(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】樹脂組成物およびそれを用いた多層構造体
(51)【国際特許分類】
C08L 29/04 20060101AFI20221101BHJP
C08K 5/098 20060101ALI20221101BHJP
B32B 27/28 20060101ALI20221101BHJP
B32B 7/12 20060101ALI20221101BHJP
B32B 27/34 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
C08L29/04
C08K5/098
B32B27/28 102
B32B7/12
B32B27/34
(21)【出願番号】P 2017192710
(22)【出願日】2017-10-02
【審査請求日】2020-07-27
(31)【優先権主張番号】P 2017186827
(32)【優先日】2017-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【氏名又は名称】西藤 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100207295
【氏名又は名称】寺尾 茂泰
(72)【発明者】
【氏名】小室 綾平
【審査官】渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/110989(WO,A1)
【文献】特開平10-067898(JP,A)
【文献】特開2001-146539(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン-ビニルアルコール系共重合体(A)、およびヒドロキシ基を有し、炭素数が2~1
0の1価
脂肪族カルボン酸金属塩(B)を含有し、該カルボン
酸金属塩(B)の金属種が、周期律表dブロック第4周期から選ばれることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
前記金属塩(B)の含有量がエチレン-ビニルアルコール系共重合体(A)100部に対して0.01~5部であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記金属塩(B)が飽和水和物であることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか一項に記載の樹脂組成物からなる層の少なくとも一方の面に、接着性樹脂層を介して、エチレン-ビニルアルコール系共重合体(A)以外の熱可塑性樹 脂層を有することを特徴とする多層構造体。
【請求項5】
請求項1~
3のいずれか一項に記載の樹脂組成物からなる層の少なくとも一方の面に、ポリアミド系樹脂層を有することを特徴とする多層構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン-ビニルアルコール系共重合体(以下、「EVOH」と略記することがある。)を用いてなる樹脂組成物およびそれを用いた多層構造体に関するものであり、さらに詳しくは、多層共押出成形を適用した場合にも、外観不良の発生が抑制され、かつ溶融成形時の色調悪化が改善された多層構造体を形成することのできる樹脂組成物、およびそれを用いた樹脂組成物層を含む多層構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品や様々な物品を包装するための包装材料には、酸素等のガスバリア性が要求されることが多い。これは、酸素等によって包装内容物が酸化劣化する等の影響を防ぐためであり、食品の鮮度を長らく維持させるためである。このため、従来の包装材料では、酸素等の透過を防ぐガスバリア層を設け、酸素等の透過を防止していた。
【0003】
上記ガスバリア層としては、一般的に無機物からなるガスバリア層、有機物からなるガスバリア層を挙げることができる。無機物からなるガスバリア層としては、アルミニウム箔やアルミニウム蒸着層などの金属層、または酸化ケイ素蒸着層や酸化アルミニウム蒸着層などの金属化合物層が使用されている。しかし、アルミニウム箔やアルミニウム蒸着層などの金属層は、包装内容物が見えないこと、廃棄性に劣ること等の欠点がある。
【0004】
一方で、有機物からなるガスバリア層として、ポリ塩化ビニリデン系重合体からなる層や、ポリビニルアルコールやEVOH等のビニルアルコール系重合体からなる層が使用されている。ポリ塩化ビニリデン系重合体は、焼却廃棄する際に有害な塩素化合物が発生する等のおそれがある事から、近年使用量が大きく減少している。ビニルアルコール系重合体からなる層は透明であり、廃棄面での問題が少ないという利点があるため、広く包装材料に用いられている。
【0005】
例えば、上記包装材料として、EVOHからなる層を中間層とし、接着性樹脂層やポリアミド系樹脂層を介して、EVOH以外の熱可塑性樹脂を積層した多層構造体があげられる。このような多層構造体は、上述のとおり、その優れたガスバリア性および透明性を利用して、食品包装材料、医薬品包装材料、工業薬品包装材料、農薬包装材料等の包装材料としてのフィルムやシート、あるいはボトル等の容器等に成形されて利用されている。
【0006】
かかる多層構造体の成形にあたっては、生産性の観点から一般に溶融成形法が適用される。しかし、EVOHはヒドロキシ基を豊富に含むため熱劣化しやすく、溶融成形性を改善する目的で配合剤を配合することが知られている。
【0007】
一般に、EVOHの成形性改善を目的として、例えば特許文献1には、エチレン含有量が20~60モル%でケン化度が90モル%以上のエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)と炭素数12~30の脂肪族モノカルボン酸の1種又は2種以上と周期律表第2族金属の酸化物または水酸化物とを乾式直接法により加熱させて得られる特定の化学式を有する金属石鹸(B)からなる樹脂組成物を用いることにより、熱安定性、加工性(ロングラン成形性、滞留防止性、パージ性)に優れる旨記載されている(特許文献1)。
【0008】
近年は特に内容物への安心感が強く求められることから、内容物が外からでも確認できるよう、視認性(透明性)の高い多層構造体が好まれる傾向にある。これに対し特許文献2には、エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物を含有する層の少なくとも一方の面に、接着性樹脂層を介して、エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物以外の熱可塑性樹脂層が積層されてなる多層構造体であって、該エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物を含有する層と該接着性樹脂層の積層界面での界面層の厚み(X)が、界面の一面あたり50~400nmであることを特徴とする多層構造体を用いることにより、EVOH層/接着性樹脂層の界面での樹脂流動性をコントロールすることにより、EVOH層/接着性樹脂層の積層界面で発生する界面荒れに起因する外観不良が低減され、特に像鮮明度の低下が少ない多層構造体が得られる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2000-290455号公報
【文献】国際公開第2016/148271号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、近年の成形技術の高度化(例えば、フィードブロック・ダイ形状の多様化、成形装置の高機能化など)や多層構造体の高機能化(例えば、層数増加など)に伴い、多層共押出成形した際に、得られる多層構造体の外観、特に多層構造体の透明性について、さらなる改善が要望されていた。
【0011】
そこで、本発明はこのような背景下において、外観不良の発生が抑制され、かつ溶融成形時の透明性悪化が改善された多層構造体を形成することのできる樹脂組成物、およびそれを用いた樹脂組成物層を含む多層構造体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
しかるに本発明者は、上記事情に鑑み、鋭意検討した結果、EVOH(A)に、ヒドロキシ基を有し、かつ炭素数が特定中程度の1価カルボン酸金属塩(B)を含有する樹脂組成物を用いることにより本発明を完成した。
【0013】
すなわち、本発明は、EVOH(A)、およびヒドロキシ基を有し、炭素数が2~17の1価カルボン酸金属塩(B)を含有する樹脂組成物を第1の要旨とする。
【0014】
そして、本発明は、上記樹脂組成物からなる層の少なくとも一方の面に、接着性樹脂層を介して、上記樹脂組成物以外の熱可塑性樹脂層が積層される多層構造体を第2の要旨とし、上記樹脂組成物からなる樹脂組成物層の少なくとも一方の面に、ポリアミド系樹脂層が積層される多層構造体を第3の要旨とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、EVOH(A)に、ヒドロキシ基を有し、炭素数が2~17の1価カルボン酸金属塩(B)を含有することを特徴とする樹脂組成物である。このため、上記樹脂組成物を用いて得られる多層構造体は、例えばEVOH層/接着性樹脂層およびまたはEVOH層/ポリアミド系樹脂層の積層界面で発生する界面荒れに起因する外観不良が抑制され、かつ溶融成形時の透明性が高度に改善された優れた多層構造体である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の構成につき詳細に説明するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものであり、これらの内容に特定されるものではない。
【0017】
本発明は、EVOH(A)、およびヒドロキシ基を有し、炭素数が2~17の1価カルボン酸金属塩(B)(以下、かかる成分を金属塩(B)と表記することがある)を含有することを特徴とする樹脂組成物である。
【0018】
<EVOH(A)>
本発明で用いるEVOH(A)について説明する。
本発明で用いるEVOH(A)は、通常、エチレンとビニルエステル系モノマーを共重合させた後にケン化させることにより得られる樹脂であり、非水溶性の熱可塑性樹脂である。重合法も公知の任意の重合法、例えば、溶液重合、懸濁重合、エマルジョン重合を用いることができるが、一般的にはメタノールを溶媒とする溶液重合が用いられる。得られたエチレン-ビニルエステル系共重合体のケン化も公知の方法で行ない得る。
すなわち、本発明で用いるEVOH(A)は、エチレン構造単位とビニルアルコール構造単位を主とし、場合によってはケン化されずに残存した若干量のビニルエステル構造単位を含むものである。
【0019】
上記ビニルエステル系モノマーとしては、市場からの入手のしやすさや製造時の不純物の処理効率がよい点から、代表的には酢酸ビニルが用いられる。この他、例えば、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等の脂肪族ビニルエステル、安息香酸ビニル等の芳香族ビニルエステル等があげられ、通常炭素数3~20、好ましくは炭素数4~10、特に好ましくは炭素数4~7の脂肪族ビニルエステルである。これらは通常単独で用いるが、必要に応じて複数種を同時に用いてもよい。
【0020】
EVOH(A)におけるエチレン構造単位の含有量は、ISO14663に基づいて測定した値であり、通常20~60モル%、好ましくは25~50モル%、特に好ましくは25~40モル%である。かかる含有量が少なすぎると、高湿時のガスバリア性、溶融成形性が低下する傾向があり、逆に多すぎると、ガスバリア性が低下する傾向がある。
【0021】
EVOH(A)におけるビニルエステル成分のケン化度は、JIS K6726(ただし、EVOHは水/メタノール溶媒に均一に溶解した溶液にて)に基づいて測定した値であり、通常90~100モル%、好ましくは95~100モル%、特に好ましくは99~100モル%である。かかるケン化度が低すぎる場合にはガスバリア性、熱安定性、耐湿性等が低下する傾向がある。
【0022】
また、上記EVOH(A)のメルトフローレート(MFR)(210℃、荷重2160g)は、通常0.5~100g/10分であり、好ましくは1~50g/10分、特に好ましくは3~35g/10分である。かかるMFRが高すぎると、製膜性が低下する傾向がある。また、MFRが低すぎると溶融押出が困難となる傾向がある。
【0023】
また、本発明に用いられるEVOH(A)は、本発明の効果を阻害しない範囲(例えば10モル%以下)で、以下に示すコモノマーに由来する構造単位が、さらに含まれていてもよい。
上記コモノマーは、例えば、プロピレン、1-ブテン、イソブテン等のオレフィン類や、2-プロペン-1-オール、3-ブテン-1-オール、4-ペンテン-1-オール、5-ヘキセン-1-オール、3,4-ジヒドロキシ-1-ブテン、5-ヘキセン-1,2-ジオール、2-メチレンプロパン-1,3-ジオール等のヒドロキシ基含有オレフィン類や、そのエステル化物である、3,4-ジアセトキシ-1-ブテン、2,3-ジアセトキシ-1-アリルオキシプロパン、2-アセトキシ-1-アリルオキシ-3-ヒドロキシプロパン、3-アセトキシ-1-アリルオキシ-2-ヒドロキシプロパン;1,3-ジアセトキシ-2-メチレンプロパン、1,3-ジプロピオニルオキシ-2-メチレンプロパン、1,3-ジブチロニルオキシ-2-メチレンプロパン等のヒドロキシメチルビニリデンジアセテート類、グリセリンモノアリルエーテル、グリセリンモノビニルエーテル、グリセリンモノイソプロペニルエーテル等のグリセリンモノ不飽和アルキルエーテル類、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、(無水)フタル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸等の不飽和酸類あるいはその塩あるいは炭素数1~18のモノまたはジアルキルエステル類、アクリルアミド、炭素数1~18のN-アルキルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、2-アクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩等のアクリルアミド類、メタアクリルアミド、炭素数1~18のN-アルキルメタクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド、2-メタクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩等のメタクリルアミド類、N-ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド等のN-ビニルアミド類、アクリルニトリル、メタクリルニトリル等のシアン化ビニル類、炭素数1~18のアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルコキシアルキルビニルエーテル等のビニルエーテル類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル化合物類、トリメトキシビニルシラン等のビニルシラン類、酢酸アリル、塩化アリル等のハロゲン化アリル化合物類、アリルアルコール、ジメトキシアリルアルコール等のアリルアルコール類、トリメチル-(3-アクリルアミド-3-ジメチルプロピル)-アンモニウムクロリド、アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等のコモノマーがあげられる。
【0024】
さらに、ウレタン化、アセタール化、シアノエチル化、オキシアルキレン化等の「後変性」されたEVOHを用いることもできる。
【0025】
特に、側鎖に1級ヒドロキシ基を有するEVOHは、ガスバリア性を保持しつつ二次成形性が良好になる点で好ましく、なかでも、ヒドロキシ基含有α-オレフィン類を共重合したEVOHが好ましく、特には、側鎖に1,2-ジオールを側鎖に有するEVOHが好ましい。
【0026】
上記1,2-ジオールを側鎖に有するEVOHは、側鎖に1,2-ジオール構造単位を含むものである。上記1,2-ジオール構造単位とは、具体的には下記の一般式(1)で示される構造単位である。
【0027】
【化1】
〔上記一般式(1)において、R
1,R
2およびR
3は、それぞれ独立して水素原子または有機基を示し、Xは単結合または結合鎖を示す。R
4,R
5およびR
6は、それぞれ独立して水素原子または有機基を示す。〕
【0028】
上記一般式(1)で表される1,2-ジオール構造単位における有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基等の飽和炭化水素基、フェニル基、ベンジル基等の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、スルホン酸基等があげられる。
【0029】
特に、上記一般式(1)で表わされる1,2-ジオール構造単位を含有する場合、その含有量は通常0.1~20モル%、さらには0.1~15モル%、特には0.1~10モル%のものが好ましい。
【0030】
また、本発明で使用されるEVOH(A)は、異なる他のEVOHとの混合物であってもよく、上記他のEVOHとしては、エチレン構造単位の含有量が異なるもの、一般式(1)で表わされる1,2-ジオール構造単位の含有量が異なるもの、ケン化度が異なるもの、メルトフローレート(MFR)が異なるもの、他の共重合成分が異なるもの等をあげることができる。
【0031】
<ヒドロキシ基を有する1価カルボン酸金属塩(B)>
本発明においては、ヒドロキシ基を有し、炭素数が2~17の1価カルボン酸金属塩(B)が用いられる。上記金属塩(B)を構成するアニオンは、1価カルボン酸すなわち1つのカルボキシル基に由来するアニオンであり、かつヒドロキシル基を有し、かつ炭素数が2~17である。上記金属塩(B)としてヒドロキシ基を有し、かつ炭素数が特定中程度の1価カルボン酸金属塩を用いることで、EVOH(A)と金属塩(B)との親和性が増大し、例えばEVOH層/接着性樹脂層およびまたはEVOH層/ポリアミド系樹脂層の積層界面で発生する界面荒れに起因する外観不良が抑制され、かつ溶融成形時の透明性が高度に改善された優れた多層構造体が得られるものと推測される。
【0032】
かかる金属塩(B)としては例えば、グリコール酸、グルコン酸、乳酸、グリセリン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシラウリン酸などのヒドロキシ基を有する1価脂肪族カルボン酸金属塩;サリチル酸、シリング酸、プロトカテク酸、ゲンチジン酸、没食子酸、マンデル酸、ベンジル酸、フロレト酸などのヒドロキシ基を有する1価芳香族カルボン酸金属塩等があり、生産性の点で好ましくは、ヒドロキシ基を有する1価脂肪族カルボン酸金属塩であり、さらに好ましくは、グルコン酸金属塩である。
【0033】
かかる金属塩(B)の炭素数として好ましくは2~15であり、特に好ましくは3~10である。かかる値が上記範囲内である場合、本発明の効果がより顕著に得られる傾向がある。
かかる金属塩(B)が有するヒドロキシ基の価数は、通常1~3価であり、生産性の点から1価が好ましい。
【0034】
また、金属塩(B)の金属種としては、例えば、1価金属:ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、多価金属:マグネシウム、カルシウム、バリウムなどのアルカリ土類金属、亜鉛などの周期律表第10~12族から選ばれる金属などを挙げる事ができる。本発明の効果がより顕著に得られる点で、多価金属が好ましい。さらに好ましくは、マグネシウム、カルシウム、バリウムなどのアルカリ土類金属、亜鉛などの周期律表第10~12族から選ばれる金属であり、さらに好ましくは亜鉛などの周期律表第10~12族から選ばれる金属である。周期律表第10~12族から選ばれる金属として、さらに好ましくは周期律表dブロック第4周期から選ばれる金属であり、具体的にはニッケル、銅、亜鉛である。
【0035】
すなわち、金属塩(B)として、好ましくはヒドロキシ基を有する1価脂肪族カルボン酸またはヒドロキシ基を有する1価芳香族カルボン酸の多価金属塩であり、より好ましくはヒドロキシ基を有する1価脂肪族カルボン酸の多価金属塩であり、より好ましくはグルコン酸の多価金属塩であり、さらに好ましくは、グルコン酸のアルカリ土類金属塩および周期律表第10~12族から選ばれる金属塩であり、最も好ましくはグルコン酸亜鉛塩である。
【0036】
また、金属塩(B)は無水物であっても水和物であってもよく、経済性および入手の容易さの観点から水和物の方が好ましく、最も好ましくは飽和水和物である。
【0037】
上記金属塩(B)の含有量は、EVOH(A)100部に対して、0.01~5部であることが好ましく、好ましくは0.03~3部、より好ましくは0.05~1部、さらに好ましくは0.09~1部である。かかる含有量が少なすぎると、溶融成形時の透明性改善効果が低下する傾向があり、多すぎると熱安定性および色調安定性が低下する傾向がある。
【0038】
<他の熱可塑性樹脂(C)>
本発明の樹脂組成物には、樹脂成分として、EVOH(A)以外の熱可塑性樹脂を、EVOH(A)に対して、通常30重量%以下となるような範囲内で含有してもよい。以下、かかるEVOH(A)以外の熱可塑性樹脂を「他の熱可塑性樹脂(C)」と称する。
【0039】
上記他の熱可塑性樹脂(C)としては、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-α-オレフィン(炭素数4~20のα-オレフィン)共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、ポリプロピレン、プロピレン-α-オレフィン(炭素数4~20のα-オレフィン)共重合体、ポリブテン、ポリペンテン等のオレフィンの単独又は共重合体、ポリ環状オレフィン、あるいはこれらのオレフィンの単独または共重合体を不飽和カルボン酸又はそのエステルでグラフト変性したもの等の広義のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル、ポリアミド、共重合ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル系樹脂、ビニルエステル系樹脂、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂があげられる。
【0040】
特に、本発明の樹脂組成物を用いてなる多層構造体を製造し、これを食品の包装材として用いた場合、上記包装材の熱水殺菌処理後に、包装材端部にてEVOH層が溶出することを防止する目的で、他の熱可塑性樹脂(C)としてポリアミド系樹脂を配合することが好ましい。ポリアミド系樹脂は、アミド結合がEVOHのOH基および/またはエステル基との相互作用によりネットワーク構造を形成することが可能であり、これにより、熱水処理時のEVOHの溶出を防止することができる。従って、レトルト食品やボイル食品の包装材として本発明の樹脂組成物を用いる場合には、ポリアミド系樹脂を配合することが好ましい。
【0041】
上記ポリアミド系樹脂としては、公知のものを用いることができる。
具体的には、例えば、ポリカプラミド(ナイロン6)、ポリ-ω-アミノヘプタン酸(ナイロン7)、ポリ-ω-アミノノナン酸(ナイロン9)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリラウリルラクタム(ナイロン12)等のホモポリマーがあげられる。また、共重合ポリアミド系樹脂としては、ポリエチレンジアミンアジパミド(ナイロン26)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリオクタメチレンアジパミド(ナイロン86)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン108)、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ナイロン6/12)、カプロラクタム/ω-アミノノナン酸共重合体(ナイロン6/9)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン6/66)、ラウリルラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン12/66)、エチレンジアミンアジパミド/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン26/66)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン66/610)、エチレンアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン6/66/610)等の脂肪族ポリアミドや、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド、ポリメタキシリレンアジパミド、ヘキサメチレンイソフタルアミド/テレフタルアミド共重合体、ポリ-P-フェニレンテレフタルアミドや、ポリ-P-フェニレン・3-4’ジフェニルエーテルテレフタルアミド等の芳香族ポリアミド、非晶性ポリアミド、これらのポリアミド系樹脂をメチレンベンジルアミン、メタキシレンジアミン等の芳香族アミンで変性したものやメタキシリレンジアンモニウムアジペート等があげられる。あるいは、これらの末端変性ポリアミド系樹脂であってもよく、好ましくは末端変性ポリアミド系樹脂である。
【0042】
上記末端変性ポリアミド系樹脂とは、具体的には例えば、炭素数1~22の炭化水素基で変性された末端変性ポリアミド系樹脂であり、市販のものを用いてもよい。より詳細には、例えば末端変性ポリアミド系樹脂の末端COOH基の数[X]と、末端CONR1R2基(但し、R1は炭素数1~22の炭化水素基、R2は水素原子または炭素数1~22の炭化水素基)の数[Y]が、
100×Y/(X+Y)≧5
を満足する末端変性ポリアミド系樹脂が好ましく用いられる。
【0043】
上記末端変性ポリアミド系樹脂は、通常の未変性ポリアミド系樹脂のカルボキシル基を末端調整剤によりN-置換アミド変性したものであり、変性前のポリアミド系樹脂が含有していたカルボキシル基の総数に対して5%以上変性されたポリアミド系樹脂である。かかる変性量が少なすぎると、ポリアミド系樹脂中のカルボキシル基が多く存在することとなり、かかるカルボキシル基が溶融成形時にEVOHと反応してゲル等を発生し、得られたフィルムの外観が不良となりやすい傾向がある。かかる末端変性ポリアミド系樹脂は、例えば特公平8-19302号公報に記載の方法にて製造することができる。
【0044】
他の熱可塑性樹脂(C)としてポリアミド系樹脂を用いる場合、EVOH/ポリアミド系樹脂の含有比は、重量比にて通常99/1~70/30であり、好ましくは97/3~75/25、特に好ましくは95/5~85/15である。ポリアミド系樹脂の重量比率が大きすぎる場合には、ロングラン成形性およびガスバリア性が低下する傾向がある。ポリアミド系樹脂の重量比率が小さすぎる場合には、熱水処理後のEVOHの溶出抑制効果が低下する傾向がある。
【0045】
<無機フィラー(D)>
本発明の樹脂組成物には、ガスバリア性を向上させる目的で、EVOH(A)(所望により、さらに他の熱可塑性樹脂(C))、金属塩(B)の他、さらに無機フィラー(D)を含有してもよい。
【0046】
上記無機フィラー(D)としては、よりガスバリア性を発揮させる点から、板状無機フィラーであることが好ましく、例えば、含水ケイ酸アルミニウムを主成分とし、粒子が板状となっているカオリン、層状ケイ酸鉱物である雲母やスメクタイト、水酸化マグネシウムとケイ酸塩からなるタルク等の複塩があげられる。これらのうち、カオリンが好ましく用いられる。カオリンの種類としては、特に限定せず、焼成されていても、いなくてもよいが、好ましくは焼成カオリンである。
【0047】
上記無機フィラー(D)の配合により、樹脂組成物のガスバリア性が一層向上する。特に板状無機フィラーの場合は、多層構造をしていることから、フィルム成形の場合には、板状無機フィラーの板状面がフィルムの面方向に配向されやすくなる。こうして、面方向に配向した板状無機フィラーが樹脂組成物層(例えば、フィルム)の酸素遮断に特に寄与することが推測される。
【0048】
上記無機フィラー(D)の含有量は、EVOH(A)に対して、通常1~20重量%であり、好ましくは3~18重量%であり、より好ましくは5~15重量%である。かかる含有量が少なすぎるとガスバリア性向上効果が低下する傾向があり、多すぎると透明性が低下する傾向がある。
【0049】
<酸素吸収剤(E)>
本発明の樹脂組成物には、熱水殺菌処理(レトルト処理)後のガスバリア性を改善する目的で、EVOH(A)、金属塩(B)の他、さらに酸素吸収剤(E)を含有してもよい。
【0050】
上記酸素吸収剤(E)とは、包装される内容物よりも素早く酸素を捕捉する化合物である。具体的には、無機系の酸素吸収剤、有機系の酸素吸収剤、無機触媒(遷移金属系触媒)と有機化合物を組み合わせて用いる複合型酸素吸収剤等があげられる。
【0051】
上記無機系酸素吸収剤としては、金属,金属化合物があげられ、これらと酸素が反応することにより酸素を吸収するものである。上記金属としては、水素よりもイオン化傾向の大きい金属(Fe、Zn、Mg、Al、K、Ca、Ni、Sn等)が好ましく、代表的には鉄である。これらの金属は、粉末状で用いられることが好ましい。鉄粉としては、還元鉄粉、アトマイズ鉄粉、電解鉄粉等、その製法等によらず、従来公知のものを特に限定されることなく何れも使用可能である。また、使用する鉄は、一旦酸化された鉄を還元処理したものであってもよい。また、上記金属化合物としては酸素欠損型金属化合物が好ましい。ここで、酸素欠損型金属化合物としては、酸化セリウム(CeO2)や、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)等があげられ、これらの酸化物が還元処理により結晶格子中から酸素が引き抜かれて酸素欠損状態となり、雰囲気中の酸素と反応することにより酸素吸収能を発揮するものである。このような金属および金属化合物は、反応促進剤としてハロゲン化金属等を含有することも好ましい。
【0052】
上記有機系酸素吸収剤としては、例えば、ヒドロキシ基含有化合物、キノン系化合物、二重結合含有化合物、被酸化性樹脂があげられる。これらに含まれるヒドロキシ基や二重結合に酸素が反応することにより、酸素を吸収することができる。上記有機系酸素吸収剤としては、ポリオクテニレン等のシクロアルケン類の開環重合体や、ブタジエン等の共役ジエン重合体およびその環化物等が好ましい。
【0053】
このような酸素吸収剤(E)の含有量は、EVOH(A)に対して、通常1~30重量%であり、好ましくは3~25重量%であり、より好ましくは5~20重量%である。
【0054】
<その他の添加剤(F)>
本発明の樹脂組成物には、上記各成分のほか、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲内にて(例えば、樹脂組成物全体の5重量%以下にて)、エチレングリコール、グリセリン、ヘキサンジオール等の脂肪族多価アルコール等の可塑剤;高級脂肪酸(例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸等)、金属塩(B)以外の高級脂肪酸金属塩(ステアリン酸などの高級脂肪酸のアルミニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩等)、高級脂肪酸エステル(高級脂肪酸のメチルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、オクチルエステル等)、高級脂肪酸アミド(ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミド等の飽和脂肪族アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等の不飽和脂肪酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド等のビス脂肪酸アミド)、低分子量ポリオレフィン(例えば分子量500~10000程度の低分子量ポリエチレン、又は低分子量ポリプロピレン);フッ化エチレン樹脂等の滑剤;アンチブロッキング剤;酸化防止剤;着色剤;帯電防止剤;抗菌剤;不溶性無機塩(例えば、ハイドロタルサイト等)、金属塩(B)以外の水和物形成性の金属塩;(例えば、コハク酸二ナトリウム、酒石酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カルシウム、クエン酸亜鉛、クエン酸マグネシウム等のカルボン酸塩;硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム等の硫酸塩など)、界面活性剤;共役ポリエン化合物等の公知の添加剤を適宜配合することができる。
【0055】
本発明の樹脂組成物全体におけるベース樹脂はEVOH(A)である。従って、EVOH(A)の量は、樹脂組成物全体に対して通常70重量%以上、好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。かかる量が少なすぎる場合、ガスバリア性が低下する傾向がある。
【0056】
<樹脂組成物の調製方法>
本発明の樹脂組成物の製造方法については特に限定されず、金属塩(B)が樹脂組成物の内部および/または外部表面に存在するようにすれば良い。
【0057】
「金属塩(B)を樹脂組成物の内部に存在させる方法」
金属塩(B)を樹脂組成物の内部に存在させる方法として、具体的には、(ア)(A)、(B)成分を一括で混合した後に溶融混練する方法、(イ)(A)、(B)成分を溶解可能な溶剤中で均一に溶解して混合した後に該溶剤を除去する方法等を挙げることができ、工業上好適には(ア)の方法が用いられ、かかる方法について更に詳細に説明をするが、これに限定されるものではない。
【0058】
上記(ア)中の溶融混練の方法については、その手段としては、例えば、ニーダールーダー、押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサー、プラストミルなどの公知の溶融混練装置を使用して行うことができ、通常は150~300℃(更には180~280℃)で、1分~20分間程度溶融混練することが好ましく、特に単軸又は二軸の押出機を用いることが容易にペレットを得られる点で工業上有利であり、また必要に応じて、ベント吸引装置、ギヤポンプ装置、スクリーン装置等を設けることも好ましい。特に、水分や副生成物(熱分解低分子量物等)を除去するために、押出機に1個以上のベント孔を設けて減圧下に吸引したり、押出機中への酸素の混入を防ぐために、ホッパー内に窒素等の不活性ガスを連続的に供給したりすることにより、熱着色や熱劣化が軽減された品質の優れた樹脂組成物を得ることができる。
【0059】
また、押出機等の溶融混練装置への供給方法供給方法についても特に限定されず、1)(A)、(B)成分をドライブレンドして一括して押出機に供給する方法、2)(A)成分を押出機に供給して溶融させたところに固体状の(B)成分を供給する方法(ソリッドサイドフィード法)、3)(A)成分を押出機に供給して溶融させたところに溶融状態の(B)成分を供給する方法(メルトサイドフィード法)等を挙げることができるが、中でも、1)の方法が装置の簡便さ、ブレンド物のコスト面等で実用的である。
【0060】
上記(ア)、(イ)の方法で得られた樹脂組成物は、原料を溶融混練した後に直接溶融成形品を得ることも可能であるが、工業上の取り扱い性の点から、上記溶融混練後に樹脂組成物製ペレットを作製し、これを溶融成形法に供し、溶融成形品を得ることが好ましい。経済性の点から、押出機を用いて溶融混練し、ストランド状に押出し、これをカットしてペレット化する方法が好ましい。
【0061】
上記ペレットの形状は、例えば、球形、オーバル形、円柱形、立方体形、直方体形等があるが、通常、オーバル形または円柱形であり、その大きさは、後に成形材料として用いる場合の利便性の観点から、オーバル形の場合は径が通常1~6mm、好ましくは2~5mmであり、高さは通常1~6mm、好ましくは2~5mmであり、円柱形の場合は底面の直径が通常1~6mm、好ましくは2~5mmであり、長さは通常1~6mm、好ましくは2~5mmである。
【0062】
上記樹脂組成物またはペレットの含水率は、0.001~5重量%(さらには0.01~2重量%、特には0.1~1重量部)になるようにするのが好ましく、該含水率が低すぎると、ロングラン成形性が低下する傾向にあり、逆に高すぎると、押出成形時時に発泡が発生する虞があり好ましくない。
【0063】
「金属塩(B)を樹脂組成物の外部表面に存在させる方法」
続いて、金属塩(B)を樹脂組成物の外部表面に存在させる方法として、具体的には、(1)含水率0.1~5重量%のEVOH(A)に(B)成分をブレンドする方法、(2)加熱したEVOH(A)に溶融させた(B)成分をブレンドする方法、(3)少量のシリコンオイル等を混ぜたEVOH(A)に(B)成分をブレンドする方法、(4)グリセリン等の液状可塑剤を含ませたEVOH(A)に(B)成分をブレンドする方法、(5)EVOH(A)に少量の溶媒に溶解させた(B)成分をブレンドする方法等を挙げることが出来るが、工業上好適には(1)の方法が採用され、かかる方法について更に具体的に説明するが、これに限定されるものではない。
【0064】
樹脂組成物の表面に(B)成分を付着させるに当たっては、(B)成分の付着性を向上させるために、かかるペレットの含水率を0.1~5重量%(更には0.5~4重量%、特には1~3重量%)に調整しておくことが好ましく、かかる含水率が0.1重量%未満では(B)成分が脱落しやすく付着(添着)分布が不均一となり、逆に5重量%を越えると(B)成分が凝集してこの時も付着(添着)分布が不均一となって好ましくない。
【0065】
尚、ここで言う樹脂組成物ペレットの含水率については、以下の方法により測定・算出されるものである。
[含水率の測定方法]
樹脂組成物ペレットを電子天秤にて秤量(W1:単位g)後、150℃に維持された熱風オーブン型乾燥器に入れ、5時間乾燥させてから、更にデシケーター中で30分間放冷させた後の重量を同様に秤量(W2:単位g)して、以下の(1)式から算出する。
[式1]
含水率(%)={(W1-W2)/W1}×100 ・・・(1)
【0066】
また、ブレンドには、ロッキングミキサー、リボンブレンダー、ラインミキサー等の公知の混合装置を用いて付着させることが出来る。
【0067】
<多層構造体>
本発明の樹脂組成物からなる層(以下、単に「樹脂組成物層」というと、本発明の樹脂組成物からなる層をいう。)は、他の基材と積層し多層構造体とすることで、さらに強度を上げたり、他の機能を付与したりすることができる。
【0068】
上記基材としては、上記他の熱可塑性樹脂(C)からなる層(以下、「熱可塑性樹脂(C)層」という。)が好ましく用いられる。上記基材は必要に応じてそれぞれ複数層設けてもよい。
【0069】
上記他の熱可塑性樹脂(C)としては、上記と同じ樹脂を用いることが可能である。
基材としては、上記他の熱可塑性樹脂(C)のうち、柔軟性や延伸性の点でポリアミド系樹脂が好ましく、疎水性を考慮した場合、比較的疎水性の高い樹脂である、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ環状オレフィン系樹脂およびこれらの不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂が好ましく、より好ましくは、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂であり、特にポリアミド系樹脂、ポリ環状オレフィン系樹脂が好ましく用いられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0070】
上記ポリアミド系樹脂としては、上記と同じものを用いることができる。好ましくは末端変性ポリアミド系樹脂である。
【0071】
本発明の樹脂組成物層の少なくとも少なくとも一方の面に、ポリアミド系樹脂層を有する場合、柔軟性や延伸性に優れた多層構造体が得られる傾向がある。
【0072】
また、樹脂組成物層と他の熱可塑性樹脂(C)層との間に接着性樹脂からなる層(以下、単に「接着性樹脂層」という。)を用いることも好ましい。本発明の樹脂組成物層の少なくとも一方の面に、接着性樹脂層を介して、EVOH(A)以外の熱可塑性樹脂層を有する場合、耐水性が良好な多層構造体が得られる傾向がある。
上記接着性樹脂としては、公知のものを使用でき、基材となる他の熱可塑性樹脂(C)層の種類に応じて適宜選択すればよい。代表的には不飽和カルボン酸またはその無水物をポリオレフィン系樹脂に付加反応やグラフト反応等により化学的に結合させて得られるカルボキシル基を含有する変性ポリオレフィン系重合体をあげることができる。例えば、無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン、無水マレイン酸グラフト変性ポリプロピレン、無水マレイン酸グラフト変性エチレン-プロピレン(ブロックおよびランダム)共重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン-エチルアクリレート共重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン-酢酸ビニル共重合体、無水マレイン酸変性ポリ環状オレフィン系樹脂、無水マレイン酸グラフト変性ポリオレフィン系樹脂等であり、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0073】
上記他の熱可塑性樹脂(C)層、接着性樹脂層には、本発明の趣旨を阻害しない範囲内(例えば、30重量%以下、好ましくは10重量%以下)において、従来公知の可塑剤、フィラー、クレー(モンモリロナイト等)、着色剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、核材、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、ワックス等を含んでいてもよい。
【0074】
多層構造体の層構成は、本発明の樹脂組成物層をα(α1、α2、・・・)、接着性樹脂層をβ(β1、β2、・・・)、他の熱可塑性樹脂(C)層をγ(γ1、γ2、・・・)とするとき、α1/β/α2、γ1/β1/α/β2/γ2、γ1/α/γ2、γ/β/α、α1/β/α2/β/γ、等任意の組み合わせが可能である。
特に、他の熱可塑性樹脂(C)層としてポリアミド系樹脂を用い、ポリアミド系樹脂層をδ(δ1、δ2、・・・)とするとき、ポリアミド系樹脂以外の他の熱可塑性樹脂(C)層をγ(γ1、γ2、・・・)として、α/β/δ、δ1/β/α/δ2、δ/α1/β2/α2、δ1/β1/α/β2/δ2、δ1/α1/β/α2/δ2、δ1/β1/α1/β2/α2/β3/δ2、γ/α/β/δ、δ1/β/α/γ/δ2、δ/α1/β2/α2/γ、δ1/β1/α/γ/β2/δ2、δ1/β1/γ1/α/γ2/β2/δ2、δ1/α1/β/α2/γ/δ2、δ1/β1/α1/γ1/β2/α2/γ2/β3/δ2、等任意の組み合わせが可能である。
【0075】
本発明の樹脂組成物を上記基材と積層させて多層構造体を作製する場合の積層方法は、公知の方法にて行なうことができる。例えば、本発明の樹脂組成物のフィルム、シート等に他の基材を溶融押出ラミネートする方法、逆に他の基材に本発明の樹脂組成物を溶融押出ラミネートする方法、本発明の樹脂組成物と他の基材とを共押出成形する方法、本発明の樹脂組成物からなるフィルム(層)および他の基材(層)を各々作製し、これらを有機チタン化合物、イソシアネート化合物、ポリエステル系化合物、ポリウレタン化合物等の公知の接着剤を用いてドライラミネートする方法、他の基材上に本発明の樹脂組成物の溶液を塗工してから溶媒を除去する方法等があげられる。これらの中でも、コストや環境の観点から考慮して共押出成形する方法が好ましい。
【0076】
上記多層構造体は、ついで必要に応じて(加熱)延伸処理が施される。延伸処理は、一軸延伸、二軸延伸のいずれであってもよく、二軸延伸の場合は同時延伸であっても逐次延伸であってもよい。また、延伸方法としてはロール延伸法、テンター延伸法、チューブラー延伸法、延伸ブロー法、真空圧空成形等のうち延伸倍率の高いものも採用できる。延伸温度は、通常40~170℃、好ましくは60~160℃程度の範囲から選ばれる。延伸温度が低すぎた場合は延伸性が不良となり、高すぎた場合は安定した延伸状態を維持することが困難となる。
【0077】
なお、延伸後に寸法安定性を付与することを目的として、次いで熱固定を行なってもよい。熱固定は周知の手段で実施可能であり、例えば上記延伸した多層構造体(延伸フィルム)を、緊張状態を保ちながら通常80~180℃、好ましくは100~165℃で、通常2~600秒間程度熱処理を行なう。
【0078】
また、本発明の樹脂組成物を用いて得られてなる多層延伸フィルムをシュリンク用フィルムとして用いる場合には、熱収縮性を付与するために、上記の熱固定を行わず、例えば延伸後のフィルムに冷風を当てて冷却固定するなどの処理を行なえばよい。
【0079】
さらに、場合によっては、本発明の多層構造体からカップやトレイ状の多層容器を得ることも可能である。多層容器の作製方法としては、通常絞り成形法が採用され、具体的には真空成形法、圧空成形法、真空圧空成形法、プラグアシスト式真空圧空成形法等があげられる。さらに、多層パリソン(ブロー前の中空管状の予備成形物)からチューブやボトル状の多層容器を得る場合はブロー成形法が採用され、具体的には押出ブロー成形法(双頭式、金型移動式、パリソンシフト式、ロータリー式、アキュムレーター式、水平パリソン式等)、コールドパリソン式ブロー成形法、射出ブロー成形法、二軸延伸ブロー成形法(押出式コールドパリソン二軸延伸ブロー成形法、射出式コールドパリソン二軸延伸ブロー成形法、射出成形インライン式二軸延伸ブロー成形法等)等があげられる。本発明の多層積層体は必要に応じ、熱処理、冷却処理、圧延処理、印刷処理、ドライラミネート処理、溶液または溶融コート処理、製袋加工、深絞り加工、箱加工、チューブ加工、スプリット加工等を行なうことができる。
【0080】
本発明の多層構造体(延伸したものを含む)の厚み、さらには多層構造体を構成する樹脂組成物層、ポリアミド系樹脂層、接着性樹脂層、他の熱可塑性樹脂層の厚みは、層構成、熱可塑性樹脂の種類、ポリアミド系樹脂の種類、接着性樹脂の種類、用途や包装形態、要求される物性等により適宜設定されるものである。なお、下記の数値は、樹脂組成物層、接着性樹脂層、他の熱可塑性樹脂層のうち少なくとも1種の層が2層以上存在する場合には、同種の層の厚みを総計した値である。
【0081】
本発明の多層構造体(延伸したものを含む)の厚みは、通常10~5000μm、好ましくは30~3000μm、特に好ましくは50~2000μmである。多層構造体の総厚みが薄すぎる場合には、ガスバリア性が低下することがある。また、多層構造体の総厚みが厚すぎる場合には、ガスバリア性が過剰性能となり、不必要な原料を使用することとなるため経済的でない傾向がある。そして、樹脂組成物層は、通常1~500μm、好ましくは3~300μm、特に好ましくは5~200μmであり、他の熱可塑性樹脂層は通常5~30000μm、好ましくは10~20000μm、特に好ましくは20~10000μmであり、接着性樹脂層は、通常0.5~250μm、好ましくは1~150μm、特に好ましくは3~100μmである。
【0082】
さらに、多層構造体における樹脂組成物層と他の熱可塑性樹脂層との厚みの比(樹脂組成物層/他の熱可塑性樹脂層)は、各層が複数ある場合は最も厚みの厚い層同士の比にて、通常1/99~50/50、好ましくは5/95~45/55、特に好ましくは10/90~40/60である。また、多層構造体における樹脂組成物層とポリアミド系樹脂層の厚み比(樹脂組成物層/ポリアミド系樹脂層)は、各層が複数ある場合は最も厚みの厚い層同士の比にて、通常10/90~99/1、好ましくは20/80~80/20、特に好ましくは40/60~60/40である。また、多層構造体における樹脂組成物層と接着性樹脂層の厚み比(樹脂組成物層/接着性樹脂層)は、各層が複数ある場合は最も厚みの厚い層同士の比にて、通常10/90~99/1、好ましくは20/80~95/5、特に好ましくは50/50~90/10である。
【0083】
上記のようにして得られたフィルム、延伸フィルムからなる袋およびカップ、トレイ、チューブ、ボトル等からなる容器や蓋材は、一般的な食品の他、マヨネーズ、ドレッシング等の調味料、味噌等の発酵食品、サラダ油等の油脂食品、飲料、化粧品、医薬品等の各種の包装材料容器として有用である。
【0084】
中でも、本発明の樹脂組成物からなる層を有する多層構造体は、溶融成形時の色調悪化が改善され、外観不良の発生、特に像鮮明度の低下が小さくなったものである。これは、多層構造体の、樹脂組成物層/接着性樹脂層およびまたは樹脂組成物層/ポリアミド系樹脂層の積層界面で、外観不良の原因となるような微小な界面荒れが低減されているためと考えられる。これは、一般的な食品、マヨネーズ、ドレッシング等の調味料、味噌等の発酵食品、サラダ油等の油脂食品、スープ、飲料、化粧品、医薬品、洗剤、香粧品、工業薬品、農薬、燃料等各種の容器として有用である。特に、マヨネーズ、ケチャップ、ソース、味噌、わさび、からし、焼肉等のたれ等の半固形状食品・調味料、サラダ油、みりん、清酒、ビール、ワイン、ジュース、紅茶、スポーツドリンク、ミネラルウォーター、牛乳等の液体状飲料・調味料用のボトル状容器やチューブ状容器、フルーツ、ゼリー、プリン、ヨーグルト、マヨネーズ、味噌、加工米、調理済み食品、スープ等の半固形状食品・調味料用のカップ状容器や、生肉、畜肉加工品(ハム、ベーコン、ウインナー等)、米飯、ペットフード用の広口容器等の包装材料として有用である。
【実施例】
【0085】
以下、実施例をあげて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中「部」とあるのは重量基準である。
【0086】
[実施例1]
<樹脂組成物の製造>
EVOH(A)として、EVOH(a1)〔エチレン構造単位の含有量38モル%,ケン化度99.6モル%,MFR4.2g/10分(210℃、荷重2160g)のエチレン-ビニルアルコール共重合体〕ペレット、金属塩(B)として、グルコン酸亜鉛三水和物(b1)をEVOH(a1)100部に対して0.06部用いた。EVOH(a1)ペレット、グルコン酸亜鉛三水和物(b1)、を配合し一括でドライブレンドしたあと、20mmφ二軸押出成形装置(L/D=25)で溶融混練してペレット化することにより本発明の樹脂組成物を調製した。
【0087】
<多層構造体の製造>
上記で調製した樹脂組成物、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)(日本ポリエチレン社製「UF240」、MFR2.1g/10分(190℃、荷重2160g))、接着性樹脂(LyondellBasell社製「PLEXAR PX3236」、MFR2.0g/10分(190℃、荷重2160g))を用い、3種5層多層共押出キャストフィルム製膜装置を用いて、下記条件で多層共押出成形を行い、LLDPE層/接着性樹脂層/EVOH層/接着性樹脂層/LLDPE層の3種5層構造の多層構造体(フィルム)を得た。多層構造体の各層の厚み(μm)は、LLDPE層/接着性樹脂層/EVOH層/接着性樹脂層/LLDPE層=37.5/5/15/5/37.5であった。成形装置のダイ温度は、全て210℃に設定した。
【0088】
(多層共押出成形条件)
・中間層押出機(EVOH):40mmφ単軸押出機(バレル温度:210℃)
・上下層押出機(LLDPE):40mmφ単軸押出機(バレル温度:210℃)
・中上下層押出機(接着性樹脂):32mmφ単軸押出機(バレル温度:210℃)
・ダイ:3種5層フィードブロック型Tダイ(ダイ温度:210℃)
・引取速度:14m/分
・ロール温度:50℃
【0089】
<多層構造体の像鮮明性>
上記で製造した多層構造体の像鮮明性を、JIS K 7374「プラスチック-像鮮明度の求め方」に準拠した像鮮明度測定(光学櫛は0.5mm)により評価した。フィルム試験片は、フィルム機械方向を鉛直方向として測定した。測定器にはスガ試験機社製ICM-1型写像性測定器を用いた。
この像鮮明度は数値が高いほど、透明性が優れている事を意味する。下記の基準に従い評価した結果を表1に示す。
◎:像鮮明度が80%以上である。
○:像鮮明度が70~79%である。
×:像鮮明度が70%未満である。
【0090】
<多層構造体の外観>
上記で製造した多層構造体の外観を、下記評価基準に従い目視で評価した。
◎:外観非常に良い。
○:外観良い。
×:外観悪い(粒状の塊が確認出来る)。
【0091】
[実施例2]
実施例1において、グルコン酸亜鉛三水和物(b1)をEVOH(a1)100部に対して0.1部用いた以外は同様に行ない、樹脂組成物および多層構造体を作製した。得られた多層構造体の像鮮明度と外観について、実施例1と同様に評価した。
【0092】
[実施例3]
実施例1において、グルコン酸亜鉛三水和物(b1)をEVOH(a1)100部に対して0.18部用いた以外は同様に行ない、樹脂組成物および多層構造体を作製した。得られた多層構造体の像鮮明度と外観について、実施例1と同様に評価した。
【0093】
[実施例4]
実施例1において、グルコン酸亜鉛三水和物(b1)をEVOH(a1)100部に対して1部用いた以外は同様に行ない、樹脂組成物および多層構造体を作製した。得られた多層構造体の像鮮明度と外観について、実施例1と同様に評価した。
【0094】
[参考例1]
実施例1において、グルコン酸カルシウム一水和物(b2)をEVOH(a1)100
部に対して0.06部用いた以外は同様に行ない、樹脂組成物および多層構造体を作製し
た。得られた多層構造体の像鮮明度と外観について、実施例1と同様に評価した。
【0095】
[参考例2]
実施例1において、グルコン酸マグネシウム二水和物(b3)をEVOH(a1)10
0部に対して0.06部用いた以外は同様に行ない、樹脂組成物および多層構造体を作製
した。得られた多層構造体の像鮮明度と外観について、実施例1と同様に評価した。
【0096】
[比較例1]
実施例1において、グルコン酸亜鉛三水和物(b1)を配合せず、ステアリン酸をEVOH(a1)100部に対して0.06部用いた以外は同様に行ない、樹脂組成物および多層構造体を作製した。得られた多層構造体の像鮮明度と外観について、実施例1と同様に評価した。
【0097】
[比較例2]
実施例1において、グルコン酸亜鉛三水和物(b1)を配合せず、ステアリン酸カルシウムをEVOH(a1)100部に対して0.06部用いた以外は同様に行ない、樹脂組成物および多層構造体を作製した。得られた多層構造体の像鮮明度と外観について、実施例1と同様に評価した。
【0098】
[比較例3]
実施例1において、グルコン酸亜鉛三水和物(b1)を配合せず、ステアリン酸ナトリウムをEVOH(a1)100部に対して0.06部用いた以外は同様に行ない、樹脂組成物および多層構造体を作製した。得られた多層構造体の像鮮明度と外観について、実施例1と同様に評価した。
【0099】
[比較例4]
実施例1において、グルコン酸亜鉛三水和物(b1)を配合せず、エチレンビスステアリン酸アミドをEVOH(a1)100部に対して0.06部用いた以外は同様に行ない、樹脂組成物および多層構造体を作製した。得られた多層構造体の像鮮明度と外観について、実施例1と同様に評価した。
【0100】
[比較例5]
実施例1において、グルコン酸亜鉛三水和物(b1)を配合せず、クエン酸カルシウム四水和物をEVOH(a1)100部に対して0.06部用いた以外は同様に行ない、樹脂組成物および多層構造体を作製した。得られた多層構造体の像鮮明度と外観について、実施例1と同様に評価した。
【0101】
[比較例6]
実施例1において、グルコン酸亜鉛三水和物(b1)を配合せず、クエン酸亜鉛二水和物をEVOH(a1)100部に対して0.06部用いた以外は同様に行ない、樹脂組成物および多層構造体を作製した。得られた多層構造体の像鮮明度と外観について、実施例1と同様に評価した。
【0102】
[比較例7]
実施例1において、グルコン酸亜鉛三水和物を用いなかった以外は同様に行ない、樹脂組成物および多層構造体を作製した。得られた多層構造体の像鮮明度と外観について、実施例1と同様に評価した。
【0103】
【0104】
上記結果から、EVOH(A)および金属塩(B)を含有する樹脂組成物を使用して製
造した多層構造体の実施例1~4は、多層構造体の像鮮明度が高く、外観が良好であるこ
とがわかる。
【0105】
これに対して、金属塩(B)を含有しない樹脂組成物を使用して製造した多層構造体の比較例1~7は、多層構造体の像鮮明度および/または外観が不十分であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明は、EVOH(A)およびヒドロキシ基を有し、炭素数が2~17の1価カルボン酸金属塩(B)を含有する樹脂組成物であり、この樹脂組成物を用いて得られる多層構造体は、多層構造体の像鮮明度が高く、外観が良好である。このことから、食品の各種包装材料、特にアルコール飲料用容器として有用である。本発明の樹脂組成物からなる多層構造体は、一般的な食品の他、マヨネーズ、ドレッシング等の調味料、味噌等の発酵食品、サラダ油等の油脂食品、飲料、化粧品、医薬品等の各種の包装材料容器の原料として有用である。