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特許7167384ケーブル巻き取り装置、及びスライドシート用フラットケーブル配索構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】ケーブル巻き取り装置、及びスライドシート用フラットケーブル配索構造
(51)【国際特許分類】
   H02G 11/02 20060101AFI20221031BHJP
【FI】
H02G11/02
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022510465
(86)(22)【出願日】2021-03-22
(86)【国際出願番号】 JP2021011643
(87)【国際公開番号】W WO2021193502
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-07-22
(31)【優先権主張番号】P 2020052256
(32)【優先日】2020-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】奥村 政宏
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-172116(JP,A)
【文献】国際公開第2019/188811(WO,A1)
【文献】米国特許第6267430(US,B1)
【文献】国際公開第2010/103904(WO,A1)
【文献】特開2013-153556(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 11/02
B65H 75/34
B60N 2/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に固定した固定レールの長手方向に沿って進退可能にスライド支持されたスライドシートに対して配索するフレキシブルフラットケーブルのケーブル巻き取り装置であって、
前記フレキシブルフラットケーブルの一方側の端部である第1ケーブル端部が前記固定レールの一端である第1レール端部の側に固定されるとともに、
前記フレキシブルフラットケーブルの他方側の端部である第2ケーブル端部がスライドシートに対して固定され、
前記フレキシブルフラットケーブルにおける前記第1ケーブル端部と前記第2ケーブル端部との間の被収容部分を引き出し可能に巻き取って内部に収容する巻き取り収容部と、
前記巻き取り収容部の内側で当該巻き取り収容部の巻き取り中心軸方向に沿って配置される固定軸と、
前記巻き取り収容部の内側で前記固定軸を中心に回転されて前記被収容部分に巻き取り力を作用させる回転規制体と、
前記巻き取り収容部の内側で前記回転規制体に固定されて当該回転規制体とともに前記固定軸を中心に回転されるゼンマイケースと、
前記ゼンマイケースと当該ゼンマイケースに挿通される前記固定軸とに把持されて前記フレキシブルフラットケーブルの引き出しによって前記被収容部分を巻き取る方向の巻き取り力を発生させるゼンマイバネとが備えられ、
前記第1ケーブル端部及び前記第2ケーブル端部の一方が、前記巻き取り収容部の巻き取り中心から外部に導出されるとともに、
前記巻き取り中心軸方向における前記第1ケーブル端部及び前記第2ケーブル端部の一方が外部に導出される側と反対側の前記回転規制体の側面部に対し、前記ゼンマイバネを収容した前記ゼンマイケースが固定された
ケーブル巻き取り装置。
【請求項2】
前記回転規制体は、前記被収容部分における中間部分を規制する規制部を有しており、
前記被収容部分における前記規制部より径内側に配置される部分を内側配置部分とするとともに、前記規制部より径外側に配置される部分を外側配置部分とし、
前記内側配置部分と前記外側配置部分とが同方向に巻き回されて収容され、
前記外側配置部分が巻き解かれると前記内側配置部分が巻き絞られ、前記外側配置部分が巻き取られると前記内側配置部分が巻き拡がる
請求項1に記載のケーブル巻き取り装置。
【請求項3】
前記回転規制体は、前記被収容部分における中間部分を規制する規制部を有しており、
前記被収容部分における前記規制部より径内側に配置される部分を内側配置部分とするとともに、前記規制部より径外側に配置される部分を外側配置部分とし、
前記内側配置部分と前記外側配置部分とが逆方向に巻き回されて収容され、
前記外側配置部分が巻き解かれると前記内側配置部分が巻き拡がり、前記外側配置部分が巻き取られると前記内側配置部分が巻き絞られる
請求項1に記載のケーブル巻き取り装置。
【請求項4】
前記内側配置部分と前記外側配置部分との間に隔壁が設けられ、
前記隔壁に前記被収容部分が径方向に通過できる通過部が設けられ、
前記通過部で前記規制部が構成された
請求項2乃至3のうちいずれかに記載のケーブル巻き取り装置。
【請求項5】
前記回転規制体における前記反対側に前記側面部が設けられるとともに、前記隔壁が前記側面部に設けられ、
前記側面部が前記巻き取り収容部に対して相対回転する
請求項4に記載のケーブル巻き取り装置。
【請求項6】
前記フレキシブルフラットケーブルが複数積層されるとともに、
前記内側配置部分と前記外側配置部分との境界付近の前記内側配置部分に、積層された前記被収容部分を束ねる束ね部が設けられた
請求項2乃至5のうちいずれかに記載のケーブル巻き取り装置。
【請求項7】
前記ゼンマイバネは、前記外側配置部分の巻き解きによって、巻き絞られて前記巻き取り力を発生させる
請求項2乃至6のうちいずれかに記載のケーブル巻き取り装置。
【請求項8】
前記外側配置部分が、前記ゼンマイバネの巻き絞り長さより長く形成された
請求項7に記載のケーブル巻き取り装置。
【請求項9】
前記巻き取り収容部が、
前記固定レールにおける一方の端部、あるいは前記スライドシートを支持するとともに前記固定レールに対して進退方向にスライドする移動体に固定された
請求項1乃至8のうちいずれかに記載のケーブル巻き取り装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のうちいずれかに記載の前記ケーブル巻き取り装置と、
前記車体に固定した前記固定レールと、
該固定レールの長手方向に沿って進退可能に前記スライドシートをスライド支持するとともに、前記ケーブル巻き取り装置が固定された移動体と、
前記第1ケーブル端部が前記第1レール端部の側に固定され、前記第2ケーブル端部が前記スライドシートに対して固定されるとともに、前記ケーブル巻き取り装置に引き出し可能に巻き取られる前記フレキシブルフラットケーブルとで構成され、前記固定レールの長手方向に沿って進退可能にスライド支持された前記スライドシートに対して前記フレキシブルフラットケーブルを配索する
スライドシート用フラットケーブル配索構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、車体に固定した固定レールの長手方向に沿って進退可能にスライド支持されたスライドシートに対して配索して給電するフレキシブルフラットケーブルのケーブル巻き取り装置、及びスライドシート用フラットケーブル配索構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車体に固定した固定レールの長手方向に沿って進退可能にスライド支持されたスライドシートに対して給電するための給電装置が多数提案されている。
そのような給電装置のひとつである特許文献1に記載のスライドシート用給電装置は、可撓性の引き出しベルトと、ゼンマイバネを内包するゼンマイユニットとを備えている。
【0003】
可撓性の引き出しベルトは、フラットケーブルに沿うとともに、引き出しベルトの先端側をフラットケーブルの先端側に固定されている。
ゼンマイユニットは、フラットケーブルの基端側部分を外周に巻き回し、巻き解かれた引き出しベルトをゼンマイバネにより巻き戻すように構成されている。
【0004】
そして、フラットケーブルは、フラットケーブルの基端側部分を、フラットケーブルの基端部を中心としてスパイラル状に巻き回して巻き回し部を形成している。
これにより、スライドシートが固定レール上を移動することで、スライドシートのスライドにフラットケーブルが追従できるように構成されている。
【0005】
しかしながら、上述のスライドシート用給電装置では、ゼンマイバネと巻き回し部とが並列配置されているため、ゼンマイユニットが大きく、スライドシートの給電装置を小型化することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-59745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、上述した問題を鑑み、コンパクトな構造でスライドシートに対して給電できるケーブル巻き取り装置、及びスライドシート用フラットケーブル配索構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、車体に固定した固定レールの長手方向に沿って進退可能にスライド支持されたスライドシートに対して配索するフレキシブルフラットケーブルのケーブル巻き取り装置であって、前記フレキシブルフラットケーブルの一方側の端部である第1ケーブル端部が前記固定レールの一端である第1レール端部の側に固定されるとともに、前記フレキシブルフラットケーブルの他方側の端部である第2ケーブル端部がスライドシートに対して固定され、前記フレキシブルフラットケーブルにおける前記第1ケーブル端部と前記第2ケーブル端部との間の被収容部分を引き出し可能に巻き取って内部に収容する巻き取り収容部と、前記巻き取り収容部の内側で当該巻き取り収容部の巻き取り中心軸方向に沿って配置される固定軸と、前記巻き取り収容部の内側で前記固定軸を中心に回転されて前記被収容部分に巻き取り力を作用させる回転規制体と、前記巻き取り収容部の内側で前記回転規制体に固定されて当該回転規制体とともに前記固定軸を中心に回転されるゼンマイケースと、前記ゼンマイケースと当該ゼンマイケースに挿通される前記固定軸とに把持されて前記フレキシブルフラットケーブルの引き出しによって前記被収容部分を巻き取る方向の巻き取り力を発生させるゼンマイバネとが備えられ、前記第1ケーブル端部及び前記第2ケーブル端部の一方が、前記巻き取り収容部の巻き取り中心から外部に導出されるとともに、前記巻き取り中心軸方向における前記第1ケーブル端部及び前記第2ケーブル端部の一方が外部に導出される側と反対側の前記回転規制体の側面部に対し、前記ゼンマイバネを収容した前記ゼンマイケースが固定されたケーブル巻き取り装置であることを特徴とする。
【0009】
またこの発明は、上述の前記ケーブル巻き取り装置と、前記車体に固定した前記固定レールと、該固定レールの長手方向に沿って進退可能に前記スライドシートをスライド支持するとともに、前記ケーブル巻き取り装置が固定された移動体と、前記第1ケーブル端部が前記第1レール端部の側に固定され、前記第2ケーブル端部が前記スライドシートに対して固定されるとともに、前記ケーブル巻き取り装置に引き出し可能に巻き取られる前記フレキシブルフラットケーブルとで構成され、前記固定レールの長手方向に沿って進退可能にスライド支持された前記スライドシートに対して前記フレキシブルフラットケーブルを配索するスライドシート用フラットケーブル配索構造であってもよい。
【0010】
上記フレキシブルフラットケーブルは、一枚のフレキシブルフラットケーブルであってもよいし、複数枚のフレキシブルフラットケーブルが積層されてもよい。さらには、上記フレキシブルフラットケーブルは、ダミーケーブルと呼ばれる導体を備えていないフレキシブルフラットケーブルと積層されてもよいし、フレキシブルフラットケーブルとは異なる帯状の部材と積層されてもよい。
【0011】
上述の車体に固定した固定レールの長手方向は、一般的に車体前後方向であるため、前記進退方向は一般的に車体前後方向となる。したがって、前記固定レールの一端である第1レール端部が車体前方側の端部であれば、前記前進方向は車体前方向となり、前記後退方向は車体後方向となる。逆に、前記固定レールの一端である第1レール端部が車体後方側の端部であれば、前記前進方向は車体後方向となり、前記後退方向は車体前方向となる。
【0012】
上述の前記フレキシブルフラットケーブルの一方側の端部である第1ケーブル端部及び、前記フレキシブルフラットケーブルの他方側の端部である第2ケーブル端部は、前記フレキシブルフラットケーブルの物理的な端部でなく、前記フレキシブルフラットケーブルの中間部分が第1レール端部の側の所定箇所と前記スライドシートとの間に配置された状態における第1レール端部の側の所定箇所と前記スライドシートとに固定された端部である。
上記巻き取り中心は、前記フレキシブルフラットケーブルが巻き取られる中心である。
【0013】
この発明により、前記ケーブル巻き取り装置はコンパクトな構造で、前記スライドシートに対して前記フレキシブルフラットケーブルにより給電することができる。
詳述すると、前記ケーブル巻き取り装置は、前記巻き取り収容部と、前記固定軸と、前記回転規制体と、前記ゼンマイケースと、前記ゼンマイバネとを備えている。
【0014】
前記巻き取り収容部は、前記フレキシブルフラットケーブルの前記被収容部分を引き出し可能に巻き取って内部に収容している。前記固定軸は、前記巻き取り収容部の巻き取り中心軸方向に沿って配置され、前記回転規制体は、前記固定軸を中心に回転されて前記被収容部分に巻き取り力を作用させる。
【0015】
前記ゼンマイケースは、前記回転規制体に固定されて当該回転規制体とともに前記固定軸を中心に回転される。前記ゼンマイバネは、前記ゼンマイケースと前記固定軸とに把持されて前記フレキシブルフラットケーブルの引き出しによって前記被収容部分を巻き取る方向の巻き取り力を発生させる。そして、前記巻き取り収容部における、前記第1ケーブル端部及び前記第2ケーブル端部の一方が巻き取り中心から外部に導出される側と反対側の前記回転規制体の側面部に対し、前記ゼンマイバネを収容した前記ゼンマイケースが固定されている。
【0016】
これにより、固定レールに対する前記スライドシートのスライドに対して、前記フレキシブルフラットケーブルを前記ゼンマイバネの巻き取り力で巻き取ったり、引き出したりすることで前記スライドシートの移動に追従して給電できるケーブル巻き取り装置をコンパクトに構成することができる。
【0017】
この発明の態様として、前記回転規制体は、前記被収容部分における中間部分を規制する規制部を有しており、前記被収容部分における前記規制部より径内側に配置される部分を内側配置部分とするとともに、前記規制部より径外側に配置される部分を外側配置部分とし、前記内側配置部分と前記外側配置部分とが同方向に巻き回されて収容され、前記外側配置部分が巻き解かれると前記内側配置部分が巻き絞られ、前記外側配置部分が巻き取られると前記内側配置部分が巻き拡がってもよい。
【0018】
上述の巻き回されるは、スパイラル状に巻かれることをいう。
上述の巻き解かれるは、前記フレキシブルフラットケーブルの前記外側配置部分が前記巻き取り収容部から引き出され、巻き数が減る状態をいい、上述の巻き取られるは、前記フレキシブルフラットケーブルの前記外側配置部分が巻かれて前記巻き取り収容部に引き戻され、巻き数が増える状態をいう。
【0019】
上述の巻き拡がるは、前記フレキシブルフラットケーブルの前記内側配置部分が巻き数は変わらないものの、巻かれた前記フラットケーブル同士の間の間隔が広がる状態をいう。また、上述の巻き絞られるは、前記フレキシブルフラットケーブルの前記内側配置部分が、巻き数は変わらないものの、巻かれた前記フラットケーブル間の間隔が狭まる状態をいう。
【0020】
この発明により、前記スライドシートの移動に伴って、前記被収容部分における前記外側配置部分を巻き解いて引き出したり、巻き取ったりすることができる。また、前記スライドシートの移動に伴う、前記外側配置部分の引き出しや巻き取りによって、前記内側配置部分を巻き絞ったり、巻き拡げたりすることができる。
【0021】
すなわち、前記外側配置部分が巻き解かれると、同方向に巻き回された前記内側配置部分が巻き絞られ、前記外側配置部分が巻き取られると、同方向に巻き回された前記内側配置部分が巻き拡がることができる。
【0022】
また、前記スライドシートの移動に伴って、前記巻き取り収容部から前記被収容部分における前記外側配置部分が巻き解かれて引き出されると、前記内側配置部分は前記規制部より径内側で巻き絞られるため、巻き絞られた前記内側配置部分の復元力が、前記外側配置部分に引き出される方向と逆向きに作用することとなる。
【0023】
加えて、仮に、前記外側配置部分が巻き解かれて前記巻き取り収容部から引き出されることによって前記内側配置部分の巻き絞りが完了すると、巻き絞られた前記内側配置部分により、前記外側配置部分がさらに巻き解かれて引き出されることを規制できる。
すなわち、巻き絞られた前記内側配置部分が、前記外側配置部分をさらに引き出す際のいわゆるストッパーとして作用するため、前記外側配置部分の過剰な引き出しを防止できる。
【0024】
逆に、前記スライドシートの移動に伴って、前記巻き取り収容部に前記外側配置部分が巻き取られて、引き戻されると、前記内側配置部分は前記規制部より径内側で巻き拡げられ、前記規制部に当接し、巻き解かれた内側配置部分の反発力が、外側配置部分に引き戻される方向と逆向きに作用することとなる。
【0025】
このため、前記規制部に当接するまで巻き拡がった前記内側配置部分の反発力が、前記外側配置部分に作用することで、前記外側配置部分がさらに巻き取られて前記巻き取り収容部に引き戻されることを規制できる。
すなわち、巻き拡がる前記内側配置部分が、前記外側配置部分をさらに引き戻す際のいわゆるストッパーとして作用するため、前記外側配置部分の過剰な引き戻しを防止できる。
【0026】
このように、前記内側配置部分が、前記外側配置部分の引出しや引き戻しによって、巻き絞られたり、巻き拡げられたりする。このため、前記内側配置部分に作用する弾性力が、引出されたり引き戻されたりする前記外側配置部分に対して反対向方向に作用することとなり、前記外側配置部分の引出しや引き戻し方向の力を緩和することができる。
さらに、前記内側配置部分は、前記外側配置部分を引き出したり、引き戻したりする際のいわゆるストッパーとして作用することができる。
【0027】
またこの発明の態様として、前記回転規制体は、前記被収容部分における中間部分を規制する規制部を有しており、前記被収容部分における前記規制部より径内側に配置される部分を内側配置部分とするとともに、前記規制部より径外側に配置される部分を外側配置部分とし、前記内側配置部分と前記外側配置部分とが逆方向に巻き回されて収容され、前記外側配置部分が巻き解かれると前記内側配置部分が巻き拡がり、前記外側配置部分が巻き取られると前記内側配置部分が巻き絞られてもよい。
【0028】
この発明により、前記スライドシートの移動に伴って、前記被収容部分における前記外側配置部分を巻き解いて引き出したり、巻き取ったりすることができる。また、前記スライドシートの移動に伴う、前記外側配置部分の引き出しや巻き取りによって、前記内側配置部分を巻き拡げたり、巻き絞ったりすることができる。
【0029】
すなわち、前記外側配置部分が巻き解かれると前記内側配置部分が巻き拡がり、前記外側配置部分が巻き取られると前記内側配置部分が巻き絞られる。よって、巻き回した前記外側配置部分と前記内側配置部分との周長差を吸収することができる。
【0030】
加えて、仮に、前記外側配置部分が巻き取られて前記巻き取り収容部に引き戻されることで前記内側配置部分の巻き絞りが完了すると、巻き絞られた前記内側配置部分によって、前記外側配置部分がさらに引き戻されることを規制できる。
すなわち、巻き絞られた前記内側配置部分が、前記外側配置部分が引き戻される際のいわゆるストッパーとして作用するため、前記外側配置部分の過剰な引き戻しを防止できる。
【0031】
逆に、前記スライドシートの移動に伴って、前記巻き取り収容部から前記外側配置部分が巻き解かれて引き出されると、前記内側配置部分は前記規制部より径内側で巻き拡げられ、前記規制部に当接し、巻き解かれた前記内側配置部分の反発力が、前記外側配置部分に引き出される方向と逆向きに作用することとなる。
【0032】
このため、前記規制部に当接するまで巻き拡がった前記内側配置部分の反発力が、前記外側配置部分に作用することで、前記外側配置部分がさらに巻き解かれて前記巻き取り収容部から引き出されることを規制できる。
すなわち、巻き拡がる前記内側配置部分が、前記外側配置部分を引き出す際のいわゆるストッパーとして作用するため、前記外側配置部分の過剰な引き出しを防止できる。
【0033】
またこの発明の態様として、前記内側配置部分と前記外側配置部分との間に隔壁が設けられ、前記隔壁に前記被収容部分が径方向に通過できる通過部が設けられ、前記通過部で前記規制部が構成されてもよい。
【0034】
この発明により、前記隔壁によって内側配置部分と外側配置部分とを径方向に仕切ることができるとともに、前記被収容部分を前記隔壁に設けた前記通過部を通過させることで、前記通過部で前記被収容部分に前記巻き取り力を作用させることができる。
【0035】
またこの発明の態様として、前記回転規制体における前記反対側に前記側面部が設けられるとともに、前記隔壁が前記側面部に設けられ、前記側面部が前記巻き取り収容部に対して相対回転してもよい。
【0036】
この発明により、前記内側配置部分と前記外側配置部分とを径方向に仕切る前記隔壁が前記側面部と一体的に回転するため、前記巻き取り力によって前記内側配置部分を確実に回転させて、巻き絞られたり、巻き拡がったりすることができる。
【0037】
またこの発明の態様として、前記フレキシブルフラットケーブルが複数積層されるとともに、前記内側配置部分と前記外側配置部分との境界付近の前記内側配置部分に、積層された前記被収容部分を束ねる束ね部が設けられてもよい。
この発明により、積層された前記フレキシブルフラットケーブルがばらけることなく、前記内側配置部分が前記規制部より径内側において、巻き絞られたり、巻き拡がったりすることができる。
【0038】
またこの発明の態様として、前記ゼンマイバネは、前記外側配置部分の巻き解きによって、巻き絞られて前記巻き取り力を発生させてもよい。
【0039】
この発明により、単純構造の前記ゼンマイバネによって前記巻き取り力を確実に発現させることができ、前記フレキシブルフラットケーブルを前記ゼンマイバネの前記巻き取り力で巻き取り、引き出して前記ゼンマイバネを巻き絞ることで前記スライドシートの移動に追従して給電することができる。
【0040】
またこの発明の態様として、前記外側配置部分が、前記ゼンマイバネの巻き絞り長さより長く形成されてもよい。
この発明により、単純構造の前記ゼンマイバネによって前記巻き取り力を確実に発現させることができ、前記フレキシブルフラットケーブルを前記ゼンマイバネの前記巻き取り力で巻き取り、引き出して前記ゼンマイバネを巻き絞ることで前記スライドシートの移動に追従して給電することができる。また、前記外側配置部分が、前記ゼンマイバネの巻き絞り長さより長く形成されているため、ゼンマイバネの巻き絞り長さの方が長い場合のように、巻き取り量や巻き解き量を超えて外側配置部分が巻かれて損傷することを防止できる。
【0041】
またこの発明の態様として、前記巻き取り収容部が、前記固定レールにおける一方の端部、あるいは前記スライドシートを支持するとともに前記固定レールに対して進退方向にスライドする移動体に固定されてもよい。
【0042】
この発明により、コンパクトに構成されたケーブル巻き取り装置は、固定レールに対するスライドシートのスライドに伴って、フレキシブルフラットケーブルをゼンマイバネの巻き取り力で巻き取り、引き出すことでスライドシートの移動に追従して給電することができる。
【発明の効果】
【0043】
この発明により、コンパクトな構造で前記スライドシートに対して給電できるケーブル巻き取り装置、及びスライドシート用フラットケーブル配索構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】シートスライド構造の概略斜視図。
図2】フラットケーブル配索構造の概略斜視図。
図3図2のa部のA-A線拡大断面斜視図。
図4】ケーブル巻き取り装置の分解斜視図による説明図。
図5図2のB-B線拡大断面図。
図6】ケーブル巻き取り装置の説明図。
図7図3のC-C線拡大矢視図。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
図1はシートスライド構造1の概略斜視図を示し、図2はフラットケーブル配索構造10の概略斜視図を示し、図3図2のa部のA-A線拡大断面斜視図を示している。図4はケーブル巻き取り装置6の分解斜視図を示し、図5図2のB-B線拡大断面図を示し、図6はケーブル巻き取り装置6の説明図を示し、図7図3のC-C線拡大矢視図を示している。
【0046】
詳しくは、図3図2のa部拡大図であり、回転規制体61、ゼンマイケース63、及びゼンマイバネ64の図示を省略し、カバー60bを透過状態で図示している。図4(a)は車幅方向内側Wiから視た斜視図を示し、図4(b)は車幅方向外側Woから視た斜視図を示している。図6(a)はケーブル巻き取り装置6の右側面図を示し、図6(b)はケーブル巻き取り装置6の左側面図を示している。なお、図6(a)ではカバー60bの図示を省略し、図6(b)は筐体60の図示を省略している。
【0047】
なお、図1はフラットケーブル配索構造10の構造を詳細に図示するため、スライドシート4を透過状態で図示している。また、図3乃至図7において、ケーブル配索体5を構成するフレキシブルフラットケーブル51(以下においてFFC51という)は厚みを有するものの、その配索状況を明確にするため、厚みのない断面線状に図示するとともに、間隔を設けて積層するように図示している。
【0048】
なお、固定レール2の長手方向、つまりスライダ3の進退方向を前後方向Lとし、前後方向Lのうち手前側(図1における左手前側)を本実施形態では前進方向Lf、奥側(図1における右奥側)を後退方向Lbとしている。また、水平面内において前後方向Lに直交する方向を幅方向Wとしている。また、幅方向Wに所定間隔を隔てて配置した2本の固定レール2同士が対向する方向を車幅方向内側Wiとし、その逆方向を車幅方向外側Woとしている。さらに、図1における上下方向を高さ方向Hとし、高さ方向Hにおける上向きを上方向Hu、下向きを下向きHdとしている。
【0049】
図1に示すように、車両の車室内においてスライドシート4を前後方向Lにスライド可能に構成するシートスライド構造1は、前後方向Lに長い2本の固定レール2と、スライダ3と、スライドシート4とで構成している。
各固定レール2は、幅方向Wに所定の間隔を隔てて車室フロアに固定されている。
【0050】
スライダ3は、各固定レール2に対して前後方向Lにスライド可能に装着されている。
スライドシート4は、幅方向Wの両側のスライダ3によってスライド支持されている。
このようにシートスライド構造1を構成する固定レール2は、図7に示すように、断面溝状のレール本体20と、レール本体20を車室フロアに固定する固定ブラケット21とで構成している。
【0051】
レール本体20は、レール底面部201(図7参照)と、側壁部202と、上面部203と、内壁部204とで構成されている。
レール底面部201は、断面逆ハット状(図7参照)に形成している。
【0052】
側壁部202は、レール底面部201の幅方向Wの両側に設けている。
上面部203は、各側壁部202の上端から対向する方向に伸びるように形成している。
【0053】
内壁部204は、上面部203の対向する内側端部から下向きHdに伸びるように形成している。
なお、内壁部204同士は幅方向Wに所定間隔を隔てて設けられており、内壁部204同士の幅方向Wの間隔は、後述するケーブル配索体5の幅よりわずかに広く形成されている。また、図示省略するが、幅方向W両側の上面部203を跨いで、断面溝形状のレール本体20の内部への異物の侵入を防止するレールモールが設けられている。なお、レールモールは、変形可能なシート材であり、幅方向Wの中央に前後方向Lのスリットを設けている。
【0054】
レール本体20を車室フロアに固定する固定ブラケット21は、断面ハット状であり、幅方向W中央の上方向Huに突出する部分でレール本体20のレール底面部201を支持し、幅方向Wの両側部分を車室フロアに固定している。なお、固定ブラケット21は、前後方向Lに所定間隔を隔てて複数配置している。また、レール本体20の構造は、上述の構造に限定されず、スライダ3が移動できる適宜の構造であればよい。
【0055】
このように構成された固定レール2に対して前後方向Lにスライド可能に装着されたスライダ3は、図7に示すように、スライドシート4を支持する上部支持部31と、レール本体20の内部で配置された内部走行部32とで構成している。
上部支持部31は、固定レール2のレール本体20の上面部203より上方向Huに突出している。
【0056】
内部走行部32は、レール本体20の内部に配置され、前後方向Lに転動するローラ321を備えている。
このように構成されたシートスライド構造1では、前後方向Lに沿って配置された固定レール2のレール本体20の内部において、ローラ321が前後方向Lに転動することで、固定レール2に対してスライダ3が前後方向Lにスライドすることができる。そのため、スライドシート4は、固定レール2に対して前後方向Lにスライドすることができる。
【0057】
シートスライド構造1は、固定レール2に対して前後方向Lにスライド可能なスライドシート4に給電するためのフラットケーブル配索構造10を備えている。
フラットケーブル配索構造10は、前後方向Lに配置された固定レール2に沿って配索されるケーブル配索体5と、ケーブル配索体5を巻き取り/引き出し可能に収容するケーブル巻き取り装置6とを備えている。
【0058】
このケーブル配索体5とケーブル巻き取り装置6とは、シートスライド構造1における幅方向Wに所定間隔を隔てて配置した固定レール2及びスライダ3の一方(本実施形態では前進方向Lfから視て左側)に備えられている。
【0059】
ケーブル配索体5は、複数の平角導体を絶縁性のラミネートシートで挟み込んだ薄板状の帯状導電体である複数枚のFFC51を積層して構成している。また、FFC51で構成するケーブル配索体5は、固定レール2の前後方向Lの長さより長く形成している。
【0060】
FFC51を積層したケーブル配索体5の前方端部52は、固定レール2の前進方向Lfの端部であるレール先端部2Xに嵌合する嵌合固定部53に固定している。嵌合固定部53からは車体側の給電コネクタと嵌合接続する車体側コネクタ54が延出しており、嵌合固定部53の内部で、ケーブル配索体5を構成するFFC51と車体側コネクタ54とが導電可能に接続している。
【0061】
なお、図6に示すように、ケーブル配索体5の前方端部52は嵌合固定部53に固定されている。このように、レール先端部2Xに嵌合する嵌合固定部53に前方端部52を固定したケーブル配索体5は、嵌合固定部53を介してレール先端部2Xに固定している。
【0062】
ケーブル配索体5の後方端部55は、スライドシート4に向かって延び、スライドシート4に対して固定されている。
上述のように、ケーブル配索体5において、レール先端部2Xに固定される前方端部52と、スライドシート4に対して固定される後方端部55との間を後述する巻き取り収容部7に収容される被収容部分56としている。
【0063】
ケーブル配索体5のうち被収容部分56を巻き取り/引き出し可能に収容するケーブル巻き取り装置6は、図4に示すように、筐体60、回転規制体61、固定軸62、ゼンマイケース63、及びゼンマイバネ64で構成している。
【0064】
筐体60は、ベース60aとカバー60bとを幅方向Wに組み付けて構成する。筐体60は、幅方向Wから視て後退方向Lbの下方がとがった滴型であり、後退方向Lbの下端をケーブル出入口601としている。
【0065】
ベース60aは、後方端部55を車幅方向外側Woの外部に導出する導出口602を側面視中央付近に設けている。また、ケーブル出入口601の前進方向Lfには、上方に立ち上がるとともに、上端部603aを前進方向Lfに向けて曲げたケーブルガイド603を備えている。
カバー60bは、ベース60aと反対側の車幅方向内側Wiに突出する横向きの円錐台形状のゼンマイ収容部604を備えている。
【0066】
回転規制体61は、車幅方向内側Wiの円盤部611と、車幅方向外側Woの筒状部612とを一体構成している。円盤部611は、滴型に形成された筐体60における円弧部分よりひとまわり小さな径の円形で構成している。なお、円盤部611には、後述する固定軸62が通過できる貫通孔613を設けている。
【0067】
筒状部612は、車幅方向外側Woが開放された、筒状部612より小径な円筒状である。
なお、筒状部612の周方向の一部には、ケーブル配索体5が通過できるスリット614が設けられている。
【0068】
上述のようにスリット614が形成された筒状部612は、後述する被収容部分56のうち内側配置部分57と、外側配置部分58とを仕切る隔壁として機能し、筒状部612に形成したスリット614は、内側配置部分57と外側配置部分58との間が通過することができる。
【0069】
なお、ケーブル配索体5における外側配置部分58のスリット614の近傍には、複数のFFC51を積層して構成するケーブル配索体5がばらけることを防止するクリップ59を設けている。
【0070】
固定軸62は、後述するゼンマイバネ64の中心を固定するためのものである。
固定軸62は、ベース60aの導出口602に固定される円柱状の円柱本体部621と、円柱本体部621から車幅方向内側Wiに延びる径小円柱部622とで構成している。
【0071】
円柱本体部621の車幅方向内側Wiには、導出口602から導出されるケーブル配索体5の後方端部55を貫通する貫通スリット623を設けている。径小円柱部622は、後述するゼンマイケース63を幅方向Wに貫通し、ゼンマイケース63の内部に配置されたゼンマイバネ64の中心側端部641を把持するように構成している。
【0072】
ゼンマイケース63は、車幅方向外側Woの第1ケース63aと、車幅方向内側Wiの第2ケース63bとで構成している。
第1ケース63aは、車幅方向外側Woの円板部631と、円板部631の車幅方向外側Woに形成された円状リブ632、周縁部に沿って形成された周縁リブ633、及び円状リブ632と周縁リブ633とを径方向に結ぶ複数の径方向リブ634とで構成している。
【0073】
第1ケース63aの中心には、固定軸62の径小円柱部622が挿通される中心孔635を設けている。円状リブ632の周方向の一部には、円状リブ632に沿って、ゼンマイバネ64の外周側端部を把持する把持リブ636を設けている。
【0074】
第2ケース63bは、第1ケース63aと方向Lに対称に構成されているため、同じ構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
第1ケース63aと方向Lに対称に構成された第2ケース63bと、第1ケース63aとが、幅方向Wに対向させて組み付けられることで、円状リブ632の径内側に、ゼンマイバネ64を配置する円盤状の配置空間637が形成される。
【0075】
そして、配置空間637の外周に沿って、把持リブ636による把持溝(図示省略)が形成される。なお、ゼンマイケース63は、カバー60bにおけるゼンマイ収容部604より小径、且つゼンマイ収容部604より低い高さで構成している。
ゼンマイバネ64は、帯状のばね鋼を巻き回して構成され、ゼンマイケース63の配置空間637に配置される。中心側の端部を中心側端部641、径外側の端部を径外側端部642としている。
【0076】
続いて、ケーブル巻き取り装置6の組み付け方法について説明する。
第1ケース63a及び第2ケース63bの一方の円状リブ632の径内側にゼンマイバネ64を配置する。ここで、ゼンマイバネ64の径外側端部642を把持リブ636に配置する。
【0077】
そして、第1ケース63aと第2ケース63bとを組み付けてゼンマイケース63が、構成される。このとき、ゼンマイバネ64は配置空間637に配置されるとともに、径外側端部642は把持リブ636で構成される把持溝で把持することができる。
【0078】
また、スパイラル状に巻き回したケーブル配索体5は、回転規制体61における筒状部612の径内側に内側配置部分57を配置するとともに、筒状部612の径外側に外側配置部分58を配置する。
【0079】
このとき、筒状部612に設けたスリット614を内側配置部分57と外側配置部分58との間が通過することとなる。また、内側配置部分57と外側配置部分58とは同方向に巻き回されて配置されている。
【0080】
このケーブル配索体5が配置された回転規制体61は、その貫通孔613に固定軸62の径小円柱部622を挿通される。そして、固定軸62の径小円柱部622を中心孔635に挿通し、回転規制体61の円盤部611とゼンマイケース63と間に固定軸62が配置された状態となる。
このようにして、ケーブル配索体5、回転規制体61、固定軸62及びゼンマイケース63は組み付けられる。
【0081】
このとき、ゼンマイバネ64の中心側端部641は、固定軸62の径小円柱部622に固定されている。そして、ケーブル配索体5の後方端部55は、固定軸62の貫通スリット623を貫通する。
【0082】
続いて、このように組み付けられた、ケーブル配索体5、回転規制体61、固定軸62、ゼンマイケース63及びゼンマイバネ64を筐体60の内部に配置するようにベース60aとカバー60bとが組み付けられる。
【0083】
詳しくは、後方端部55が導出口602を貫通するとともに、前方端部52がケーブル出入口601から引き出されるように、ケーブル配索体5をベース60aに組み付ける。このとき、固定軸62の円柱本体部621は、ベース60aに固定する。これにより、ゼンマイバネ64の中心側端部641は、固定軸62を介して筐体60に固定される。このとき、外側配置部分58は、ケーブルガイド603の上端部603aと円盤部611との間に形成される所定の間隔に配置される。
【0084】
さらに、ケーブル配索体5、回転規制体61、固定軸62、ゼンマイケース63及びゼンマイバネ64が組み付けられたベース60aに対してカバー60bを組み付けて筐体60を構成する。このように構成された筐体60のカバー60bにおけるゼンマイ収容部604の内部には、ゼンマイケース63及びゼンマイバネ64が配置される。
【0085】
また、回転規制体61とゼンマイケース63は固定される。このように、筐体60の内部にケーブル配索体5、回転規制体61、固定軸62、ゼンマイケース63及びゼンマイバネ64が配置されてケーブル巻き取り装置6は構成される。
【0086】
このように構成されたケーブル巻き取り装置6において、ケーブル配索体5が配置された回転規制体61より車幅方向外側Woは巻き取り収容部7として機能し、ゼンマイケース63及びゼンマイバネ64が配置された回転規制体61より車幅方向内側Wiは巻き取力発生部8として機能する。
【0087】
また、ケーブル巻き取り装置6は、スライダ3の前進方向Lfに装着される。このとき、ケーブル出入口601が後退方向Lbの下方、つまりケーブル出入口601がスライダ3の側において下方向きとなるように、ケーブル巻き取り装置6をスライダ3に装着する。そして、ケーブル出入口601より下向きHdにケーブル配索体5が引き出され、レール本体20の内部に引き延ばされる。
【0088】
詳しくは、固定レール2に対してスライダ3が後退方向Lbに移動すると、ケーブル巻き取り装置6からケーブル配索体5が引き出される。ケーブル配索体5の引き出し、つまり回転規制体61の筒状部612より径外側に配置された外側配置部分58が巻き解かれてケーブル出入口601から引き出される。
【0089】
このとき、外側配置部分58はケーブルガイド603によってケーブル出入口601に案内され、スムーズに引き出される。また、ケーブルガイド603の上端部603aを前進方向Lfに向けて曲げているため、筒状部612より径外側に配置された外側配置部分58が不用意に巻き解かれて乱れることが防止されている。
【0090】
外側配置部分58の引き出しによって回転規制体61は回転し、筒状部612より径内側に配置された内側配置部分57は巻き絞られる。また、外側配置部分58の引き出しによる回転規制体61の回転によって、ゼンマイケース63も回転するため、ベース60aに中心側端部641の回転が固定され、把持溝に径外側端部642が把持されたゼンマイバネ64も巻き絞られる。
なお、内側配置部分57の巻き絞りが完了すると、外側配置部分58の巻き解き方向の過回転を規制することができる。
【0091】
逆に、スライダ3が固定レール2に対して前進方向Lfに移動すると、レール底面部201内部に引き延ばされていたケーブル配索体5を巻き取る。
詳しくは、外側配置部分58の引き出しによって巻き絞られたゼンマイバネ64の付勢力によって、ゼンマイバネ64が巻き拡がって回転規制体61を回転し、引き出されていたケーブル配索体5は、外側配置部分58として筒状部612の径外側に巻き取られる。
【0092】
このとき、筒状部612の径内側の内側配置部分57は、ゼンマイバネ64と同様に、巻き拡がる。なお、巻き拡がる内側配置部分57の径外側には筒状部612によって規制しているため、外側配置部分58の巻き取り方向の過回転を規制することができる。
【0093】
このように、ケーブル巻き取り装置6を用いたフラットケーブル配索構造10は、車室フロアに固定した固定レール2の方向Lに沿って進退可能にスライド支持されたスライドシート4に対してケーブル配索体5を配索するものである。ケーブル配索体5の前方端部52を固定レール2のレール先端部2Xに固定するとともに、ケーブル配索体5の後方端部55をスライドシート4に対して固定している。
【0094】
また、ケーブル巻き取り装置6は、ケーブル配索体5における前方端部52と後方端部55との間の被収容部分56を引き出し可能に巻き取って内部に収容する巻き取り収容部7と、ケーブル配索体5の引き出しによって被収容部分56を巻き取る方向の巻き取り力を発生させる巻き取力発生部8と、巻き取力発生部8による巻き取り力を被収容部分56に作用させるスリット614とを備えている。
【0095】
さらに、ケーブル巻き取り装置6は、巻き取り収容部7の巻き取り中心から後方端部55を車幅方向外側Woの外部に導出するとともに、巻き取り収容部7の巻き取り中心軸方向において車幅方向内側Wiに巻き取力発生部8を配置している。そのため、ケーブル巻き取り装置6はコンパクトな構造で、スライドシート4に対してケーブル配索体5により給電することができる。
【0096】
詳述すると、ケーブル巻き取り装置6は、巻き取り収容部7と、巻き取力発生部8と、スリット614とを備えている。
巻き取り収容部7は、ケーブル配索体5の被収容部分56を引き出し可能に巻き取って内部に収容している。
【0097】
巻き取力発生部8は、ケーブル配索体5の引き出しによって被収容部分56を巻き取る方向の巻き取り力を発生させている。
スリット614は、巻き取力発生部8による巻き取り力を被収容部分56に作用させている。
【0098】
そして、巻き取り収容部7における、後方端部55が巻き取り中心から外部に導出される側と反対側である車幅方向内側Wiに巻き取力発生部8が配置されている。
これにより、固定レール2に対するスライドシート4のスライドに対して、ケーブル配索体5を巻き取力発生部8の巻き取り力で巻き取り、引き出すことでスライドシート4の移動に追従して給電できるケーブル巻き取り装置6をコンパクトに構成することができる。
【0099】
また、被収容部分56における中間部分を規制するスリット614より径内側に配置される部分を内側配置部分57とするとともに、スリット614より径外側に配置される部分を外側配置部分58としている。内側配置部分57と外側配置部分58とが同方向に巻き回されて収容され、外側配置部分58を巻き解くと内側配置部分57は巻き絞られ、外側配置部分58を巻き取ると内側配置部分57は巻き拡がる。そのため、スライドシート4の移動に伴って、被収容部分56における外側配置部分58を巻き解いて引き出したり、巻き取ったりすることができる。
また、スライドシート4の移動に伴う、外側配置部分58の引き出しや巻き取りによって、内側配置部分57を巻き絞ったり、巻き拡げたりすることができる。
【0100】
また、スライドシート4の移動に伴って、巻き取り収容部7から被収容部分56における外側配置部分58が巻き解かれて引き出されると、内側配置部分57はスリット614より径内側で巻き絞られるため、巻き絞られた内側配置部分57の復元力が、外側配置部分58に引き出される方向と逆向きに作用することとなる。
【0101】
加えて、仮に、外側配置部分58が巻き解かれて巻き取り収容部7から引き出されることによって内側配置部分57の巻き絞りが完了すると、巻き絞られた内側配置部分に57より、外側配置部分58がさらに巻き解かれて引き出されることを規制できる。
すなわち、巻き絞られた内側配置部分57が、外側配置部分58をさらに引き出す際のいわゆるストッパーとして作用するため、外側配置部分58の過剰な引き出しを防止できる。
【0102】
逆に、スライドシート4の移動に伴って、巻き取り収容部7に外側配置部分58が巻き取られて、引き戻されると、内側配置部分57はスリット614より径内側で巻き拡げられ、スリット614に当接し、巻き解かれた内側配置部分57の反発力が、外側配置部分58に引き戻される方向と逆向きに作用することとなる。
【0103】
このため、スリット614に当接するまで巻き拡がった内側配置部分57の反発力が、外側配置部分58に作用することで、外側配置部分58がさらに巻き取られて巻き取り収容部7に引き戻されることを規制できる。
すなわち、巻き拡がる内側配置部分57が、外側配置部分58をさらに引き戻す際のいわゆるストッパーとして作用するため、外側配置部分58の過剰な引き戻しを防止できる。
【0104】
このように、内側配置部分57が、外側配置部分58の引出しや引き戻しによって、巻き絞られたり、巻き拡げられたりする。このため、内側配置部分57に作用する弾性力が、引出されたり引き戻されたりする外側配置部分58に対して反対向方向に作用することとなり、外側配置部分58の引出しや引き戻し方向の力を緩和することができる。
さらに、内側配置部分57は、外側配置部分58を引き出したり、引き戻したりする際のいわゆるストッパーとして作用することができる。
【0105】
また、巻き取り収容部7において、巻き回して収容した内側配置部分57と外側配置部分58との間に筒状部612を設け、筒状部612に被収容部分56が径方向に通過できるスリット614を設けている。
【0106】
そのため、筒状部612によって内側配置部分57と外側配置部分58とを径方向に仕切ることができる。また、被収容部分56を筒状部612に設けたスリット614を通過させることで、スリット614で被収容部分56に巻き取力発生部8の巻き取り力を作用させて、ケーブル配索体5を巻き取ったり、引き出したりすることができる。
【0107】
また、巻き取り収容部7における車幅方向内側Wiに円盤部611が設けられ、円盤部611に筒状部612を設け、円盤部611は巻き取り収容部7に対して相対回転するように構成している。そのため、内側配置部分57と外側配置部分58とを径方向に仕切る筒状部612が円盤部611と一体的に回転する。したがって、内側配置部分57を確実に回転させて、巻き絞られたり、巻き拡がったりすることができる。
【0108】
また、FFC51を複数積層してケーブル配索体5を構成するとともに、内側配置部分57と外側配置部分58との境界付近の内側配置部分57に、積層された被収容部分56を束ねるクリップ59を設けている。
そのため、積層されたケーブル配索体5がばらけることなく、内側配置部分57がスリット614より径内側において、巻き絞られたり、巻き拡がったりすることができる。
【0109】
また、巻き取力発生部8は、外側配置部分58の巻き解きによって、巻き絞られて巻き取り力を発生させるゼンマイバネ64を備え、外側配置部分58をゼンマイバネ64の巻き絞り長さより長く形成している。そのため、単純構造のゼンマイバネ64によって巻き取り力を確実に発現することができ、ケーブル配索体5を巻き取力発生部8の巻き取り力で巻き取り、引き出すことでスライドシート4の移動に追従して給電することができる。
【0110】
また、外側配置部分58を、ゼンマイバネ64の巻き絞り長さより長く形成しているため、ゼンマイバネ64の巻き絞り長さの方が長い場合のように、巻き取り量や巻き解き量を超えて外側配置部分58が巻かれて損傷することを防止できる。
【0111】
また、巻き取り収容部7を、固定レール2に対して進退方向にスライドするスライダ3に取付けている。そのため、コンパクトに構成されたケーブル巻き取り装置6は、固定レール2に対するスライドシート4のスライドに伴って、ケーブル配索体5を巻き取力発生部8の巻き取り力で巻き取り、引き出すことでスライドシート4の移動に追従して給電することができる。
【0112】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、この発明の車体は車室フロアに対応し、
以下同様に、
固定レールは固定レール2に対応し、
長手方向は方向Lに対応し、
スライドシートはスライドシート4に対応し、
フレキシブルフラットケーブルはケーブル配索体5に対応し、
ケーブル巻き取り装置はケーブル巻き取り装置6に対応し、
第1ケーブル端部は前方端部52に対応し、
第1レール端部はレール先端部2Xに対応し、
第2ケーブル端部は後方端部55に対応し、
被収容部分は被収容部分56に対応し、
巻き取り収容部は巻き取り収容部7に対応し、
巻き取力発生部は巻き取力発生部8に対応し、
巻き取力作用部はスリット614に対応し、
規制部はスリット614に対応し、
内側配置部分は内側配置部分57に対応し、
外側配置部分は外側配置部分58に対応し、
隔壁は筒状部612に対応し、
通過部はスリット614に対応し、
側面部は円盤部611に対応し、
束ね部はクリップ59に対応し、
ゼンマイバネはゼンマイバネ64に対応し、
移動体はスライダ3に対応し、
スライドシート用フラットケーブル配索構造はフラットケーブル配索構造10に対応するも、この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0113】
例えば、上述の説明では、複数のFFC51を積層してケーブル配索体5を構成したが、FFC51に、FFC51より硬い薄片部材を積層してケーブル配索体5を構成してもよい。さらには、ケーブル配索体5は、薄片部材の代わりに、導体を備えていないダミーケーブルをFFC51と積層してもよい。
【0114】
また、上述の説明では、前後方向Lに沿って配置した固定レール2の前進方向Lfの端部であるレール先端部2Xに前方端部52を固定したが、固定レール2の後退方向Lbの端部に前方端部52を固定してもよい。この場合、スライダ3の後退方向Lbにケーブル巻き取り装置6を装着すればよい。
【0115】
また、レール先端部2Xに前方端部52を固定せずとも、レール先端部2Xの近傍に前方端部52を固定してもよい。さらには、ケーブル巻き取り装置6をスライダ3に取付けたが、固定レール2におけるレール先端部2Xに固定してもよい。この場合、前方端部52がスライドシート4に取付けられ、ケーブル巻き取り装置6から導出される後方端部55をレール先端部2Xに固定することとなる。
【0116】
上述の説明では、筒状部612の径内側に配置する内側配置部分57と、径外側に配置する外側配置部分58とを同方向に巻き回して収容し、外側配置部分58が巻き解かれると内側配置部分57が巻き絞られ、外側配置部分58が巻き取られると内側配置部分57が巻き拡がるように構成しているが、内側配置部分57と外側配置部分58とを逆方向に巻き回して収容し、外側配置部分58が巻き解かれると内側配置部分57が巻き拡がり、外側配置部分58が巻き取られると内側配置部分57が巻き絞られるように構成してもよい。
【0117】
この場合、外側配置部分58が巻き解かれると内側配置部分57が巻き拡がり、外側配置部分58が巻き取られると内側配置部分57が巻き絞られる。よって、巻き回した内側配置部分57と外側配置部分58との周長差を吸収することができる。
【0118】
加えて、仮に、外側配置部分58が巻き取られて巻き取り収容部7に引き戻されることで内側配置部分57の巻き絞りが完了すると、巻き絞られた内側配置部分57によって、外側配置部分58がさらに引き戻されることを規制できる。
すなわち、巻き絞られた内側配置部分57が、外側配置部分58が引き戻される際のいわゆるストッパーとして作用するため、外側配置部分58の過剰な引き戻しを防止できる。
【0119】
逆に、スライドシート4の移動に伴って、巻き取り収容部7から外側配置部分58が巻き解かれて引き出されると、内側配置部分57は前記規制部より径内側で巻き拡げられ、スリット614に当接し、巻き解かれた内側配置部分57の反発力が、外側配置部分58に引き戻される方向と逆向きに作用することとなる。
【0120】
このため、スリット614に当接するまで巻き拡がった内側配置部分57の反発力が、外側配置部分58に作用することで、外側配置部分58がさらに巻き解かれて巻き取り収容部7から引き出されることを規制できる。
すなわち、巻き拡がる内側配置部分57が、外側配置部分58を引き出す際のいわゆるストッパーとして作用するため、外側配置部分58の過剰な引き出しを防止できる。
【0121】
また、回転規制体61に円筒状の円盤部611を設けるとともに、ケーブル配索体5が通過するスリット614を円盤部611に形成したが、円盤部611の代わりに複数本のピンを同心状に配置して、内側配置部分57と外側配置部分58とを径方向に仕切るよう構成してもよい。
【0122】
なお、上述のケーブル巻き取り装置6では、巻き取力発生部8に外側配置部分58の巻き解きによって、巻き絞られて巻き取り力を発生させるゼンマイバネ64を備えたが、ねじりバネ、ねじりコイルバネ、スパイラルトーションスプリングなどで構成してもよい。
【符号の説明】
【0123】
2…固定レール
2X…レール先端部
3…スライダ
4…スライドシート
5…ケーブル配索体
6…ケーブル巻き取り装置
7…巻き取り収容部
8…巻き取力発生部
10…フラットケーブル配索構造
52…前方端部
55…後方端部
56…被収容部分
57…内側配置部分
58…外側配置部分
59…クリップ
64…ゼンマイバネ
611…円盤部
612…筒状部
614…スリット
L…方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7