(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】一液型エポキシ樹脂組成物、硬化物、及びその用途
(51)【国際特許分類】
C08G 59/50 20060101AFI20221101BHJP
C08G 59/36 20060101ALI20221101BHJP
C08K 5/1515 20060101ALI20221101BHJP
C08L 33/14 20060101ALI20221101BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20221101BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20221101BHJP
C09D 133/14 20060101ALI20221101BHJP
C09D 163/00 20060101ALI20221101BHJP
C09J 5/02 20060101ALI20221101BHJP
C09J 133/14 20060101ALI20221101BHJP
C09J 163/00 20060101ALI20221101BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
C08G59/50
C08G59/36
C08K5/1515
C08L33/14
C08L63/00 C
C09D5/00 D
C09D133/14
C09D163/00
C09J5/02
C09J133/14
C09J163/00
C09K3/10 E
C09K3/10 L
(21)【出願番号】P 2017199412
(22)【出願日】2017-10-13
【審査請求日】2020-08-27
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】太田黒 庸行
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 肇
【審査官】前田 孝泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-034336(JP,A)
【文献】特開2003-342518(JP,A)
【文献】特開2006-096834(JP,A)
【文献】特開2019-099585(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00- 59/72
C08L 1/00-101/16
C09D 1/00-201/10
C09J 1/00-201/10
C09K 3/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項13】
請求項1~10の何れか一つに記載の一液型エポキシ樹脂組成物からなる補修用注入剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保存安定性と接着性や可とう性に優れ、コンクリート等のプライマーや補修用注入剤等に好適に用いられる一液型エポキシ樹脂組成物とその硬化物、用途に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂が接着剤用途、電子材料用途など広範な場面で使用される理由はエポキシ樹脂組成物の硬化物が接着性、機械的強度、耐薬性、電気絶縁性に著しく優れていることによる。最近では省エネルギーの観点から、各種材料発展に伴うマルチマテリアル化で、自動車構造用接着剤などで注目されている。他方、インフラ分野では道路、橋梁等構造物のインフラ構造物の老朽化に伴う補修・補強技術分野での利用が進行している。また、建築・土木分野では近年とくに慢性的な人手不足からくるベテラン作業員などの不足とあいまって、作業性の面からの省工程化、簡便化からエポキシ樹脂硬化性組成物の発展、向上が求められている。
【0003】
従来のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂とアミン化合物を主体とした硬化剤成分とを、使用前に混合する二液型エポキシ樹脂組成物が主であり、上記観点から、これに代わる一液型の硬化性エポキシ樹脂組成物の検討が続けられている。中でも環境中の水分により分解してアミノ化合物を生成するケチミン化合物を潜在性アミン硬化剤として使用する一液型エポキシ樹脂組成物について多数知られている(例えば、特許文献1~2参照)。
【0004】
しかしながら、二液型のエポキシ樹脂組成物からなる接着剤と比較して、配合上の制約等が多く、更に保存安定性と接着性とのバランスの観点から、未だ満足できるものでなく、更なる改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-179766号公報
【文献】特開2004-315784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、保存安定性と接着性や可とう性に優れ、コンクリート等のプライマーや補修用注入剤等に好適に用いられる一液型エポキシ樹脂組成物とその硬化物、及びその用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、エポキシ樹脂とケチミン系硬化剤に、特定のアクリル系共重合体を併用することによって、保存安定性が良好でありながら、環境中の水分によって、硬化反応が速やかの進行し、接着強度等に優れる硬化物、構造体が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明は、エポキシ樹脂(A)と、ケチミン系硬化剤(B)と、グリシジルエーテル基を有するアクリル系共重合体(C)とを含有することを特徴とする一液型エポキシ樹脂組成物、その硬化物、並びにその用途を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、保存安定性に優れ、硬化反応が良好に進行し、コンクリート、モルタル、金属鋼板等との接着性や硬化物の可とう性にも優れる一液型エポキシ樹脂組成物、硬化物、及びその用途等を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の一液型エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂(A)とケチミン系硬化剤(B)とを含有し、更に、各種性能を付与するためにグルシジルエーテル基を有するアクリル系共重合体(C)を必須の成分とすることを特徴とする。
【0011】
前記エポキシ樹脂(A)は、樹脂構造中にエポキシ基を有するものであれば具体構造は特に限定されない。中でも、各種基材への接着性がより良好である観点から一分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂(a1)を用いることが好ましく、組成物の粘度を調整しやすく、有機溶剤等を用いなくても注入、塗装などの作業性が良好である観点から、一分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂(a1)と、単官能性のエポキシ樹脂(a2)とを併用することが好ましい。
【0012】
前記一分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂(a1)としては、室温(25℃)での流動性を有する液状エポキシ樹脂であることが好ましく、工業的入手容易性の観点から、下記一般式(1)で表される2官能性のエポキシ樹脂であることが特に好ましい。
【0013】
【化1】
[式中Xはそれぞれ独立に下記一般式(1-1)~(1-8)
【0014】
【化2】
(式中、R
2はそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基の何れかであり、R
3はそれぞれ独立に炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基の何れかであり、nは繰り返し数を示し0又は1以上の整数である。)
の何れかで表される構造部位である。]
【0015】
前記一般式(1)中のXは、前記一般式(1-1)~(1-8)の何れかで表される構造部位である。樹脂中に複数存在するXは同一の構造部位であっても良いし、それぞれ異なる構造部位であっても良い。中でも、接着性、可とう性により優れるエポキシ樹脂組成物となることから、前記一般式(1-1)又は(1-2)で表される構造部位であることが好ましい。
【0016】
前記エポキシ樹脂(a1)としては、市販のものをそのまま用いても、また各種ビスフェノール、ビフェノール等にエピハロヒドリンを反応させてグルシジルエーテル化したものであってもよい。
【0017】
前記エポキシ樹脂(a1)としては、更に本発明の効果を損なわない範囲において、ジヒドロキシナフタレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン等のその他の2価フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂;1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、4,4-(1-(4-(1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル)フェニル)エチリデン)ビスフェノール等のトリスフェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂;1,1,2,2,-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタン等のテトラキスフェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂;フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールAノボラック、臭素化フェノールノボラック、臭素化ビスフェノールAノボラック等のノボラック類をグリシジル化したノボラック型エポキシ樹脂等;多価フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂、グリセリンやポリエチレングリコール等の多価アルコールをグリシジル化した脂肪族エーテル型エポキシ樹脂;p-オキシ安息香酸、β-オキシナフトエ酸等のヒドロキシカルボン酸をグリシジル化したエーテルエステル型エポキシ樹脂;フタル酸、テレフタル酸のようなポリカルボン酸をグリシジル化したエステル型エポキシ樹脂;4,4-ジアミノジフェニルメタンやm-アミノフェノール等のアミン化合物のグリシジル化物やトリグリシジルイソシアヌレート等のアミン型エポキシ樹脂等のグリシジル型エポキシ樹脂、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等の脂環族エポキサイド等を併用してもよい。
【0018】
前記単官能性のエポキシ樹脂(a2)としては、反応性希釈剤としての効果を有し、主に組成物の粘度の調整、あるいは、エポキシ樹脂(A)のエポキシ当量の調整等のために併用することが好ましい。
【0019】
前記単官能性のエポキシ樹脂(a2)としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエステル、α-オレフィンエポキサイド、アルキルフェニルグリシジルエーテル、アルキルフェノールグリシジルエーテル等が挙げられる。ここでアルキル基は炭素数1~20の直鎖又は分岐状のアルキル基であることが好ましい。
【0020】
これらの中でも、より粘度が低く、組成物の粘度調整が容易である観点から、フェニルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエーテル、アルキルフェニルグリシジルエーテルを用いることが好ましく、各種基材との密着性及び可とう性の観点から、アルキルフェニルグリシジルエーテルを用いることが好ましい。
【0021】
前記単官能性のエポキシ樹脂(a2)としては、前駆体の各種フェノール類、アルコール類をエピハロヒドリンと反応させてグルシジルエーテルとしたものや、各種市販されているものをそのまま使用することができる。
【0022】
前記市販品としては、例えば、三菱ケミカル株式会社のYEDシリーズ、阪本薬品工業株式会社製のモノエポキシタイプとして市販されている特殊エポキシ製品、日油株式会社製のエピオールシリーズ、株式会社ADEKA製 アデカグリシロール EDシリーズ、DIC株式会社製「EPICLON 520」などが挙げられる。
【0023】
前記エポキシ樹脂(A)は、そのエポキシ当量が150~1,500g/eqの範囲であると組成物としての接着性と取扱性の観点から好ましく、特に170~500g/eqの範囲であることが好ましい。
【0024】
エポキシ樹脂(A)中における一分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂(a1)と、単官能性のエポキシ樹脂(a2)との使用割合としては、特に限定されるものではないが、接着性がより良好となる観点から、(a1)/(a2)で表される質量比として、10/90~90/10の範囲であることが好ましい。
【0025】
本発明で用いるケチミン系硬化剤(B)としては、従来、種々の構造を有する、エポキシ樹脂の潜在性硬化剤として使用されるケチミン構造を有する化合物であればよく、特に限定されるものではないが、工業的入手容易性の観点から、分子中の第1級アミノ基が全てカルボニル化合物でブロック化されたポリアミン化合物(b1)であることが好ましく、特に当該ブロック化された第1級アミノ基を1分子中に2個以上有する化合物であることが、硬化物の機械物性や各種基材との密着性に、より優れたものとなる観点から好ましい。
【0026】
前記カルボニル化合物でブロック化された第1級アミノ基は、例えば、水分の存在によって容易に加水分解して遊離の第1級アミノ基を生成するものであり、この第1級アミノ基が、前述のエポキシ樹脂(A)中のエポキシ基と反応することで架橋し、硬化物を与えるものである。
【0027】
前記ポリアミン化合物(b1)は、1分子中に第1級アミノ基を有するポリアミンに対して当量以上のカルボニル基含有化合物を反応させることで容易に得ることができ、実質的に第1級アミノ基を全てブロック化して保護アミノ基としたものである。
【0028】
ここで用いる原料ポリアミンは、脂肪族(脂環式含む)、芳香族のいずれの化合物であってもよく、第1級アミノ基の当量として、500以下、特に100~300の範囲である化合物であることが好ましく、またその分子量としては、300~800の範囲であるものが、取り扱いが良好である観点から好ましいものである。
【0029】
前記ポリアミンの具体例としては、トリメチレンジアミン、エチレンジアミン、ジプロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、ポリオキシエチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、等の脂肪族アミン化合物;
【0030】
3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキシスピロ(5,5)ウンデカンアダクト、N-アミノエチルピペラジン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン等の脂環式及び複素環式アミン化合物;
【0031】
o-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ベンジルメチルアミン、ジメチルベンジルアミン、m-キシレンジアミン、ピリジン、ピコリン、α-メチルベンジルメチルアミン等の芳香族アミン化合物を挙げることができ、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0032】
前記ポリアミンをブロック化するために使用されるカルボニル基含有化合物としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;アセトアルデヒド、ベンズアルデヒドなどのアルデヒド類などを挙げることができ、単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0033】
前記ポリアミンと前記カルボニル基含有化合物との反応は、それ自体既知の方法によって行うことができ、その際、ポリアミン中に存在する実質的にすべての第1級アミノ基が、カルボニル基で保護されるような量的割合及び反応条件で脱水反応を行えばよい。該脱水反応を容易に進行させるためメチルイソブチルケトン、メチルエチルケトンのような水溶性に乏しく且つ立体障害の小さいケトン類をカルボニル基含有化合物として使用することが好ましい。
【0034】
また、市販されているケチミン化合物を本発明の硬化剤(B)としてそのまま用いることもできる。市販品としては、株式会社ADEKA製アデカハードナー「EH-235R-2」やエアープロダクツジャパン株式会社製のアンカミン「2458」「2459」などが挙げられる。
【0035】
本発明で用いるアクリル系共重合体は、その構造中にグルシジルエーテル基を有することを特徴とする。従来、エポキシ樹脂とアクリル系樹脂とは相溶性に乏しいため、これらを混合し組成物としても、貯蔵安定性が確保できない、硬化反応時に分離することが多いなど、併用することによるメリットよりもデメリットの方が高いことが知られている。また、通常の溶液重合で得られるアクリル系共重合体は、多くの溶剤を含むため、完全な溶剤の除去が困難である。そのため、前記特許文献2では、共重合体の合成を一般の溶剤の代わりにイミン系化合物の存在下で行うことで、エポキシ樹脂と相溶させ、かつ最終的に溶剤を含まない一液型エポキシ樹脂組成物を得るための特定の製造方法を採用している。
【0036】
本発明においては、予め完全に溶剤を除去し固体、粉体状としたグルシジルエーテル基を含有するアクリル系共重合体を用いることで、特別な製法を用いなくても、無溶剤でありながら、エポキシ樹脂(A)とアクリル系共重合体(C)とが組成物中で分離することがなく、且つ、エポキシ樹脂(A)とアクリル系共重合体(C)中のグルシジルエーテル基が前記ケチミン系硬化剤(B)と湿気下で硬化反応が進行することで、得られる硬化物における可とう性等も維持できることになり、プライマー、補修材等として好適に用いることができることを見出したものである。
【0037】
このような観点から、本発明における前記エポキシ樹脂(A)と前記アクリル系共重合体(C)との合計100質量部に対し、前記ケチミン系硬化剤(B)は5~80質量部の範囲で用いることが好ましく、また、前記エポキシ樹脂(A)と前記アクリル系共重合体(C)の合計のエポキシ基に対して、20~50当量のアミノ基となる割合で、前記ケチミン系硬化剤(B)を使用することが好ましい。
【0038】
前記アクリル系共重合体(C)としては、固体、微粒子あるいは微粉末状で、且つ、その構造中にグリシジルエーテル基が存在すればよく、それ以外には何ら限定されるものではない。
【0039】
前記アクリル系共重合体(C)中におけるグリシジルエーテル基の含有量としては、当該共重合体(C)のエポキシ当量が200~1000g/eqの範囲であることが、前記した相溶性の観点及び組成物の密着性が良好になる点から、より、好ましい。
【0040】
また、前記アクリル系共重合体(C)の重量平均分子量としては、3,000~25,000の範囲であることが組成物の粘度調整が容易であることや、保存安定性の観点から好ましいものである。またそのガラス転移点としては、40~75℃の範囲であることが、固体、粉体状での貯蔵、安定性が向上すること、エポキシ樹脂組成物の調製が容易である観点から好ましい。
【0041】
尚、本発明において、重量平均分子量(Mw)は下記条件のゲルパーミアーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される値である。
【0042】
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC-8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度4mg/mLのテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:東ソー株式会社製 単分散ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0043】
前記アクリル系共重合体(C)は市販されているものをそのまま使用してもよく、あるいは、各種アクリル系単量体と、これと共重合可能なグリシジルエーテル基含有化合物とを共重合させて得られる樹脂であっても良い。形状としては、組成物の調整が容易である観点より、微粒子あるいは微粉末状であることが好ましい。溶液あるいはエマルジョンの状態で購入した場合は、溶剤を留去してから組成物を調製することが好ましい。
【0044】
前記グリシジルエーテル基含有化合物としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、β-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、等の(メタ)アクリル酸のグリシジルエステルやメチルグリシジルエステル、アリルアルコールのグリシジルエーテルやメチルグリシジルエーテル、アリルアルコールのグリシジルエーテルやメチルグリシジルエーテル、N-グリシジルアクリル酸アミド、ビニルスルホン酸グリシジル等を挙げることができる。これらの中でも工業的入手容易性、及びその他のアクリル系単量体との共重合が容易である点、及び得られる共重合体におけるエポキシ当量の調整が容易である観点より、グリシジル(メタ)アクリレート(c1)を用いたものであることが好ましい。
【0045】
なお、本発明において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸を一方あるいは混合物を、(メタ)アクリレートはアクリレート又はメタクリレートを一方あるいは混合物を意味し、アクリル系共重合体は、アクリル基、メタクリル基を利用して重合した重合部分を含む共重合体を意味するものである。
【0046】
本発明で用いるアクリル系共重合体を製造する際には、前記の様に各種アクリル系単量体と前述のグリシジルエーテル基含有化合物とを原料として、種々の公知の方法で共重合させればよく、特に限定されるものではない。
【0047】
前記アクリル系単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、n-トリデシル(メタ)アクリレート、n-テトラデシル(メタ)アクリレート等のアルキル基を有する(メタ)アクリル系単量体、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル系単量体、(メタ)アクリル酸、カルボキシルエチル(メタ)アクリレート、カルボキシルペンチル(メタ)アクリレート等のカルボキシル基を有する(メタ)アクリル系単量体、その他シアノ基含有単量体、ビニルエステル単量体、芳香族ビニル単量体、アミド基含有単量体、イミド基含有単量体、アミノ基含有単量体、N-アクリロイルモルホリン、ビニルエーテル単量体、アルキレンオキシド基含有反応性単量体などが挙げられる。
【0048】
前記シアノ基含有単量体としては、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルが挙げられる。
【0049】
前記ビニルエステル単量体としては、たとえば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニルなどが挙げられる。
【0050】
前記芳香族ビニル単量体としては、たとえば、スチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、α-メチルスチレン、その他の置換スチレンなどが挙げられる。
【0051】
前記アミド基含有単量体としては、たとえば、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、N-ビニルピロリドン、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N,N-ジエチルメタクリルアミド、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドなどが挙げられる。
【0052】
前記イミド基含有単量体としては、たとえば、シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、イタコンイミドなどが挙げられる。
【0053】
前記アミノ基含有単量体としては、たとえば、アミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0054】
前記ビニルエーテル単量体としては、たとえば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテルなどが挙げられる。
【0055】
前記アルキレンオキシド基含有反応性単量体としては、たとえば、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-ポリブチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール-ポリブチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどがあげられる。これらの単量体は、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0056】
これらの中でも、貯蔵安定性に優れることから、メタクリル酸メチル及びスチレンが好ましく、さらに得られる硬化物の耐候性などに優れることから、単量体成分中のスチレンの質量比率が1~23質量%の範囲であることがより好ましい。
【0057】
本発明で用いるアクリル系共重合体(C)の原料単量体中における前記、グルシジル(メタ)アクリレート(c1)の使用割合は、目的とするエポキシ当量となるように設計すればよいが、例えば、単量体100質量部中、グルシジル(メタ)アクリレート(c1)を5~60質量部で用いることが、反応が良好である観点、硬化物の接着性の観点から好ましい。
【0058】
前記アクリル系共重合体(C)の製造方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、ラジカル重合法、カチオン重合法、アニオン重合法等の重合機構に基づき、溶液重合法、塊状重合法、エマルジョン重合法等により製造できるが、特にラジカル重合法が簡便であり、工業的に好ましい。例えば、単量体混合物を有機溶媒中、汎用のラジカル重合開始剤を添加し、重合させることにより製造できる。用いる単量体の重合性に応じ、反応容器に単量体類と開始剤とを滴下しながら重合する滴下重合法なども、均一な組成の共重合体を得るために有効である。また、得られる共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体などいずれでもよい。
【0059】
前記重合開始剤としては、種々のものを使用することができ、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ジアシル等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソ酪酸ジメチル、フェニルアゾトリフェニルメタン等のアゾ化合物、Mn(acac)3等の金属キレート化合物、リビングラジカル重合を引き起こす遷移金属触媒等が挙げられる。さらに必要に応じて、ラウリルメルカプタン、2-メルカプトエタノール、エチルチオグリコール酸、オクチルチオグリコール酸等の連鎖移動剤や、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のカップリング基を有するチオール化合物を連鎖移動剤等の添加剤として用いることができる。
【0060】
重合は、溶剤の存在下又は非存在下のいずれでも行うことができるが、作業性の点から溶剤存在下で行うことが好ましい。溶剤としては、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、iso-ブタノール、tert-ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等のエステル類、2-オキシプロピオン酸メチル、2-オキシプロピオン酸エチル、2-オキシプロピオン酸プロピル、2-オキシプロピオン酸ブチル、2-メトキシプロピオン酸メチル、2-メトキシプロピオン酸エチル、2-メトキシプロピオン酸プロピル、2-メトキシプロピオン酸ブチル等のモノカルボン酸エステル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン等の極性溶剤、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール、エチルセロソルブアセテート等のエーテル類、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコール類及びそのエステル類、1,1,1-トリクロルエタン、クロロホルム等のハロゲン系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族類、更にパーフルオロオクタン、パーフルオロトリ-n-ブチルアミン等のフッ素化イナートリキッド類等が挙げられる。これらは、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0061】
本発明において、アクリル系共重合体(C)の使用割合は特に限定されるものではないが、得られる組成物の保存安定性、及び可とう性と接着性とのバランスにより優れる点から、(A)/(C)で表される質量比で30/70~98/2の範囲であることが好ましく、60/40~95/5の範囲であることがより好ましい。
【0062】
また、本発明においては、より保存安定性に優れる組成物とするために、脱水剤(D)を含有させることが好ましい。
【0063】
前記脱水剤(D)としては、公知のものを種々使用することができ、粉末状で多孔性に富んだ金属酸化物又は炭化物質;例えば、合成シリカ、活性アルミナ、ゼオライト、活性炭、CaSO4、CaSO4・1/2H2O、CaOなどの組成を有するカルシウム化合物類;例えば、焼き石膏、可溶性石膏、生石灰など、金属アルコキシド類;例えば、アルミニウムイソプロピレート、アルミニウム sec-ブチレート、テトライソプロピルチタネート、テトラn-ブチルチタネート、ジルコニウム2-プロピレート、ジルコニウムn-ブチレート、エチルシリケート、ビニルトリメトキシシランなど、有機アルコキシ化合物類;例えば、オルソギ酸メチル、オルソギ酸エチル、オルソ酢酸メチル、オルソ酢酸エチル、ジメトキシプロパンなど、単官能イソシアネート類;例えば、アディティブTI(住友バイエルウレタン(株)製、商品名)などが挙げられ、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0064】
これらの中でも、組成物中における脱水効果が良好である観点及び硬化反応を阻害せず、且つ硬化物における透明性等にも問題を与えにくい観点から、オルソギ酸メチル、オルソギ酸エチル、オルソ酢酸メチル、オルソ酢酸エチル等のオルトエステルを用いることが好ましい。
【0065】
前記脱水剤(D)の使用割合としては特に限定されるものではなく、組成物中に含まれる水分量及び脱水剤の吸収、吸着能又は水との反応性によって種々選択されるものであるが、保存安定性及び硬化物の性能バランスの点から、一般的には組成物の質量を基準にして、1~40質量%、好ましくは5~30質量%の範囲内である。
【0066】
本発明の一液型エポキシ樹脂組成物は、その用途として特に限定されるものではないが、後述するような各種プライマー、補修材等に好適に用いることができる観点より、前記エポキシ樹脂(A)と、前記ケチミン系硬化剤(B)と、前記グリシジルエーテル基を有するアクリル系共重合体(C)と前記脱水剤(D)との混合粘度が、100~2,000mPa・sの範囲であることが好ましく、300~1,000mPa・sの範囲であることがより好ましい。
【0067】
本発明の一液型エポキシ樹脂組成物は、この他、有機溶剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、シリコン系添加剤、フッ素系添加剤、難燃剤、可塑剤、シランカップリング剤、有機微粒子、無機フィラー、レオロジーコントロール剤、脱泡剤、防曇剤、着色剤等を含有していても良い。これら各種成分は所望の性能に応じて任意の量を添加してよい。
【0068】
前記有機微粒子は、例えば、ポリメタクリル酸メチル微粒子、ポリカーボネート微粒子、ポリスチレン微粒子、ポリアクリルスチレン微粒子、シリコーン微粒子、ガラス微粒子、アクリル微粒子、ベンゾグアナミン系樹脂微粒子、メラミン系樹脂微粒子、ポリオレフィン系樹脂微粒子、ポリエステル系樹脂微粒子、ポリアミド樹脂微粒子、ポリイミド系樹脂微粒子、ポリフッ化エチレン樹脂微粒子、ポリエチレン樹脂微粒子等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で使用しても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0069】
前記無機フィラーは、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、チタン酸バリウム、三酸化アンチモン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、セリサイト、ゼオライト、マイカ、雲母、タルク、アタパルジャイト、フェライト等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。これらの無機フィラーは平均粒子径が0.1~100μmの範囲であるものが好ましい。
【0070】
可塑剤としては、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP);アジピン酸ジオクチル、コハク酸イソデシル;ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル;オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル;リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル;アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル等を用いることができる。
【0071】
シランカップリング剤としては、トリメトキシビニルシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランが、特に湿潤面への接着性を向上させる効果に優れ、さらに汎用化合物であることから好適に用いられる。
【0072】
その他、各種添加剤として、老化防止剤としては、ヒンダードフェノール系化合物やヒンダードアミン系化合物などが挙げられる。酸化防止剤としては、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)などが挙げられる。難燃剤としては、クロロアルキルホスフェート、ジメチル・メチルホスホネート、臭素・リン化合物、アンモニウムポリホスフェート、ネオペンチルブロマイドーポリエーテル、臭素化ポリエーテルなどが挙げられる。接着性付与剤としては、テルペン樹脂、フェノール樹脂、テルペン-フェノール樹脂、ロジン樹脂、キシレン樹脂などが挙げられる。上記各成分は適宜に組合せて併用してもよい。
【0073】
本発明の一液型エポキシ樹脂組成物は、前記エポキシ樹脂(A)、ケチミン系硬化剤(B)、アクリル系共重合体(C)、及び前記各種の任意成分を、好ましくは減圧下あるいは乾燥した窒素などの不活性ガス雰囲気下で、プラネタリーミキサー、ポットミル、ボールミル、ビーズミル、ロールミル、ホモジナイザー、スーパーミル、ホモディスパー、万能ミキサー、バンバリーミキサー、ニーダー等を用いて均一に混合することにより調製することができる。得られた組成物は、密閉容器中で貯蔵され、使用時に空気中の湿気により常温で硬化物を得ることができる。
【0074】
本発明の一液型エポキシ樹脂組成物の用途は特に限定されず、塗料、コーティング剤、成形材料、絶縁材料、封止剤、シール剤、繊維の結束剤など様々な用途に用いることができる。中でも、湿気硬化が可能であり、各種基材に対する接着性に優れる特徴を生かし、自動車、電車、土木建築、エレクトロニクス、航空機、宇宙産業分野の構造部材のプライマーや接着剤、あるいは補修用の注入剤として好適に用いることができる。接着剤として用いた場合は、例えば、金属-非金属間のような異素材の接着に用いた場合にも、温度環境の変化に影響されず高い接着性を維持することができ、剥がれ等が生じ難い。そのため、構造部材用途の他、一般事務用、炭素繊維用などの接着剤としても使用できる。
【0075】
本発明の一液型エポキシ樹脂組成物を使用した場合の実際の硬化反応は、空気中の水分が硬化剤(B)中のケチミン基と反応することにより発生したアミノ基由来の活性水素がエポキシ樹脂(A)及びアクリル系共重合体(C)と反応することにより進行する。即ち、硬化反応は空気と接触している表面からしか進行しないため、体積に対して空気との接触面積の割合が小さい場合は、硬化速度は遅くなりやすい。逆に、体積に対する表面積の割合を大きくすると、硬化速度は大幅に大きくなり実用的なレベルとなる。従って、可使時間が、従来の二液型の数十分に比べて数十倍~数百倍の長さになり、未使用の一液型エポキシ樹脂組成物を繰り返し使用する事が可能であるとともに、施工時の時間的・量的な制約が大幅に軽減される。本発明の一液型エポキシ樹脂組成物の硬化温度は通常-10℃以上であり、好ましくは-5~100℃であり、特に好ましくは-5~40℃である。湿度条件は好ましくは20~100%R.H.であり、特に好ましくは20~80%R.H.である。硬化時間は数分~10日程度である。
【0076】
本発明の一液型エポキシ樹脂組成物を使用した施工方法の工法操作については常法に従って実施することができる。例えば、各種被着体に対するプライマー、塗り床材、防塵塗料等として使用する場合、これらの塗布面に、膜厚あるいは塗布面の形状により、流しのべ工法、モルタル工法、ライニング工法、コーティング工法のいずれかにより施工することが可能であるが、本発明の一液型エポキシ樹脂組成物の硬化形態から、流しのべ工法あるいはコーティング工法が好ましい。コーティング工法の塗装方法としては、刷毛塗り、スプレー塗装、各種コーター塗装等の一般的な方法を用いることができる。本発明の一液型エポキシ樹脂組成物の塗布量は、特に制限されるものではないが、例えばプライマー塗りでは10~300μm、ベースコート塗り・上塗りでは50~500μmであることが好ましく、数回に分けて重ね塗りすることが可能である。また、本発明の一液型エポキシ樹脂組成物を塗布した上に塗布する塗料は、特に制限なく通常の上塗り塗料が使用でき、例えば、アルキド樹脂系、エポキシ樹脂系、塩化ゴム系、シリコンアルキド樹脂系、シリコンアクリル樹脂系、フッ素樹脂系等の塗料が使用できる。
【実施例】
【0077】
以下に、実施例、参考例および比較例をもって本発明をより詳しく説明する。
【0078】
なお、アクリル系共重合体のエポキシ当量、ガラス転移温度は、下記の方法で測定したものである。重量平均分子量は明細書本文に記載した方法で測定した。
【0079】
エポキシ当量の測定方法
塩酸-ピリジン法により測定した。樹脂に、塩酸-ピリジン溶液25mlを加え、130℃で1時間、加熱溶解した後、フェノールフタレインを指示薬として0.1N-水酸化カリウムアルコール溶液で滴定した。消費した0.1N-水酸化カリウムアルコール溶液の量によってエポキシ当量を算出した。
【0080】
ガラス転移温度の測定方法
DSC法(示差走査熱量測定法)により求めた。
測定装置:示差走査熱量計(TA INSTRUMENTS株式会社製「DSC Q-100」)
雰囲気条件:窒素雰囲気下
温度範囲:-50~150℃
昇温速度:5℃/分
【0081】
合成例1:アクリル系共重合体(C-1)の合成
攪拌機、温度計、冷却管及び窒素導入管を備えた反応容器に、キシレン470質量部を仕込み、窒素雰囲気下に135℃にまで昇温した。そこへ、スチレン(以下、「St」と略記する。)25質量部、メチルメタクリレート(以下、「MMA」と略記する。)42質量部、2-エチルヘキシルメタクリレート(以下、「2EHMA」と略記する。)3質量部、グリシジルメタクリレート(以下、「GMA」と略記する。)30質量部およびtert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(以下、「P-O」と略記する。)5質量部とからなる混合物を6時間かけて滴下した。滴下終了後も同温度にて10時間保持し、重合反応を行った後、170℃で20mmHgの減圧下に溶剤をのぞき、エポキシ当量500、重量平均分子量7,000、ガラス転移温度67℃なる固形アクリル樹脂を得た。以下、これをアクリル系共重合体(C-1)と略記する。
【0082】
合成例2:アクリル系共重合体(C-2)の合成
単量体及び重合開始剤の組成を、St20質量部、MMA37質量部、2EHMA13質量部、GMA30質量部、およびP-O 7質量部に変更した以外は合成例1と同様に操作することにより、重量平均分子量7,000、ガラス転移温度56℃なる固形アクリル樹脂を得た。以下、これをアクリル系共重合体(C-2)と略記する。
【0083】
合成例3:アクリル系共重合体(C-3)の合成
単量体及び重合開始剤の組成を、St3質量部、MMA74質量部、2EHMA3質量部、GMA20質量部およびP-O 7質量部に変更した以外は合成例1と同様に操作することにより、エポキシ当量800、重量平均分子量4,000、ガラス転移温度59℃なる固形アクリル樹脂を得た。以下、これをアクリル系共重合体(C-3)と略記する。
【0084】
合成例4:アクリル系共重合体(C-4)の合成
単量体及び重合開始剤の組成を、St15質量部、MMA25質量部、2EHMA20質量部、GMA40質量部およびP-O 3質量部に変更した以外は合成例1と同様に操作することにより、エポキシ当量400、重量平均分子量10,000、ガラス転移温度61℃なる固形アクリル樹脂を得た。以下、これをアクリル系共重合体(C-4)と略記する。
【0085】
合成例5:アクリル系共重合体(C-5)の合成
単量体及び重合開始剤の組成を、St20質量部、MMA37質量部、イソブチルアクリレート(以下、「IBA」と略記する。)13質量部、GMA30質量部およびP-O 5質量部に変更した以外は合成例1と同様に操作することにより、エポキシ当量500、重量平均分子量7,000、ガラス転移温度49℃なる固形アクリル樹脂を得た。以下、これをアクリル系共重合体(C-5)と略記する。
【0086】
合成例6:アクリル系共重合体(C-6)の合成
単量体及び重合開始剤の組成を、St20質量部、MMA43質量部、n-ブチルメタクリレート(以下、「BMA」と略記する。)17質量部、GMA20質量部およびP-O 5質量部に変更した以外は合成例1と同様に操作することにより、エポキシ当量800、重量平均分子量7,000、ガラス転移温度68℃なる固形アクリル樹脂を得た。以下、これをアクリル系共重合体(C-6)と略記する。
【0087】
比較合成例1:アクリル系共重合体(C-7)の合成
単量体及び重合開始剤の組成を、St32質量部、MMA43質量部、n-ブチルメタクリレート25質量部、およびP-O 5質量部に変更した以外は合成例1と同様に操作することにより、重量平均分子量7,000、ガラス転移温度78℃なるグリシジルエーテル基を有しない固形アクリル樹脂を得た。以下、これをアクリル系共重合体(C-7)と略記する。
【0088】
参考例1:一液型エポキシ樹脂組成物(1)の調製
合成例1で得られたアクリル系共重合体(C-1)15質量部とフェニルグリシジルエーテル(DIC株式会社製EPICLON 520)15質量部を混合均一とした後、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC株式会社製 EPICLON 850)と混合した。さらにケチミン系硬化剤(Air Products社製 Ancamine 2459)20質量部、およびオルソ蟻酸トリメチル(日宝化学株式会社製、OFM)5質量部を加え、自転公転攪拌機で均一に混合することで粘度 約500mPa・sの一液型エポキシ樹脂組成物(1)を得た。
【0089】
参考例2~4、6及び実施例5:一液型エポキシ樹脂組成物(2)~(6)の調製
表1に示す配合量比に従って、参考例1の要領で混合操作することにより、均一な一液型エポキシ樹脂組成物(2)~(6)を得た。
【0090】
比較例1~2:一液型エポキシ樹脂組成物(7)~(8)の調製
表1に示す配合量比に従って、参考例1の要領で混合操作することにより、均一な一液型エポキシ樹脂組成物(7)~(8)を得た。
【0091】
実施例、参考例及び比較例で得られた組成物を用いて、下記手法により、評価を実施した。結果を表1に示す。
【0092】
粘度測定
東機産業株式会社 製 E型粘度計TVE-25Hで、25℃での粘度を測定した。
【0093】
保存安定性評価方法
表1に従って調製した一液型エポキシ樹脂組成物をアルミ内蓋付ガラス瓶に空隙率10%以下で充填、密閉し、25℃環境下で1ヶ月放置したのち、25℃での外観、粘度上昇を確認した。初期外観からの変化の有無、初期粘度から2倍変化を目処に優劣を判断した。
【0094】
T字剥離強度の評価サンプルの作製
組成物を厚み0.5mm、幅25mm、長さ200mmのアルミ上に、シリンジを使用して接着有効長さ150mmとなるように塗布した。接着剤上に平均粒径200μmのガラスビーズをまぶし、同形のアルミ板を貼合した。四方をクリップで固定し、25℃、65%RH環境で1週間放置し硬化したものを評価サンプルとした。
株式会社 島津製作所 製 オートグラフAG-Is 速度 100mm/min.
【0095】
引張り剪断強度、破断伸度の評価サンプルの作製
アルミ板を厚み0.5mm、幅25mm、長さ100mmとして、接着有効長さを端部から10mmとした以外は、T字剥離強度の評価サンプルと同様に作成、硬化した。
株式会社 島津製作所 製 オートグラフAG-X plus 引張り速度 2mm/min.
【0096】