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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】圧力供給装置
(51)【国際特許分類】
   F04B 41/02 20060101AFI20221101BHJP
【FI】
F04B41/02 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017241370
(22)【出願日】2017-12-18
(65)【公開番号】P2019109100
(43)【公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-11-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】石澤 直也
(72)【発明者】
【氏名】上野 太郎
(72)【発明者】
【氏名】田辺 正章
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開昭64-080369(JP,A)
【文献】特許第3936961(JP,B1)
【文献】特開2005-315212(JP,A)
【文献】特開昭60-027791(JP,A)
【文献】特表2006-504974(JP,A)
【文献】特開平04-323016(JP,A)
【文献】特開2013-044720(JP,A)
【文献】特開平01-244184(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 35/00
F04B 37/16
F04B 41/00-41/02
G01N 35/08
G01N 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体デバイスに圧力を供給する圧力供給装置であって、
正圧及び負圧を発生する圧力発生部と、
前記圧力発生部の端部に接続された配管から分岐した配管系と、
分岐した前記配管系の一方と接続し前記圧力発生部で発生した前記正圧を蓄圧する第1蓄圧部と、
分岐した前記配管系の他方と接続し前記圧力発生部で発生した前記負圧を蓄圧する第2蓄圧部と、
前記第1蓄圧部に蓄圧された前記正圧を前記流体デバイスに供給する第1供給系と、
前記第2蓄圧部に蓄圧された前記負圧を前記流体デバイスに供給する第2供給系と、
前記圧力発生部で発生した前記正圧および前記負圧の供給と、前記第1蓄圧部に蓄圧された前記正圧および前記第2蓄圧部に蓄圧された前記負圧の供給とを互いに独立して制御する制御部と、
を備え
前記圧力発生部は、シリンジに対してピストンが相対移動する方向に応じて、前記正圧又は前記負圧を発生し、
前記第1蓄圧部と前記第2蓄圧部との少なくとも一方は、蓄圧された圧力を検出する検出部を備え、
前記制御部は、前記検出部の検出結果に応じて前記ピストンの相対移動量と、相対移動方向とを制御する、圧力供給装置。
【請求項2】
前記第1供給系は、
前記第1蓄圧部よりも前記圧力発生部側に配置され、前記正圧が伝達される方向を、前記圧力発生部から前記第1蓄圧部へ向かう方向のみに規制する第1バルブと、
前記第1蓄圧部よりも前記圧力発生部とは逆側に配置され、前記制御部により開閉が制御される第2バルブとを有し、
前記第2供給系は、
前記第2蓄圧部よりも前記圧力発生部側に配置され、前記負圧が伝達される方向を、前記第2蓄圧部から前記圧力発生部へ向かう方向のみに規制する第3バルブと、
前記第2蓄圧部よりも前記圧力発生部とは逆側に配置され、前記制御部により開閉が制御される第4バルブとを有する
請求項に記載の圧力供給装置。
【請求項3】
前記第1バルブおよび前記第3バルブよりも前記圧力発生部側に配置され、前記配管系と接続する前記第1供給系および前記第2供給系を大気開放する開放系と、
前記制御部により前記開放系を開閉する第5バルブと、を備える
請求項記載の圧力供給装置。
【請求項4】
前記第1~第5バルブは、電磁弁を有する
請求項記載の圧力供給装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1蓄圧部に前記正圧を蓄圧する際に、前記第2バルブと前記第5バルブを予め閉じ、前記第2蓄圧部に前記負圧を蓄圧する際に、前記第4バルブと前記第5バルブを予め閉じる
請求項3または4に記載の圧力供給装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1蓄圧部に前記正圧を蓄圧した後および前記第2蓄圧部に前記負圧を蓄圧した後に、前記第5バルブを開いて前記第1供給系および前記第2供給系を大気開放する
請求項記載の圧力供給装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記第1蓄圧部に蓄圧された前記正圧または前記第2蓄圧部に蓄圧された前記負圧の少なくとも一方で生じた圧力の変化分を、前記圧力発生部で生じさせ、前記第1蓄圧部または前記第2蓄圧部に供給する
請求項1から6のいずれか一項に記載の圧力供給装置。
【請求項8】
前記検出部が所定値を検知した場合に、前記流体デバイスが前記正圧または前記負圧を消費する圧力消費スケジュールに基づき次の蓄圧に要する時間を算出する算出部を更に備え、
前記制御部は、前記算出部の算出結果に応じて前記ピストンを移動可能な範囲の端部に移動させる
請求項1から7のいずれか一項に記載の圧力供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、体外診断分野における試験の高速化、高効率化、および集積化、又は、検査機器の超小型化を目指したμ-TAS(Micro-Total Analysis Systems)の開発などが注目を浴びており、世界的に活発な研究が進められている。
【0003】
μ-TASは、少量の試料で測定、分析が可能なこと、持ち運びが可能となること、低コストで使い捨て可能なこと等、従来の検査機器に比べて優れている。
更に、高価な試薬を使用する場合や少量多検体を検査する場合において、有用性が高い方法として注目されている。
【0004】
μ-TASに用いられるポンプとしては、小型化を図るために、例えば、ダイアフラム式のエアーポンプが用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-163975号公報
【発明の概要】
【0006】
第1の実施態様に従えば、正圧及び負圧を発生する圧力発生部と、前記圧力発生部で発生した前記正圧を供給する第1供給系に設けられ前記正圧を畜圧する第1畜圧部と、前記圧力発生部で発生した前記負圧を供給する第2供給系に設けられ前記負圧を畜圧する第2畜圧部と、前記第1畜圧部に畜圧された正圧および前記圧力発生部で発生した正圧の供給と、前記第2畜圧部に畜圧された負圧および前記圧力発生部で発生した負圧の供給とを互いに独立して制御する制御部と、を備える圧力供給装置が提供される。
【0007】
第2の実施態様に従えば、流体が流動する流路と、前記流路を開閉するバルブと、前記流路内の流体を吸引する吸引部とを有し、前記バルブが正圧で駆動され、前記吸引部が負圧で駆動される流体デバイスと、第1の実施態様の圧力供給装置と、を備えるシステムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る圧力供給装置110の概略的な構成図。
図2】本実施形態に係る圧力供給装置110における制御ブロック図。
図3】本実施形態に係るシステムVSを模式的に示した平面図。
図4】本実施形態に係るシステムVSを模式的に示した平面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態に係る圧力供給装置およびシステムの実施の形態を、図1ないし図4を参照して説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0010】
[圧力供給装置]
まず、圧力供給装置について説明する。
図1は、圧力供給装置110の概略的な構成図である。
圧力供給装置110は、圧力発生部120、第1供給系130、第2供給系140、大気開放系(開放系)150および制御部CONTを備えている。
【0011】
圧力供給装置110は、流体を媒体として正圧供給対象PPに正圧を供給し、負圧供給対象NPに負圧を供給する。圧力供給装置110は、気体(例えばエアー)を媒体としている。
【0012】
圧力発生部120は、シリンジ111、ピストン112、回転駆動源113を備えている。シリンジ111は、周壁部111aと端壁部111bとを有している。周壁部111aは、ピストン112の移動方向(図1中、左右方向)に沿った軸線方向に延びる円筒形状に形成されている。周壁部111aは、回転駆動源113と対向する軸線方向の一端側が開口し、図1中、右側の軸線方向の他端側が端壁部111bによって閉塞されている。
【0013】
ピストン112は、シリンジ111の内周面に軸線方向に移動可能に嵌合している。ピストン112は、軸線周りの周方向に環状に配置されたシール部材114を介してシリンジ111の内周面に嵌合している。シール部材114としては、一例として、Xリング、Vリング、Oリング等を用いることができる。
【0014】
ピストン112の軸線方向の一端側には、円筒部112a、円板部112bが一体的に設けられている。円筒部112aは、シリンジ111と同軸の円筒形状である。円筒部112aの軸線方向の一端側は、円板部112bで閉塞されている。円板部112bの中心には、雌ネジ部115が形成されている。
【0015】
回転駆動源113は、一例として、回転モータである。回転駆動源113は、一例として、電動モータである。回転駆動源113は、制御部CONTの制御下で軸線周り方向の両側に回転可能である。回転駆動源113には、送りネジ116が一体的に回転可能に設けられている。送りネジ116は、軸線方向に延びる軸状に形成されている。送りネジ116は、シリンジ111と同軸に配置されている。送りネジ116の外周面には、雌ネジ部115と螺合する雄ネジが形成されている。送りネジ116の外径は、円筒部112aの内径よりも小さい。送りネジ116は、雌ネジ部115と螺合した状態で軸線周りに回転することにより、円筒部112aの内部空間を軸線方向に移動可能である。
【0016】
シリンジ111の端壁部111bには、配管系160が接続されている。配管系160は、配管161、162、163、164を有している。なお、以下の説明においては、配管系160において、圧力発生部120(シリンジ111)に近い側を上流側、圧力発生部120と遠い側を下流側として適宜説明する。
【0017】
配管161は、一端がシリンジ111の端壁部111bに接続され、他端が配管162の中途に接続されている。配管162は、一端側が大気開放系150に接続され、他端が配管164に接続されている。配管162は、中途において配管163に接続されている。配管163は、一端が配管162に接続され、他端が正圧供給対象PPに接続されている。配管163の中途には、上流側から逆止弁(第1バルブ)131、第1畜圧部132、開閉弁(第2バルブ)133が順次配置されている。
【0018】
逆止弁131は、配管163において圧力発生部120から第1畜圧部132へ向かう方向のみを正圧が伝達される方向に規制する。逆止弁131は、配管163において下流側から上流側へ正圧が伝達されることを遮断する。逆止弁131は、配管163において圧力媒体であるエアーが下流側から上流側に流動することを遮断する。
【0019】
第1畜圧部132は、配管163において正圧を畜圧する。第1畜圧部132は、畜圧された正圧の圧力を検出する第1検出部(検出部)134を備えている。第1検出部134の検出結果は、制御部CONTに出力される。
【0020】
開閉弁133は、第1畜圧部132と正圧供給対象PPとの間において配管163を開閉する。開閉弁133による配管163の開閉は、制御部CONTによって制御される。配管161、163、配管162の一部、逆止弁131、第1畜圧部132、開閉弁133は、圧力発生部120で発生した正圧を正圧供給対象PPに供給する第1供給系130を構成している。
【0021】
配管164は、一端が配管162に接続され、他端が負圧供給対象NPに接続されている。配管164の中途には、上流側から逆止弁(第3バルブ)141、第2畜圧部142、開閉弁(第4バルブ)143が順次配置されている。
【0022】
逆止弁141は、配管164において圧力発生部120から第2畜圧部142へ向かう方向のみを負圧が伝達される方向に規制する。逆止弁141は、配管164において下流側から上流側へ負圧が伝達されることを遮断する。逆止弁141は、配管164において圧力媒体であるエアーが上流側から下流側に流動することを遮断する。
【0023】
第2畜圧部142は、配管164において負圧を畜圧する。第2畜圧部142は、畜圧された負圧の圧力を検出する第2検出部144を備えている。第2検出部144の検出結果は、制御部CONTに出力される。
【0024】
開閉弁143は、第2畜圧部142と負圧供給対象NPとの間において配管164を開閉する。開閉弁143による配管164の開閉は、制御部CONTによって制御される。配管161、164、配管162の一部、逆止弁141、第2畜圧部142、開閉弁143は、圧力発生部120で発生した負圧を負圧供給対象NPに供給する第2供給系140を構成している。
【0025】
大気開放系150は、開閉弁(第5バルブ)151を備えている。開閉弁151は、開状態において配管162を大気開放する。開閉弁151は、閉状態において配管162に対する大気開放を停止する。開閉弁133、143、151としては、例えば、油圧で駆動される弁、または電磁的に駆動される電磁弁等を用いることができる。電磁弁は、応答性に優れ、高負荷、高圧対応が容易である。
【0026】
図2は、圧力供給装置110における制御ブロック図である。
図2に示されるように、第1検出部134が検出した第1畜圧部132の正圧の圧力と、第2検出部144が検出した第2畜圧部142の負圧の圧力とは制御部CONTに出力される。制御部CONTは、第1検出部134および第2検出部144の各検出結果に基づいて開閉弁133、143、151の開閉を制御することにより、正圧供給対象PPに所定圧の正圧を供給するとともに、負圧供給対象NPに所定圧の負圧を供給する。
【0027】
次に、上記構成の圧力供給装置110を用いた正圧供給対象PPへの正圧供給および負圧供給対象NPへの負圧供給について説明する。
【0028】
[正圧供給行程]
まず、正圧供給行程について説明する。
圧力発生部120により正圧を発生させるには、回転駆動源113の回転により送りネジ116を回転させてピストン112を、例えば、シリンジ111内部における後端位置112Bから前端位置112Fに向けて移動させる。送りネジ116の回転方向は、送りネジ116が右ネジの場合は左方向に回転させ、送りネジ116が左ネジの場合は右方向に回転させる。
【0029】
上記圧力発生部120により正圧を発生させる際には、予め開閉弁133、151を閉じておく。なお、前工程において圧力発生部120が負圧を発生させた等により配管162内が負圧である場合には、開閉弁151を開いて配管162内を大気圧にしておく。
【0030】
ピストン112の移動により圧縮されて正圧となったシリンジ111内のエアーは、配管161、162を介して配管163に導入された後、逆止弁131を通過して第1畜圧部132に導入される。正圧のエアーが導入されることにより、第1畜圧部132内の圧力が大きくなる。制御部CONTは、第1検出部134が検出した第1畜圧部132の正圧の圧力が所定値となる移動量でピストン112を移動させる。制御部CONTは、第1検出部134が検出した第1畜圧部132の正圧の圧力が所定値に到達すると回転駆動源113の回転およびピストン112の移動を停止させる。
【0031】
第1畜圧部132内に所定値の圧力が畜圧されると、制御部CONTは開閉弁133を開ける。これにより、第1畜圧部132内の正圧のエアーは、正圧供給対象PPに導入される。正圧のエアーが導入されることにより、正圧供給対象PPに正圧が供給される。
【0032】
正圧供給行程においては、配管161、162内が正圧となるが、配管164に設けられた逆止弁141が正圧のエアーの第2畜圧部142への導入を阻止するため、第2畜圧部142内の負圧状態および負圧供給対象NPへの負圧供給に悪影響は及ばない。
【0033】
正圧供給対象PPに正圧が供給されると、第1畜圧部132の正圧の圧力が所定値から減少する。制御部CONTは、第1検出部134の検出結果に基づき、開閉弁132を閉じた後、ピストン112を停止させた位置から、減少した圧力に対応する移動量で前端位置112Fに向けて移動させて変化分の圧力を生じさせ、減少した第1畜圧部132の正圧の圧力を所定値に増加させる。このように、第1検出部134の検出結果に基づき第1畜圧部132の正圧の圧力を一定値に維持することで、正圧供給対象PPに対しては一定圧の正圧を連続的に供給することができる。
【0034】
[負圧供給行程]
正圧の供給が完了すると、制御部CONTは、開閉弁143を閉じる。また、配管161、162およびシリンジ111の内部には正圧のエアーが残留しているため、制御部CONTは開閉弁151を開けて大気開放して配管161、162内を大気圧とする。
【0035】
圧力発生部120により負圧を発生させるには、回転駆動源113の回転により送りネジ116を正圧発生時とは逆方向に回転させてピストン112を、正圧供給時に停止した位置から後端位置112Bに向けて移動させる。
【0036】
なお、正圧供給時に第1畜圧部132の正圧の圧力が所定値に到達したときに、正圧供給対象PPにおける正圧消費スケジュールに基づき、次に正圧を所定値に増加させるまでに、後述する負圧蓄積に要する時間よりも長い空き時間が生じる場合には、ピストン112の移動を停止させずに前端位置112Fまで移動させてもよい。これにより、負圧発生時のピストン112の移動ストロークを大きくすることができる。また、正圧供給時に第1畜圧部132の正圧の圧力が所定値に到達した後、前端位置112Fまで移動させる際には開閉弁151を開いておくことが好ましい。これにより、正圧供給行程から負圧供給行程への移行時に開閉弁151を開く行程を別途設ける必要がなくなるとともに、前端位置112Fまでの移動の際の圧力(気圧)増加による抵抗を小さくすることができる。
【0037】
ピストン112の移動よりエアーが膨張してシリンジ111内が負圧となることで、第2畜圧部142のエアーが配管164、162、161を介してシリンジ111内に導入される。これにより、第2畜圧部142の負圧が大きくなる。制御部CONTは、第2検出部144が検出した第2畜圧部142の負圧の圧力が所定値となる移動量でピストン112を移動させる。制御部CONTは、第2検出部144が検出した第2畜圧部142の負圧の圧力が所定値に到達すると回転駆動源113の回転およびピストン112の移動を停止させる。
【0038】
第2畜圧部142内に所定値の圧力が畜圧されると、制御部CONTは開閉弁143を開ける。これにより、第2畜圧部142内に負圧供給対象NPのエアーが導入される。負圧供給対象NPのエアーが第2畜圧部142内に導入されることにより、負圧供給対象NPに負圧が供給される。
【0039】
負圧供給行程においては、配管161、162内が負圧となるが、配管163に設けられた逆止弁131が第1畜圧部132内の正圧のエアーの配管161、162への移動を阻止するため、第1畜圧部132内の正圧状態および正圧供給対象PPへの正圧供給に悪影響は及ばない。
【0040】
負圧供給対象NPに負圧が供給されると、第2畜圧部142の負圧の圧力が所定値から減少する。制御部CONTは、第2検出部144の検出結果に基づき、開閉弁143を閉じた後、ピストン112を停止させた位置から、減少した圧力に対応する移動量で後端位置112Bに向けて移動させて変化分の圧力を生じさせ、減少した第2畜圧部142の負圧の圧力を所定値に増加させる。このように、第2検出部144の検出結果に基づき第2畜圧部142の負圧の圧力を一定値に維持することで、負圧供給対象NPに対しては一定圧の負圧を連続的に供給することができる。
【0041】
また、負圧供給行程においても、第2畜圧部142の負圧の圧力が所定値に到達したときに、次に負圧を所定値に増加させるまでに、上述した正圧蓄積に要する時間よりも長い空き時間が生じる場合には、ピストン112の移動を停止させずに後端位置112Bまで移動させてもよい。これにより、正圧発生時のピストン112の移動ストロークを大きくすることができる。また、負圧供給時に第2畜圧部142の負圧の圧力が所定値に到達した後、後端位置112Bまで移動させる際には開閉弁151を開いておくことが好ましい。これにより、負圧供給行程から正圧供給行程への移行時に開閉弁151を開く行程を別途設ける必要がなくなる。
【0042】
以上説明したように、本実施形態の圧力供給装置110においては、正圧供給用と負圧供給用に個別に装置を設けることなく、正圧と負圧をそれぞれ供給することができる。そのため、本実施形態の圧力供給装置110においては、設備の大型化、高価格化を抑制することができる。また、本実施形態の圧力供給装置110においては、ピストン112の前端位置112F側への移動で正圧を発生させ、後端位置112B側への移動で負圧を発生させているため、ピストン112に無駄な移動を生じさせず効率的な圧力供給を実現できる。
【0043】
本実施形態の圧力供給装置110においては、第1畜圧部132および第2畜圧部142を配置し、畜圧した正圧または負圧を供給しているため、高圧の正圧または負圧を迅速に供給することが可能になる。本実施形態の圧力供給装置110においては、第1検出部134および第2検出部144の検出結果に基づいて第1畜圧部132への正圧供給および第2畜圧部142への負圧供給を制御しているため、正圧および負圧を一定の値に維持することができる。そのため、本実施形態の圧力供給装置110においては、一定圧の正圧または負圧を正圧供給対象PPまたは負圧供給対象NPに脈動を抑制した状態で連続的に供給することができる。
【0044】
[システム]
次に、上記の圧力供給装置110を備えたシステムについて、図3及び図4を参照して説明する。本実施形態では、流路を有する流体デバイスに対して、流路を開閉するバルブおよび流路に溶液を充填するためのバルブに上記の圧力供給装置110によって圧力を供給するシステムについて説明する。
【0045】
図3および図4は、システムを模式的に示した断面図である。
システムは、流体デバイス100、バルブ駆動装置170および上記の圧力供給装置110を備えている。
【0046】
[流体デバイス]
流体デバイス100は、検体試料に含まれる試料物質を精製および検出等を行うデバイスである。試料物質は、例えば、DNAやRNAなどの核酸、ペプチド、タンパク質、細胞外小胞体などの生体分子である。流体デバイス100は、流路及びバルブが形成された基板9からなる。
【0047】
基板9は、第1基板9Aと、第1基板9Aに積層された第2基板9Bとを備えている。流路Cは、第1基板9Aにおける第2基板9Bと対向する面と、第2基板9Bにおける第1基板9Aと対向する面に設けられたシート状の流路壁11との間に形成されている。流路Cは、例えば、第1基板9Aの上面に形成された線状の窪みと、流路壁11との間に形成されている。流路壁11としては、一例として、ポリオレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等の熱可塑性エラストマーを例示することができる。流体デバイス100は、反応を終えた試料や試薬を収容する廃液槽を備えていてもよい。
【0048】
流体デバイス100は、正圧を用いて流路Cを開閉するバルブVと、負圧を用いて流路C内の流体(液体又は気体)を吸引する吸引部Mとを有している。吸引部Mは、流路C又は廃液槽に設けることができる。流体デバイス100には、バルブVおよび吸引部部Mがそれぞれ複数設けられており、図3および図4には代表的にバルブVおよび吸引部M(流路に設けられた場合)が示されている。
【0049】
吸引部Mに負圧を供給すると、負圧吸引により流路Cに溶液を導入したり、負圧吸引により流路Cから溶液を排出したりすることができる。例えば、流路Cに接続して設けられた廃液槽に吸引部Mを設けることにより、負圧吸引によって廃液槽に流路Cから溶液を排液することができる。
【0050】
第2基板9Bは、バルブVが配置される位置に、底部に流路壁11が露出する窪み12aを有している。窪み12aの上端は、開口している。バルブVは、図3に示されるように、窪み12aに正圧が供給されない状態では、流路壁11が変形せずに流路Cを開状態に設定する。バルブVは、図4に示されるように、窪み12aに正圧が供給された状態では、流路壁(ダイアフラム部)11が弾性変形して下方に撓み、第1基板9Aに接触することにより流路Cを閉状態に設定する。
【0051】
第2基板9Bは、吸引部Mが配置される位置に、第2基板9Bおよび流路壁11を貫通する露出する窪み12bを有している。吸引部Mは、図4に示されるように、窪み12bに負圧が供給されたときに、流路Cを負圧吸引することにより、流路Cへの溶液の導入、または流路Cからの溶液の排液が行われる。
【0052】
第2基板9Bは、上面においてバルブ駆動装置170と接合される。バルブ駆動装置170は、第2基板9Bの上面に位置合わせした状態で着脱自在に接合される、例えば、板状部材である。バルブ駆動装置170は、第2基板9Bの上面に対して気密に接合される。バルブ駆動装置170は、正圧供給対象PPである蓄圧部173と接続され流体デバイス100におけるバルブVが配置された位置のそれぞれに正圧を供給する。バルブ駆動装置170は、負圧供給対象NPである蓄圧部175と接続され流体デバイス100における吸引部Mが配置された位置のそれぞれに負圧を供給する。バルブ駆動装置170は、後述するように、流体デバイス100を用いて所定の処理を施す際に流体デバイス100(第2基板9B)に接合され、流体デバイス100を用いての所定の処理が完了すると流体デバイス100(第2基板9B)から取り外される。
バルブ駆動装置170は、バルブVが配置される位置に窪み12aと連通する孔部171を有している。バルブ駆動装置170は、吸引部Mが配置される位置に窪み12bと連通する孔部172を有している。
【0053】
孔部171には、正圧供給対象PPである蓄圧部173から正圧が供給される。蓄圧部173とバルブ駆動装置170(孔部171)との間には電磁弁174が設けられている。電磁弁174の開閉は、制御部CONTにより制御される。制御部CONTの制御により電磁弁174が開状態となることにより、蓄圧部173に蓄圧された正圧が孔部171および窪み12aに供給される。電磁弁174が開状態となり正圧が供給されることにより、バルブVは流路Cを閉状態に設定する。電磁弁174が閉状態となり正圧供給が停止されることにより、バルブVは流路Cを開状態に設定する。
【0054】
孔部172には、負圧供給対象NPである蓄圧部175から負圧が供給される。蓄圧部175とバルブ駆動装置170(孔部172)との間には電磁弁176が設けられている。電磁弁176の開閉は、制御部CONTにより制御される。制御部CONTの制御により電磁弁176が開状態となることにより、蓄圧部175に蓄圧された負圧が孔部172および窪み12bに供給される。電磁弁176が開状態となり負圧が供給されることにより、吸引部Mにおいては流路Cへの溶液の導入、または流路Cからの溶液の排液が行われる。電磁弁176が閉状態となり負圧供給が停止されることにより、吸引部Mにおいては流路Cへの溶液の導入、または流路Cからの溶液の排液が停止される。
【0055】
以上のように、本実施形態のシステムでは、流体デバイス100を用いて試料物質の精製・検出を行う際に、上記の圧力供給装置110を用いて正圧および負圧を供給しているため、設備の大型化、高価格化を抑制しつつ効率的な圧力供給を実現できる。本実施形態システムでは、高圧の正圧または負圧を脈動を抑制した状態で連続的、且つ迅速に供給することができる。
【0056】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0057】
例えば、上記実施形態の圧力供給装置110では、開閉弁133、143、151を電磁弁とする構成を例示したが、この構成に限定されず、逆止弁131、141についても電磁弁とする構成であってもよい。この構成を採ることにより、電磁制御により逆止弁131、141を、例えば、二方向弁等に用いることが可能となり汎用性を高めることができる。
【符号の説明】
【0058】
100…流体デバイス、 110…圧力供給装置、 111…シリンジ、 112…ピストン、 120…圧力発生部、 130…第1供給系、 131…逆止弁(第1バルブ)、 132…第1畜圧部、 133…開閉弁(第2バルブ)、 134…第1検出部(検出部)、 140…第2供給系、 141…逆止弁(第3バルブ)、 142…第2畜圧部、 143…開閉弁(第4バルブ)、 144…第2検出部(検出部)、 150…大気開放系(開放系)、 151…開閉弁(第5バルブ)、 C…流路、 CONT…制御部、 M…吸引部、 NP…負圧供給対象、 PP…正圧供給対象、 V…バルブ
図1
図2
図3
図4