び式(1C)中、*は、式(2)~式(6)におけるXとの結合位置を表す。
【請求項19】
赤外線吸収色素である請求項15~請求項18のいずれか1項に記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、組成物、膜、光学フィルタ及びその製造方法、固体撮像素子、赤外線センサ、カメラモジュール、並びに、化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
カラーフィルタ等の部材は、有機顔料や無機顔料を分散させた硬化性組成物等の顔料分散組成物に、多官能モノマー及び光重合開始剤、アルカリ可溶性樹脂及びその他成分を含有して着色感光性組成物とし、これを用いてフォトリソ法などにより製造されている。
上記顔料として、ジヒドロペリミジン骨格を有するスクアリリウム化合物を用いることが知られている。
従来のスクアリリウム化合物の例としては、下記特許文献1及び特許文献2に記載のものが挙げられる。
【0003】
特許文献1には、下記一般式(1)で表される近赤外線吸収色素[A]、塩基性樹脂型分散剤[B]及び有機溶剤[C]を含有してなる近赤外線吸収性組成物であって、塩基性樹脂型分散剤[B]が、側鎖に3級アミノ基及び4級アンモニウム塩基を有するAブロックと、3級アミノ基及び4級アンモニウム塩基を有しないBブロックとからなるブロック共重合体である塩基性樹脂型分散剤[B1]を含み、上記塩基性樹脂型分散剤[B1]の固形分におけるアミン価が10~200mgKOH/gであり、4級アンモニウム塩価が10~90mgKOH/gであり、有機溶剤[C]が、760mmHgにおける沸点が120~210℃であり、溶解度パラメータが9.0~13.0である有機溶剤[C1]を含むことを特徴とする近赤外線吸収性組成物が記載されている。
一般式(1)
【0004】
【0005】
[一般式(1)中、X1~X10は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、スルホ基、-SO2NR1R2、-COOR1、-CONR1R2、ニトロ基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。R1、R2は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基を表す。X1~X10は、置換基同士が結合して環を形成してもよい。]
【0006】
特許文献2には、下記式(1)で表されることを特徴とするスクアリリウム化合物が記載されている。
【0007】
【0008】
[式(1)中、R1とR6はそれぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数3以上の分岐状アルキル基を表し、R2とR7はそれぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数5以上の直鎖状アルキル基を表し、R3、R4、R8及びR9はそれぞれ独立して、水素原子、有機基又は極性官能基を表し、環A及び環Bはそれぞれ独立して、5員以上の含窒素複素環を表し、上記含窒素複素環は上記R1とR6以外に置換基を有していてもよい。]
【0009】
特許文献1:特開2018-87939号公報
特許文献2:特開2019-31637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、得られる膜の耐熱性及び耐光性に優れる組成物を提供することである。
また、本開示の他の実施形態が解決しようとする課題は、上記組成物を用いた膜、光学フィルタ及びその製造方法、固体撮像素子、赤外線センサ、並びに、カメラモジュールを提供することである。
本開示の更に他の一実施形態が解決しようとする課題は、新規な化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 下記式(1)で表される構造を有する色素と、バインダー、及び、硬化性化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物とを含む組成物。
【0012】
【0013】
式(1)中、Aは下記式(1S)又は式(1C)で表される基を表し、Xはアリーレン基、ヘテロアリーレン基、又は、それらを2以上組み合わせた基を表し、R1~R6はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R1~R6のうちの2つ以上は互いに結合して環を形成してもよく、ただし、R1~R6のうちの少なくとも2つは互いに結合して環を形成しており、波線部分は、他の構造との結合位置を表す。
【0014】
【0015】
式(1S)及び式(1C)中、*は、式(1)におけるXとの結合位置、又は、他の構造との結合位置を表す。
【0016】
<2> Xが、下記式(Ar-1)~式(Ar-6)のいずれかで表される基である<1>に記載の組成物。
【0017】
【0018】
式(Ar-1)~式(Ar-6)中、Xa1~Xa9はそれぞれ独立に、硫黄原子、酸素原子又はNRxaを表し、Rxaは水素原子又は置換基を表し、R7~R20はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R11とR12は互いに結合して環を形成してもよく、*は他の構造との結合位置を表す。
【0019】
<3> Xが、下記式(Ar-7)~式(Ar-13)のいずれかで表される基である<1>又は<2>に記載の組成物。
【0020】
【0021】
式(Ar-7)~式(Ar-13)中、R21は、アルキル基、アリール基、-X21-R21a、又は、-X21-L21-Z21-R21aを表し、X21は、-CO-、-CS-、-SO2-、-CONH-、-CSNH-又は-COO-を表し、L21は、アルキレン基又はアリーレン基を表し、Z21は、-CONRZ21a-、-CSNRZ21a-、-OCONRZ21a-、-NRZ21aCONRZ21b-、-NRZ21aCSNRZ21b-、-OCOO-又は-NRZ21aSO2-を表し、RZ21a及びRZ21bはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R21aは、アルキル基又はアリール基を表し、R22~R33はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R22とR23、R24とR25、R26とR27、R28とR29は互いに結合して環を形成してもよく、*は他の構造との結合位置を表す。
【0022】
<4> 上記式(1)で表される構造を有する色素が、下記式(2)~式(6)のいずれかで表される色素である<1>~<3>のいずれか1つに記載の組成物。
【0023】
【0024】
式(2)~式(6)中、Aは下記式(1S)又は式(1C)で表される基を表し、Xはアリーレン基、ヘテロアリーレン基、又は、それらを2以上組み合わせた基を表し、R34~R147はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R72とR73、R82とR83、R84とR85、R94とR95、R96とR97、R108とR109、R110とR111、R122とR123、R124とR125、R134とR135、R136とR137、R146とR147は互いに結合して環を形成してもよい。
【0025】
【0026】
式(1S)及び式(1C)中、*は、式(2)~式(6)におけるXとの結合位置を表す。
【0027】
<5> 上記硬化性化合物を含み、かつ光重合開始剤を更に含む、<1>~<4>のいずれか1つに記載の組成物。
<6> 上記バインダーとして、バインダーポリマーを含む<1>~<5>のいずれか1つに記載の組成物。
<7> <1>~<6>のいずれか1つに記載の硬化性組成物からなる又は上記硬化性組成物を硬化してなる膜。
<8> <7>に記載の膜を有する光学フィルタ。
<9> 赤外線カットフィルタ又は赤外線透過フィルタである<8>に記載の光学フィルタ。
<10> <7>に記載の膜を有する固体撮像素子。
<11> <7>に記載の膜を有する赤外線センサ。
<12> <1>~<6>のいずれか1つに記載の硬化性組成物を支持体上に適用して組成物層を形成する工程と、上記組成物層をパターン状に露光する工程と、未露光部を現像除去してパターンを形成する工程と、を含む光学フィルタの製造方法。
<13> <1>~<6>のいずれか1つに記載の硬化性組成物を支持体上に適用して組成物層を形成し、硬化して層を形成する工程、上記層上にフォトレジスト層を形成する工程、露光及び現像することにより上記フォトレジスト層をパターニングしてレジストパターンを得る工程、並びに、上記レジストパターンをエッチングマスクとして上記層をドライエッチングする工程を含む光学フィルタの製造方法。
<14> 固体撮像素子と、<9>に記載の光学フィルタとを有するカメラモジュール。
<15> 下記式(1-2)で表される構造を有する化合物。
【0028】
【0029】
式(1-2)中、Aは下記式(1S)又は式(1C)で表される基を表し、XA及びX及びXBはそれぞれ独立に、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、又は、それらを2以上組み合わせた基を表し、R1A~R6A及びR1B~R6Bはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R1A~R6A及びR1B~R6Bのうちの2つ以上は互いに結合して環を形成してもよく、ただし、R1A~R6Aのうちの少なくとも2つは互いに結合して環を形成しており、また、R1B~R6Bのうちの少なくとも2つは互いに結合して環を形成している。
【0030】
【0031】
式(1S)及び式(1C)中、*は、式(1-2)におけるXA若しくはXBとの結合位置を表す。
【0032】
<16> XA及びXBがそれぞれ独立に、式(Ar-1)~式(Ar-6)のいずれかで表される基である<15>に記載の化合物
【0033】
【0034】
式(Ar-1)~式(Ar-6)中、Xa1~Xa9はそれぞれ独立に、硫黄原子、酸素原子又はNRxaを表し、Rxaは水素原子又は置換基を表し、R7~R20はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R11とR12は互いに結合して環を形成してもよく、*は他の構造との結合位置を表す。
【0035】
<17> XA及びXBがそれぞれ独立に、下記式(Ar-7)~式(Ar-13)のいずれかで表される基である<15>又は<16>に記載の化合物。
【0036】
【0037】
式(Ar-7)~式(Ar-13)中、R21は、アルキル基、アリール基、-X21-R21a、又は、-X21-L21-Z21-R21aを表し、X21は、-CO-、-CS-、-SO2-、-CONH-、-CSNH-又は-COO-を表し、L21は、アルキレン基又はアリーレン基を表し、Z21は、-CONRZ21a-、-CSNRZ21a-、-OCONRZ21a-、-NRZ21aCONRZ21b-、-NRZ21aCSNRZ21b-、-OCOO-又は-NRZ21aSO2-を表し、RZ21a及びRZ21bはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R21aは、アルキル基又はアリール基を表し、R22~R33はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R22とR23、R24とR25、R26とR27、R28とR29は互いに結合して環を形成してもよく、*は他の構造との結合位置を表す。
【0038】
<18> 上記式(1-2)で表される構造を有する色素が、下記式(2)~式(6)のいずれかで表される色素である<15>~<17>のいずれか1つに記載の化合物。
【0039】
【0040】
式(2)~式(6)中、Aは下記式(1S)又は式(1C)で表される基を表し、Xはアリーレン基、ヘテロアリーレン基、又は、それらを2以上組み合わせた基を表し、R34~R147はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R72とR73、R82とR83、R84とR85、R94とR95、R96とR97、R108とR109、R110とR111、R122とR123、R124とR125、R134とR135、R136とR137、R146とR147は互いに結合して環を形成してもよい。
【0041】
【0042】
式(1S)及び式(1C)中、*は、式(2)~式(6)におけるXとの結合位置を表す。
【0043】
<19> 赤外線吸収色素である<15>~<18>のいずれか1つに記載の化合物。
【発明の効果】
【0044】
本開示の一実施形態によれば、得られる膜の耐熱性及び耐光性に優れる組成物が提供される。
また、本開示の他の実施形態によれば、上記組成物を用いた膜、光学フィルタ及びその製造方法、固体撮像素子、赤外線センサ、並びに、カメラモジュールが提供される。
本開示の更に他の一実施形態によれば、新規な化合物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】本開示に係る赤外線センサの一実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下において、本開示の内容について詳細に説明する。
本明細書において「全固形分」とは、組成物の全組成から溶剤を除いた成分の総質量をいう。また、「固形分」とは、上述のように、溶剤を除いた成分であり、例えば、25℃において固体であっても、液体であってもよい。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものとともに置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書において「露光」とは、特に断らない限り、光を用いた露光のみならず、電子線、イオンビーム等の粒子線を用いた描画も含む。また、露光に用いられる光としては、一般的に、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、電子線等の活性光線又は放射線が挙げられる。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの双方、又は、いずれかを表し、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルの双方、又は、いずれかを表し、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル及びメタクリロイルの双方、又は、いずれかを表す。
本明細書において、化学式中のMeはメチル基を、Etはエチル基を、Prはプロピル基を、Buはブチル基を、Acはアセチル基を、Bnはベンジル基を、Phはフェニル基をそれぞれ示す。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
また、本開示において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
更に、本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
また、本開示における透過率は、特に断りのない限り、25℃における透過率である。
本明細書において、重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定したポリスチレン換算値として定義される。
【0047】
(組成物)
本開示に係る組成物は、下記式(1)で表される構造を有する色素と、バインダー、及び、硬化性化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物とを含む。
【0048】
【0049】
式(1)中、Aは下記式(1S)又は式(1C)で表される基を表し、Xはアリーレン基、ヘテロアリーレン基、又は、それらを2以上組み合わせた基を表し、R1~R6はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R1~R6のうちの2つ以上は互いに結合して環を形成してもよく、ただし、R1~R6のうちの少なくとも2つは互いに結合して環を形成しており、波線部分は、他の構造との結合位置を表す。
【0050】
【0051】
式(1S)及び式(1C)中、*は、式(1)におけるXとの結合位置、又は、他の構造との結合位置を表す。
【0052】
本開示に係る組成物を用いることにより、耐熱性及び耐光性に優れる膜が得られる。
従来のスクアリリウム化合物又はクロコニウム化合物、例えば、特許文献1又は特許文献2に記載のスクアリリウム化合物は、上記化合物を含む膜において、耐熱性及び耐光性が十分でない場合があった。
本発明者らが鋭意検討した結果、上記式(1)で表される構造を有する色素と、バインダー、及び、硬化性化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物とを含む組成物に用いることにより、耐熱性及び耐光性に優れる膜が得られることを見出した。
上記効果が得られる理由は不明であるが、上記式(1)で表される構造を有する色素を含むことにより、従来のスクアリリウム化合物又はクロコニウム化合物に比べ、スクアリリウム構造又はクロコニウム構造に直接結合するアリーレン基又はヘテロアリーレン基を有し、かつアリーレン基又はヘテロアリーレン基に結合する芳香環を有し、上記芳香環には、窒素原子が結合しており、更に、上記窒素原子を環員として含む環構造又は上記芳香環に縮環した環構造の少なくともいずれか1つを有することにより、分子の剛直性が向上し、更に、特異的な共役鎖の構造、及び、上記窒素原子を環員として含む環構造又は上記芳香環に縮環した環構造を有することにより、分子自体の光及び熱に対する安定性が向上し、耐熱性及び耐光性に優れる膜が得られると推定している。
【0053】
以下、本開示に係る組成物に含まれる各成分の詳細を説明する。
【0054】
<式(1)で表される構造を有する色素>
本開示に係る組成物は、上記式(1)で表される構造を有する色素を含む。
上記式(1)で表される構造を有する色素は、赤外線吸収色素として好適に用いることができる。
また、上記式(1)で表される構造を有する色素は、色素(「着色剤」ともいう。)であり、顔料又は染料であることが好ましく、染料であることがより好ましい。なお、本開示において、顔料とは、溶剤に不溶性の色素を意味する。また、染料とは、溶剤に溶解する色素を意味する。
【0055】
また、上記式(1)で表される構造を有する色素は、一例として下記に示すスクアリリウム構造又はクロコニウム構造を有する化合物である場合において例示するが、下記に示すいずれの共鳴構造の表記で表してもよい。下記に示すスクアリリウム構造又はクロコニウム構造を有する化合物はそれぞれ、カチオン及びアニオンの共鳴構造の表記位置が異なるだけで同一のスクアリリウム構造又はクロコニウム構造を有する化合物を表す。
【0056】
【0057】
式(1)におけるAは、耐熱性の観点からは、式(1S)で表される基であることが好ましく、耐光性の観点からは、式(1C)で表される基であることが好ましい。
式(1)におけるXは、アリーレン基、又は、ヘテロアリーレン基であることが好ましい。
上記アリーレン基としては、耐熱性及び耐光性の観点から、置換基を有していてもよいフェニレン基、又は、置換基を有していてもよい2又は3つのベンゼン環が縮環したアリーレン基が好ましく、置換基を有していてもよいフェニレン基がより好ましく、1又は2個のヒドロキシ基又はアミド基が置換したフェニレン基が特に好ましい。
上記ヘテロアリーレン基は、単環のヘテロアリーレン基であっても、少なくとも1つのヘテロ芳香環が縮環したヘテロアリーレン基であってもよい。
上記少なくとも1つのヘテロ芳香環が縮環したヘテロアリーレン基としては、2以上のヘテロ芳香環のみが縮環した基であっても、1以上のヘテロ芳香環と1以上の芳香環とが縮環した基であってもよいが、1つのヘテロ芳香環と1つの芳香環とが縮環した基であることが好ましい。
上記ヘテロアリーレン基としては、耐熱性及び耐光性の観点から、窒素原子又は硫黄原子を環員として有するヘテロアリーレン基であることが好ましく、窒素原子を環員として有するヘテロアリーレン基であることがより好ましく、置換基を有していてもよいピロールジイル基、又は、置換基を有していてもよいインドールジイル基であることが更に好ましく、ピロールジイル基、又は、インドールジイル基であることが特に好ましい。
【0058】
式(1)のXにおいて、芳香環又はヘテロ芳香環上に有していてもよい置換基としては、特に制限はないが、ヒドロキシ基、アミド基、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アシル基、アシルオキシ基、アルキルオキシカルボニル基、シアノ基等が挙げられる。
中でも、耐熱性及び耐光性の観点から、ヒドロキシ基、又は、アミド基が好ましく、ヒドロキシ基、又は、アルキルアミド基がより好ましい。
また、Xがアリーレン基である場合、Aとの結合位置に対し、オルト位の少なくとも1か所に、置換基として、ヒドロキシ基、又は、アミド基を有することが好ましい。
【0059】
また、式(1)におけるXは、耐熱性及び耐光性の観点から、下記式(Ar-1)~式(Ar-6)のいずれかで表される基であることが好ましく、下記式(Ar-7)~式(Ar-13)のいずれかで表される基であることがより好ましく、下記式(Ar-7)~式(Ar-10)のいずれかで表される基であることが特に好ましい。
【0060】
【0061】
式(Ar-1)~式(Ar-6)中、Xa1~Xa9はそれぞれ独立に、硫黄原子、酸素原子又はNRxaを表し、Rxaは水素原子又は置換基を表し、R7~R20はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R11とR12は互いに結合して環を形成してもよく、*は他の構造との結合位置を表す。
【0062】
【0063】
式(Ar-7)~式(Ar-13)中、R21は、アルキル基、アリール基、-X21-R21a、又は、-X21-L21-Z21-R21aを表し、X21は、-CO-、-CS-、-SO2-、-CONH-、-CSNH-又は-COO-を表し、L21は、アルキレン基又はアリーレン基を表し、Z21は、-CONRZ21a-、-CSNRZ21a-、-OCONRZ21a-、-NRZ21aCONRZ21b-、-NRZ21aCSNRZ21b-、-OCOO-又は-NRZ21aSO2-を表し、RZ21a及びRZ21bはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R21aは、アルキル基又はアリール基を表し、R22~R33はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R22とR23、R24とR25、R26とR27、R28とR29は互いに結合して環を形成してもよく、*は他の構造との結合位置を表す。
【0064】
式(Ar-2)~式(Ar-6)におけるXa1~Xa9はそれぞれ独立に、耐熱性及び耐光性の観点から、硫黄原子又はNRxaであることが好ましく、NRxaであることがより好ましく、NHであることが特に好ましい。
式(Ar-2)~式(Ar-6)のRxaにおける置換基としては、アルキル基、アリール基、アシル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基等が挙げられる。中でも、アルキル基が好ましい。
式(Ar-1)~式(Ar-6)におけるRxaは、耐熱性及び耐光性の観点から、水素原子又はアルキル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
式(Ar-1)~式(Ar-6)のR7~R20における置換基としては、上述したXにおける置換基が好適に挙げられる。
式(Ar-1)~式(Ar-6)におけるR7、R9及びR11~R20はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基又はアルコキシ基であることが好ましく、水素原子又はアルキル基であることがより好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
式(Ar-1)におけるR8は、耐熱性及び耐光性の観点から、水素原子、ヒドロキシ基又はアミド基であることが好ましく、ヒドロキシ基又はアミド基であることがより好ましい。
式(Ar-1)におけるR10は、耐熱性及び耐光性の観点から、水素原子、ヒドロキシ基又はアミド基であることが好ましく、水素原子又はヒドロキシ基であることがより好ましい。
式(Ar-2)におけるR11とR12とが互いに結合して形成してもよい環は、脂肪族環であっても、芳香族環であってもよいが、5員環又は6員環であることが好ましい。
【0065】
式(Ar-9)におけるR21は、耐熱性及び耐光性の観点から、-X21-R21a、又は、-X21-L21-Z21-R21aであることが好ましく、-X21-R21aであることがより好ましく、-CO-R21aであることが特に好ましい。
上記L21は、炭素数1~8のアルキレン基又はフェニレン基であることが好ましく、炭素数1~8のアルキレン基であることがより好ましい。
上記Z21は、-CONRZ21a-、-OCONRZ21a-、-NRZ21aCONRZ21b-、-OCOO-又は-NRZ21aSO2-であることが好ましく、-CONRZ21a-又は-OCONRZ21a-であることがより好ましい。
上記RZ21a及びRZ21bはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1~8のアルキル基であることがより好ましく、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であることが特に好ましい。
上記R21aは、アルキル基であることが好ましく、炭素数1~8のアルキル基であることがより好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
式(Ar-7)及び式(Ar-9)~式(Ar-13)のR22~R33における置換基としては、上述したXにおける置換基が好適に挙げられる。
式(Ar-7)及び式(Ar-9)~式(Ar-13)におけるR22~R33はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基又はアルコキシ基であることが好ましく、水素原子又はアルキル基であることがより好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
式(Ar-7)及び式(Ar-9)~式(Ar-11)におけるR22とR23、R24とR25、R26とR27、R28とR29が互いに結合して形成してもよい環は、脂肪族環であっても、芳香族環であってもよいが、5員環又は6員環であることが好ましい。
【0066】
式(1)のR1及びR2における置換基としては、アルキル基、アリール基、アシル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基等が挙げられる。中でも、アルキル基が好ましい。
式(1)におけるR1及びR2はそれぞれ独立に、耐熱性及び耐光性の観点から、水素原子、アルキル基又はアルコキシアルキル基であることが好ましく、水素原子又はアルキル基であることがより好ましく、アルキル基であることが更に好ましく、炭素数1~8のアルキル基であることが特に好ましい。
式(1)のR3~R6における置換基としては、上述したXにおける置換基が好適に挙げられる。
式(1)におけるR3は、耐熱性及び耐光性の観点から、水素原子又はアルキル基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1~8のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1~8のアルキル基であることが特に好ましい。
式(1)におけるR5は、耐熱性及び耐光性の観点から、水素原子又はアルキル基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1~8のアルキル基であることがより好ましい。
式(1)におけるR4及びR6はそれぞれ独立に、耐熱性及び耐光性の観点から、水素原子又はアルキル基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1~8のアルキル基であることがより好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
【0067】
式(1)においては、R1~R6のうちの2つ以上は互いに結合して環を形成してもよく、ただし、R1~R6のうちの少なくとも2つは互いに結合して環を形成している。
式(1)におけるR1~R6のうちの2つ以上が互いに結合して形成してもよい環は、脂肪族環であっても、芳香族環であってもよく、また、式(1)における窒素原子以外にヘテロ原子を環員として有する脂肪族環であってもよいが、耐熱性及び耐光性の観点から、5員環又は6員環であることが好ましく、また、耐熱性及び耐光性の観点から、脂肪族環であることが好ましい。
中でも、耐熱性及び耐光性の観点から、R1とR2、R1とR5、又は、R2とR3のうちの少なくとも1組が環を形成していることが好ましく、少なくともR2とR3とが環を形成していることがより好ましい。
【0068】
また、上記式(1)で表される構造は、耐熱性及び耐光性の観点から、下記式(1-1)で表される構造であることが好ましい。
【0069】
【0070】
式(1-1)中、Aは下記式(1S)又は式(1C)で表される基を表し、Xは式(Ar-1)~式(Ar-6)のいずれかで表される基を表し、R1~R6はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R1~R6のうちの2つ以上は互いに結合して環を形成してもよく、ただし、R1~R6のうちの少なくとも2つは互いに結合して環を形成しており、波線部分は、他の構造との結合位置を表す。
【0071】
【0072】
式(Ar-1)~式(Ar-6)中、Xa1~Xa9はそれぞれ独立に、硫黄原子、酸素原子又はNRxaを表し、Rxaは水素原子又は置換基を表し、R7~R20はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R11とR12は互いに結合して環を形成してもよく、*は他の構造との結合位置を表す。
【0073】
【0074】
式(1S)及び式(1C)中、*は、式(1-1)におけるXとの結合位置、又は、他の構造との結合位置を表す。
【0075】
式(1-1)におけるA、及び、R1~R6はそれぞれ、上記式(1)におけるA、及び、R1~R6と同様であり、好ましい態様も同様である。
式(1-1)のXにおける式(Ar-1)~式(Ar-6)のいずれかで表される基は、上述した式(Ar-1)~式(Ar-6)のいずれかで表される基と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0076】
上記式(1)で表される構造を有する色素は、耐熱性及び耐光性の観点から、下記式(1-2)で表される色素であることが好ましい。
【0077】
【0078】
式(1-2)中、Aは下記式(1S)又は式(1C)で表される基を表し、XA及びX及びXBはそれぞれ独立に、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、又は、それらを2以上組み合わせた基を表し、R1A~R6A及びR1B~R6Bはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R1A~R6A及びR1B~R6Bのうちの2つ以上は互いに結合して環を形成してもよく、ただし、R1A~R6Aのうちの少なくとも2つは互いに結合して環を形成しており、また、R1B~R6Bのうちの少なくとも2つは互いに結合して環を形成している。
【0079】
【0080】
式(1S)及び式(1C)中、*は、式(1-2)におけるXA若しくはXBとの結合位置を表す。
【0081】
式(1-2)におけるAは、式(1)におけるAと同様であり、好ましい態様も同様である。
式(1-2)におけるXA及びXBはそれぞれ、式(1)におけるXと同様であり、好ましい態様も同様である。
また、式(1-2)におけるXA及びXBは、同じであっても、異なっていてもよいが、耐熱性及び耐光性の観点から、同じであることが好ましい。
式(1-2)におけるR1A~R6A及びR1B~R6Bはそれぞれ、式(1)におけるR1~R6と同様であり、好ましい態様も同様である。
また、式(1-2)におけるR1A及びR1Bは、同じであっても、異なっていてもよいが、耐熱性及び耐光性の観点から、同じであることが好ましい。更に、式(1-2)におけるR2A~R6A及びR2B~R6Bについても、それぞれR1A及びR1Bと同様である。
【0082】
また、上記式(1)で表される構造を有する色素は、耐熱性及び耐光性の観点から、下記式(2)~式(6)のいずれかで表される色素であることがより好ましく、下記式(2)又は式(3)で表される色素であることが特に好ましい。
【0083】
【0084】
式(2)~式(6)中、Aは下記式(1S)又は式(1C)で表される基を表し、Xはアリーレン基、ヘテロアリーレン基、又は、それらを2以上組み合わせた基を表し、R34~R147はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R72とR73、R82とR83、R84とR85、R94とR95、R96とR97、R108とR109、R110とR111、R122とR123、R124とR125、R134とR135、R136とR137、R146とR147は互いに結合して環を形成してもよい。
【0085】
【0086】
式(1S)及び式(1C)中、*は、式(2)~式(6)におけるXとの結合位置を表す。
【0087】
式(2)~式(6)におけるA及びXはそれぞれ、式(1)におけるA及びXと同様であり、好ましい態様も同様である。なお、式(2)~式(6)における2つのXは、A及び芳香環に同じ位置で結合する同じ構造の基である。
式(2)~式(6)のR34及びR39における置換基は、アルキル基、アリール基、アシル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基等が挙げられる。中でも、アルキル基が好ましい。
式(2)~式(6)におけるR34及びR39はそれぞれ独立に、耐熱性及び耐光性の観点から、アルキル基であることが好ましく、炭素数1~8のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1~4のアルキル基であることが更に好ましく、エチル基であることが特に好ましい。
式(2)~式(6)のR35~R38及びR40~R147における置換基は、上述したXにおける置換基が好適に挙げられる。
式(2)~式(6)におけるR35~R38及びR40~R147はそれぞれ独立に、耐熱性及び耐光性の観点から、水素原子又はアルキル基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1~8のアルキル基であることがより好ましく、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であることが更に好ましく、水素原子又はメチル基であることが特に好ましい。
【0088】
式(2)~式(6)におけるR72とR73、R82とR83、R84とR85、R94とR95、R96とR97、R108とR109、R110とR111、R122とR123、R124とR125、R134とR135、R136とR137、又は、R146とR147が互いに結合して形成してもよい環は、脂肪族環であっても、芳香族環であってもよいが、5員環又は6員環であることが好ましく、また、脂肪族環であることが好ましい。
中でも、式(2)~式(6)におけるR72とR73、R82とR83、R84とR85、R94とR95、R96とR97、R108とR109、R110とR111、R122とR123、R124とR125、R134とR135、R136とR137、又は、R146とR147はそれぞれ独立に、耐熱性及び耐光性の観点から、互いに結合して環を形成しないことが好ましい。
【0089】
〔極大吸収波長〕
式(1)で表される構造を有する色素の極大吸収波長は、650nm以上の波長範囲にあることが好ましく、700nm~1,100nmの波長範囲にあることがより好ましく、760nm~1,000nmの波長範囲にあることが更に好ましい。
上記極大吸収波長は、Cary5000 UV-Vis-NIR分光光度計(アジレント・テクノロジー(株)製)を用いて測定される。
【0090】
〔半値幅〕
上記極大吸収波長の測定において得られた波長-吸光度曲線において、極大吸収波長における波長ピークの半値幅は、2,500cm-1以下が好ましく、2,000cm-1以下がより好ましく、1,800cm-1以下が更に好ましい。
上記半値幅の下限は、特に限定されないが、500cm-1以上であることが好ましい。
上記半値幅は、Cary5000 UV-Vis-NIR分光光度計(アジレント・テクノロジー(株)製)を用いてにより測定され、波長を波数に変換して半値幅を計算する。
【0091】
〔モル吸光係数〕
式(1)で表される構造を有する色素の極大吸収波長におけるモル吸光係数は、1.0×105L/(mol・cm)以上であることが好ましく、1.5×105L/(mol・cm)以上であることがより好ましい。
上記モル吸光係数は、Cary5000 UV-Vis-NIR分光光度計(アジレント・テクノロジー(株)製)を用いてにより測定される。
【0092】
〔含有量〕
本開示に係る組成物における、式(1)で表される構造を有する色素の含有量は、組成物の全固形分に対し、5質量%~70質量%が好ましく、10質量%~60質量%がより好ましく、15質量%~50質量%が更に好ましい。本開示に係る組成物における、式(1)で表される構造を有する色素は2種以上を組み合わせて使用してもよい。式(1)で表される構造を有する色素を2種以上含む場合、合計量が上記範囲であることが好ましい。
【0093】
以下、式(1)で表される構造を有する色素の具体例であるSQ-1~SQ-13(スクアリリウム化合物)、及び、CR-1~CR-10(クロコニウム化合物)を示すが、これに限定されるものではない。
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
式(1)で表される構造を有する色素の製造方法としては、特に制限はなく、公知の製造方法を参照し適宜製造することができる。
例えば、四角酸(スクアリン酸)又はクロコン酸を用い、対応する2つの芳香族化合物と脱水縮合を行う方法が好適に挙げられる。また、上記芳香族化合物は、公知の方法により合成すればよい。
また、式(1)で表される構造を有する色素の結晶形を調整する方法について説明する。結晶形の調整方法としては、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等の有機溶剤に式(1)で表される構造を有する色素を接触させる方法が挙げられる。その際、式(1)で表される構造を有する色素の粒子径の調整のために加熱又は冷却を行ってもよいし、濾別する前に別の溶媒を加えてもよい。
【0101】
<他の成分>
本開示に係る組成物は、膜が得られる化合物であることが好ましく、最終的に硬化することにより硬化膜が得られる硬化性組成物であることが好ましい。
また、本開示に係る組成物は、例えば、パターン露光により硬化膜のパターンを形成することができる組成物であることが好ましい。すなわち、本開示に係る組成物はネガ型の組成物であることが好ましい。
本開示に係る組成物がネガ型の組成物である場合、例えば、重合開始剤と、重合性化合物と、アルカリ可溶性樹脂と、を含む態様が好ましい。
また、本開示に係る組成物がポジ型の組成物である場合、例えば、光酸発生剤と、酸基が酸分解性基で保護された基を有する構成単位を有する重合体、及び、架橋性基を有する構成単位を有する重合体、を含む態様が挙げられる。
以下、本開示に係る組成物がネガ型の組成物である態様において含まれる各成分物について記載する。
本開示に係る組成物がポジ型の組成物である態様において含まれる各成分については、国際公開第2014/003111号に記載の各成分が挙げられ、好ましい態様も同様である。
【0102】
<バインダー>
本開示に係る組成物は、バインダー及び硬化性化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を含み、膜形成性の観点から、バインダーを含むことが好ましい。
また、バインダーとしては、膜形成性、及び、分散性の観点から、バインダーポリマーであることが好ましい。
また、バインダーポリマーとして、分散剤を含んでいてもよい。
【0103】
バインダーポリマーの具体例としては、アクリル樹脂、エン・チオール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリアリーレンエーテルホスフィンオキシド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、シロキサン樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。中でも、アクリル樹脂を含むことが好ましい。
これらの樹脂から1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0104】
環状オレフィン樹脂としては、耐熱性向上の観点から、ノルボルネン樹脂が好ましく用いることができる。
ノルボルネン樹脂の市販品としては、例えば、JSR(株)製のARTONシリーズ(例えば、ARTON F4520)などが挙げられる。ポリイミド樹脂の市販品としては、三菱ガス化学(株)製のネオプリム(登録商標)シリーズ(例えば、C3450)などが挙げられる。
【0105】
また、バインダーポリマーとしては、国際公開第2016/088645号の実施例に記載された樹脂、特開2017-57265号公報に記載された樹脂、特開2017-32685号公報に記載された樹脂、特開2017-075248号公報に記載された樹脂、特開2017-66240号公報に記載された樹脂を用いることもでき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
また、バインダーポリマーとして、フルオレン骨格を有する樹脂を好ましく用いることもできる。フルオレン骨格を有する樹脂については、米国特許出願公開第2017/0102610号明細書の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0106】
バインダーポリマーの重量平均分子量(Mw)は、2,000~2,000,000が好ましい。上限は、1,000,000以下がより好ましく、500,000以下が更に好ましい。下限は、3,000以上がより好ましく、5,000以上が更に好ましい。
バインダーポリマーの含有量は、組成物の全固形分に対し、10質量%~80質量%であることが好ましく、15質量%~60質量%であることがより好ましい。上記組成物は、樹脂を、1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。2種類以上含む場合は、その合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0107】
-分散剤-
本開示に係る組成物は、分散剤を含んでいてもよい。
分散剤としては、高分子分散剤〔例えば、アミン基を有する樹脂(ポリアミドアミンとその塩など)、オリゴイミン系樹脂、ポリカルボン酸とその塩、高分子量不飽和酸エステル、変性ポリウレタン、変性ポリエステル、変性ポリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル系共重合体、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物〕等を挙げることができる。
高分子分散剤は、その構造から更に直鎖状高分子、末端変性型高分子、グラフト型高分子、ブロック型高分子に分類することができる。
また、高分子分散剤としては、酸価が60mgKOH/g以上(より好ましくは、酸価60mgKOH/g以上、300mgKOH/g以下)の樹脂も好適に挙げることができる。
【0108】
末端変性型高分子としては、例えば、特開平3-112992号公報、特表2003-533455号公報等に記載の末端にリン酸基を有する高分子、特開2002-273191号公報等に記載の末端にスルホン酸基を有する高分子、特開平9-77994号公報等に記載の有機色素の部分骨格や複素環を有する高分子などが挙げられる。また、特開2007-277514号公報に記載の高分子末端に2個以上の顔料表面へのアンカー部位(酸基、塩基性基、有機色素の部分骨格やヘテロ環等)を導入した高分子も分散安定性に優れ好ましい。
【0109】
グラフト型高分子としては、例えば、特開昭54-37082号公報、特表平8-507960号公報、特開2009-258668号公報等に記載のポリ(低級アルキレンイミン)とポリエステルの反応生成物、特開平9-169821号公報等に記載のポリアリルアミンとポリエステルの反応生成物、特開平10-339949号、特開2004-37986号公報等に記載のマクロモノマーと、窒素原子モノマーとの共重合体、特開2003-238837号公報、特開2008-9426号公報、特開2008-81732号公報等に記載の有機色素の部分骨格や複素環を有するグラフト型高分子、特開2010-106268号公報等に記載のマクロモノマーと酸基含有モノマーの共重合体などが挙げられる。
【0110】
グラフト型高分子をラジカル重合で製造する際に用いるマクロモノマーとしては、公知のマクロモノマーを用いることができ、東亞合成(株)製のマクロモノマーAA-6(末端基がメタクリロイル基であるポリメタクリル酸メチル)、AS-6(末端基がメタクリロイル基であるポリスチレン)、AN-6S(末端基がメタクリロイル基であるスチレンとアクリロニトリルの共重合体)、AB-6(末端基がメタクリロイル基であるポリアクリル酸ブチル)、ダイセル化学工業(株)製のプラクセルFM5(メタクリル酸2-ヒドロキシエチルのε-カプロラクトン5モル当量付加品)、FA10L(アクリル酸2-ヒドロキシエチルのε-カプロラクトン10モル当量付加品)、及び特開平2-272009号公報に記載のポリエステル系マクロモノマー等が挙げられる。これらの中でも、柔軟性且つ親溶剤性に優れるポリエステル系マクロモノマーが、顔料分散物の分散性、分散安定性、及び顔料分散物を用いた組成物が示す現像性の観点から特に好ましく、特開平2-272009号公報に記載のポリエステル系マクロモノマーで表されるポリエステル系マクロモノマーが最も好ましい。
ブロック型高分子としては、特開2003-49110号公報、特開2009-52010号公報等に記載のブロック型高分子が好ましい。
【0111】
樹脂(分散剤)は、市販品としても入手可能であり、そのような具体例としては、BYKChemie社製「Disperbyk-101(ポリアミドアミン燐酸塩)、107(カルボン酸エステル)、110、111(酸基を含む共重合物)、130(ポリアミド)、161、162、163、164、165、166、170(高分子共重合物)」、「BYK-P104、P105(高分子量不飽和ポリカルボン酸)」、EFKA社製「EFKA4047、4050~4165(ポリウレタン系)、EFKA4330~4340(ブロック共重合体)、4400~4402(変性ポリアクリレート)、5010(ポリエステルアミド)、5765(高分子量ポリカルボン酸塩)、6220(脂肪酸ポリエステル)、6745(フタロシアニン誘導体)、6750(アゾ顔料誘導体)」、味の素ファインテクノ(株)製「アジスパーPB821、PB822、PB880、PB881」、共栄社化学(株)製「フローレンTG-710(ウレタンオリゴマー)」、「ポリフローNo.50E、No.300(アクリル系共重合体)」、楠本化成(株)製「ディスパロンKS-860、873SN、874、#2150(脂肪族多価カルボン酸)、#7004(ポリエーテルエステル)、DA-703-50、DA-705、DA-725」、花王(株)製「デモールRN、N(ナフタレンスルホン酸ホルマリン重縮合物)、MS、C、SN-B(芳香族スルホン酸ホルマリン重縮合物)」、「ホモゲノールL-18(高分子ポリカルボン酸)」、「エマルゲン920、930、935、985(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)」、「アセタミン86(ステアリルアミンアセテート)」、日本ルーブリゾール(株)製「ソルスパース5000(フタロシアニン誘導体)、22000(アゾ顔料誘導体)、13240(ポリエステルアミン)、3000、17000、27000(末端部に機能部を有する高分子)、24000、28000、32000、38500(グラフト型高分子)」、日光ケミカルズ(株)製「ニッコールT106(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート)、MYS-IEX(ポリオキシエチレンモノステアレート)」、川研ファインケミカル(株)製「ヒノアクトT-8000E」、信越化学工業(株)製「オルガノシロキサンポリマーKP341」、森下産業(株)製「EFKA-46、EFKA-47、EFKA-47EA、EFKAポリマー100、EFKAポリマー400、EFKAポリマー401、EFKAポリマー450」、サンノプコ(株)製「ディスパースエイド6、ディスパースエイド8、ディスパースエイド15、ディスパースエイド9100」、(株)ADEKA製「アデカプルロニックL31、F38、L42、L44、L61、L64、F68、L72、P95、F77、P84、F87、P94、L101、P103、F108、L121、P-123」、及び、三洋化成工業(株)製「イオネットS-20」等が挙げられる。
【0112】
これらの樹脂は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、後述のアルカリ可溶性樹脂を分散剤として使用することもできる。アルカリ可溶性樹脂としては、(メタ)アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等、並びに側鎖にカルボン酸を有する酸性セルロース誘導体、水酸基を有するポリマーに酸無水物を変性した樹脂が挙げられるが、特に(メタ)アクリル酸共重合体が好ましい。また、特開平10-300922号公報に記載のN位置換マレイミドモノマー共重合体、特開2004-300204号公報に記載のエーテルダイマー共重合体、特開平7-319161号公報に記載の重合性基を含有するアルカリ可溶性樹脂も好ましい。
これらの中でも、上記樹脂としては、分散性の観点から、ポリエステル鎖を有する樹脂を含むことが好ましく、ポリカプロラクトン鎖を有する樹脂を含むことがより好ましい。 また、上記樹脂(好ましくはアクリル樹脂)は、分散性、透明性及び異物による膜欠陥抑制の観点から、エチレン性不飽和基を有する構成単位を有することが好ましい。
上記エチレン性不飽和基としては、特に制限はないが、(メタ)アクリロイル基であることが好ましい。
また、上記樹脂が側鎖にエチレン性不飽和基、特に(メタ)アクリロイル基を有する場合、上記樹脂は、主鎖とエチレン性不飽和基との間に、脂環構造を有する2価の連結基を有していることが好ましい。
【0113】
分散剤の含有量は、式(1)で表される部分構造を有する化合物と式(1)で表される部分構造を有する化合物以外の顔料、染料又は顔料誘導体とを含む場合は、式(1)で表される部分構造を有する化合物、並びに、式(1)で表される部分構造を有する化合物以外の顔料、染料及び顔料誘導体も含めた総含有量100質量部に対して、1質量部~100質量部であることが好ましく、5質量部~90質量部がより好ましく、10質量部~80質量部であることが更に好ましい。
【0114】
-アルカリ可溶性樹脂-
本開示に係る組成物は、現像性の観点から、バインダーポリマーとして、アルカリ可溶性樹脂を含むことが好ましい。
アルカリ可溶性樹脂としては、線状有機高分子重合体であって、分子(好ましくは、アクリル系共重合体、スチレン系共重合体を主鎖とする分子)中に少なくとも1つのアルカリ可溶性を促進する基を有するアルカリ可溶性樹脂の中から適宜選択することができる。耐熱性の観点からは、ポリヒドロキシスチレン系樹脂、ポリシロキサン系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルアミド系樹脂、アクリル/アクリルアミド共重合体樹脂が好ましく、現像性制御の観点からは、アクリル系樹脂、アクリルアミド系樹脂、アクリル/アクリルアミド共重合体樹脂が好ましい。
アルカリ可溶性を促進する基(以下、酸基ともいう)としては、例えば、カルボキシ基、リン酸基、スルホン酸基、フェノール性水酸基などが挙げられるが、有機溶剤に可溶で弱アルカリ水溶液により現像可能なものが好ましく、(メタ)アクリル酸が特に好ましいものとして挙げられる。これら酸基は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。アルカリ可溶性樹脂としては、特開2012-208494号公報の段落0558~0571(対応する米国特許出願公開第2012/0235099号明細書の段落0685~0700)の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0115】
アルカリ可溶性樹脂は、下記式(ED)で表される構成単位を有する樹脂も好ましい。
【0116】
【0117】
式(ED)中、RE1及びRE2はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1~25の炭化水素基を表し、zは0又は1を表す。
【0118】
RE1及びRE2で表される炭素数1~25の炭化水素基としては、特に制限はないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、t-アミル基、ステアリル基、ラウリル基、2-エチルヘキシル生等の直鎖状又は分岐状のアルキル基;フェニル基等のアリール基;シクロヘキシル基、t-ブチルシクロヘキシル基、ジシクロペンタジエニル基、トリシクロデカニル基、イソボルニル基、アダマンチル基、2-メチル-2-アダマンチル基等の脂環式基;1-メトキシエチル基、1-エトキシエチル基等のアルコキシ基で置換されたアルキル基;ベンジル基等のアリール基で置換されたアルキル基;等が挙げられる。これらの中でも、特に、メチル基、エチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基等のような酸や熱で脱離しにくい第1級又は第2級の炭化水素基が耐熱性の点で好ましい。
なお、RE1及びRE2は、同種の置換基であってもよいし、異なる置換基であってもよい。
式(ED)で表される構成単位を形成する化合物の例としては、ジメチル-2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビス-2-プロペノエート、ジエチル-2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビス-2-プロペノエート、ジ(n-プロピル)-2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビス-2-プロペノエート、ジ(n-ブチル)-2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビス-2-プロペノエート、ジ(t-ブチル)-2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビス-2-プロペノエート、ジ(イソブチル)-2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビス-2-プロペノエート、等が挙げられる。これらの中でも、特にジメチル-2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビス-2-プロペノエートが好ましい。
【0119】
上記アルカリ可溶性樹脂は、式(ED)で表される構成単位以外の構成単位を有していてもよい。
上記構成単位を形成するモノマーとしては、例えば、溶媒への溶解性などの扱いやすさの観点から、油溶性を付与するアリール(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシ(メタ)アクリレートを共重合成分として含むことも好ましく、アリール(メタ)アクリレート又はアルキル(メタ)アクリレートがより好ましい。
また、アルカリ現像性の観点から、酸性基を含有する(メタ)アクリル酸やイタコン酸等のカルボキシ基を有するモノマー、N-ヒドロキシフェニルマレイミド等のフェノール性水酸基を有するモノマー、無水マレイン酸や無水イタコン酸等のカルボン酸無水物基を有するモノマーを共重合成分として含むことが好ましく、(メタ)アクリル酸がより好ましい。
上記アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、式(ED)で表される構成単位と、ベンジルメタクリレートから形成される構成単位と、メタクリル酸メチル及びメタクリル酸よりなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーから形成される構成単位とを有する樹脂が好ましく挙げられる。
式(ED)で表される構成単位を有する樹脂については、特開2012-198408号公報の段落0079~0099の記載を参酌でき、この内容は明細書に組み込まれることとする。
【0120】
アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、2,000~50,000が好ましい。下限は、5,000以上がより好ましく、7,000以上が更に好ましい。上限は、45,000以下がより好ましく、43,000以下が更に好ましい。
アルカリ可溶性樹脂の酸価は、30mgKOH/g~200mgKOH/gが好ましい。下限は、50mgKOH/g以上がより好ましく、70mgKOH/g以上が更に好ましい。上限は、150mgKOH/g以下がより好ましく、120mgKOH/g以下が更に好ましい。
なお、本開示における酸価は、以下の方法により測定するものとする。
酸価は、固形分1gあたりの酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムの質量を表したものである。測定サンプルをテトラヒドロフラン/水=9/1(質量比)混合溶媒に溶解し、電位差滴定装置(商品名:AT-510、京都電子工業(株)製)を用いて、得られた溶液を、25℃にて、0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液で中和滴定する。滴定pH曲線の変曲点を滴定終点として、次式により酸価を算出する。
A=56.11×Vs×0.1×f/w
A:酸価(mgKOH/g)
Vs:滴定に要した0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液の使用量(mL)
f:0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液の力価
w:測定サンプル質量(g)(固形分換算)
【0121】
<硬化性化合物>
本開示に係る組成物は、バインダー及び硬化性化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、耐熱性及び耐光性の観点から、硬化性化合物を含有することが好ましい。
本開示に用いることができる硬化性化合物としては、重合性化合物であることが好ましく、エチレン性不飽和化合物であることがより好ましく、末端エチレン性不飽和基を有する化合物であることが特に好ましい。
このような化合物群としては、公知のものを特に限定なく用いることができる。
これらは、例えばモノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物ならびにそれらの共重合体などの化学的形態をもつ。モノマー及びその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能イソシアネート類或いはエポキシ類との付加反応物、及び単官能若しくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基や、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更にハロゲン基や、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
【0122】
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3-ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4-シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー、イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート等がある。
【0123】
メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス〔p-(3-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス-〔p-(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。
【0124】
また、イソシアネート基とヒドロキシ基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48-41708号公報中に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記一般式(I)で示されるヒドロキシ基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
【0125】
CH2=C(R)COOCH2CH(R’)OH (I)
(ただし、R及びR’は、H又はCH3を示す。)
【0126】
また、特開昭51-37193号、特公平2-32293号、特公平2-16765号に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58-49860号、特公昭56-17654号、特公昭62-39417号、特公昭62-39418号記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。更に、特開昭63-277653号、特開昭63-260909号、特開平1-105238号に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する付加重合性化合物類を用いることによっては、非常に感光スピードに優れた組成物を得ることができる。
【0127】
その他、硬化性化合物としては、例えば、特開2007-277514号公報の段落0178~0190に記載の化合物が挙げられる。
また、硬化性化合物としては、特開2015-187211号公報に記載のエポキシ化合物を用いてもよい
【0128】
また、硬化性化合物としては、環状エーテル基を有する化合物を含有することができる。環状エーテル基としては、エポキシ基、オキセタニル基などが挙げられる。環状エーテル基を有する化合物は、エポキシ基を有する化合物であることが好ましい。
エポキシ基を有する化合物としては、1分子内にエポキシ基を1つ以上有する化合物が挙げられ、エポキシ基を2つ以上有する化合物が好ましい。エポキシ基は、1分子内に1~100個有することが好ましい。エポキシ基の上限は、例えば、10個以下とすることもでき、5個以下とすることもできる。エポキシ基の下限は、2個以上が好ましい。
【0129】
エポキシ基を有する化合物は、低分子化合物(例えば、好ましくは分子量2,000未満、より好ましくは分子量1,000未満)でもよいし、高分子化合物(macromolecule)(例えば、分子量1,000以上、ポリマーの場合は、重量平均分子量が1,000以上)のいずれでもよい。エポキシ基を有する化合物の重量平均分子量は、200~100,000が好ましく、500~50,000がより好ましい。重量平均分子量の上限は、10,000以下が好ましく、5,000以下がより好ましく、3,000以下が更に好ましい。
【0130】
エポキシ基を有する化合物としては、エポキシ樹脂を好ましく用いることができる。エポキシ樹脂としては、例えばフェノール化合物のグリシジルエーテル化物であるエポキシ樹脂、各種ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物であるエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、ハロゲン化フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂、エポキシ基をもつケイ素化合物とそれ以外のケイ素化合物との縮合物、エポキシ基を持つ重合性不飽和化合物とそれ以外の他の重合性不飽和化合物との共重合体等が挙げられる。
【0131】
フェノール化合物のグリシジルエーテル化物であるエポキシ樹脂としては、例えば2-[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]-2-[4-[1,1-ビス[4-(2,3-ヒドロキシ)フェニル]エチル]フェニル]プロパン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4,4’-ビフェノール、テトラメチルビスフェノールA、ジメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、ジメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールS、ジメチルビスフェノールS、テトラメチル-4,4’-ビフェノール、ジメチル-4,4’-ビフェノール、1-(4-ヒドロキシフェニル)-2-[4-(1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチル)フェニル]プロパン、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、トリスヒドロキシフェニルメタン、レゾルシノール、ハイドロキノン、ピロガロール、フロログルシノール、ジイソプロピリデン骨格を有するフェノール類;1,1-ジ-4-ヒドロキシフェニルフルオレン等のフルオレン骨格を有するフェノール類;フェノール化ポリブタジエン等のポリフェノール化合物のグリシジルエーテル化物であるエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0132】
ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物であるエポキシ樹脂としては、例えばフェノール、クレゾール類、エチルフェノール類、ブチルフェノール類、オクチルフェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF及びビスフェノールS等のビスフェノール類、ナフトール類等の各種フェノールを原料とするノボラック樹脂、キシリレン骨格含有フェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有フェノールノボラック樹脂、ビフェニル骨格含有フェノールノボラック樹脂、フルオレン骨格含有フェノールノボラック樹脂等の各種ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物等が挙げられる。
【0133】
脂環式エポキシ樹脂としては、例えば3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-(3,4-エポキシ)シクロヘキシルカルボキシレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート等の脂肪族環骨格を有する脂環式エポキシ樹脂が挙げられる。
脂肪族系エポキシ樹脂としては、例えば1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ペンタエリスリトール等の多価アルコールのグリシジルエーテル類が挙げられる。
複素環式エポキシ樹脂としては、例えばイソシアヌル環、ヒダントイン環等の複素環を有する複素環式エポキシ樹脂が挙げられる。
グリシジルエステル系エポキシ樹脂としては、例えばヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル等のカルボン酸エステル類からなるエポキシ樹脂が挙げられる。
グリシジルアミン系エポキシ樹脂としては、例えばアニリン、トルイジン等のアミン類をグリシジル化したエポキシ樹脂が挙げられる。
ハロゲン化フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂としては、例えばブロム化ビスフェノールA、ブロム化ビスフェノールF、ブロム化ビスフェノールS、ブロム化フェノールノボラック、ブロム化クレゾールノボラック、クロル化ビスフェノールS、クロル化ビスフェノールA等のハロゲン化フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂が挙げられる。
【0134】
エポキシ基を持つエチレン性不飽和化合物とそれ以外の他のエチレン性不飽和化合物との共重合体としては、市場から入手可能な製品では、マープルーフG-0150M、G-0105SA、G-0130SP、G-0250SP、G-1005S、G-1005SA、G-1010S、G-2050M、G-01100、G-01758(以上、日油(株)製、エポキシ基含有ポリマー)等が挙げられる。エポキシ基を持つエチレン性不飽和化合物としては、例えばアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、4-ビニル-1-シクロヘキセン-1,2-エポキシド等が挙げられる。また、他のエチレン性不飽和化合物の共重合体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルシクロヘキサンなどが挙げられ、特にメチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、スチレンが好ましい。
【0135】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、100g/eq~3,300g/eqであることが好ましく、120g/eq~1,700g/eqであることがより好ましく、150g/eq~1,000g/eqであることが更に好ましい。
【0136】
エポキシ樹脂は、市販品を用いることもできる。例えば、EPICLON HP-4700(DIC(株)製)、JER1031S(三菱化学(株)製)、EHPE3150((株)ダイセル製)、EOCN-1020(日本化薬(株)製)などが挙げられる。
【0137】
本開示において、環状エーテル基を有する化合物としては、特開2013-011869号公報の段落0034~0036、特開2014-043556号公報の段落0147~0156、特開2014-089408号公報の段落0085~0092に記載された化合物を用いることもできる。これらの内容は、本明細書に組み込まれる。
【0138】
本開示に係る組成物が環状エーテル基を有する化合物を含有する場合、環状エーテル基を有する化合物の含有量は、組成物の全固形分に対して、0.1質量%~90質量%が好ましい。下限は、例えば、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましい。上限は、例えば、85質量%以下がより好ましく、80質量%以下が更に好ましい。環状エーテル基を有する化合物は1種単独であってもよいし、2種以上を併用してもよい。環状エーテル基を有する化合物を2種以上併用する場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0139】
硬化性化合物の組成物中における含有量としては、組成物の全固形分に対して、1質量%~90質量%であることが好ましく、5質量%~85質量%であることがより好ましく、8質量%~80質量%であることが更に好ましい。硬化性化合物の含有量が上記範囲内であると、組成物の硬化性に優れる。
特に、本開示に係る組成物をカラーフィルタの着色パターン形成に使用する場合には上記含有量の範囲において、5質量%~85質量%であることが好ましく、7質量%~80質量%であることがより好ましく、8質量%~75質量%であることが更に好ましい。
【0140】
<重合開始剤>
本開示に係る組成物は、重合開始剤を更に含むことが好ましく、光重合開始剤を更に含むことがより好ましい。
また、本開示に係る組成物は、上記硬化性化合物を含み、かつ光重合開始剤を更に含むことが特に好ましい。
光重合開始剤としては、重合性化合物の重合を開始する能力を有する限り、特に制限はなく、公知の光重合開始剤の中から適宜選択することができる。例えば、紫外線領域から可視領域の光線に対して感光性を有する化合物が好ましい。また、光励起された増感剤と何らかの作用を生じ、活性ラジカルを生成する化合物であってもよい。光重合開始剤は光ラジカル重合開始剤であることが好ましい。
【0141】
光重合開始剤としては、例えば、ハロゲン化炭化水素誘導体(例えば、トリアジン骨格を有する化合物、オキサジアゾール骨格を有する化合物など)、アシルホスフィン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール、オキシム化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ケトン化合物、芳香族オニウム塩、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物などが挙げられる。光重合開始剤は、露光感度の観点から、トリハロメチルトリアジン化合物、ベンジルジメチルケタール化合物、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物、アシルホスフィン化合物、ホスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシム化合物、トリアリールイミダゾールダイマー、オニウム化合物、ベンゾチアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物、シクロペンタジエン-ベンゼン-鉄錯体、ハロメチルオキサジアゾール化合物及び3-アリール置換クマリン化合物よりなる群から選ばれる化合物が好ましく、オキシム化合物、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物、及び、アシルホスフィン化合物よりなる群から選ばれる化合物がより好ましく、オキシム化合物が更に好ましい。光重合開始剤については、特開2014-130173号公報の段落0065~0111、特開2013-29760号公報の段落0274~0306の記載を参酌でき、これらの内容は本開示に組み込まれる。
【0142】
α-ヒドロキシケトン化合物の市販品としては、OMNIRAD 184(旧IRGACURE 184)、OMNIRAD 1173(旧IRGACURE 1173、旧DAROCUR 1173)、OMNIRAD 500(旧IRGACURE 500)、OMNIRAD 2959(旧IRGACURE 2959)、OMNIRAD 127(旧IRGACURE 127)(以上、IGM Resins社製(旧BASF社製))などが挙げられる。α-アミノケトン化合物の市販品としては、OMNIRAD 907(旧IRGACURE 907)、OMNIRAD 369(旧IRGACURE 369)、OMNIRAD 379(旧IRGACURE 379)、及び、OMNIRAD 379EG(旧IRGACURE 379EG)(以上、IGM Resins社製(旧BASF社製))などが挙げられる。アシルホスフィン化合物の市販品としては、OMNIRAD 819(旧IRGACURE 818)、OMNIRAD TPO(旧IRGACURE TPO、旧DAROCURE TPO)(以上、IGM Resins社製(旧BASF社製))などが挙げられる。
【0143】
オキシム化合物としては、例えば、特開2001-233842号公報に記載の化合物、特開2000-80068号公報に記載の化合物、特開2006-342166号公報に記載の化合物、J.C.S.Perkin II(1979年、pp.1653-1660)に記載の化合物、J.C.S.Perkin II(1979年、pp.156-162)に記載の化合物、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995年、pp.202-232)に記載の化合物、特開2000-66385号公報に記載の化合物、特開2000-80068号公報に記載の化合物、特表2004-534797号公報に記載の化合物、特開2006-342166号公報に記載の化合物、特開2017-19766号公報に記載の化合物、特許第6065596号公報に記載の化合物、国際公開第2015/152153号に記載の化合物、国際公開第2017/051680号に記載の化合物などがあげられる。オキシム化合物の具体例としては、例えば、3-ベンゾイルオキシイミノブタン-2-オン、3-アセトキシイミノブタン-2-オン、3-プロピオニルオキシイミノブタン-2-オン、2-アセトキシイミノペンタン-3-オン、2-アセトキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、2-ベンゾイルオキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、3-(4-トルエンスルホニルオキシ)イミノブタン-2-オン、及び2-エトキシカルボニルオキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オンなどが挙げられる。オキシム化合物の市販品としては、IRGACURE-OXE01、IRGACURE-OXE02、IRGACURE-OXE03、IRGACURE-OXE04(以上、BASF社製)も好適に用いられる。また、TRONLY TR-PBG-304、TRONLY TR-PBG-309、TRONLY TR-PBG-305(常州強力電子新材料有限公司(CHANGZHOU TRONLY NEW ELECTRONIC MATERIALS CO.,LTD)製)、アデカアークルズNCI-930、アデカオプトマーN-1919(特開2012-14052号公報の光重合開始剤2)(以上、(株)ADEKA製)が挙げられる。
【0144】
また上記以外のオキシム化合物として、カルバゾール環のN位にオキシムが連結した特表2009-519904号公報に記載の化合物、ベンゾフェノン部位にヘテロ置換基が導入された米国特許第7626957号明細書に記載の化合物、色素部位にニトロ基が導入された特開2010-15025号公報及び米国特許公開第2009-292039号明細書に記載の化合物、国際公開第2009/131189号明細書に記載のケトオキシム化合物、トリアジン骨格とオキシム骨格を同一分子内に含有する米国特許第7556910号明細書に記載の化合物、405nmに吸収極大を有し、g線光源に対して良好な感度を有する特開2009-221114号公報に記載の化合物などを用いてもよい。
【0145】
本開示は、光重合開始剤として、フルオレン環を有するオキシム化合物を用いることもできる。フルオレン環を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2014-137466号公報に記載の化合物が挙げられる。この内容は本開示に組み込まれる。
【0146】
本開示は、光重合開始剤として、ベンゾフラン骨格を有するオキシム化合物を用いることもできる。具体例としては、国際公開第2015/036910号に記載の化合物OE-01~OE-75が挙げられる。
【0147】
本開示は、光重合開始剤として、カルバゾール環の少なくとも1つのベンゼン環がナフタレン環となった骨格を有するオキシム化合物を用いることもできる。そのようなオキシム化合物の具体例としては、国際公開第2013/083505号に記載の化合物が挙げられる。
【0148】
本開示は、光重合開始剤として、フッ素原子を有するオキシム化合物を用いることもできる。フッ素原子を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2010-262028号公報に記載の化合物、特表2014-500852号公報に記載の化合物24、36~40、特開2013-164471号公報に記載の化合物(C-3)などが挙げられる。この内容は本開示に組み込まれる。
【0149】
本開示は、光重合開始剤として、ニトロ基を有するオキシム化合物を用いることができる。ニトロ基を有するオキシム化合物は、二量体とすることも好ましい。ニトロ基を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2013-114249号公報の段落0031~0047、特開2014-137466号公報の段落0008~0012、0070~0079に記載の化合物、特許第4223071号公報の段落0007~0025に記載の化合物、アデカアークルズNCI-831((株)ADEKA製)などが挙げられる。
【0150】
本開示において好ましく使用されるオキシム化合物の具体例を以下に示すが、本開示はこれらに限定されるものではない。
【0151】
【0152】
【0153】
オキシム化合物は、350nm~500nmの波長領域に極大吸収波長を有する化合物が好ましく、360nm~480nmの波長領域に極大吸収波長を有する化合物がより好ましい。また、オキシム化合物は、波長365nm及び405nmの吸光度が大きい化合物が好ましい。
【0154】
オキシム化合物の波長365nm又は405nmにおけるモル吸光係数は、感度の観点から、1,000~300,000であることが好ましく、2,000~300,000であることがより好ましく、5,000~200,000であることが特に好ましい。化合物のモル吸光係数は、公知の方法を用いて測定することができる。例えば、紫外可視分光光度計(Varian社製Cary-5 spectrophotometer)にて、酢酸エチル溶媒を用い、0.01g/Lの濃度で測定することが好ましい。
【0155】
本開示は、光重合開始剤として、2官能あるいは3官能以上の光重合開始剤を用いてもよい。そのような光重合開始剤の具体例としては、特表2010-527339号公報、特表2011-524436号公報、国際公開第2015/004565号、特表2016-532675号公報の段落0417~0412、国際公開第2017/033680号の段落0039~0055に記載されているオキシム化合物の2量体や、特表2013-522445号公報に記載されている化合物(E)及び化合物(G)、国際公開第2016/034963号に記載されているCmpd1~7などが挙げられる。
【0156】
重合開始剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
重合開始剤の組成物中における含有量としては、上記組成物の全固形分に対して、0.1質量%~50質量%であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%~30質量%、特に好ましくは1質量%~20質量%である。この範囲で、良好な感度とパターン形成性が得られる。
【0157】
<エポキシ硬化剤>
本開示に係る組成物がエポキシ基を有する化合物を含む場合、エポキシ硬化剤を更に含むことが好ましい。
エポキシ硬化剤としては、例えば、アミン系化合物、酸無水物系化合物、アミド系化合物、フェノール系化合物、多価カルボン酸、チオール化合物などが挙げられる。
エポキシ硬化剤としては耐熱性、硬化物の透明性という観点から、多価カルボン酸が好ましく、分子内に二つ以上のカルボン酸無水物基を有する化合物がより好ましい。
エポキシ硬化剤の具体例としては、コハク酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)などが挙げられる。エポキシ硬化剤は、特開2016-075720号公報の段落0072~0078に記載の化合物、特開2017-036379号公報に記載の化合物を用いることもでき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0158】
エポキシ硬化剤の含有量は、エポキシ基を有する化合物100質量部に対し、0.01質量部~20質量部が好ましく、0.01質量部~10質量部がより好ましく、0.1質量部~6.0質量部が更に好ましい。
【0159】
<着色剤>
本開示に係る組成物は、着色剤を含有することができる。
着色剤としては、白色顔料、黒色顔料、有彩色顔料、近赤外線吸収顔料が挙げられる。なお、本開示において、白色顔料は純白色のみならず、白に近い明るい灰色(例えば灰白色、薄灰色など)の顔料などを含む。また、本開示において、有彩色着色剤とは、白色着色剤及び黒色着色剤以外の着色剤を意味する。有彩色着色剤は、波長400nm以上650nm未満の範囲に吸収を有する着色剤が好ましい。
【0160】
有彩色着色剤としては、赤色着色剤、緑色着色剤、青色着色剤、黄色着色剤、紫色着色剤及びオレンジ色着色剤が挙げられる。有彩色着色剤は、顔料であってもよく、染料であってもよい。顔料と染料とを併用してもよい。また、顔料は、無機顔料、有機顔料のいずれでもよい。また、顔料には、無機顔料又は有機-無機顔料の一部を有機発色団で置換した材料を用いることもできる。無機顔料や有機-無機顔料を有機発色団で置換することで、色相設計をしやすくできる。
【0161】
顔料の平均一次粒子径は、1nm~200nmが好ましい。下限は5nm以上がより好ましく、10nm以上が更に好ましい。上限は、180nm以下がより好ましく、150nm以下が更に好ましく、100nm以下が特に好ましい。顔料の平均一次粒子径が上記範囲であれば、組成物中における顔料の分散安定性が良好である。なお、本開示において、顔料の一次粒子径は、顔料の一次粒子を透過型電子顕微鏡により観察し、得られた画像写真から求めることができる。具体的には、顔料の一次粒子の投影面積を求め、それに対応する円相当径を顔料の一次粒子径として算出する。また、本開示における平均一次粒子径は、400個の顔料の一次粒子についての一次粒子径の算術平均値とする。また、顔料の一次粒子とは、凝集のない独立した粒子をいう。
【0162】
有彩色着色剤は、顔料を含むものであることが好ましい。有彩色着色剤中における顔料の含有量は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。顔料としては以下に示すものが挙げられる。
【0163】
カラーインデックス(C.I.)Pigment Yellow 1,2,3,4,5,6,10,11,12,13,14,15,16,17,18,20,24,31,32,34,35,35:1,36,36:1,37,37:1,40,42,43,53,55,60,61,62,63,65,73,74,77,81,83,86,93,94,95,97,98,100,101,104,106,108,109,110,113,114,115,116,117,118,119,120,123,125,126,127,128,129,137,138,139,147,148,150,151,152,153,154,155,156,161,162,164,166,167,168,169,170,171,172,173,174,175,176,177,179,180,181,182,185,187,188,193,194,199,213,214,215,228(国際公開第2013/098836号に記載された直結型キノフタロン二量体),231,232(メチン系),233(キノリン系)等(以上、黄色顔料)、
C.I.Pigment Orange 2,5,13,16,17:1,31,34,36,38,43,46,48,49,51,52,55,59,60,61,62,64,71,73等(以上、オレンジ色顔料)、
C.I.Pigment Red 1,2,3,4,5,6,7,9,10,14,17,22,23,31,38,41,48:1,48:2,48:3,48:4,49,49:1,49:2,52:1,52:2,53:1,57:1,60:1,63:1,66,67,81:1,81:2,81:3,83,88,90,105,112,119,122,123,144,146,149,150,155,166,168,169,170,171,172,175,176,177,178,179,184,185,187,188,190,200,202,206,207,208,209,210,216,220,224,226,242,246,254,255,264,270,272,279,294(キサンテン系、Organo Ultramarine、Bluish Red),295(モノアゾ系),296(ジアゾ系)等(以上、赤色顔料)、
C.I.Pigment Green 7,10,36,37,58,59,62,63等(以上、緑色顔料)、
C.I.Pigment Violet 1,19,23,27,32,37,42,60(トリアリールメタン系),61(キサンテン系)等(以上、紫色顔料)、
C.I.Pigment Blue 1,2,15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,16,22,29,60,64,66,79,80,87(モノアゾ系),88(メチン系)等(以上、青色顔料)。
【0164】
また、緑色顔料として、1分子中のハロゲン原子数が平均10個~14個であり、臭素原子数が平均8個~12個であり、塩素原子数が平均2個~5個であるハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を用いることもできる。具体例としては、国際公開第2015/118720号に記載の化合物が挙げられる。また、緑色顔料として中国特許出願第106909027号明細書に記載の化合物、国際公開第2012/102395号に記載のリン酸エステルを配位子として有するフタロシアニン化合物などを用いることもできる。
また、緑色着色剤としては、特開2019-8014号公報、又は、特開2018-180023号公報に記載の緑色着色剤を使用してもよい。
【0165】
また、青色顔料として、リン原子を有するアルミニウムフタロシアニン化合物を用いることもできる。具体例としては、特開2012-247591号公報の段落0022~0030、特開2011-157478号公報の段落0047に記載の化合物が挙げられる。
【0166】
また、黄色顔料として、特開2018-203798号公報、特開2018-62578号公報、特許第6432077号公報、特許第6432076号公報、特開2018-155881号公報、特開2018-111757号公報、特開2018-40835号公報、特開2017-197640号公報、特開2016-145282号公報、特開2014-85565号公報、特開2014-21139号公報、特開2013-209614号公報、特開2013-209435号公報、特開2013-181015号公報、特開2013-61622号公報、特開2013-54339号公報、特開2013-32486号公報、特開2012-226110号公報、特開2008-74987号公報、特開2008-81565号公報、特開2008-74986号公報、特開2008-74985号公報、特開2008-50420号公報、特開2008-31281号公報、又は、特公昭48-32765号公報に記載のキノフタロン顔料も好適に使用できる。また、特許第6443711号公報に記載されている顔料、を用いることもできる。
【0167】
また、黄色顔料として、特開2013-54339号公報の段落0011~0034に記載のキノフタロン化合物、特開2014-26228号公報の段落0013~0058に記載のキノフタロン化合物、特開2019-8014号公報に記載の黄色顔料などを用いることもできる。
また、黄色顔料として、特開2018-062644号公報に記載の化合物を用いることもできる。この化合物は顔料誘導体としても使用可能である。
更に、特開2018-155881号公報に記載されているように、C.I.Pigment Yellow 129を、耐候性改良の目的で添加してもよい。
【0168】
赤色顔料として、特開2017-201384号公報に記載の構造中に少なくとも1つ臭素原子が置換したジケトピロロピロール化合物、特許第6248838号の段落0016~0022に記載のジケトピロロピロール化合物、国際公開第2012/102399号に記載のジケトピロロピロール化合物、国際公開第2012/117965号に記載のジケトピロロピロール化合物、特開2012-229344号公報に記載のナフトールアゾ化合物などを用いることもできる。また、赤色顔料として、芳香族環に対して、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子が結合した基が導入された芳香族環基がジケトピロロピロール骨格に結合した構造を有する化合物を用いることもできる。
【0169】
白色顔料としては、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、シリカ、タルク、マイカ、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、中空樹脂粒子、硫化亜鉛などが挙げられる。白色顔料は、チタン原子を有する粒子が好ましく、酸化チタンがより好ましい。また、白色顔料は、波長589nmの光に対する屈折率が2.10以上の粒子であることが好ましい。前述の屈折率は、2.10~3.00であることが好ましく、2.50~2.75であることがより好ましい。
【0170】
また、白色顔料は「酸化チタン 物性と応用技術 清野学著 13~45ページ 1991年6月25日発行、技報堂出版発行」に記載の酸化チタンを用いることもできる。
【0171】
白色顔料は、単一の無機物からなるものだけでなく、他の素材と複合させた粒子を用いてもよい。例えば、内部に空孔や他の素材を有する粒子、コア粒子に無機粒子を多数付着させた粒子、ポリマー粒子からなるコア粒子と無機ナノ微粒子からなるシェル層とからなるコア及びシェル複合粒子を用いることが好ましい。上記ポリマー粒子からなるコア粒子と無機ナノ微粒子からなるシェル層とからなるコア及びシェル複合粒子としては、例えば、特開2015-047520号公報の段落0012~0042の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0172】
白色顔料は、中空無機粒子を用いることもできる。中空無機粒子とは、内部に空洞を有する構造の無機粒子であり、外殻に包囲された空洞を有する無機粒子のことを言う。中空無機粒子としては、特開2011-075786号公報、国際公開第2013/061621号、特開2015-164881号公報などに記載された中空無機粒子が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0173】
黒色顔料としては特に限定されず、公知のものを用いることができる。例えば、カーボンブラック、チタンブラック、グラファイト等が挙げられ、カーボンブラック、チタンブラックが好ましく、チタンブラックがより好ましい。チタンブラックとは、チタン原子を含有する黒色粒子であり、低次酸化チタンや酸窒化チタンが好ましい。チタンブラックは、分散性向上、凝集性抑制などの目的で必要に応じ、表面を修飾することが可能である。例えば、酸化珪素、酸化チタン、酸化ゲルマニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、又は、酸化ジルコニウムでチタンブラックの表面を被覆することが可能である。また、特開2007-302836号公報に表されるような撥水性物質での処理も可能である。黒色顔料として、カラーインデックス(C.I.)Pigment Black 1,7等が挙げられる。チタンブラックは、個々の粒子の一次粒子径及び平均一次粒子径のいずれもが小さいことが好ましい。具体的には、平均一次粒子径が10~45nmであることが好ましい。チタンブラックは、分散物として用いることもできる。例えば、チタンブラック粒子とシリカ粒子とを含み、分散物中のSi原子とTi原子との含有比が0.20~0.50の範囲に調整した分散物などが挙げられる。上記分散物については、特開2012-169556号公報の段落0020~0105の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。チタンブラックの市販品の例としては、チタンブラック10S、12S、13R、13M、13M-C、13R-N、13M-T(商品名:三菱マテリアル(株)製)、ティラック(Tilack)D(商品名:赤穂化成(株)製)などが挙げられる。
【0174】
本開示において、着色剤には染料を用いることもできる。染料としては特に制限はなく、公知の染料が使用できる。例えば、ピラゾールアゾ系、アニリノアゾ系、トリアリールメタン系、アントラキノン系、アントラピリドン系、ベンジリデン系、オキソノール系、ピラゾロトリアゾールアゾ系、ピリドンアゾ系、シアニン系、フェノチアジン系、ピロロピラゾールアゾメチン系、キサンテン系、フタロシアニン系、ベンゾピラン系、インジゴ系、ピロメテン系等の染料が挙げられる。また、特開2012-158649号公報に記載のチアゾール化合物、特開2011-184493号公報に記載のアゾ化合物、特開2011-145540号公報に記載のアゾ化合物も好ましく用いることができる。また、黄色染料として、特開2013-054339号公報の段落0011~0034に記載のキノフタロン化合物、特開2014-026228号公報の段落0013~0058に記載のキノフタロン化合物などを用いることもできる。
【0175】
本開示に係る組成物が、着色剤を含有する場合、着色剤の含有量は、組成物の全固形分に対し、1質量%~50質量%が好ましい。本開示に係る組成物が、着色剤を2種以上含む場合、それらの合計量が上記範囲内であることが好ましい。
【0176】
<近赤外線を透過させて可視光を遮光する着色剤>
本開示に係る組成物は、近赤外線(近赤外領域の波長の光)を透過させて可視光(可視領域の波長の光)を遮光する着色剤(以下、可視光を遮光する着色剤ともいう)を含有することもできる。可視光を遮光する着色剤を含む組成物は、近赤外線透過フィルタ形成用の組成物として好ましく用いられる。
【0177】
本開示において、可視光を遮光する着色剤は、紫色から赤色の波長領域の光を吸収する着色剤であることが好ましい。また、本開示において、可視光を遮光する着色剤は、波長450nm~650nmの波長領域の光を遮光する着色剤であることが好ましい。また、可視光を遮光する着色剤は、波長900nm~1,300nmの光を透過する着色剤であることが好ましい。本開示において、可視光を遮光する着色剤は、以下の(A)及び(B)の少なくとも一方の要件を満たすことが好ましい。
(A):2種類以上の有彩色着色剤を含み、2種以上の有彩色着色剤の組み合わせで黒色を形成している。
(B):有機系黒色着色剤を含む。
【0178】
有彩色着色剤としては、上述したものが挙げられる。有機系黒色着色剤としては、例えば、ビスベンゾフラノン化合物、アゾメチン化合物、ペリレン化合物、アゾ化合物などが挙げられ、ビスベンゾフラノン化合物、ペリレン化合物が好ましい。ビスベンゾフラノン化合物としては、特表2010-534726号公報、特表2012-515233号公報、特表2012-515234号公報などに記載の化合物が挙げられ、例えば、BASF社製の「Irgaphor Black」として入手可能である。ペリレン化合物としては、特開2017-226821号公報の段落0016~0020に記載の化合物、C.I.Pigment Black 31、32などが挙げられる。アゾメチン化合物としては、特開平01-170601号公報、特開平02-034664号公報などに記載の化合物が挙げられ、例えば、大日精化工業(株)製の「クロモファインブラックA1103」として入手できる。
【0179】
2種以上の有彩色着色剤の組み合わせで黒色を形成する場合の、有彩色着色剤の組み合わせとしては、例えば以下が挙げられる。
(1)黄色着色剤、青色着色剤、紫色着色剤及び赤色着色剤を含有する態様。
(2)黄色着色剤、青色着色剤及び赤色着色剤を含有する態様。
(3)黄色着色剤、紫色着色剤及び赤色着色剤を含有する態様。
(4)黄色着色剤及び紫色着色剤を含有する態様。
(5)緑色着色剤、青色着色剤、紫色着色剤及び赤色着色剤を含有する態様。
(6)紫色着色剤及びオレンジ色着色剤を含有する態様。
(7)緑色着色剤、紫色着色剤及び赤色着色剤を含有する態様。
(8)緑色着色剤及び赤色着色剤を含有する態様。
【0180】
各着色剤の比率(質量比)としては例えば以下の比率であることが好ましい。
【0181】
【0182】
上記No.1において、黄色着色剤は0.1~0.3がより好ましく、青色着色剤は0.1~0.5がより好ましく、紫色着色剤は0.01~0.2であることがより好ましく、赤色着色剤は0.1~0.5であることがより好ましい。上記No.2において、黄色着色剤は0.1~0.3がより好ましく、青色着色剤は0.1~0.5がより好ましく、赤色着色剤は0.1~0.5であることがより好ましい。
【0183】
組成物は、可視着色剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
可視着色剤の含有量は、組成物の全質量に対し、0.1質量%~70質量%であることが好ましく、0.5質量%~60質量%であることがより好ましく、1質量%~50質量%であることが更に好ましい。
【0184】
<顔料誘導体>
組成物は、顔料誘導体を含有することができる。顔料誘導体としては、色素骨格に、酸基、塩基性基及び水素結合性基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の基が結合した化合物が挙げられる。酸基としては、スルホ基、カルボキシ基、リン酸基、ボロン酸基、スルホンイミド基、スルホンアミド基及びこれらの塩、並びにこれらの塩の脱塩構造が挙げられる。塩を構成する原子又は原子団としては、アルカリ金属イオン(Li+、Na+、K+など)、アルカリ土類金属イオン(Ca2+、Mg2+など)、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、ホスホニウムイオンなどが挙げられる。また、上記塩の脱塩構造としては上記の塩から塩を形成する原子又は原子団が脱離した基が挙げられる。例えば、カルボキシ基の塩の脱塩構造は、カルボキシラート基(-COO-)である。塩基性基としては、アミノ基、ピリジニル基及びこれらの塩、並びにこれらの塩の脱塩構造が挙げられる。塩を構成する原子又は原子団としては、水酸化物イオン、ハロゲンイオン、カルボン酸イオン、スルホン酸イオン、フェノキシドイオンなどが挙げられる。また、上記塩の脱塩構造としては上記の塩から塩を形成する原子又は原子団が脱離した基が挙げられる。水素結合性基とは、水素原子を介して相互作用する基のことである。水素結合性基の具体例としては、アミド基、ヒドロキシ基、-NHCONHR、-NHCOOR、-OCONHRなどが挙げられる。Rはアルキル基及びアリール基であることが好ましい。
【0185】
顔料誘導体としては、式(B1)で表される化合物が挙げられる。
【0186】
【0187】
式(B1)中、Pは色素骨格を表し、Lは単結合又は連結基を表し、Xは酸基、塩基性基又は水素結合性基を表し、mは1以上の整数を表し、nは1以上の整数を表し、mが2以上の場合は複数のL及びXは互いに異なっていてもよく、nが2以上の場合は複数のXは互いに異なっていてもよい。
【0188】
上記Pが表す色素骨格としては、スクアリリウム色素構造、クロコニウム色素骨格、ピロロピロール色素骨格、ジケトピロロピロール色素骨格、キナクリドン色素骨格、アントラキノン色素骨格、ジアントラキノン色素骨格、ベンゾイソインドール色素骨格、チアジンインジゴ色素骨格、アゾ色素骨格、キノフタロン色素骨格、フタロシアニン色素骨格、ナフタロシアニン色素骨格、ジオキサジン色素骨格、ペリレン色素骨格、ペリノン色素骨格、ベンゾイミダゾロン色素骨格、ベンゾチアゾール色素骨格、ベンゾイミダゾール色素骨格及びベンゾオキサゾール色素骨格よりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、スクアリリウム色素骨格、クロコニウム色素骨格、ピロロピロール色素骨格、ジケトピロロピロール色素骨格、キナクリドン色素骨格、及び、ベンゾイミダゾロン色素骨格よりなる群から選ばれる少なくとも1種が更に好ましく、スクアリリウム色素骨格又はクロコニウム色素骨格が特に好ましい。
【0189】
Lが表す連結基としては、1個~100個の炭素原子、0個~10個の窒素原子、0~50個の酸素原子、1個~200個の水素原子、及び、0個~20個の硫黄原子からなる基が好ましく、無置換であってもよく、置換基を更に有していてもよい。置換基としては、後述の置換基Tが挙げられる。
-置換基T-
置換基Tとしては、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、-ORt1、-CORt1、-COORt1、-OCORt1、-NRt1Rt2、-NHCORt1、-CONRt1Rt2、-NHCONRt1Rt2、-NHCOORt1、-SRt1、-SO2Rt1、-SO2ORt1、-NHSO2Rt1又は-SO2NRt1Rt2が挙げられる。Rt1及びRt2は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。Rt1とRt2が結合して環を形成してもよい。
【0190】
Xが表す酸基、塩基性基、及び、水素結合性基としては、上述した基が挙げられる。
【0191】
近赤外線吸収色素として顔料タイプの化合物を用いる場合は、顔料誘導体は波長700nm~1,200nmの範囲に極大吸収波長を化合物であることも好ましく、波長700nm~1,100nmの範囲に極大吸収波長を有する化合物であることも好ましく、波長700nm~1,000nmの範囲に極大吸収波長を有する化合物であることも好ましい。上記波長の範囲に極大吸収波長を有する顔料誘導体は、π平面の広がりが近赤外線吸収色素と近づけやすくでき、近赤外線吸収色素の吸着性が向上し、より優れた分散安定性が得られやすい。また、顔料誘導体は、芳香族環を含む化合物であることも好ましく、2以上の芳香族環が縮合した構造を含む化合物であることもより好ましい。また、顔料誘導体はπ共役平面を有する化合物であることも好ましく、近赤外線吸収色素に含まれるπ共役平面と同一の構造のπ共役平面を有する化合物であることもより好ましい。また、顔料誘導体のπ共役平面に含まれるπ電子の数は8個~100個であることが好ましい。上限は、90個以下であることが好ましく、80個以下であることがより好ましい。下限は10個以上であることが好ましく、12個以上であることがより好ましい。また、顔料誘導体は、下記式(SQ-a)で表される部分構造を含むπ共役平面を有する化合物であることも好ましい。
【0192】
【0193】
上記式(SQ-a)中、波線部分は、他の構造との結合位置を表す。
【0194】
顔料誘導体は、下記式(Syn1)で表される化合物であることも好ましい。
【0195】
【0196】
式(Syn1)中、Rsy1及びRsy2はそれぞれ独立して有機基を表し、L1は単結合又は(p1+1)価の基を表し、A1はスルホ基、カルボキシ基、リン酸基、ボロン酸基、スルホンイミド基、スルホンアミド基、アミノ基、ピリジニル基、これらの塩又はこれらの脱塩構造よりなる群から選ばれる基を表し、p1及びq1はそれぞれ独立して1以上の整数を表す。p1が2以上の場合、複数のA1は同一であってもよく、異なっていてもよい。q1が2以上の場合、複数のL1及びA1は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0197】
式(Syn1)のRsy1及びRsy2が表す有機基としては、アリール基、ヘテロアリール基が挙げられる。また、上記有機基としては、式(1)におけるA以外の部分も好適に挙げられる。
【0198】
式(Syn1)のL1が表す(p1+1)価の基としては、炭化水素基、複素環基、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-SO2-、-NRL-、-NRLCO-、-CONRL-、-NRLSO2-、-SO2NRL-及びこれらの組み合わせからなる基が挙げられる。RLは水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。炭化水素基は脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。炭化水素基としては、アルキレン基、アリーレン基、又はこれらの基から水素原子を1個以上除いた基が挙げられる。アルキレン基の炭素数は、1~30が好ましく、1~15がより好ましく、1~10がさらに好ましい。アルキレン基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよい。また、環状のアルキレン基は、単環、多環のいずれであってもよい。アリーレン基の炭素数は、6~18が好ましく、6~14がより好ましく、6~10がさらに好ましい。複素環基は、単環又は縮合数が2~4の縮合環が好ましい。複素環基の環を構成するヘテロ原子の数は1~3が好ましい。複素環基の環を構成するヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子が好ましい。複素環基の環を構成する炭素原子の数は3~30が好ましく、3~18がより好ましく、3~12がより好ましい。炭化水素基及び複素環基は置換基を有していてもよい。置換基としては、後述の置換基Tで挙げた基が挙げられる。また、RLが表すアルキル基の炭素数は1~20が好ましく、1~15がより好ましく、1~8が更に好ましい。アルキル基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、直鎖又は分岐が好ましく、直鎖がより好ましい。RLが表すアルキル基はさらに置換基を有していてもよい。置換基としては上述した置換基Tが挙げられる。RLが表すアリール基の炭素数は、6~30が好ましく、6~20がより好ましく、6~12が更に好ましい。RLが表すアリール基はさらに置換基を有していてもよい。置換基としては後述の置換基Tが挙げられる
-置換基T-
置換基Tとしては、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、-ORt1、-CORt1、-COORt1、-OCORt1、-NRt1Rt2、-NHCORt1、-CONRt1Rt2、-NHCONRt1Rt2、-NHCOORt1、-SRt1、-SO2Rt1、-SO2ORt1、-NHSO2Rt1又は-SO2NRt1Rt2が挙げられる。Rt1及びRt2は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。Rt1とRt2が結合して環を形成してもよい。
【0199】
顔料誘導体の具体例としては、下記構造の化合物が挙げられる。また、特開昭56-118462号公報、特開昭63-264674号公報、特開平1-217077号公報、特開平3-9961号公報、特開平3-26767号公報、特開平3-153780号公報、特開平3-45662号公報、特開平4-285669号公報、特開平6-145546号公報、特開平6-212088号公報、特開平6-240158号公報、特開平10-30063号公報、特開平10-195326号公報、国際公開第2011/024896号の段落0086~0098、国際公開第2012/102399号の段落0063~0094等に記載の化合物が挙げられる。
更に、顔料誘導体としては、特開2015-172732号公報(スルホ基を有するキノフタロン化合物の金属塩)、特開2014-199308号公報、特開2014-85562号公報、特開2014-35351号公報、又は、特開2008-81565号公報に記載の化合物を用いることもでき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0200】
【0201】
組成物が顔料誘導体を含有する場合、顔料誘導体の含有量は、式(1)で表される構造を有する化合物及び上記着色剤のうちの顔料100質量部に対し、1質量部~30質量部が好ましく、3質量部~20質量部が更に好ましい。顔料誘導体は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0202】
<重合禁止剤>
本開示に係る組成物は、保存安定性の観点から、重合禁止剤を含むことが好ましい。
重合禁止剤としては、特に限定されず、公知の重合禁止剤を用いることができる。
重合禁止剤としては、ハイドロキノン、p-メトキシフェノール、ジ-t-ブチル-p-クレゾール、ピロガロール、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシピペリジン-1-オキシル、t-ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、N-ニトロソフェニルヒドロキシアミン塩(アンモニウム塩、第一セリウム塩等)、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル等が挙げられる。なお、重合禁止剤は、酸化防止剤として機能することもある。
【0203】
重合禁止剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
重合禁止剤の含有量は、保存安定性の観点から、組成物の全固形分に対して、0.1ppm~1,000ppmであることが好ましく、1ppm~500ppmであることがより好ましく、1ppm~100ppmであることが特に好ましい。
【0204】
<溶剤>
本開示に係る組成物は、溶剤を含有してもよい。
溶剤としては、エステル類、例えば酢酸エチル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソブチル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、アルキルエステル類、乳酸メチル、乳酸エチル、オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、並びに、3-オキシプロピオン酸メチル及び3-オキシプロピオン酸エチルなどの3-オキシプロピオン酸アルキルエステル類(例えば、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル)、並びに、2-オキシプロピオン酸メチル、2-オキシプロピオン酸エチル、及び2-オキシプロピオン酸プロピルなどの2-オキシプロピオン酸アルキルエステル類(例えば、2-メトキシプロピオン酸メチル、2-メトキシプロピオン酸エチル、2-メトキシプロピオン酸プロピル、2-エトキシプロピオン酸メチル、2-エトキシプロピオン酸エチル、2-オキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-オキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、2-メトキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-エトキシ-2-メチルプロピオン酸エチル)、並びに、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-オキソブタン酸メチル、2-オキソブタン酸エチル等;
【0205】
エーテル類、例えばジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート等;ケトン類、例えばメチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン等;芳香族炭化水素類、例えばトルエン、キシレン、等が挙げられる。ただし、有機溶剤としての芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等)は、環境面等の理由により低減したほうがよい場合がある(例えば、有機溶剤の全質量に対して、50質量ppm(parts per million)以下とすることもでき、10質量ppm以下とすることもでき、1質量ppm以下とすることもできる。)。
【0206】
これらのうち、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、2-ヘプタノン、シクロヘキサノン、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等が好適である。
溶剤は、単独で用いる以外に2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0207】
本開示においては、金属含有量の少ない有機溶剤を用いることが好ましく、有機溶剤の金属含有量は、例えば10質量ppb(parts per billion)以下であることが好ましい。必要に応じて質量ppt(parts per trillion)レベルの有機溶剤を用いてもよく、そのような有機溶剤は、例えば、東洋合成工業(株)が提供している(化学工業日報、2015年11月13日)。
【0208】
有機溶剤から金属等の不純物を除去する方法としては、例えば、蒸留(分子蒸留や薄膜蒸留等)やフィルタを用いたろ過を挙げることができる。ろ過に用いるフィルタのフィルタ孔径としては、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、3μm以下が更に好ましい。フィルタの材質は、ポリテトラフロロエチレン、ポリエチレン又はナイロンが好ましい。
【0209】
有機溶剤は、異性体(原子数が同じであるが構造が異なる化合物)が含まれていてもよい。また、異性体は、1種のみが含まれていてもよいし、複数種含まれていてもよい。
【0210】
有機溶剤中の過酸化物の含有率が0.8mmol/L以下であることが好ましく、過酸化物を実質的に含まないことがより好ましい。
【0211】
本開示に係る組成物の全固形分は、塗布方法及び溶剤の有無により変更されるが、例えば、1質量%~100質量%であることが好ましい。下限は10質量%以上がより好ましい。
【0212】
<増感剤>
本開示に係る組成物は、重合開始剤のラジカル、カチオン等の重合開始種の発生効率の向上、感光波長の長波長化の目的で、増感剤を含有していてもよい。本開示に用いることができる増感剤としては、上記した光重合開始剤に対し、電子移動機構又はエネルギー移動機構で増感させるものが好ましい。
【0213】
本開示に用いることができる増感剤としては、以下に列挙する化合物類に属しており、且つ波長300nm~波長450nmの波長領域に吸収波長を有するものが挙げられる。
好ましい増感剤の例としては、以下の化合物類に属しており、かつ波長330nm~波長450nm域に吸収波長を有するものを挙げることができる。
例えば、多核芳香族類(例えば、フェナントレン、アントラセン、ピレン、ペリレン、トリフェニレン、9,10-ジアルコキシアントラセン)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、チオキサントン類(イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、クロロチオキサントン)、シアニン類(例えばチアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、フタロシアニン類、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)、アクリジンオレンジ、クマリン類(例えば、7-ジエチルアミノ-4-メチルクマリン)、ケトクマリン、フェノチアジン類、フェナジン類、スチリルベンゼン類、アゾ化合物、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、ジスチリルベンゼン類、カルバゾール類、ポルフィリン、スピロ化合物、キナクリドン、インジゴ、スチリル、ピリリウム化合物、ピロメテン化合物、ピラゾロトリアゾール化合物、ベンゾチアゾール化合物、バルビツール酸誘導体、チオバルビツール酸誘導体、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトンなどの芳香族ケトン化合物、N-アリールオキサゾリジノンなどのヘテロ環化合物などが挙げられる。等が挙げられ、更に欧州特許第568,993号明細書、米国特許第4,508,811号明細書、同5,227,227号明細書、特開2001-125255号公報、特開平11-271969号公報等に記載の化合物等などが挙げられる。
【0214】
増感剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本開示に係る組成物中における増感剤の含有量は、深部への光吸収効率と開始分解効率の観点から、組成物の全固形分に対し、0.1質量%~20質量%であることが好ましく、0.5質量%~15質量%がより好ましい。
【0215】
<共増感剤>
本開示に係る組成物は、共増感剤を含有してもよい。共増感剤は、増感色素や開始剤の活性放射線に対する感度を一層向上させる、あるいは酸素による重合性化合物の重合阻害を抑制する等の作用を有する。
【0216】
その他、共増感剤としては、例えば、特開2007-277514号公報の段落0233~0241に記載の化合物が挙げられる。
【0217】
これら共増感剤の含有量は、重合成長速度と連鎖移動のバランスによる硬化速度の向上の観点から、組成物の全固形分の質量に対し、0.1質量%~30質量%の範囲が好ましく、0.5質量%~25質量%の範囲がより好ましく、1質量%~20質量%の範囲が更に好ましい。
【0218】
<その他の成分>
本開示に係る組成物には、必要に応じて、フッ素系有機化合物、熱重合防止剤、光重合開始剤、その他充填剤、アルカリ可溶性樹脂及び分散剤以外の高分子化合物、界面活性剤、密着促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤などの各種添加物を含有することができる。
【0219】
その他成分としては、例えば、特開2007-277514号公報の段落0238~0249に記載の化合物が挙げられる。
【0220】
<組成物の調製>
本開示に係る組成物は、上述した各成分を混合することによって調製することができる。また、異物の除去や欠陥の低減などの目的で、フィルタでろ過することが好ましい。フィルタとしては、従来からろ過用途等に用いられているものであれば特に限定されることなく用いることができる。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂、ナイロン(例えばナイロン-6、ナイロン-6,6)等のポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂(高密度、超高分子量を含む)等を用いたフィルタが挙げられる。これら素材の中でもポリプロピレン(高密度ポリプロピレンを含む)又はナイロンが好ましい。
フィルタの孔径は、0.01μm~7.0μmが好ましく、0.01μm~3.0μmがより好ましく、0.05μm~0.5μmが更に好ましい。この範囲とすることにより、後工程において均一及び平滑な組成物の調製を阻害する、微細な異物を確実に除去することが可能となる。また、ファイバ状のろ材を用いることも好ましく、ろ材としては例えばポリプロピレンファイバ、ナイロンファイバ、グラスファイバ等が挙げられ、具体的にはロキテクノ社製のSBPタイプシリーズ(SBP008など)、TPRタイプシリーズ(TPR002、TPR005など)、SHPXタイプシリーズ(SHPX003など)のフィルタカートリッジを用いることができる。
フィルタを使用する際、異なるフィルタを組み合わせてもよい。その際、第1のフィルタでのろ過は、1回のみでもよいし、2回以上行ってもよい。
また、上述した範囲内で異なる孔径の第1のフィルタを組み合わせてもよい。ここでの孔径は、フィルタメーカーの公称値を参照することができる。市販のフィルタとしては、例えば、日本ポール(株)(DFA4201NXEYなど)、アドバンテック東洋(株)、日本インテグリス(株)又は(株)キッツマイクロフィルタ等が提供する各種フィルタの中から選択することができる。
【0221】
<組成物の用途>
本開示に係る組成物は、液状とすることができるため、例えば、本開示に係る組成物を基材などに付与し、乾燥させることにより膜を容易に製造できる。
本開示に係る組成物の25℃における粘度は、塗布により膜を形成する場合は、塗布性の観点から、1mPa・s~100mPa・sであることが好ましい。下限は、2mPa・s以上がより好ましく、3mPa・s以上が更に好ましい。上限は、50mPa・s以下がより好ましく、30mPa・s以下が更に好ましく、15mPa・s以下が特に好ましい。
本開示における粘度は、東機産業(株)製の粘度計(商品名:VISCOMETER TV-22)を使用し、25℃において測定するものとする。
【0222】
本開示に係る組成物の用途は、特に限定されない。例えば、赤外線カットフィルタなどの形成に好ましく用いることができる。例えば、固体撮像素子の受光側における赤外線カットフィルタ(例えば、ウエハーレベルレンズに対する赤外線カットフィルタ用など)、固体撮像素子の裏面側(受光側とは反対側)における赤外線カットフィルタなどに好ましく用いることができる。特に、固体撮像素子の受光側における赤外線カットフィルタとして好ましく用いることができる。また、本開示に係る組成物に対し、更に、可視光を遮光する着色剤を含有させることで、特定の波長以上の赤外線を透過可能な赤外線透過フィルタを形成することもできる。例えば、波長400nm~850nmまでを遮光し、波長850nm以上の赤外線を透過可能な赤外線透過フィルタを形成することもできる。
【0223】
また、本開示に係る組成物は、収納容器に保管されることが好ましい。
収納容器として、原材料や組成物中への不純物の混入防止を目的に、容器内壁を6種6層の樹脂で構成する多層ボトルや6種の樹脂を7層構造にしたボトルを使用することも好ましい。これらの容器としては、例えば、特開2015-123351号公報に記載の容器が挙げられる。
【0224】
<膜>
本開示に係る膜は、本開示に係る組成物からなる又は上記組成物を硬化してなる膜である。また、組成物が溶剤を含む場合には、乾燥を行ってもよい。本開示に係る膜は、赤外線カットフィルタとして好ましく用いることができる。また、熱線遮蔽フィルタや赤外線透過フィルタとして用いることもできる。本開示に係る膜は、支持体上に積層して用いてもよく、支持体から剥離して用いてもよい。本開示に係る膜は、パターンを有していてもよく、パターンを有さない膜(平坦膜)であってもよい。
本開示における「乾燥」は、溶剤を少なくとも一部除去すればよく、溶剤を完全に除去する必要はなく、所望に応じて、溶剤の除去量を設定することができる。
また、上記硬化は、膜の硬さが向上していればよいが、重合による硬化が好ましい。
【0225】
本開示に係る膜の厚さは、目的に応じて適宜調整できる。膜の厚さは20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、5μm以下が更に好ましい。膜の厚さの下限は0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましく、0.3μm以上が更に好ましい。
【0226】
本開示に係る膜は、波長650nm以上の範囲に極大吸収波長を有することが好ましく、波長650nm~1,500nmの範囲に極大吸収波長を有することがより好ましく、波長700nm~1,100nmの範囲に極大吸収波長を有することが更に好ましく、波長760nm~1,000nmの範囲に極大吸収波長を有することが特に好ましい。
【0227】
本開示に係る膜を赤外線カットフィルタとして用いる場合は、本開示に係る膜は以下の(1)~(4)のうちの少なくとも1つの条件を満たすことが好ましく、(1)~(4)の全ての条件を満たすことが更に好ましい。
(1)波長400nmでの透過率は70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上が更に好ましく、90%以上が特に好ましい。
(2)波長500nmでの透過率は70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上が更に好ましく、95%以上が特に好ましい。
(3)波長600nmでの透過率は70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上が更に好ましく、95%以上が特に好ましい。
(4)波長650nmでの透過率は70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上が更に好ましく、95%以上が特に好ましい。
【0228】
本開示に係る膜は、有彩色着色剤を含むカラーフィルタと組み合わせて用いることもできる。カラーフィルタは、有彩色着色剤を含む着色組成物を用いて製造できる。有彩色着色剤としては、本開示に係る組成物の欄で説明した有彩色着色剤が挙げられる。着色組成物は、樹脂、重合性化合物、重合開始剤、界面活性剤、溶剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤などを更に含有することができる。これらの詳細については、上述した材料が挙げられ、これらを用いることができる。
【0229】
本開示に係る膜とカラーフィルタとを組み合わせて用いる場合、本開示に係る膜の光路上にカラーフィルタが配置されていることが好ましい。例えば、本開示に係る膜とカラーフィルタとを積層して積層体として用いることができる。積層体においては、本開示に係る膜とカラーフィルタとは、両者が厚み方向で隣接していてもよく、隣接していなくてもよい。本開示に係る膜とカラーフィルタとが厚み方向で隣接していない場合は、カラーフィルタが形成された支持体とは別の支持体に、本開示に係る膜が形成されていてもよく、本開示に係る膜とカラーフィルタとの間に、固体撮像素子を構成する他の部材(例えば、マイクロレンズ、平坦化層など)が介在していてもよい。
【0230】
なお、本開示において、赤外線カットフィルタとは、可視領域の波長の光(可視光)を透過させ、近赤外領域の波長の光(赤外線)の少なくとも一部を遮光するフィルタを意味する。赤外線カットフィルタは、可視領域の波長の光をすべて透過するものであってもよく、可視領域の波長の光のうち、特定の波長領域の光を通過させ、特定の波長領域の光を遮光するものであってもよい。また、本開示において、カラーフィルタとは、可視領域の波長の光のうち、特定の波長領域の光を通過させ、特定の波長領域の光を遮光するフィルタを意味する。また、本開示において、赤外線透過フィルタとは、可視光を遮光し、赤外線の少なくとも一部を透過させるフィルタを意味する。
【0231】
本開示に係る膜は、CCD(電荷結合素子)やCMOS(相補型金属酸化膜半導体)などの固体撮像素子や、赤外線センサ、画像表示装置などの各種装置に用いることができる。
【0232】
<膜の製造方法>
次に、本開示に係る膜の製造方法について説明する。本開示に係る膜は、本開示に係る組成物を塗布する工程を経て製造できる。
【0233】
本開示に係る膜の製造方法において、組成物は支持体上に塗布することが好ましい。支持体としては、例えば、シリコン、無アルカリガラス、ソーダガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、石英ガラスなどの材質で構成された基板が挙げられる。これらの基板には、有機膜や無機膜など形成されていてもよい。有機膜の材料としては、例えば上述した樹脂が挙げられる。また、支持体としては、上述した樹脂で構成された基板を用いることもできる。また、支持体には、電荷結合素子(CCD)、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)、透明導電膜などが形成されていてもよい。また、支持体には、各画素を隔離するブラックマトリクスが形成されている場合もある。また、支持体には、必要により、上部の層との密着性改良、物質の拡散防止或いは基板等の支持体表面の平坦化のために下塗り層を設けてもよい。また、支持体としてガラス基板を用いる場合においては、ガラス基板上に無機膜を形成したり、ガラス基板を脱アルカリ処理して用いることが好ましい。この態様によれば、より異物の発生が抑制された膜を製造し易い。
【0234】
組成物の塗布方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、滴下法(ドロップキャスト);スリットコート法;スプレー法;ロールコート法;回転塗布法(スピンコーティング);流延塗布法;スリットアンドスピン法;プリウェット法(たとえば、特開2009-145395号公報に記載されている方法);インクジェット(例えばオンデマンド方式、ピエゾ方式、サーマル方式)、ノズルジェット等の吐出系印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、反転オフセット印刷、メタルマスク印刷法などの各種印刷法;金型等を用いた転写法;ナノインプリント法などが挙げられる。インクジェットでの適用方法としては、特に限定されず、例えば「広がる・使えるインクジェット-特許に見る無限の可能性-、2005年2月発行、住ベテクノリサーチ」に示された方法(特に115ページ~133ページ)や、特開2003-262716号公報、特開2003-185831号公報、特開2003-261827号公報、特開2012-126830号公報、特開2006-169325号公報などに記載の方法が挙げられる。
【0235】
組成物を塗布して形成した組成物層は、乾燥(プリベーク)してもよい。低温プロセスによりパターンを形成する場合は、プリベークを行わなくてもよい。プリベークを行う場合、プリベーク温度は、150℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましく、110℃以下が更に好ましい。下限は、例えば、50℃以上とすることが好ましく、80℃以上とすることがより好ましい。プリベーク温度を150℃以下で行うことにより、例えば、イメージセンサの光電変換膜を有機素材で構成した場合において、これらの特性をより効果的に維持することができる。
プリベーク時間は、10秒~3,000秒が好ましく、40秒~2,500秒がより好ましく、80秒~220秒が更に好ましい。乾燥は、ホットプレート、オーブン等で行うことができる。
【0236】
本開示に係る膜の製造方法においては、更にパターンを形成する工程を含んでいてもよい。パターン形成方法としては、フォトリソグラフィ法を用いたパターン形成方法や、ドライエッチング法を用いたパターン形成方法が挙げられる。なお、本開示に係る膜を平坦膜として用いる場合には、パターンを形成する工程を行わなくてもよい。以下、パターンを形成する工程について詳細に説明する。
【0237】
-フォトリソグラフィ法でパターン形成する場合-
フォトリソグラフィ法でのパターン形成方法は、本開示に係る組成物を塗布して形成した組成物層に対しパターン状に露光する工程(露光工程)と、未露光部の組成物層を現像除去してパターンを形成する工程(現像工程)と、を含むことが好ましい。必要に応じて、現像されたパターンをベークする工程(ポストベーク工程)を設けてもよい。以下、各工程について説明する。
【0238】
<<露光工程>>
露光工程では組成物層をパターン状に露光する。例えば、組成物層に対し、ステッパー等の露光装置を用いて、所定のマスクパターンを有するマスクを介して露光することで、組成物層をパターン露光することができる。これにより、露光部分を硬化することができる。露光に際して用いることができる放射線(光)としては、g線、i線等の紫外線が好ましく、i線がより好ましい。照射量(露光量)は、例えば、0.03J/cm2~2.5J/cm2が好ましく、0.05J/cm2~1.0J/cm2がより好ましく、0.08J/cm2~0.5J/cm2が特に好ましい。露光時における酸素濃度については適宜選択することができ、大気下で行う他に、例えば酸素濃度が19体積%以下の低酸素雰囲気下(例えば、15体積%、5体積%、実質的に無酸素)で露光してもよく、酸素濃度が21体積%を超える高酸素雰囲気下(例えば、22体積%、30体積%、50体積%)で露光してもよい。また、露光照度は適宜設定することが可能であり、好ましくは1,000W/m2~100,000W/m2(例えば、5,000W/m2、15,000W/m2、35,000W/m2)の範囲から選択することができる。酸素濃度と露光照度は適宜条件を組み合わせてよく、例えば、酸素濃度10体積%で照度10,000W/m2、酸素濃度35体積%で照度20,000W/m2などとすることができる。
【0239】
<<現像工程>>
次に、露光後の組成物層における未露光部の組成物層を現像除去してパターンを形成する。未露光部の組成物層の現像除去は、現像液を用いて行うことができる。これにより、露光工程における未露光部の組成物層が現像液に溶出し、光硬化した部分だけが支持体上に残る。現像液としては、下地の固体撮像素子や回路などにダメージを与えない、アルカリ現像液が望ましい。現像液の温度は、例えば、20℃~30℃が好ましい。現像時間は、20秒~180秒が好ましい。また、残渣除去性を向上するため、現像液を60秒ごとに振り切り、更に新たに現像液を供給する工程を数回繰り返してもよい。
【0240】
現像液に用いるアルカリ剤としては、例えば、アンモニア水、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジグリコールアミン、ジエタノールアミン、ヒドロキシアミン、エチレンジアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ジメチルビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセンなどの有機アルカリ性化合物や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウムなどの無機アルカリ性化合物が挙げられる。現像液は、これらのアルカリ剤を純水で希釈したアルカリ性水溶液が好ましく使用される。アルカリ性水溶液のアルカリ剤の濃度は、0.001質量%~10質量%が好ましく、0.01質量%~1質量%がより好ましい。また、現像液には、界面活性剤を用いてもよい。界面活性剤の例としては、上述した組成物で説明した界面活性剤が挙げられ、ノニオン系界面活性剤が好ましい。現像液は、移送や保管の便宜などの観点より、一旦濃縮液として製造し、使用時に必要な濃度に希釈してもよい。希釈倍率は特に限定されないが、例えば1.5バイ~100倍の範囲に設定することができる。なお、このようなアルカリ性水溶液からなる現像液を使用した場合には、現像後純水で洗浄(リンス)することが好ましい。
【0241】
現像後、乾燥を施した後に加熱処理(ポストベーク)を行うこともできる。ポストベークは、膜の硬化を完全なものとするための現像後の加熱処理である。ポストベークを行う場合、ポストベーク温度は、例えば、100℃~240℃が好ましい。膜硬化の観点から、200℃~230℃がより好ましい。また、発光光源として有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)素子を用いた場合や、イメージセンサの光電変換膜を有機素材で構成した場合は、ポストベーク温度は、150℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましく、100℃以下が更に好ましく、90℃以下が特に好ましい。下限は、例えば、50℃以上とすることができる。ポストベークは、現像後の膜に対して、上記条件になるようにホットプレートやコンベクションオーブン(熱風循環式乾燥機)、高周波加熱機等の加熱手段を用いて、連続式あるいはバッチ式で行うことができる。また、低温プロセスによりパターンを形成する場合は、ポストベークは行わなくてもよく、再度露光する工程(後露光工程)を追加してもよい。
【0242】
-ドライエッチング法でパターン形成する場合-
ドライエッチング法でのパターン形成は、組成物を支持体上などに塗布して形成した組成物層を硬化して硬化物層を形成し、次いで、この硬化物層上にパターニングされたフォトレジスト層を形成し、次いで、パターニングされたフォトレジスト層をマスクとして硬化物層に対してエッチングガスを用いてドライエッチングするなどの方法で行うことができる。フォトレジスト層の形成においては、更にプリベーク処理を施すことが好ましい。特に、フォトレジストの形成プロセスとしては、露光後の加熱処理、現像後の加熱処理(ポストベーク処理)を実施する形態が望ましい。ドライエッチング法でのパターン形成については、特開2013-64993号公報の段落0010~0067の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0243】
<光学フィルタ、及び、積層体>
本開示に係る光学フィルタは、本開示に係る膜を有する。
本開示に係る光学フィルタは、赤外線カットフィルタ又は赤外線透過フィルタとして好ましく用いることができ、赤外線カットフィルタとしてより好ましく用いることができる。
また、本開示に係る膜と、赤、緑、青、マゼンタ、黄、シアン、黒及び無色よりなる群から選ばれる画素とを有する態様も本開示に係る光学フィルタの好ましい態様である。
また、本開示に係る積層体は、本開示に係る膜と、有彩色着色剤を含むカラーフィルタとを有する積層体である。
【0244】
本開示に係る赤外線カットフィルタは、本開示に係る膜を有する。
なお、本開示に係る赤外線カットフィルタは、赤外線領域の一部の波長の赤外線のみをカットするフィルタであっても、赤外線領域の全体をカットするフィルタであってもよい。赤外線領域の一部の波長の赤外線のみをカットするフィルタとしては、例えば、近赤外線カットフィルタが挙げられる。なお、近赤外線としては、波長750nm~2,500nmの赤外線が挙げられる。
また、本開示に係る赤外線カットフィルタは、波長750nm~1,000nmの範囲の赤外線をカットするフィルタであることが好ましく、波長750nm~1,200nmの範囲の赤外線をカットするフィルタであることがより好ましく、波長750nm~1,500nmの赤外線をカットするフィルタであることが更に好ましい。
本開示に係る赤外線カットフィルタは、上記膜の他に、更に、銅を含有する層、誘電体多層膜、紫外線吸収層などを有していてもよい。本開示に係る赤外線カットフィルタが、更に、銅を含有する層、又は、誘電体多層膜を少なくとも有することで、視野角が広く、赤外線遮蔽性に優れた赤外線カットフィルタが得られ易い。また、本開示に係る赤外線カットフィルタが、更に、紫外線吸収層を有することで、紫外線遮蔽性に優れた赤外線カットフィルタとすることができる。紫外線吸収層としては、例えば、国際公開第2015/099060号の段落0040~0070及び0119~0145に記載の吸収層を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。誘電体多層膜としては、特開2014-41318号公報の段落0255~0259の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。銅を含有する層としては、銅を含有するガラスで構成されたガラス基材(銅含有ガラス基材)や、銅錯体を含む層(銅錯体含有層)を用いることもできる。銅含有ガラス基材としては、銅を含有する燐酸塩ガラス、銅を含有する弗燐酸塩ガラスなどが挙げられる。銅含有ガラスの市販品としては、NF-50(AGCテクノグラス(株)製)、BG-60、BG-61(以上、ショット社製)、CD5000(HOYA(株)製)等が挙げられる。
【0245】
本開示に係る赤外線カットフィルタは、CCD(電荷結合素子)やCMOS(相補型金属酸化膜半導体)などの固体撮像素子や、赤外線センサ、画像表示装置などの各種装置に用いることができる。
【0246】
本開示に係る赤外線カットフィルタは、本開示に係る組成物を用いて得られる膜の画素(パターン)と、赤、緑、青、マゼンタ、黄、シアン、黒及び無色よりなる群から選ばれる少なくとも1種の画素(パターン)とを有する態様も好ましい態様である。
【0247】
本開示に係る光学フィルタの製造方法としては、特に制限はないが、本開示に係る組成物を支持体上に適用して組成物層を形成する工程と、上記組成物層をパターン状に露光する工程と、未露光部を現像除去してパターンを形成する工程と、を含む方法であることが好ましい。
また、本開示に係る光学フィルタの製造方法としては、本開示に係る組成物を支持体上に適用して組成物層を形成し、硬化して層を形成する工程、上記層上にフォトレジスト層を形成する工程、露光及び現像することにより上記フォトレジスト層をパターニングしてレジストパターンを得る工程、並びに、上記レジストパターンをエッチングマスクとして上記層をドライエッチングする工程を含む方法であることも好ましい。
本開示に係る光学フィルタの製造方法における各工程としては、本開示に係る膜の製造方法における各工程を参照することができる。
【0248】
<固体撮像素子>
本開示に係る固体撮像素子は、本開示に係る膜を有する。固体撮像素子の構成としては、本開示に係る膜を有する構成であり、固体撮像素子として機能する構成であれば特に限定はない。例えば、以下のような構成が挙げられる。
【0249】
支持体上に、固体撮像素子の受光エリアを構成する複数のフォトダイオード及びポリシリコン等からなる転送電極を有し、フォトダイオード及び転送電極上にフォトダイオードの受光部のみ開口したタングステン等からなる遮光膜を有し、遮光膜上に遮光膜全面及びフォトダイオード受光部を覆うように形成された窒化シリコン等からなるデバイス保護膜を有し、デバイス保護膜上に、本開示に係る膜を有する構成である。更に、デバイス保護膜上であって、本開示に係る膜の下(支持体に近い側)に集光手段(例えば、マイクロレンズ等。以下同じ)を有する構成や、本開示に係る膜上に集光手段を有する構成等であってもよい。また、固体撮像素子に用いられるカラーフィルタは、隔壁により例えば格子状に仕切られた空間に、各画素を形成する膜が埋め込まれた構造を有していてもよい。この場合の隔壁は各画素よりも低屈折率であることが好ましい。このような構造を有する撮像装置の例としては、特開2012-227478号公報、特開2014-179577号公報に記載の装置が挙げられる。
【0250】
<画像表示装置>
本開示に係る画像表示装置は、本開示に係る膜を有する。画像表示装置としては、液晶表示装置や有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)表示装置などが挙げられる。画像表示装置の定義や詳細については、例えば「電子ディスプレイデバイス(佐々木 昭夫著、(株)工業調査会 1990年発行)」、「ディスプレイデバイス(伊吹 順章著、産業図書(株)平成元年発行)」などに記載されている。また、液晶表示装置については、例えば「次世代液晶ディスプレイ技術(内田 龍男編集、(株)工業調査会 1994年発行)」に記載されている。本開示に適用できる液晶表示装置に特に制限はなく、例えば、上記の「次世代液晶ディスプレイ技術」に記載されている色々な方式の液晶表示装置に適用できる。画像表示装置は、白色有機EL素子を有するものであってもよい。白色有機EL素子としては、タンデム構造であることが好ましい。有機EL素子のタンデム構造については、特開2003-45676号公報、三上明義監修、「有機EL技術開発の最前線-高輝度・高精度・長寿命化・ノウハウ集-」、技術情報協会、326~328ページ、2008年などに記載されている。有機EL素子が発光する白色光のスペクトルは、青色領域(430nm~485nm)、緑色領域(530nm~580nm)及び黄色領域(580nm~620nm)に強い極大発光ピークを有するものが好ましい。これらの発光ピークに加え更に赤色領域(650nm~700nm)に極大発光ピークを有するものがより好ましい。
【0251】
<赤外線センサ>
本開示に係る赤外線センサは、本開示に係る膜を有する。赤外線センサの構成としては、赤外線センサとして機能する構成であれば特に限定はない。以下、本開示に係る赤外線センサの一実施形態について、図面を用いて説明する。
【0252】
図1において、符号110は、固体撮像素子である。固体撮像素子110上に設けられている撮像領域は、赤外線カットフィルタ111と、赤外線透過フィルタ114とを有する。また、赤外線カットフィルタ111上には、カラーフィルタ112が積層している。カラーフィルタ112及び赤外線透過フィルタ114の入射光hν側には、マイクロレンズ115が配置されている。マイクロレンズ115を覆うように平坦化層116が形成されている。
【0253】
赤外線カットフィルタ111は、本開示に係る組成物を用いて形成することができる。赤外線カットフィルタ111の分光特性は、使用する赤外発光ダイオード(赤外LED)の発光波長に応じて選択される。
【0254】
カラーフィルタ112は、可視領域における特定波長の光を透過及び吸収する画素が形成されたカラーフィルタであって、特に限定はなく、従来公知の画素形成用のカラーフィルタを用いることができる。例えば、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の画素が形成されたカラーフィルタなどが用いられる。例えば、特開2014-43556号公報の段落0214~0263の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる
【0255】
赤外線透過フィルタ114は、使用する赤外LEDの発光波長に応じてその特性が選択される。例えば、赤外LEDの発光波長が850nmである場合、赤外線透過フィルタ114は、膜の厚み方向における光透過率の、波長400nm~650nmの範囲における最大値が30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましく、0.1%以下であることが特に好ましい。この透過率は、波長400nm~650nmの範囲の全域で上記の条件を満たすことが好ましい。
【0256】
赤外線透過フィルタ114は、膜の厚み方向における光透過率の、波長800nm以上(好ましくは800nm~1,300nm)の範囲における最小値が70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。上記の透過率は、波長800nm以上の範囲の一部で上記の条件を満たすことが好ましく、赤外LEDの発光波長に対応する波長で上記の条件を満たすことがより好ましい。
【0257】
赤外線透過フィルタ114の膜厚は、100μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましく、5μm以下が更に好ましく、1μm以下が特に好ましい。下限値は、0.1μmが好ましい。膜厚が上記範囲であれば、上述した分光特性を満たす膜とすることができる。
赤外線透過フィルタ114の分光特性、膜厚等の測定方法を以下に示す。
膜厚は、膜を有する乾燥後の基板を、触針式表面形状測定器(ULVAC社製DEKTAK150)を用いて測定する。
膜の分光特性は、紫外可視近赤外分光光度計((株)日立ハイテクノロジーズ製U-4100)を用いて、波長300nm~1,300nmの範囲において透過率を測定した値である。
【0258】
また、例えば、赤外LEDの発光波長が940nmである場合、赤外線透過フィルタ114は、膜の厚み方向における光の透過率の、波長450nm~650nmの範囲における最大値が20%以下であり、膜の厚み方向における、波長835nmの光の透過率が20%以下であり、膜の厚み方向における光の透過率の、波長1,000nm~1,300nmの範囲における最小値が70%以上であることが好ましい。
【0259】
図1に示す赤外線センサにおいて、平坦化層116上には、赤外線カットフィルタ111とは別の赤外線カットフィルタ(他の赤外線カットフィルタ)が更に配置されていてもよい。他の赤外線カットフィルタとしては、銅を含有する層、又は、誘電体多層膜を少なくとも有するものなどが挙げられる。これらの詳細については、上述したものが挙げられる。また、他の赤外線カットフィルタとしては、デュアルバンドパスフィルタを用いてもよい。
また、本開示に用いられる赤外線透過フィルタ及び赤外線カットフィルタの吸収波長は、使用光源等に合わせて適宜組み合わせて用いられる。
【0260】
(カメラモジュール)
本開示に係るカメラモジュールは、固体撮像素子と、本開示に係る赤外線カットフィルタとを有する。
また、本開示に係るカメラモジュールは、レンズ、及び、上記固体撮像素子から得られる撮像を処理する回路を更に有することが好ましい。
本開示に係るカメラモジュールに用いられる固体撮像素子としては、上記本開示に係る固体撮像素子であってもよいし、公知の固体撮像素子であってもよい。
また、本開示に係るカメラモジュールに用いられるレンズ、及び、上記固体撮像素子から得られる撮像を処理する回路としては、公知のものを用いることができる。
カメラモジュールの例としては、特開2016-6476号公報、又は、特開2014-197190号公報に記載のカメラモジュールを参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0261】
本開示に係る膜は遮熱材料又は蓄熱材料として用いることができる。また、本開示に係る組成物は、塗料、インクジェットインク、セキュリティインク等にも用いることができる。
【0262】
(化合物)
本開示に係る化合物は、下記式(1-2)で表される構造を有する化合物である。
本開示に係る化合物は、色素として好適に用いることができ、赤外線吸収色素としてより好適に用いることができる。
【0263】
【0264】
式(1-2)中、Aは下記式(1S)又は式(1C)で表される基を表し、XA及びX及びXBはそれぞれ独立に、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、又は、それらを2以上組み合わせた基を表し、R1A~R6A及びR1B~R6Bはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R1A~R6A及びR1B~R6Bのうちの2つ以上は互いに結合して環を形成してもよく、ただし、R1A~R6Aのうちの少なくとも2つは互いに結合して環を形成しており、また、R1B~R6Bのうちの少なくとも2つは互いに結合して環を形成している。
【0265】
【0266】
式(1S)及び式(1C)中、*は、式(1-2)におけるXA若しくはXBとの結合位置を表す。
【0267】
本開示に係る化合物における式(1-2)で表される構造を有する化合物は、本開示に係る組成物において上述した式(1-2)で表される構造を有する色素と同様であり、好ましい態様も式(1-2)で表される構造を有する色素と同様である。
【実施例】
【0268】
以下、実施例により本開示を詳細に説明するが、本開示はこれらに限定されるものではない。
本実施例において、「%」、「部」とは、特に断りのない限り、それぞれ「質量%」、「質量部」を意味する。なお、高分子化合物において、特別に規定したもの以外は、分子量は重量平均分子量(Mw)であり、構成単位の比率はモル百分率である。
重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によるポリスチレン換算値として測定した値である。
また、本実施例において使用したSQ-1~SQ-13及びCR-1~CR-10は、上述したSQ-1~SQ-13及びCR-1~CR-10とそれぞれ同じ化合物である。
【0269】
<SQ-1の合成>
下記に示す方法により、SQ-1を合成した。
【0270】
【0271】
-化合物Aの合成-
窒素雰囲気下、フラスコに2,3,3-トリメチルインドレニン100質量部、THF(テトラヒドロフラン)447質量部、ヨウ化エチル(EtI)195.9質量部を添加し加熱還流下20時間撹拌した。この反応液を室温まで冷却して析出している固体をろ過し、THF447質量部で洗浄した。得られた固体を50℃にて送風乾燥し、化合物Aを125.1質量部(収率63%)で得た。
【0272】
-化合物Bの合成-
窒素雰囲気下、フラスコに化合物A125質量部、蒸留水625質量部、10%水酸化ナトリウム水溶液634.5質量部を添加し、室温にて15分間撹拌した。この反応液にヘキサンを409質量部添加し、室温にて5分間撹拌した。この反応液を分液処理して水層を廃棄し、得られた有機層を減圧濃縮することで化合物Bを74.3質量部得た。
【0273】
-化合物Cの合成-
窒素雰囲気下、フラスコに化合物B74.3質量部とメタノール588質量部を添加し、5℃に冷却した。この反応液に、内温が30℃を超えないようにNaBH4を22.5質量部ゆっくり添加した。添加終了後、室温にて1時間撹拌した後、5℃に冷却し、蒸留水743質量部を内温が30℃を超えないようにゆっくり滴下した。この反応液に酢酸エチル666質量部を添加し、室温にて5分間撹拌した。この反応液を分液処理して水層を廃棄し、得られた有機層を減圧濃縮することで化合物Cを60.3質量部(化合物Aから2工程で収率80%)得た。
【0274】
-化合物Dの合成-
窒素雰囲気下、フラスコに化合物C60.3質量部、ジメチルホルムアミド(DMF)1,138質量部を添加し、5℃に冷却した。この反応液にN-ブロモスクシンイミド(NBS)62.4質量部を内温が30℃を超えないようにゆっくり添加した。添加終了後、0~5℃にて2時間撹拌した後、蒸留水1,206質量部を内温が30℃を超えないようにゆっくり滴下した。この反応液に酢酸エチル541質量部、ヘキサン395質量部を添加し、室温にて5分間撹拌した。この反応液を分液処理して水層を廃棄し、得られた有機層を減圧濃縮することで化合物Dを78.7質量部(収率92%)得た。
【0275】
-化合物Eの合成-
窒素雰囲気下、フラスコに化合物D10質量部、3,5-ジメトキシボロン酸7.5質量部、ジメチルアセトアミド(DMAc)94質量部、2M(mol/L)炭酸カリウム水溶液を上記DMAcの全量94質量部を100体積部とした場合に27体積部、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(Pd(PPh3)4)2.15質量部を添加し、100℃にて3時間撹拌した。この反応液を室温まで冷却した後、蒸留水100質量部と酢酸エチル89.7質量部を添加し、室温にて5分間撹拌した。この反応液を分液処理して水層を廃棄し、得られた有機層を減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物Eを6.07質量部(収率50%)得た。
【0276】
-化合物Fの合成-
窒素雰囲気下、フラスコに化合物E6質量部、ジクロロメタン80質量部を添加し、5℃に冷却した。この反応液に1M(mol/L)三臭化ホウ素ジクロロメタン溶液を上記ジクロロメタン全量80質量部を60体積部とした場合に18.4体積部を内温が30℃を超えないようにゆっくり添加した。添加終了後、室温にて20時間撹拌した後、この反応液を5℃まで冷却し、蒸留水60質量部を滴下した。この反応液を室温にて5分間撹拌した後、分液処理して水層を廃棄し、得られた有機層を飽和食塩水60mLで2回洗浄した。得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物Fを2.36質量部(収率43%)得た。
【0277】
-SQ-1の合成-
窒素雰囲気下、フラスコにスクアリン酸0.4質量部、化合物F2.29質量部、トルエン26質量部、1-ブタノール8.1質量部を添加し、加熱還流下19時間撹拌した。この反応液を減圧濃縮し、得られた残渣に室温にてメタノール:水=4:1の混合液33.3質量部を添加し、30分間撹拌した。この反応液を濾過し、メタノール:水=4:1の混合液33.3質量部で洗浄した。得られたろ物を50℃にて送風乾燥することでSQ-1を0.99質量部(収率42%)得た。
SQ-1 MS:m/z 672.32
【0278】
<CR-1の合成>
下記に示す方法により合成した。
【0279】
【0280】
上記化合物Eの合成において、3,5-ジメトキシボロン酸の代わりに3-メトキシボロン酸を、上記SQ-1の合成において、スクアリン酸の代わりにクロコン酸を同当量用いること以外は同様の合成法にて合成した。
CR-1 MS:m/z 668.33[M+]
【0281】
<SQ-2~SQ-13、及び、CR-2~CR-10の合成>
反応基質を変更した以外は、上記SQ-1又は上記CR-1の合成と同様の方法により、それぞれ合成した。
【0282】
<色素溶液の調製>
下記表1又は表2に記載の染料、溶剤を表1又は表2に記載の質量比にて混合して色素溶液を製造した。
【0283】
(実施例1~37、及び、比較例1~3)
表1又は表2に示す下記のいずれかの硬化性組成物の調製方法により、硬化性組成物をそれぞれ作製した。
【0284】
<硬化性組成物の調製A>
下記の成分を表1又は表2に記載の質量比にて混合して、硬化性組成物を作製した。
-硬化性組成物の組成-
・表1又は表2に記載の色素溶液
・表1又は表2に記載の樹脂(30%シクロペンタノン溶液)
・表1又は表2に記載の重合性化合物
・表1又は表2に記載の光重合開始剤
・表1又は表2に記載の重合禁止剤(p-メトキシフェノール)
・メガファックRS-72-K
【0285】
<硬化性組成物の調製B>
下記の成分を表1又は表2に記載の質量比にて混合して、硬化性組成物を作製した。
-硬化性組成物の組成-
・表1又は表2に記載の色素溶液
・表1又は表2に記載のエポキシ樹脂(30%シクロペンタノン溶液)
・表1又は表2に記載のエポキシ硬化剤
【0286】
表1又は表2に示す下記のいずれかの硬化膜の作製方法により、硬化膜をそれぞれ作製した。
【0287】
<硬化膜の作製A>
硬化性組成物をガラス基板上にスピンコート法で塗布し、その後ホットプレートを用いて100℃で2分間加熱して組成物層を得た。得られた組成物層を、i線ステッパーを用い、500mJ/cm2の露光量にて露光した。次いで、露光後の組成物層に対してホットプレートを用いて220℃で5分間硬化処理を行い、厚さ0.7μmの硬化膜を得た。
【0288】
<硬化膜の作製B>
上記で調製した各硬化性組成物を、ガラス基板上にスピンコート法で塗布し、その後ホットプレートを用いて80℃で10分間加熱(プリベーク)し、次いで、150℃で3時間加熱して厚さ0.7μmの膜を得た。
【0289】
<耐熱性の評価>
得られた膜を、ホットプレートを用いて、260℃で300秒加熱した。加熱前後の膜の波長400nm~1,200nmの光に対する透過率を分光光度計U-4100((株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて測定した。波長400nm~1,200nmの範囲において、加熱前後における極大吸収波長の吸光度について、その残存率を下記式から算出し、下記基準で残存率を評価した。
残存率(%)={(加熱後の吸光度)÷(加熱前の吸光度)}×100
A:残存率が90%を超え100%以下
B:残存率が70%を超え90%以下
C:残存率が70%以下
【0290】
<耐光性の評価>
得られた膜をスーパーキセノンランプ(10万ルクス)搭載の退色試験機にセットし、紫外線カットフィルタを使用しない条件下にて、10万ルクスの光を50時間照射した。次に、光照射後の膜の透過スペクトルを、分光光度計U-4100((株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて測定した。波長400nm~1,200nmの範囲において、光照射前後における極大吸収波長の吸光度について、その残存率を下記式から算出し、下記基準で評価した。
残存率(%)={(光照射後の吸光度)÷(光照射前の吸光度)}×100
A:残存率が90%を超え100%以下
B:残存率が70%を超え90%以下
C:残存率が70%以下
【0291】
<分光特性の評価>
得られた膜の波長400nm~1,200nmの光に対する透過率を分光光度計U-4100((株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて測定した。波長400nm~1,200nmの範囲において、最大吸光度を1とした際の吸光度0.5となる波長について下記式から算出し、下記基準で分光特性を評価した。なお、吸光度0.5となる波長が2箇所以上ある場合は、一番長波のものについて評価するものとする。
分光特性(nm)=(吸光度0.5の波長)-(吸光度1の波長)
A:分光特性が115nm以下
B:分光特性が115nmより大きい
【0292】
(
評価結果を表1及び表2にまとめて示す。耐熱性評価及び耐光性評価の少なくとも1方がAであることが好ましく、耐熱性評価及び耐光性評価の両方がAであることがより好ましい。
【0293】
【0294】
【0295】
表1及び表2中、各成分の欄の「M-1/M-2=1/1」とは、M-1及びM-2の組成比(質量比)が1:1であることを意味し、他の同様の記載についても、上記と同様の意味を表す。
【0296】
以下に、上述した以外の表1に記載の略号の詳細を示す。
表2における比較-1~比較-3は、以下の化合物である。
【0297】
【0298】
<樹脂>
E-1:アクリベースFF-426(藤倉化成(株)製、アルカリ可溶性樹脂)
E-2:ARTON F4520(JSR(株)製)
E-3:下記構造の樹脂(Mw=40,000、酸価100mgKOH/g、主鎖に付記した数値は各構成単位の質量比を表す。アルカリ可溶性樹脂。)
【0299】
【0300】
<光重合開始剤>
C-1:下記化合物(IRGACURE OXE-01、BASF社製)
C-2:下記化合物(IRGACURE OXE-02、BASF社製)
【0301】
【0302】
<重合性化合物>
M-1:アロニックスM-305(東亞合成(株)製、下記化合物の混合物。トリアクリレートの含有量が55質量%~63質量%)
【0303】
【0304】
M-2:KAYARAD RP-1040(エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、日本化薬(株)製)
M-3:アロニックスM-510(カルボキシ基を有する多官能アクリレート化合物、東亞合成(株)製)
【0305】
<エポキシ樹脂>
F-1:メタクリル酸グリシジル骨格ランダムポリマー(日油(株)製、マープルーフG-0150M、重量平均分子量10,000)
F-2:EPICLON HP-4700(DIC(株)製)
F-3:JER1031S(三菱化学(株)製)
F-4:EHPE3150((株)ダイセル製)
【0306】
<エポキシ硬化剤>
G-1:トリメリット酸
G-2:ピロメリット酸無水物
G-3:N,N-ジメチル-4-アミノピリジン
G-4:ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)
【0307】
<溶剤>
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
CYP:シクロペンタノン
CYH:シクロヘキサノン
【0308】
表1に記載の結果から、本開示に係る組成物である実施例1~実施例23の硬化性組成物は、比較例1~比較例3の組成物に比べて、得られる膜の耐熱性及び耐光性に優れることがわかる。非対称の色素を含んでも同様の効果が得られる。
【0309】
(実施例101~実施例137)
実施例1~実施例37の組成物をそれぞれ用い、下記手法にて2μm四方のパターン(赤外線カットフィルタ)をそれぞれ形成した。
【0310】
実施例1~実施例4、実施例6~実施例9、実施例11~実施例14、実施例16~実施例21、実施例23~実施例27、実施例29、実施例31、実施例33、実施例35及び実施例37の硬化性組成物は下記方法でパターンを作製した。
上記硬化性組成物を製膜後の膜厚が1.0μmになるようにスピンコート法で塗布した。次いで、ホットプレートを用いて、100℃で2分間加熱した。次いで、i線ステッパー露光装置FPA-3000i5+(キヤノン(株)製)を用い、1,000mJ/cm2で2μm四方のドットパターンのマスクを介して露光した。次いで、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)0.3質量%水溶液を用い、23℃で60秒間パドル現像を行った。その後、スピンシャワーにてリンスを行い、更に純水にて水洗した。次いで、ホットプレートを用いて、200℃で5分間加熱することで、2μm四方のパターン(赤外線カットフィルタ)を形成した。
実施例5、実施例10、実施例15、実施例22、実施例28、実施例30、実施例32、実施例34及び実施例36の硬化性組成物は下記方法でパターンを作製した。
実施例5、実施例10、実施例15、実施例22、実施例28、実施例30、実施例32、実施例34及び実施例36の硬化性組成物を製膜後の膜厚が1.0μmになるように、シリコンウェハ上にスピンコート法で塗布した。その後ホットプレートを用いて、100℃で2分間加熱した。次いで、ホットプレートを用いて、200℃で5分間加熱した。次いでドライエッチング法により2μm四方のパターン(赤外線カットフィルタ)を形成した。
【0311】
次に、赤外線カットフィルタのパターン上に、Red組成物を製膜後の膜厚が1.0μmになるようにスピンコート法で塗布した。次いで、ホットプレートを用いて、100℃で2分間加熱した。次いで、i線ステッパー露光装置FPA-3000i5+(キヤノン(株)製)を用い、1,000mJ/cm2で2μm四方のドットパターンのマスクを介して露光した。次いで、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)0.3質量%水溶液を用い、23℃で60秒間パドル現像を行った。その後、スピンシャワーにてリンスを行い、更に純水にて水洗した。次いで、ホットプレートを用いて、200℃で5分間加熱することで、赤外線カットフィルタのパターン上に、Red組成物をパターニングした。同様にGreen組成物、Blue組成物を順次パターニングし、赤、緑及び青の着色パターン(Bayerパターン)を形成した。
なお、Bayerパターンとは、米国特許第3,971,065号明細書に開示されているような、一個の赤色(Red)素子と、二個の緑色(Green)素子と、一個の青色(Blue)素子とを有する色フィルタ素子の2×2アレイを繰り返したパターンであるが、本実施例においては、一個の赤色(Red)素子と、一個の緑色(Green)素子と、一個の青色(Blue)素子と、一個の赤外線透過フィルタ素子を有するフィルタ素子の2×2アレイを繰り返したBayerパターンを形成した。
【0312】
次に、上記パターン形成した膜上に、赤外線透過フィルタ形成用組成物(下記組成100又は組成101)を、製膜後の膜厚が2.0μmになるようにスピンコート法で塗布した。次いで、ホットプレートを用いて、100℃で2分間加熱した。次いで、i線ステッパー露光装置FPA-3000i5+(キヤノン(株)製)を用い、1,000mJ/cm2で2μm四方のBayerパターンのマスクを介して露光した。次いで、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)0.3質量%水溶液を用い、23℃で60秒間パドル現像を行った。その後、スピンシャワーにてリンスを行い、更に純水にて水洗した。次いで、ホットプレートを用いて、200℃で5分間加熱することで、赤外線カットフィルタのBayerパターンのうち、上記着色パターンが形成されていない抜け部分に、赤外線透過フィルタのパターニングを行った。これを公知の方法に従い固体撮像素子に組み込んだ。
得られた固体撮像素子について、低照度の環境下(0.001ルクス(Lux))で赤外発光ダイオード(赤外LED)により赤外線を照射し、画像の取り込みを行い、画像性能を評価した。実施例1~実施例37で得られたいずれの硬化性組成物を使用した場合でも、低照度の環境下であっても画像をはっきりと認識できた。
【0313】
上記パターニングに使用したRed組成物、Green組成物、Blue組成物、及び、赤外線透過フィルタ形成用組成物は、以下の通りである。
【0314】
-Red組成物-
下記成分を混合し、撹拌した後、孔径0.45μmのナイロン製フィルタ(日本ポール(株)製)でろ過して、Red組成物を調製した。
Red顔料分散液:51.7質量部
樹脂4(40質量%PGMEA溶液):0.6質量部
重合性化合物4:0.6質量部
光重合開始剤1:0.3質量部
界面活性剤1:4.2質量部
PGMEA:42.6質量部
【0315】
-Green組成物-
下記成分を混合し、撹拌した後、孔径0.45μmのナイロン製フィルタ(日本ポール(株)製)でろ過して、Green組成物を調製した。
Green顔料分散液:73.7質量部
樹脂4(40質量%PGMEA溶液):0.3質量部
重合性化合物1:1.2質量部
光重合開始剤1:0.6質量部
界面活性剤1:4.2質量部
紫外線吸収剤(UV-503、大東化学(株)製):0.5質量部
PGMEA:19.5質量部
【0316】
-Blue組成物-
下記成分を混合し、撹拌した後、孔径0.45μmのナイロン製フィルタ(日本ポール(株)製)でろ過して、Blue組成物を調製した。
Blue顔料分散液:44.9質量部
樹脂4(40質量%PGMEA溶液):2.1質量部
重合性化合物1:1.5質量部
重合性化合物4:0.7質量部
光重合開始剤1:0.8質量部
界面活性剤1:4.2質量部
PGMEA:45.8質量部
【0317】
-赤外線透過フィルタ形成用組成物-
下記組成における成分を混合し、撹拌した後、孔径0.45μmのナイロン製フィルタ(日本ポール(株)製)でろ過して、赤外線透過フィルタ形成用組成物を調製した。
【0318】
<組成100>
顔料分散液1-1:46.5質量部
顔料分散液1-2:37.1質量部
重合性化合物5:1.8質量部
樹脂4:1.1質量部
光重合開始剤2:0.9質量部
界面活性剤1:4.2質量部
重合禁止剤(p-メトキシフェノール):0.001質量部
シランカップリング剤:0.6質量部
PGMEA:7.8質量部
【0319】
<組成101>
顔料分散液2-1:1,000質量部
重合性化合物(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート):50質量部
樹脂:17質量部
光重合開始剤(1-[4-(フェニルチオ)]-1,2-オクタンジオン-2-(O-ベンゾイルオキシム)):10質量部
PGMEA:179質量部
アルカリ可溶性重合体F-1:17質量部(固形分濃度35質量部)
【0320】
<アルカリ可溶性重合体F-1の合成例>
反応容器に、ベンジルメタクリレート14部、N-フェニルマレイミド12部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート15部、スチレン10部及びメタクリル酸20部をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート200部に溶解し、更に2,2’-アゾイソブチロニトリル3部及びα-メチルスチレンダイマー5部を投入した。反応容器内を窒素パージ後、撹拌及び窒素バブリングしながら80℃で5時間加熱し、アルカリ可溶性重合体F-1を含む溶液(固形分濃度35質量%)を得た。この重合体は、ポリスチレン換算の重量平均分子量が9,700、数平均分子量が5,700であり、Mw/Mnが1.70であった。
【0321】
<顔料分散液2-1>
C.I.ピグメントブラック32を60部、C.I.ピグメントブルー15:6を20部、C.I.ピグメントイエロー139を20部、日本ルーブリゾール(株)製のソルスパース76500を80部(固形分濃度50質量%)、アルカリ可溶性重合体F-1を含む溶液を120部(固形分濃度35質量%)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを700部混合し、ペイントシェーカーを用いて8時間分散し、着色剤分散液2-1を得た。
【0322】
Red組成物、Green組成物、Blue組成物、及び、赤外線透過フィルタ形成用組成物に使用した原料は、以下の通りである。
【0323】
・Red顔料分散液
C.I.Pigment Red 254を9.6質量部、C.I.Pigment Yellow 139を4.3質量部、分散剤(Disperbyk-161、BYKChemie社製)を6.8質量部、PGMEAを79.3質量部とからなる混合液を、ビーズミル(ジルコニアビーズ0.3mm径)により3時間混合及び分散して、顔料分散液を調製した。その後更に、減圧機構付き高圧分散機NANO-3000-10(日本ビーイーイー(株)製)を用いて、2,000kg/cm3の圧力下で流量500g/minとして分散処理を行った。この分散処理を10回繰り返し、Red顔料分散液を得た。
【0324】
・Green顔料分散液
C.I.Pigment Green 36を6.4質量部、C.I.Pigment Yellow 150を5.3質量部、分散剤(Disperbyk-161、BYKChemie社製)を5.2質量部、PGMEAを83.1質量部からなる混合液を、ビーズミル(ジルコニアビーズ0.3mm径)により3時間混合及び分散して、顔料分散液を調製した。その後更に、減圧機構付き高圧分散機NANO-3000-10(日本ビーイーイー(株)製)を用いて、2,000kg/cm3の圧力下で流量500g/minとして分散処理を行った。この分散処理を10回繰り返し、Green顔料分散液を得た。
【0325】
・Blue顔料分散液
C.I.Pigment Blue 15:6を9.7質量部、C.I.Pigment Violet 23を2.4質量部、分散剤(Disperbyk-161、BYKChemie社製)を5.5部、PGMEAを82.4部からなる混合液を、ビーズミル(ジルコニアビーズ0.3mm径)により3時間混合及び分散して、顔料分散液を調製した。その後更に、減圧機構付き高圧分散機NANO-3000-10(日本ビーイーイー(株)製)を用いて、2,000kg/cm3の圧力下で流量500g/minとして分散処理を行った。この分散処理を10回繰り返し、Blue顔料分散液を得た。
【0326】
・顔料分散液1-1
下記組成の混合液を、0.3mm径のジルコニアビーズを使用して、ビーズミル(減圧機構付き高圧分散機NANO-3000-10(日本ビーイーイー(株)製))で、3時間、混合、分散して、顔料分散液1-1を調製した。
・赤色顔料(C.I.Pigment Red 254)及び黄色顔料(C.I.Pigment Yellow 139)からなる混合顔料:11.8質量部
・樹脂(Disperbyk-111、BYKChemie社製):9.1質量部
・PGMEA:79.1質量部
【0327】
・顔料分散液1-2
下記組成の混合液を、0.3mm径のジルコニアビーズを使用して、ビーズミル(減圧機構付き高圧分散機NANO-3000-10(日本ビーイーイー(株)製))で、3時間、混合、分散して、顔料分散液1-2を調製した。
・青色顔料(C.I.Pigment Blue 15:6)及び紫色顔料(C.I.Pigment Violet 23)からなる混合顔料:12.6質量部
・樹脂(Disperbyk-111、BYKChemie社製):2.0質量部
・樹脂A:3.3質量部
・シクロヘキサノン:31.2質量部
・PGMEA:50.9質量部
【0328】
上記で使用した成分における略号の詳細を以下に示す。
【0329】
・樹脂A:下記構造(Mw=14,000、各構成単位における比はモル比である。)
【0330】
【0331】
・重合性化合物1:KAYARAD DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートとの混合物、日本化薬(株)製)
・重合性化合物4:下記構造
【0332】
【0333】
・重合性化合物5:下記構造(左側化合物と右側化合物とのモル比が7:3の混合物)
【0334】
【0335】
・樹脂4:下記構造(酸価:70mgKOH/g、Mw=11,000、各構成単位における比はモル比である。)
【0336】
【0337】
・光重合開始剤1:IRGACURE-OXE01(1-[4-(フェニルチオ)]-1,2-オクタンジオン-2-(O-ベンゾイルオキシム)、BASF社製)
・光重合開始剤2:下記構造
【0338】
【0339】
・界面活性剤1:下記混合物(Mw=14,000)の1質量%PGMEA溶液。下記の式中、構成単位の割合を示す%(62%及び38%)はモル比である。
【0340】
【0341】
・シランカップリング剤:下記構造の化合物。以下の構造式中、Etはエチル基を表す。
【0342】
【0343】
組成100において、赤色顔料をC.I.Pigment Red 254に代わり、C.I.Pigment Red 177を用いて同様に赤外線透過フィルタ形成用組成物を作製して評価した結果、同様の結果が得られた。
【0344】
(実施例201)
下記組成を混合し、撹拌した後、孔径0.45μmのナイロン製フィルタ(日本ポール(株)製)でろ過して、実施例201のパターン形成用組成物を調製した。
実施例1の硬化性組成物:22.67質量部
顔料分散液2-1:51.23質量部
実施例201のパターン形成用組成物を用いて、実施例101と同様に、耐光性、耐熱性の評価を行ったところ、実施例101と同様の効果が得られた。また、実施例201のパターン形成用組成物を用いて得られた硬化膜は、可視領域の波長の光を遮光し、近赤外領域の波長の光(近赤外線)の少なくとも一部を透過させることができた。
【0345】
(実施例202)
下記組成を混合し、撹拌した後、孔径0.45μmのナイロン製フィルタ(日本ポール(株)製)でろ過して、実施例202のパターン形成用組成物を調製した。
実施例1の硬化性組成物:36.99質量部
顔料分散液1-1:46.5質量部
顔料分散液1-2:37.1質量部
実施例202のパターン形成用組成物を用いて、実施例101と同様に、耐光性、耐熱性の評価を行ったところ、実施例101と同様の効果が得られた。また、実施例202のパターン形成用組成物を用いて得られた硬化膜は、可視領域の波長の光を遮光し、近赤外領域の波長の光(近赤外線)の少なくとも一部を透過させることができた。
【0346】
(実施例301)
上記実施例1~実施例37の硬化性組成物をそれぞれ用い、他の基板に変更(ガラス基板の場合はシリコンウェハへ変更し、シリコンウェハの場合はガラス基板へ変更)した以外は実施例101と同様に評価した場合も、実施例101~実施例137と同様の効果が得られる。
【0347】
(実施例302)
上記実施例201又は実施例202で得られたパターン形成用組成物を用い、他の基板に変更(ガラス基板の場合はシリコンウェハへ変更し、シリコンウェハの場合はガラス基板へ変更)した以外は実施例101と同様に評価した場合も、実施例101と同様の効果が得られる。
【0348】
(実施例401)
上記実施例201で使用した実施例1の硬化性組成物を実施例2~37の硬化性組成物に置き換えた以外は、実施例201と同様にパターン形成用組成物を調製し、実施例201と同様に耐光性、耐熱性の評価を行ったところ、実施例201と同様の効果が得られた。また、実施例401のパターン形成用組成物を用いて得られた硬化膜は、可視領域の波長の光を遮光し、近赤外領域の波長の光(近赤外線)の少なくとも一部を透過させることができた。
【0349】
(実施例402)
上記実施例202で使用した実施例1の硬化性組成物を実施例2~37の硬化性組成物に置き換えた以外は実施例202と同様にパターン形成用組成物を調製し、実施例202と同様に耐光性、耐熱性の評価を行ったところ、実施例202と同様の効果が得られた。また、実施例402のパターン形成用組成物を用いて得られた硬化膜は、可視領域の波長の光を遮光し、近赤外領域の波長の光(近赤外線)の少なくとも一部を透過させることができた。
【0350】
2019年8月13日に出願された日本国特許出願第2019-148563号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び、技術規格は、個々の文献、特許出願、及び、技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【符号の説明】
【0351】
110:固体撮像素子、111:赤外線カットフィルタ、112:カラーフィルタ、114:赤外線透過フィルタ、115:マイクロレンズ、116:平坦化層